第56回

第55回第57回

昭和41年/1966年下半期 昭和42年/1967年1月23日決定発表／『文藝春秋』昭和42年/1967年3月号選評掲載

選考委員　 三島由紀夫 42歳 瀧井孝作 72歳 井上靖 59歳 石川達三 61歳 丹羽文雄 62歳 石川淳 67歳 永井龍男 62歳 大岡昇平 57歳 川端康成 67歳 中村光夫 55歳 舟橋聖一 62歳 選評総行数　 33 42 25 28 18 20 12 24 35 32 44 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 丸山健二　「夏の流れ」 103枚 23歳 評 △ 16 ○ 17 △ 13 ● 2 ― 0 ■ 6 ◎ 8 ○ 12 △ 11 ◎ 11 ◎ 31 阪田寛夫　「音楽入門」 59枚 41歳 評 ○ 8 ― 0 ◎ 5 ― 0 △ 3 ― 0 △ 4 △ 2 ― 0 ■ 3 △ 2 古賀珠子　「落鳥」 73枚 (36歳) 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 柏原兵三　「兎の結末」 141枚 33歳 評 ― 0 ― 0 △ 4 ― 0 ― 0 ― 0 △ 2 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 野呂邦暢　「壁の絵」 109枚 29歳 評 ― 0 △ 7 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 △ 2 △ 5 ― 0 ― 0 ― 0 豊田穣　「伊吹山」等 349枚 46歳 評 ― 0 ― 0 △ 3 ― 0 ■ 3 ― 0 ― 0 △ 5 △ 6 ― 0 ■ 4 甲洋子　「切符を買って」 53枚 30歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 △ 4 ― 0 山崎柳子　「記憶」 78枚 43歳 評 ○ 9 ■ 7 ― 0 ― 0 △ 5 □ 10 △ 4 △ 2 △ 5 ■ 5 ● 4 竹内和夫　「孵化」 124枚 32歳 評 ― 0 ― 0 △ 4 ― 0 ◎ 5 ― 0 △ 4 △ 2 △ 8 ■ 3 △ 5 宮原昭夫　「石のニンフ達」 60枚 34歳 評 △ 5 ― 0 △ 5 ― 0 □ 5 ― 0 △ 4 □ 4 △ 6 ○ 5 ― 0 秋山篤　「化石の見える崖」 70枚 57歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 斎藤せつ子　「健やかな日常」 59枚 36歳 評 ― 0 ○ 9 ― 0 ― 0 ■ 2 ― 0 △ 4 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0                       年齢/枚数の説明   見方・注意点

三島由紀夫42歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題男性的な文章　総行数33　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 △ 16 「当選作として推したわけではないが、この授賞に積極的に反対ではなかった。男性的ないい文章であり、いい作品である。」「人物のデッサンもたしかなら、妻の無感動もいいし、ラストの感懐もさりげなく出ている。」「しかし二十三歳という作者の年齢を考えると、あんまり落着きすぎ、節度がありすぎ、若々しい過剰なイヤらしいものが少なすぎるのが気にならぬではない。そして一面、悪い意味の「してやったり」という若気も出ている。」 阪田寛夫 41歳 全 ○ 8 「いい作品だった。」「巧みな構成であり、古風なハイカラな銅版画的な味のある作品だ。」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 ― 0   甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 ○ 9 「いい作品だった。」「ラストの二行に感心した。」「この小説の終ったところから、本当の三角関係がはじまるわけだ。このさりげない暗示が、作品の奥行を増していると思う。」 竹内和夫 32歳 全 ― 0   宮原昭夫 34歳 全 △ 5 「いい作品だった。」「感覚が新鮮で、いかを焼くところなど、びっくりするほど巧いが、読書会などはあまりに安っぽいカリカチュアである。」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0

