町屋良平（まちやりょうへい）-芥川賞受賞作家｜芥川賞のすべて・のようなもの

芥川賞のすべて・のようなもの

第160回

＝受賞者＝
上田岳弘
町屋良平

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Last Update●[R6]2024/7/31

	Machiya Ryohei
	生没年月日【注】	昭和58年/1983年☆月☆日～
	受賞年齢	35歳
	経歴	東京都台東区生まれ。埼玉県立越ヶ谷高校卒。平成28年/2016年「青が破れる」で第53回文藝賞を受賞。
	受賞歴・候補歴	\|候補\| 第47回文藝賞（平成22年/2010年）「浮気ごころと、京都へゆく」第53回文藝賞（平成28年/2016年）「青が破れる」 \|候補\| 第30回三島由紀夫賞（平成28年/2016年度）『青が破れる』 \|候補\| 第159回芥川賞（平成30年/2018年上期）「しき」 \|候補\| 第40回野間文芸新人賞（平成30年/2018年）『しき』第160回芥川賞（平成30年/2018年下期）「1R(ラウンド)1分34秒」第44回野間文芸新人賞（令和4年/2022年）『ほんのこども』第48回川端康成文学賞（令和6年/2024年）「私の批評」
	サブサイトリンク	文学賞の世界▼全15件

第159回候補

「しき」（『文藝』平成30年/2018年夏季号［5月］）

媒体・作品情報

誌名	「文藝」
巻号	第57巻第2号別表記夏/summer
印刷/発行年月日	発行平成30年/2018年5月1日
発行者等	編集人尾形龍太郎　発行人小野寺優　印刷人北島義俊　印刷所大日本印刷株式会社（東京都）
発行所	株式会社河出書房新社（東京都）
総ページ数	514	表記上の枚数	目次 216枚	基本の文字組（1ページ当り）	29字 ×26行 ×2段
本文ページ	68～135 （計68頁）	測定枚数	235枚

書誌

平成30年/2018年7月・河出書房新社刊『しき』

令和2年/2020年10月・河出書房新社／河出文庫『しき』

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　町屋良平　34歳
選考委員		評価	行数	評言
小川洋子	56歳	■	8	「一番魅力的なのは、つくもだ。読みながら何度も、つくもが主人公ならよかったのに、とつぶやいていた。彼だけが作者の巧みな手さばきから少し外れたところで、勝手気ままに振る舞っていた。」
山田詠美	59歳	■	19	「愛らしい少年たちが魅力的。しかし、あまりにも長過ぎる。そして、アフォリズムめいた箇所が多過ぎる。その大半が、こんな小僧どもに言われたかないよ、という代物。存在の耐えられないポエム感というか。」「そんな中、杉尾少年だけがきらめいていて心魅かれた。」
島田雅彦	57歳	△	15	「学園や地域のディストピア化著しい昨今、ダンスやピアノに打ち込む青春群像をチャーミングな表現で描き出したところに本作の価値がある。」「この作品の中の子たちが狂ったら、どうなるかそれも読みたい気がする。」
川上弘美	60歳	△	12	「推したかった。でも、△でした。長すぎると思います。それは物理的な長さではなく、いわば、小説を読んでいる時間の心理的な長さです。」「行間にある何かをあらわすに関しては、ピカ一の小説でした。」
宮本輝	71歳	●	5	「思春期の少年少女のあとあじのいい青春ドラマの域を出ていなくて、もう一工夫が必要だと感じた。」
高樹のぶ子	72歳	―	0
吉田修一	49歳	△	21	「昨今のエアバッグとか自動ブレーキではないが、ぶつかりたくてもどうしてもぶつかれない現代の若者の距離感が、説明的ではなく見事に描かれている。動画投稿サイトの「踊ってみた」シリーズなど小道具の扱いも巧みで、次作を期待したい。その際は是非、この若者たちの間にあるエアバッグの中身を教えてほしい。」
堀江敏幸	54歳	○	15	「十六歳の若者たちの悩みどころをうまく拾いあげ、ツッコミを入れる正確な間と箴言めいたコメントの切れ味。やや思弁的にすぎる箇所があるとはいえ、全篇にただようユーモアと結末の微妙な脱力感が、この作品を前向きなものにしている。」
奥泉光	62歳	◎	23	「一番推した」「「かれ」と表記される主人公を中心に、複数の人物へ視点が移り変わる「多元」の技法を使うことで、高校生の世代の人たちの世界感覚、時間の移ろいが、たしかな手触りとともに定着されている。」「平凡な人たちを平凡なままに輝かせることは、近代以降の小説のひとつの課題であるが、その課題に応えうる方法の可能性を自分は感じた。」
選評出典：『文藝春秋』平成30年/2018年9月号

