選評の概要
114. 115.116. 117. 118. 119. 120.
121. 122. 123. 124. 125.
126. 127. 128. 129. 130.
131. 132. 133. 134. 135.
136. 137. 138. 139. 140.
141. 142. 143. 144. 145.
146. 147. 148. 149. 150.
151. 152. 153. 154. 155.
156. 157. 158. 159. 160.
161. 162.
生没年月日【注】 | 昭和22年/1947年3月6日~ | |
在任期間 | 第114回~第162回(通算24.5年・49回) | |
在任年齢 | 48歳9ヶ月~72歳9ヶ月 | |
経歴 | 本名=宮本正仁。兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒。サンケイ広告社に勤め、作家を志し昭和50年/1975年に退社。太宰治賞受賞で作家デビュー。 | |
受賞歴・候補歴 | ||
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個人全集 | 『宮本輝全集』全14巻(平成4年/1992年4月~平成5年/1993年5月・新潮社刊) | |
芥川賞候補歴 | 第78回受賞 「螢川」(『文芸展望』19号/昭和52年/1977年秋季号[10月]) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 宮本輝 49歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
福島次郎 | (66歳) |
◎ | 10 | 「好感を持ったが、いいところと悪いところの差がありすぎるという意見にはうなずかざるを得なかった。」「同性愛を苦しいまでの恋として描いた筆さばきに底力を感じた。この作者は、ここまで〈はらわた〉を見せるために長い年月が必要であったにちがいない。その点も含めて、私は(引用者中略)受賞作として推した。」 |
38歳 |
● | 8 | 「私はまったく評価していなかったので、最初の投票で委員の多くがこの作品を推したときには驚いてしまった。」「蛇が人間と化して喋ったりすることに、私は文学的幻想を感じない。」「私は最後まで「蛇を踏む」の受賞に反対意見を述べた。寓話はしょせん寓話でしかないと私は思っている。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号) |
選考委員 宮本輝 54歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
鈴木弘樹 | (38歳) |
◎ | 25 | 「私は(引用者中略)推した。」「文学が本来持っている重い錘を作品の底に垂らしていると思った。」「だが、この作品を推したのは私以外には古井委員だけ」「確かに読みづらい小説である。」「けれども、読み終えると、切なく湿った何物かが心に残った。」 |
29歳 |
■ | 25 | 「前回の「サイドカーに犬」とさして変わらない印象をうけた。」「なるほど「今日的問題」ではあろう。」「にもかかわらず、私はこの小説の軽さに納得できない。」「長嶋氏の文章は、ここ数年で頻出した軽やかな文章の延長線上に生まれた「メソッド」にすぎないという気がして、私は受賞に賛同できなかった。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号 |
選考委員 宮本輝 56歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
栗田有起 | 31歳 |
◎ | 25 | 「受賞作として推した」「三浦委員は「まごころと、生活への自信を持って生きている」と主人公を評したが、私もまったく同じ意見であった。「ハリガネムシ」とはたったの一票差で(引用者中略)受賞を逸した。」「文学賞の選考ではありがちなこととはいえ、私には釈然としないものが残った。」 |
42歳 |
● | 20 | 「受賞に私は反対した。」「また古臭いものをひきずり出してきたなという印象でしかなく、読んでいて汚ならしくて、不快感に包まれた。」「「文学」のテーマとしての「暴力性」とかそれに付随するセックスや獣性などといったものに、私はもう飽き飽きとしている。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年9月号 |
選考委員 宮本輝 58歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
松尾スズキ | 43歳 |
◎ | 26 | 「入院患者のひとりひとりが巧みに描かれ、しかも根底に書き手の愛情のようなものが確かに存在していると感じて受賞作に推した。他の委員の賛同は少なく、受賞には到らなかったが、松尾氏の次作を読みたいと思う。」 |
39歳 |
□ | 20 | 「私は二回読んだ。一回目は、いつもの絲山氏の世界だという感想しか持てなかったが、二回目に読み終えたとき、かなり印象が変わった。」「何年も実社会でもまれた人しか持ち得ない目が随所に光っている。」「あまりに小品ではあるが、氏の作家としての安定感は納得せざるを得ない。強く推す委員も多くて、私も受賞に賛成票を投じた。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年3月号 |
選考委員 宮本輝 59歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
23歳 |
◎ | 16 | 「今回、私は二作(引用者注:「ひとり日和」と「その街の今は」)を推した。」「主人公である二十歳の女性の、抑えた感情が終始一貫していて、それがこの小説に静かな哀しみの調べを奏でさせている。」「途中、冗長なところがあって、小説が長過ぎるのが欠点だが、読み終えると、それさえも、青春のけだるい生命力を表現するリズムと化していた。」 | |
