第43回

第42回第44回

昭和35年/1960年上半期 昭和35年/1960年7月19日決定発表／『文藝春秋』昭和35年/1960年9月号選評掲載

選考委員　 井上靖 53歳 石川達三 55歳 中村光夫 49歳 瀧井孝作 66歳 丹羽文雄 55歳 井伏鱒二 62歳 佐藤春夫 68歳 永井龍男 56歳 舟橋聖一 55歳 宇野浩二 68歳 川端康成 61歳 選評総行数　 26 29 28 49 28 12 23 24 45 62   評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 北杜夫　「夜と霧の隅で」 212枚 33歳 評 ◎ 11 ◎ 6 ◎ 7 ◎ 15 ◎ 5 ◎ 5 ◎ 16 ◎ 13 ○ 8 ○ 14     川上宗薫　「憂鬱な獣」 66枚 36歳 評 △ 8 ― 0 ― 0 ■ 3 △ 6 □ 5 ― 0 △ 2 ― 0 ― 0     倉橋由美子　「パルタイ」 42枚 24歳 評 □ 10 △ 9 △ 9 △ 11 △ 6 □ 4 ― 0 ◎ 14 ◎ 38 ■ 5     なだいなだ　「神話」 36枚 31歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 3     石井仁　「類人獣」 114枚 36歳 評 ― 0 ■ 4 ― 0 ● 4 ― 0 ― 0 ― 0 ・ 2 ― 0 ● 19     童門冬二　「暗い川が手を叩く」 45枚 32歳 評 ― 0 ■ 5 ■ 4 △ 4 ■ 3 ― 0 ― 0 △ 2 ― 0 ― 0     岡田睦　「夏休みの配当」 93枚 28歳 評 ― 0 ― 0 ■ 3 ● 3 □ 6 ― 0 ― 0 △ 2 ― 0 ― 0     古賀珠子　「魔笛」 116枚 (29歳) 評 ― 0 ― 0 ■ 4 ● 3 ― 0 ― 0 ― 0 △ 4 ■ 3 ■ 5     吉村謙三　「白い夏」 110枚 31歳 評 ■ 3 ■ 4 ― 0 △ 2 ■ 3 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0     欠席           欠席     欠席 欠席 年齢/枚数の説明   見方・注意点

井上靖53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題平凡のもつ力　総行数26　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 11 「面白く読めた。」「手法も文章も極めて平凡である。題材に対する対し方もまた平凡だ。併し、面白く読ませる力も持っているし、将来物を書いて行く人としての安定したものも感じられる。」「（引用者注：私は）「パルタイ」の新しさより、「夜と霧の隅で」の平凡な、併しそうざらにあるまいと思われる力倆を上位に置いた」 川上宗薫 36歳 全 △ 8 「面白く読めた。」「まさしく川上氏の作品である。」「この作が今までの作品よりいいとは思わない。ところどころ弱いところや、甘くなっているところがある。」 倉橋由美子 24歳 全 □ 10 「面白く読めた。」「世評高かったので期待して読んだが、私には何か大切なものが一本抜けている小説に思えた。スタイルも新しいし、新しい小説を打ち出そうとしているところもよく判る。」「読後にこのように感動のない小説というのも珍しいと思った。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ― 0   童門冬二 32歳 全 ― 0   岡田睦 28歳 全 ― 0   古賀珠子 (29歳) 全 ― 0   吉村謙三 31歳 全 ■ 3 「印象に残った。素直な好感の持てる作品ではあるが、読後感は弱かった。」

