第59回

第58回第60回

昭和43年/1968年上半期 昭和43年/1968年7月22日決定発表／『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号選評掲載

選考委員　 三島由紀夫 43歳 石川達三 63歳 井上靖 61歳 石川淳 69歳 川端康成 69歳 丹羽文雄 63歳 舟橋聖一 63歳 瀧井孝作 74歳 大岡昇平 59歳 永井龍男 64歳 中村光夫 57歳 選評総行数　 21 33 18 22 44 23 65 43 34 25 33 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 大庭みな子　「三匹の蟹」 80枚 37歳 評 △ 9 □ 11 ○ 9 △ 11 ◎ 38 △ 11 ■ 14 ◎ 25 ○ 17 ◎ 12 ◎ 14 丸谷才一　「年の残り」 129枚 42歳 評 ◎ 8 □ 8 □ 7 ○ 11 △ 7 △ 2 ◎ 18 △ 5 ◎ 23 ■ 8 □ 11 山田稔　「幸福へのパスポート」 70枚 37歳 評 ― 0 ― 0 △ 4 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 7 ― 0 △ 4 △ 2 ■ 5 後藤明生　「Ｓ温泉からの報告」 121枚 36歳 評 ― 0 ■ 7 ― 0 ― 0 ― 0 ○ 4 ■ 5 ― 0 ― 0 △ 2 ■ 4 斎藤昌三　「拘禁」 66枚 27歳 評 ○ 6 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 5 ― 0 ― 0 △ 5 ■ 4 加賀乙彦　「くさびら譚」 92枚 39歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 8 ■ 8 ― 0 ― 0 △ 7 山田智彦　「予言者」 96枚 32歳 評 ― 0 ■ 7 ― 0 ― 0 ― 0 △ 6 △ 4 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 杉田瑞子　「北の港」 164枚 38歳 評 ― 0 △ 10 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 △ 3 ■ 4 ― 0 ― 0 ■ 3                     欠席 年齢/枚数の説明   見方・注意点

三島由紀夫43歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題一つの苦い観点　総行数21　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 △ 9 「最後の二行が巧いし、短篇として時間の錯綜する構成も巧い。」「ただパーティーの会話が、嫌悪と倦怠を読者に伝える手段であるにしても、作者が得意になっているという感じが鼻をつく。しかし、ともあれ、才気ある作品であった。」 丸谷才一 42歳 全 ◎ 8 「（引用者注：最後に残った「年の残り」と「三匹の蟹」のうち）私は「年の残り」のほうを買った。」「いかにも花のない作家であるが、今度の作で何かを確実に把握したという感じがある。人生、老、病、死の不可知を扱って、それを不可知のままで詠嘆に流しているのではなく、作家としての一つの苦い観点を確保したと思われる。」 山田稔 37歳 全 ― 0   後藤明生 36歳 全 ― 0   斎藤昌三 27歳 全 ○ 6 「（引用者注：受賞作の）他に私は（引用者中略）推した。この何ともいえない錯雑した、もってまわった文体には、何かある時代の普遍性と肉感性がある。」「ただ、二、三、プロットに不合理なところがあるのは遺憾であった。」 加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

石川達三63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題不満が残る　総行数33　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 □ 11 「（引用者注：当選に）半ば賛成しながらも不満が残った。」「異国の匂いがあり、それにふさわしい文体の魅力があるが、平野謙も指摘しているように（毎日新聞）冷たい見方をすればいろいろと疑問がある。」「この人はこれから先が苦しいのではなかろうかという推測があったが、私もその危険はあると思う。」 丸谷才一 42歳 全 □ 8 「（引用者注：当選に）半ば賛成しながらも不満が残った。」「すでに一家を成していると言ってもいい。」「むずかしい主題と取り組んで相当に書き上げているが、第四章は無くもがなであった。こういう所にこの作者の才能の先走りが見られる。」 山田稔 37歳 全 ― 0   後藤明生 36歳 全 ■ 7 「近頃ときおり感じるのは、作品のなかに用も無いのに描かれている猥褻な性描写である。「Ｓ温泉からの報告」にもそれらしいものがある」 斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ■ 7 「近頃ときおり感じるのは、作品のなかに用も無いのに描かれている猥褻な性描写である。（引用者中略）「予言者」の中にもある。」 杉田瑞子 38歳 全 △ 10 「近頃ときおり感じるのは、作品のなかに用も無いのに描かれている猥褻な性描写である。（引用者中略）「北の港」にもそれがある。」「通俗だという理由で簡単に斥けられたが、その事とは別に、一種の量感があり、面白くもあった。」   「技術的にはいろいろ優れた作品もあるけれども、作品の大きさ、量感という点ではいずれも落第だとしか思われなかった。私は、（これは私の癖であるが……）小器用にまとめた小さな小説というものは、いくら書いても仕様がないと思っている。」

