第12回

第11回第13回

昭和15年/1940年下半期 昭和16年/1941年1月28日決定発表／『文藝春秋』昭和16年/1941年3月号経緯掲載

選考委員　 佐藤春夫 48歳 横光利一 42歳 室生犀星 51歳 小島政二郎 46歳 瀧井孝作 46歳 川端康成 41歳 宇野浩二 49歳 佐佐木茂索 46歳 菊池寛 52歳 久米正雄 49歳 谷崎潤一郎 54歳 山本有三 53歳 選評総行数　 60 23 11 92 58 61 111 15         評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 選評なし 選評なし 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 櫻田常久　「平賀源内」 90枚 44歳 評 ◎ 47 △ 9 □ 6 ■ 11 △ 14 ○ 51 ○ 43 ○ 9                 牛島春子　「祝といふ男」 40枚 27歳 評 □ 17 ○ 6 ― 0 ○ 37 ■ 8 ■ 4 △ 10 ・ 2                 柳井統子　「父」 45枚 28歳 評 ― 0 ― 0 △ 4 ■ 9 △ 2 ■ 2 ■ 6 ・ 2                 井上孝　「ある市井人の一生」 72枚 25歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 △ 5 ― 0 ― 0 ■ 7 ― 0                 村田孝太郎　「雞」 66枚 36歳 評 ■ 4 □ 5 ◎ 7 △ 4 ◎ 8 □ 8 △ 10 ■ 2                 白川渥　「崖」 76枚 33歳 評 ■ 4 ◎ 6 ― 0 ◎ 23 △ 9 □ 8 △ 8 □ 5                 儀府成一　「動物園」 135枚 32歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 △ 5 ■ 5 ― 0 ■ 6 ■ 2                 埴原一亟　「店員」 73枚 33歳 評 ■ 4 ― 0 ― 0 △ 4 ■ 6 △ 3 ■ 4 ・ 2                 森荘已池　「氷柱」 50枚 33歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 9 ■ 5 ■ 3 ■ 5 ― 0                 北村謙次郎　「つひの栖」 39枚 36歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 2 ― 0                 佐藤虎男　「ビンタンの星」 64枚 (33歳) 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0                 島村利正　「高麗人」 306枚 28歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 3 ― 0                 菅逸二　「沼のある谷間」 90枚 (22歳) 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 4 ― 0                                     欠席 欠席 年齢/枚数の説明   見方・注意点

佐藤春夫48歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数60　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 ◎ 47 「感服した。」「まずその取材と、この特異な人物を独自な方法でよく消化した構想の妙に敬服した。それは作者自身がその面白さにいい気になってしまって若し一歩を誤ったとしたら、直木賞作品になってしまいそうな心配もないではないと思われる程のところを文学精神の高さによって救っていたのも好ましい（所謂大衆小説を必ずしも軽侮したつもりではない。念のため一言）」「平賀源内は所謂歴史小説でもなくまた描写至上の自然主義小説でもない。自分はこれを象徴的手法を持った一種の新らしい観念小説と見る者である。」 牛島春子 27歳 全 □ 17 「感服した。」「この個性的な有為の人物の風貌性格をよく把握し、可なりに複雑な人と事とを簡素に大まかなしかも陰影の多い力ある筆で十分に活写して自らに新興国満洲の役人社会らしい趣を示し清新の気の漲るもののあるのを敬愛する。」 柳井統子 28歳 全 ― 0   井上孝 25歳 全 ― 0   村田孝太郎 36歳 全 ■ 4 「決して凡作ではなくとも未だ一抹の自然主義臭味ともいうべきものなごりの慊焉たるもののあるのを免れないと感じた。」 白川渥 33歳 全 ■ 4 「決して凡作ではなくとも未だ一抹の自然主義臭味ともいうべきものなごりの慊焉たるもののあるのを免れないと感じた。」 儀府成一 32歳 全 ― 0   埴原一亟 33歳 全 ■ 4 「決して凡作ではなくとも未だ一抹の自然主義臭味ともいうべきものなごりの慊焉たるもののあるのを免れないと感じた。」 森荘已池 33歳 全 ― 0   北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0     「今度の候補作品は近来の粒ぞろいでその上それがみなとりどりの姿を持っていたのも甚だ喜ばしかった。」

