選評の概要
137. 138. 139. 140.141. 142. 143. 144. 145.
146. 147. 148. 149. 150.
151. 152. 153. 154. 155.
156. 157. 158. 159. 160.
161. 162. 163. 164. 165.
166. 167. 168. 169. 170.
171.
生没年月日【注】 | 昭和37年/1962年3月30日~ | |
在任期間 | 第137回~(通算17.5年・35回) | |
在任年齢 | 45歳3ヶ月~ | |
経歴 | 旧姓=本郷。岡山県岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒。川崎医科大学教員秘書室を経て、結婚、昭和63年/1988年に海燕新人文学賞を受けて作家デビューを果たす。 | |
受賞歴・候補歴 |
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芥川賞候補歴 | 第101回候補 「完璧な病室」(『海燕』平成1年/1989年3月号) 第102回候補 「ダイヴィングプール」(『海燕』平成1年/1989年12月号) 第103回候補 「冷めない紅茶」(『海燕』平成2年/1990年5月号) 第104回受賞 「妊娠カレンダー」(『文學界』平成2年/1990年9月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 小川洋子 45歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
31歳 |
○ | 25 | 「目の前にある、具体的な形を持つ何かを書き表わす時、その輪郭をなぞる指先が、独特の威力を持つ。勝手気ままに振る舞っているように見せかけながら、慎重に言葉を編み込んでゆく才能は見事だった。」「ただ、読み終えた時、もしこれが母娘の関係を描くのではなく、巻子さんの狂気にのみ焦点を絞った小説だったら……と想像してしまった。(引用者中略)しかしこれは、全くの余計なお世話である。」 | |
田中慎弥 | 35歳 |
○ | 7 | 「梅子が、私は忘れられない。性的な言葉を放出しながら他者を蔑む彼女の存在感は圧倒的だった。たとえ古臭いと言われても、構わず行けるところまで行ってほしい。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年3月号 |
選考委員 小川洋子 46歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
磯崎憲一郎 | 43歳 |
◎ | 22 | 「磯崎さんの作り出す世界から立ち上ってくる現実は、不条理などという便利な言葉でくくれない不気味さをはらんでいる。偶然の恩恵を拒否し、すべてを敢えて宙吊りにしておく勇気に、私は才能を感じた。」「受賞に相応しいと、一生懸命奮闘したつもりだが、力及ばず、残念だった。」 |
44歳 |
△ | 21 | 「浩遠の苦悩は、内側に深まってゆかない。(引用者中略)外へ外へと拡散する方向にのみ動いてゆく。最初、その点が不満だったが、国家に踏みにじられる状況をただ単に嘆くのではなく、一歩でもそこから脱出しようとする彼の生気のあらわれだとすれば、納得できると思った。」「平成の日本文学では書き表すことが困難なさまざまな風景が、楊さんの中には蓄えられているに違いない。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年9月号 |
選考委員 小川洋子 50歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
山下澄人 | 46歳 |
○ | 46 | 「最も興味深く読んだ。」「母が死んだ時、“わたし”は病院の廊下にある計器の目盛を眺める。次の段落で彼は、目盛を確認する夜警の仕事に就いている。この静かな飛躍に、作品の魅力が凝縮されている気がする。」「“わたし”はまるで言葉を持たない動物のように振る舞う。彼の姿は饒舌な人間よりずっと深く胸に突き刺さってくる。」 |
35歳 |
□ | 23 | 「奈津子の語りを上手くコントロールし、陳腐になりかねないテーマの壁を超えてもう一歩先の地点に到達している。」「作品全体を覆う緊迫した不穏さは、独自の魅力を放っている。鹿島田さんにしか描けない世界だと思う。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年9月号 |
選考委員 小川洋子 51歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
33歳 |
◎ | 37 | 「(引用者注:「すなまわり」と共に)推した。」「『爪と目』が恐ろしいのは、三歳の女の子が“あなた”について語っているという錯覚を、読み手に植えつける点である。しかも語り口が、報告書のように無表情なのだ。弱者であるはずの“わたし”は、少しずつ“あなた”を上回る不気味さで彼女を支配しはじめる。二人がラスト、“あとはだいたい、おなじ”の一行で一つに重なり合う瞬間、瑣末な日常に走る亀裂に触れたような、快感を覚えた。」 | |
