第133回

第132回第134回

平成17年/2005年上半期 平成17年/2005年7月14日決定発表／『文藝春秋』平成17年/2005年9月号選評掲載

選考委員　 黒井千次 73歳 石原慎太郎 72歳 山田詠美 46歳 村上龍 53歳 河野多恵子 79歳 宮本輝 58歳 池澤夏樹 60歳 高樹のぶ子 59歳 三浦哲郎 74歳 選評総行数　 46 78 44 57 43 45 48 45   評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 中村文則　「土の中の子供」 132枚 27歳 評 ◎ 24 △ 57 △ 6 ● 42 △ 10 □ 25 ■ 16 ○ 18     伊藤たかみ　「無花果カレーライス」 82枚 34歳 評 △ 8 ― 0 ■ 10 △ 16 △ 8 ■ 12 △ 7 ○ 7     楠見朋彦　「小鳥の母」 113枚 32歳 評 ● 4 ― 0 ● 9 ― 0 ● 7 ― 0 ■ 11 △ 4     栗田有起　「マルコの夢」 152枚 33歳 評 ■ 3 ― 0 ■ 5 ― 0 ■ 8 ― 0 ― 0 ■ 5     中島たい子　「この人と結婚するかも」 109枚 35歳 評 ■ 4 ― 0 ● 6 ― 0 ■ 5 ― 0 ― 0 ― 0     樋口直哉　「さよなら　アメリ力」 229枚 24歳 評 ■ 5 ■ 12 ● 6 ― 0 ■ 5 ― 0 ― 0 △ 11     松井雪子　「恋蜘蛛」 109枚 38歳 評 ● 3 ― 0 ● 4 ― 0 ■ 4 ― 0 ― 0 ― 0                     欠席 年齢/枚数の説明   見方・注意点

黒井千次73歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題骨格のある力作　総行数46　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 ◎ 24 「受賞作として推すことが出来ると思ったのは、（引用者中略）「土の中の子供」だけであった。」「〈この先にある〉何か、を懸命に追い求める男の意識が執拗に辿られている。」「ここに見られるのは原因と結果との単なる対応ではなく、より意志的な、過去の確認と現在の模索の営為ではなかろうか。それが仄かな明るみを生み出して作品が結ばれるところに共感する。」 伊藤たかみ 34歳 全 △ 8 「独得の湿り気を帯びた作ふうを持つ」「母と息子の関係より、三十近い二人の独身男のどこか薄汚れた関係が面白かった。」 楠見朋彦 32歳 全 ● 4 「死者への鎮魂と生者同士の関係に話が割れているのではないか。」 栗田有起 33歳 全 ■ 3 「前半と後半に同様の不満（引用者注：「さよなら　アメリカ」と同じく尻つぼまりに終っていること）を覚える。」 中島たい子 35歳 全 ■ 4 「達者ではあるけれど表層を滑り、」 樋口直哉 24歳 全 ■ 5 「主人公と同じ思いを持つ〈袋族〉を求めて出発した話が尻つぼまりに終っている。」 松井雪子 38歳 全 ● 3 「形に捉われて形が崩れている不満を覚える。」

他の選考委員 石原慎太郎 山田詠美 村上龍 河野多恵子 宮本輝 池澤夏樹 高樹のぶ子

石原慎太郎72歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題人間の暗部なる芯　総行数78　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 △ 57 「以前の二つの候補作のように、（引用者中略）象徴的でありながら現実的な物体を媒体としての暴力への傾斜という仕組みの方が、むしろ自然な物語として読めたと思う。」「（引用者注：今回の作品のように）背景に主人公の幼い頃からの被虐待という経験がもたらしたトラウマが在る、ということになると話がいかにもわかり過ぎて作品が薄くなることは否めない。」「観念としてではなしに、何か直裁なメタファを設定することでこの作者には将来、人間の暗部を探る独自の作品の造形が可能だと期待している。」 伊藤たかみ 34歳 全 ― 0   楠見朋彦 32歳 全 ― 0   栗田有起 33歳 全 ― 0   中島たい子 35歳 全 ― 0   樋口直哉 24歳 全 ■ 12 「一種カフカ的な世界を作り出そうとしているが、全体の印象はあっちへいったりこっちへ来たりしていかにも散漫だ。暗喩への思い付きは面白いが、着想に力量が及ばないという印象を否めない。」 松井雪子 38歳 全 ― 0     「今回の候補作の水準は総じて高いものだとはいえそうにない。第一それぞれの作品の題名からしてが安易で、語るに落ちるといったものが多かった。題名は作品の心髄を表象する重要な一部だと思うが。」

