石田夏穂（いしだかほ）-芥川賞候補作家｜芥川賞のすべて・のようなもの

芥川賞のすべて・のようなもの

第166回

＝受賞者＝
砂川文次

＝候補者＝
石田夏穂
九段理江
島口大樹
乗代雄介

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Last Update●[R5]2023/12/15

	Ishida Kaho
	生没年月日【注】	平成3年/1991年☆月☆日～
	経歴	埼玉県出身。東京工業大学工学部卒。令和3年/2021年に「我が友、スミス」で第45回すばる文学賞佳作。
	受賞歴・候補歴	第45回すばる文学賞［佳作］（令和3年/2021年）「我が友、スミス」 \|候補\| 第166回芥川賞（令和3年/2021年下期）「我が友、スミス」 \|候補\| 第44回野間文芸新人賞（令和4年/2022年）「ケチる貴方」 \|候補\| 第169回芥川賞（令和5年/2023年上期）「我が手の太陽」 \|候補\| 第45回野間文芸新人賞（令和5年/2023年）『我が手の太陽』 \|候補\| 第40回織田作之助賞（令和5年/2023年）『ケチる貴方』
	サブサイトリンク	文学賞の世界▼全6件

第166回候補

「我(わ)が友(とも)、スミス」（『すばる』令和3年/2021年11月号）

媒体・作品情報

誌名	「すばる」別表記表紙「Subaru」併記
巻号	第43巻第11号別表記11月号
印刷/発行年月日	発売令和3年/2021年10月6日
発行者等	編集者野田みのり　発行者江口順一　印刷所大日本印刷株式会社
発行所	株式会社集英社（東京都）
総ページ数	388	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	26字 ×23行 ×2段
本文ページ	76～153 （計78頁）	測定枚数	219枚

書誌

令和4年/2022年1月・集英社刊『我が友、スミス』

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　石田夏穂　30歳
選考委員		評価	行数	評言
小川洋子	59歳	■	12	「筋トレをして別の生き物になる、自由に体を鍛えることで自分を好きになれる。主人公が味わう喜びには新鮮さがあった。ただ、肉体と心が一対一で対決する緊張感が、もっとほしかった。」
島田雅彦	60歳	■	9	「トレーニングを通じて「別の生き物」になろうとするヒロインの実存は変わらなかった。冷静な分析に終始する姿勢によって最高のルポルタージュにはなった。」
吉田修一	53歳	△	14	「地味なＯＬがタフな自分に変身していくという王道のストーリーが、ボディビルやフェミニズムの視点で更新されているのだろうが、もう一つ食い足りないのは、おそらくタフな別の生き物という作者が描きたかったイメージがうまく伝わってこなかったせいではないだろうか。」
山田詠美	62歳	△	17	「小気味良い語り口で読ませる。でも、なんか引っ掛かりがないなー、と感じていた時に、たまたま、ビキニアスリートの一日を追ったドキュメントを観た。（引用者中略）映像の中の生身の女性は、体に必要な栄養とは別に、ランチにおはぎ四個を食べて至福を味わうのである。その食べっぷりの見事さを見て、あ、この小説にも、おはぎ的なものがあればなあ、と惜しい気持になった。」
奥泉光	65歳	△	18	「軽快な文章で愉しく読ませる。」「なにより登場する人物の輪郭が明確で、読んで心地よい。思わず笑ってしまう箇所も多く、ただいくぶんサービス過剰なところがあって、笑いを狙った表現が上滑りになっているのが惜しい。」
川上弘美	63歳	◎	21	「（引用者注：「ブラックボックス」と共に）○をつけました。」「何回笑いくずれたことでしょう。皮肉に笑わされることもあれば、文章の余白に笑わされることもあれば、言葉の置き方の緩急に笑わされることもありました。この作者の、自身の小説に対する客観性が素晴らしいからだと思います。」
平野啓一郎	46歳	■	17	「旧弊なジェンダー・バイアスを巡るアイロニーが巧みに描かれているが、空虚化した実存の依存先という主題自体は『推し、燃ゆ』と同範疇であり、そうなると、釣りでもゲームでも料理でも、あとは無限のヴァリエーションが思い浮かぶ。そこに、一種の停滞も感じた。」
松浦寿輝	67歳	―	0
堀江敏幸	58歳	■	15	「コミカルな空気感がいい。ただ、謙虚で禁欲的で哲学的な先達たちが抱える空洞を主人公の言葉の増減にもっと活用したら、笑みの表現の幅が広がったと思う。」
選評出典：『文藝春秋』令和4年/2022年3月号