他の選考委員 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

石川達三55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題異常な主題　総行数29　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 6 「委員のほとんど全部が推薦したい気持であったから、問題はなかった。設計も建築もしっかりした建物を見るような感じで、少しの危なげもない。」「「谿間にて」に比べて、厚みと幅とを加えたようだ。」 川上宗薫 36歳 全 ― 0   倉橋由美子 24歳 全 △ 9 「新鮮さは私も高く買う。しかし作者自身のなかにどこかひよわなものがあって、危い気がする。このままで授賞されたらこの作者の良さは消えて、ひよわさばかりが拡大されそうに思う。この作者には当分のあいだ、ジャーナリズムの誘惑を断って静かに文学と（あるいは人間と……）取組んで見ることをすすめたい。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ■ 4 「異常な主題を描くこと自体は、文学の幅のひろさであって、私は反対しないが、その異常さに圧倒されて、作品自体が崩れて行く危険もある。」 童門冬二 32歳 全 ■ 5 「異常な主題を描くこと自体は、文学の幅のひろさであって、私は反対しないが、その異常さに圧倒されて、作品自体が崩れて行く危険もある。」 岡田睦 28歳 全 ― 0   古賀珠子 (29歳) 全 ― 0   吉村謙三 31歳 全 ■ 4 「異常な主題を描くこと自体は、文学の幅のひろさであって、私は反対しないが、その異常さに圧倒されて、作品自体が崩れて行く危険もある。」   「今回の候補作品には、異常な主題を扱ったものが多かった。」「異常な主題にたよって、それだけの興味で読ませようと試みてはならない。その異常なものを文学にまで結晶させることは容易な仕事ではない。」

他の選考委員 井上靖 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

中村光夫49歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題群像を描く才能　総行数28　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 7 「一番たしかな才能を感じさせる力作でした。」「前々回の「狂詩」あたりとくらべると、別人の感がありますが、何か調子が低く、無駄が多いのが気になります。しかし現代の大きな問題を背景に、たっぷりした筆力で群像を描いて行く才能は、その欠点を補うに充分でしょう。」 川上宗薫 36歳 全 ― 0   倉橋由美子 24歳 全 △ 9 「小品に近い作品ですが、そこに示された作者の資性は、可能性としては当選作より、深いひろがりを持っています。」「ある冴えた純粋性が感じられます。しかし芸術というより、自然の偶然の産物のようなところがあり、その新しさは、一部の人には感じられても、充分表現されているとは云えません。授賞作としてはやや弱いと思われます。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ― 0   童門冬二 32歳 全 ■ 4 「よくできていると思われました。しかし短い文章でつくりごとを書くむずかしさを、少し甘く考えすぎているようで、ところどころがひどくつくりものに見えます。」 岡田睦 28歳 全 ■ 3 「筆致の明るさが注目されますが（引用者中略）同じ弊（引用者注：つくりものに見える）に堕しています。」 古賀珠子 (29歳) 全 ■ 4 「重苦しく、たどたどしい構成が、書かねばならぬ材料ととりくんだ作者の力闘を感じさせますが、既成の表現にたよりすぎて、効果を弱めています。」 吉村謙三 31歳 全 ― 0     「今度はめずらしく候補作品の粒がそろっていました。」

他の選考委員 井上靖 石川達三 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

瀧井孝作66歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題佳い味　総行数49　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 15 「段ちがいに佳かった。」「「谿間にて」よりもこんどの方がまた進歩していると思った。それは規模が大きくて、又よくこなれて佳い味があるのだ。この佳い味というものは一つの天分で、天分があってもすぐ出るものでもなく、なかなか得難いものだが、この作者は勉強をつづけてこの味が出てきたようだ。」 川上宗薫 36歳 全 ■ 3 「モダンな学生気質の小説だが、新しい感じはなかった。父親が息子に意見する所は面白かった。」 倉橋由美子 24歳 全 △ 11 「何かわからない、説明も何もない不明瞭の所が多いが、そのわからない所が本当らしくて、そういう実感がそのまま出ていて、ちょっと面白かった。」「このひとも何か特色があるようで、勉強すれば尚よいものが出ると思った。」 なだいなだ 31歳 全 ■ 3 「かるい筆に面白い所もあるが、これだけでは少しものたりない。」 石井仁 36歳 全 ● 4 「「夜と霧の隅で」などの深い味はない。味がないというのは、作品として活き活きしたものがないのだ。」 童門冬二 32歳 全 △ 4 「精神病患者の話だが、子供の目に映ったそれが相当に描けていると思った。」「何か特色のある、注目すべき作家だと思った。」 岡田睦 28歳 全 ● 3 「モダンな学生気質を描いているが、筆には神経がたりない平板な感じがした。味がたりないのだ。」 古賀珠子 (29歳) 全 ● 3 「「パルタイ」と同じ似たような題材で、かなりハッキリ描いてあるが、ハッキリした描写が却ってウソのようで、何か陳腐な感じがした。」 吉村謙三 31歳 全 △ 2 「少女小説のような所があるが、素直な筆致は佳かった。」   「こんどは予選作品も、いつもとくらべて読みごたえがあった。」

