第90回

第89回第91回

昭和58年/1983年下半期 昭和59年/1984年1月17日決定発表／『文藝春秋』昭和59年/1984年3月号選評掲載

選考委員　 丸谷才一 58歳 中村光夫 72歳 吉行淳之介 59歳 大江健三郎 48歳 遠藤周作 60歳 丹羽文雄 79歳 安岡章太郎 63歳 開高健 53歳 選評総行数　 27 25 29 31 28 27 30 34 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 笠原淳　「杢二の世界」 72枚 47歳 評 □ 8 □ 6 □ 8 △ 3 ― 0 ― 0 △ 13 ― 0 高樹のぶ子　「光抱く友よ」 123枚 37歳 評 ● 2 △ 5 □ 7 ◎ 10 ― 0 ◎ 21 ● 5 ― 0 干刈あがた　「ウホッホ探険隊」 107枚 40歳 評 ― 0 □ 13 ― 0 △ 5 △ 12 ― 0 ― 0 ― 0 佐藤泰志　「黄金の服」 197枚 34歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 平岡篤頼　「赤い罌粟の花」 103枚 54歳 評 ○ 17 ― 0 □ 7 △ 7 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 島田雅彦　「亡命旅行者は叫び呟く」 146枚 22歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 △ 9 ■ 5 ― 0 ― 0 ― 0 梅原稜子　「四国山」 65枚 41歳 評 ― 0 △ 6 ― 0 △ 7 ○ 7 ― 0 ○ 5 ― 0 赤羽建美　「住宅」 81枚 40歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0                 年齢/枚数の説明   見方・注意点

丸谷才一58歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題二作を推す　総行数27　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 □ 8 「妙に不景気な小説で、しかも不景気の極、景気がよくなるという風情もない。」「どう見てもわたしの好みではないのだが、小説の作りが安定しているので推すことにした。これだけ古風な書き方でゆけば坐りがよくなるのは当り前のような気もするけれど、まあ文句は言わないことにしよう。」 高樹のぶ子 37歳 全 ● 2 「書くに価するほどの感想が浮ばない。」 干刈あがた 40歳 全 ― 0   佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 ○ 17 「時間のあつかい方が手際がよかった。」「それに主人公の自己批判があまりきびしくならず、つまり自己苛責という深刻な騒ぎにならないのも趣味がいい。残念なにはその時間感覚の探究が過去と現在の二つだけにとどまっていて、大過去がきれいに抜け落ちていることである。」「途中ですこし魅力が薄れてゆくのは惜しいけれど、これなら受賞作にしてもいいと思ったのだが、賛同を得られなかった。」 島田雅彦 22歳 全 ― 0   梅原稜子 41歳 全 ― 0   赤羽建美 40歳 全 ― 0

他の選考委員 中村光夫 吉行淳之介 大江健三郎 遠藤周作 丹羽文雄 安岡章太郎 開高健

中村光夫72歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題出来がよい「ウホッホ探険隊」　総行数25　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 □ 6 「うまい小説で、うますぎないように充分注意を払っている点は「（引用者注：ウホッホ）探険隊」より上わ手と思われます。」「人生の曲り角を散歩しているような二人（引用者注：杢二の妻君と義兄）の挙止がよく出ています。」 高樹のぶ子 37歳 全 △ 5 「非行にそまって行く女子高校生を描いていますが、彼女らは、悪事をはたらくグループに属しても裏をかえせば、性格は純白なので、おそらく事実をそのままに扱いながらつくりものの印象をあたえるのはこのためでしょう。」 干刈あがた 40歳 全 □ 13 「一番出来がよいと思われました。」「子供たちも加えた家族の心の動きを無理なく描いたあたりは、短篇として成功していると思われました。しかしそれだけに才がまわりすぎて、信用がおけないような筆致が、長所であると同時に欠陥でもあるように思われます。」 佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 ― 0   島田雅彦 22歳 全 ― 0   梅原稜子 41歳 全 △ 6 「最後まで論議の対象になった」 赤羽建美 40歳 全 ― 0

