第136回

第135回第137回

平成18年/2006年下半期 平成19年/2007年1月16日決定発表／『文藝春秋』平成19年/2007年3月号選評掲載

選考委員　 石原慎太郎 74歳 村上龍 54歳 池澤夏樹 61歳 高樹のぶ子 60歳 黒井千次 74歳 山田詠美 47歳 宮本輝 59歳 河野多恵子 80歳 選評総行数　 70 52 43 40 47 43 44 44 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 青山七恵　「ひとり日和」 234枚 23歳 評 ◎ 59 ◎ 42 ■ 15 ○ 31 □ 16 △ 8 ◎ 16 ◎ 31 佐川光晴　「家族の肖像」 133枚 41歳 評 △ 9 △ 6 ● 3 ― 0 △ 19 □ 11 △ 8 ― 0 柴崎友香　「その街の今は」 184枚 33歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 5 ■ 8 ◎ 22 ― 0 田中慎弥　「図書準備室」 116枚 34歳 評 ― 0 ― 0 ◎ 20 ― 0 ■ 4 ■ 10 ― 0 ― 0 星野智幸　「植物診断室」 146枚 41歳 評 ― 0 △ 5 ● 5 △ 9 ■ 12 ◎ 10 ― 0 ― 0                 年齢/枚数の説明   見方・注意点

石原慎太郎74歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題大都会でのソリテュード　総行数70　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 ◎ 59 「都会で過ごす若い女性の一種の虚無感に裏打ちされたソリテュードを、決して深刻にではなしに、あくまで都会的な軽味で描いている。」「寄宿先の設定も巧みだし、特に、その家から間近に眺め仰ぐ、多くの人間たちが行き来する外界の表象たる駅への視線は極めて印象的で、（引用者中略）村上龍氏の鮮烈なデビュー作『限りなく透明に近いブルー』の中の、（引用者中略）遅く目覚めた主人公が、開け放たれたままの扉の向こうにふと眺める外界の描写の、正確なエスキースに似た、優れた絵画的な描写に通うものがあった。」 佐川光晴 41歳 全 △ 9 「ある家族のある不幸な現実、実はごくありきたりの態様を描ききってはいるが、実は平凡で、最後に、（引用者中略）なるほどという落ちがなくてはとてもなりたたない。」 柴崎友香 33歳 全 ― 0   田中慎弥 34歳 全 ― 0   星野智幸 41歳 全 ― 0     「（引用者注：「ひとり日和」「家族の肖像」以外の）他の作品は論外と思われる。」

他の選考委員 村上龍 池澤夏樹 高樹のぶ子 黒井千次 山田詠美 宮本輝 河野多恵子

村上龍54歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題芥川賞選評　総行数52　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 ◎ 42 「わたしは（引用者中略）推した。読んでいる途中から候補作であることを忘れ、小説の世界に入っていた。」「駅のホームは、作者が自らの視線と観察力を基に「構築」したものであり、作品全体のモニュメントのような象徴にもなり得ている。」「作者はそのような場所とその意味を、「意識的に」設定したわけではないだろう。」「作家は、視線を研ぎ澄ますことによって、意識や理性よりさらに深い領域から浮かんでくるものと接触し、すくい上げるのだ。」 佐川光晴 41歳 全 △ 6 「魅力的だったが、前回の『銀色の翼』を越えるインパクトと説得力がなく、残念ながら受賞には至らなかった。」 柴崎友香 33歳 全 ― 0   田中慎弥 34歳 全 ― 0   星野智幸 41歳 全 △ 5 「比較的高い完成度を持っていたが、素材や描写に「直感的な選択」が少なく、意識的・批評家的な部分が目立った。」