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

丹羽文雄55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題内容のある重量感　総行数28　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 5 「ひと際秀れたものだった。これだけの内容のある重量感を出すことは、今日の作家の中でもむつかしいのではないか。」「安心してよめる、大人びた才能は高く評価されてよい。豊かな才能の持主だ。」 川上宗薫 36歳 全 △ 6 「押入の中の物音を鼠の仕業とか、女が猫の鳴き声を出すあたり、落語的だということになり、それが決定的な評価になった。作者にとっては心外だろうが、そういううけとり方もあるということを一考されたい。」「この人など、とうに受賞してもいいのだ。」 倉橋由美子 24歳 全 △ 6 「日本の女性にひては珍しい才能の持主である点は十分にみとめるが、簡単にとびつけないものをこの作品は感じさせる。目下は習作の時代であろう。そこから抜け出たとき、この人がこの人の文章で書いたときを期待する。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ― 0   童門冬二 32歳 全 ■ 3 「もうかえろうとオジサンがいうところで、いっぺんにこの小説を駄目にしている。」 岡田睦 28歳 全 □ 6 「「夏休みの配当」の面白さを私は大いに買いたい。が、この作は当選というわけにはいかなかったが、素質的に面白いところのある人らしい。」「嫌いな人は頭から否定するだろうが、文学というものはいつも顔をしかめて深刻がっているようなものではないからだ。」 古賀珠子 (29歳) 全 ― 0   吉村謙三 31歳 全 ■ 3 「最後にお菊さんが殺されるが、書きすぎである。あれがなかったら、一本の感銘はすなおにとおったであろう。」

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

井伏鱒二62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題幅と重厚味　総行数12　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 5 「力作のようでもあるし、この前の「谿間にて」にくらべると幅と重厚味があるようだし、大きく伸びつつある作家ではないだろうかと思った。堂々たる作品だと思った。私はこの作品を推すことにして会に出た」 川上宗薫 36歳 全 □ 5 「もし当選作を二つ取るような話になれば、（引用者中略・注：「夜と霧の隅で」の他に）「パルタイ」または「憂鬱な獣」に票を入れるつもりでいた。」「声変りした子供の不思議な欲情を多彩でもって書いてある。」 倉橋由美子 24歳 全 □ 4 「もし当選作を二つ取るような話になれば、（引用者中略・注：「夜と霧の隅で」の他に）「パルタイ」または「憂鬱な獣」に票を入れるつもりでいた。」「自由を持てあまして行くつく先の不自由な抽象の壁が書けている。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ― 0   童門冬二 32歳 全 ― 0   岡田睦 28歳 全 ― 0   古賀珠子 (29歳) 全 ― 0   吉村謙三 31歳 全 ― 0