他の選考委員 丸谷才一 吉行淳之介 大江健三郎 遠藤周作 丹羽文雄 安岡章太郎 開高健

吉行淳之介59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数29　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 □ 8 「兄である語り手と杢二とが作品の中で、はっきり兄弟として存在していて、そこがよかった。因みに、杢二が同棲している女から別れを告げられ、びっくりして「さっき、一緒に飯を食ったのにな」と答えるところで、候補作を読む作業をしていて久しぶりに笑った。」 高樹のぶ子 37歳 全 □ 7 「思春期の少女を描いた作品で、この時期には暴力的な光景を見ることが、無意識のうちに性感につながり、そこから嫌悪を感じ取ることがある。」「良家の子女が、その立場のためにかえって不良少女に劣等感を抱きはじめるプロセスも、悪くない。」 干刈あがた 40歳 全 ― 0   佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 □ 7 「まず安心して読めた」「屈折した気分を抱きながら過したフランスでの遠い青春期を思い出しているうち、それが現在を照射しはじめ、現在がまた過去を照り返し、しだいに過去が苦さをも含めて甘美になってゆくところは、うまく書けていた。」 島田雅彦 22歳 全 ― 0   梅原稜子 41歳 全 ― 0   赤羽建美 40歳 全 ― 0     「今回は、すべての作品に半票を入れた」「「芥川賞」は新人賞の親玉みたいになってしまったが、やはり「新人賞」に変りはない筈なので、この水準で当選作ナシは有りえないだろう、とおもった。」「その気持は、ほぼ委員全体にあったようで、異例の四回の投票までして、二作にきまった。」

他の選考委員 丸谷才一 中村光夫 大江健三郎 遠藤周作 丹羽文雄 安岡章太郎 開高健

大江健三郎48歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題「たくらみ」と人間観　総行数31　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 △ 3 「もっとも作品の面白さを多くの委員が評価した、」 高樹のぶ子 37歳 全 ◎ 10 「あえて（引用者中略）受賞作に押す」「小説の全体への仕組みはとくになく、言葉も丹念に書き込んでゆくのみである。しかし高樹には、新しい作家の勢いを確実につみかさねてきたところがある。さらには自分独自の人間観を表明するために書く、という態度がこれまでつねにあった。」 干刈あがた 40歳 全 △ 5 「快につけ不快につけ、新しい刺戟的な喚起力を持っている。しかし（引用者中略）言葉の遊びからふとわれにかえった際の干刈は常凡な人間観の持主に見える。」 佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 △ 7 「技法のたくみさに、仕上りのそつのなさを加えて、（引用者中略）まとまりの良いものだが、これから仕事をはじめようという新作家の、華やぎ、輝きとは無縁なのでもある。」 島田雅彦 22歳 全 △ 9 「快につけ不快につけ、新しい刺戟的な喚起力を持っている。しかし言葉の面白さの底の、島田の人間観は不安定だし（若さのまま、揺れながら前進する不安定というのではない、停滞と共存する不安定と、さきの候補作以来この作者に注目する僕としていいたい）、」 梅原稜子 41歳 全 △ 7 「技法のたくみさに、仕上りのそつのなさを加えて、（引用者中略）まとまりの良いものだが、これから仕事をはじめようという新作家の、華やぎ、輝きとは無縁なのでもある。」 赤羽建美 40歳 全 ― 0

他の選考委員 丸谷才一 中村光夫 吉行淳之介 遠藤周作 丹羽文雄 安岡章太郎 開高健

遠藤周作60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題受賞しなかった三つの作品について　総行数28　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 ― 0   高樹のぶ子 37歳 全 ― 0   干刈あがた 40歳 全 △ 12 「私もこの作家の力倆はたしかにみとめざるをえない。」「この親子の薄氷をふむような相互関係をおたがいのいたわりによる嘘でかすかに支えている状態はサスペンスさえ感じられたのだが、しかし、そのいたわりの嘘とサスペンスを感じないという批評も多かったことをお伝えしておきたい。もしこの人が受賞していたならば、多分、流行作家になったろう。」 佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 ― 0   島田雅彦 22歳 全 ■ 5 「私の気持ではユーモアといい内容といい前作のほうがはるかによかった。ユーモアを作る批評で若さと言うより、未熟さを露呈したからである。」 梅原稜子 41歳 全 ○ 7 「当選作にたいしてわずかの差で受賞できなかった」「やや古風だが、丁寧で観察が行きとどいて好感の持てる作品だった。それが受賞しえなかったのは、作品の持つ長所が逆に迫力のなさにもつながったためだが、運が悪かったとしか思えない。」 赤羽建美 40歳 全 ― 0     「受賞作二篇については各選衡委員が感想をのべるだろうから、屋上屋を架すことはやめて、残念ながら受賞しなかった作品の二つ、三つに少しだけふれておきたい。」