他の選考委員 横光利一 室生犀星 小島政二郎 瀧井孝作 川端康成 宇野浩二 佐佐木茂索

横光利一42歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数23　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 △ 9 「材料の験べに適当な現代人の批評力もあり、描写力もあり、文章に格調もあって授賞作の品格を充分持った作品と思う。ただ私一個人の見解として、現代物に優秀な作品のあるときは、歴史物を第二とすべきであると主張している関係上、私は現代物の方を推賞した。」 牛島春子 27歳 全 ○ 6 「（引用者注：「崖」「鶏」と共に）最後まで「源内」に迫った」「荒々しい描写力に新鮮鋭敏な健康さがあり、芸を無視しているところに満洲という土地に相応しい強さを感じた。」 柳井統子 28歳 全 ― 0   井上孝 25歳 全 ― 0   村田孝太郎 36歳 全 □ 5 「（引用者注：「崖」「祝といふ男」と共に）最後まで「源内」に迫った」「人間を一人も出さず、群鶏を描いて押し通した持続と象徴力に、新人としての新しい解釈力が伺われて興味を感じた。」 白川渥 33歳 全 ◎ 6 「（引用者注：「祝といふ男」「鶏」と共に）最後まで「源内」に迫ったが、「崖」は現在のところ、発表不可能という材料の不運のために落ちた。この作は今までの芥川賞授賞作品のうち、最も良いものの一つと並び、さまで遜色のない重量を備えたものと思った。」 儀府成一 32歳 全 ― 0   埴原一亟 33歳 全 ― 0   森荘已池 33歳 全 ― 0   北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0     「この度びは（引用者中略）優れた作の多かったのは、頼母しい現象だと思った。」

他の選考委員 佐藤春夫 室生犀星 小島政二郎 瀧井孝作 川端康成 宇野浩二 佐佐木茂索

室生犀星51歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数11　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 □ 6 「歴史物として万遍なき道具立があり装いを凝らした作。」 牛島春子 27歳 全 ― 0   柳井統子 28歳 全 △ 4 「（引用者注：「鶏」の）つぎに柳井統子の「父」を用意した。」「「源内」にくらべるとやはり「源内」をとるようになる。」 井上孝 25歳 全 ― 0   村田孝太郎 36歳 全 ◎ 7 「私は「鶏」をすいせんした。」「鶏の生活を深くたずねて行きつくところまで、眼と心を行き亙らしている。愉しい物語。そこに野心なく流麗素朴。」 白川渥 33歳 全 ― 0   儀府成一 32歳 全 ― 0   埴原一亟 33歳 全 ― 0   森荘已池 33歳 全 ― 0   北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0	他の選考委員 佐藤春夫 横光利一 小島政二郎 瀧井孝作 川端康成 宇野浩二 佐佐木茂索

小島政二郎46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数92　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 ■ 11 「面白く読んだが、私は更生後の源内の生活に、あれ程科学狂だった彼の性癖が少しもにじみ出ていないのが物足りなかった。」「佐藤春夫も、川端康成も、更生後の源内の生活は、一つのシンボルとして見れば足りると云う説だったが、それはそうに違いないが、しかし小説である以上、私はやっぱり彼の性格の追究を求めたい。」 牛島春子 27歳 全 ○ 37 「描写がモノクロマチックなところが欠点と云えば欠点だが、しかし祝と云う満人の――異人種の、非常に特殊な性格をこれ程まで見詰めた――女流作家としては珍らしいインテンシテー、しかも、その性格描写に於ける成功は、特筆していいと思う。」「作者の導くがままに私はごく自然に祝と云う男を生活した。これは、作者の創作態度が、悪い意味で小説的野心のとりこ（原文傍点）にならなかった賜物であろう。」 柳井統子 28歳 全 ■ 9 「心引かれた。が、父、母、兄、妹、祖父、祖母と云う沢山の歯車が廻っていながら、全体として見る時、食い合っていない――と云うよりも、食い合方の違いで、もっと廻っていなければならない筈の歯車が回転不足をしていたり（引用者中略）一つの有機体としての強い唸りが生じて来ない憾みがある。」 井上孝 25歳 全 △ 5 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 村田孝太郎 36歳 全 △ 4 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 白川渥 33歳 全 ◎ 23 「一番優れていると思った」「殆んど過不及ない位よく纏まっているし、描写も行き届いているし、殊に母と云い兄嫁と云い、就中兄嫁の描写などは、そこに肉体を感ずる位ヴィヴィッドに描かれている。」「私はこの作に一番点を入れた。しかし、この作は不幸にして本誌上に再録出来ない性質を持っていると注意されて断念した。」「この作者には新らしく稿を起して貰って本誌に載せると云う条件で我慢する外なかった。」 儀府成一 32歳 全 △ 5 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 埴原一亟 33歳 全 △ 4 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 森荘已池 33歳 全 ■ 9 「「店頭」の中では、「氷柱」と「近郊盗人伝」とを面白く読んだ。この作者の官能のねばッこさは異常である。私に云わせれば描かれた場面が、立体的に起き上って来ないのが弊だと思う。私は作者に、東北弁の芸術化を慫慂したい。」 北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0     「今度は珍らしく粒が揃っていて、どれも面白く読めた。」