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

佐藤春夫68歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題幻想的な実感　総行数23　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 16 「（引用者注：最初の候補の時以来）心配したようなひとり合点なものにもならないで、一作毎に順当に進境を見せて、一脈のユーモアがよく一般性をつなぎ、コクのある文体とともに、超自然主義的な一家の機杼（独自の作風）を示しているのを尊重した。今度の「夜と霧の隅で」はそれらの特長が最もよく現われた佳作と思われる。」「嶄然一頭地を抜いていたように思われたから、他の作は問題にせず、この一作だけを推した。」 川上宗薫 36歳 全 ― 0   倉橋由美子 24歳 全 ― 0   なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ― 0   童門冬二 32歳 全 ― 0   岡田睦 28歳 全 ― 0   古賀珠子 (29歳) 全 ― 0   吉村謙三 31歳 全 ― 0     「（引用者注：「夜と霧の隅で」の）他の作品も、みなそれぞれの見どころが無いでもなかったが、いずれも甲乙なく、みな二番煎じの作風で、作者の力量は、北杜夫にくらべものにならないような気がした。」

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 永井龍男 舟橋聖一 宇野浩二

永井龍男56歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題厚みのある作品　総行数24　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ◎ 13 「最後まで選に残った二作、「夜と霧の隅で」と「パルタイ」双方に授賞してはと私は提案した」「私の疑問は、その長さだった。芥川賞の規定である「短篇」に該当するかどうかと云うことだったが、これは出席委員が全員で認めた。」「特異な題材を扱う作者の自信と、周到な用意が相俟って、厚みのある作品である。」「前回「谿間にて」が候補作に取り上げられたことも、この作者の力倆を知るよすがとなったようだ。」 川上宗薫 36歳 全 △ 2 「個性を感じた。」 倉橋由美子 24歳 全 ◎ 14 「最後まで選に残った二作、「夜と霧の隅で」と「パルタイ」双方に授賞してはと私は提案した」「作品評は、すでに各方面でなされているので、蛇足を加えるつもりはない。」「なによりも、その新鮮さを私は買いたい。」「新鮮ということは、芥川賞の生命ではなかろうか。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ・ 2   童門冬二 32歳 全 △ 2 「個性を感じた。」 岡田睦 28歳 全 △ 2 「個性を感じた。」 古賀珠子 (29歳) 全 △ 4 「個性を感じた。」 吉村謙三 31歳 全 ― 0

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 舟橋聖一 宇野浩二

舟橋聖一55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題「パルタイ」への興味　総行数45　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ○ 8 「すぐれた卒論を読むようなソツのなさを感じたが、同時に退屈もした。慶応の付属病院という安定した職場に坐って、二つのハンドルを持つことが、今日のようなはげしい分業時代にあって、氏自身が、どこまで自分に寛容となれるかは疑問である。」 川上宗薫 36歳 全 ― 0   倉橋由美子 24歳 全 ◎ 38 「北一人推す組が五人。北・倉橋二人推す組が五人で、票決がつかず、佐佐木茂索氏の意見を聞いて、決定したのが真相」「大江・開高の例もあり、僅少の差で競り合った場合は、やはり両者に授賞すべきであったと思う。」「「パルタイ」以後、乱作だから減点するというのもおかしい。」「文体は、大江などとも違う才質で、ユニイクなものである。特に感覚的に新しいとは思わないが、女の体臭が凝結しているような緊密感は、中間小説で荒らされていた一、二年前の候補作にはないものだ。」 なだいなだ 31歳 全 ― 0   石井仁 36歳 全 ― 0   童門冬二 32歳 全 ― 0   岡田睦 28歳 全 ― 0   古賀珠子 (29歳) 全 ■ 3 「（引用者注：倉橋由美子と共に）政治闘争の中で昔ながらに、小（ルビ：プチ）ブル性をとりあげ、その良心的煩悶を、主題に近い位置で構成（ルビ：コンストラクト）させているのは、いかにも古くさいと思った。」 吉村謙三 31歳 全 ― 0

