直木賞のすべて
第29回
山本周五郎賞
山本周五郎賞-選評の概要 トップページ
直木賞・芥川賞受賞作一覧
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
小研究
大衆選考会
マップ

ページの最後へ
Last Update[H28]2016/6/25

29   一覧へ 28前の回へ
平成27年/2015年度
(平成28年/2016年5月16日決定発表/『小説新潮』平成28年/2016年7月号選評掲載)
選考委員  石田衣良
男56歳
角田光代
女49歳
佐々木譲
男66歳
白石一文
男57歳
唯川恵
女61歳
選評総行数  244 198 249 99 216
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
湊かなえ 『ユートピア』
女43歳
54 67 52 31 37
中田永一 『私は存在が空気』
男37歳
33 20 25 0 36
相場英雄 『ガラパゴス』
男48歳
30 36 35 16 56
宮内悠介 『アメリカ最後の実験』
男37歳
31 35 40 0 43
押切もえ 『永遠とは違う一日』
女36歳
48 45 37 38 33
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成28年/2016年7月号
1行当たりの文字数:18字


選考委員
石田衣良男56歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
格差時代のクイーンへの戴冠 総行数244 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
湊かなえ
女43歳
54 「ぼくも前半を読み終えたところで、この作品にマルをつけた。いよいよ本命がきたなと。」「べたりと貼りつく嫉妬やちいさな意地悪、好意の裏にある悪意を書かせると、湊さんは本邦一の腕前だね。」「ミステリーとしての整合性は、この作品の読みどころじゃないんだ。そこまでの過程のおもしろさのほうが重要だよ。」
中田永一
男37歳
33 「文章もほとんど描写はなく、会話と説明でできている。これが新しい小説だというなら、ぼくたちが考えていた理想の小説はなんだったのだろう。」「これは日本的な正しい形のライトノベルだと思うけど。(引用者中略)だからライトノベルが山本賞にふさわしいかという話になる。」
相場英雄
男48歳
30 「この小説の弱点は悪役サイドにある。(引用者中略)新型車の設計ミスに気づいた非正規の青年ひとりを、巨大自動車メーカーや人材派遣会社の社長が殺す必要があるのかな。」「だけど上下巻でこれだけの大作を描く筆力はたいしたものだ。」
宮内悠介
男37歳
31 「直木賞と山本賞、どちらが先にSFに賞をあげるか。その期待をこめて、ぼくは推したよ。」「問題なのは音楽をテーマにしているのに、音楽の感動や素晴らしさが伝わらないところだね。音楽を描くのは楽理の解説ではないはずだ。」「あとアメリカ最後の実験の本質がなんなのか、いくら読んでもわからなかった。」
押切もえ
女36歳
48 「ニコ生の中継は入るし、記者会見の質問は押切さんばかりだし、賞のバランスを崩す外乱が混入してしまった。けれど候補五作品のなかで、一番オーソドックスで正統派の小説はこの作品だった。」「真摯な姿勢と端正な文章がなければ、選考委員も受賞作に負けない点を与えたりしないよ。でも、ぼくには気づきのパターンが一定なのと、すべて穏やかなハッピーエンドに終わるのが納得できなかった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
角田光代
佐々木譲
白石一文
唯川恵
  ページの先頭へ