他の選考委員 佐藤春夫 横光利一 室生犀星 瀧井孝作 川端康成 宇野浩二 佐佐木茂索

瀧井孝作46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数58　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 △ 14 「主人公の晩年、農村人として生き抜いたという、これは史実とみるよりも作者の創作のようにみえたが、この土の精神の力説は、佳い主題で、佳い小説に成っていると思った・描写の筆は分り易いが、味いは稍平板ではないか、猶活々とした血肉があれば申分ないがと思った。」「（引用者注：前回候補の）「薤露の章」は唐氏の伝奇小説李〈女＋圭〉伝を換骨奪胎した歴史小説で、この作者が斯様に特異小説をつくる、その頭のはたらきが買われたわけだ、とぼくは思った。」 牛島春子 27歳 全 ■ 8 「慥かにハッキリと描いてあるが、描写に味が淡いようで、これは作家の筆ではない、作文の先生の筆だと思った。この主人公の性格などは表現されているが、この描写に読み乍ら愉しみのない感じは、どういうわけかとぼくは考えて、これは作家の筆でないと云うような欠点を思った。」 柳井統子 28歳 全 △ 2 「情操の豊かな筆で、描写に佳い味いがあった。」 井上孝 25歳 全 ― 0   村田孝太郎 36歳 全 ◎ 8 「ぼくは一番好きで一番佳いと思った。」「生活の暗示に富んだ筆で、描写に力と厚味があり、堂々として、鶏の姿が美しく表現されていて、読み乍ら実に愉しかった。鶏のことばかりを描いてある点も、作品として何か新味が感じられた。」 白川渥 33歳 全 △ 9 「小味な感じの小説だが、この小味という点では頂点を示しているようなうまみのある作品だと思った。」「作品の主題は、戦死者の未亡人の再婚問題が扱われていて、現今の当局の忌避に触れる点もあるようで、一般には発表できない作品と思われた。一般の人に一読をすすめられないのは惜しいと思った。」 儀府成一 32歳 全 ■ 5 「山村の農民の漫画を見るような作品だが、描写の筆は放胆に似て線が太く強い新鮮な所があった。会話の方言などは面白味があるけれど、読みづらいのが難だと思った。」 埴原一亟 33歳 全 ■ 6 「描写は克明で手腕は十分ある人だと思った。」「稍古くさい弱い所があり小説になりすぎているかとも思った。」 森荘已池 33歳 全 ■ 5 「一種の感覚派の作品と云いたいような、観察に、詩人らしいような鋭い感覚があり、描き出されたものは感覚的ではあるが、何か美しい感じで頭に沁みた。感覚的であるだけに脆弱な所は欠点かと思われた。」 北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0

