生没年月日【注】 | 昭和50年/1975年6月22日~ | |
在任期間 | 第163回~(通算4.5年・9回) | |
在任年齢 | 45歳0ヶ月~ | |
経歴 | 愛知県蒲郡市生まれ、福岡県北九州市育ち。京都大学法学部卒。大学在学中に作家デビュー。 | |
受賞歴・候補歴 |
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芥川賞候補歴 | 第120回受賞 「日蝕」(『新潮』平成10年/1998年8月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 平野啓一郎 46歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
高瀬隼子 | 33歳 |
◎ | 31 | 「私が、一人だけ強く推した」「社会的に逸脱した男性の面倒を看る女性主人公という意味では、『蹴りたい世界』、『コンビニ人間』を思い出させるが、だからこそ「悪臭」という受け容れがたい要素が効果的である。」「奇妙な共依存関係の描写は濃やかで、都市的な快適さ、清潔さが必要とする水のエコロジカルな批評は、しかし、自然賛美とも直結せず、異常気象の影響らしい豪雨へとアイロニカルに飛躍する。浴室でペットボトルから注がれた水のか細さから、豪雨の川へと発展してゆくイメージの肥大も秀逸だった。」 |
41歳 |
■ | 15 | 「秩序と無秩序といったフレームで、個々の逸話が統合されてゆくのだが、最終的に野宮が自ら語る言葉、またそれを受けての主人公の感慨に、死者の他者性の尊重という観点から疑問が残った。」 | |
31歳 |
■ | 14 | 「作者のバックグラウンドにある歴史的・政治的な緊張が反映された野心作だが、寓話性とリアリズムとのバランスに難があり、(引用者中略)何よりも、大ノロによって語られる秘史があまりに大味で、政治を描きつつ、政治的に最も困難な問題について書かれていない点が残念だった。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和3年/2021年9月号 |
選考委員 平野啓一郎 46歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
九段理江 | 31歳 |
◎ | 33 | 「最も高く評価した」「虐待の連鎖を恐れる抑制的な母親と、グレタ・トゥーンベリに憧れ、親世代を「馬鹿あつかい」しているZ世代の娘という新しい母娘関係が描かれている。」「こうした物語の全体を、夢と覚醒とを象徴として、『女生徒』を踏まえつつ纏め上げる構成力も見事だった。」「結末としての文学への期待も、若い作家の意志として私は肯定的に受け止めた。」 |
31歳 |
□ | 16 | 「著者のマニアックなまでに平板な詳述法が、ギグワーカーとしての主人公の人生を効果的に表現しており、しかもその日常が、服役後も奇妙に連続している点に注目した。」「スタイル自体は、些か手堅過ぎるが、本作の受賞に私も賛成した。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和4年/2022年3月号 |
選考委員 平野啓一郎 47歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
小砂川チト | 32歳 |
◎ | 32 | 「今回は『家庭用安心坑夫』を推した。」「母の狂気に受動的に従っていた娘が、そこから解放された後、いっそ母のように狂えていたなら、という無意識裡の願望に衝き動かされ、実行に移すという発想に、非凡なものを感じた。」「結局は母のようには狂えないまま、一端、踏み外してしまった日常にも、もう帰る場所がないという結びにはペーソスを感じた。」「全候補作を読み終えてからも、私はこの小説のことが気になって仕方がなく、別の作品を推すつもりだったが、最終的に考えを変えた。」 |
34歳 |
△ | 22 | 「生のルーティンの懐疑という前作以来の主題は、より複雑化し、緻密になった分、インパクトはやや低下したが、作者の着実な歩みが評価されたことは喜ばしい。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和4年/2022年9月号 |
選考委員 平野啓一郎 47歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
安堂ホセ | 28歳 |
◎ | 28 | 「脱帽した」「ポルノという、社会正義とは相性が悪そうな題材を扱いながら、「ポリティカル・コレクトネス」が、現にマイノリティとして生きる人々にとっていかに痛切に必要かを、社会との距離感がそのまま反映されたような、微かに遅いテンポ感の文体で語ってゆく。」「疵はあるものの、本作が切り拓いた日本語文学の新しい可能性をこそ、私は評価したい。」 |
40歳 |
□ | 10 | 「候補作中、最も深い感銘を受けた。復興から零れ落ちた人々の生死を誠実なリアリズムで描く反面、スタイル的な新鮮さには乏しく、受賞に賛同したが、本作を第一には推さなかった。」 | |
35歳 |
△ | 23 | 「V・ウルフ風の「意識の流れ」を二人称で描くという難しい挑戦が成功している。」「「あなた」という穂賀への語りかけは、ヤング・ケアラーの少女への「あなた」へと転ずる最後の場面で、彼女の子育てを否定する、唯一の真の他者へと開かれる筈だったが、その対立性は曖昧に呑み込まれ、結局、全篇を貫く自己承認回路へと吸収されてしまう。」 | |
選評出典:『文藝春秋』令和5年/2023年3月号 |
選考委員 平野啓一郎 48歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
43歳 |
◎ | 32 | 「高く評価した」「障害者の立場から社会の欺瞞を批評し、解体して、再構成を促すような挑発に満ちている。文体には知的な重層性があり、表現もよく練られていた。」「本書が突きつける問いの気魄は、読者に安易な返答を許さない。」 | |
石田夏穂 | 31歳 |
○ | 20 | 「作者のフェティシズムの表現という意味では前候補作の同工異曲のようだが、工場建築の溶接工という設定により、社会的な広がりのある作品となった。」「綿密な調査に基づく正確な文体も、作者の個性として確立されており、受賞に値する水準の作品だった。但し、タイトルと終わり方には疑問がある。」 |
選評出典:『文藝春秋』令和5年/2023年9月号 |