選考委員
角田光代女49歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
場所を描き出す力 総行数198 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
湊かなえ
女43歳
67 「暗い予感に読み手をわくわくさせる作者の技は相変わらずみごとである。」「また作者は、異様な感情に変化する直前の、一瞬の輝くような瞬間もさりげなく書く。」「しかし終盤、私にはいくつかわからないことがあった。(引用者中略)作者があえて書かなかったのか、そうでないのかの判断が私にはつかなかった。その一点においてこの小説を受賞作として全面的に推すことがためらわれた。」
中田永一
男37歳
20 「非常にチャーミングな短編集である。」「世界を救わない人たちの物語である。けれど、身近なだれかを、ほんのいっときかもしれないけれど救ってはいる。その「ちいささ」に好感を持って読んだけれど、では受賞作かと考えると、違うように思う。」
相場英雄
男48歳
36 「力強い迫力のある小説で、もっとも読み応えがあった。」「メモ魔の捜査員、田川の執拗な取材で、事件のあらたな面がひとピースずつ埋まっていくのは、読んでいて快感でもあったのだが、しかし、そのピースがすべて同じものであることに途中から疑問を覚えた。」
宮内悠介
男37歳
35 「魅力的な人物が次々と登場し、(引用者中略)仕掛けも続々と投下されて、知らない場所に連れていかれるようで興奮した。」「けれど「アメリカ最初の実験」が登場するあたりから、だんだん小説が拡散してしまったように思う。」「私がいちばん残念に思ったのは、拡散しながらも一貫して登場する音楽が、まったく聞こえてなかったこと。」
押切もえ
女36歳
45 「読んでいて本当に心地よかった。」「作者がこの短編集で描き出そうとしたのは、年齢や職業(もしくは職業の有無)で括ることのできない人々の、もっと大きな充実ではないか。その大きさの故に、作品にブレが出てしまったように思う。」
  「最終的に議論が集中したのは『ユートピア』と『永遠とは違う一日』である。前者は曇天のような、後者は梅雨の晴れ間のような、正反対の魅力がある。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
石田衣良
佐々木譲
白石一文
唯川恵
  ページの先頭へ

選考委員
佐々木譲男66歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
安堵の選考結果 総行数249 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
湊かなえ
女43歳
52 「大事なのは、この作品は広義のミステリーではあるが、様式的なクライム・ノベルではない点だろう。謎があり、事件が起こり、その一応の解決はみるが、解決それ自体は作品の主題ではない。」「本作に、イヤミス、という言葉を使った選考委員もいたが、わたしには読後感はまったく悪くはなかった。」
中田永一
男37歳
25 「わたしがふだんほとんど読まないジャンルの作品集だ。なので、先行作品や背景についての情報を一切持たないままに読むことになった。」「(引用者注:「ファイアスターター湯川さん」と「恋する交差点」の)二作は文句なく面白かったのだが、ほかの作品とのバランスが悪く、受賞作として推すことはできなかった。」
相場英雄
男48歳
35 「タイトルから想像すれば、相場さんは本作を警察小説としてではなく、むしろ経済小説として構想したのではないかとも想像する。だとすると叙述のために採用した警察小説の枠組みが、題材に適合していない。」「また、主人公がときおり漏らす道徳観、正義観が、現場警察官のものとしてナイーブ過ぎる印象がある。」「達者、とは思いつつ、受賞作として積極的には推せなかった。」
宮内悠介
男37歳
40 「せっかく魅力的な謎の楽器「パンドラ」を設定し、音楽を科学としてたっぷり語りながら、ストーリーとディテールのほうぼうに既視感がある。」「「いかにも」のアイテムをどう組み合わせて独自の味付けの料理とするか、どんなカバーバージョンにするか、という部分が勝負の作品となる。」「ただこうした傾向の作品の場合、文学賞の候補作として読んだとき、なんとなく「弾道のきれいな二塁打」と感じられてしまうのだ。」
押切もえ
女36歳
37 「告白すれば、わたしは押切もえさんという名を知らなかった。候補作が発表されてから、モデルだと知ったのだ。」「登場する彼女や彼たちの悩みも歓びも、(引用者中略)同時代の働く女性たち誰もが共感できる普遍性ある感覚として、それはストーリーに昇華されている。」「二作目にしてこれほどの小説を書くひとがいたとは、と、わたしは舌を巻いたのだった。」
  「(引用者注:文学賞は)好みだけ語って済む飲み屋の面白本談義とは違う。文学賞は、わたしがいまいる世界をもっと豊かなものにするため、果実のクォリティをもっと高めるためにある。そのために設けられた支援制度であり、同志たちすべてに向けて提供されたブースターである。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
石田衣良
角田光代
白石一文
唯川恵
  ページの先頭へ

