第86回

第85回第87回

昭和56年/1981年下半期 昭和57年/1982年1月18日決定発表／『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号選評掲載

選考委員　 吉行淳之介 57歳 丹羽文雄 77歳 大江健三郎 46歳 遠藤周作 58歳 瀧井孝作 87歳 丸谷才一 56歳 安岡章太郎 61歳 井上靖 74歳 開高健 51歳 中村光夫 70歳 選評総行数　 28 26 30 27 22 22 30 13 31 29 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 高樹のぶ子　「遠すぎる友」 129枚 35歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 増田みず子　「小さな娼婦」 74枚 33歳 評 ― 0 ― 0 ■ 9 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 宮内勝典　「火の降る日」 125枚 37歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 5 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 木崎さと子　「離郷」 145枚 42歳 評 □ 19 △ 25 ■ 7 ― 0 ■ 3 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0 ― 0 車谷長吉　「万蔵の場合」 150枚 36歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0 ■ 9 佐藤泰志　「きみの鳥はうたえる」 212枚 32歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 △ 22 ― 0 △ 6 ― 0 ■ 11 飯尾憲士　「隻眼の人」 74枚 55歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0 ― 0 △ 6 ― 0 ― 0 喜多哲正　「影の怯え」 119枚 (45歳) 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0         欠席           年齢/枚数の説明   見方・注意点

吉行淳之介57歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数28　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 □ 19 「おもしろくて次のページがたのしみだった。このときは、今回はこれだろう、と考えたが、五分の三あたりからにわかに索莫としてしまった。」「よく調べてみると、二つの小説として成立するものを無理に一つにしてしまい、そのつなぎ目に精神分析らしきものを使ったためらしい、と分った。老人に積極的に心を開いてゆく若い人妻の物語は独立させないといけない。」 車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 ― 0   飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「候補作八篇を読み終って、今回は残念だが授賞作なし、になってしまうかな、とおもった。それにしても、近年短篇はどんどん長くなり、内容に比べてあまりにも長過ぎるものが多い。」「最後に三篇残ったが、それは当選圏内にあるという残り方ではなく、あとの五篇とそんなに差のあるものではなかった。」

他の選考委員 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 開高健 中村光夫

丹羽文雄77歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題一作　総行数26　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 △ 25 「このままでは当選とならないが、すこし手を入れたならば、気の利いた作品が出来たにちがいないと思われる」「藍子というえたいの知れない女が、献身的に老人に仕えている。老人が死ぬ。正妻が現れる。葬儀となる。（引用者中略）作品はここで藍子の過去をひき出した。小説の印象が分裂を起した。まったくよけいな部分であった。」 車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 ― 0   飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「今回は授賞者なしという結果になったのは妥当な審査であった。」	他の選考委員 吉行淳之介 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 開高健 中村光夫

大江健三郎46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題書きなおしの必要性　総行数30　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ■ 9 「この人の個性、つまり理科系の感受性と言葉で、他者と事物に立ちむかう力を、看護婦の設定で生かしている。ところがプロットのまとめの際にヤスキにつき、あいまいな抒情性のしめくくりをつける。僕が教師なら、プロットの不整合で玉砕しても、あなたの個性をつらぬきなさい、というだろう。」 宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ■ 7 「語りの視点をになう人物の設定がまちがっている。この人物を発明することで視野は拡大されたが、作者の人間観、主題は、この人物の感受性と別のものだ。そこで作者は、重要な人物のそれぞれに説明的な告白をさせたくなる。」 車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 ― 0   飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「この賞の銓衡は、授賞作がない時、苦しいし永びきもするが、議論としては質が深められ、層が多様になる。終ってから、力をつくした後の明るさも出てくる。銓衡での具体的な作品評を、担当の編集者から候補者へつたえてもらうことを僕は望む。」

他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 開高健 中村光夫

遠藤周作58歳×各候補作

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題噴出力の乏しさ　総行数27　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ― 0   車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 ― 0   飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「どんな反対意見があっても、これだけは奨したいという作品はなかった。」「私はなんだか新人の作家が書きすぎるような気がしてならない。」「今度の作品のなかでも技術的にうまいと思う人もいた。しかし書かずにいられぬ内側の噴出力が作品に感じられぬ時は、この技術のうまさは悪く言うと「わる達者」にみえるのである。」	他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 開高健 中村光夫