他の選考委員 佐藤春夫 横光利一 室生犀星 小島政二郎 川端康成 宇野浩二 佐佐木茂索

川端康成41歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数61　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 ○ 51 「「平賀源内」を推すとなると、私の気持ははっきりする。落ちつく。それには、それだけの力が、「平賀源内」という作品にあるものと、私は考えた。」「「崖」や「鶏」に比べて、「平賀源内」は遙かに欠点の多いことは、無論である。」「テエマと筋を知ってしまってから読むと、それを知る前に読むほどには、面白くないのである。」「「平賀源内」は歴史小説の形を借りた現代小説である。」「知識人の生き方について、一つの道を考えたとも言える。」「この主題に平賀源内を持って来たのは、作者の手柄である。」 牛島春子 27歳 全 ■ 4 「満人の不思議な性格が、不思議なままに写せているし、婦人作家としては強いけれども、少し粗いようで、まだ十分には信頼しかねるところがある。」 柳井統子 28歳 全 ■ 2 「作者の心の動きは、まだ足りないと思いながら、誠実な方向を認める。」 井上孝 25歳 全 ― 0   村田孝太郎 36歳 全 □ 8 「「崖」、「鶏」等にも、私は一票を投じてよかった。」「「平賀源内」を除くと、「崖」か「鶏」か、私は迷う。」 白川渥 33歳 全 □ 8 「「崖」、「鶏」等にも、私は一票を投じてよかった。」「「平賀源内」を除くと、「崖」か「鶏」か、私は迷う。」 儀府成一 32歳 全 ― 0   埴原一亟 33歳 全 △ 3 「仮りに、「平賀源内」を推さないとすると、「崖」、「鶏」、「店頭」などのうちの、いずれを選ぶべきか、私は迷う。」 森荘已池 33歳 全 ■ 3 「作者の才質は見るべきだが、急所で力が盛り上らない。平板である。」 北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0

他の選考委員 佐藤春夫 横光利一 室生犀星 小島政二郎 瀧井孝作 宇野浩二 佐佐木茂索

宇野浩二49歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数111　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 ○ 43 「推す人が多かった。私もその一人である。」「「直耕の人でなければ、三度三度の食は遠慮しなければならん」という理窟を、簡潔な文章で、あまり理窟ばらずに、小説にしたものである。そうして、余り用いたくない言葉であるが、国策に向くように書いてある。そうして、なかなか面白い小説である。その代り、しかし、作り過ぎたところがある。」 牛島春子 27歳 全 △ 10 「祝という毛色の変った人間の性格がわりに書けている上に、満洲国の裏面の或る一面も或る程度まで出ている、好短篇である。しかし、唯それだけの作品である。」 柳井統子 28歳 全 ■ 6 「題目の父の生活はちょっと面白いけれど、それも余りよく書けていない上に、他の人物たちが、それ以上に、書けていない。しかし、全く新らしい作家としては、このくらいなら、という作品である。」 井上孝 25歳 全 ■ 7 「書かれてある事は変化もあって面白く、筆も達者であるから、一と通り感心したが、何か肝心のものが欠けている気がしたので、同じ作家の『ひとの巣』というのを読んでみると、一層その感を深くした。」 村田孝太郎 36歳 全 △ 10 「実に風変りな小説である。」「鶏どもの四六時ちゅうの生活を、細大もらさず、何と、七八十枚ぐらい描写してあるのである。然も、それが、初め、退屈を感じながら読み出しながら、つい終りまで読んでしまう妙な魅力のようなものを持っているのである。しかし、それだけなのである。しかし、私はちょっと面白いと思った。」 白川渥 33歳 全 △ 8 「古めかしいところはあるが、可なり複雑な題材をよく熟した、手堅い作品であるけれど、謂わゆる銃後の生活を題材にしながら、仮りにこの小説を取るとしても、これでは、今の時節がら、再録できない性質のものである。」 儀府成一 32歳 全 ■ 6 「悉く東北言葉である読みづらさを辛抱して読みつづけたが、面白いところもあるけれど、よくない意味で、題材も、芸術的にも、ゲテモノである。」 埴原一亟 33歳 全 ■ 4 「面白い所を掴んでいて、しかも巧みなところはあるが、調子が低い。」 森荘已池 33歳 全 ■ 5 「無手勝流のような面白さがあるけれど、その面白さに浮わついたところがあって、安心できない。」 北村謙次郎 36歳 全 ■ 2 「うまく作ってはあるが、簡単過ぎる」 佐藤虎男 (33歳) 全 ■ 3 「題材は面白いけれど、『潮霧』より落ちるのが心細い」 島村利正 28歳 全 ■ 3 「力作であり、作者の意図は悪くないが、余りに冗漫」 菅逸二 (22歳) 全 ■ 4 「凝っているところはあるけれど、独り合点で、幼稚である。その代り、感じは悪くない。しかし、やはり感心できない。」   「討議中に、今度は、図抜けて勝れた作品はなかったが、粒の揃った作品がわりに多かった、という言葉がときどき云い交された。これも珍しい事であった。」

