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第25回
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平成23年/2011年度
(平成24年/2012年5月15日決定発表/『小説新潮』平成24年/2012年7月号選評掲載)
選考委員  石田衣良
男52歳
角田光代
女45歳
佐々木譲
男62歳
白石一文
男53歳
唯川恵
女57歳
選評総行数  229 224 212 232 207
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
原田マハ 『楽園のカンヴァス』
女49歳
56 60 58 43 41
辻村深月 『オーダーメイド殺人クラブ』
女32歳
48 84 29 39 71
恒川光太郎 『金色の獣、彼方に向かう』
男38歳
42 39 45 30 39
柚月裕子 『検事の本懐』
女44歳
35 31 30 43 35
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成24年/2012年7月号
1行当たりの文字数:18字


選考委員
石田衣良男52歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
逆転選考 総行数229 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
原田マハ
女49歳
56 「ヒロインである美術館の監視員・織絵のキャラクターがよくわからない。アートの世界について詳細に書きこみ過ぎて、肝心の人物が凹み、バランスが今ひとつ。」「突っこみどころは満載だが、原田マハさんはこの作品の構想を二十年以上あたためてきたという。(引用者中略)作者の情熱や思いいれがまっすぐに伝わってくる熱い作品だった。」「選考会の途中で二作同時受賞を狙って、ぼくは×から△へと評価をあげた。そうすれば『オーダーメイド…』とならぶ四点台になる。その心変わりがこういう結果を生むとは想像もしなかった。」
辻村深月
女32歳
48 「一読してぼくは思った。今回のヤマシューはこれで決まりだ。ぐりぐりの○をつけて選考会に臨んだ。最初の投票でも五点満点中四・五点。」「息苦しいクラス内格差を描かせたら、辻村さんは日本一の書き手である。」「選考会の途中で誰かがいった。辻村さんはつぎもあるからなあ。ああこういうふうにして、ぼくも落とされたんだな。いっそう悔しい気もちになったけれど、辻村さんの才能は疑いない。」
恒川光太郎
男38歳
42 「今、この国の文学賞には厳然として「ツネカワ問題」が存在するのだ。ファンタジー、ホラー、SF、本格ミステリーなど、リアリズムを基本におかない作品をどう評価していくか。それが選ぶ側の最大のテーマなのである。」「その前提を踏まえたうえで、今回の候補作にはいくつか弱いところがあった。」「連作小説の場合、例外なく終わらせかたがむずかしいのだけれど、今回は着地でよろけてしまったのではないか。」
柚月裕子
女44歳
35 「佐方貞人という主人公の周囲で発生する事件とその解決は手堅いし、組織を描く筆も上々、きちんと定型の人情ものになっている。」「この作品に不満があるとすれば、やはり佐方のキャラクターだろう。(引用者中略)事件の本筋以外に遊びの部分がすくないので、どんな人物なのか今ひとつよくわからないのだ。」
  「普通の選評は原稿用紙三、四枚なのに、なぜかこの賞は十枚なのだ。あまりにもたいへんだから、次回から会話体のショートストーリーにでもしようかな。そちらのほうが読むほうも退屈しないだろうし。」「日本中のあちこちで本好きが集まって勝手に文学賞をつくり、選考会を開いてみたらいかがでしょうか。選考会のおたのしみを、作家連中にだけ独占させておくのはもったいないと、ぼくは思うのだけど。」
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他の選考委員
角田光代
佐々木譲
白石一文
唯川恵
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選考委員
角田光代女45歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
解釈の可能性 総行数224 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
原田マハ
女49歳
60 「気になるところはいくつかある。このミステリーに関わってくる多くが「偶然」あらわれる。バイラーの孫娘があらわれたときはさすがに鼻白んだ。」「が、最終章で現代に戻ってのちの展開に、そんなことは忘れて引き込まれた。すがすがしく、そして熱い。」「欠点を承知しつつ、でもやっぱりおもしろかった、いい小説だったという感想で読み終えた、『楽園のカンヴァス』を(引用者注:授賞作に)選んだ。」「これほど魅力的だったのは、作者のモチーフへの強い愛情が、読み手に解釈の自由を与えているからではないか。」