他の選考委員 石原慎太郎 池澤夏樹 高樹のぶ子 黒井千次 山田詠美 宮本輝 河野多恵子

池澤夏樹61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題少数意見者の弁明　総行数43　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 ■ 15 「とても上手に書けた小説である。」「ペルソナの配置も、各エピソードも、文章もいい。しかし何かが足りない。田中（引用者注：慎弥）さんと違って、無謀な意図がない。」「これまた授賞に賛成しなかったのはぼく一人だった。」 佐川光晴 41歳 全 ● 3 「ヒロインに魅力がない。読者は自分を重ねられない。」 柴崎友香 33歳 全 ― 0   田中慎弥 34歳 全 ◎ 20 「おもしろかった。」「太宰治や町田康の偽悪的饒舌に通じる文体で、最後まで聞いていたのは幼女一人という終わりの光景もいい。」「何よりもここには無謀な意図がある。破綻しかねないところをなんとかまとめている。その意図を買ったのだが、これを推したのはぼく一人だった。」 星野智幸 41歳 全 ● 5 「いくつものキャラクターを負わされた主人公は一個のパーソナリティーとしてのまとまりを得るに至っていない。」

他の選考委員 石原慎太郎 村上龍 高樹のぶ子 黒井千次 山田詠美 宮本輝 河野多恵子

高樹のぶ子60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題“作意を隠す力”　総行数40　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 ○ 31 「若い女性のもったりとした孤独感が描かれていて、切ない。観念から出てきた作品ではなく、作者は日常の中に良質な受感装置を広げ、採るべきものを採って自然体で物語をつむいだ、かに見えるのは、実はかなりの実力を証明している。」「要点が押さえられているのに作意は隠されている。」 佐川光晴 41歳 全 ― 0   柴崎友香 33歳 全 ― 0   田中慎弥 34歳 全 ― 0   星野智幸 41歳 全 △ 9 「観念の構築物は、軟骨のない合体物のようなもので、たとえばスギノコって何の暗喩？　植物ヒーリングがなぜ必要なの？　などと個々の疑問に応えなくてはならない弱さをもっている。それがクリアされずに受賞に至らなかった。」	他の選考委員 石原慎太郎 村上龍 池澤夏樹 黒井千次 山田詠美 宮本輝 河野多恵子

黒井千次74歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題自然体の勝利　総行数47　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 □ 16 「好感のもてる小説である。」「痛みや哀しみも淡々と〈わたし〉の上を過ぎていく。おそらく、まだ〈わたし〉の本当の生活が始ってはいないからだろう。むしろそれへの予感が作品を強く支えている。予感の陰影が鮮やかに浮かび上るところに力が感じられる。」 佐川光晴 41歳 全 △ 19 「夫と妻の関係が現在の男と女の関りだけとしてではなく、それぞれ自分達の親との結びつきの光に照し出されているところに立体感がある。」「（引用者注：「植物診断室」と共に）明確な意図をもつ意欲作といえるが、それが自然体の受賞作ほどの支持を得られぬ選考結果となった。」 柴崎友香 33歳 全 ■ 5 「（引用者注：「図書準備室」と共に）可能性を孕んでいるが、それがまだ存分に展開しきれていない印象が残った。」 田中慎弥 34歳 全 ■ 4 「（引用者注：「その街の今は」と共に）可能性を孕んでいるが、それがまだ存分に展開しきれていない印象が残った。」 星野智幸 41歳 全 ■ 12 「仮定の家族関係と作中の植物イメージとがうまく支え合っていない恨みを覚える。」「（引用者注：「家族の肖像」と共に）明確な意図をもつ意欲作といえるが、それが自然体の受賞作ほどの支持を得られぬ選考結果となった。」

他の選考委員 石原慎太郎 村上龍 池澤夏樹 高樹のぶ子 山田詠美 宮本輝 河野多恵子

山田詠美47歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数43　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 △ 8 「淡々とし過ぎて、思わず縁側でお茶を飲みながら、そのまま寝てしまいそう……日常に疲れた殿方にお勧め。私には、いささか退屈。」 佐川光晴 41歳 全 □ 11 「夫婦間に生まれるひずみのようなものを丹念に描いていて安定した印象。」「でも、何だって、こんなにも使い古された題名を付けてしまうのだろう。」「（引用者注：「植物診断室」と）仲の悪い親戚みたいなどと感じ、二作授賞もありかと思いきや……。」 柴崎友香 33歳 全 ■ 8 「登場人物の会話を読めば読むほど、大阪という街を好ましく感じ、地の文を読めば読むほど、大阪という街への興味を失う。関西弁は七難隠すということか。」 田中慎弥 34歳 全 ■ 10 「読み進めて行く内に、暗く、しつこいふざけ方に引き込まれ、この作品を推しても良いかもーとついうっかり思ってしまったが、鶏小屋のエピソードにさしかかったあたりから、もう、げんなり。」 星野智幸 41歳 全 ◎ 10 「温室のような診断室の茫漠とした色彩の中に、現実を写し出すドローイングが、くっきりと映える。」「まるを付けたのは私だけ。『家族の肖像』とは仲の悪い親戚みたいなどと感じ、二作授賞もありかと思いきや……。」