鶴川健吉 | 31歳 |
◎ | 42 | 「(引用者注:「爪と目」と共に)推した。」「『すなまわり』の主人公は、挫折も成長も拒否する。傷ついた自分を哀れんだり、希望を見出そうとしてもがいたり、理不尽な他者を攻撃したりしない。自分の居場所をただありのままに描写するだけだ。にもかかわらず、彼の抱える空虚さがひっそりと浮かび上がって見えてくる。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成25年/2013年9月号 |
選考委員 小川洋子 51歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
岩城けい | 42歳 |
◎ | 57 | 「(引用者注:「コルバトントリ」と共に)推した。」「生物の中で唯一言語を持ってしまった人間は、見返りに何を失ったのか。進化の過程でただ一人、特異な方向を選んだ者は、繰り返し何度でも分かれ道に立ち返り、選択の意味を問い直す必要がある。作家はその失われた何かを求めるため、言葉で小説を書かなければならない。」 |
山下澄人 | 47歳 |
◎ | 38 | 「(引用者注:「さようなら、オレンジ」と共に)推した。」「本来記憶は混乱しているものであり、小説は時間の流れから人を解放するものではあるが、“ぼく”の描く無邪気なほどに自在な軌跡は、山下さんにしか表現できない模様を浮かび上がらせている。何を言われようと、山下さんが目指す方向へ、果ての果てまで突き進んで行ってほしい。」 |
30歳 |
△ | 28 | 「人はしょっちゅう穴に落ちている。けれど面倒がって、落ちなかった振りをしたり、そもそも穴など開いていなかったと思い込んでいる。取り繕おうとすればするほど滑稽な振る舞いになるのにも、気づいていない。不穏の底からじわじわと滑稽さがにじみ出てくるまで、もう少しじっくりその場に踏みとどまれる小説であったなら、迷いなく一番に推しただろう。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年3月号 |
選考委員 小川洋子 52歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
戌井昭人 | 42歳 |
◎ | 40 | 「力みのない、とぼけた味わいを装いながら、実は丁寧に組み立てられた小説だ。」「この作品が成功した一番の要因は、救いようのない駄目な自分を抑制し、老人にお灸を売りつけている善人ぶりを、語り手が十分に意識している点にあると思う。」「以前の候補作に見られた、人の愚かさを生のまま放置する、これみよがしなところが消え、今回こそ受賞にふさわしいと思ったが、かなわなかった。残念でならない。」 |
40歳 |
△ | 7 | 「柴崎さんは自分が書くべきものを確かにつかんでいる。それを掌の肉に食い込むまで強く握り締めている。その痛みを決してこちらに見せようとしない柴崎さんの粘り強さに、祝福を贈りたい。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年9月号 |
選考委員 小川洋子 53歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
滝口悠生 | 32歳 |
◎ | 30 | 「ほんのわずかの差で(引用者中略)受賞を逃したのは、残念なことだった。」「滝口さんにしか生み出せない独自の光を放っていた。特に、楽器の使われ方が印象深い。過去と楽器が結び付く時、思い出せない空白にあふれている記憶の強度が増し、肉体的な実感を持って時間が動きはじめる。」 |
35歳 |
○ | 16 | 「『火花』の語り手が私は好きだ。」「他人を無条件に丸ごと肯定できる彼だからこそ、天才気取りの詐欺師的理屈屋、神谷の存在をここまで深く掘り下げられたのだろう。『火花』の成功は、神谷ではなく、“僕”を見事に描き出した点にある。」 | |
29歳 |
■ | 11 | 「評価は、幼稚な健斗をどれだけ受け入れられるかにかかっていた。その上で、とぼけたユーモアのある小説にも、あるいは祖父と孫の間に不気味な闇が立ち上ってくる小説にもなる可能性があった。しかし結局、そのどちらにもなりきれなかったのでは、との思いが残った。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年9月号 |
選考委員 小川洋子 54歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
今村夏子 | 36歳 |