第169回候補

「我(わ)が手(て)の太陽(たいよう)」（『群像』令和5年/2023年5月号）

媒体・作品情報

作品名別表記	「GUNZOU」併記
印刷/発行年月日	発行令和5年/2023年5月1日　印刷令和5年/2023年4月7日　発売令和5年/2023年4月7日
発行者等	編集人戸井武史　発行人西川太基　印刷人麿秀晴　印刷所凸版印刷株式会社（東京都）
発行所	株式会社講談社（東京都）
総ページ数	676	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	26字 ×24行 ×2段
本文ページ	318～373 （計56頁）	測定枚数	167枚

書誌

令和5年/2023年7月・講談社刊『我が手の太陽』

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　石田夏穂　31歳
選考委員		評価	行数	評言
松浦寿輝	69歳	―	0
小川洋子	61歳	○	27	「最も強く惹きつけられた。溶接の手順をただ説明しているだけのようでありながら、鉄鋼や火や溶接線といった無感情なものたちが、作業者の手と結びつき、人間の心をあぶり出してゆく。そこにダイナミックな運動を感じた。」「残酷な哀れみを描ききった石田さんの執念を称えたい。」
奥泉光	67歳	○	16	「綿密な取材を重ねた上での、溶接作業の、それこそ職人技的描出の徹底が魅力あるテクストとなって結実した。主人公への視点の密着がやや息苦しく、かたりがもっと揺れ動くグルーヴが欲しいとも思ったが、それはまた別の作品になるだろう。」
平野啓一郎	48歳	○	20	「作者のフェティシズムの表現という意味では前候補作の同工異曲のようだが、工場建築の溶接工という設定により、社会的な広がりのある作品となった。」「綿密な調査に基づく正確な文体も、作者の個性として確立されており、受賞に値する水準の作品だった。但し、タイトルと終わり方には疑問がある。」
吉田修一	54歳	■	17	「今この選評を書いているのが36℃を超える猛暑日だからというわけではないが、この作品の「現場」からは、その現場感というか、臭いというか、埃っぽさというか、そういった雑味がまったく伝わってこない。とても面白い「溶接工資格取得用テキスト」を読んでいるようだった。」
島田雅彦	62歳	△	17	「職人小説というジャンルがあるとすれば、彼女は紛れもなく第一人者だ。」「業界用語を散りばめ、リアリズムに徹した、まさに散文的な筆致ながら、火への畏敬、道具へのフェティシズムを追求してゆくので、自ずと神話的趣きを呈してくる。」
山田詠美	64歳	◎	13	「私は、この種の仕事に関してまるで無知なのだが、作業する現場、集中する作業員の手許までが、はっきりと見える気がした。正確な描写で現実にないものを正確に浮き彫りにしたと感心した。」
川上弘美	65歳	■	11	「「伊東」の、誇り高さと尊大さのあやういバランスが尊大さに傾いてゆく過程を描こうとしたことは、大いなる挑戦でした。ただ、わたしはその過程が腑に落ちなかったのです。」
堀江敏幸	59歳	△	17	「世界を成り立たせている細部への向き合い方を、いま一度考えさせてくれる作品だ。しかし「無胴鋼状態」の危険を語る言葉には、まだ安全帯がついている。「端正な溶接線」の呪縛が溶けたときの炎の色を、作者はもう見すえているのではないか。」
選評出典：『文藝春秋』令和5年/2023年9月号

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