第109回

第108回第110回

平成5年/1993年上半期 平成5年/1993年7月15日決定発表／『文藝春秋』平成5年/1993年9月号選評掲載

選考委員　 大江健三郎 58歳 日野啓三 64歳 大庭みな子 62歳 古井由吉 55歳 吉行淳之介 69歳 田久保英夫 65歳 黒井千次 61歳 河野多恵子 67歳 丸谷才一 67歳 三浦哲郎 62歳 選評総行数　 31 32 20 31 32 35 35 35 26   評 評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 吉目木晴彦　「寂寥郊野」 177枚 36歳 評 ○ 12 ◎ 30 ○ 9 ◎ 31 ○ 24 □ 13 ◎ 25 ◎ 31 △ 26     角田光代　「ピンク・バス」 128枚 26歳 評 ■ 10 △ 2 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 4 ■ 5 ― 0 ― 0     塩野米松　「オレオレの日」 154枚 46歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 5 ― 0 △ 2 ― 0     久間十義　「海で三番目に強いもの」 207枚 39歳 評 △ 9 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 3 ― 0 ― 0 ― 0     村上政彦　「分界線」 157枚 34歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 3 ― 0 ― 0 ― 0     河林満　「穀雨」 163枚 42歳 評 ■ 11 ― 0 □ 7 ― 0 ○ 11 ■ 8 ■ 5 ■ 3 ― 0                       欠席 年齢/枚数の説明   見方・注意点

大江健三郎58歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題対立する個人をクッキリと　総行数31　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ○ 12 「文体も安定したこの作家の持味のままで――それだけに、新人らしい魅力に欠けるという声もあった――、着実な成果をあげている。とくにアメリカ人と結婚して老年をむかえた日本女性が、夫とも、また息子の嫁とも、じつにクッキリした対立をあらわす両シーンは、（引用者中略）個性確かな新人の出現といえよう。」 角田光代 26歳 全 ■ 10 「特異な若者のタイプと関係をきざむイメージの力をそなえている。」「小説後半のあわただしい整理不十分を見なおしてもらいたいという気がする。」 塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 △ 9 「久間十義氏は、独特な大きい趣向で成功した長篇を書いていられる。それがあえて自然体で青春を描くことを試み、氏のリアリズムの弱さがあらわれてしまった、と感じる。」 村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ■ 11 「よく選んだ素材について熟知していて、その描き出す人物と雰囲気のリアリティーには説得力がある。」「もう少し視野をひろげてもらいたい」

他の選考委員 日野啓三 大庭みな子 古井由吉 吉行淳之介 田久保英夫 黒井千次 河野多恵子 丸谷才一

日野啓三64歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題陰影のある的確さ　総行数32　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ◎ 30 「帰国子女と呼ばれる人たちの感性、性格のことを改めて考えた。」「外国で対等に、あるいは差別されながら育った。つらいことも少なくなかったであろう。そうして鍛えられたにちがいない性格の陰影のようなものが、彼の文章の隅々から感じられる。しかもこれまでそうした個人的な苦しみを直接に、彼は私小説的には語っていない。自国内だけの心情共同体のようなものから切れている。」 角田光代 26歳 全 △ 2 「若干気味悪くないこともない感性をおもしろいと思った。」 塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ― 0	他の選考委員 大江健三郎 大庭みな子 古井由吉 吉行淳之介 田久保英夫 黒井千次 河野多恵子 丸谷才一

大庭みな子62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題寂寥郊野　総行数20　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ○ 9 「アメリカならずとも、現代、大工業主義的な生き方をする国の寂寥感が伝わってくる。登場人物の間をわたる寒々とした寂しい風の音が聞こえる。」「現代文学の灯と言える作品であろう。」 角田光代 26歳 全 ― 0   塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 □ 7 「捨て難い作である。」「古風なようだが、あっという間に古びる新しそうに見える風俗に彩られた作品群の中ではむしろみずみずしく、命の手ざわりがある。だが、どこか自分に疑いを持たない、優等生めいたところがあるようで、今回の受賞にはならなかった。」	他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 古井由吉 吉行淳之介 田久保英夫 黒井千次 河野多恵子 丸谷才一