他の選考委員 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

瀧井孝作72歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題人の命の重さ　総行数42　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ○ 17 「日常生活の何気ない中に不気味なものを蔵したこの作は、以前の、庄野潤三の「静物」という小説の方法にも似通うかと見えた。」「何気ない題もよい。生命の流れの意味もあるようだ。」 阪田寛夫 41歳 全 ― 0   古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 △ 7 「筋も何もメチャクチャの小説のようだが、朝鮮戦争の志願兵が帰還して精神分裂症になった、その手記をつづった後の半分はこのメチャクチャも本当らしかった。」「武器だけにたより、戦争の目的のない兵隊は負けるにきまって居るようだ。」 豊田穣 46歳 全 ― 0   甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 ■ 7 「記憶の場面が末尾の「三」に描かれて、はじめの「一」と「二」は何かよくわからなかった。」「小説の筋の思いつきは面白いが、未だ小説の手法を会得して居ないのは、惜しかった。」 竹内和夫 32歳 全 ― 0   宮原昭夫 34歳 全 ― 0   秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ○ 9 「永井荷風の「葛飾土産」の短篇を見るように、うまいものだ。」「どの登場人物も簡潔に描けて、うまい。」「この短篇は、新潮の同人雑誌文学賞をもらったと云われた。」

他の選考委員 三島由紀夫 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

井上靖59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題腕の確かさ　総行数25　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 △ 13 「一種爽快さの感じられる書き方である。作者が最年少であるにも拘らず、候補作の中では、この作品に一番腕の確かなものを感じた。」「このような題材は、本当はもっと他の取り扱い方をすべきものではなかったという、そういう思いが、読み終ったあとに残った。」 阪田寛夫 41歳 全 ◎ 5 「面白く読んだ。」「音楽好きの一家の音楽始末書とでもいったものを軽く諷刺的に描いた作品だが、なかなか気の利いたしゃれたものである。私はこの作品を一位に推した」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 △ 4 「よかった。」「才能を感じた。」 野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 △ 3 「もうでき上がっている作家である。芥川賞が持たなければならぬ新鮮さには欠けるが、すでに安定したものを持っている。」 甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 ― 0   竹内和夫 32歳 全 △ 4 「よかった。」「確りした筆で書こうと思うものを書ききっており、」 宮原昭夫 34歳 全 △ 5 「よかった。」「才能を感じた。」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

石川達三61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題私的感想　総行数28　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ● 2 「私は「夏の流れ」を採らない。この作者にも期待をもっていない。」 阪田寛夫 41歳 全 ― 0   古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 ― 0   甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 ― 0   竹内和夫 32歳 全 ― 0   宮原昭夫 34歳 全 ― 0   秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0     「全部が私には退屈に思われた。」「新人として登場してくる人たちには、新人らしい何か別の新しい道を歩いてほしいと思う。それが少しも感じられないのだ。」「私は今回は授賞作なしと頑固に主張した。」「どの作家を見ても「志が低い」と私は思う。」	他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

丹羽文雄62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題印象に残った六篇　総行数18　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ― 0   阪田寛夫 41歳 全 △ 3 「好意のもてるものだったが、授賞となるとすこし軽いと思った。」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 ■ 3 「伊吹山の雪と子供がよく描かれているのに較べて女がつくりものであることが目立ちすぎた。」 甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 △ 5 「問題はあったが、気負立ちすぎたようである。」「前期の作品と今度の作品で、このひとの力量は高く評価されてよいと思った。」 竹内和夫 32歳 全 ◎ 5 「授賞に考えたのだが、悪い意味の文学青年的な文章が災となった。こういう題材はだれかが書かねばならなかったのだ。文章にこらずにぶつかっていけばよかったのではないか。」 宮原昭夫 34歳 全 □ 5 「この作者の力量を高く買いたいと思った。」「この作品と「孵化」の二本の授賞もよいと思ったが、一本になると（引用者中略）すこし軽い気がした。」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ■ 2 「特異な感覚の作者と思った。それだけにあとが困難だと思った。」

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

石川淳67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題不毛の地から　総行数20　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ■ 6 「作者は二十三歳だそうだが、この作品のかぎりでは冒険的な青春は感じられない。書くことは一応よく書けている。」「ただ冒険の無いところにわたしは賭けることができない。」 阪田寛夫 41歳 全 ― 0   古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 ― 0   甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 □ 10 「わたしとしては「記憶」をとる。印象的にいえば、人生にぽかんと大きい穴があいていて、その穴の中でも人間は微妙に生きることをやめないというけしきがここにある。」「ただこの作品には技術的にちと腑に落ちないところがあって、わたしもつよく推すまでには至らなかった。しかし、この方法がいけないというのではない。」 竹内和夫 32歳 全 ― 0   宮原昭夫 34歳 全 ― 0   秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0     「一般に新人の作品というものはちかごろどうも不毛のように見える。飛び抜けたものがなかなか出て来てくれない。」