他の選考委員 黒井千次 山田詠美 村上龍 河野多恵子 宮本輝 池澤夏樹 高樹のぶ子

山田詠美46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題低調!!　総行数44　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 △ 6 「不感症の原因が死産。いかにも若い男子が考えそうなことですな。」「でも、小説を構築しようとしている作品はこれだけ。」 伊藤たかみ 34歳 全 ■ 10 「〈脳髄に向けて咲き乱れる、発狂の花〉……だって。うー、気恥しいぞ。可愛気はあるけれども。」 楠見朋彦 32歳 全 ● 9 「もしかしたら作者は、同じような体験をしたのか。それでなきゃここまでの感傷全開に平然としていられる筈はない。」 栗田有起 33歳 全 ■ 5 「おもしろくなるまでに枚数があり過ぎる。お縫い子テルミーは、いったいどこに？」 中島たい子 35歳 全 ● 6 「〈脱兎のごとく走り去った〉……だって。あああああ。どうして、こんなにも女性誌の記事っぽいのだろう。この人の文章はジャンルが違う。」 樋口直哉 24歳 全 ● 6 「この作品の一番の欠点は、つまんないことだ。」 松井雪子 38歳 全 ● 4 「恋と蜘蛛（の巣）の組み合わせは当り前過ぎる。幽霊と墓場みたいなもんだろう。あるいは妊娠と嘔吐とか？」   「今回、私はひとつも丸をつけませんでした。」

他の選考委員 黒井千次 石原慎太郎 村上龍 河野多恵子 宮本輝 池澤夏樹 高樹のぶ子

村上龍53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数57　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 ● 42 「虐待を受けた人の現実をリアルに描くのは簡単ではない。」「他人には理解しがたいものであり、本人も理解できていない場合も多い。」「『土の中の子供』は、そういう文学的な「畏れ」と「困難さ」を無視して書かれている。深刻さを単になぞったもので、痛みも怖さもない。そういう作品の受賞は、虐待やトラウマやＰＴＳＤの現実をさらにワイドショー的に陳腐化するという負の側面もあり、わたしは反対した。」 伊藤たかみ 34歳 全 △ 16 「（引用者注：子供時代の心的外傷を背景とした候補作の中では）好感を持った。」「虐待を受けた者だけが持つ「文脈」が若干垣間見られたが、全体的に未熟で受賞作として推すことはできなかった。」 楠見朋彦 32歳 全 ― 0   栗田有起 33歳 全 ― 0   中島たい子 35歳 全 ― 0   樋口直哉 24歳 全 ― 0   松井雪子 38歳 全 ― 0     「今回は全体的に作品の質が低かった。また子供時代の心的外傷が背景となっている作品がいくつか目についた。」

他の選考委員 黒井千次 石原慎太郎 山田詠美 河野多恵子 宮本輝 池澤夏樹 高樹のぶ子

河野多恵子79歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数43　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 △ 10 「今回の候補作でも暴力を、今度はネガティブの象（ルビ：かたち）で書いているが、非常に難しいことではあるにしても、人間の内部に確実に触れるには到っていない。とはいえ、物や小生物などを落下させるくだり、さらに自分を落下させた場合も想像の表現は、尋常ならぬ見事なものだ。」 伊藤たかみ 34歳 全 △ 8 「割合よく書けていたが、選考のために読んでいる意識を忘れさせてもらえるほどの出来栄えには達していない。」 楠見朋彦 32歳 全 ● 7 「主人公の主観と客観の扱い分けが大雑把である。」 栗田有起 33歳 全 ■ 8 「今度も特異な題材だが、若い主人公は男性である。期待して読んだが、途中から題材が独り歩きして作品が浮いてゆく。」 中島たい子 35歳 全 ■ 5 「（引用者注：「恋蜘蛛」と共に）無難な作ながら、主題に深みが感じられない。」 樋口直哉 24歳 全 ■ 5 「非リアリズムを目指した作品なのに、読者の眼がリアリズムに引き戻されるようなことを時々してしまう。」 松井雪子 38歳 全 ■ 4 「（引用者注：「この人と結婚するかも」と共に）無難な作ながら、主題に深みが感じられない。」   「今回の候補作には、ぜひとも受賞作にしたいものがなくて残念だった。」

