<img src="../images/title_senpyo.gif" alt="芥川賞選評の概要" width="276" height="297">

選評なし

候補作

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

小山祐士　『瀬戸内海の子供ら』

242枚

29歳

△

■

―

○

―

◎

○

△

川崎長太郎　「余熱」他

33枚

34歳

■

―

△

◎

―

●

―

伊藤佐喜雄　「花宴」等

112枚

25歳

◎

△

―

■

―

△

―

檀一雄　「夕張胡亭塾景観」

83枚

24歳

■

◎

―

■

―

○

―

丸岡明　「生きものの記録」

352枚

28歳

■

△

―

◎

―

●

―

宮内寒彌　「中央高地」

44枚

24歳

△

◎

■

―

■

―

丸井栄雄　「踊る舞台と虫けら」

83枚

(33歳)

―

・

―

岩越昌三　「石生藻」

28枚

26歳

―

・

―

石川淳　「葦手」

106枚

37歳

―

■

―

巻のぶ子　「島本貞代」

―

（不明）

―

●

―

川口一郎　「二十六番館」

149枚

35歳

―

■

―

□

―

欠席

年齢/枚数の説明

見方・注意点

このページの選評出典：『芥川賞全集　第一巻』昭和57年/1982年2月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和11年/1936年4月号）
1行当たりの文字数：26字

このページの「話の屑籠」出典：昭和35年/1960年4月・文藝春秋新社刊『菊池寛文學全集　第七巻』（初出：『文藝春秋』昭和11年/1936年4月号）

選考委員

佐藤春夫

43歳×各候補作　

総行数57　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	△	7	「確実に力量ある新作家たるは疑ふ余地有之まじく候。」「前年度の製作にかかる戯曲たるは、必ずしも深く拘泥せざるも一考の余地を感ぜしめ候、」「小山氏の近作を拝見致し度きものに御座候。」
川崎長太郎	34歳	全	■	8	「既に一家を成せる文壇の古狸に御座候」「年功進級には最適にして殊勲には非ざるべし、亦あまりに小味な作柄は授賞といふにふさはしからぬ特殊研究の趣有之候はずやと申されし某氏の意見の心にこびりつき居り候を拭ひ去り難くも覚え候。」
伊藤佐喜雄	25歳	全	◎	21	「花の宴は作者が広汎なる世界を描破せんとする野心的作品としてその意図の壮を喜び候へ共作者年少の故にや、或は作品未完了の為にや少々未完成の感あるを惜しむ。」「面影は完成せる好短篇なるべく、聊少女小説めくとか繊弱にして稍浮華などの非難も聞かれ候もかの病床の主人公にはふさはしき手法と小生は弁護致し度存じ候、」「この一作者に授賞候はん事必ずしも不適当ならざるべく思ひ切つてこの作者に決定せまほしく小生は感じ申し候。」
檀一雄	24歳	全	■	6	「年少作者の意気旺んに逞ましき個性を発散せしめ候を珍重致し候も、この作者もう一二篇の作品を見ねば安心出来ない感じを抱かせ候も事実に御座候。」
丸岡明	28歳	全	■	5	「新鮮なる情感と対異性観とを買ひ難きには無之候へどもその必然性を即座には認容致し難き手法は我等が旧弊のためにや敬遠すべきを覚え候、」
宮内寒彌	24歳	全	△	9	「確実に力量ある新作家たるは疑ふ余地有之まじく候。」「前年度の授賞に鑑み芥川賞が常に素材の興味多き殖民地文学に傾くは一考致され候。この作佳処なきにあらず、作者の才能信頼し得ざるに非ず、さりながら読者に与へ候感銘の聊実話的或は実感的興味に過ぎたるを慊焉たるものに覚え申し候。」
丸井栄雄	(33歳)	全	―	0
岩越昌三	26歳	全	―	0
石川淳	37歳	全	―	0
巻のぶ子	（不明）	全	―	0
川口一郎	35歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

久米正雄

44歳×各候補作　

総行数43　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	■	11	「私は自分の新進作家時代を思い、前回から、新らしい劇作家にも、芥川賞を与えるべきを主張して、真船君を前回には極力推挙した。」「今度、いわゆる「新喜劇」一派の作家（引用者中略・注：川口一郎か小山祐士）にやる事は賛成ではあるが、しかし何だか第一回の芥川賞の建て前から推して、この作品が去年の上演に属するのと、又根本的に、「芥川賞は短篇小説に！」と言うような心持を感ずる。」
川崎長太郎	34歳	全	■	5	「私は川崎長太郎君を、充分認めるものではあるが、同君は私に取っては、嘉村磯多君よりも以前の、新進作家であり、再び認めるには認める方法が、あるように思う。」
伊藤佐喜雄	25歳	全	△	9	「技倆から云って、充分信用していい新作家」「芸術的に渾然としては居るが、力弱い感じがする」
檀一雄	24歳	全	◎	8	「結局、僕にとっては、悪趣味と云われればそれ迄だが、檀一雄君の「個性」に、一番魅力を感じた。これは新らしいデカダンだ。新らしい野獣派（ルビ：フォーブ）だ、少くとも力強い。」「私としては、やはり、この人を第一候補者に推そう。」
丸岡明	28歳	全	△	7	「丸岡君などの逞ましい清新さも、授賞に価するものではある」
宮内寒彌	24歳	全	△	10	「技倆から云って、充分信用していい新作家」「この人の殖民地文学は決して前回の石川達三氏と比べて、遜色の無いものだが、どうもちょっと題材の殖民地性が、この際気に成る。」
丸井栄雄	(33歳)	全	・	2
岩越昌三	26歳	全	・	1
石川淳	37歳	全	■	3	「なかなか達者で面白いが、少しく陳い都会風であり、」
巻のぶ子	（不明）	全	●	2	「未完成のような気がした。」
川口一郎	35歳	全	■	6	「今度、いわゆる「新喜劇」一派の作家（引用者中略・注：川口一郎か小山祐士）にやる事は賛成ではあるが、しかし何だか第一回の芥川賞の建て前から推して、この作品が去年の上演に属するのと、又根本的に、「芥川賞は短篇小説に！」と言うような心持を感ずる。」