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

永井龍男62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題若さに期待　総行数12　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ◎ 8 「最後の一票を入れた。題材に圧されることなく、一貫した呼吸づかいで、むしろ鈍重な筆致で書き上げた点がよかったし、作者の若さにも期待が向いた。」 阪田寛夫 41歳 全 △ 4 「残った六篇のうち、まず「音楽入門」と「健やかな日常」が落ちた。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 △ 2 「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 野呂邦暢 29歳 全 △ 2 「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 豊田穣 46歳 全 ― 0   甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 △ 4 「（引用者注：銓衡の最後で）「記憶」と「石のニンフ達」「夏の流れ」の三篇が検討された。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 竹内和夫 32歳 全 △ 4 「残った六篇のうち、まず「音楽入門」と「健やかな日常」が落ちた。続いて「孵化」が外され、」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 宮原昭夫 34歳 全 △ 4 「（引用者注：銓衡の最後で）「記憶」と「石のニンフ達」「夏の流れ」の三篇が検討された。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 △ 4 「残った六篇のうち、まず「音楽入門」と「健やかな日常」が落ちた。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 大岡昇平 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

大岡昇平57歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題冷静な作者　総行数24　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ○ 12 「死刑執行担当者の心理の洞察においても文章においても、自己統制が出来ている。」「芥川賞は本来若者のものなのだから、授賞は当然といえよう。」「看守の日常生活が、あまりしゃれているので、少し違和感を覚えたが、これは私が古い先入観に捉われているからであった。」 阪田寛夫 41歳 全 △ 2 「最後まで残った。」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 △ 5 「（引用者注：「伊吹山」と共に）戦争の描写はそれぞれに優れている。」「しかし（引用者中略）「わたし」の位置の混乱が指摘され、見送られた。」 豊田穣 46歳 全 △ 5 「（引用者注：「壁の絵」と共に）戦争の描写はそれぞれに優れている。」「しかし（引用者中略）連作の一部であり、（引用者中略）見送られた。」 甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 △ 2 「最後まで残った。」 竹内和夫 32歳 全 △ 2 「最後まで残った。」 宮原昭夫 34歳 全 □ 4 「若々しい感覚と機智は、文句なく面白い。芥川賞にふさわしい華々しさがあるので、一度は「夏の終り」と二篇当選と提議してみたくらいである。」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 川端康成 中村光夫 舟橋聖一

川端康成67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題判断に迷う　総行数35　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 △ 11 「決定して、作者の丸山氏が二十三歳の若さと知ったのには、明るい楽しさであった。」「殊に看守の家庭生活などは、監房の死刑囚や死刑執行の場に対して、わざと平凡に常識風に書いてあるかと思われるが、今後の作品で平凡は抜けられるだろうか。」 阪田寛夫 41歳 全 ― 0   古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 △ 6 「早く選外に去った豊田穣氏の「伊吹山」も、残った五編と明らかな逕庭があるとは思えなかった。」「参考作品の「長良川」、「石塔」も読み、これらの連作が一つにまとめてあればと惜しまれる。」 甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 △ 5 「構成に工夫があり過ぎるほどだし、作者の練達もうかがえる。」 竹内和夫 32歳 全 △ 8 「永井龍男氏が「警世」の作と評したが、まさしくその感じである。」「教師の煩労が全編にある。反抗的な生徒を気ちがいに終らせない方がよかったと思える。」 宮原昭夫 34歳 全 △ 6 「少女達の心理を官能的にとらえて、なまなましいところもある。もう少し長く強く書いて、量感があればよかった。」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0     「どれを選ぶか、私は迷って判断がつきかねて、委員たちの票数に従おうという、少し頼りない態度であった。」