第160回受賞

「1R(ラウンド)1分(ぷん)34秒(びょう)」（『新潮』平成30年/2018年11月号）

媒体・作品情報

誌名	「新潮」別表記表紙「The Shincho Monthly」「今年114年目の文芸誌」併記
巻号	第115巻第11号別表記11月号/1366号
作品名別表記	目次ルビ有り「ラウンド」
印刷/発行年月日	発行平成30年/2018年11月7日　発売平成30年/2018年10月6日
発行者等	編集兼発行者矢野優　印刷者北島義斉　印刷所大日本印刷株式会社（東京都）
発行所	株式会社新潮社（東京都）
総ページ数	340	表記上の枚数	表紙・目次 180枚	基本の文字組（1ページ当り）	27字 ×24行 ×2段
本文ページ	87～144 （計58頁）	測定枚数	177枚

書誌

平成31年/2019年1月・新潮社刊『1R1分34秒』

『文藝春秋』平成31年/2019年3月号

令和3年/2021年12月・新潮社／新潮文庫『1R1分34秒』

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　町屋良平　35歳
選考委員		評価	行数	評言
高樹のぶ子	72歳	△	12	「見えざる世界を相手に、自らの身体を追い詰めることで自己発見し武装する、というのは古今東西、変わらぬ若者の姿なのだろう。」「身体に限定された繰り返しの表現が、遮二無二に繰り出されるパンチを想起させる。確信的に、書きたいことだけを書いている。」
小川洋子	56歳	△	16	「彼（引用者注：主人公）が初めてウメキチとトレーニングするシーンの、肉体を通した緻密な会話は忘れがたい。頭脳から遠く離れた場所で、体は圧倒的な美を表現する。言葉の届かないところにこそ書かれるべきものがある、という真実を証明している。」
島田雅彦	57歳	○	11	「安部公房の短編『時の崖』を思わせる試合中のボクサーの意識の流れが圧巻である。」「技術論と友情のブレンド比も絶妙で、主人公とウメキチのホモ・ソーシャル関係に胸キュンとなる読者も多かろう。」
吉田修一	50歳	○	28	「平坦な道を歩いていると、ふと詩の欠片が落ちていたような驚きがある。それも仰々しいアフォリズムではない。普段私たちが使い捨てる言葉が、この作者にかかると、小さな花になる。そしてこの花は、実際の花と同様、自分が花だと気づいていないから尚、美しい。」
山田詠美	59歳	◎	18	「文章全体から、この作者、そして登場人物たちの「引くに引けない感じ」が漂って来て胸にせまる。途中、いくつもしびれるフレーズが出て来て、思わず拍手したくなった。」「（引用者注：「ニムロッド」と共に）推した。」
奥泉光	62歳	□	16	「プロボクサーの日常を徹底して描くことが過剰さを生んで、読者に言葉が迫ってくる。」「同じ作者の前作「しき」ではやや甘さが目立ったが、これは作者の個性なのであって、今回の作品では、ストイックにトレーニングを重ねる主人公を描くなかで、「甘さ」がうまく生かされた。」
宮本輝	71歳	△	11	「プロボクサーとしてはたぶん今後多くは望めないであろう青年の（引用者中略）ストイックさ、過酷さをひたむきに書きつづけて最後まで読ませる。」「今後の可能性を感じて授賞に反対しなかった。」
川上弘美	60歳	◎	8	「小説の中に書かれていない登場人物たちの会話を、行動を、行った場所を、食べたものを、あざやかに想像しながら読みました。もうそれだけで、いい小説だといえるのではないでしょうか。一番に推しました。」
堀江敏幸	55歳	○	19	「規定要素の安易な並びがなかった。冴えないボクサーである「ぼく」の語りは、負けた「試合の記憶とビデオの自分の動きとの符号と差異」を、また、ありえたかもしれない結果を幾度も想い描きながら、安楽に負けたいという気持ちを徐々に封じて、厳しい減量に耐える。」「自身を借り物ではない「駄目な飛行機」にしたうえでその先を見ようとする「ぼく」の倫理に、信頼を寄せたい。」
選評出典：『文藝春秋』平成31年/2019年3月号

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