選評の概要
147. 148. 149. 150.151. 152. 153. 154. 155.
156. 157. 158. 159. 160.
161. 162. 163. 164. 165.
166. 167. 168. 169. 170.
生没年月日【注】 | 昭和39年/1964年1月3日~ | |
在任期間 | 第147回~第170回(通算12年・24回) | |
在任年齢 | 48歳5ヶ月~59歳11ヶ月 | |
経歴 | 岐阜県多治見市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。大学院在学中に、パリ留学を経て大学講師となる。そのかたわら翻訳・小説創作をつづける。 | |
受賞歴・候補歴 |
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芥川賞候補歴 | 第124回受賞 「熊の敷石」(『群像』平成12年/2000年12月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 堀江敏幸 50歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
30歳 |
○ | 35 | 「他の人たちからは見えていないらしい元気なようでいてどこか影の薄い子どもたちや義兄だという謎めいた男、あるいはいつも携帯電話をいじっている夫までが、現実と非現実の境目に用意されたトランプの絵柄みたいに見えてくる。」「地方の町や義理の親族たちの持つ奇妙さが、穴のなかで《鼻》を利かせる手探りのリズムで描かれている」「過度なユーモアを抑えた生真面目さも、日常の《定説》を外れる力になっている。」 | |
山下澄人 | 47歳 |
○ | 31 | 「「ぼく」の周囲では時間軸がゆらぎ、人物関係が不分明になる。」「登場人物はみなどこか遠い山の麓の、国王などいない小さな村の住人のようだ。しかも全体に漂う寂しさや悲しさと、王の不在は無関係である。そこがいい。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年3月号 |
選考委員 堀江敏幸 50歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
40歳 |
○ | 26 | 「ずっと工事中の都市に仮住まいしているのは、人なのか時間なのか。それを曖昧にしていく語りは、途中で触れられている不発弾のように静かで不気味だ。」「街をはるか上空から「巨大な光の集合」と捉える視線が冷蔵庫の光と重なって、読後ながく胸に残った。」 | |
羽田圭介 | 28歳 |
○ | 17 | 「ここでのMは限りない中途半端さに支えられていて、自ら恃むところ頗る厚くない彼にはそれがよくわかっている。だから、猫ではなくもっと獰猛な獣になっても、尊大ではない羞恥心と言葉を捨てようとせず、生きることに執着する。そう読むと、グロテスクな印象が一転、輝きを放つ。」 |
横山悠太 | 32歳 |
○ | 17 | 「半減期を持たない漢字の右側の、ルビと呼ばれる猫耳のトリックに限界があることを承知のうえで挑んだこの力一杯の遊戯に、私は惹かれた。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年9月号 |
選考委員 堀江敏幸 54歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
38歳 |
○ | 25 | 「歩の受難と陰惨な場面の先になにがあるのか。それを問うことは、この作品においてあまり意味がない。異界のなかで索敵を終えた歩の、血みどろになって遠のいていく意識のなかで、シャンシン、シャンシンというチャッパの音を聴き取ることができれば、それでいいのだ。」 | |
町屋良平 | 34歳 |
○ | 15 | 「十六歳の若者たちの悩みどころをうまく拾いあげ、ツッコミを入れる正確な間と箴言めいたコメントの切れ味。やや思弁的にすぎる箇所があるとはいえ、全篇にただようユーモアと結末の微妙な脱力感が、この作品を前向きなものにしている。」 |
選評出典:『文藝春秋』平成30年/2018年9月号 |
選考委員 堀江敏幸 58歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
乗代雄介 | 35歳 |
○ | 17 | 「これまでの作品の湿気を取り払い、疾走感のある乾いた人工「世界」を現出させた、思い切りのいい語りで読ませる。」「作中、江戸時代後期の蔵書家にして紀行文作家が登場するが、干鰯で富を築いた豪商を扱うにふさわしい言葉の金肥がここにある。」 |
31歳 |
△ | 20 | 「焦り、怒り、説明不可能な心の暴発。それらを言葉で再生するのは、町の倉庫やオフィスのような中の見えない暗箱ではなく、刑務所内での閉居罰によって生まれた明るい空洞だ。それが従来作の混濁をなくす正の力になった。しかし、小さなねじ山の距離を揃えない前作の、負の力に満ちた行文も忘れがたい。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和4年/2022年3月号 |