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 中村光夫 舟橋聖一

中村光夫55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題若い才能　総行数32　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ◎ 11 「意外に早く（引用者中略）決定しました。」「どぎつい題材を扱いながら、それにもかかわらず、軽く仕上げたところが作者の人柄を感じさせますが、看守の家庭の描写に生活の匂いが欠けていて、全体が絵にかいたようなきれいごとに終っています。」「処女作にこれだけのものが書ける若い才能は、多少冒険でも買ってよいでしょう。」 阪田寛夫 41歳 全 ■ 3 「野心作ですが、人物を劇画化しすぎているために、かえって独り合点に陥っています。」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 ― 0   甲洋子 30歳 全 △ 4 「わりきれない主人公の感情が、あいまいな情況のなかに、鮮明にでている点、一種の才筆で、人物の扱いが甘すぎるために、評価されませんでしたが、なにかのある人のように思われます。」 山崎柳子 43歳 全 ■ 5 「野心的な企図ですが、それにしては少し工夫がたりないところがあって、作者のひろげた網に読者がかからないという意味で失敗作でしょう。しかし（引用者中略）「眼なき魚」よりひとつ進んだことをしようとした作者の意気ごみは立派です。」 竹内和夫 32歳 全 ■ 3 「題材は面白いが、主人公の感情が此方にうつってこないために、彼の周囲の人物も浮きあがってこず、もどかしい感じでした。」 宮原昭夫 34歳 全 ○ 5 「女子高校生をうまく描いた作品で、彼女らの集団演技や生ぐさい反抗が、さっぱりした筆致でよく捉えられています。」「これと「夏の流れ」の二作授賞を主張しました」 秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 舟橋聖一

舟橋聖一62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題殺処分について　総行数44　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 丸山健二 23歳 全 ◎ 31 「作者はまだ若い人だし、看守の経験があるわけでもなく、小説の構成に聞き書きのような点もあるので、若干の疑問を感じたが、他の諸作品に比べて、はるかに迫力があった。私がこれを推した理由である。」「看守の私生活、家庭生活の描写が長々しくて、少し退屈した。私小説のほうを半分ぐらいにして、この非人間的な死刑執行に対する作者の批判を加味したら、もっとまとまった好短篇となったろう。」 阪田寛夫 41歳 全 △ 2 「（引用者注：授賞作につづくものとして）あげて置きたい。」 古賀珠子 (36歳) 全 ― 0   柏原兵三 33歳 全 ― 0   野呂邦暢 29歳 全 ― 0   豊田穣 46歳 全 ■ 4 「力作という点を評価したいと思う。が、これも最後で躓いた。」 甲洋子 30歳 全 ― 0   山崎柳子 43歳 全 ● 4 「前半ウラシマの部分が全くやりきれなかった。」「前回の授賞作には、やはり「天上の花」をもっと強く推すべきであったと反省させられた。」 竹内和夫 32歳 全 △ 5 「（引用者注：授賞作につづくものとして）あげて置きたい。」「全く救いのない題材を克明に書いているが、急に最後の頁で「思わしくなかった私と妻の関係」という一行が出てくるところに、私としては授賞作に推しきれない弱点を見た。」 宮原昭夫 34歳 全 ― 0   秋山篤 57歳 全 ― 0   斎藤せつ子 36歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 瀧井孝作 井上靖 石川達三 丹羽文雄 石川淳 永井龍男 大岡昇平 川端康成 中村光夫