他の選考委員 佐藤春夫 横光利一 室生犀星 小島政二郎 瀧井孝作 川端康成 佐佐木茂索

佐佐木茂索46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数15　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 櫻田常久 44歳 全 ○ 9 「「平賀源内」か「崖」かと迷った。」「推す人が一番多い。私は躊躇なく賛成した。この作者の前作「薤露の章」が既に受賞者の一人たるに足る十分の力量を示していた。」 牛島春子 27歳 全 ・ 2   柳井統子 28歳 全 ・ 2   井上孝 25歳 全 ― 0   村田孝太郎 36歳 全 ■ 2 「読みごたえがあったが、ちと読みごたえがあり過ぎた。」 白川渥 33歳 全 □ 5 「「平賀源内」か「崖」かと迷った。しかし「崖」はどうやら文藝春秋誌上に発表はしかねる性ちと思えた。」 儀府成一 32歳 全 ■ 2 「読みごたえがあったが、ちと読みごたえがあり過ぎた。」 埴原一亟 33歳 全 ・ 2   森荘已池 33歳 全 ― 0   北村謙次郎 36歳 全 ― 0   佐藤虎男 (33歳) 全 ― 0   島村利正 28歳 全 ― 0   菅逸二 (22歳) 全 ― 0

他の選考委員 佐藤春夫 横光利一 室生犀星 小島政二郎 瀧井孝作 川端康成 宇野浩二

櫻田常久44歳×各選考委員　 「平賀源内」 短篇 90枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ◎ 47 「感服した。」「まずその取材と、この特異な人物を独自な方法でよく消化した構想の妙に敬服した。それは作者自身がその面白さにいい気になってしまって若し一歩を誤ったとしたら、直木賞作品になってしまいそうな心配もないではないと思われる程のところを文学精神の高さによって救っていたのも好ましい（所謂大衆小説を必ずしも軽侮したつもりではない。念のため一言）」「平賀源内は所謂歴史小説でもなくまた描写至上の自然主義小説でもない。自分はこれを象徴的手法を持った一種の新らしい観念小説と見る者である。」 横光利一 42歳 全 △ 9 「材料の験べに適当な現代人の批評力もあり、描写力もあり、文章に格調もあって授賞作の品格を充分持った作品と思う。ただ私一個人の見解として、現代物に優秀な作品のあるときは、歴史物を第二とすべきであると主張している関係上、私は現代物の方を推賞した。」 室生犀星 51歳 全 □ 6 「歴史物として万遍なき道具立があり装いを凝らした作。」 小島政二郎 46歳 全 ■ 11 「面白く読んだが、私は更生後の源内の生活に、あれ程科学狂だった彼の性癖が少しもにじみ出ていないのが物足りなかった。」「佐藤春夫も、川端康成も、更生後の源内の生活は、一つのシンボルとして見れば足りると云う説だったが、それはそうに違いないが、しかし小説である以上、私はやっぱり彼の性格の追究を求めたい。」 瀧井孝作 46歳 全 △ 14 「主人公の晩年、農村人として生き抜いたという、これは史実とみるよりも作者の創作のようにみえたが、この土の精神の力説は、佳い主題で、佳い小説に成っていると思った・描写の筆は分り易いが、味いは稍平板ではないか、猶活々とした血肉があれば申分ないがと思った。」「（引用者注：前回候補の）「薤露の章」は唐氏の伝奇小説李〈女＋圭〉伝を換骨奪胎した歴史小説で、この作者が斯様に特異小説をつくる、その頭のはたらきが買われたわけだ、とぼくは思った。」 川端康成 41歳 全 ○ 51 「「平賀源内」を推すとなると、私の気持ははっきりする。落ちつく。それには、それだけの力が、「平賀源内」という作品にあるものと、私は考えた。」「「崖」や「鶏」に比べて、「平賀源内」は遙かに欠点の多いことは、無論である。」「テエマと筋を知ってしまってから読むと、それを知る前に読むほどには、面白くないのである。」「「平賀源内」は歴史小説の形を借りた現代小説である。」「知識人の生き方について、一つの道を考えたとも言える。」「この主題に平賀源内を持って来たのは、作者の手柄である。」 宇野浩二 49歳 全 ○ 43 「推す人が多かった。私もその一人である。」「「直耕の人でなければ、三度三度の食は遠慮しなければならん」という理窟を、簡潔な文章で、あまり理窟ばらずに、小説にしたものである。そうして、余り用いたくない言葉であるが、国策に向くように書いてある。そうして、なかなか面白い小説である。その代り、しかし、作り過ぎたところがある。」 佐佐木茂索 46歳 全 ○ 9 「「平賀源内」か「崖」かと迷った。」「推す人が一番多い。私は躊躇なく賛成した。この作者の前作「薤露の章」が既に受賞者の一人たるに足る十分の力量を示していた。」