他の選考委員 丸谷才一 中村光夫 吉行淳之介 大江健三郎 丹羽文雄 安岡章太郎 開高健

丹羽文雄79歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想余話　総行数27　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 ― 0   高樹のぶ子 37歳 全 ◎ 21 「私は（引用者中略）「光抱く友よ」を選んだ。」「作品の出来は、今回より前回の方がはるかに秀れていた。」「「光抱く友よ」は、題名で判るようにモラリスティックな小説である。」「高樹さんは、それ（引用者注：モラリスティック）を小説を書くときの支柱としている。珍しい作家である。こういう作家を珍しいと思わねばならないほど、私たちは大切な根本的なことを忘却しているようである。」 干刈あがた 40歳 全 ― 0   佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 ― 0   島田雅彦 22歳 全 ― 0   梅原稜子 41歳 全 ― 0   赤羽建美 40歳 全 ― 0     「（引用者注：「光抱く友よ」の他に私が選んだ）あとの一篇は落ちたので、ここでは触れない。」「若者が手を出しそうな迎合的な作品が、一、二篇候補の中にはいっているが、それがここ数年間の習慣のようになっていた。しかし、もう飽かれている。今回もそういう作品が、二、三篇あったが、あっさりと否定された。」

他の選考委員 丸谷才一 中村光夫 吉行淳之介 大江健三郎 遠藤周作 安岡章太郎 開高健

安岡章太郎63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題掴み難きもの　総行数30　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 △ 13 「小説らしい小説として読める作品であった。」「この作者は七、八年前に新潮新人賞をとった頃からみると、着実に成長しているようだ。」「杢二のような男は、おそらく戦前にもいたし、戦争中にもいて、決して珍しいタイプであるとは思えない。」「けだし、こうした人物が小説の主人公となって登場してくるのは、それだけ現代が無気力で、何をやろうにも力の入れどころのないような、無抵抗無感覚の時代になっているからであろう。」 高樹のぶ子 37歳 全 ● 5 「この作品は、私としてはやはり積極的に推す気にはなれない。最初の「その細き道」の素直さを憶い返して貰いたい。」 干刈あがた 40歳 全 ― 0   佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 ― 0   島田雅彦 22歳 全 ― 0   梅原稜子 41歳 全 ○ 5 「（引用者注：女流の作品の）なかでは、（引用者中略）短篇小説らしくまとまっていて、私は一応この作品を推してみたが、なにぶん文章に魅力がなく、欠点が無いということが、トリエが無いということになって、」 赤羽建美 40歳 全 ― 0

他の選考委員 丸谷才一 中村光夫 吉行淳之介 大江健三郎 遠藤周作 丹羽文雄 開高健

開高健53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題身辺雑記を出ない　総行数34　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 笠原淳 47歳 全 ― 0   高樹のぶ子 37歳 全 ― 0   干刈あがた 40歳 全 ― 0   佐藤泰志 34歳 全 ― 0   平岡篤頼 54歳 全 ― 0   島田雅彦 22歳 全 ― 0   梅原稜子 41歳 全 ― 0   赤羽建美 40歳 全 ― 0     「一作ずつについて○△×のいずれかで点を入れていくのが毎度の習慣だが、今回は全作品に平等に△をつけるしかなかった。」「ほとんどの作品の読後感として、身辺雑記を出ないということがいえる。」「若い俊秀に出会えなくなってから久しくになる。」「どういうものか言語と文字を媒体にしてこころを伝達しようとする分野が一貫して不毛なのである。」	他の選考委員 丸谷才一 中村光夫 吉行淳之介 大江健三郎 遠藤周作 丹羽文雄 安岡章太郎

笠原淳47歳×各選考委員　 「杢二の世界」 短篇 72枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 □ 8 「妙に不景気な小説で、しかも不景気の極、景気がよくなるという風情もない。」「どう見てもわたしの好みではないのだが、小説の作りが安定しているので推すことにした。これだけ古風な書き方でゆけば坐りがよくなるのは当り前のような気もするけれど、まあ文句は言わないことにしよう。」 中村光夫 72歳 全 □ 6 「うまい小説で、うますぎないように充分注意を払っている点は「（引用者注：ウホッホ）探険隊」より上わ手と思われます。」「人生の曲り角を散歩しているような二人（引用者注：杢二の妻君と義兄）の挙止がよく出ています。」 吉行淳之介 59歳 全 □ 8 「兄である語り手と杢二とが作品の中で、はっきり兄弟として存在していて、そこがよかった。因みに、杢二が同棲している女から別れを告げられ、びっくりして「さっき、一緒に飯を食ったのにな」と答えるところで、候補作を読む作業をしていて久しぶりに笑った。」 大江健三郎 48歳 全 △ 3 「もっとも作品の面白さを多くの委員が評価した、」 遠藤周作 60歳 全 ― 0   丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 △ 13 「小説らしい小説として読める作品であった。」「この作者は七、八年前に新潮新人賞をとった頃からみると、着実に成長しているようだ。」「杢二のような男は、おそらく戦前にもいたし、戦争中にもいて、決して珍しいタイプであるとは思えない。」「けだし、こうした人物が小説の主人公となって登場してくるのは、それだけ現代が無気力で、何をやろうにも力の入れどころのないような、無抵抗無感覚の時代になっているからであろう。」 開高健 53歳 全 ― 0