選考委員
白石一文男57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
実績重視の結果 総行数99 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
湊かなえ
女43歳
31 「(引用者注:「ガラパゴス」と共に)△とする方針で選考会に臨んだ。」「佐々木委員は湊氏に○をつけていた。」「一度目の候補作『母性』、前回の候補作『絶唱』と比較するならば物語の始末の付け方にも冒険心の度合いにおいても『ユートピア』は見劣りがするし、ことに最後の謎解きの部分は相当にひとりよがりと言わざるを得ない。」「当選作を出すとなれば、やはり湊氏の作品しかないだろうというのは五人の委員全員の一致するところであった。」
中田永一
男37歳
0  
相場英雄
男48歳
16 「(引用者注:「ユートピア」と共に)△とする方針で選考会に臨んだ。」「手堅くしっかりと作品に込めるべき作者の思いを書き綴っている。ただ、そうやって訴えるべきものが外側だけでなくいま少し自らの内側にも入ってくれば、この人の小説は見違えるような進歩を果たすのではないかと思う。」
宮内悠介
男37歳
0  
押切もえ
女36歳
38 「『永遠とは違う一日』に○を与え(引用者中略)選考会に臨んだ。」「私以外に押切氏を強く推す委員がもしも一人でもいれば、押切氏の受賞もあり得たかもしれないが、現実には一度もそのような雰囲気になることはなかった。」「新人離れした技巧、どの一行も安易に置かない緻密さ、人物や事象に対する細やかな観察眼など、彼女は作家たり得る資質を十二分に持ち合わせているようだ。」
  「今回の選考会は低調なものであった。」「私と佐々木委員を除く三人の委員が初回の投票で、どの候補作にも○をつけなかった」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
石田衣良
角田光代
佐々木譲
唯川恵
  ページの先頭へ

選考委員
唯川恵女61歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
実力と実績 総行数216 (1行=18字)
候補 評価 行数 評言
湊かなえ
女43歳
37 「この小説にミステリー要素は必要だったのだろうか。最後をあのような形で終わらせた強引さが気になってならない。何度読み返しても、納得のいく着地ではなく、むしろ、小説全体の印象をぼやけさせてしまったように感じる。」「それでも、市井の人々の細やかな描き方は山本周五郎の作風に通じるものがあり、またこれまでの十分な実績から受賞にふさわしいと思えた。」
中田永一
男37歳
36 「私の年代になると、ひねくれ具合に年季が入っているので、このような若い世代に人気の物語を素直に楽しむことができなくなっている。」「たぶん、中田さんは話のスケールを逆にうんと小さくしてやろうとの意図の下で書かれたのだろう。それを否定する気はないのだけれど、読み手としてはやはり物足りなさが残った。」「出来不出来の問題ではない。本書は山本賞向きではなかったということだ。」
相場英雄
男48歳
56 「迫力ある展開に圧倒された。」「派遣という立場がどんなに厳しい状況であるか、それは十分に理解できた。読んで息苦しくなるほどだ。ただ、書き方が一方向過ぎやしないかとも思えてしまう。」「相場さんはどんどん腕をあげられている。と同時に、小説に風格が出て来られたように思う。私は湊さんの作品と共に本作を推したのだが、残念ながら賛同を得ることはできなかった。」
宮内悠介
男37歳
43 「ストーリーを的確に把握できなかったのは私の読解力の低さとしても、せめて本書の根底を流れる音楽の存在は感じ取りたかった。しかし、どうにも伝わって来ない。」「理解できなかった――これが正直な感想である。だからと言って、間違った読み方はしていないのではないかと思う。たぶん、作者は読み手を翻弄するためにこの小説を書いたのではないか。」
押切もえ
女36歳
33 「感覚的にも技術的にも優れた才能を持たれた方だと思う。」「それなのに、なぜ推すことができなかったというと、すべてをひとつのパターンに押し込めてしまった感が拭えなかったからだ。」「早い話、優等生過ぎたのではないか。変化球が欲しいところだ。」
  「候補作がどうやって選ばれるのかは知らないが、どうしてこの作品だったのかを、今回、知りたいと思った。五人で五冊の評価、つまり二十五の評価の中で「○」はふたつしかなかった。これまでとは違い、激論を戦わすのではなく、考えさせられる選考会となった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
石田衣良
角田光代
佐々木譲
白石一文
  ページの先頭へ