他の選考委員 石原慎太郎 村上龍 池澤夏樹 高樹のぶ子 黒井千次 宮本輝 河野多恵子

宮本輝59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題けだるい生命力　総行数44　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 ◎ 16 「今回、私は二作（引用者注：「ひとり日和」と「その街の今は」）を推した。」「主人公である二十歳の女性の、抑えた感情が終始一貫していて、それがこの小説に静かな哀しみの調べを奏でさせている。」「途中、冗長なところがあって、小説が長過ぎるのが欠点だが、読み終えると、それさえも、青春のけだるい生命力を表現するリズムと化していた。」 佐川光晴 41歳 全 △ 8 「私は氏のこれまでの作品のなかで最も高い点をつけた。しかし氏は、もっと語りたい大事なものを語りきれていないのではないかと感じた。」 柴崎友香 33歳 全 ◎ 22 「今回、私は二作（引用者注：「ひとり日和」と「その街の今は」）を推した。」「柴崎氏は非凡な才を見せている。ただこの小説が他の委員からの支持を得られなかったのは、なぜ主人公が昔の「ミナミ」の写真に強く惹かれるのかに筆が到っていない点だけでなく、小説のどこかにいわば「さび」の部分がないという決定的な瑕瑾によると思う。」 田中慎弥 34歳 全 ― 0   星野智幸 41歳 全 ― 0

他の選考委員 石原慎太郎 村上龍 池澤夏樹 高樹のぶ子 黒井千次 山田詠美 河野多恵子

河野多恵子80歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題よい小説の書き方　総行数44　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 青山七恵 23歳 全 ◎ 31 「落ちついて書いてある。この作者は見るべきところをしっかりと見ている。無駄がない。小説は表現するものであって、理屈で説明するものではないことも知っている。」「作者は極く若い人だが、若さの衒いや若さにまかせて書いている様子は全くない。私はこの人に本物の早熟を感じた。」 佐川光晴 41歳 全 ― 0   柴崎友香 33歳 全 ― 0   田中慎弥 34歳 全 ― 0   星野智幸 41歳 全 ― 0     「（引用者注：「ひとり日和」以外の）他の候補作も一所懸命書かれており、それぞれに何等かの取り得もあるのだが、この作品と競い合うような強さをもつものはなかった。」	他の選考委員 石原慎太郎 村上龍 池澤夏樹 高樹のぶ子 黒井千次 山田詠美 宮本輝