古井由吉55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題寂寥への到達　総行数31　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ◎ 31 「今回はまっすぐに、（引用者中略）推すことができた。落着いた筆致である。」「主人公夫妻の、意志の人生が描かれている。このことは私にとって妙に新鮮だった。」「夫婦として、そして社会にたいしてもなかば、言語の疎通まで奪われかけている。しかしこの危機に瀕して、夫婦の意志の人生がいま一度、ぎりぎり追いつめられ、切りつめられ、ほとんど意味を失いつつある境で、くっきりと表われる。そこがこの小説の魅力であろうと思われる。」 角田光代 26歳 全 ― 0   塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ― 0	他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 大庭みな子 吉行淳之介 田久保英夫 黒井千次 河野多恵子 丸谷才一

吉行淳之介69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題力量抜群　総行数32　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ○ 24 「私はその両方（引用者注：最後に残った「寂寥郊野」と「穀雨」）にマルを付けていた。」「今回の候補作はみな長く、苦痛をあたえるものもあったが、「寂寥郊野」は無駄に長くはなかった。」「アルツハイマーの進行とともに、幸恵が日本語で喋っていたりするあたり、悲痛である。二、三の疑問点が残ったが、この作品は芥川賞受賞作として、出色のものとおもった。」 角田光代 26歳 全 ― 0   塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ○ 11 「私はその両方（引用者注：最後に残った「寂寥郊野」と「穀雨」）にマルを付けていた。」「福祉事務所で働く男が主人公で、私はその内容に共感を持ったが、書き方に不満の残る部分があった。けっして悪い作品ではないが、すでに（引用者注：「寂寥郊野」との）二作の得点の差は大きく、力量の差ははっきりしていた。」

他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 大庭みな子 古井由吉 田久保英夫 黒井千次 河野多恵子 丸谷才一

田久保英夫65歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題作品への考え　総行数35　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 □ 13 「終章近くでは、妻が「回復するために力を尽くすのが、何にも増して値打ちのあることだとまでは思わないわね」と言うほど、人間の意識へのぎりぎりの問いが、発せられている。私は当選が出れば、この作しかないと思ったが、資料や取材を駆使する表現方法のせいか、人物たちと作者の間に、一抹の隙間風があるようで、疑問も残った。」 角田光代 26歳 全 ■ 4 「作者が一作ごとに急速に力をつけているのがわかる。しかし、最後に現われるバスの、超現実的な世界が成り立つには、もっと周到な伏線が必要だ。」 塩野米松 46歳 全 ■ 5 「素直でのびやかな感覚に眼をひかれた。しかし、闇の中の儀式が、乱交のような情景までいくのは、筆の乗りすぎとしか思えない。」 久間十義 39歳 全 ● 3 「（引用者注：「分界線」と共に）つくる手つきが見えすぎて、持ち前の才能が充分に発揮されていない。」 村上政彦 34歳 全 ● 3 「（引用者注：「海で三番目に強いもの」と共に）つくる手つきが見えすぎて、持ち前の才能が充分に発揮されていない。」 河林満 42歳 全 ■ 8 「難しくも興味深い主題を追っている。しかし、ケースワーカーは最初からその境界を踏みこえていて、それが逆に相手の女の心身に、ひどく残酷なことをしている、という意識が作者に弱い。」   「今回は相当割れて、難航するのではないか、と思っていたが、意外に（引用者注：「寂寥郊野」）一作に点が集まり、順調にきまった。」

他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 大庭みな子 古井由吉 吉行淳之介 黒井千次 河野多恵子 丸谷才一

黒井千次61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題土地・言葉・家族　総行数35　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ◎ 25 「アメリカを舞台とし、アメリカの男性と結婚した日本人女性を描く新人の小説はこれまで幾度か読んで来たが、（引用者中略）その中でも際立った作品であるといえよう。」「作品の構成がしっかりとして人物の輪郭が鮮やかであるために、あたかも家庭劇のステージに接しているかの感がある。」「アメリカが捉えられると同時に、日本の影も刻まれている、静かな奥行きを持つ小説である。」 角田光代 26歳 全 ■ 5 「力を制御して作品を構成しようとする意志の弱いところに不満を覚えた。奇妙な人間関係を表現することに関心を集中する以上、安易な幻想のバスなどに逃げてはなるまい。」 塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ■ 5 「しっとりとした地味な書き方に好感を抱いたものの、人物が安全地帯から踏み出さず、作に力が不足している、との印象が残った。」