他の選考委員 三島由紀夫 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

井上靖61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題目立った二篇　総行数18　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ○ 9 「発表当時余りにも世評が高かったので、銓衡委員会では自然にきびしい採点になったように思う。併し、この作品に見る文学的資質は相当なものであり、はっきりと設定した主題に向って、細部にわたって一つ一つ効果を計算しながら書いて行くところはみごとであると思う。」 丸谷才一 42歳 全 □ 7 「この作家のものでは一番いいものかと思う。小説を作って行く才能は目立ってもおり、光ってもいるが、それが邪魔になっているところもある。」 山田稔 37歳 全 △ 4 「素直にけれんなく書かれていたと思った。作品としては破綻もあり、ひとりよがりのところもあるが、作品の底に見える作者の眼は澄んでいた。」 後藤明生 36歳 全 ― 0   斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

石川淳69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題ざつと一筆　総行数22　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 △ 11 「世評すこぶる高いように聞いたが、さほどにはおぼえない。ただ外国の生活を叙しながら、そこに登場する外国人がわれわれにとってまんざら赤の他人とも見えず、もとは英語であるべき会話がかえって耳に近くきこえるところは、たくまざる技巧の効果か。」「作者がどうであろうと、この主人公と相似の位置から小説を書き出すことは、読者であるわたしの気に入らないことではない。」 丸谷才一 42歳 全 ○ 11 「むしろ賞のほうが遅れて出たともいえるだろう。」「前二作には見られなかった老年の世界を組みあげて、趣向もだいぶ手がこんで来ている。これは手がこみすぎたという見方もありうるだろうが、作者の制作体験としては、いささかの無理は押し切って書いてしまったほうが衛生によろしいようである。」「丸谷君の力量は一応ここにさだまったものと見える。」 山田稔 37歳 全 ― 0   後藤明生 36歳 全 ― 0   斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

川端康成69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題決めて迷わず　総行数44　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ◎ 38 「「三匹の蟹」と決めて迷わず、迷わせてくれるような作品をほかに見なかった」「あのように暮し、あのように会話し、あのように性をするのは、今日の一つの流れのうたかたに浮いて、まあ時代思潮の一端に軽くでも触れていると言っていい。このような小説が現在世界の方々にあることは誰も知っているが、これほど形に現わした小説は、まだ日本であまり見ないようだ。それだけでも芥川賞に価する。才能もある。」 丸谷才一 42歳 全 △ 7 「（引用者注：「三匹の蟹」と）合わせて授賞することにはもとより賛成ではないが、好意を寄せておいてもよいと消極的に承認した。芥川賞としてはめずらしく、作者の人柄の話まで出ては、好意も増すわけだが、これはどうか。」 山田稔 37歳 全 ― 0   後藤明生 36歳 全 ― 0   斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

