選評の概要
114. 115.116. 117. 118. 119. 120.
121. 122. 123. 124. 125.
126. 127. 128. 129. 130.
131. 132. 133. 134. 135.
136. 137. 138. 139. 140.
141. 142. 143. 144. 145.
146.
生没年月日【注】 | 昭和7年/1932年9月30日~令和4年/2022年2月1日 | |
在任期間 | 第114回~第146回(通算16.5年・33回) | |
在任年齢 | 63歳3ヶ月~79歳3ヶ月 | |
経歴 | 兵庫県神戸市生まれ。一橋大学卒。在学中に作家デビュー。参議院議員、衆議院議員を経て東京都知事。 | |
受賞歴・候補歴 |
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個人全集 | 『石原愼太郎の文学』全10巻(平成19年/2007年1月~10月・文藝春秋刊) | |
芥川賞候補歴 | 第34回受賞 「太陽の季節」(『文學界』昭和30年/1955年7月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 石原慎太郎 63歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
福島次郎 | (66歳) |
◎ | 18 | 「私と宮本氏だけが(引用者中略)強く推したが、どうやら少数意見でしかなかった。」「ここに描かれている高校教師とその生徒との関わりは間違いなく愛であり、しかも哀切である。誰かがこれが男と女の関係ならばただの純愛小説だといっていたが、もしそうとしてもそれがなぜ小説としての瑕瑾となるのか。」「この作品だけが私には官能的なものとして読めた。小説が与える官能こそが小説の原点的な意味に違いない。」 |
38歳 |
● | 6 | 「私には全く評価出来ない。蛇がいったい何のメタファなのかさっぱりわからない。」「こんな代物が歴史ある文学賞を受けてしまうというところにも、今日の日本文学の衰弱がうかがえるとしかいいようがない。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号) |
選考委員 石原慎太郎 64歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
37歳 |
○ | 15 | 「氏の作家としての力量を感じさせる幅も奥も深い作品である。人間の心、というよりも体の芯に潜む邪悪なるものの不可知さに正面きって向かい合い厄介な主題をとにかくもこなしている。」「ある選者はこの男(引用者注:花井)の衝動は理解出来ないし、作者もそれを描き切れていないといったが、理解できぬ人間の本性の部分を理解を求めて描く必要がある訳はない。」 | |
青来有一 | 38歳 |
○ | 12 | 「面白く読んだ。有明海という特異な海域がよく描かれていて、それが、これもたいそう都合よく設定されている人間たちにも信憑性を与えている。」「文学としての安直さが、たとえば『泥海の兄弟』という題にも出ている。」「しかしなお、(引用者中略)船を出した父親がそのまま漂流して死んでいくといった挿話は、ヘミングウェイの優れた短編の世界にも繋がって強い印象を受けた。」 |
28歳 |
■ | 5 | 「全体の設定がいかにも演劇的で小説としての魅力を殺いでいる。」 | |
「今回の芥川賞のヴィンテイジは当たり年ともいえるのではなかろうか。箸にも棒にもかからぬような候補作とつき合わされる不幸をかこつこともままあるが、今回はどの作品も一応は読ませてくれた。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年3月号) |
選考委員 石原慎太郎 66歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
青来有一 | 40歳 |
○ | 15 | 「面白く読んだが、他の選者の支持は意外に少なかった。この作家は段々にその腕を上げて来ていると思う。」「これがもし長編にしたてられていたなら、アーサー・ヘイリーの成功作ほどのものにはなっていたろうに。ただ枚数の制限のせいでか、終りに近い部分でのドラッグの扱い方はいかにも安易という気はするが。」 |
「今回総じて感じられたことは、作品の肝心な主題の存在感がいかにも稀薄ということだった。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年9月号) |
選考委員 石原慎太郎 70歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
中村文則 | 25歳 |
○ | 27 | 「候補作の中で唯一つ(引用者中略)最後まで面白く読んだ。」「非日常性の象徴ともいえる凶器によって主人公の生活に今まで存在しなかった、緊張と孤独さをともなった新しい生活のリズムのようなものが生まれてくる。」「ただ最後の、実際に電車の中で見知らぬ男を射殺してしまうエンディングはいかにも通俗、ありきたりでしかない。しかしこの作家の力量、というよりもそれ以前の、最後までドライブがかかり通すエネルギーは貴重」 |
36歳 |