受賞者・作品
湊かなえ女43歳×各選考委員 
『ユートピア』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男56歳
54 「ぼくも前半を読み終えたところで、この作品にマルをつけた。いよいよ本命がきたなと。」「べたりと貼りつく嫉妬やちいさな意地悪、好意の裏にある悪意を書かせると、湊さんは本邦一の腕前だね。」「ミステリーとしての整合性は、この作品の読みどころじゃないんだ。そこまでの過程のおもしろさのほうが重要だよ。」
角田光代
女49歳
67 「暗い予感に読み手をわくわくさせる作者の技は相変わらずみごとである。」「また作者は、異様な感情に変化する直前の、一瞬の輝くような瞬間もさりげなく書く。」「しかし終盤、私にはいくつかわからないことがあった。(引用者中略)作者があえて書かなかったのか、そうでないのかの判断が私にはつかなかった。その一点においてこの小説を受賞作として全面的に推すことがためらわれた。」
佐々木譲
男66歳
52 「大事なのは、この作品は広義のミステリーではあるが、様式的なクライム・ノベルではない点だろう。謎があり、事件が起こり、その一応の解決はみるが、解決それ自体は作品の主題ではない。」「本作に、イヤミス、という言葉を使った選考委員もいたが、わたしには読後感はまったく悪くはなかった。」
白石一文
男57歳
31 「(引用者注:「ガラパゴス」と共に)△とする方針で選考会に臨んだ。」「佐々木委員は湊氏に○をつけていた。」「一度目の候補作『母性』、前回の候補作『絶唱』と比較するならば物語の始末の付け方にも冒険心の度合いにおいても『ユートピア』は見劣りがするし、ことに最後の謎解きの部分は相当にひとりよがりと言わざるを得ない。」「当選作を出すとなれば、やはり湊氏の作品しかないだろうというのは五人の委員全員の一致するところであった。」
唯川恵
女61歳
37 「この小説にミステリー要素は必要だったのだろうか。最後をあのような形で終わらせた強引さが気になってならない。何度読み返しても、納得のいく着地ではなく、むしろ、小説全体の印象をぼやけさせてしまったように感じる。」「それでも、市井の人々の細やかな描き方は山本周五郎の作風に通じるものがあり、またこれまでの十分な実績から受賞にふさわしいと思えた。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
中田永一
『私は存在が空気』
相場英雄
『ガラパゴス』
宮内悠介
『アメリカ最後の実験』
押切もえ
『永遠とは違う一日』
  ページの先頭へ