青山七恵23歳×各選考委員　 「ひとり日和」 中篇 234枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 石原慎太郎 74歳 全 ◎ 59 「都会で過ごす若い女性の一種の虚無感に裏打ちされたソリテュードを、決して深刻にではなしに、あくまで都会的な軽味で描いている。」「寄宿先の設定も巧みだし、特に、その家から間近に眺め仰ぐ、多くの人間たちが行き来する外界の表象たる駅への視線は極めて印象的で、（引用者中略）村上龍氏の鮮烈なデビュー作『限りなく透明に近いブルー』の中の、（引用者中略）遅く目覚めた主人公が、開け放たれたままの扉の向こうにふと眺める外界の描写の、正確なエスキースに似た、優れた絵画的な描写に通うものがあった。」 村上龍 54歳 全 ◎ 42 「わたしは（引用者中略）推した。読んでいる途中から候補作であることを忘れ、小説の世界に入っていた。」「駅のホームは、作者が自らの視線と観察力を基に「構築」したものであり、作品全体のモニュメントのような象徴にもなり得ている。」「作者はそのような場所とその意味を、「意識的に」設定したわけではないだろう。」「作家は、視線を研ぎ澄ますことによって、意識や理性よりさらに深い領域から浮かんでくるものと接触し、すくい上げるのだ。」 池澤夏樹 61歳 全 ■ 15 「とても上手に書けた小説である。」「ペルソナの配置も、各エピソードも、文章もいい。しかし何かが足りない。田中（引用者注：慎弥）さんと違って、無謀な意図がない。」「これまた授賞に賛成しなかったのはぼく一人だった。」 高樹のぶ子 60歳 全 ○ 31 「若い女性のもったりとした孤独感が描かれていて、切ない。観念から出てきた作品ではなく、作者は日常の中に良質な受感装置を広げ、採るべきものを採って自然体で物語をつむいだ、かに見えるのは、実はかなりの実力を証明している。」「要点が押さえられているのに作意は隠されている。」 黒井千次 74歳 全 □ 16 「好感のもてる小説である。」「痛みや哀しみも淡々と〈わたし〉の上を過ぎていく。おそらく、まだ〈わたし〉の本当の生活が始ってはいないからだろう。むしろそれへの予感が作品を強く支えている。予感の陰影が鮮やかに浮かび上るところに力が感じられる。」 山田詠美 47歳 全 △ 8 「淡々とし過ぎて、思わず縁側でお茶を飲みながら、そのまま寝てしまいそう……日常に疲れた殿方にお勧め。私には、いささか退屈。」 宮本輝 59歳 全 ◎ 16 「今回、私は二作（引用者注：「ひとり日和」と「その街の今は」）を推した。」「主人公である二十歳の女性の、抑えた感情が終始一貫していて、それがこの小説に静かな哀しみの調べを奏でさせている。」「途中、冗長なところがあって、小説が長過ぎるのが欠点だが、読み終えると、それさえも、青春のけだるい生命力を表現するリズムと化していた。」 河野多恵子 80歳 全 ◎ 31 「落ちついて書いてある。この作者は見るべきところをしっかりと見ている。無駄がない。小説は表現するものであって、理屈で説明するものではないことも知っている。」「作者は極く若い人だが、若さの衒いや若さにまかせて書いている様子は全くない。私はこの人に本物の早熟を感じた。」

他の候補作 佐川光晴 「家族の肖像」 柴崎友香 「その街の今は」 田中慎弥 「図書準備室」 星野智幸 「植物診断室」

佐川光晴41歳×各選考委員　 「家族の肖像」 短篇 133枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 石原慎太郎 74歳 全 △ 9 「ある家族のある不幸な現実、実はごくありきたりの態様を描ききってはいるが、実は平凡で、最後に、（引用者中略）なるほどという落ちがなくてはとてもなりたたない。」 村上龍 54歳 全 △ 6 「魅力的だったが、前回の『銀色の翼』を越えるインパクトと説得力がなく、残念ながら受賞には至らなかった。」 池澤夏樹 61歳 全 ● 3 「ヒロインに魅力がない。読者は自分を重ねられない。」 高樹のぶ子 60歳 全 ― 0   黒井千次 74歳 全 △ 19 「夫と妻の関係が現在の男と女の関りだけとしてではなく、それぞれ自分達の親との結びつきの光に照し出されているところに立体感がある。」「（引用者注：「植物診断室」と共に）明確な意図をもつ意欲作といえるが、それが自然体の受賞作ほどの支持を得られぬ選考結果となった。」 山田詠美 47歳 全 □ 11 「夫婦間に生まれるひずみのようなものを丹念に描いていて安定した印象。」「でも、何だって、こんなにも使い古された題名を付けてしまうのだろう。」「（引用者注：「植物診断室」と）仲の悪い親戚みたいなどと感じ、二作授賞もありかと思いきや……。」 宮本輝 59歳 全 △ 8 「私は氏のこれまでの作品のなかで最も高い点をつけた。しかし氏は、もっと語りたい大事なものを語りきれていないのではないかと感じた。」 河野多恵子 80歳 全 ― 0