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 宇野浩二

宇野浩二68歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題我流の読後感　総行数62　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 北杜夫 33歳 全 ○ 14 「（引用者注：候補作のうちでは）先ず一篇（北杜夫の『夜と霧の隅で』）だけが推薦できそうに思った」「一ばん普通の文章と表現で述べた北の小説が妙に凄いところがあり読む者の心をうつような佳作であったが、（私がこの作品を殊更にほめるのは、前の（第四十一回の）時に、私が、欠点があるので、『山塔』より、『谿間』を推薦したからである。」 川上宗薫 36歳 全 ― 0   倉橋由美子 24歳 全 ■ 5 「ちょいと器用に見えるが、それだけで、「コマシャクレ」ている。」 なだいなだ 31歳 全 ● 3 「いくら気ちがいでも、あまりにバカげた気ちがいの伝奇小説みたい、と書けば、こちらがバカげてしまう。」 石井仁 36歳 全 ● 19 「得意になって書いているけれど、それは成功しなかった、「これ見よがし」の感じがあり、面白ずくで書いている」 童門冬二 32歳 全 ― 0   岡田睦 28歳 全 ― 0   古賀珠子 (29歳) 全 ■ 5 「手がこんでいるように見えるけれど、ごたごたしていて、それだけでも、よくない。」 吉村謙三 31歳 全 ― 0     「こんどは、九篇の小説の大部分が「ドングリの背くらべ」であった」

他の選考委員 井上靖 石川達三 中村光夫 瀧井孝作 丹羽文雄 井伏鱒二 佐藤春夫 永井龍男 舟橋聖一

北杜夫33歳×各選考委員　 「夜と霧の隅で」 中篇 212枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ◎ 11 「面白く読めた。」「手法も文章も極めて平凡である。題材に対する対し方もまた平凡だ。併し、面白く読ませる力も持っているし、将来物を書いて行く人としての安定したものも感じられる。」「（引用者注：私は）「パルタイ」の新しさより、「夜と霧の隅で」の平凡な、併しそうざらにあるまいと思われる力倆を上位に置いた」 石川達三 55歳 全 ◎ 6 「委員のほとんど全部が推薦したい気持であったから、問題はなかった。設計も建築もしっかりした建物を見るような感じで、少しの危なげもない。」「「谿間にて」に比べて、厚みと幅とを加えたようだ。」 中村光夫 49歳 全 ◎ 7 「一番たしかな才能を感じさせる力作でした。」「前々回の「狂詩」あたりとくらべると、別人の感がありますが、何か調子が低く、無駄が多いのが気になります。しかし現代の大きな問題を背景に、たっぷりした筆力で群像を描いて行く才能は、その欠点を補うに充分でしょう。」 瀧井孝作 66歳 全 ◎ 15 「段ちがいに佳かった。」「「谿間にて」よりもこんどの方がまた進歩していると思った。それは規模が大きくて、又よくこなれて佳い味があるのだ。この佳い味というものは一つの天分で、天分があってもすぐ出るものでもなく、なかなか得難いものだが、この作者は勉強をつづけてこの味が出てきたようだ。」 丹羽文雄 55歳 全 ◎ 5 「ひと際秀れたものだった。これだけの内容のある重量感を出すことは、今日の作家の中でもむつかしいのではないか。」「安心してよめる、大人びた才能は高く評価されてよい。豊かな才能の持主だ。」 井伏鱒二 62歳 全 ◎ 5 「力作のようでもあるし、この前の「谿間にて」にくらべると幅と重厚味があるようだし、大きく伸びつつある作家ではないだろうかと思った。堂々たる作品だと思った。私はこの作品を推すことにして会に出た」 佐藤春夫 68歳 全 ◎ 16 「（引用者注：最初の候補の時以来）心配したようなひとり合点なものにもならないで、一作毎に順当に進境を見せて、一脈のユーモアがよく一般性をつなぎ、コクのある文体とともに、超自然主義的な一家の機杼（独自の作風）を示しているのを尊重した。今度の「夜と霧の隅で」はそれらの特長が最もよく現われた佳作と思われる。」「嶄然一頭地を抜いていたように思われたから、他の作は問題にせず、この一作だけを推した。」 永井龍男 56歳 全 ◎ 13 「最後まで選に残った二作、「夜と霧の隅で」と「パルタイ」双方に授賞してはと私は提案した」「私の疑問は、その長さだった。芥川賞の規定である「短篇」に該当するかどうかと云うことだったが、これは出席委員が全員で認めた。」「特異な題材を扱う作者の自信と、周到な用意が相俟って、厚みのある作品である。」「前回「谿間にて」が候補作に取り上げられたことも、この作者の力倆を知るよすがとなったようだ。」 舟橋聖一 55歳 全 ○ 8 「すぐれた卒論を読むようなソツのなさを感じたが、同時に退屈もした。慶応の付属病院という安定した職場に坐って、二つのハンドルを持つことが、今日のようなはげしい分業時代にあって、氏自身が、どこまで自分に寛容となれるかは疑問である。」 宇野浩二 68歳 全 ○ 14 「（引用者注：候補作のうちでは）先ず一篇（北杜夫の『夜と霧の隅で』）だけが推薦できそうに思った」「一ばん普通の文章と表現で述べた北の小説が妙に凄いところがあり読む者の心をうつような佳作であったが、（私がこの作品を殊更にほめるのは、前の（第四十一回の）時に、私が、欠点があるので、『山塔』より、『谿間』を推薦したからである。」