他の候補作 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 佐藤泰志 「黄金の服」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 梅原稜子 「四国山」 赤羽建美 「住宅」

高樹のぶ子37歳×各選考委員　 「光抱く友よ」 短篇 123枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ● 2 「書くに価するほどの感想が浮ばない。」 中村光夫 72歳 全 △ 5 「非行にそまって行く女子高校生を描いていますが、彼女らは、悪事をはたらくグループに属しても裏をかえせば、性格は純白なので、おそらく事実をそのままに扱いながらつくりものの印象をあたえるのはこのためでしょう。」 吉行淳之介 59歳 全 □ 7 「思春期の少女を描いた作品で、この時期には暴力的な光景を見ることが、無意識のうちに性感につながり、そこから嫌悪を感じ取ることがある。」「良家の子女が、その立場のためにかえって不良少女に劣等感を抱きはじめるプロセスも、悪くない。」 大江健三郎 48歳 全 ◎ 10 「あえて（引用者中略）受賞作に押す」「小説の全体への仕組みはとくになく、言葉も丹念に書き込んでゆくのみである。しかし高樹には、新しい作家の勢いを確実につみかさねてきたところがある。さらには自分独自の人間観を表明するために書く、という態度がこれまでつねにあった。」 遠藤周作 60歳 全 ― 0   丹羽文雄 79歳 全 ◎ 21 「私は（引用者中略）「光抱く友よ」を選んだ。」「作品の出来は、今回より前回の方がはるかに秀れていた。」「「光抱く友よ」は、題名で判るようにモラリスティックな小説である。」「高樹さんは、それ（引用者注：モラリスティック）を小説を書くときの支柱としている。珍しい作家である。こういう作家を珍しいと思わねばならないほど、私たちは大切な根本的なことを忘却しているようである。」 安岡章太郎 63歳 全 ● 5 「この作品は、私としてはやはり積極的に推す気にはなれない。最初の「その細き道」の素直さを憶い返して貰いたい。」 開高健 53歳 全 ― 0

他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 佐藤泰志 「黄金の服」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 梅原稜子 「四国山」 赤羽建美 「住宅」

干刈あがた40歳×各選考委員　 「ウホッホ探険隊」 短篇 107枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ― 0   中村光夫 72歳 全 □ 13 「一番出来がよいと思われました。」「子供たちも加えた家族の心の動きを無理なく描いたあたりは、短篇として成功していると思われました。しかしそれだけに才がまわりすぎて、信用がおけないような筆致が、長所であると同時に欠陥でもあるように思われます。」 吉行淳之介 59歳 全 ― 0   大江健三郎 48歳 全 △ 5 「快につけ不快につけ、新しい刺戟的な喚起力を持っている。しかし（引用者中略）言葉の遊びからふとわれにかえった際の干刈は常凡な人間観の持主に見える。」 遠藤周作 60歳 全 △ 12 「私もこの作家の力倆はたしかにみとめざるをえない。」「この親子の薄氷をふむような相互関係をおたがいのいたわりによる嘘でかすかに支えている状態はサスペンスさえ感じられたのだが、しかし、そのいたわりの嘘とサスペンスを感じないという批評も多かったことをお伝えしておきたい。もしこの人が受賞していたならば、多分、流行作家になったろう。」 丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 ― 0   開高健 53歳 全 ― 0

他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 佐藤泰志 「黄金の服」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 梅原稜子 「四国山」 赤羽建美 「住宅」