他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 大庭みな子 古井由吉 吉行淳之介 田久保英夫 河野多恵子 丸谷才一

河野多恵子67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題あるカップルの物語　総行数35　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 ◎ 31 「推した。」「この作品は老人問題小説でも、老人小説でもない。」「描かれているのは、まさしく、あるカップルの――それも豊かな物語の印象が強い。その夫、その妻をはじめ作中人物のそれぞれに人間としての誇りを見出しているからである。つまり、人物を人格において捉えて、みごとに成功している。」「すぐれた前衛作品が出現した。」 角田光代 26歳 全 ― 0   塩野米松 46歳 全 △ 2 「興味を覚えた。」 久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ■ 3 「前作より少々落ちたのは、作者が創作というものを知りはじめたことが裏目に出たせいらしく、一時の後退にすぎまい。」	他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 大庭みな子 古井由吉 吉行淳之介 田久保英夫 黒井千次 丸谷才一

丸谷才一67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題反対しない　総行数26　（1行=24字） 候補 評価 行数 評言 吉目木晴彦 36歳 全 △ 26 「いちおう恰好がついてゐるし、手堅く書いてある。」「好感を持たれるのは当然だが、しかしわたしはむしろそこに不満を感じた。色調が全体にくすんでゐて、派手なところがまるでないのである。」「全体が論理的に組立てられてゐるのはいいけれど、その論理が展開してゆかない感じなのも気に入らなかった。」「しかし六篇の候補作中、一つだけ抜きんでた作品であるし（引用者中略）有望な新人だと思ふので、受賞には反対しなかつた。」 角田光代 26歳 全 ― 0   塩野米松 46歳 全 ― 0   久間十義 39歳 全 ― 0   村上政彦 34歳 全 ― 0   河林満 42歳 全 ― 0     「今回は一般に低調だつた。」	他の選考委員 大江健三郎 日野啓三 大庭みな子 古井由吉 吉行淳之介 田久保英夫 黒井千次 河野多恵子