瀧井孝作87歳×各候補作

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題選評　総行数22　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ■ 5 「二十代の青年が書いたものならば、良いと思ったが、三十代半ばとしては、筆が走りすぎる。」 木崎さと子 42歳 全 ■ 3 「一寸うまいが、長すぎる。」 車谷長吉 36歳 全 ■ 3 「筆はしっかりしている。若い恋愛小説だが、筋がないような風で、何が書きたいか、よくわからぬ。」 佐藤泰志 32歳 全 ■ 3 「現代青年の心持はわかるが、芥川賞の文章として肯定するわけにはいかぬ。」 飯尾憲士 55歳 全 ■ 3 「文章はいいが、一寸、古くさい。」 喜多哲正 (45歳) 全 ― 0	他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 開高健 中村光夫

丸谷才一56歳×各候補作

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題若者たち　総行数22　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ― 0   車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 △ 22 「からうじて論ずるに価するもの」「これは青春の哀れさと馬鹿ばかしさといふ、もうすつかり陳腐なものになつてしまつた主題、いや、文学永遠の主題の一つをあつかつたもので、かなり読ませる。特にいいのは若者たちに寄り添ひながら、しかしいつも距離を取つてゐることである。」「ただしおしまひのはうは感心しない。人殺しなんか入れなくたつていいのに。佐藤さんは小説的な恰好をつけようとして、かへつて話のこしらへを荒つぽくしてしまつた。」 飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「今回もまたすこぶる低調であつた。」

他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 安岡章太郎 井上靖 開高健 中村光夫

安岡章太郎61歳×各候補作

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題憂欝な季節　総行数30　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ― 0   車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 ― 0   飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「三十年ばかりも前、私や吉行淳之介や庄野潤三は、芥川賞銓衡の頃になると、何とも鬱たうしい気分になつたものだ。毎回、候補作品に上げられながら、連続的に落選ばかりさせられてゐると、さらしものにされたやうな心持になつてくるのである。それを考へて、今回は個々の作品についての感想は一切述べないことにする。」「半年ごとに繰返される「芥川賞」といふお祭り騒ぎのオミコシは、本当の担ぎ手が誰であるやら、何処にゐるやらわからないままに、文学とは無縁な方角にワツシヨイワツシヨイと流されてゐることだけは、誰の目にも確かであらう。いつたいこの流れを、誰がどうやつて防ぎ止めることが出来るだらうか。」

他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 井上靖 開高健 中村光夫

井上靖74歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題読後感　総行数13　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ■ 3 「才能は感じられる。もう一度書き直したら、いい作品になったのではないかと思う。」 車谷長吉 36歳 全 ■ 3 「才能は感じられる。もう一度書き直したら、いい作品になったのではないかと思う。」 佐藤泰志 32歳 全 △ 6 「私などの知らない現代の若者たちの生活が、一応納得できるように書かれてあった。」 飯尾憲士 55歳 全 △ 6 「隻眼の人物もよく書かれてあり、主人公のその人物へのこだわりも、まあ、不自然でなく書かれている。」 喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「候補作八篇、それぞれ力をこめて書いているが、授賞作として推し出せる作品のなかったことは残念である。」	他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 開高健 中村光夫

開高健51歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題×もなく、○もない　総行数31　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ― 0   車谷長吉 36歳 全 ― 0   佐藤泰志 32歳 全 ― 0   飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「今回は予選通過作品が八作もあったのに、○をつけられるのが一つもない。きわだって抜群に×であるのもない。」「そういってしまったあと、どんな評語もでてこないし、議論のしようもない。」「八作を通じて共分母としていえること。一言半句のユーモアもウィットも見られないこと。黒い絶望の笑いも赤い怒りの笑いもない。」	他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 中村光夫