丹羽文雄63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題ショッキングな作　総行数23　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 △ 11 「気が利いたショッキングな作品だ。」「省略しすぎたせいか、前半の会話が下手な翻訳をよむようであったが、後半は水際立って巧みである。」 丸谷才一 42歳 全 △ 2 「最近の三作の中ではいちばんよかった。その力量はすでに既成作家なみである。」 山田稔 37歳 全 ― 0   後藤明生 36歳 全 ○ 4 「八篇の中で好きだったのは、（引用者中略）「Ｓ温泉からの報告」であった。井伏君に似たところがあると思ったが、そのユーモアなところは作者の本質的なものであることが判った。」 斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 △ 6 「こわくなった。反省が多すぎてうるさいのが雑だが、何でもない若いサラリーマン夫婦と母親の日常生活を描いて心に残るものがあった。」 杉田瑞子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

舟橋聖一63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題丸谷才一をとる　総行数65　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ■ 14 「むしろ世評の甘さに驚いた。」「私は一般の好評を向うにまわして、敢て評価出来なかった。殊に最後の結びは、平凡な余情小説のタイプだ。桃色シャツの男も書けていないし、二十ドルを取られた話も、作為でしかないようだ。ただ、いいと思ったのは、在米日本人が日本人に好かれず、主人公自身もいやだと言っている点に正直な作者の素顔がのぞかれた。」 丸谷才一 42歳 全 ◎ 18 「（引用者注：最後に残った「年の残り」と「三匹の蟹」のうち）私は丸谷を推した。」「横光さんの初期の作品を思わせるような文体の綾も捨て難い。」「この前は、大岡委員の、「丸谷はもう芥川賞でもあるまい」という判断で見送られたことがある。今度もそういう意見が出たらば、三回も予選を通過させた文春予選係の意向を糺したいと思っていたが、今度は大岡氏が最初から丸谷推挙にまわったので、ことなきを得た。」 山田稔 37歳 全 ■ 7 「書き出しがギクシャクして調わない。」「フランスの結婚紹介所へ申込み、それが詐欺であったという話題は、ユーモラスで面白い。むしろそこを中心に追及したらどうだったろうか。」 後藤明生 36歳 全 ■ 5 「最初から思わせぶりがあって、読者はよもやにひかれるが、案外結果が凡庸なので、すかされたような気になる。」「団体の婆さんたちと混浴の場面は不必要だろう。」 斎藤昌三 27歳 全 ■ 5 「主人公とバク同青年との関係の追及が足りない。」「最後の死臭は読む者に嘔吐感を催させるほどに迫力があるが、私もたまらなかった。あまりにも美しさが欠けていると思った。」 加賀乙彦 39歳 全 ● 8 「殆んど銓衡委員の大部分がこれを敬遠した。」「小説に於ける精神病というものは、それだけで鬼面人を驚かすものを持っている。加賀氏のそれも精神病にもたれすぎている。」 山田智彦 32歳 全 △ 4 「霊媒という材料に抵抗をおぼえたが、その帰るさ、夜の女の宿に連れ込まれ、押入れに入れた娘の泣声に錯覚を感じるところは、ちょっとしたショックである。」 杉田瑞子 38歳 全 △ 3 「なかなか達者で、丹羽委員一人これを支持したが、私も一気に読んで、好意が持てた。然し、編年風に女の一生を書いたフォルムは陳腐だ。」   「候補作八篇は、第一次銓衡から不合格になるものがなかった。これは近年珍しい。」

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

瀧井孝作74歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題希有の文才　総行数43　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ◎ 25 「海外居住者の退屈、無聊、孤独、死にたいほどの寂寥が、私にはよくわかって、この作に感心した。」「この無内容な時間を何とか過ごさねばならない、やりきれなさが、読みながら実に感じられる小説だ。」「描かれたアメリカ人も他の国籍人も、皆んな根無し草のようで、ひどいものだ。（引用者中略）こんな根無し草の人人の多い風俗に注目して描いた小説だ。」「私は、このひとは、希有の文才だと思った。」 丸谷才一 42歳 全 △ 5 「丸谷氏の作は前に二つ読んだが、こんどのこれがまあ出来がよかった。」 山田稔 37歳 全 ― 0   後藤明生 36歳 全 ― 0   斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ■ 8 「文章が平明でわかりやすいが、無造作で磨きの足りない雑文、早い筆のように見えた。」 山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ■ 4 「読んでは面白かった。唯、作者が女主人公を祭り上げて描いて、中間小説のような甘い感じがした。」