他の選考委員 黒井千次 石原慎太郎 山田詠美 村上龍 宮本輝 池澤夏樹 高樹のぶ子

宮本輝58歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題穴の深さ　総行数45　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 □ 25 「前作、前々作と比して（引用者中略）語彙のひろがりを感じたが、幼児期に養父母によってひどい虐待を受けつづけた過去を持つ青年の内面に筆が届いているとは思えなかった。」「リスクを負っている素材であることを中村氏がどこまで自覚しているか、私にはどうもこころもとなくて、（引用者中略）推す委員の意見に賛同しづらかったが、二十七歳という若さと今後の可能性を買うことにした。」 伊藤たかみ 34歳 全 ■ 12 「無花果ジャムをカレーに混ぜると味がまろやかになるという一種のキーワードが、小説に何の意味ももたらしていない。」 楠見朋彦 32歳 全 ― 0   栗田有起 33歳 全 ― 0   中島たい子 35歳 全 ― 0   樋口直哉 24歳 全 ― 0   松井雪子 38歳 全 ― 0     「今回は候補作七篇、どれも決め手がなく、選考は難航した。」「七作のうち五作は、いわば論外として早々に賞の対象から外れ、残った二作（引用者注：「土の中の子供」と「無花果カレーライス」）から受賞作を出すかどうかに論議が絞られた形となった。」

他の選考委員 黒井千次 石原慎太郎 山田詠美 村上龍 河野多恵子 池澤夏樹 高樹のぶ子

池澤夏樹60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題他者について　総行数48　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 ■ 16 「前二作に比して小説としての体裁がずっとよくなったとは思った。ただ、この作も骨格は要するに自問自答なのだ。対話があるとすれば相手は過去の自分であり、その周辺にエピソードが並べられるという構図で、ここには真の他者がいない。」 伊藤たかみ 34歳 全 △ 7 「たしかに母という他者を書いている。不器用な点が少なくないので今回は授賞には至らなかったけれど、（引用者注：「土の中の子供」よりも）こちらの方が小説の王道だろうか。」 楠見朋彦 32歳 全 ■ 11 「家が崩壊して母を失うという中心になる事件が大きすぎる。作品全体がこれを支えることに終始している。」「ぼくは前に候補作になった「零歳の詩人」や「マルコ・ポーロと私」のような奔放な話の方が好きだった。」 栗田有起 33歳 全 ― 0   中島たい子 35歳 全 ― 0   樋口直哉 24歳 全 ― 0   松井雪子 38歳 全 ― 0     「最近、芥川賞の選考会の議論がおもしろいと思うようになった。」「そこで他の委員たちの意見を聞くのが楽しい。今回ならば中村文則さんの「土の中の子供」についての盟友村上龍の意見は瞠目に値した」