他の候補作 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

牛島春子27歳×各選考委員　 「祝といふ男」 短篇 40枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 □ 17 「感服した。」「この個性的な有為の人物の風貌性格をよく把握し、可なりに複雑な人と事とを簡素に大まかなしかも陰影の多い力ある筆で十分に活写して自らに新興国満洲の役人社会らしい趣を示し清新の気の漲るもののあるのを敬愛する。」 横光利一 42歳 全 ○ 6 「（引用者注：「崖」「鶏」と共に）最後まで「源内」に迫った」「荒々しい描写力に新鮮鋭敏な健康さがあり、芸を無視しているところに満洲という土地に相応しい強さを感じた。」 室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ○ 37 「描写がモノクロマチックなところが欠点と云えば欠点だが、しかし祝と云う満人の――異人種の、非常に特殊な性格をこれ程まで見詰めた――女流作家としては珍らしいインテンシテー、しかも、その性格描写に於ける成功は、特筆していいと思う。」「作者の導くがままに私はごく自然に祝と云う男を生活した。これは、作者の創作態度が、悪い意味で小説的野心のとりこ（原文傍点）にならなかった賜物であろう。」 瀧井孝作 46歳 全 ■ 8 「慥かにハッキリと描いてあるが、描写に味が淡いようで、これは作家の筆ではない、作文の先生の筆だと思った。この主人公の性格などは表現されているが、この描写に読み乍ら愉しみのない感じは、どういうわけかとぼくは考えて、これは作家の筆でないと云うような欠点を思った。」 川端康成 41歳 全 ■ 4 「満人の不思議な性格が、不思議なままに写せているし、婦人作家としては強いけれども、少し粗いようで、まだ十分には信頼しかねるところがある。」 宇野浩二 49歳 全 △ 10 「祝という毛色の変った人間の性格がわりに書けている上に、満洲国の裏面の或る一面も或る程度まで出ている、好短篇である。しかし、唯それだけの作品である。」 佐佐木茂索 46歳 全 ・ 2

他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

柳井統子28歳×各選考委員　 「父」 短篇 45枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 △ 4 「（引用者注：「鶏」の）つぎに柳井統子の「父」を用意した。」「「源内」にくらべるとやはり「源内」をとるようになる。」 小島政二郎 46歳 全 ■ 9 「心引かれた。が、父、母、兄、妹、祖父、祖母と云う沢山の歯車が廻っていながら、全体として見る時、食い合っていない――と云うよりも、食い合方の違いで、もっと廻っていなければならない筈の歯車が回転不足をしていたり（引用者中略）一つの有機体としての強い唸りが生じて来ない憾みがある。」 瀧井孝作 46歳 全 △ 2 「情操の豊かな筆で、描写に佳い味いがあった。」 川端康成 41歳 全 ■ 2 「作者の心の動きは、まだ足りないと思いながら、誠実な方向を認める。」 宇野浩二 49歳 全 ■ 6 「題目の父の生活はちょっと面白いけれど、それも余りよく書けていない上に、他の人物たちが、それ以上に、書けていない。しかし、全く新らしい作家としては、このくらいなら、という作品である。」 佐佐木茂索 46歳 全 ・ 2