中村光夫70歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数29　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 高樹のぶ子 35歳 全 ― 0   増田みず子 33歳 全 ― 0   宮内勝典 37歳 全 ― 0   木崎さと子 42歳 全 ― 0   車谷長吉 36歳 全 ■ 9 「ありふれた職業の、もうあまり若くない男女が、気狂ひじみるほどひたむきに惚れあふ話ですが、二人の魅力がほとんど描かれてゐないので、何故お互にこんな狂気を演ずるのか納得が行かず、水の涸れた湖で心中しそこなふ結末を象徴的に理解するだけです。」 佐藤泰志 32歳 全 ■ 11 「人物たちが新しがつてゐるのにどことなく古風で、昭和初年の世相小説を思はせる」「主人公と、静雄と佐知子の三人は、互に性的に交はり合ふだけで、閨愛といふべきものかどうかわかりません。これが現代人の現代人たる所以だと作者は云ふかも知れませんが、それでは結局この小説がつまらなくなつてしまふではないかと思います。」 飯尾憲士 55歳 全 ― 0   喜多哲正 (45歳) 全 ― 0     「八篇の作品を読み終つて、どれも推す気持にならないのは何とも云へぬ寂しい気持です。」「今度のやうに妥協しようにもその種がないとなると、誰のせゐともわからず、ただムカつぱらが立つてきます。」

他の選考委員 吉行淳之介 丹羽文雄 大江健三郎 遠藤周作 瀧井孝作 丸谷才一 安岡章太郎 井上靖 開高健

高樹のぶ子35歳×各選考委員　 「遠すぎる友」 短篇 129枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ― 0   遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ― 0   丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 ― 0   開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ― 0	他の候補作 増田みず子 「小さな娼婦」 宮内勝典 「火の降る日」 木崎さと子 「離郷」 車谷長吉 「万蔵の場合」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 飯尾憲士 「隻眼の人」 喜多哲正 「影の怯え」

増田みず子33歳×各選考委員　 「小さな娼婦」 短篇 74枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ■ 9 「この人の個性、つまり理科系の感受性と言葉で、他者と事物に立ちむかう力を、看護婦の設定で生かしている。ところがプロットのまとめの際にヤスキにつき、あいまいな抒情性のしめくくりをつける。僕が教師なら、プロットの不整合で玉砕しても、あなたの個性をつらぬきなさい、というだろう。」 遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ― 0   丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 ― 0   開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ― 0	他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 宮内勝典 「火の降る日」 木崎さと子 「離郷」 車谷長吉 「万蔵の場合」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 飯尾憲士 「隻眼の人」 喜多哲正 「影の怯え」

宮内勝典37歳×各選考委員　 「火の降る日」 短篇 125枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ― 0   遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ■ 5 「二十代の青年が書いたものならば、良いと思ったが、三十代半ばとしては、筆が走りすぎる。」 丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 ― 0   開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ― 0	他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 増田みず子 「小さな娼婦」 木崎さと子 「離郷」 車谷長吉 「万蔵の場合」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 飯尾憲士 「隻眼の人」 喜多哲正 「影の怯え」

木崎さと子42歳×各選考委員　 「離郷」 短篇 145枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 □ 19 「おもしろくて次のページがたのしみだった。このときは、今回はこれだろう、と考えたが、五分の三あたりからにわかに索莫としてしまった。」「よく調べてみると、二つの小説として成立するものを無理に一つにしてしまい、そのつなぎ目に精神分析らしきものを使ったためらしい、と分った。老人に積極的に心を開いてゆく若い人妻の物語は独立させないといけない。」 丹羽文雄 77歳 全 △ 25 「このままでは当選とならないが、すこし手を入れたならば、気の利いた作品が出来たにちがいないと思われる」「藍子というえたいの知れない女が、献身的に老人に仕えている。老人が死ぬ。正妻が現れる。葬儀となる。（引用者中略）作品はここで藍子の過去をひき出した。小説の印象が分裂を起した。まったくよけいな部分であった。」 大江健三郎 46歳 全 ■ 7 「語りの視点をになう人物の設定がまちがっている。この人物を発明することで視野は拡大されたが、作者の人間観、主題は、この人物の感受性と別のものだ。そこで作者は、重要な人物のそれぞれに説明的な告白をさせたくなる。」 遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ■ 3 「一寸うまいが、長すぎる。」 丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 ■ 3 「才能は感じられる。もう一度書き直したら、いい作品になったのではないかと思う。」 開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ― 0