候補者・作品
中田永一男37歳×各選考委員 
『私は存在が空気』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男56歳
33 「文章もほとんど描写はなく、会話と説明でできている。これが新しい小説だというなら、ぼくたちが考えていた理想の小説はなんだったのだろう。」「これは日本的な正しい形のライトノベルだと思うけど。(引用者中略)だからライトノベルが山本賞にふさわしいかという話になる。」
角田光代
女49歳
20 「非常にチャーミングな短編集である。」「世界を救わない人たちの物語である。けれど、身近なだれかを、ほんのいっときかもしれないけれど救ってはいる。その「ちいささ」に好感を持って読んだけれど、では受賞作かと考えると、違うように思う。」
佐々木譲
男66歳
25 「わたしがふだんほとんど読まないジャンルの作品集だ。なので、先行作品や背景についての情報を一切持たないままに読むことになった。」「(引用者注:「ファイアスターター湯川さん」と「恋する交差点」の)二作は文句なく面白かったのだが、ほかの作品とのバランスが悪く、受賞作として推すことはできなかった。」
白石一文
男57歳
0  
唯川恵
女61歳
36 「私の年代になると、ひねくれ具合に年季が入っているので、このような若い世代に人気の物語を素直に楽しむことができなくなっている。」「たぶん、中田さんは話のスケールを逆にうんと小さくしてやろうとの意図の下で書かれたのだろう。それを否定する気はないのだけれど、読み手としてはやはり物足りなさが残った。」「出来不出来の問題ではない。本書は山本賞向きではなかったということだ。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
湊かなえ
『ユートピア』
相場英雄
『ガラパゴス』
宮内悠介
『アメリカ最後の実験』
押切もえ
『永遠とは違う一日』
  ページの先頭へ

候補者・作品
相場英雄男48歳×各選考委員 
『ガラパゴス』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男56歳
30 「この小説の弱点は悪役サイドにある。(引用者中略)新型車の設計ミスに気づいた非正規の青年ひとりを、巨大自動車メーカーや人材派遣会社の社長が殺す必要があるのかな。」「だけど上下巻でこれだけの大作を描く筆力はたいしたものだ。」
角田光代
女49歳
36 「力強い迫力のある小説で、もっとも読み応えがあった。」「メモ魔の捜査員、田川の執拗な取材で、事件のあらたな面がひとピースずつ埋まっていくのは、読んでいて快感でもあったのだが、しかし、そのピースがすべて同じものであることに途中から疑問を覚えた。」
佐々木譲
男66歳
35 「タイトルから想像すれば、相場さんは本作を警察小説としてではなく、むしろ経済小説として構想したのではないかとも想像する。だとすると叙述のために採用した警察小説の枠組みが、題材に適合していない。」「また、主人公がときおり漏らす道徳観、正義観が、現場警察官のものとしてナイーブ過ぎる印象がある。」「達者、とは思いつつ、受賞作として積極的には推せなかった。」
白石一文
男57歳
16 「(引用者注:「ユートピア」と共に)△とする方針で選考会に臨んだ。」「手堅くしっかりと作品に込めるべき作者の思いを書き綴っている。ただ、そうやって訴えるべきものが外側だけでなくいま少し自らの内側にも入ってくれば、この人の小説は見違えるような進歩を果たすのではないかと思う。」
唯川恵
女61歳
56 「迫力ある展開に圧倒された。」「派遣という立場がどんなに厳しい状況であるか、それは十分に理解できた。読んで息苦しくなるほどだ。ただ、書き方が一方向過ぎやしないかとも思えてしまう。」「相場さんはどんどん腕をあげられている。と同時に、小説に風格が出て来られたように思う。私は湊さんの作品と共に本作を推したのだが、残念ながら賛同を得ることはできなかった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
湊かなえ
『ユートピア』
中田永一
『私は存在が空気』
宮内悠介
『アメリカ最後の実験』
押切もえ
『永遠とは違う一日』
  ページの先頭へ

