高瀬隼子（たかせじゅんこ）-芥川賞受賞作家｜芥川賞のすべて・のようなもの

芥川賞のすべて・のようなもの

第167回

＝受賞者＝
高瀬隼子

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Last Update●[R6]2024/6/24

	Takase Junko
	生没年月日【注】	昭和63年/1988年☆月☆日～
	経歴	愛媛県新居浜市生まれ。立命館大学文学部卒。令和1年/2019年に「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞。
	受賞歴・候補歴	第43回すばる文学賞（令和1年/2019年）「犬のかたちをしているもの」 \|候補\| 第165回芥川賞（令和3年/2021年上期）「水たまりで息をする」第167回芥川賞（令和4年/2022年上期）「おいしいごはんが食べられますように」第74回芸術選奨文部科学大臣新人賞［文学部門］（令和5年/2023年度）『いい子のあくび』
	サブサイトリンク	文学賞の世界▼全8件

第165回候補

「水(みず)たまりで息(いき)をする」（『すばる』令和3年/2021年3月号）

媒体・作品情報

誌名	「すばる」別表記表紙「Subaru」併記
巻号	第43巻第3号別表記3月号
印刷/発行年月日	発売令和3年/2021年2月6日
発行者等	編集者鯉沼広行　発行者江口順一　印刷所大日本印刷株式会社
発行所	株式会社集英社（東京都）
総ページ数	324	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	26字 ×20行 ×2段
本文ページ	68～152 （計85頁）	測定枚数	213枚

書誌

令和3年/2021年7月・集英社刊『水たまりで息をする』

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　高瀬隼子　33歳
選考委員		評価	行数	評言
松浦寿輝	67歳	―	0
島田雅彦	60歳	■	13	「水のイメージを基底に据え、壊れてゆく夫のための変奏曲が展開されるが、この長さならもっと妻も夫も遠くまでいけたはず。」
吉田修一	52歳	△	6	「ユーモラスな共依存夫婦の姿が大変面白かった。今回は受賞を逃したが、現代文学のメインストリームにある作品だと思う。」
小川洋子	59歳	■	13	「ひたひたと迫って来る狂気が伝わってくれば、もっと凄まじい小説になっただろう。書かれていないところに潜む恐怖を感じたかった。」
平野啓一郎	46歳	◎	31	「私が、一人だけ強く推した」「社会的に逸脱した男性の面倒を看る女性主人公という意味では、『蹴りたい世界』、『コンビニ人間』を思い出させるが、だからこそ「悪臭」という受け容れがたい要素が効果的である。」「奇妙な共依存関係の描写は濃やかで、都市的な快適さ、清潔さが必要とする水のエコロジカルな批評は、しかし、自然賛美とも直結せず、異常気象の影響らしい豪雨へとアイロニカルに飛躍する。浴室でペットボトルから注がれた水のか細さから、豪雨の川へと発展してゆくイメージの肥大も秀逸だった。」
山田詠美	62歳	■	11	「何しろ長過ぎる。ずうっと水浸しになっている、この奇妙な夫婦の話をもっとタイトな感じにまとめたら、不気味な、けれども目を離せない魅力の漂う短編が三つ四つ出て来そうだ。」
奥泉光	65歳	△	26	「単直な物語構成のなかに、主人公の思考や感情の動きがたしかな手触りとともに浮かび上がる好篇である。」「夫が氾濫する河川に消える結末は、主人公がむかし飼っていた魚のエピソード（これはこれで面白い）に重ねられ、いくぶん寓話的に処理されるのが物足りなく思えたが、作者の対象を捉える目には確たるものを感じた。」
川上弘美	63歳	■	5	「奇妙に惹かれる小説でしたが、この「声」で語るには、小説が長すぎました。」
堀江敏幸	57歳	■	13	「「水たまりで息をする」にあるのは、透明なマスクをして怯えを拒む意識的な自失の感覚だ。」「ふしぎな息苦しさを生むゆるい文体は効果的だが、物語が異界へ飛ぶのに必要な熱を冷ましてもいる。」
選評出典：『文藝春秋』令和3年/2021年9月号