柴崎友香 | 33歳 |
◎ | 22 | 「今回、私は二作(引用者注:「ひとり日和」と「その街の今は」)を推した。」「柴崎氏は非凡な才を見せている。ただこの小説が他の委員からの支持を得られなかったのは、なぜ主人公が昔の「ミナミ」の写真に強く惹かれるのかに筆が到っていない点だけでなく、小説のどこかにいわば「さび」の部分がないという決定的な瑕瑾によると思う。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成19年/2007年3月号 |
選考委員 宮本輝 64歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
石田千 | 43歳 |
◎ | 24 | 「受賞作に推した。」「あまり器用とはいえない石田さんの小説造りの底には、思いどおりにいかない現実社会であっても、地道に生きつづけることへの応援のような心意気が静かに息づいていて、たしかに「人々がいる」のだ。」 |
39歳 |
□ | 41 | 「賛否がこれほど大きく割れた候補作は珍しい。」「私はその中間の立場にいて、私には読み取れない何かがあるとしたら、受賞に強く賛成する委員の意見に耳を傾けたいと思っていた。」「最近の若い作家の眼の低さを思えば、たとえ手は低くても、その冒険や試みは買わなければならないと思い、私は受賞に賛成する側に廻った。フィクションになりそこねた言語論としてあらためて読むと、妙にフィクションとして成り立ってくる。」 | |
39歳 |
■ | 26 | 「小説の構成力、筆力等は、候補作中随一であることは、私も認める。しかし、私はこの「共喰い」という小説を生理的に受けつけることができなかった。」「何物かへの鬱屈した怒りのマグマの依って来たる根をもっと具体的にしなければ、肝心なところから腰が引けていることになるのではないのか。」「私ひとり、最後まで受賞に反対した。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年3月号 |
選考委員 宮本輝 66歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
岩城けい | 42歳 |
◎ | 34 | 「強く推した。」「外国語を「聞く、話す」だけではなく、「読む、書く」能力も持たなければ、その国での生活のランクアップは望めないのは、なにもオーストラリアに限ったことではない。サリマは挑戦を始めるのだ。」「私は一読して深く感動した。文学の感動、人間の感動というものに心打たれた。」 |
30歳 |
■ | 14 | 「平凡な一主婦がなべて抱くであろう心の穴を普遍化している。」「だがそれを幻想や非日常や、マジックリアリズムの手法で描きながら、突然あらわれた穴も、得体の知れない獣も、たくさんの子供たちなども、小説の最後ですべて消えてしまうことに、私は主題からの一種の逃げを感じて推さなかった。」 | |
「外野席からはうがった批判も多々あるようだが、選考にたずさわる多くの人々が真摯に作品と向き合って、この数十年間の日本の文学を担ってきたことは間違いのない事実なのだ。」「かつては新しいとされた幻想、非日常、マジックリアリズム等々も、すでに類型化している。今回、そのての「新しさ」が類型化したとき、作家は何に依って立つのかをあらためて考えさせられた。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年3月号 |
選考委員 宮本輝 67歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
高橋弘希 | 35歳 |
◎ | 28 | 「とりわけ最後の数行が、私をこの主人公の心情に同化させた。文章の力だと思う。その描写力や構造には非凡なものを感じ、高橋氏に才能を認めて受賞作に推したが、過半数に達する賛同を得られなかった。」 |
44歳 |
□ | 20 | 「最初の投票で過半数を得ていた。」「ひとつの小説のなかのパーツであって、これ一作で完成品として評価するわけにはいかないと思い、積極的には推せなかった」「しかし、ふるさとの持つ力、そのふるさとの人々の包容力が、主人公の置かれた厳しい境遇に一種楽観的な光明を与える結末は、小野氏の真の持ち味がやっと具象化されてきた証だと思う。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年3月号 |
選考委員 宮本輝 71歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
高山羽根子 | 43歳 |
○ | 39 | 「「居た場所」を推したが、どこか推し切れないものを抱いていた。」「主人公の妻は、おそらく中国からさほど遠くない小さな島に生まれて、少女時代にベトナムあたりに働きに行ったのであろう。いまは廃墟となったその町を訪ねていくのだが、廃墟をさまよっているうちに自分が住んでいた部屋をみつける。そこで起こる奇妙な出来事がいったい何の暗喩なのかが、私にはどうしてもわからなかった。」「読者の想像力にゆだねるにしても、これでは不親切過ぎる。」 |
39歳 |
□ | 11 | 「ビットコインやバベルの塔や小説中小説や「駄目な飛行機」といった玩具(引用者中略)が必要不可欠なつながりを持って有機的に作用している。作家としての技術的成長を感じて、私は授賞に賛成した。」 | |
35歳 |
△ | 11 | 「プロボクサーとしてはたぶん今後多くは望めないであろう青年の(引用者中略)ストイックさ、過酷さをひたむきに書きつづけて最後まで読ませる。」「今後の可能性を感じて授賞に反対しなかった。」 | |
「近未来的な作品ありファンタジックな作品あり、シリアスな作品ありで、今回は多彩な候補作が集まった。若い作家がそれぞれの世界を持ち始めた証であるなら、それは喜ばしい現象である。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』平成31年/2019年3月号 |