
選評の概要
144. 145.146. 147. 148. 149. 150.
151. 152. 153. 154. 155.
156. 157. 158. 159. 160.
161. 162. 163. 164. 165.
166. 167. 168. 169. 170.
171. 172. 173.
生没年月日【注】 | 昭和36年/1961年3月13日~ | |
在任期間 | 第144回~(通算15年・30回) | |
在任年齢 | 49歳9ヶ月~ | |
経歴 | 東京都生まれ、神奈川県川崎市育ち。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒。大学在学中に作家デビュー。 | |
受賞歴・候補歴 |
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芥川賞候補歴 | 第89回候補 「優しいサヨクのための嬉遊曲」(『海燕』昭和58年/1983年6月号) 第90回候補 「亡命旅行者は叫び呟く」(『海燕』昭和58年/1983年10月号) 第91回候補 「夢遊王国のための音楽」(『海燕』昭和59年/1984年6月号) 第93回候補 「僕は模造人間」(『新潮』昭和60年/1985年2月号) 第95回候補 「ドンナ・アンナ」(『新潮』昭和61年/1986年4月号) 第96回候補 「未確認尾行物体」(『文學界』昭和61年/1986年11月号) ![]() |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
羽田圭介 | ![]() |
◎ | 22 | 「強く推した。ほとんど純文学伝統の闘病記かと思うほどに、死にそうになる自己の観察を徹底しており、その几帳面な描写はマルキ・ド・サドの文体を想わせもするし、自己懲罰を通じて、イエスの受難を我が身に引き受けようとするカソリックの求道小説や記録を目指すアスリートの日記に似ていないことはない。」「SMという使い古された素材を選んだ時点でアウェイの戦いを強いられ、SMには一家言ある選考委員たちの厳しいチェックに晒されてしまった。」 |
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△ | 21 | 「現実の出来事は誰かの関心を惹こうとか、物語としての説得力を高めようという意図など全く入り込む余地がない。柴崎友香はそうした「ぶっきらぼう」な現実の前で謙虚でいることを選ぶ。これはなかなか真似ができないことである。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年9月号![]() |
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
崔実 | ![]() |
◎ | 28 | 「完全アウェイの環境下で、自分にふさわしい文化を獲得しようと、試行錯誤のパズルを繰り返すジニの姿こそが世界標準の青春なのかもしれない。」「受賞は逃したが、『ジニのパズル』はマイナー文学の傑作であることは否定できない。」 |
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△ | 25 | 「セックス忌避、婚姻拒否というこの作者にはおなじみのテーマを『コンビニ人間』というコンセプトに落とし込み、奇天烈な男女のキャラを交差させれば、緩い文章もご都合主義的展開も大目に見てもらえる。巷には思考停止状態のマニュアル人間が自民党の支持者くらいたくさんいるので、風俗小説としてのリアリティはあるが、主人公はいずれサイコパスになり、まともな人間を洗脳してゆくだろう。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成28年/2016年9月号![]() |
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
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○ | 17 | 「標準語の語り手と東北弁の桃子さんの声が交錯する二重構造が効果的で、東北ルーツの女の一生を過去と現代を自在に往還しながら、時に思弁的、時にセンチメンタルに語り尽くしている。」 | |
宮内悠介 | ![]() |
○ | 21 | 「人は記憶の中では過去のフラッシュバックをしばしば経験するし、映画では時空をシャッフルする。そんな「ソラリス」的な体験を限られた枚数で鮮やかに切り取る佳品だが、長編の序章のような印象を与えたのは不利だった。」「芥川賞でも直木賞でもとっとと獲らせてしまえと思ったが、残念な結果になった。」 |
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△ | 21 | 「『百年泥』のディテールはインド社会の多様性を反映し、ワンダーランドの様相を呈しており、地域研究の成果として出色のものである。」「海外体験のバリエーションが増えた現代、ルポルタージュのジャンルはかなり豊かになって来たが、小説との境界線を何処に引くべきかといったことを考えさせられた。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成30年/2018年3月号![]() |
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
李琴峰 | ![]() |