他の選考委員 黒井千次 石原慎太郎 山田詠美 村上龍 河野多恵子 宮本輝 高樹のぶ子

高樹のぶ子59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題ならばこの先にも　総行数45　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 中村文則 27歳 全 ○ 18 「運命的で理不尽な暴力の被害者が、暴力で応報せず、自らの恐怖の感覚を克服することで生きのびようとする観念小説だ。」「地表があちこちで動いているとき、深い岩盤にまで人間探求の杭を打ち込もうとする試みは、その重さと不自由さゆえ反時代的に見える。しかしそのような小説はちょっと前にも、その昔にも、さらにその昔にもあった。ならばこの先にもあり得るはずだ。」 伊藤たかみ 34歳 全 ○ 7 「いくつかの印象的な場面に短篇の才能を感じる。とりわけ最後の無言電話を放置した中で母親と和解する終り方は秀逸だ。」 楠見朋彦 32歳 全 △ 4 「一定のリズムで刻み込んでいくモノローグの口調に、力強さと安定感がある。」 栗田有起 33歳 全 ■ 5 「キノコのいきいきとして獰猛な生命感が印象的だが、人間について何が書かれているのかと問うと少々心もとない。」 中島たい子 35歳 全 ― 0   樋口直哉 24歳 全 △ 11 「理屈ではなく情景で伝えようとする姿勢に、期待が持てる。ただ今回、その情景のいくつかに（引用者中略）、どこかで読んだ既視感がつきまとった。」 松井雪子 38歳 全 ― 0

他の選考委員 黒井千次 石原慎太郎 山田詠美 村上龍 河野多恵子 宮本輝 池澤夏樹

中村文則27歳×各選考委員　 「土の中の子供」 短篇 132枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 ◎ 24 「受賞作として推すことが出来ると思ったのは、（引用者中略）「土の中の子供」だけであった。」「〈この先にある〉何か、を懸命に追い求める男の意識が執拗に辿られている。」「ここに見られるのは原因と結果との単なる対応ではなく、より意志的な、過去の確認と現在の模索の営為ではなかろうか。それが仄かな明るみを生み出して作品が結ばれるところに共感する。」 石原慎太郎 72歳 全 △ 57 「以前の二つの候補作のように、（引用者中略）象徴的でありながら現実的な物体を媒体としての暴力への傾斜という仕組みの方が、むしろ自然な物語として読めたと思う。」「（引用者注：今回の作品のように）背景に主人公の幼い頃からの被虐待という経験がもたらしたトラウマが在る、ということになると話がいかにもわかり過ぎて作品が薄くなることは否めない。」「観念としてではなしに、何か直裁なメタファを設定することでこの作者には将来、人間の暗部を探る独自の作品の造形が可能だと期待している。」 山田詠美 46歳 全 △ 6 「不感症の原因が死産。いかにも若い男子が考えそうなことですな。」「でも、小説を構築しようとしている作品はこれだけ。」 村上龍 53歳 全 ● 42 「虐待を受けた人の現実をリアルに描くのは簡単ではない。」「他人には理解しがたいものであり、本人も理解できていない場合も多い。」「『土の中の子供』は、そういう文学的な「畏れ」と「困難さ」を無視して書かれている。深刻さを単になぞったもので、痛みも怖さもない。そういう作品の受賞は、虐待やトラウマやＰＴＳＤの現実をさらにワイドショー的に陳腐化するという負の側面もあり、わたしは反対した。」 河野多恵子 79歳 全 △ 10 「今回の候補作でも暴力を、今度はネガティブの象（ルビ：かたち）で書いているが、非常に難しいことではあるにしても、人間の内部に確実に触れるには到っていない。とはいえ、物や小生物などを落下させるくだり、さらに自分を落下させた場合も想像の表現は、尋常ならぬ見事なものだ。」 宮本輝 58歳 全 □ 25 「前作、前々作と比して（引用者中略）語彙のひろがりを感じたが、幼児期に養父母によってひどい虐待を受けつづけた過去を持つ青年の内面に筆が届いているとは思えなかった。」「リスクを負っている素材であることを中村氏がどこまで自覚しているか、私にはどうもこころもとなくて、（引用者中略）推す委員の意見に賛同しづらかったが、二十七歳という若さと今後の可能性を買うことにした。」 池澤夏樹 60歳 全 ■ 16 「前二作に比して小説としての体裁がずっとよくなったとは思った。ただ、この作も骨格は要するに自問自答なのだ。対話があるとすれば相手は過去の自分であり、その周辺にエピソードが並べられるという構図で、ここには真の他者がいない。」 高樹のぶ子 59歳 全 ○ 18 「運命的で理不尽な暴力の被害者が、暴力で応報せず、自らの恐怖の感覚を克服することで生きのびようとする観念小説だ。」「地表があちこちで動いているとき、深い岩盤にまで人間探求の杭を打ち込もうとする試みは、その重さと不自由さゆえ反時代的に見える。しかしそのような小説はちょっと前にも、その昔にも、さらにその昔にもあった。ならばこの先にもあり得るはずだ。」