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 大岡昇平 永井龍男 中村光夫

大岡昇平59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題丸谷氏に二重マル　総行数34　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ○ 17 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「その流動的な文体と、ソフィストケイトされた会話に、いいようのない魅力がある。否むことの出来ない才能の刻印があり、これも逸するわけに行かない。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」 丸谷才一 42歳 全 ◎ 23 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「老人の心理がよく描けており、人間の生について、根源的な問いを発している。」「この作品のテーマの捉え方は、明らかに氏の作家としての個性的な核に根ざしている。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」 山田稔 37歳 全 △ 4 「よいと思った。」「設定自身に面白味があるのだが、作者は主題を十分こなせなかったようである。劇人物の扱いが少し粗末である。」 後藤明生 36歳 全 ― 0   斎藤昌三 27歳 全 ― 0   加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ― 0     「大庭みな子氏の「三匹の蟹」も「群像」新人賞受賞作品であり、すでに世評が定っている。それに重ねて授賞出来るのは、芥川賞が普通の新人賞より一段上の権威があるからである。」

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 永井龍男 中村光夫

永井龍男64歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題純粋な作　総行数25　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ◎ 12 「評判が高かったので、おのずと身構えて読む形になったが、読後の印象は今回の候補作中もっとも純粋であった。」「会話が拙劣だという評が出たが、これは英文小説式の「彼は云った」「彼女は云った」の小うるさい記述が、前後の混乱を呼んだので、会話そのものの拙さではなかろう。」「いずれにせよ、日本文としては整理の必要がある。」「この作品に、私は投票した。」 丸谷才一 42歳 全 ■ 8 「構図に念を入れた作品だが、これでもかこれでもかの画策に、むしろ直木賞的な才能を感じた。」「桜林堂主人の奇癖にいたっては、私などには鼻持ちならなかった。」 山田稔 37歳 全 △ 2 「とにかく私は選に残した。」 後藤明生 36歳 全 △ 2 「とにかく私は選に残した。」 斎藤昌三 27歳 全 △ 5 「とにかく私は選に残した。」「習作として注目した。（書き出しの「噴水の石縁に腰を下している」二人の姿は、細々と描かれながらちっと判らない。）」 加賀乙彦 39歳 全 ― 0   山田智彦 32歳 全 ― 0   杉田瑞子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 中村光夫

中村光夫57歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題一位「三匹の蟹」　総行数33　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 大庭みな子 37歳 全 ◎ 14 「やはり一番すぐれています。作中人物がみな利口ぶって爪立ちしているのに、作者が半分しか気付いていないのが欠点ですが、女主人公のぎすぎすした不安に現代生活の虚しさが自ずからでています。」「作者の心を正面切て読者になげつけている小説は、（引用者注：候補作中）「三匹の蟹」だけです。」 丸谷才一 42歳 全 □ 11 「（引用者注：「三匹の蟹」への授賞に異議が多かった場合）「年の残り」を推します。」「巧みな語り口のわりに、読後にうける感銘はうすく、老人小説がはやれば、すぐこれだけのものを書く作者の才気にはある危険を感じますが、この作品の出来はわるくないと思います。」 山田稔 37歳 全 ■ 5 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」 後藤明生 36歳 全 ■ 4 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」 斎藤昌三 27歳 全 ■ 4 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」 加賀乙彦 39歳 全 △ 7 「（引用者注：「三匹の蟹」の次点として、「年の残り」か）「くさびら譚」のいずれにするかに大分迷いました。」「よくまとまっていますが、肝腎の先生が気違い（あるいはにせ気違い）になるところで作者が逃げている感じで、印象が弱まってしまいます。」 山田智彦 32歳 全 ■ 3 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」 杉田瑞子 38歳 全 ■ 3 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」

他の選考委員 三島由紀夫 石川達三 井上靖 石川淳 川端康成 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 大岡昇平 永井龍男