他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

井上孝25歳×各選考委員　 「ある市井人の一生」 短篇 72枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 △ 5 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 瀧井孝作 46歳 全 ― 0   川端康成 41歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ■ 7 「書かれてある事は変化もあって面白く、筆も達者であるから、一と通り感心したが、何か肝心のものが欠けている気がしたので、同じ作家の『ひとの巣』というのを読んでみると、一層その感を深くした。」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

村田孝太郎36歳×各選考委員　 「雞」 短篇 66枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ■ 4 「決して凡作ではなくとも未だ一抹の自然主義臭味ともいうべきものなごりの慊焉たるもののあるのを免れないと感じた。」 横光利一 42歳 全 □ 5 「（引用者注：「崖」「祝といふ男」と共に）最後まで「源内」に迫った」「人間を一人も出さず、群鶏を描いて押し通した持続と象徴力に、新人としての新しい解釈力が伺われて興味を感じた。」 室生犀星 51歳 全 ◎ 7 「私は「鶏」をすいせんした。」「鶏の生活を深くたずねて行きつくところまで、眼と心を行き亙らしている。愉しい物語。そこに野心なく流麗素朴。」 小島政二郎 46歳 全 △ 4 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 瀧井孝作 46歳 全 ◎ 8 「ぼくは一番好きで一番佳いと思った。」「生活の暗示に富んだ筆で、描写に力と厚味があり、堂々として、鶏の姿が美しく表現されていて、読み乍ら実に愉しかった。鶏のことばかりを描いてある点も、作品として何か新味が感じられた。」 川端康成 41歳 全 □ 8 「「崖」、「鶏」等にも、私は一票を投じてよかった。」「「平賀源内」を除くと、「崖」か「鶏」か、私は迷う。」 宇野浩二 49歳 全 △ 10 「実に風変りな小説である。」「鶏どもの四六時ちゅうの生活を、細大もらさず、何と、七八十枚ぐらい描写してあるのである。然も、それが、初め、退屈を感じながら読み出しながら、つい終りまで読んでしまう妙な魅力のようなものを持っているのである。しかし、それだけなのである。しかし、私はちょっと面白いと思った。」 佐佐木茂索 46歳 全 ■ 2 「読みごたえがあったが、ちと読みごたえがあり過ぎた。」

他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

白川渥33歳×各選考委員　 「崖」 短篇 76枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ■ 4 「決して凡作ではなくとも未だ一抹の自然主義臭味ともいうべきものなごりの慊焉たるもののあるのを免れないと感じた。」 横光利一 42歳 全 ◎ 6 「（引用者注：「祝といふ男」「鶏」と共に）最後まで「源内」に迫ったが、「崖」は現在のところ、発表不可能という材料の不運のために落ちた。この作は今までの芥川賞授賞作品のうち、最も良いものの一つと並び、さまで遜色のない重量を備えたものと思った。」 室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ◎ 23 「一番優れていると思った」「殆んど過不及ない位よく纏まっているし、描写も行き届いているし、殊に母と云い兄嫁と云い、就中兄嫁の描写などは、そこに肉体を感ずる位ヴィヴィッドに描かれている。」「私はこの作に一番点を入れた。しかし、この作は不幸にして本誌上に再録出来ない性質を持っていると注意されて断念した。」「この作者には新らしく稿を起して貰って本誌に載せると云う条件で我慢する外なかった。」 瀧井孝作 46歳 全 △ 9 「小味な感じの小説だが、この小味という点では頂点を示しているようなうまみのある作品だと思った。」「作品の主題は、戦死者の未亡人の再婚問題が扱われていて、現今の当局の忌避に触れる点もあるようで、一般には発表できない作品と思われた。一般の人に一読をすすめられないのは惜しいと思った。」 川端康成 41歳 全 □ 8 「「崖」、「鶏」等にも、私は一票を投じてよかった。」「「平賀源内」を除くと、「崖」か「鶏」か、私は迷う。」 宇野浩二 49歳 全 △ 8 「古めかしいところはあるが、可なり複雑な題材をよく熟した、手堅い作品であるけれど、謂わゆる銃後の生活を題材にしながら、仮りにこの小説を取るとしても、これでは、今の時節がら、再録できない性質のものである。」 佐佐木茂索 46歳 全 □ 5 「「平賀源内」か「崖」かと迷った。しかし「崖」はどうやら文藝春秋誌上に発表はしかねる性ちと思えた。」