● | 10 | 「少なくとも私は何の感動も衝撃も感じなかった。」「はたしてこの作品にユーモアがあろうか。強いていえばアンニュイというところなのかも知れないが、私は何の共感も感じない。」 | |
「新しい作家の新しい作品に期待されるものは、形や内容が何であれ未曾有なデモニッシュなるものだと思うが、今回の候補作のどれもそうした要求を満たしてくれはしなかった。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号 |
選考委員 石原慎太郎 71歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
中村航 | 34歳 |
○ | 8 | 「タッチも良く一番面白く読めた。」「今日のよろずバーチャルなものごとについての一種の文明批判とも読める気もする。」 |
20歳 |
■ | 18 | 「私には現代の若もののピアスや入れ墨といった肉体に付着する装飾への執着の意味合いが本質的に理解出来ない。選者の誰かは、肉体の毀損による家族への反逆などと説明していたが、私にはただ浅薄な表現衝動としか感じられない。」 | |
19歳 |
― | 0 | ||
「今回の候補作の作者はいずれも若い、ということでそれぞれの主題がそれぞれの青春についてであったことは当然のことだろうが、それにしてもこの現代における青春とは、なんと閉塞的なものなのだろうか。」「すべての作品の印象は読んでいかにもスムースだが、軽すぎて読後に滞り残るものがほとんどない。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年3月号 |
選考委員 石原慎太郎 73歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
本谷有希子 | 26歳 |
○ | 16 | 「一番面白く読めた。」「確かに男の以前の愛人の登場などは都合良すぎる形だが、話しの運びのテンポも良くさりげなく現代の本髄のある部分を切り取っていると思う。」「衆寡敵せず選外とはなったが、劇作家の書く小説に限界があるとは私は思わない。」 |
35歳 |
△ | 22 | 「私は推さなかった」「部分的には巧みで鋭く感覚的なところもあるが、いかに軽く他愛ないものだろうと、離婚という、結婚を選択して選び合った男と女の別離の芯の芯にあるものの重さをちらとでも感じさせるのが文学の本髄というものではなかろうか。」 | |
「私は兼ねている仕事柄雑務が多いので読み過ごしては申し訳ないと思い、候補作が届けられると出来るだけ早く目を通すことにしているが、選考の場に来て論じる際に鮮明に思い出すことの出来る作品がいかにも少ない。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年9月号 |
選考委員 石原慎太郎 75歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
羽田圭介 | 22歳 |
○ | 23 | 「実に面白く読んだ。」「読んだ、というよりも作品を読みながら味合った不思議な快感、臨場感というべきものか、」「ともかくも、読みながら辺りの風景が次々に流れて変わっていくという一種の快感は希有なるものだった。」「ただ物置に長くほうりこんであった中古のロードレーサーで青森まで走って、途中パンクなどのトラブルが無い訳はなさそうだ。」 |
44歳 |
● | 13 | 「彼ら(引用者注:中国の学生たち)の人生を左右する政治の不条理さ無慈悲さという根源的な主題についての書きこみが乏しく、単なる風俗小説の域を出ていない。文章はこなれて来てはいても、書き手がただ中国人だということだけでは文学的評価には繋がるまい。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年9月号 |
選考委員 石原慎太郎 77歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
シリン・ネザマフィ | 30歳 |
◎ | 21 | 「部分的には、こなれていない表現もあるが、作者が提示している問題は現代における文学にとっての新しい主題ともいえる。日本における現代文学のこれからの一つの方向性を暗示していると思う。」「私はこの二つの作品(引用者注:「うちに帰ろう」と「拍動」)を当選作として推したものだ。」 |
広小路尚祈 | 38歳 |
◎ | 27 | 「この主人公の心得は太宰治的な滅入り方ではなしに、当人は居直り割り切っている潔よさまであって、おそらく現代ではある種の強い共感さえ呼ぶのではなかろうかと思い推薦したものだったが。」「私はこの二つの作品(引用者注:「うちに帰ろう」と「拍動」)を当選作として推したものだ。」 |
35歳 |
● | 19 | 「今日の日本においてアンネなる少女の悲しい生涯がどれほどの絶対性を持つのかは知らぬが、所詮ただ技巧的人工的な作品でしかない。こんな作品を読んで一体誰が、己の人生に反映して、いかなる感動を覚えるものだろうか。アクチュアルなものはどこにも無い。」「日本の現代文学の衰弱を表象する作品の一つとしか思えない。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成22年/2010年9月号 |