大庭みな子37歳×各選考委員　 「三匹の蟹」 短篇 80枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 △ 9 「最後の二行が巧いし、短篇として時間の錯綜する構成も巧い。」「ただパーティーの会話が、嫌悪と倦怠を読者に伝える手段であるにしても、作者が得意になっているという感じが鼻をつく。しかし、ともあれ、才気ある作品であった。」 石川達三 63歳 全 □ 11 「（引用者注：当選に）半ば賛成しながらも不満が残った。」「異国の匂いがあり、それにふさわしい文体の魅力があるが、平野謙も指摘しているように（毎日新聞）冷たい見方をすればいろいろと疑問がある。」「この人はこれから先が苦しいのではなかろうかという推測があったが、私もその危険はあると思う。」 井上靖 61歳 全 ○ 9 「発表当時余りにも世評が高かったので、銓衡委員会では自然にきびしい採点になったように思う。併し、この作品に見る文学的資質は相当なものであり、はっきりと設定した主題に向って、細部にわたって一つ一つ効果を計算しながら書いて行くところはみごとであると思う。」 石川淳 69歳 全 △ 11 「世評すこぶる高いように聞いたが、さほどにはおぼえない。ただ外国の生活を叙しながら、そこに登場する外国人がわれわれにとってまんざら赤の他人とも見えず、もとは英語であるべき会話がかえって耳に近くきこえるところは、たくまざる技巧の効果か。」「作者がどうであろうと、この主人公と相似の位置から小説を書き出すことは、読者であるわたしの気に入らないことではない。」 川端康成 69歳 全 ◎ 38 「「三匹の蟹」と決めて迷わず、迷わせてくれるような作品をほかに見なかった」「あのように暮し、あのように会話し、あのように性をするのは、今日の一つの流れのうたかたに浮いて、まあ時代思潮の一端に軽くでも触れていると言っていい。このような小説が現在世界の方々にあることは誰も知っているが、これほど形に現わした小説は、まだ日本であまり見ないようだ。それだけでも芥川賞に価する。才能もある。」 丹羽文雄 63歳 全 △ 11 「気が利いたショッキングな作品だ。」「省略しすぎたせいか、前半の会話が下手な翻訳をよむようであったが、後半は水際立って巧みである。」 舟橋聖一 63歳 全 ■ 14 「むしろ世評の甘さに驚いた。」「私は一般の好評を向うにまわして、敢て評価出来なかった。殊に最後の結びは、平凡な余情小説のタイプだ。桃色シャツの男も書けていないし、二十ドルを取られた話も、作為でしかないようだ。ただ、いいと思ったのは、在米日本人が日本人に好かれず、主人公自身もいやだと言っている点に正直な作者の素顔がのぞかれた。」 瀧井孝作 74歳 全 ◎ 25 「海外居住者の退屈、無聊、孤独、死にたいほどの寂寥が、私にはよくわかって、この作に感心した。」「この無内容な時間を何とか過ごさねばならない、やりきれなさが、読みながら実に感じられる小説だ。」「描かれたアメリカ人も他の国籍人も、皆んな根無し草のようで、ひどいものだ。（引用者中略）こんな根無し草の人人の多い風俗に注目して描いた小説だ。」「私は、このひとは、希有の文才だと思った。」 大岡昇平 59歳 全 ○ 17 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「その流動的な文体と、ソフィストケイトされた会話に、いいようのない魅力がある。否むことの出来ない才能の刻印があり、これも逸するわけに行かない。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」 永井龍男 64歳 全 ◎ 12 「評判が高かったので、おのずと身構えて読む形になったが、読後の印象は今回の候補作中もっとも純粋であった。」「会話が拙劣だという評が出たが、これは英文小説式の「彼は云った」「彼女は云った」の小うるさい記述が、前後の混乱を呼んだので、会話そのものの拙さではなかろう。」「いずれにせよ、日本文としては整理の必要がある。」「この作品に、私は投票した。」 中村光夫 57歳 全 ◎ 14 「やはり一番すぐれています。作中人物がみな利口ぶって爪立ちしているのに、作者が半分しか気付いていないのが欠点ですが、女主人公のぎすぎすした不安に現代生活の虚しさが自ずからでています。」「作者の心を正面切て読者になげつけている小説は、（引用者注：候補作中）「三匹の蟹」だけです。」