他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 増田みず子 「小さな娼婦」 宮内勝典 「火の降る日」 車谷長吉 「万蔵の場合」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 飯尾憲士 「隻眼の人」 喜多哲正 「影の怯え」

車谷長吉36歳×各選考委員　 「万蔵の場合」 中篇 150枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ― 0   遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ■ 3 「筆はしっかりしている。若い恋愛小説だが、筋がないような風で、何が書きたいか、よくわからぬ。」 丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 ■ 3 「才能は感じられる。もう一度書き直したら、いい作品になったのではないかと思う。」 開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ■ 9 「ありふれた職業の、もうあまり若くない男女が、気狂ひじみるほどひたむきに惚れあふ話ですが、二人の魅力がほとんど描かれてゐないので、何故お互にこんな狂気を演ずるのか納得が行かず、水の涸れた湖で心中しそこなふ結末を象徴的に理解するだけです。」	他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 増田みず子 「小さな娼婦」 宮内勝典 「火の降る日」 木崎さと子 「離郷」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 飯尾憲士 「隻眼の人」 喜多哲正 「影の怯え」

佐藤泰志32歳×各選考委員　 「きみの鳥はうたえる」 中篇 212枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ― 0   遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ■ 3 「現代青年の心持はわかるが、芥川賞の文章として肯定するわけにはいかぬ。」 丸谷才一 56歳 全 △ 22 「からうじて論ずるに価するもの」「これは青春の哀れさと馬鹿ばかしさといふ、もうすつかり陳腐なものになつてしまつた主題、いや、文学永遠の主題の一つをあつかつたもので、かなり読ませる。特にいいのは若者たちに寄り添ひながら、しかしいつも距離を取つてゐることである。」「ただしおしまひのはうは感心しない。人殺しなんか入れなくたつていいのに。佐藤さんは小説的な恰好をつけようとして、かへつて話のこしらへを荒つぽくしてしまつた。」 安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 △ 6 「私などの知らない現代の若者たちの生活が、一応納得できるように書かれてあった。」 開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ■ 11 「人物たちが新しがつてゐるのにどことなく古風で、昭和初年の世相小説を思はせる」「主人公と、静雄と佐知子の三人は、互に性的に交はり合ふだけで、閨愛といふべきものかどうかわかりません。これが現代人の現代人たる所以だと作者は云ふかも知れませんが、それでは結局この小説がつまらなくなつてしまふではないかと思います。」

他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 増田みず子 「小さな娼婦」 宮内勝典 「火の降る日」 木崎さと子 「離郷」 車谷長吉 「万蔵の場合」 飯尾憲士 「隻眼の人」 喜多哲正 「影の怯え」

飯尾憲士55歳×各選考委員　 「隻眼の人」 短篇 74枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ― 0   遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ■ 3 「文章はいいが、一寸、古くさい。」 丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 △ 6 「隻眼の人物もよく書かれてあり、主人公のその人物へのこだわりも、まあ、不自然でなく書かれている。」 開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ― 0	他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 増田みず子 「小さな娼婦」 宮内勝典 「火の降る日」 木崎さと子 「離郷」 車谷長吉 「万蔵の場合」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 喜多哲正 「影の怯え」

喜多哲正(45歳)×各選考委員　 「影の怯え」 短篇 119枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉行淳之介 57歳 全 ― 0   丹羽文雄 77歳 全 ― 0   大江健三郎 46歳 全 ― 0   遠藤周作 58歳 全 ― 0   瀧井孝作 87歳 全 ― 0   丸谷才一 56歳 全 ― 0   安岡章太郎 61歳 全 ― 0   井上靖 74歳 全 ― 0   開高健 51歳 全 ― 0   中村光夫 70歳 全 ― 0	他の候補作 高樹のぶ子 「遠すぎる友」 増田みず子 「小さな娼婦」 宮内勝典 「火の降る日」 木崎さと子 「離郷」 車谷長吉 「万蔵の場合」 佐藤泰志 「きみの鳥はうたえる」 飯尾憲士 「隻眼の人」