松永Ｋ三蔵（まつながけーさんぞう）-芥川賞受賞作家｜芥川賞のすべて・のようなもの

芥川賞のすべて・のようなもの

第171回

＝受賞者＝
朝比奈　秋
松永Ｋ三蔵

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Last Update●[R6]2024/9/21

	Matsunaga K Sanzo
	生没年月日【注】	昭和55年/1980年～
	経歴	茨城県生まれ。関西学院大学文学部卒。令和3年/2021年「カメオ」が第64回群像新人文学賞優秀作となる。
	受賞歴・候補歴	第64回群像新人文学賞［優秀作］（令和3年/2021年）「カメオ」第171回芥川賞（令和6年/2024年上期）「バリ山行」
	サブサイトリンク	文学賞の世界▼全2件

第171回受賞

「バリ山行(さんこう)」（『群像』令和6年/2024年3月号）

媒体・作品情報

作品名別表記	「GUNZOU」併記
印刷/発行年月日	発行令和6年/2024年3月1日　印刷令和6年/2024年2月7日　発売令和6年/2024年2月7日
発行者等	編集人戸井武史　発行人森田浩章　印刷人麿秀晴　印刷所 TOPPAN株式会社（東京都）
発行所	株式会社講談社（東京都）
総ページ数	564	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	26字 ×24行 ×2段
本文ページ	84～167 （計84頁）	測定枚数	252枚

書誌

令和6年/2024年7月・講談社刊『バリ山行』

『文藝春秋』令和6年/2024年9月号

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　松永Ｋ三蔵　44歳
選考委員		評価	行数	評言
平野啓一郎	49歳	◎	31	「私が推したのは、『バリ山行』だった。」「非日常の「リアル」な舞台が、遠い彼方ではなく、六甲山という日常に隣接する場所に設置されている点は、登場人物の妻鹿と共に作者の手柄である。」「文学的な実験性という点では、物足りなさもあるが、この完成度は立派であり、多くの読者に愛される作品であろう。」
島田雅彦	63歳	△	14	「会社と山の対比は、日常と非日常、組織と自然の対比であり、重ね合わせになっているのだが、登山の細部を丹念になぞったオーソドックスな「自然主義文学」をベタに書いて来たところが評価された。」
吉田修一	55歳	○	26	「何よりこの小説は攻撃的でない。自分の言葉で誰かを言い負かそうとしない。」「文章のリズムも素晴らしかった。妻鹿さんという人生の先輩について、一歩ずつ、時に心を躍らせながら、時に苛立ちを露わにしながら、それでも一歩ずつついていく主人公の足音が読後も続くようだった。」
小川洋子	62歳	△	11	「妻鹿さんが忘れがたい。」「今も六甲山のバリエーションルートを黙々と歩いている妻鹿さんの後ろ姿が、目に浮かんでくる。」
山田詠美	65歳	◎	14	「岩の苔を覆う水からあおい匂いが漂って来るような描写。奇をてらったりしない正攻法の書き方にしびれた。いけすかない服部課長が落ちぶれてくれたようで、快哉。」
川上弘美	66歳	○	14	「好きな作品でした。この作者は、「サンショウウオ」の作者が出来ることが、きっと出来ない。」「けれど、その「出来ないこと」が、それぞれの小説を書かせてくれたのだし、書き続けることによって、出来なかったことが少しずつ出来るようになってゆくのではないでしょうか。」
松浦寿輝	70歳	○	44	「（引用者注：「サンショウウオの四十九日」と共に）心惹かれる結果となった。」「とりたてて文学的な実験だの形式的な冒険だのを試みているわけでもない平易な作品で、わたしは本来、この種のべたな小説には点が辛いほうだが、「私」と「妻鹿さん」とのあいだに友情の絆がいったんは結ばれかけ、しかしそれがただちにぷっつり切れてしまうこの哀切な物語には、ほろりとせずにはいられなかった。後ろ姿ばかり見せているような「妻鹿さん」の孤独な人物像にも、登山の情景の的確でなまなましい細部にも心を打たれた。」
奥泉光	68歳	△	9	「かたりを含め小説的企みには乏しく、しかしかたり手の男の心情と山の情景描写を、それこそバリ山行のごとく、愚直なまでに真っ直ぐ丹念に重ねて物語を進めていく姿勢には好感を抱いた。」
川上未映子	47歳	■	17	「山と日常の対比、異質さを感じさせる人物との関わりを契機にゆらぐ意識など、構成も展開も順接に過ぎる。人生も登山も感情も、ついぞ一般ルートの常識から離れることなく／離れられず、バリエーションルートへの嫌悪と憧れを含んだ距離を常に推し測ろうとする試みとして読めば、この作品固有の批評性も見こめるか。」
選評出典：『文藝春秋』令和6年/2024年9月号

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