辻村深月
女32歳
84 「出てくる大人たちへの、語り手の少女アンの厳しい目線もリアリティがあると私は思った。」「作家は「どう殺さないか」「どう殺されないか」を書くことになるわけだけれど、その点も作者は陳腐には終わらせなかった。作品がいきなりミステリー色を帯びるのにも興奮した。」「『オーダーメイド殺人クラブ』と『楽園のカンヴァス』、まったく異なる魅力を持つ小説、二作の受賞でいいのではないかと思った。それはかなわず、一作を決めることになったときは本当に悩んだ。」
恒川光太郎
男38歳
39 「この作者にしか描けない小説世界の、魅力がよくあらわれた一冊だった。」「この世とあの世の境目を描き出すような小説は、みなどこかひんやりとしている。けれどその冷気が、自然界が発するものだと感じることができなかった。(引用者中略)自然描写の弱さが、小説の力を減じてしまったように思えてならない。」
柚月裕子
女44歳
31 「巧い、というのがまず第一の感想なのだが、けれど、やはり小説の短さが気になった。描いているストーリーと、枚数が見合っていないように思えた。」「そしてこの作者の持つ「巧さ」が、早くも二話目あたりから、「破綻のなさ」に成り代わってしまった。」「佐方という男の魅力が今ひとつ伝わってこないのも残念だった。」
  「私が欠点と思うことでも、ほかの人には美点であるし、違和感を、独自の解釈で納得している人もいる。本当に強いのは、読み手の数だけの解釈を許す小説、それだけの説得力を持つ小説なのかもしれないと考えた。」
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他の選考委員
石田衣良
佐々木譲
白石一文
唯川恵
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選考委員
佐々木譲男62歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
刺激的な選考会だった 総行数212 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
原田マハ
女49歳
58 「(引用者注:最終投票で)わたしは(引用者中略)一票を投じた。」「一節一節どこを読んでも、キュレーターだったという著者の専門知識が惜しみなく投入されている印象を受ける。取材やお勉強では、ここまでディテール豊かな作品は書き得なかったろう。」「さらにこの作品は、全体がきわめて知的なゲームの感覚にあふれていて、そのトーンが読んでいて痛快であった。」
辻村深月
女32歳
29 「最後の瞬間までこちらも受賞作としたいと悩んだ作品。」「読後は、なんとピュアなラブ・ストーリーを読んだのかという感動。特権的存在でありたいと願う少女の一人称の叙述に引き込まれ、ふと気がつくと、事前の予測とはかなり性格のちがう物語にすっかり魅了されていた。」「受賞は逃したけれども、(引用者注:受賞作の)『楽園のカンヴァス』と同じように話題となってくれたらよいと願う。」
恒川光太郎
男38歳
45 「日本の自然を背景もしくは舞台にしながら、森も山も河畔も、ほとんどその植生が描写されないことに違和感を持った。いや、自然描写そのものを作者は放棄していると感じた。」「選考会のあとで、作者の恒川さんはかなりアウトドア派の作家だと聞いた。となると、植生描写のネグレストや自然描写の誤りが余計に気になる。(引用者中略)わたしは最後までその自然の描写、記述(の少なさ)になじめず、点数を辛くしてしまった。」
柚月裕子
女44歳
30 「たとえば受賞作の『楽園のカンヴァス』と較べると、取材して書いた作品という印象は否めない。」「登場人物の造型も、少し古いという印象を受ける。類型とは言わないが、どこかで昭和の時代の警察もの、新聞記者もののテレビドラマを観ているような既視感があった。」
  「議論白熱、わたしがこれまで体験した文学賞選考会の中ではもっとも熱いものだった。結論を出すまでに時間もかかった。」
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他の選考委員
石田衣良
角田光代
白石一文
唯川恵
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選考委員
白石一文男53歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
重いベルトを腰に巻いて 総行数232 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
原田マハ
女49歳
43 「作者の熱意を強く感じる作品だった。」「作者がこしらえたルソーとピカソをめぐる魅惑的なミステリーが最後までぐいぐいと読者を引っ張っていく。読後の感動も充分ではあった。その点で、この作品を受賞作とすることに異論はない。ただ、物語の根幹をなす鑑定合戦に僕はいま一つリアリティーを感じなかったし、さまざまに作者が散らした仕掛けのいくつかが答えのないままに放り出されていることに不満が残った。」