佐藤泰志34歳×各選考委員　 「黄金の服」 中篇 197枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ― 0   中村光夫 72歳 全 ― 0   吉行淳之介 59歳 全 ― 0   大江健三郎 48歳 全 ― 0   遠藤周作 60歳 全 ― 0   丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 ― 0   開高健 53歳 全 ― 0	他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 梅原稜子 「四国山」 赤羽建美 「住宅」

平岡篤頼54歳×各選考委員　 「赤い罌粟の花」 短篇 103枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ○ 17 「時間のあつかい方が手際がよかった。」「それに主人公の自己批判があまりきびしくならず、つまり自己苛責という深刻な騒ぎにならないのも趣味がいい。残念なにはその時間感覚の探究が過去と現在の二つだけにとどまっていて、大過去がきれいに抜け落ちていることである。」「途中ですこし魅力が薄れてゆくのは惜しいけれど、これなら受賞作にしてもいいと思ったのだが、賛同を得られなかった。」 中村光夫 72歳 全 ― 0   吉行淳之介 59歳 全 □ 7 「まず安心して読めた」「屈折した気分を抱きながら過したフランスでの遠い青春期を思い出しているうち、それが現在を照射しはじめ、現在がまた過去を照り返し、しだいに過去が苦さをも含めて甘美になってゆくところは、うまく書けていた。」 大江健三郎 48歳 全 △ 7 「技法のたくみさに、仕上りのそつのなさを加えて、（引用者中略）まとまりの良いものだが、これから仕事をはじめようという新作家の、華やぎ、輝きとは無縁なのでもある。」 遠藤周作 60歳 全 ― 0   丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 ― 0   開高健 53歳 全 ― 0

他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 佐藤泰志 「黄金の服」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 梅原稜子 「四国山」 赤羽建美 「住宅」

島田雅彦22歳×各選考委員　 「亡命旅行者は叫び呟く」 短篇 146枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ― 0   中村光夫 72歳 全 ― 0   吉行淳之介 59歳 全 ― 0   大江健三郎 48歳 全 △ 9 「快につけ不快につけ、新しい刺戟的な喚起力を持っている。しかし言葉の面白さの底の、島田の人間観は不安定だし（若さのまま、揺れながら前進する不安定というのではない、停滞と共存する不安定と、さきの候補作以来この作者に注目する僕としていいたい）、」 遠藤周作 60歳 全 ■ 5 「私の気持ではユーモアといい内容といい前作のほうがはるかによかった。ユーモアを作る批評で若さと言うより、未熟さを露呈したからである。」 丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 ― 0   開高健 53歳 全 ― 0	他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 佐藤泰志 「黄金の服」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 梅原稜子 「四国山」 赤羽建美 「住宅」

梅原稜子41歳×各選考委員　 「四国山」 短篇 65枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ― 0   中村光夫 72歳 全 △ 6 「最後まで論議の対象になった」 吉行淳之介 59歳 全 ― 0   大江健三郎 48歳 全 △ 7 「技法のたくみさに、仕上りのそつのなさを加えて、（引用者中略）まとまりの良いものだが、これから仕事をはじめようという新作家の、華やぎ、輝きとは無縁なのでもある。」 遠藤周作 60歳 全 ○ 7 「当選作にたいしてわずかの差で受賞できなかった」「やや古風だが、丁寧で観察が行きとどいて好感の持てる作品だった。それが受賞しえなかったのは、作品の持つ長所が逆に迫力のなさにもつながったためだが、運が悪かったとしか思えない。」 丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 ○ 5 「（引用者注：女流の作品の）なかでは、（引用者中略）短篇小説らしくまとまっていて、私は一応この作品を推してみたが、なにぶん文章に魅力がなく、欠点が無いということが、トリエが無いということになって、」 開高健 53歳 全 ― 0

他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 佐藤泰志 「黄金の服」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 赤羽建美 「住宅」

赤羽建美40歳×各選考委員　 「住宅」 短篇 81枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丸谷才一 58歳 全 ― 0   中村光夫 72歳 全 ― 0   吉行淳之介 59歳 全 ― 0   大江健三郎 48歳 全 ― 0   遠藤周作 60歳 全 ― 0   丹羽文雄 79歳 全 ― 0   安岡章太郎 63歳 全 ― 0   開高健 53歳 全 ― 0	他の候補作 笠原淳 「杢二の世界」 高樹のぶ子 「光抱く友よ」 干刈あがた 「ウホッホ探険隊」 佐藤泰志 「黄金の服」 平岡篤頼 「赤い罌粟の花」 島田雅彦 「亡命旅行者は叫び呟く」 梅原稜子 「四国山」