吉目木晴彦36歳×各選考委員　 「寂寥郊野」 中篇 177枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大江健三郎 58歳 全 ○ 12 「文体も安定したこの作家の持味のままで――それだけに、新人らしい魅力に欠けるという声もあった――、着実な成果をあげている。とくにアメリカ人と結婚して老年をむかえた日本女性が、夫とも、また息子の嫁とも、じつにクッキリした対立をあらわす両シーンは、（引用者中略）個性確かな新人の出現といえよう。」 日野啓三 64歳 全 ◎ 30 「帰国子女と呼ばれる人たちの感性、性格のことを改めて考えた。」「外国で対等に、あるいは差別されながら育った。つらいことも少なくなかったであろう。そうして鍛えられたにちがいない性格の陰影のようなものが、彼の文章の隅々から感じられる。しかもこれまでそうした個人的な苦しみを直接に、彼は私小説的には語っていない。自国内だけの心情共同体のようなものから切れている。」 大庭みな子 62歳 全 ○ 9 「アメリカならずとも、現代、大工業主義的な生き方をする国の寂寥感が伝わってくる。登場人物の間をわたる寒々とした寂しい風の音が聞こえる。」「現代文学の灯と言える作品であろう。」 古井由吉 55歳 全 ◎ 31 「今回はまっすぐに、（引用者中略）推すことができた。落着いた筆致である。」「主人公夫妻の、意志の人生が描かれている。このことは私にとって妙に新鮮だった。」「夫婦として、そして社会にたいしてもなかば、言語の疎通まで奪われかけている。しかしこの危機に瀕して、夫婦の意志の人生がいま一度、ぎりぎり追いつめられ、切りつめられ、ほとんど意味を失いつつある境で、くっきりと表われる。そこがこの小説の魅力であろうと思われる。」 吉行淳之介 69歳 全 ○ 24 「私はその両方（引用者注：最後に残った「寂寥郊野」と「穀雨」）にマルを付けていた。」「今回の候補作はみな長く、苦痛をあたえるものもあったが、「寂寥郊野」は無駄に長くはなかった。」「アルツハイマーの進行とともに、幸恵が日本語で喋っていたりするあたり、悲痛である。二、三の疑問点が残ったが、この作品は芥川賞受賞作として、出色のものとおもった。」 田久保英夫 65歳 全 □ 13 「終章近くでは、妻が「回復するために力を尽くすのが、何にも増して値打ちのあることだとまでは思わないわね」と言うほど、人間の意識へのぎりぎりの問いが、発せられている。私は当選が出れば、この作しかないと思ったが、資料や取材を駆使する表現方法のせいか、人物たちと作者の間に、一抹の隙間風があるようで、疑問も残った。」 黒井千次 61歳 全 ◎ 25 「アメリカを舞台とし、アメリカの男性と結婚した日本人女性を描く新人の小説はこれまで幾度か読んで来たが、（引用者中略）その中でも際立った作品であるといえよう。」「作品の構成がしっかりとして人物の輪郭が鮮やかであるために、あたかも家庭劇のステージに接しているかの感がある。」「アメリカが捉えられると同時に、日本の影も刻まれている、静かな奥行きを持つ小説である。」 河野多恵子 67歳 全 ◎ 31 「推した。」「この作品は老人問題小説でも、老人小説でもない。」「描かれているのは、まさしく、あるカップルの――それも豊かな物語の印象が強い。その夫、その妻をはじめ作中人物のそれぞれに人間としての誇りを見出しているからである。つまり、人物を人格において捉えて、みごとに成功している。」「すぐれた前衛作品が出現した。」 丸谷才一 67歳 全 △ 26 「いちおう恰好がついてゐるし、手堅く書いてある。」「好感を持たれるのは当然だが、しかしわたしはむしろそこに不満を感じた。色調が全体にくすんでゐて、派手なところがまるでないのである。」「全体が論理的に組立てられてゐるのはいいけれど、その論理が展開してゆかない感じなのも気に入らなかった。」「しかし六篇の候補作中、一つだけ抜きんでた作品であるし（引用者中略）有望な新人だと思ふので、受賞には反対しなかつた。」

他の候補作 角田光代 「ピンク・バス」 塩野米松 「オレオレの日」 久間十義 「海で三番目に強いもの」 村上政彦 「分界線」 河林満 「穀雨」

角田光代26歳×各選考委員　 「ピンク・バス」 短篇 128枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大江健三郎 58歳 全 ■ 10 「特異な若者のタイプと関係をきざむイメージの力をそなえている。」「小説後半のあわただしい整理不十分を見なおしてもらいたいという気がする。」 日野啓三 64歳 全 △ 2 「若干気味悪くないこともない感性をおもしろいと思った。」 大庭みな子 62歳 全 ― 0   古井由吉 55歳 全 ― 0   吉行淳之介 69歳 全 ― 0   田久保英夫 65歳 全 ■ 4 「作者が一作ごとに急速に力をつけているのがわかる。しかし、最後に現われるバスの、超現実的な世界が成り立つには、もっと周到な伏線が必要だ。」 黒井千次 61歳 全 ■ 5 「力を制御して作品を構成しようとする意志の弱いところに不満を覚えた。奇妙な人間関係を表現することに関心を集中する以上、安易な幻想のバスなどに逃げてはなるまい。」 河野多恵子 67歳 全 ― 0   丸谷才一 67歳 全 ― 0

他の候補作 吉目木晴彦 「寂寥郊野」 塩野米松 「オレオレの日」 久間十義 「海で三番目に強いもの」 村上政彦 「分界線」 河林満 「穀雨」

塩野米松46歳×各選考委員　 「オレオレの日」 中篇 154枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大江健三郎 58歳 全 ― 0   日野啓三 64歳 全 ― 0   大庭みな子 62歳 全 ― 0   古井由吉 55歳 全 ― 0   吉行淳之介 69歳 全 ― 0   田久保英夫 65歳 全 ■ 5 「素直でのびやかな感覚に眼をひかれた。しかし、闇の中の儀式が、乱交のような情景までいくのは、筆の乗りすぎとしか思えない。」 黒井千次 61歳 全 ― 0   河野多恵子 67歳 全 △ 2 「興味を覚えた。」 丸谷才一 67歳 全 ― 0	他の候補作 吉目木晴彦 「寂寥郊野」 角田光代 「ピンク・バス」 久間十義 「海で三番目に強いもの」 村上政彦 「分界線」 河林満 「穀雨」