他の候補作 丸谷才一 「年の残り」 山田稔 「幸福へのパスポート」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 斎藤昌三 「拘禁」 加賀乙彦 「くさびら譚」 山田智彦 「予言者」 杉田瑞子 「北の港」

丸谷才一42歳×各選考委員　 「年の残り」 短篇 129枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ◎ 8 「（引用者注：最後に残った「年の残り」と「三匹の蟹」のうち）私は「年の残り」のほうを買った。」「いかにも花のない作家であるが、今度の作で何かを確実に把握したという感じがある。人生、老、病、死の不可知を扱って、それを不可知のままで詠嘆に流しているのではなく、作家としての一つの苦い観点を確保したと思われる。」 石川達三 63歳 全 □ 8 「（引用者注：当選に）半ば賛成しながらも不満が残った。」「すでに一家を成していると言ってもいい。」「むずかしい主題と取り組んで相当に書き上げているが、第四章は無くもがなであった。こういう所にこの作者の才能の先走りが見られる。」 井上靖 61歳 全 □ 7 「この作家のものでは一番いいものかと思う。小説を作って行く才能は目立ってもおり、光ってもいるが、それが邪魔になっているところもある。」 石川淳 69歳 全 ○ 11 「むしろ賞のほうが遅れて出たともいえるだろう。」「前二作には見られなかった老年の世界を組みあげて、趣向もだいぶ手がこんで来ている。これは手がこみすぎたという見方もありうるだろうが、作者の制作体験としては、いささかの無理は押し切って書いてしまったほうが衛生によろしいようである。」「丸谷君の力量は一応ここにさだまったものと見える。」 川端康成 69歳 全 △ 7 「（引用者注：「三匹の蟹」と）合わせて授賞することにはもとより賛成ではないが、好意を寄せておいてもよいと消極的に承認した。芥川賞としてはめずらしく、作者の人柄の話まで出ては、好意も増すわけだが、これはどうか。」 丹羽文雄 63歳 全 △ 2 「最近の三作の中ではいちばんよかった。その力量はすでに既成作家なみである。」 舟橋聖一 63歳 全 ◎ 18 「（引用者注：最後に残った「年の残り」と「三匹の蟹」のうち）私は丸谷を推した。」「横光さんの初期の作品を思わせるような文体の綾も捨て難い。」「この前は、大岡委員の、「丸谷はもう芥川賞でもあるまい」という判断で見送られたことがある。今度もそういう意見が出たらば、三回も予選を通過させた文春予選係の意向を糺したいと思っていたが、今度は大岡氏が最初から丸谷推挙にまわったので、ことなきを得た。」 瀧井孝作 74歳 全 △ 5 「丸谷氏の作は前に二つ読んだが、こんどのこれがまあ出来がよかった。」 大岡昇平 59歳 全 ◎ 23 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「老人の心理がよく描けており、人間の生について、根源的な問いを発している。」「この作品のテーマの捉え方は、明らかに氏の作家としての個性的な核に根ざしている。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」 永井龍男 64歳 全 ■ 8 「構図に念を入れた作品だが、これでもかこれでもかの画策に、むしろ直木賞的な才能を感じた。」「桜林堂主人の奇癖にいたっては、私などには鼻持ちならなかった。」 中村光夫 57歳 全 □ 11 「（引用者注：「三匹の蟹」への授賞に異議が多かった場合）「年の残り」を推します。」「巧みな語り口のわりに、読後にうける感銘はうすく、老人小説がはやれば、すぐこれだけのものを書く作者の才気にはある危険を感じますが、この作品の出来はわるくないと思います。」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 山田稔 「幸福へのパスポート」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 斎藤昌三 「拘禁」 加賀乙彦 「くさびら譚」 山田智彦 「予言者」 杉田瑞子 「北の港」