他の候補作 伊藤たかみ 「無花果カレーライス」 楠見朋彦 「小鳥の母」 栗田有起 「マルコの夢」 中島たい子 「この人と結婚するかも」 樋口直哉 「さよなら　アメリ力」 松井雪子 「恋蜘蛛」

伊藤たかみ34歳×各選考委員　 「無花果カレーライス」 短篇 82枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 △ 8 「独得の湿り気を帯びた作ふうを持つ」「母と息子の関係より、三十近い二人の独身男のどこか薄汚れた関係が面白かった。」 石原慎太郎 72歳 全 ― 0   山田詠美 46歳 全 ■ 10 「〈脳髄に向けて咲き乱れる、発狂の花〉……だって。うー、気恥しいぞ。可愛気はあるけれども。」 村上龍 53歳 全 △ 16 「（引用者注：子供時代の心的外傷を背景とした候補作の中では）好感を持った。」「虐待を受けた者だけが持つ「文脈」が若干垣間見られたが、全体的に未熟で受賞作として推すことはできなかった。」 河野多恵子 79歳 全 △ 8 「割合よく書けていたが、選考のために読んでいる意識を忘れさせてもらえるほどの出来栄えには達していない。」 宮本輝 58歳 全 ■ 12 「無花果ジャムをカレーに混ぜると味がまろやかになるという一種のキーワードが、小説に何の意味ももたらしていない。」 池澤夏樹 60歳 全 △ 7 「たしかに母という他者を書いている。不器用な点が少なくないので今回は授賞には至らなかったけれど、（引用者注：「土の中の子供」よりも）こちらの方が小説の王道だろうか。」 高樹のぶ子 59歳 全 ○ 7 「いくつかの印象的な場面に短篇の才能を感じる。とりわけ最後の無言電話を放置した中で母親と和解する終り方は秀逸だ。」

他の候補作 中村文則 「土の中の子供」 楠見朋彦 「小鳥の母」 栗田有起 「マルコの夢」 中島たい子 「この人と結婚するかも」 樋口直哉 「さよなら　アメリ力」 松井雪子 「恋蜘蛛」

楠見朋彦32歳×各選考委員　 「小鳥の母」 短篇 113枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 ● 4 「死者への鎮魂と生者同士の関係に話が割れているのではないか。」 石原慎太郎 72歳 全 ― 0   山田詠美 46歳 全 ● 9 「もしかしたら作者は、同じような体験をしたのか。それでなきゃここまでの感傷全開に平然としていられる筈はない。」 村上龍 53歳 全 ― 0   河野多恵子 79歳 全 ● 7 「主人公の主観と客観の扱い分けが大雑把である。」 宮本輝 58歳 全 ― 0   池澤夏樹 60歳 全 ■ 11 「家が崩壊して母を失うという中心になる事件が大きすぎる。作品全体がこれを支えることに終始している。」「ぼくは前に候補作になった「零歳の詩人」や「マルコ・ポーロと私」のような奔放な話の方が好きだった。」 高樹のぶ子 59歳 全 △ 4 「一定のリズムで刻み込んでいくモノローグの口調に、力強さと安定感がある。」	他の候補作 中村文則 「土の中の子供」 伊藤たかみ 「無花果カレーライス」 栗田有起 「マルコの夢」 中島たい子 「この人と結婚するかも」 樋口直哉 「さよなら　アメリ力」 松井雪子 「恋蜘蛛」

