選評の概要
79. 80.81. 82. 83. 84. 85.
86. 87. 88. 89. 90.
91. 92. 93. 103. 104. 105.
106. 107. 108. 109. 110.
111. 112. 113. 114. 115.
116. 117. 118.
生没年月日【注】 | 大正14年/1925年8月27日~平成24年/2012年10月13日・ | |
在任期間 | 第79回~第93回、第103回~第118回(通算15.5年・31回) | |
在任年齢 | 52歳10ヶ月~59歳10ヶ月、64歳10ヶ月~72歳4ヶ月 | |
経歴 | 山形県鶴岡市生まれ。東京大学文学部英文科卒、同大学大学院修士課程修了。高校、大学で教鞭をとるかたわら、英文学の翻訳や、創作をつづける。 | |
受賞歴・候補歴 |
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個人全集 | 『丸谷才一全集』全12巻(平成25年/2013年10月~平成26年/2014年9月・文藝春秋刊) | |
芥川賞候補歴 | 第57回候補 「にぎやかな街で」(『文芸』昭和42年/1967年3月号) 第58回候補 「秘密」(『文學界』昭和42年/1967年9月号) 第59回受賞 「年の残り」(『文學界』昭和43年/1968年3月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 丸谷才一 53歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
丸元淑生 | 44歳 |
○ | 15 | 「二つの趣向が新しい。第一は曾祖父が秋月の乱の反逆者だといふことからはじまる、家の歴史の研究である。」「第二は、主人公である少年が威勢のいい勇敢な少年であることで、すなはちこれは一篇のピカレスク・ロマン(悪者小説)として読めないこともない。」「現代小説が自閉症的な内向性に閉ぢこもつてゐるとき、かういふ作風はまことに小気味よいものだと思ふ。いろいろ欠点はあるにしても、この楽しさを無視することはわたしにはできなかつた。」 |
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号) |
選考委員 丸谷才一 54歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
丸元淑生 | 46歳 |
○ | 20 | 「よいと思つた」「主人公と二人の息子の関係が情理兼ね備つた書き方で、感動的です。しかし二人の女との関係はどうも感心しない。」「が、さういふ欠点はあるものの、八方やぶれで無鉄砲な男の生き方と、その男の知的な側面とを、あはせ描いてゐるところがおもしろい。」 |
「わたしは、この三人の作家(引用者注:丸元淑生、村上春樹、尾辻克彦)が持つてゐる文学的エネルギーを信用してゐます、」「現在のやうな文学的転換期では、万人むきの無難な作品よりもむしろ、破綻のある作品を書くしかなかつたエネルギーを尊重したいと考へるのです。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年9月号) |
選考委員 丸谷才一 55歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
丸元淑生 | 46歳 |
◎ | 11 | 「(引用者注:「父が消えた」の他に)わたしが推したもう一篇」「実を言ふと(引用者注:授賞作より)こちらのほうが上だと思つたが、賛同を得られなかつた。」「いはゆる滑稽小説にありがちな、おどけや誇張をしりぞけて書いてゐるところがおもしろい。殊にいいのは構成がしつかりしてゐること」 |
43歳 |
○ | 24 | 「かなりの出来ばえのものである。話術はいよいよ巧みになり、感受性は相変らず新鮮である。それゆゑ尾辻氏の受賞にはいちおう異存がない。」「尾辻氏の作風は他愛もない話を書くところに一番の値打があつた。」「しかし今度の作品は、父の死といふ切実な題材を、もちろんずいぶんしやれた手つきで持ち込むことによつて、強引に芯を作つてゐる。」「この書き方では、易きについたといふ印象を受けるのである。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年3月号) |
選考委員 丸谷才一 58歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
平岡篤頼 | 54歳 |