山田稔37歳×各選考委員　 「幸福へのパスポート」 短篇 70枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ― 0   石川達三 63歳 全 ― 0   井上靖 61歳 全 △ 4 「素直にけれんなく書かれていたと思った。作品としては破綻もあり、ひとりよがりのところもあるが、作品の底に見える作者の眼は澄んでいた。」 石川淳 69歳 全 ― 0   川端康成 69歳 全 ― 0   丹羽文雄 63歳 全 ― 0   舟橋聖一 63歳 全 ■ 7 「書き出しがギクシャクして調わない。」「フランスの結婚紹介所へ申込み、それが詐欺であったという話題は、ユーモラスで面白い。むしろそこを中心に追及したらどうだったろうか。」 瀧井孝作 74歳 全 ― 0   大岡昇平 59歳 全 △ 4 「よいと思った。」「設定自身に面白味があるのだが、作者は主題を十分こなせなかったようである。劇人物の扱いが少し粗末である。」 永井龍男 64歳 全 △ 2 「とにかく私は選に残した。」 中村光夫 57歳 全 ■ 5 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 丸谷才一 「年の残り」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 斎藤昌三 「拘禁」 加賀乙彦 「くさびら譚」 山田智彦 「予言者」 杉田瑞子 「北の港」

後藤明生36歳×各選考委員　 「Ｓ温泉からの報告」 短篇 121枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ― 0   石川達三 63歳 全 ■ 7 「近頃ときおり感じるのは、作品のなかに用も無いのに描かれている猥褻な性描写である。「Ｓ温泉からの報告」にもそれらしいものがある」 井上靖 61歳 全 ― 0   石川淳 69歳 全 ― 0   川端康成 69歳 全 ― 0   丹羽文雄 63歳 全 ○ 4 「八篇の中で好きだったのは、（引用者中略）「Ｓ温泉からの報告」であった。井伏君に似たところがあると思ったが、そのユーモアなところは作者の本質的なものであることが判った。」 舟橋聖一 63歳 全 ■ 5 「最初から思わせぶりがあって、読者はよもやにひかれるが、案外結果が凡庸なので、すかされたような気になる。」「団体の婆さんたちと混浴の場面は不必要だろう。」 瀧井孝作 74歳 全 ― 0   大岡昇平 59歳 全 ― 0   永井龍男 64歳 全 △ 2 「とにかく私は選に残した。」 中村光夫 57歳 全 ■ 4 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 丸谷才一 「年の残り」 山田稔 「幸福へのパスポート」 斎藤昌三 「拘禁」 加賀乙彦 「くさびら譚」 山田智彦 「予言者」 杉田瑞子 「北の港」

斎藤昌三27歳×各選考委員　 「拘禁」 短篇 66枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ○ 6 「（引用者注：受賞作の）他に私は（引用者中略）推した。この何ともいえない錯雑した、もってまわった文体には、何かある時代の普遍性と肉感性がある。」「ただ、二、三、プロットに不合理なところがあるのは遺憾であった。」 石川達三 63歳 全 ― 0   井上靖 61歳 全 ― 0   石川淳 69歳 全 ― 0   川端康成 69歳 全 ― 0   丹羽文雄 63歳 全 ― 0   舟橋聖一 63歳 全 ■ 5 「主人公とバク同青年との関係の追及が足りない。」「最後の死臭は読む者に嘔吐感を催させるほどに迫力があるが、私もたまらなかった。あまりにも美しさが欠けていると思った。」 瀧井孝作 74歳 全 ― 0   大岡昇平 59歳 全 ― 0   永井龍男 64歳 全 △ 5 「とにかく私は選に残した。」「習作として注目した。（書き出しの「噴水の石縁に腰を下している」二人の姿は、細々と描かれながらちっと判らない。）」 中村光夫 57歳 全 ■ 4 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 丸谷才一 「年の残り」 山田稔 「幸福へのパスポート」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 加賀乙彦 「くさびら譚」 山田智彦 「予言者」 杉田瑞子 「北の港」