○ | 29 | 「増殖してゆく子供たちの気色悪さ、誕生日会に誰もやって来ない奇妙な欠落、あひると赤ん坊がすり替わるのではないかという予感。どれも書き手の意図から生まれたのではない。言葉が隠し持つ暗闇から、いつの間にかあぶり出されてきたのだ。そう思わせる底知れない恐ろしさが、この小説にはある。」「受賞に至らなかったのは残念だ。」 |
36歳 |
□ | 26 | 「社会的異物である主人公を、人工的に正常化したコンビニの箱の中に立たせた時、外の世界にいる人々の怪しさが生々しく見えてくる。あるいは、明らかな奇人、白羽が主人公の部屋で一緒に暮らすうち、思いがけず凡庸な正体を露呈してしまう。あやふやな境界を自在に伸び縮みさせる、このあたりの展開を面白く読んだ。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成28年/2016年9月号 |
選考委員 小川洋子 55歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
38歳 |
◎ | 38 | 「(引用者注:「星の子」と共に)推した。(引用者中略)どちらも、いかに書かないで書くか、という根源的な問いをはらんでいて興味深かった。」「沼田さんは、主人公が言葉の届かない場所へ向かおうとしているのを自覚し、無言の足跡にひたすら視線を注いでいる。」「(引用者注:登場人物たちの)誰もがぽつん、ぽつんとその場に取り残され、立ち往生している。ここに立ち込める、救われようのない濃密な孤独の前で、言葉は無力だ。」 | |
今村夏子 | 37歳 |
◎ | 38 | 「(引用者注:「影裏」と共に)推した。(引用者中略)どちらも、いかに書かないで書くか、という根源的な問いをはらんでいて興味深かった。」「ラストの星空の場面。崩壊の予感に満ちあふれながら、決定的なものは描かれない。にもかかわらず、言葉にされなかった痛みは、傷とラクガキに覆われたお姉さんの手にありありと浮かび上がって見えている。書かれた言葉より、書かれなかった言葉の方が存在感を持っている。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成29年/2017年9月号 |
選考委員 小川洋子 56歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
高山羽根子 | 43歳 |
◎ | 20 | 「三作に絞られたあとの二回めの投票で、私は『居た場所』に丸をつけた。」「あらゆるエピソードがつながりを切断された状態で放置される中、唯一、タッタだけが小説の底に一続きの足音を響かせている。」「言葉が消え、暗がりの中に毛の手触りだけが取り残されるラストは、空虚でありながら独自の妖しさを放っていた。」 |
35歳 |
△ | 16 | 「彼(引用者注:主人公)が初めてウメキチとトレーニングするシーンの、肉体を通した緻密な会話は忘れがたい。頭脳から遠く離れた場所で、体は圧倒的な美を表現する。言葉の届かないところにこそ書かれるべきものがある、という真実を証明している。」 | |
39歳 |
■ | 13 | 「ページを閉じた時、コンピュータのスイッチが切れたように、手触りも残さないまま“僕”は消えてしまった。無から無を生むシステムの中でしか生きられない人間の哀しさを、もっと混沌とした状態で感じ取りたかった。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成31年/2019年3月号 |
選考委員 小川洋子 57歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
39歳 |
◎ | 29 | 「奇妙にピントの外れた人間を、本人を語り手にして描くのは困難だが、目の前にむらさきのスカートの女を存在させることで、“わたし”の陰影は一気に奥行きを増した。」「ラスト、クリームパンを食べようとした“わたし”が、子供に肩を叩かれる場面にたどり着いた時、狂気を突き抜けた哀しさが胸に迫ってきた。」「常軌を逸した人間の魅力を、これほど生き生きと描けるのは、間違いなく今村さんの才能である。」 | |
高山羽根子 | 44歳 |
◎ | 18 | 「(引用者注:「むらさきのスカートの女」と共に)推した。」「自由気ままな語りの裏に、性的暴行を受けた女性の、自らを肯定できない屈折が潜んでいる。」「高山さんは、書かないことでしか書けないことを書いた。貴重な問いを突きつける作品だと思う。」 |
選評出典:『文藝春秋』令和1年/2019年9月号 |
選考委員 小川洋子 57歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
乗代雄介 | 33歳 |
○ | 30 | 「彼女(引用者:主人公)の姿を追っているうち、読み手はごく自然に文学と現実の分かちがたいありようについて、思いを巡らせることになる。お前は誰なんだ、と問う声が耳元に響いてくる。実に微妙で、ややこしくて、ひねくれた、愛すべき小説である。せめて二度めの投票に持ち込めたらと願ったが、叶わなかった。」 |
31歳 |
