生没年月日【注】 | 昭和29年/1954年3月18日~ | |
在任期間 | 第162回~(通算5年・10回) | |
在任年齢 | 65歳9ヶ月~ | |
経歴 | 東京都文京区生まれ。東京大学教養学部教養学科フランス分科卒、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。大学教授のかたわら、詩人・評論家としても活動。 | |
受賞歴・候補歴 |
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芥川賞候補歴 | 第121回候補 「幽(かすか)」(『群像』平成11年/1999年3月号) 第123回受賞 「花腐し」(『群像』平成12年/2000年5月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 松浦寿輝 67歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
九段理江 | 31歳 |
◎ | 49 | 「父不在の状況下での母=娘の葛藤は、日常心理を逸脱した一種異様な倒錯性をまとっており、フロイト理論も何理論も通用しないきわめて特異な心理小説が試みられていると思われた。」「聡明な作者が世界に向けた知的悪意が全ページをうっすらと覆っていることから来ると思われるこの後味の悪さに、しかしわたしは新しい文学の可能性を感じた。」「ただ、(引用者中略)本作が人物と関係を提示しただけに終わっていて、物語を駆動する出来事やアクションを欠いている点に物足りなさが残ることも事実だ。」 |
31歳 |
△ | 39 | 「自転車事故も暴行事件も鮮やかな迫真感とともに描出され、意味する言葉と意味されるアクションが間然するところなく合致しつつ、滑らかな律動で回っていく。」「しかし、その滑らかさは自然主義リアリズムの古めかしさと裏おもてで、そこから現代のプロレタリア文学かという感想も浮かぶ。」「わたしは前作「小隊」の、軍事ジャーゴンをしこたま詰めこんだ文章が醸し出す強烈な「異化効果」のほうを高く買う。」 | |
「「Schoolgirl」が○、「ブラックボックス」と「皆のあらばしり」が△――というのが今回のわたしの判定である。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』令和4年/2022年3月号 |
選考委員 松浦寿輝 68歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
34歳 |
◎ | 48 | 「候補作五篇のうち(引用者中略)ずば抜けて面白い。閉じた小集団内部での人間関係の力学が繊細な筆致で活写され、どこか横光利一「機械」を思わせる。」「圧倒的に凄いのはいつもにこにこしている「芦川さん」の人物像の造型だ。」「打算的な女と煮え切らない男を突き放して見ている作者の視線は冷酷だが、同時にその距離感によって二人を優しく赦している気配もある。」 | |
鈴木涼美 | 39歳 |
○ | 26 | 「心理を、描写するのではなくアクションの連鎖に語らせてゆくハードボイルドな書きぶりは堂に入ったものである。」「選考委員会では臨終の床にある母とのあいだに和解が成り立つのが安易だという意見が出たが、この場面で主人公が自分の母を赦しているとは、わたしには読めなかった。」「「ギフテッド」の同時受賞も――という可能性が浮上すれば積極的に支持するつもりでいた」 |
選評出典:『文藝春秋』令和4年/2022年9月号 |
選考委員 松浦寿輝 69歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
児玉雨子 | 29歳 |
◎ | 36 | 「候補作五篇のうち、(引用者中略)もっとも心惹かれた。」「児童ポルノや漫画の二次創作といったきわものめいた主題に依りながら、思春期から青春期に向かってどう離陸するかという意外に古風な成長物語の、新鮮な一変奏が篤実に追求されていると感じた。ただ、聡明な作者によって隅々まで知的に造形されているぶん、宇佐美りん「推し、燃ゆ」にあったような無意識的な欲動の奔騰の魅力は乏しいかもしれない。」「○(引用者中略)――という判断で選考会に臨んだ。」 |
43歳 |
□ | 39 | 「わたしなどがこれまで遭遇したことも想像したこともなかった人生の姿がなまなましい文章で活写されており、読者の情動を激しく攪拌せずにおかない衝動的な内容になっている。」「ただ、フェラチオの挿話をはじめ、複雑な層をなしているはずの主人公の心象の、いちばん激しい部分を極端に誇張する露悪的な表現の連鎖には辟易としなくもない。この辟易感は文学的な感動とはやはり少々異質なものではないか。」「(引用者注:「それは誠」と共に)△――という判断で選考会に臨んだ。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和5年/2023年9月号 |