栗田有起33歳×各選考委員　 「マルコの夢」 中篇 152枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 ■ 3 「前半と後半に同様の不満（引用者注：「さよなら　アメリカ」と同じく尻つぼまりに終っていること）を覚える。」 石原慎太郎 72歳 全 ― 0   山田詠美 46歳 全 ■ 5 「おもしろくなるまでに枚数があり過ぎる。お縫い子テルミーは、いったいどこに？」 村上龍 53歳 全 ― 0   河野多恵子 79歳 全 ■ 8 「今度も特異な題材だが、若い主人公は男性である。期待して読んだが、途中から題材が独り歩きして作品が浮いてゆく。」 宮本輝 58歳 全 ― 0   池澤夏樹 60歳 全 ― 0   高樹のぶ子 59歳 全 ■ 5 「キノコのいきいきとして獰猛な生命感が印象的だが、人間について何が書かれているのかと問うと少々心もとない。」	他の候補作 中村文則 「土の中の子供」 伊藤たかみ 「無花果カレーライス」 楠見朋彦 「小鳥の母」 中島たい子 「この人と結婚するかも」 樋口直哉 「さよなら　アメリ力」 松井雪子 「恋蜘蛛」

中島たい子35歳×各選考委員　 「この人と結婚するかも」 短篇 109枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 ■ 4 「達者ではあるけれど表層を滑り、」 石原慎太郎 72歳 全 ― 0   山田詠美 46歳 全 ● 6 「〈脱兎のごとく走り去った〉……だって。あああああ。どうして、こんなにも女性誌の記事っぽいのだろう。この人の文章はジャンルが違う。」 村上龍 53歳 全 ― 0   河野多恵子 79歳 全 ■ 5 「（引用者注：「恋蜘蛛」と共に）無難な作ながら、主題に深みが感じられない。」 宮本輝 58歳 全 ― 0   池澤夏樹 60歳 全 ― 0   高樹のぶ子 59歳 全 ― 0	他の候補作 中村文則 「土の中の子供」 伊藤たかみ 「無花果カレーライス」 楠見朋彦 「小鳥の母」 栗田有起 「マルコの夢」 樋口直哉 「さよなら　アメリ力」 松井雪子 「恋蜘蛛」

樋口直哉24歳×各選考委員　 「さよなら　アメリ力」 中篇 229枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 ■ 5 「主人公と同じ思いを持つ〈袋族〉を求めて出発した話が尻つぼまりに終っている。」 石原慎太郎 72歳 全 ■ 12 「一種カフカ的な世界を作り出そうとしているが、全体の印象はあっちへいったりこっちへ来たりしていかにも散漫だ。暗喩への思い付きは面白いが、着想に力量が及ばないという印象を否めない。」 山田詠美 46歳 全 ● 6 「この作品の一番の欠点は、つまんないことだ。」 村上龍 53歳 全 ― 0   河野多恵子 79歳 全 ■ 5 「非リアリズムを目指した作品なのに、読者の眼がリアリズムに引き戻されるようなことを時々してしまう。」 宮本輝 58歳 全 ― 0   池澤夏樹 60歳 全 ― 0   高樹のぶ子 59歳 全 △ 11 「理屈ではなく情景で伝えようとする姿勢に、期待が持てる。ただ今回、その情景のいくつかに（引用者中略）、どこかで読んだ既視感がつきまとった。」

他の候補作 中村文則 「土の中の子供」 伊藤たかみ 「無花果カレーライス」 楠見朋彦 「小鳥の母」 栗田有起 「マルコの夢」 中島たい子 「この人と結婚するかも」 松井雪子 「恋蜘蛛」

松井雪子38歳×各選考委員　 「恋蜘蛛」 短篇 109枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 黒井千次 73歳 全 ● 3 「形に捉われて形が崩れている不満を覚える。」 石原慎太郎 72歳 全 ― 0   山田詠美 46歳 全 ● 4 「恋と蜘蛛（の巣）の組み合わせは当り前過ぎる。幽霊と墓場みたいなもんだろう。あるいは妊娠と嘔吐とか？」 村上龍 53歳 全 ― 0   河野多恵子 79歳 全 ■ 4 「（引用者注：「この人と結婚するかも」と共に）無難な作ながら、主題に深みが感じられない。」 宮本輝 58歳 全 ― 0   池澤夏樹 60歳 全 ― 0   高樹のぶ子 59歳 全 ― 0	他の候補作 中村文則 「土の中の子供」 伊藤たかみ 「無花果カレーライス」 楠見朋彦 「小鳥の母」 栗田有起 「マルコの夢」 中島たい子 「この人と結婚するかも」 樋口直哉 「さよなら　アメリ力」