辻村深月
女32歳
39 「強く推す心づもりで選考会に臨んだ」「小説は感性、理性、物語性のバランスをいかに取るかで出来不出来が決まってくるが、辻村氏には若い作家が当然持ち合わせているであろう感性だけでなく、理性、物語性も十二分に備わっている。」
恒川光太郎
男38歳
30 「この作者には奇妙な膂力のようなものがたしかにある。」「用意した材料を全部きれいに使って見栄えのいい作品にするのではなく、作者はあえて、そのうちの一つに焦点を定めて、そこから物語を無理のあるゆがんだ方向へとふくらませていっている。」「ただ、いかんせん、今回の作品はそれぞれの関連性も弱く、いくぶん力不足の感は否めない。」
柚月裕子
女44歳
43 「五本の短編はどれもよく書けている。」「商業性の高さを充分に感じさせる。ただ、問題はまさにそこにあるとも言える。」「もう彼女はこの種の小説を書きこなしていく自分流の公式を手に入れている。であるならば、どこかでたまにその公式から逸脱してほしい。」「こうなってほしいと読者が望む方向へ小説を持っていくのも大切だ。だが、一方で、常にそうした読者の予測を裏切り続けるのもまた小説の醍醐味だ。」
  「実際に選考会場に顔を出していない佐藤(引用者注:隆信新潮文芸振興会)理事長が、長時間の議論の末に出た結果について「二作では多過ぎる」というような理由でそれを引っくり返すというのは、やはり本来あってはならないことだろう。」「一連の経緯を見る限り、授賞は一作としたいという腹づもりが当初から理事長にあったと考えざるを得ない。だとすれば、そうした意向を事前に選考委員に明確に伝えておくべきであった。」「選考会から時日を経て、いまさらながら僕としては釈然としない心地をおぼえている。」
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他の選考委員
石田衣良
角田光代
佐々木譲
唯川恵
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選考委員
唯川恵女57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
小説の醍醐味 総行数207 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
原田マハ
女49歳
41 「この作品に、私は圧倒的な『情熱』を感じた。ルソーの創作に対する情熱、主人公たちのルソーに対する情熱、そして原田さんの作品に対する情熱が、行間から立ち昇ってくる。最後、涙した自分が嬉しかった。」「小説とは何なのか。この感動こそが小説の醍醐味ではないのか。そんなことを改めて思わせてくれた作品だった。」
辻村深月
女32歳
71 「読者を離さない強烈な魅力、つまり毒でもあるのだが、それが確かに感じられる小説だった。」「それほどの小説なのに、いや、だからこそ、引っ掛かってしまったのかもしれない。どうして、まともな大人がひとりも出てこないのだろう。」「小説なのだから作為はあって当然だし、他の選考委員から、その作為がうまく回っている、という意見も出た。それを考えると、もしかしたら私自身が、本書に登場する大人そのものなのかもしれない。だとしたら、私はあまりよい読み手ではなかったとも言える。」
恒川光太郎
男38歳
39 「緊迫感や、追い詰められた心情を端折っていて、余韻を味わわせてくれない。作者はどんどん先に行って、読み手は取り残されてしまう。死を扱うには物足りない。もっと説得して欲しい、その世界に浸らせて欲しい、との思いがどうしても残る。」「個人的な感覚になってしまうかもしれないが、この世界を描くなら、やはり恐怖や不気味さ、美しさ、恍惚などが欲しいところだ。」
柚月裕子
女44歳
35 「巧い小説だと思った。」「力のある方であるのは間違いない。すでに多くの読者も掴んでいらっしゃる。ただ、このジャンルの小説は人気があり、映像化も多いので、どこかで読んだような、観たような、そんな既視感が拭えない。」
  「プロの小説家がプロの小説家の選考をする、その難しさに緊張しながら選考会に臨んだ。」
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他の選考委員
石田衣良
角田光代
佐々木譲
白石一文
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受賞者・作品
原田マハ女49歳×各選考委員 
『楽園のカンヴァス』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男52歳
56 「ヒロインである美術館の監視員・織絵のキャラクターがよくわからない。アートの世界について詳細に書きこみ過ぎて、肝心の人物が凹み、バランスが今ひとつ。」「突っこみどころは満載だが、原田マハさんはこの作品の構想を二十年以上あたためてきたという。(引用者中略)作者の情熱や思いいれがまっすぐに伝わってくる熱い作品だった。」「選考会の途中で二作同時受賞を狙って、ぼくは×から△へと評価をあげた。そうすれば『オーダーメイド…』とならぶ四点台になる。その心変わりがこういう結果を生むとは想像もしなかった。」