久間十義39歳×各選考委員　 「海で三番目に強いもの」 中篇 207枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大江健三郎 58歳 全 △ 9 「久間十義氏は、独特な大きい趣向で成功した長篇を書いていられる。それがあえて自然体で青春を描くことを試み、氏のリアリズムの弱さがあらわれてしまった、と感じる。」 日野啓三 64歳 全 ― 0   大庭みな子 62歳 全 ― 0   古井由吉 55歳 全 ― 0   吉行淳之介 69歳 全 ― 0   田久保英夫 65歳 全 ● 3 「（引用者注：「分界線」と共に）つくる手つきが見えすぎて、持ち前の才能が充分に発揮されていない。」 黒井千次 61歳 全 ― 0   河野多恵子 67歳 全 ― 0   丸谷才一 67歳 全 ― 0	他の候補作 吉目木晴彦 「寂寥郊野」 角田光代 「ピンク・バス」 塩野米松 「オレオレの日」 村上政彦 「分界線」 河林満 「穀雨」

村上政彦34歳×各選考委員　 「分界線」 中篇 157枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大江健三郎 58歳 全 ― 0   日野啓三 64歳 全 ― 0   大庭みな子 62歳 全 ― 0   古井由吉 55歳 全 ― 0   吉行淳之介 69歳 全 ― 0   田久保英夫 65歳 全 ● 3 「（引用者注：「海で三番目に強いもの」と共に）つくる手つきが見えすぎて、持ち前の才能が充分に発揮されていない。」 黒井千次 61歳 全 ― 0   河野多恵子 67歳 全 ― 0   丸谷才一 67歳 全 ― 0	他の候補作 吉目木晴彦 「寂寥郊野」 角田光代 「ピンク・バス」 塩野米松 「オレオレの日」 久間十義 「海で三番目に強いもの」 河林満 「穀雨」

河林満42歳×各選考委員　 「穀雨」 中篇 163枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大江健三郎 58歳 全 ■ 11 「よく選んだ素材について熟知していて、その描き出す人物と雰囲気のリアリティーには説得力がある。」「もう少し視野をひろげてもらいたい」 日野啓三 64歳 全 ― 0   大庭みな子 62歳 全 □ 7 「捨て難い作である。」「古風なようだが、あっという間に古びる新しそうに見える風俗に彩られた作品群の中ではむしろみずみずしく、命の手ざわりがある。だが、どこか自分に疑いを持たない、優等生めいたところがあるようで、今回の受賞にはならなかった。」 古井由吉 55歳 全 ― 0   吉行淳之介 69歳 全 ○ 11 「私はその両方（引用者注：最後に残った「寂寥郊野」と「穀雨」）にマルを付けていた。」「福祉事務所で働く男が主人公で、私はその内容に共感を持ったが、書き方に不満の残る部分があった。けっして悪い作品ではないが、すでに（引用者注：「寂寥郊野」との）二作の得点の差は大きく、力量の差ははっきりしていた。」 田久保英夫 65歳 全 ■ 8 「難しくも興味深い主題を追っている。しかし、ケースワーカーは最初からその境界を踏みこえていて、それが逆に相手の女の心身に、ひどく残酷なことをしている、という意識が作者に弱い。」 黒井千次 61歳 全 ■ 5 「しっとりとした地味な書き方に好感を抱いたものの、人物が安全地帯から踏み出さず、作に力が不足している、との印象が残った。」 河野多恵子 67歳 全 ■ 3 「前作より少々落ちたのは、作者が創作というものを知りはじめたことが裏目に出たせいらしく、一時の後退にすぎまい。」 丸谷才一 67歳 全 ― 0

他の候補作 吉目木晴彦 「寂寥郊野」 角田光代 「ピンク・バス」 塩野米松 「オレオレの日」 久間十義 「海で三番目に強いもの」 村上政彦 「分界線」