他の候補作 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

川上宗薫36歳×各選考委員　 「憂鬱な獣」 短篇 66枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 △ 8 「面白く読めた。」「まさしく川上氏の作品である。」「この作が今までの作品よりいいとは思わない。ところどころ弱いところや、甘くなっているところがある。」 石川達三 55歳 全 ― 0   中村光夫 49歳 全 ― 0   瀧井孝作 66歳 全 ■ 3 「モダンな学生気質の小説だが、新しい感じはなかった。父親が息子に意見する所は面白かった。」 丹羽文雄 55歳 全 △ 6 「押入の中の物音を鼠の仕業とか、女が猫の鳴き声を出すあたり、落語的だということになり、それが決定的な評価になった。作者にとっては心外だろうが、そういううけとり方もあるということを一考されたい。」「この人など、とうに受賞してもいいのだ。」 井伏鱒二 62歳 全 □ 5 「もし当選作を二つ取るような話になれば、（引用者中略・注：「夜と霧の隅で」の他に）「パルタイ」または「憂鬱な獣」に票を入れるつもりでいた。」「声変りした子供の不思議な欲情を多彩でもって書いてある。」 佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 △ 2 「個性を感じた。」 舟橋聖一 55歳 全 ― 0   宇野浩二 68歳 全 ― 0