角田光代
女45歳
60 「気になるところはいくつかある。このミステリーに関わってくる多くが「偶然」あらわれる。バイラーの孫娘があらわれたときはさすがに鼻白んだ。」「が、最終章で現代に戻ってのちの展開に、そんなことは忘れて引き込まれた。すがすがしく、そして熱い。」「欠点を承知しつつ、でもやっぱりおもしろかった、いい小説だったという感想で読み終えた、『楽園のカンヴァス』を(引用者注:授賞作に)選んだ。」「これほど魅力的だったのは、作者のモチーフへの強い愛情が、読み手に解釈の自由を与えているからではないか。」
佐々木譲
男62歳
58 「(引用者注:最終投票で)わたしは(引用者中略)一票を投じた。」「一節一節どこを読んでも、キュレーターだったという著者の専門知識が惜しみなく投入されている印象を受ける。取材やお勉強では、ここまでディテール豊かな作品は書き得なかったろう。」「さらにこの作品は、全体がきわめて知的なゲームの感覚にあふれていて、そのトーンが読んでいて痛快であった。」
白石一文
男53歳
43 「作者の熱意を強く感じる作品だった。」「作者がこしらえたルソーとピカソをめぐる魅惑的なミステリーが最後までぐいぐいと読者を引っ張っていく。読後の感動も充分ではあった。その点で、この作品を受賞作とすることに異論はない。ただ、物語の根幹をなす鑑定合戦に僕はいま一つリアリティーを感じなかったし、さまざまに作者が散らした仕掛けのいくつかが答えのないままに放り出されていることに不満が残った。」
唯川恵
女57歳
41 「この作品に、私は圧倒的な『情熱』を感じた。ルソーの創作に対する情熱、主人公たちのルソーに対する情熱、そして原田さんの作品に対する情熱が、行間から立ち昇ってくる。最後、涙した自分が嬉しかった。」「小説とは何なのか。この感動こそが小説の醍醐味ではないのか。そんなことを改めて思わせてくれた作品だった。」
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他の候補作
辻村深月
『オーダーメイド殺人クラブ』
恒川光太郎
『金色の獣、彼方に向かう』
柚月裕子
『検事の本懐』
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候補者・作品
辻村深月女32歳×各選考委員 
『オーダーメイド殺人クラブ』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男52歳
48 「一読してぼくは思った。今回のヤマシューはこれで決まりだ。ぐりぐりの○をつけて選考会に臨んだ。最初の投票でも五点満点中四・五点。」「息苦しいクラス内格差を描かせたら、辻村さんは日本一の書き手である。」「選考会の途中で誰かがいった。辻村さんはつぎもあるからなあ。ああこういうふうにして、ぼくも落とされたんだな。いっそう悔しい気もちになったけれど、辻村さんの才能は疑いない。」
角田光代
女45歳
84 「出てくる大人たちへの、語り手の少女アンの厳しい目線もリアリティがあると私は思った。」「作家は「どう殺さないか」「どう殺されないか」を書くことになるわけだけれど、その点も作者は陳腐には終わらせなかった。作品がいきなりミステリー色を帯びるのにも興奮した。」「『オーダーメイド殺人クラブ』と『楽園のカンヴァス』、まったく異なる魅力を持つ小説、二作の受賞でいいのではないかと思った。それはかなわず、一作を決めることになったときは本当に悩んだ。」
佐々木譲
男62歳
29 「最後の瞬間までこちらも受賞作としたいと悩んだ作品。」「読後は、なんとピュアなラブ・ストーリーを読んだのかという感動。特権的存在でありたいと願う少女の一人称の叙述に引き込まれ、ふと気がつくと、事前の予測とはかなり性格のちがう物語にすっかり魅了されていた。」「受賞は逃したけれども、(引用者注:受賞作の)『楽園のカンヴァス』と同じように話題となってくれたらよいと願う。」
白石一文
男53歳
39 「強く推す心づもりで選考会に臨んだ」「小説は感性、理性、物語性のバランスをいかに取るかで出来不出来が決まってくるが、辻村氏には若い作家が当然持ち合わせているであろう感性だけでなく、理性、物語性も十二分に備わっている。」
唯川恵
女57歳
71 「読者を離さない強烈な魅力、つまり毒でもあるのだが、それが確かに感じられる小説だった。」「それほどの小説なのに、いや、だからこそ、引っ掛かってしまったのかもしれない。どうして、まともな大人がひとりも出てこないのだろう。」「小説なのだから作為はあって当然だし、他の選考委員から、その作為がうまく回っている、という意見も出た。それを考えると、もしかしたら私自身が、本書に登場する大人そのものなのかもしれない。だとしたら、私はあまりよい読み手ではなかったとも言える。」
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他の候補作
原田マハ
『楽園のカンヴァス』
恒川光太郎
『金色の獣、彼方に向かう』
柚月裕子
『検事の本懐』