○ | 17 | 「時間のあつかい方が手際がよかった。」「それに主人公の自己批判があまりきびしくならず、つまり自己苛責という深刻な騒ぎにならないのも趣味がいい。残念なにはその時間感覚の探究が過去と現在の二つだけにとどまっていて、大過去がきれいに抜け落ちていることである。」「途中ですこし魅力が薄れてゆくのは惜しいけれど、これなら受賞作にしてもいいと思ったのだが、賛同を得られなかった。」 |
47歳 |
□ | 8 | 「妙に不景気な小説で、しかも不景気の極、景気がよくなるという風情もない。」「どう見てもわたしの好みではないのだが、小説の作りが安定しているので推すことにした。これだけ古風な書き方でゆけば坐りがよくなるのは当り前のような気もするけれど、まあ文句は言わないことにしよう。」 | |
37歳 |
● | 2 | 「書くに価するほどの感想が浮ばない。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年3月号) |
選考委員 丸谷才一 65歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
多田尋子 | 59歳 |
◎ | 15 | 「感心した。デッサンが確かでディテイルがいい。筋の運びに無理がないし、そのくせ筋に綾をつけるつけ方がうまい。」「何しろ地味な作風なので古風に見えるかもしれないが、古くさくはない。」「このおだやかで安定した態度は注目に価する。」 |
46歳 |
△ | 8 | 「眠りといふ軸と植物といふ軸と、二つの方向から探求しようとするのも適切な趣向である。しかしこれは前半までで、後半はこの探求の線が捨てられ(殊に植物への関心が失せ)、新式の機械のことだけで筋を運ぶ。この後半がわたしにはおもしろくなかつた。」 | |
34歳 |
● | 8 | 「わたしには解しかねる作品であつた。登場人物間の関係が、表面的なことはよくわかるけれど、ちよつと深い層になると見当もつかない。どうやら、ユーモアのつもりのものが魂を描くことの邪魔をし、新しさを狙つたものが真実に迫ることを妨げてゐるらしい。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年9月号) |
選考委員 丸谷才一 68歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
引間徹 | 29歳 |
◎ | 20 | 「久方ぶりに属望するに足る才能に出会つたといふ気がする。」「第一に発想がいいし、筋の展開がいちいち気がきいてゐる。」「第二に登場人物たちがみな隣人のやうになつかしい。」「第三に文章が、ときどき変なこともあるけれど、全体としてはしつかりしてゐて、着実に前へ進む。第四に、いまの日本人の生活感、をかしな時代に生きて困つてゐる感じがよくつかまへてある。」 |
37歳 |
■ | 7 | 「この前の『三つ目の鯰』のほうがよかつた。登場人物が生き生きしてゐたし、ゆつたりした感じで呼吸してゐて、親愛感をいだくことができた。」「受賞はまことにめでたいことだが、これを機会にあの『三つ目の鯰』の調子に戻つてもらひたいと思ふ。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号) |
選考委員 丸谷才一 68歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
小浜清志 | 43歳 |
○ | 10 | 「前近代と近代とがいりまじつてゐる生き方をとらへようとしたもので、着眼点がよく、野心が大きい。」「物語の展開に無理な部分もあるが、それでも共同体と個人の関係、習俗と生活とのかかはりあひをうまく写してゐて、わたしには興味深かつた。」 |
38歳 |
□ | 17 | 「じつに惜しいところで佳作になりそこねてゐる短篇小説です。もちろん前作よりずつといい。」「むきだしな感覚の氾濫を、分別と才覚によつて口当りよく水わりにして、ただしちつとも水つぽくしなかつたところがすばらしい。」「しかしかういふ具合に、横へ横へと感覚をずるずるつないでゆく作風は(文章の藝のかずかずはじつに見事なのですが)、おしまひにうんと花やかな業を一つ決めてくれなければ見物衆が困ります。」 | |
39歳 |
● | 8 | 「作品の世界へはいつてゆけなくて困りました。評論体の小説といふのはわたしの縄張りのはずなのだが、読んでゐてどうも力がこもらないのですね。いろんな本の話もピンと来なかつたし、登場人物たちも印象が淡かつた。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年9月号) |