△ | 25 | 「最初の投票のあと、議論を重ねてゆく中で、『背高泡立草』が不思議な静けさをたたえて浮上してきた。場所はとある島の一点に留まりながら、大胆に時間をかき回すことで、海から逃れられない人生を背負わされた人々が立ち現れてくる。」「古川さんは、今、目の前にいる親しい誰かと、会えるはずもない遠い過去にいる見知らぬ誰かに、等しい距離感で視線を送れる書き手なのだろう。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和2年/2020年3月号 |
選考委員 小川洋子 58歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
28歳 |
◎ | 31 | 「二重丸をつけて臨んだ。正しさからはみ出した奇妙な邪悪を描く小説は珍しくないが、『破局』は正しさへの執着が主人公を破綻させる点において、特異だった。」「彼は嫌味な男だ。にもかかわらず、見捨てることができない。社会に対して彼が味わっている違和感に、いつの間にか共感している。もしかしたら、恐ろしいほどに普遍的な小説なのかもしれない。」 | |
三木三奈 | 29歳 |
○ | 21 | 「(引用者注:「破局」の)次に『アキちゃん』を推した。小学生特有の極端さや図太さ、もの寂しさが、大人の解釈で装飾されていない、本物の子どもの声で語られていた。」「大学生の場面が付け足しに感じられ、少し残念だった。」 |
45歳 |
△ | 11 | 「人間が生きている痕跡を選別せず、平等に尊ぶ意味を問い掛けてくる。」「結局、人と人をつなぐのは、実体のある何かではなく、それが去ったあとの痕跡、幻なのだと思わされる。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和2年/2020年9月号 |
選考委員 小川洋子 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
石田夏穂 | 31歳 |
○ | 27 | 「最も強く惹きつけられた。溶接の手順をただ説明しているだけのようでありながら、鉄鋼や火や溶接線といった無感情なものたちが、作業者の手と結びつき、人間の心をあぶり出してゆく。そこにダイナミックな運動を感じた。」「残酷な哀れみを描ききった石田さんの執念を称えたい。」 |
43歳 |
△ | 26 | 「釈華が妊娠と中絶を望むのは、(引用者中略)自分より貧乏で不幸で頭の悪い子たちのレベルに追いつき、彼女らを見下したいのだ。」「しかし、田中の精液を飲み込んで死にかける姿には、常に生死の境に立たされている彼女に堆積した、底知れない疲労が透けて見える。」「もう一人の紗花が現れ、釈華の像が奥行きを増すラストには、内なる他者が、書く自由を手に入れ、飛翔する瞬間が刻まれている。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和5年/2023年9月号 |
選考委員 小川洋子 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
安堂ホセ | 29歳 |
◎ | 13 | 「一行一行に込められた緊張感に圧倒された。血や汗や皮膚やあばらや精液の前では、愛も差別も無意味になる。暴力に理由などなくなる。理由がないことの不気味さをあぶり出した迫力は、受賞にふさわしいと今でも信じている。」 |
33歳 |
■ | 33 | 「どうしても私は、建築家の牧名沙羅にも、塔で働く拓人にも人間的な息遣いを感じることができなかった。思考のための言葉ではなく、心からにじみ出てくる声なき声を聞きたかった。」「九段さんが小説の可能性を押し広げてゆく書き手であるのは間違いない。そのエネルギーに敬意を表したい。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和6年/2024年3月号 |
選考委員 小川洋子 62歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
尾崎世界観 | 39歳 |
◎ | 23 | 「異色の光を放っていた」「ここには、人間の存在そのものを打ち消そうとする世界が描かれている。音楽業界が究極に行き着く先は、肉体も意識もない虚無の地である。」「応援したくなる人物が一人も登場しない、どんよりした空気に支配された、稀有な魅力を持つ作品であるのは間違いない。」 |
44歳 |
△ | 11 | 「妻鹿さんが忘れがたい。」「今も六甲山のバリエーションルートを黙々と歩いている妻鹿さんの後ろ姿が、目に浮かんでくる。」 | |
43歳 |
■ | 18 | 「主人公は、二つの意識が一つの身体に宿っている。A=Bならば、B=A、という論理的に成立しない矛盾の渦中に、二人は飲み込まれている。だからこそ、そこに生じる混乱をもっと丁寧に追ってほしかった。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和6年/2024年9月号 |