候補者・作品
宮内悠介男37歳×各選考委員 
『アメリカ最後の実験』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男56歳
31 「直木賞と山本賞、どちらが先にSFに賞をあげるか。その期待をこめて、ぼくは推したよ。」「問題なのは音楽をテーマにしているのに、音楽の感動や素晴らしさが伝わらないところだね。音楽を描くのは楽理の解説ではないはずだ。」「あとアメリカ最後の実験の本質がなんなのか、いくら読んでもわからなかった。」
角田光代
女49歳
35 「魅力的な人物が次々と登場し、(引用者中略)仕掛けも続々と投下されて、知らない場所に連れていかれるようで興奮した。」「けれど「アメリカ最初の実験」が登場するあたりから、だんだん小説が拡散してしまったように思う。」「私がいちばん残念に思ったのは、拡散しながらも一貫して登場する音楽が、まったく聞こえてなかったこと。」
佐々木譲
男66歳
40 「せっかく魅力的な謎の楽器「パンドラ」を設定し、音楽を科学としてたっぷり語りながら、ストーリーとディテールのほうぼうに既視感がある。」「「いかにも」のアイテムをどう組み合わせて独自の味付けの料理とするか、どんなカバーバージョンにするか、という部分が勝負の作品となる。」「ただこうした傾向の作品の場合、文学賞の候補作として読んだとき、なんとなく「弾道のきれいな二塁打」と感じられてしまうのだ。」
白石一文
男57歳
0  
唯川恵
女61歳
43 「ストーリーを的確に把握できなかったのは私の読解力の低さとしても、せめて本書の根底を流れる音楽の存在は感じ取りたかった。しかし、どうにも伝わって来ない。」「理解できなかった――これが正直な感想である。だからと言って、間違った読み方はしていないのではないかと思う。たぶん、作者は読み手を翻弄するためにこの小説を書いたのではないか。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
湊かなえ
『ユートピア』
中田永一
『私は存在が空気』
相場英雄
『ガラパゴス』
押切もえ
『永遠とは違う一日』
  ページの先頭へ

候補者・作品
押切もえ女36歳×各選考委員 
『永遠とは違う一日』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石田衣良
男56歳
48 「ニコ生の中継は入るし、記者会見の質問は押切さんばかりだし、賞のバランスを崩す外乱が混入してしまった。けれど候補五作品のなかで、一番オーソドックスで正統派の小説はこの作品だった。」「真摯な姿勢と端正な文章がなければ、選考委員も受賞作に負けない点を与えたりしないよ。でも、ぼくには気づきのパターンが一定なのと、すべて穏やかなハッピーエンドに終わるのが納得できなかった。」
角田光代
女49歳
45 「読んでいて本当に心地よかった。」「作者がこの短編集で描き出そうとしたのは、年齢や職業(もしくは職業の有無)で括ることのできない人々の、もっと大きな充実ではないか。その大きさの故に、作品にブレが出てしまったように思う。」
佐々木譲
男66歳
37 「告白すれば、わたしは押切もえさんという名を知らなかった。候補作が発表されてから、モデルだと知ったのだ。」「登場する彼女や彼たちの悩みも歓びも、(引用者中略)同時代の働く女性たち誰もが共感できる普遍性ある感覚として、それはストーリーに昇華されている。」「二作目にしてこれほどの小説を書くひとがいたとは、と、わたしは舌を巻いたのだった。」
白石一文
男57歳
38 「『永遠とは違う一日』に○を与え(引用者中略)選考会に臨んだ。」「私以外に押切氏を強く推す委員がもしも一人でもいれば、押切氏の受賞もあり得たかもしれないが、現実には一度もそのような雰囲気になることはなかった。」「新人離れした技巧、どの一行も安易に置かない緻密さ、人物や事象に対する細やかな観察眼など、彼女は作家たり得る資質を十二分に持ち合わせているようだ。」
唯川恵
女61歳
33 「感覚的にも技術的にも優れた才能を持たれた方だと思う。」「それなのに、なぜ推すことができなかったというと、すべてをひとつのパターンに押し込めてしまった感が拭えなかったからだ。」「早い話、優等生過ぎたのではないか。変化球が欲しいところだ。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
湊かなえ
『ユートピア』
中田永一
『私は存在が空気』
相場英雄
『ガラパゴス』
宮内悠介
『アメリカ最後の実験』
  ページの先頭へ



ページの先頭へ

トップページ直木賞・芥川賞受賞作一覧受賞作・候補作一覧受賞作家の群像候補作家の群像
選考委員の群像小研究大衆選考会マップ