選評の概要
123. 124. 125.126. 127. 128. 129. 130.
131. 132. 133. 134. 135.
136. 137. 138. 139. 140.
141. 142. 143. 144. 145.
146. 147. 148. 149. 150.
151. 152. 153. 154. 155.
156. 157. 158.
生没年月日【注】 | 昭和27年/1952年2月19日~ | |
在任期間 | 第123回~第158回(通算18年・36回) | |
在任年齢 | 48歳4ヶ月~65歳10ヶ月 | |
経歴 | 本名=村上龍之助。長崎県佐世保市生まれ。武蔵野美術大学造形学部中退。昭和51年/1976年に作家デビュー。 | |
受賞歴・候補歴 |
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芥川賞候補歴 | 第75回受賞 「限りなく透明に近いブルー」(『群像』昭和51年/1976年6月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 村上龍 48歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
吉田修一 | 32歳 |
◎ | 17 | 「面白く読んだ。」「自然発生的に起こるエピソードにも、周囲の人々との会話にもリアリティを感じた。だが、同棲している子持ちの女性が、主人公に向かって最後にほうで言う台詞が致命的だったように思う。」「しかし、好きなディテールがたくさんあり、受賞に値する作品だと思ったので、わたしは一番に推した」 |
37歳 |
○ | 10 | 「候補作の中で(引用者注:「熱帯魚」に次いで)二番目に好きな作品だった。他者とのコミュニケーションというのは簡単ではない、ということを作者は描いているのだと判断した。」「コミュニケーション不全という普遍的なモチーフが、ペダンチックに単純に堕するのを、かろうじて防いでいる。ただ冒頭の夢のシーンは不要なのではないかと思った。」 | |
42歳 |
― | 0 | ||
「今回は前回より、作品の密度が相対的に高かった。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号) |
選考委員 村上龍 50歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
松井雪子 | 36歳 |
○ | 42 | 「もっとも面白く読んだ。」「だが受賞には至らないだろうと思った。ある意味で稚拙だったからだ。本当は単に稚拙というわけではなく、ポップなのだが、そのことを他の選考委員に理解してもらうのは無理だろうとあきらめた。他の選考委員にポップへの理解がないというわけではない。近代化がそう刷り込まれているか、その違いによって、ポップへの評価は分かれる。」 |
36歳 |
● | 11 | 「わたしの元気を奪った。」「小説として単につまらないからだ。文章は洗練されているが、その洗練は、現実への安易な屈服・あきらめと、終焉した近代化への媚びと依存に支えられたもので、それがわたしの力を奪ったのである。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号 |
選考委員 村上龍 55歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
31歳 |
◎ | 17 | 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「「乳と卵」だけが受賞したのだが、作者の力量と作品の完成度からすると妥当な結果だと言える。」「長い長い地の文は充分にコントロールされていて、ときおり関西弁が挿入されるが、読者のために緻密に「翻訳」されている。」 | |
山崎ナオコーラ | 29歳 |
◎ | 23 | 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「非常に好感が持てる作品で、最初から最後まで破綻がなく面白く読んだ。」「特に、「疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。」という一節は、正統な欲望・欲求を持ち得ない成熟社会の若い男の台詞として象徴的だと思った。だが他の選考委員の評価は低く、「スカスカで何もない」という批判が多かった。」 |
楊逸 | 43歳 |
◎ | 26 | 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「日本語表現が「稚拙」という理由で受賞には至らなかった。だがわたしは、移民二世や在日外国人による今後の日本語表現にモチベーションを与えるという意味でも受賞してほしかった。」「それにしても、ヒロインの中国人女性の視点で描かれた日本の地方の「惨状」はリアルだった。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年3月号 |
選考委員 村上龍 57歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
藤野可織 | 29歳 |
◎ | 18 | 「わたしは(引用者中略)推した。」「地元の薄幸な画家の常設展示室で、ある何かを待ちながらたたずむ初老の女性は、結果として現代を象徴していると思えた。」「自覚的に、また無意識のうちに、正確で抑制された情景および心理描写を武器に、ある情報を物語に織り込むことができた場合に限って、作品は結果的に現代を象徴するものとなる。」 |
44歳 |
● | 11 | 「感情移入できなかった。現代を知的に象徴しているかのように見えるが、作者の意図や計算が透けて見えて、わたしはいくつかの死語となった言葉を連想しただけだった。ペダンチック、ハイブロウといった、今となってはジョークとしか思えない死語である。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年9月号 |
選考委員 村上龍 63歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
島本理生 | 32歳 |
○ | 24 | 「わたしは、この作者は、以前にはなかった重要な何かを獲得しているのかも知れないと思った。言葉にすると陳腐になってしまうが、それは「退廃の萌芽」のようなものだ。」「『夏の裁断』には、その(引用者注:魅惑的で危うい退廃の)萌芽のようなものがあり、わたしは静かな興奮を味わうことができた。」 |
29歳 |
△ | 8 | 「共感を覚えなかった。だが作者の技量は高く、他の何人もの選考委員が魅了されたのも理解できる。描かれた世界が、わたしの個人的な好みと合わなかっただけだ。」 | |
35歳 |
△ | 41 | 「「文学」へのリスペクトが感じられ、かつとてもていねいに書かれていて好感を持ったが、積極的に推すことができなかった。」「「長すぎる」と思ったからだ。」「新人作家だけが持つ「手がつけられない恐さ」「不思議な魅力を持つ過剰や欠落」がない。だが、それは、必然性のあるモチーフを発見し物語に織り込んでいくことが非常に困難なこの時代状況にあって、「致命的な欠点」とは言えないだろう。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年9月号 |