第167回受賞

「おいしいごはんが食(た)べられますように」（『群像』令和4年/2022年1月号）

媒体・作品情報

作品名別表記	「GUNZOU」併記
印刷/発行年月日	発行令和4年/2022年1月1日　印刷令和3年/2021年12月7日　発売令和3年/2021年12月7日
発行者等	編集人戸井武史　発行人西川太基　印刷人麿秀晴　印刷所凸版印刷株式会社（東京都）
発行所	株式会社講談社（東京都）
総ページ数	532	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	26字 ×24行 ×2段
本文ページ	69～133 （計65頁）	測定枚数	193枚

書誌

令和4年/2022年3月・講談社刊『おいしいごはんが食べられますように』

『文藝春秋』令和4年/2022年9月号

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　高瀬隼子　34歳
選考委員		評価	行数	評言
山田詠美	63歳	□	9	「私を含む多くの女性が天敵と恐れる「猛禽©瀧波ユカリさん」登場！　彼女のそら恐ろしさが、これでもか、と描かれる。思わず上手い！　と唸った。でも、少しだけエッセイ漫画的既視感があるのが残念。」
島田雅彦	61歳	△	17	「人物設定を意図的に類型化しているのだが、可愛くて料理上手の、いわば特性のない女が総取りするという脱力の結末に向かう行程を面白がるか、首を傾げるかで評価は分かれた。」
小川洋子	60歳	■	6	「最も恐ろしいのは芦川さんだ。その恐ろしさが一つの壁を突き破り、狂気を帯びるところにまで至っていれば、と思う。」
松浦寿輝	68歳	◎	48	「候補作五篇のうち（引用者中略）ずば抜けて面白い。閉じた小集団内部での人間関係の力学が繊細な筆致で活写され、どこか横光利一「機械」を思わせる。」「圧倒的に凄いのはいつもにこにこしている「芦川さん」の人物像の造型だ。」「打算的な女と煮え切らない男を突き放して見ている作者の視線は冷酷だが、同時にその距離感によって二人を優しく赦している気配もある。」
吉田修一	53歳	△	23	「誰も我慢しなくて済むようにとの思いから生まれたはずの多くのコンプライアンスの中で、誰が一番我慢を強いられているか？　を競うコンテストのような物語として読んだ。」「全体的に少し冗長すぎるように思う。描写で読みたい場面の多くが会話文で処理されているのも不満が残る。」「とはいえ、前作に引き続きの筆力は確かである。」
平野啓一郎	47歳	△	22	「生のルーティンの懐疑という前作以来の主題は、より複雑化し、緻密になった分、インパクトはやや低下したが、作者の着実な歩みが評価されたことは喜ばしい。」
奥泉光	66歳	◎	28	「自分もこの作品を推した。」「どこにでもありそうな職場の、珍しくもない人間模様を描いた本作は、一人称と三人称の二つの視点を導入することで、人物らの「関係」を立体的に描き出すことに成功している。」「一見は平凡に見えて、本作は野心的な作品といってよく、作者の方法への意識の高さをなにより評価した。」
川上弘美	64歳	○	41	「（引用者注：「Ｎ／Ａ」と共に）○をつけました。」「わたしは読みながら、芦川と二谷に心を奪われてしまった。押尾も、もちろん好き。周囲のほかの同僚たちも面白い。やがてかれら全員が、簡単にはほぐれない一つの球体をなして、どんどん輝きを放ってくる。」「作られた人たちのはずなのに、作者の手をずいぶん離れて、作者も思っていなかった行動を、かれらはしていったのではないでしょうか。」
堀江敏幸	58歳	○	20	「会社内の群像劇に一対一の関係を入れ込むのではなく、一対一の関係が多対一に溶けて不気味に広がり出す過程を巧みに描きだす。」「芦川という女性の「使用不可」感の凄みが際立つのは事実だが、（引用者中略）他のどこからも「入手不可」で「ないがしろにできない」ものとして徹底されていくところに、あとをひく旨味があった。」
選評出典：『文藝春秋』令和4年/2022年9月号

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