他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

儀府成一32歳×各選考委員　 「動物園」 短篇 135枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 △ 5 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 瀧井孝作 46歳 全 ■ 5 「山村の農民の漫画を見るような作品だが、描写の筆は放胆に似て線が太く強い新鮮な所があった。会話の方言などは面白味があるけれど、読みづらいのが難だと思った。」 川端康成 41歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ■ 6 「悉く東北言葉である読みづらさを辛抱して読みつづけたが、面白いところもあるけれど、よくない意味で、題材も、芸術的にも、ゲテモノである。」 佐佐木茂索 46歳 全 ■ 2 「読みごたえがあったが、ちと読みごたえがあり過ぎた。」	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

埴原一亟33歳×各選考委員　 「店員」 短篇 73枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ■ 4 「決して凡作ではなくとも未だ一抹の自然主義臭味ともいうべきものなごりの慊焉たるもののあるのを免れないと感じた。」 横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 △ 4 「今度の候補作はみんな楽しく読めた。」 瀧井孝作 46歳 全 ■ 6 「描写は克明で手腕は十分ある人だと思った。」「稍古くさい弱い所があり小説になりすぎているかとも思った。」 川端康成 41歳 全 △ 3 「仮りに、「平賀源内」を推さないとすると、「崖」、「鶏」、「店頭」などのうちの、いずれを選ぶべきか、私は迷う。」 宇野浩二 49歳 全 ■ 4 「面白い所を掴んでいて、しかも巧みなところはあるが、調子が低い。」 佐佐木茂索 46歳 全 ・ 2	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

森荘已池33歳×各選考委員　 「氷柱」 短篇 50枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ■ 9 「「店頭」の中では、「氷柱」と「近郊盗人伝」とを面白く読んだ。この作者の官能のねばッこさは異常である。私に云わせれば描かれた場面が、立体的に起き上って来ないのが弊だと思う。私は作者に、東北弁の芸術化を慫慂したい。」 瀧井孝作 46歳 全 ■ 5 「一種の感覚派の作品と云いたいような、観察に、詩人らしいような鋭い感覚があり、描き出されたものは感覚的ではあるが、何か美しい感じで頭に沁みた。感覚的であるだけに脆弱な所は欠点かと思われた。」 川端康成 41歳 全 ■ 3 「作者の才質は見るべきだが、急所で力が盛り上らない。平板である。」 宇野浩二 49歳 全 ■ 5 「無手勝流のような面白さがあるけれど、その面白さに浮わついたところがあって、安心できない。」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0

他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

北村謙次郎36歳×各選考委員　 「つひの栖」 短篇 39枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ― 0   瀧井孝作 46歳 全 ― 0   川端康成 41歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ■ 2 「うまく作ってはあるが、簡単過ぎる」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

佐藤虎男(33歳)×各選考委員　 「ビンタンの星」 短篇 64枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ― 0   瀧井孝作 46歳 全 ― 0   川端康成 41歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ■ 3 「題材は面白いけれど、『潮霧』より落ちるのが心細い」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 島村利正 「高麗人」 菅逸二 「沼のある谷間」

島村利正28歳×各選考委員　 「高麗人」 長篇 306枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ― 0   瀧井孝作 46歳 全 ― 0   川端康成 41歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ■ 3 「力作であり、作者の意図は悪くないが、余りに冗漫」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 菅逸二 「沼のある谷間」

菅逸二(22歳)×各選考委員　 「沼のある谷間」 短篇 90枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 佐藤春夫 48歳 全 ― 0   横光利一 42歳 全 ― 0   室生犀星 51歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ― 0   瀧井孝作 46歳 全 ― 0   川端康成 41歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ■ 4 「凝っているところはあるけれど、独り合点で、幼稚である。その代り、感じは悪くない。しかし、やはり感心できない。」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 櫻田常久 「平賀源内」 牛島春子 「祝といふ男」 柳井統子 「父」 井上孝 「ある市井人の一生」 村田孝太郎 「雞」 白川渥 「崖」 儀府成一 「動物園」 埴原一亟 「店員」 森荘已池 「氷柱」 北村謙次郎 「つひの栖」 佐藤虎男 「ビンタンの星」 島村利正 「高麗人」