加賀乙彦39歳×各選考委員　 「くさびら譚」 短篇 92枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ― 0   石川達三 63歳 全 ― 0   井上靖 61歳 全 ― 0   石川淳 69歳 全 ― 0   川端康成 69歳 全 ― 0   丹羽文雄 63歳 全 ― 0   舟橋聖一 63歳 全 ● 8 「殆んど銓衡委員の大部分がこれを敬遠した。」「小説に於ける精神病というものは、それだけで鬼面人を驚かすものを持っている。加賀氏のそれも精神病にもたれすぎている。」 瀧井孝作 74歳 全 ■ 8 「文章が平明でわかりやすいが、無造作で磨きの足りない雑文、早い筆のように見えた。」 大岡昇平 59歳 全 ― 0   永井龍男 64歳 全 ― 0   中村光夫 57歳 全 △ 7 「（引用者注：「三匹の蟹」の次点として、「年の残り」か）「くさびら譚」のいずれにするかに大分迷いました。」「よくまとまっていますが、肝腎の先生が気違い（あるいはにせ気違い）になるところで作者が逃げている感じで、印象が弱まってしまいます。」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 丸谷才一 「年の残り」 山田稔 「幸福へのパスポート」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 斎藤昌三 「拘禁」 山田智彦 「予言者」 杉田瑞子 「北の港」

山田智彦32歳×各選考委員　 「予言者」 短篇 96枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ― 0   石川達三 63歳 全 ■ 7 「近頃ときおり感じるのは、作品のなかに用も無いのに描かれている猥褻な性描写である。（引用者中略）「予言者」の中にもある。」 井上靖 61歳 全 ― 0   石川淳 69歳 全 ― 0   川端康成 69歳 全 ― 0   丹羽文雄 63歳 全 △ 6 「こわくなった。反省が多すぎてうるさいのが雑だが、何でもない若いサラリーマン夫婦と母親の日常生活を描いて心に残るものがあった。」 舟橋聖一 63歳 全 △ 4 「霊媒という材料に抵抗をおぼえたが、その帰るさ、夜の女の宿に連れ込まれ、押入れに入れた娘の泣声に錯覚を感じるところは、ちょっとしたショックである。」 瀧井孝作 74歳 全 ― 0   大岡昇平 59歳 全 ― 0   永井龍男 64歳 全 ― 0   中村光夫 57歳 全 ■ 3 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 丸谷才一 「年の残り」 山田稔 「幸福へのパスポート」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 斎藤昌三 「拘禁」 加賀乙彦 「くさびら譚」 杉田瑞子 「北の港」

杉田瑞子38歳×各選考委員　 「北の港」 中篇 164枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 三島由紀夫 43歳 全 ― 0   石川達三 63歳 全 △ 10 「近頃ときおり感じるのは、作品のなかに用も無いのに描かれている猥褻な性描写である。（引用者中略）「北の港」にもそれがある。」「通俗だという理由で簡単に斥けられたが、その事とは別に、一種の量感があり、面白くもあった。」 井上靖 61歳 全 ― 0   石川淳 69歳 全 ― 0   川端康成 69歳 全 ― 0   丹羽文雄 63歳 全 ― 0   舟橋聖一 63歳 全 △ 3 「なかなか達者で、丹羽委員一人これを支持したが、私も一気に読んで、好意が持てた。然し、編年風に女の一生を書いたフォルムは陳腐だ。」 瀧井孝作 74歳 全 ■ 4 「読んでは面白かった。唯、作者が女主人公を祭り上げて描いて、中間小説のような甘い感じがした。」 大岡昇平 59歳 全 ― 0   永井龍男 64歳 全 ― 0   中村光夫 57歳 全 ■ 3 「興味をもってよみましたが、材料に自信を持ちすぎているか、小説の型に頭をつっこみすぎているかで、」

他の候補作 大庭みな子 「三匹の蟹」 丸谷才一 「年の残り」 山田稔 「幸福へのパスポート」 後藤明生 「Ｓ温泉からの報告」 斎藤昌三 「拘禁」 加賀乙彦 「くさびら譚」 山田智彦 「予言者」