選評の概要
34. 35.36. 37. 38. 39. 40.
41. 42. 43. 44. 45.
46. 47. 48. 49. 50.
51. 52. 53. 54. 55.
56. 57. 58. 59. 60.
61. 62. 63. 64. 65.
66. 67. 68. 69. 70.
71. 72. 73. 74. 75.
76. 77. 78. 79. 80.
81. 82. 83. 84. 85.
86. 87. 88. 89. 90.
91. 92. 93. 94. 95.
生没年月日【注】 | 明治44年/1911年2月5日~昭和63年/1988年7月12日 | |
在任期間 | 第34回~第95回(通算31年・62回) | |
在任年齢 | 44歳10ヶ月~75歳4ヶ月 | |
経歴 | 本名=木庭一郎。東京市下谷区生まれ。東京帝国大学文学部仏文学科卒。在学中より文芸評論活動を始める。昭和13年/1938年~昭和14年/1939年にパリ大学で学ぶ。文芸評論家として活動する一方で、昭和32年/1957年からは戯曲を、昭和38年/1963年からは小説も発表し始める。 | |
受賞歴・候補歴 |
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個人全集 | 『中村光夫全集』全16巻(昭和46年/1971年11月~昭和48年/1973年7月・筑摩書房刊) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 中村光夫 45歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
深井迪子 | 24歳 |
○ | 16 | 「既成の小説の規格を破って、何か自分の云いたいことを云おうとする野心に燃えています。そしてその企図は必ずしも成功していないにせよ、作者が何を書きたかったかということは、はっきり伝わってくるし、現代の青年男女がかつてない新しい面から描かれています。」「作者の観察は未熟で一面的であり、近親相姦の設定など不必要と思われますが、とにかく若い精神が時代の無道徳にどうたえているかという大問題が正面から提起されています。」 |
36歳 |
● | 5 | 「多年の努力がようやく描写の技巧で規格に達する作品を生んだというだけで、型にはまった空疎な物語という印象を受けました。」「一番小説臭すぎて詰らない小説と思っていたので、この授賞は僕には意外でした。」 | |
「(引用者注:候補作は)あまり不出来なものはない代りに際立った秀作も見当りませんでした。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年9月号) |
選考委員 中村光夫 50歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
山川方夫 | 31歳 |
○ | 9 | 「なかで際立って技巧的にすぐれ、題材も作者に切実なものと思われるので、弱いところはあっても当選に値するのではないかと思いましたが、席上反対論は意外に多く、それを撥ねかえせない弱点が、この作品にあることは認めないわけに行きません。」「しかしそれを認めても、これを越えて当選させたい作品は他に見当らないというのが僕の気持でした。」 |
「予選通過作が七篇ともあまり優劣のない出来で、それだけにこれひとつというのがなく、結局、当選作なしときまりました。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年9月号) |
選考委員 中村光夫 55歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
23歳 |
◎ | 11 | 「意外に早く(引用者中略)決定しました。」「どぎつい題材を扱いながら、それにもかかわらず、軽く仕上げたところが作者の人柄を感じさせますが、看守の家庭の描写に生活の匂いが欠けていて、全体が絵にかいたようなきれいごとに終っています。」「処女作にこれだけのものが書ける若い才能は、多少冒険でも買ってよいでしょう。」 | |
宮原昭夫 | 34歳 |
○ | 5 | 「女子高校生をうまく描いた作品で、彼女らの集団演技や生ぐさい反抗が、さっぱりした筆致でよく捉えられています。」「これと「夏の流れ」の二作授賞を主張しました」 |
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年3月号) |
選考委員 中村光夫 62歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
61歳 |
○ | 21 | 「文章の気品と思想の成熟では(引用者中略)群をぬいていました。」「六十歳をこえた新人があり得るかという議論もありましたが、僕はこの点は問題はないと思います。」「ただこの作品は小説というよりむしろ散文で書かれた抒情詩の性格が強く、(引用者中略)素材に比して長すぎるし、(引用者中略)種々の欠点が指摘されます。」「これだけをとって他の八篇をすてるに忍びない気持は皆にあったので、二作当選という結果になったのも自然でした。」 | |
日野啓三 | 44歳 |
○ | 4 | 「(引用者注:「草のくるぎ」と「此岸の家」では)僕は後者(引用者注:「此岸の家」)を推しました。作品に厚味の足りない点はありますが、身近かなむずかしい題材を、これだけ鮮明に描いたのは新人として非凡の手腕です。」 |
36歳 |
△ | 7 | 「前回の候補作とまったく違った筆致と作風なので、とまどいを感じました。」「この変化が、作者の内面の発展とどう結びつくのか、この作品だけでは、見当がつきません。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号) |
選考委員 中村光夫 74歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
55歳 |
○ | 17 | 「無雑作すぎるとも思われる作者の語り口にのせられて、異国で暮す中年女の怨恨と愚痴に思わずつきあわされてしまったといった印象でした。」「しかしこの作品の特色は、登場人物が溌剌と生きていることで、文章の粗雑さに対する不満をおぎなっています。」「生活の鬱憤を吐露する話が、充分小説になっているのは、米谷氏の並々ならぬ才能をもの語るものと思われました。」 | |
山田詠美 | 26歳 |
○ | 8 | 「作者が自己の感性を充分に生かしきった作品で、若い作者の優れた資質をうかがわせるものです。」「センセーショナルな材料を扱いながら、不潔でなく、読後感がさっぱりしているのは、これが男女のむしろ古風とも思われる純愛悲恋物語と読めたせいかもしれません。」 |
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号) |