丸山健二23歳×各選考委員　 「夏の流れ」 短篇 103枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 △ 16 「当選作として推したわけではないが、この授賞に積極的に反対ではなかった。男性的ないい文章であり、いい作品である。」「人物のデッサンもたしかなら、妻の無感動もいいし、ラストの感懐もさりげなく出ている。」「しかし二十三歳という作者の年齢を考えると、あんまり落着きすぎ、節度がありすぎ、若々しい過剰なイヤらしいものが少なすぎるのが気にならぬではない。そして一面、悪い意味の「してやったり」という若気も出ている。」 瀧井孝作 72歳 全 ○ 17 「日常生活の何気ない中に不気味なものを蔵したこの作は、以前の、庄野潤三の「静物」という小説の方法にも似通うかと見えた。」「何気ない題もよい。生命の流れの意味もあるようだ。」 井上靖 59歳 全 △ 13 「一種爽快さの感じられる書き方である。作者が最年少であるにも拘らず、候補作の中では、この作品に一番腕の確かなものを感じた。」「このような題材は、本当はもっと他の取り扱い方をすべきものではなかったという、そういう思いが、読み終ったあとに残った。」 石川達三 61歳 全 ● 2 「私は「夏の流れ」を採らない。この作者にも期待をもっていない。」 丹羽文雄 62歳 全 ― 0   石川淳 67歳 全 ■ 6 「作者は二十三歳だそうだが、この作品のかぎりでは冒険的な青春は感じられない。書くことは一応よく書けている。」「ただ冒険の無いところにわたしは賭けることができない。」 永井龍男 62歳 全 ◎ 8 「最後の一票を入れた。題材に圧されることなく、一貫した呼吸づかいで、むしろ鈍重な筆致で書き上げた点がよかったし、作者の若さにも期待が向いた。」 大岡昇平 57歳 全 ○ 12 「死刑執行担当者の心理の洞察においても文章においても、自己統制が出来ている。」「芥川賞は本来若者のものなのだから、授賞は当然といえよう。」「看守の日常生活が、あまりしゃれているので、少し違和感を覚えたが、これは私が古い先入観に捉われているからであった。」 川端康成 67歳 全 △ 11 「決定して、作者の丸山氏が二十三歳の若さと知ったのには、明るい楽しさであった。」「殊に看守の家庭生活などは、監房の死刑囚や死刑執行の場に対して、わざと平凡に常識風に書いてあるかと思われるが、今後の作品で平凡は抜けられるだろうか。」 中村光夫 55歳 全 ◎ 11 「意外に早く（引用者中略）決定しました。」「どぎつい題材を扱いながら、それにもかかわらず、軽く仕上げたところが作者の人柄を感じさせますが、看守の家庭の描写に生活の匂いが欠けていて、全体が絵にかいたようなきれいごとに終っています。」「処女作にこれだけのものが書ける若い才能は、多少冒険でも買ってよいでしょう。」 舟橋聖一 62歳 全 ◎ 31 「作者はまだ若い人だし、看守の経験があるわけでもなく、小説の構成に聞き書きのような点もあるので、若干の疑問を感じたが、他の諸作品に比べて、はるかに迫力があった。私がこれを推した理由である。」「看守の私生活、家庭生活の描写が長々しくて、少し退屈した。私小説のほうを半分ぐらいにして、この非人間的な死刑執行に対する作者の批判を加味したら、もっとまとまった好短篇となったろう。」

他の候補作 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

阪田寛夫41歳×各選考委員　 「音楽入門」 短篇 59枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ○ 8 「いい作品だった。」「巧みな構成であり、古風なハイカラな銅版画的な味のある作品だ。」 瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 ◎ 5 「面白く読んだ。」「音楽好きの一家の音楽始末書とでもいったものを軽く諷刺的に描いた作品だが、なかなか気の利いたしゃれたものである。私はこの作品を一位に推した」 石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 △ 3 「好意のもてるものだったが、授賞となるとすこし軽いと思った。」 石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 △ 4 「残った六篇のうち、まず「音楽入門」と「健やかな日常」が落ちた。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 △ 2 「最後まで残った。」 川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 ■ 3 「野心作ですが、人物を劇画化しすぎているために、かえって独り合点に陥っています。」 舟橋聖一 62歳 全 △ 2 「（引用者注：授賞作につづくものとして）あげて置きたい。」

他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

古賀珠子(36歳)×各選考委員　 「落鳥」 短篇 73枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 ― 0   石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ― 0   石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 ― 0   大岡昇平 57歳 全 ― 0   川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 ― 0   舟橋聖一 62歳 全 ― 0	他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

柏原兵三33歳×各選考委員　 「兎の結末」 短篇 141枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 △ 4 「よかった。」「才能を感じた。」 石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ― 0   石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 △ 2 「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 ― 0   川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 ― 0   舟橋聖一 62歳 全 ― 0	他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