他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

倉橋由美子24歳×各選考委員　 「パルタイ」 短篇 42枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 □ 10 「面白く読めた。」「世評高かったので期待して読んだが、私には何か大切なものが一本抜けている小説に思えた。スタイルも新しいし、新しい小説を打ち出そうとしているところもよく判る。」「読後にこのように感動のない小説というのも珍しいと思った。」 石川達三 55歳 全 △ 9 「新鮮さは私も高く買う。しかし作者自身のなかにどこかひよわなものがあって、危い気がする。このままで授賞されたらこの作者の良さは消えて、ひよわさばかりが拡大されそうに思う。この作者には当分のあいだ、ジャーナリズムの誘惑を断って静かに文学と（あるいは人間と……）取組んで見ることをすすめたい。」 中村光夫 49歳 全 △ 9 「小品に近い作品ですが、そこに示された作者の資性は、可能性としては当選作より、深いひろがりを持っています。」「ある冴えた純粋性が感じられます。しかし芸術というより、自然の偶然の産物のようなところがあり、その新しさは、一部の人には感じられても、充分表現されているとは云えません。授賞作としてはやや弱いと思われます。」 瀧井孝作 66歳 全 △ 11 「何かわからない、説明も何もない不明瞭の所が多いが、そのわからない所が本当らしくて、そういう実感がそのまま出ていて、ちょっと面白かった。」「このひとも何か特色があるようで、勉強すれば尚よいものが出ると思った。」 丹羽文雄 55歳 全 △ 6 「日本の女性にひては珍しい才能の持主である点は十分にみとめるが、簡単にとびつけないものをこの作品は感じさせる。目下は習作の時代であろう。そこから抜け出たとき、この人がこの人の文章で書いたときを期待する。」 井伏鱒二 62歳 全 □ 4 「もし当選作を二つ取るような話になれば、（引用者中略・注：「夜と霧の隅で」の他に）「パルタイ」または「憂鬱な獣」に票を入れるつもりでいた。」「自由を持てあまして行くつく先の不自由な抽象の壁が書けている。」 佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 ◎ 14 「最後まで選に残った二作、「夜と霧の隅で」と「パルタイ」双方に授賞してはと私は提案した」「作品評は、すでに各方面でなされているので、蛇足を加えるつもりはない。」「なによりも、その新鮮さを私は買いたい。」「新鮮ということは、芥川賞の生命ではなかろうか。」 舟橋聖一 55歳 全 ◎ 38 「北一人推す組が五人。北・倉橋二人推す組が五人で、票決がつかず、佐佐木茂索氏の意見を聞いて、決定したのが真相」「大江・開高の例もあり、僅少の差で競り合った場合は、やはり両者に授賞すべきであったと思う。」「「パルタイ」以後、乱作だから減点するというのもおかしい。」「文体は、大江などとも違う才質で、ユニイクなものである。特に感覚的に新しいとは思わないが、女の体臭が凝結しているような緊密感は、中間小説で荒らされていた一、二年前の候補作にはないものだ。」 宇野浩二 68歳 全 ■ 5 「ちょいと器用に見えるが、それだけで、「コマシャクレ」ている。」

他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

なだいなだ31歳×各選考委員　 「神話」 短篇 36枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ― 0   石川達三 55歳 全 ― 0   中村光夫 49歳 全 ― 0   瀧井孝作 66歳 全 ■ 3 「かるい筆に面白い所もあるが、これだけでは少しものたりない。」 丹羽文雄 55歳 全 ― 0   井伏鱒二 62歳 全 ― 0   佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 ― 0   舟橋聖一 55歳 全 ― 0   宇野浩二 68歳 全 ● 3 「いくら気ちがいでも、あまりにバカげた気ちがいの伝奇小説みたい、と書けば、こちらがバカげてしまう。」	他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

石井仁36歳×各選考委員　 「類人獣」 短篇 114枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ― 0   石川達三 55歳 全 ■ 4 「異常な主題を描くこと自体は、文学の幅のひろさであって、私は反対しないが、その異常さに圧倒されて、作品自体が崩れて行く危険もある。」 中村光夫 49歳 全 ― 0   瀧井孝作 66歳 全 ● 4 「「夜と霧の隅で」などの深い味はない。味がないというのは、作品として活き活きしたものがないのだ。」 丹羽文雄 55歳 全 ― 0   井伏鱒二 62歳 全 ― 0   佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 ・ 2   舟橋聖一 55歳 全 ― 0   宇野浩二 68歳 全 ● 19 「得意になって書いているけれど、それは成功しなかった、「これ見よがし」の感じがあり、面白ずくで書いている」	他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

童門冬二32歳×各選考委員　 「暗い川が手を叩く」 短篇 45枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ― 0   石川達三 55歳 全 ■ 5 「異常な主題を描くこと自体は、文学の幅のひろさであって、私は反対しないが、その異常さに圧倒されて、作品自体が崩れて行く危険もある。」 中村光夫 49歳 全 ■ 4 「よくできていると思われました。しかし短い文章でつくりごとを書くむずかしさを、少し甘く考えすぎているようで、ところどころがひどくつくりものに見えます。」 瀧井孝作 66歳 全 △ 4 「精神病患者の話だが、子供の目に映ったそれが相当に描けていると思った。」「何か特色のある、注目すべき作家だと思った。」 丹羽文雄 55歳 全 ■ 3 「もうかえろうとオジサンがいうところで、いっぺんにこの小説を駄目にしている。」 井伏鱒二 62歳 全 ― 0   佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 △ 2 「個性を感じた。」 舟橋聖一 55歳 全 ― 0   宇野浩二 68歳 全 ― 0