○ | 12 | 「私の今回の一押しだった。台湾人と日本人の女友達の再会と出会った頃の回想で構成される淡く、儚く、実らない同性愛的関係を、日本と台湾双方への愛着を絡めた佳作となっている。ただ、日本語を使い、台湾の食文化や名物を紹介するだけでは気の利いたガイドブックにとどまってしまう。」 |
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△ | 23 | 「商品としては実にウエルメイドで、平易な文章に、寓話的なストーリー運びの巧みさ、キャラクター設定の明快さ、批評のしやすさなど、ビギナーから批評家まで幅広い層に受け入れられるだろう。だが、エンターテイメント・スキルだけでは「物足りない」のも事実である。」 | |
「自分の周囲の観察を通じて、異変や深淵や真実を発見してしまうのが小説の醍醐味なので、身辺雑記はある意味、王道でもある。今回の候補作五編もまたそのカテゴリーに当てはまる。」「選考委員たちがつい「物足りない」という感想を漏らしてしまうのは、語り手が欲望や悪意を抑え、「やれやれ」と行儀よく、現実を回避してしまうからではないか。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』令和1年/2019年9月号![]() |
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
九段理江 | ![]() |
◎ | 28 | 「母と娘の対立は、迷信や無知との戦いでもあり、影響の不安をめぐる感情的軋轢でもあるので、父と息子におけるイデオロギー対立のように単純には解決できない。そこにAIなどが登場して、このテーマにまつわる達観を披露したりするのだが、これもユニークな新機軸となっている。母と娘の対立に無関係なおっさん三人がこの力業を強く推した」 |
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△ | 19 | 「この作品はメッセンジャーとしての日常を描く前半と刑務所で懲役刑に服す後半から構成される。両者の間には因果や必然性が欠落しているのだが、現在巷で流行る理不尽極まる突発的犯罪の背後に見え隠れするものを確実に捉えている。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和4年/2022年3月号![]() |
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
安堂ホセ | ![]() |
◎ | 30 | 「「ブラックミックス」に対するステレオタイプと偏見に対し、ゲリラ戦を仕掛けたような作品である。」「奇想天外なドタバタ劇の中で、増殖するジャクソンたちの意識の流れがリズムよく絡み、ドライブ感を高めてゆく。」「荒削りで、破格だが、新たなウェーブをもたらしそうな気配が濃厚なので先物買いしたが、受賞には至らず残念。」 |
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○ | 13 | 「何処か心地よい室内での日常的営みを大胆な筆致で描いたフェルメールを思い出させるが、技法は正攻法なので、完成度の高いエチュードという印象。」 | |
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△ | 14 | 「人は己が無力を感じながらも、絶望的状況にひたすら耐え、誠実を尽くそうとするその態度によって救われることもある。それを態度価値というのだが、本作のテーマはこれに尽きる。ただ、美談はしばしば、現実のネガティブな部分を隠してしまう。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和5年/2023年3月号![]() |
選考委員 島田雅彦 ![]() |
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候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
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○ | 21 | 「「結合双生児」の姉妹の「二心同体」における意識の様態を描くことを通じて、具体的なイメージを提起している。」「『ブラック・ジャック』のような医学ファンタジーとして読まれるべきだが、同時に本作はほのぼのしたファミリー・ロマンスでもあり、マッド・サイエンス的テイストを持ちながら、ヒューモアの伏流が貫かれている。」 | |
向坂くじら | ![]() |
○ | 18 | 「文学の王道ともいうべき死者との交流を百合テイストで描きながら、タイトルの四重否定に見られるように、愛憎の間を激しく揺れ動く。」「もつれた感情が乱反射し、変化してゆく過程をコトバの変奏曲として描き出した本作を高く買う。」 |
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△ | 14 | 「会社と山の対比は、日常と非日常、組織と自然の対比であり、重ね合わせになっているのだが、登山の細部を丹念になぞったオーソドックスな「自然主義文学」をベタに書いて来たところが評価された。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和6年/2024年9月号![]() |