野呂邦暢29歳×各選考委員　 「壁の絵」 短篇 109枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 △ 7 「筋も何もメチャクチャの小説のようだが、朝鮮戦争の志願兵が帰還して精神分裂症になった、その手記をつづった後の半分はこのメチャクチャも本当らしかった。」「武器だけにたより、戦争の目的のない兵隊は負けるにきまって居るようだ。」 井上靖 59歳 全 ― 0   石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ― 0   石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 △ 2 「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 △ 5 「（引用者注：「伊吹山」と共に）戦争の描写はそれぞれに優れている。」「しかし（引用者中略）「わたし」の位置の混乱が指摘され、見送られた。」 川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 ― 0   舟橋聖一 62歳 全 ― 0

他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

豊田穣46歳×各選考委員　 「伊吹山」等 短篇等3篇 349枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 △ 3 「もうでき上がっている作家である。芥川賞が持たなければならぬ新鮮さには欠けるが、すでに安定したものを持っている。」 石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ■ 3 「伊吹山の雪と子供がよく描かれているのに較べて女がつくりものであることが目立ちすぎた。」 石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 ― 0   大岡昇平 57歳 全 △ 5 「（引用者注：「壁の絵」と共に）戦争の描写はそれぞれに優れている。」「しかし（引用者中略）連作の一部であり、（引用者中略）見送られた。」 川端康成 67歳 全 △ 6 「早く選外に去った豊田穣氏の「伊吹山」も、残った五編と明らかな逕庭があるとは思えなかった。」「参考作品の「長良川」、「石塔」も読み、これらの連作が一つにまとめてあればと惜しまれる。」 中村光夫 55歳 全 ― 0   舟橋聖一 62歳 全 ■ 4 「力作という点を評価したいと思う。が、これも最後で躓いた。」

他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

甲洋子30歳×各選考委員　 「切符を買って」 短篇 53枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 ― 0   石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ― 0   石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 ― 0   大岡昇平 57歳 全 ― 0   川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 △ 4 「わりきれない主人公の感情が、あいまいな情況のなかに、鮮明にでている点、一種の才筆で、人物の扱いが甘すぎるために、評価されませんでしたが、なにかのある人のように思われます。」 舟橋聖一 62歳 全 ― 0	他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

山崎柳子43歳×各選考委員　 「記憶」 短篇 78枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ○ 9 「いい作品だった。」「ラストの二行に感心した。」「この小説の終ったところから、本当の三角関係がはじまるわけだ。このさりげない暗示が、作品の奥行を増していると思う。」 瀧井孝作 72歳 全 ■ 7 「記憶の場面が末尾の「三」に描かれて、はじめの「一」と「二」は何かよくわからなかった。」「小説の筋の思いつきは面白いが、未だ小説の手法を会得して居ないのは、惜しかった。」 井上靖 59歳 全 ― 0   石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 △ 5 「問題はあったが、気負立ちすぎたようである。」「前期の作品と今度の作品で、このひとの力量は高く評価されてよいと思った。」 石川淳 67歳 全 □ 10 「わたしとしては「記憶」をとる。印象的にいえば、人生にぽかんと大きい穴があいていて、その穴の中でも人間は微妙に生きることをやめないというけしきがここにある。」「ただこの作品には技術的にちと腑に落ちないところがあって、わたしもつよく推すまでには至らなかった。しかし、この方法がいけないというのではない。」 永井龍男 62歳 全 △ 4 「（引用者注：銓衡の最後で）「記憶」と「石のニンフ達」「夏の流れ」の三篇が検討された。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 △ 2 「最後まで残った。」 川端康成 67歳 全 △ 5 「構成に工夫があり過ぎるほどだし、作者の練達もうかがえる。」 中村光夫 55歳 全 ■ 5 「野心的な企図ですが、それにしては少し工夫がたりないところがあって、作者のひろげた網に読者がかからないという意味で失敗作でしょう。しかし（引用者中略）「眼なき魚」よりひとつ進んだことをしようとした作者の意気ごみは立派です。」 舟橋聖一 62歳 全 ● 4 「前半ウラシマの部分が全くやりきれなかった。」「前回の授賞作には、やはり「天上の花」をもっと強く推すべきであったと反省させられた。」