他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

岡田睦28歳×各選考委員　 「夏休みの配当」 短篇 93枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ― 0   石川達三 55歳 全 ― 0   中村光夫 49歳 全 ■ 3 「筆致の明るさが注目されますが（引用者中略）同じ弊（引用者注：つくりものに見える）に堕しています。」 瀧井孝作 66歳 全 ● 3 「モダンな学生気質を描いているが、筆には神経がたりない平板な感じがした。味がたりないのだ。」 丹羽文雄 55歳 全 □ 6 「「夏休みの配当」の面白さを私は大いに買いたい。が、この作は当選というわけにはいかなかったが、素質的に面白いところのある人らしい。」「嫌いな人は頭から否定するだろうが、文学というものはいつも顔をしかめて深刻がっているようなものではないからだ。」 井伏鱒二 62歳 全 ― 0   佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 △ 2 「個性を感じた。」 舟橋聖一 55歳 全 ― 0   宇野浩二 68歳 全 ― 0

他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 古賀珠子 「魔笛」 吉村謙三 「白い夏」

古賀珠子(29歳)×各選考委員　 「魔笛」 短篇 116枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ― 0   石川達三 55歳 全 ― 0   中村光夫 49歳 全 ■ 4 「重苦しく、たどたどしい構成が、書かねばならぬ材料ととりくんだ作者の力闘を感じさせますが、既成の表現にたよりすぎて、効果を弱めています。」 瀧井孝作 66歳 全 ● 3 「「パルタイ」と同じ似たような題材で、かなりハッキリ描いてあるが、ハッキリした描写が却ってウソのようで、何か陳腐な感じがした。」 丹羽文雄 55歳 全 ― 0   井伏鱒二 62歳 全 ― 0   佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 △ 4 「個性を感じた。」 舟橋聖一 55歳 全 ■ 3 「（引用者注：倉橋由美子と共に）政治闘争の中で昔ながらに、小（ルビ：プチ）ブル性をとりあげ、その良心的煩悶を、主題に近い位置で構成（ルビ：コンストラクト）させているのは、いかにも古くさいと思った。」 宇野浩二 68歳 全 ■ 5 「手がこんでいるように見えるけれど、ごたごたしていて、それだけでも、よくない。」

他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 吉村謙三 「白い夏」

吉村謙三31歳×各選考委員　 「白い夏」 短篇 110枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上靖 53歳 全 ■ 3 「印象に残った。素直な好感の持てる作品ではあるが、読後感は弱かった。」 石川達三 55歳 全 ■ 4 「異常な主題を描くこと自体は、文学の幅のひろさであって、私は反対しないが、その異常さに圧倒されて、作品自体が崩れて行く危険もある。」 中村光夫 49歳 全 ― 0   瀧井孝作 66歳 全 △ 2 「少女小説のような所があるが、素直な筆致は佳かった。」 丹羽文雄 55歳 全 ■ 3 「最後にお菊さんが殺されるが、書きすぎである。あれがなかったら、一本の感銘はすなおにとおったであろう。」 井伏鱒二 62歳 全 ― 0   佐藤春夫 68歳 全 ― 0   永井龍男 56歳 全 ― 0   舟橋聖一 55歳 全 ― 0   宇野浩二 68歳 全 ― 0	他の候補作 北杜夫 「夜と霧の隅で」 川上宗薫 「憂鬱な獣」 倉橋由美子 「パルタイ」 なだいなだ 「神話」 石井仁 「類人獣」 童門冬二 「暗い川が手を叩く」 岡田睦 「夏休みの配当」 古賀珠子 「魔笛」