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候補者・作品
恒川光太郎男38歳×各選考委員 
『金色の獣、彼方に向かう』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男52歳
42 「今、この国の文学賞には厳然として「ツネカワ問題」が存在するのだ。ファンタジー、ホラー、SF、本格ミステリーなど、リアリズムを基本におかない作品をどう評価していくか。それが選ぶ側の最大のテーマなのである。」「その前提を踏まえたうえで、今回の候補作にはいくつか弱いところがあった。」「連作小説の場合、例外なく終わらせかたがむずかしいのだけれど、今回は着地でよろけてしまったのではないか。」
角田光代
女45歳
39 「この作者にしか描けない小説世界の、魅力がよくあらわれた一冊だった。」「この世とあの世の境目を描き出すような小説は、みなどこかひんやりとしている。けれどその冷気が、自然界が発するものだと感じることができなかった。(引用者中略)自然描写の弱さが、小説の力を減じてしまったように思えてならない。」
佐々木譲
男62歳
45 「日本の自然を背景もしくは舞台にしながら、森も山も河畔も、ほとんどその植生が描写されないことに違和感を持った。いや、自然描写そのものを作者は放棄していると感じた。」「選考会のあとで、作者の恒川さんはかなりアウトドア派の作家だと聞いた。となると、植生描写のネグレストや自然描写の誤りが余計に気になる。(引用者中略)わたしは最後までその自然の描写、記述(の少なさ)になじめず、点数を辛くしてしまった。」
白石一文
男53歳
30 「この作者には奇妙な膂力のようなものがたしかにある。」「用意した材料を全部きれいに使って見栄えのいい作品にするのではなく、作者はあえて、そのうちの一つに焦点を定めて、そこから物語を無理のあるゆがんだ方向へとふくらませていっている。」「ただ、いかんせん、今回の作品はそれぞれの関連性も弱く、いくぶん力不足の感は否めない。」
唯川恵
女57歳
39 「緊迫感や、追い詰められた心情を端折っていて、余韻を味わわせてくれない。作者はどんどん先に行って、読み手は取り残されてしまう。死を扱うには物足りない。もっと説得して欲しい、その世界に浸らせて欲しい、との思いがどうしても残る。」「個人的な感覚になってしまうかもしれないが、この世界を描くなら、やはり恐怖や不気味さ、美しさ、恍惚などが欲しいところだ。」
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『楽園のカンヴァス』
辻村深月
『オーダーメイド殺人クラブ』
柚月裕子
『検事の本懐』
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候補者・作品
柚月裕子女44歳×各選考委員 
『検事の本懐』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男52歳
35 「佐方貞人という主人公の周囲で発生する事件とその解決は手堅いし、組織を描く筆も上々、きちんと定型の人情ものになっている。」「この作品に不満があるとすれば、やはり佐方のキャラクターだろう。(引用者中略)事件の本筋以外に遊びの部分がすくないので、どんな人物なのか今ひとつよくわからないのだ。」
角田光代
女45歳
31 「巧い、というのがまず第一の感想なのだが、けれど、やはり小説の短さが気になった。描いているストーリーと、枚数が見合っていないように思えた。」「そしてこの作者の持つ「巧さ」が、早くも二話目あたりから、「破綻のなさ」に成り代わってしまった。」「佐方という男の魅力が今ひとつ伝わってこないのも残念だった。」
佐々木譲
男62歳
30 「たとえば受賞作の『楽園のカンヴァス』と較べると、取材して書いた作品という印象は否めない。」「登場人物の造型も、少し古いという印象を受ける。類型とは言わないが、どこかで昭和の時代の警察もの、新聞記者もののテレビドラマを観ているような既視感があった。」
白石一文
男53歳
43 「五本の短編はどれもよく書けている。」「商業性の高さを充分に感じさせる。ただ、問題はまさにそこにあるとも言える。」「もう彼女はこの種の小説を書きこなしていく自分流の公式を手に入れている。であるならば、どこかでたまにその公式から逸脱してほしい。」「こうなってほしいと読者が望む方向へ小説を持っていくのも大切だ。だが、一方で、常にそうした読者の予測を裏切り続けるのもまた小説の醍醐味だ。」
唯川恵
女57歳
35 「巧い小説だと思った。」「力のある方であるのは間違いない。すでに多くの読者も掴んでいらっしゃる。ただ、このジャンルの小説は人気があり、映像化も多いので、どこかで読んだような、観たような、そんな既視感が拭えない。」
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『楽園のカンヴァス』
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