他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

竹内和夫32歳×各選考委員　 「孵化」 短篇 124枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 △ 4 「よかった。」「確りした筆で書こうと思うものを書ききっており、」 石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ◎ 5 「授賞に考えたのだが、悪い意味の文学青年的な文章が災となった。こういう題材はだれかが書かねばならなかったのだ。文章にこらずにぶつかっていけばよかったのではないか。」 石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 △ 4 「残った六篇のうち、まず「音楽入門」と「健やかな日常」が落ちた。続いて「孵化」が外され、」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 △ 2 「最後まで残った。」 川端康成 67歳 全 △ 8 「永井龍男氏が「警世」の作と評したが、まさしくその感じである。」「教師の煩労が全編にある。反抗的な生徒を気ちがいに終らせない方がよかったと思える。」 中村光夫 55歳 全 ■ 3 「題材は面白いが、主人公の感情が此方にうつってこないために、彼の周囲の人物も浮きあがってこず、もどかしい感じでした。」 舟橋聖一 62歳 全 △ 5 「（引用者注：授賞作につづくものとして）あげて置きたい。」「全く救いのない題材を克明に書いているが、急に最後の頁で「思わしくなかった私と妻の関係」という一行が出てくるところに、私としては授賞作に推しきれない弱点を見た。」

他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

宮原昭夫34歳×各選考委員　 「石のニンフ達」 短篇 60枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 △ 5 「いい作品だった。」「感覚が新鮮で、いかを焼くところなど、びっくりするほど巧いが、読書会などはあまりに安っぽいカリカチュアである。」 瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 △ 5 「よかった。」「才能を感じた。」 石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 □ 5 「この作者の力量を高く買いたいと思った。」「この作品と「孵化」の二本の授賞もよいと思ったが、一本になると（引用者中略）すこし軽い気がした。」 石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 △ 4 「（引用者注：銓衡の最後で）「記憶」と「石のニンフ達」「夏の流れ」の三篇が検討された。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 □ 4 「若々しい感覚と機智は、文句なく面白い。芥川賞にふさわしい華々しさがあるので、一度は「夏の終り」と二篇当選と提議してみたくらいである。」 川端康成 67歳 全 △ 6 「少女達の心理を官能的にとらえて、なまなましいところもある。もう少し長く強く書いて、量感があればよかった。」 中村光夫 55歳 全 ○ 5 「女子高校生をうまく描いた作品で、彼女らの集団演技や生ぐさい反抗が、さっぱりした筆致でよく捉えられています。」「これと「夏の流れ」の二作授賞を主張しました」 舟橋聖一 62歳 全 ― 0

他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 秋山篤 「化石の見える崖」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

秋山篤57歳×各選考委員　 「化石の見える崖」 短篇 70枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ― 0   井上靖 59歳 全 ― 0   石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ― 0   石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 ― 0   大岡昇平 57歳 全 ― 0   川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 ― 0   舟橋聖一 62歳 全 ― 0	他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 斎藤せつ子 「健やかな日常」

斎藤せつ子36歳×各選考委員　 「健やかな日常」 短篇 59枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 42歳 全 ― 0   瀧井孝作 72歳 全 ○ 9 「永井荷風の「葛飾土産」の短篇を見るように、うまいものだ。」「どの登場人物も簡潔に描けて、うまい。」「この短篇は、新潮の同人雑誌文学賞をもらったと云われた。」 井上靖 59歳 全 ― 0   石川達三 61歳 全 ― 0   丹羽文雄 62歳 全 ■ 2 「特異な感覚の作者と思った。それだけにあとが困難だと思った。」 石川淳 67歳 全 ― 0   永井龍男 62歳 全 △ 4 「残った六篇のうち、まず「音楽入門」と「健やかな日常」が落ちた。」「才能ある作品だったが、ここには筆を略させていただく。」 大岡昇平 57歳 全 ― 0   川端康成 67歳 全 ― 0   中村光夫 55歳 全 ― 0   舟橋聖一 62歳 全 ― 0	他の候補作 丸山健二 「夏の流れ」 阪田寛夫 「音楽入門」 古賀珠子 「落鳥」 柏原兵三 「兎の結末」 野呂邦暢 「壁の絵」 豊田穣 「伊吹山」等 甲洋子 「切符を買って」 山崎柳子 「記憶」 竹内和夫 「孵化」 宮原昭夫 「石のニンフ達」 秋山篤 「化石の見える崖」