他の候補作 青山七恵 「ひとり日和」 柴崎友香 「その街の今は」 田中慎弥 「図書準備室」 星野智幸 「植物診断室」

柴崎友香33歳×各選考委員　 「その街の今は」 中篇 184枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 石原慎太郎 74歳 全 ― 0   村上龍 54歳 全 ― 0   池澤夏樹 61歳 全 ― 0   高樹のぶ子 60歳 全 ― 0   黒井千次 74歳 全 ■ 5 「（引用者注：「図書準備室」と共に）可能性を孕んでいるが、それがまだ存分に展開しきれていない印象が残った。」 山田詠美 47歳 全 ■ 8 「登場人物の会話を読めば読むほど、大阪という街を好ましく感じ、地の文を読めば読むほど、大阪という街への興味を失う。関西弁は七難隠すということか。」 宮本輝 59歳 全 ◎ 22 「今回、私は二作（引用者注：「ひとり日和」と「その街の今は」）を推した。」「柴崎氏は非凡な才を見せている。ただこの小説が他の委員からの支持を得られなかったのは、なぜ主人公が昔の「ミナミ」の写真に強く惹かれるのかに筆が到っていない点だけでなく、小説のどこかにいわば「さび」の部分がないという決定的な瑕瑾によると思う。」 河野多恵子 80歳 全 ― 0

他の候補作 青山七恵 「ひとり日和」 佐川光晴 「家族の肖像」 田中慎弥 「図書準備室」 星野智幸 「植物診断室」

田中慎弥34歳×各選考委員　 「図書準備室」 短篇 116枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 石原慎太郎 74歳 全 ― 0   村上龍 54歳 全 ― 0   池澤夏樹 61歳 全 ◎ 20 「おもしろかった。」「太宰治や町田康の偽悪的饒舌に通じる文体で、最後まで聞いていたのは幼女一人という終わりの光景もいい。」「何よりもここには無謀な意図がある。破綻しかねないところをなんとかまとめている。その意図を買ったのだが、これを推したのはぼく一人だった。」 高樹のぶ子 60歳 全 ― 0   黒井千次 74歳 全 ■ 4 「（引用者注：「その街の今は」と共に）可能性を孕んでいるが、それがまだ存分に展開しきれていない印象が残った。」 山田詠美 47歳 全 ■ 10 「読み進めて行く内に、暗く、しつこいふざけ方に引き込まれ、この作品を推しても良いかもーとついうっかり思ってしまったが、鶏小屋のエピソードにさしかかったあたりから、もう、げんなり。」 宮本輝 59歳 全 ― 0   河野多恵子 80歳 全 ― 0

他の候補作 青山七恵 「ひとり日和」 佐川光晴 「家族の肖像」 柴崎友香 「その街の今は」 星野智幸 「植物診断室」

星野智幸41歳×各選考委員　 「植物診断室」 中篇 146枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 石原慎太郎 74歳 全 ― 0   村上龍 54歳 全 △ 5 「比較的高い完成度を持っていたが、素材や描写に「直感的な選択」が少なく、意識的・批評家的な部分が目立った。」 池澤夏樹 61歳 全 ● 5 「いくつものキャラクターを負わされた主人公は一個のパーソナリティーとしてのまとまりを得るに至っていない。」 高樹のぶ子 60歳 全 △ 9 「観念の構築物は、軟骨のない合体物のようなもので、たとえばスギノコって何の暗喩？　植物ヒーリングがなぜ必要なの？　などと個々の疑問に応えなくてはならない弱さをもっている。それがクリアされずに受賞に至らなかった。」 黒井千次 74歳 全 ■ 12 「仮定の家族関係と作中の植物イメージとがうまく支え合っていない恨みを覚える。」「（引用者注：「家族の肖像」と共に）明確な意図をもつ意欲作といえるが、それが自然体の受賞作ほどの支持を得られぬ選考結果となった。」 山田詠美 47歳 全 ◎ 10 「温室のような診断室の茫漠とした色彩の中に、現実を写し出すドローイングが、くっきりと映える。」「まるを付けたのは私だけ。『家族の肖像』とは仲の悪い親戚みたいなどと感じ、二作授賞もありかと思いきや……。」 宮本輝 59歳 全 ― 0   河野多恵子 80歳 全 ― 0

他の候補作 青山七恵 「ひとり日和」 佐川光晴 「家族の肖像」 柴崎友香 「その街の今は」 田中慎弥 「図書準備室」