他の選考委員

選考委員

室生犀星

46歳×各候補作　

総行数18　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	―	0
川崎長太郎	34歳	全	―	0
伊藤佐喜雄	25歳	全	―	0
檀一雄	24歳	全	―	0
丸岡明	28歳	全	―	0
宮内寒彌	24歳	全	◎	18	「甚だ佳い作品」「やはり処女作めいたごついところと、内容が眼に珍しかったからであった。書き出しの自然描写にも、ちょっと奥の手を見せたすっきりしたところもあったし、作品のがらが小説的でもあったからである。後端は拙く前半が良い。あとの拙いことも、甚だたどたどしくてよかった。」「「中央高地」は傑作でも何でもないが、人々はこういう作品を見過すことのできない、微妙な、小説的宿縁を感じるのである。」「芥川賞に値するせんよりもこの機縁こそ、若い作家に猛然たる蛮力を与えることと信じるからである。」
丸井栄雄	(33歳)	全	―	0
岩越昌三	26歳	全	―	0
石川淳	37歳	全	―	0
巻のぶ子	（不明）	全	―	0
川口一郎	35歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

川端康成

36歳×各候補作　

総行数31　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	○	11	「（引用者注：第一に推す丸岡明の次に、川口一郎か小山祐士を）私は推薦したい。このいずれが受賞するも、客観的に見て甚だ妥当だと信じ、私一個の作品批評の見地にても、真に快心事である。」
川崎長太郎	34歳	全	△	4	「むしろ私達の先輩といいたい程だ。幾多の立派な作を過去にも示しながら酬いられること少きゆえ、芥川賞もよいが、新進奨励という賞の意味からすれば、川崎氏など別の優遇の道を講じるという意見に賛成である。」
伊藤佐喜雄	25歳	全	■	6	「作品の出来上りという点では、「瀬戸内海の子供ら」に大分距離があると思う。それぞれ特色があり、才能も認められるが、いろんな意味で若い。」
檀一雄	24歳	全	■	6	「作品の出来上りという点では、「瀬戸内海の子供ら」に大分距離があると思う。それぞれ特色があり、才能も認められるが、いろんな意味で若い。」
丸岡明	28歳	全	◎	4	「私は終始支持し、多分この作が受賞するであろうとひそかに期待していた。ところが委員会の席上で、ややこの作に荷担されたのは、久米正雄氏ただ一人であった。」
宮内寒彌	24歳	全	■	5	「作品の出来上りという点では、「瀬戸内海の子供ら」に大分距離があると思う。それぞれ特色があり、才能も認められるが、いろんな意味で若い。」
丸井栄雄	(33歳)	全	―	0
岩越昌三	26歳	全	―	0
石川淳	37歳	全	―	0
巻のぶ子	（不明）	全	―	0
川口一郎	35歳	全	□	8	「（引用者注：第一に推す丸岡明の次に、川口一郎か小山祐士を）私は推薦したい。」「既に戯曲界の新人として既に認められ、前回真船豊氏に授賞しなかったと同様の意味で、もはや芥川賞に及ばずということで、予選にも敬意的に除外されている」
					「文壇諸方面から推薦された候補は、今回六十八名の多きに達した。」

他の選考委員

選考委員

瀧井孝作

41歳×各候補作　

総行数3　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	―	0
川崎長太郎	34歳	全	◎	3	「川崎長太郎君を推す。川崎君を推す迄には種々経緯もあるが、今は父の死に会って飛騨へ急いでいるので、何も書いていられない。」
伊藤佐喜雄	25歳	全	―	0
檀一雄	24歳	全	―	0
丸岡明	28歳	全	―	0
宮内寒彌	24歳	全	―	0
丸井栄雄	(33歳)	全	―	0
岩越昌三	26歳	全	―	0
石川淳	37歳	全	―	0
巻のぶ子	（不明）	全	―	0
川口一郎	35歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

小島政二郎

42歳×各候補作　

総行数11　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	◎	3	「今度候補に登った作品の中では、何と云っても、水準を抜いていると思う。」
川崎長太郎	34歳	全	―	0
伊藤佐喜雄	25歳	全	△	8	「「面影」を第一等に推す。形式と云い、心理のニュアンスを縫って行く筆致と云い、品の佳さと云い、なかなか心にくい作品である。」「が、「花の宴」になると、同一の作者と思えないくらい見劣りがする。描写小説になるとこうも個性の美しさを醸し出すことがむずかしくなるものか。」
檀一雄	24歳	全	―	0
丸岡明	28歳	全	―	0
宮内寒彌	24歳	全	―	0
丸井栄雄	(33歳)	全	―	0
岩越昌三	26歳	全	―	0
石川淳	37歳	全	―	0
巻のぶ子	（不明）	全	―	0
川口一郎	35歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

佐佐木茂索

41歳×各候補作　

総行数15　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	○	3	「昨年秋の出版。その前に一度発表されたものであろうが。これを推すに吝かならず。」
川崎長太郎	34歳	全	●	4	「今さらの感なしとせず。芥川賞はこんなに有名でない人へ。芥川賞は新鮮な空気を「垣の内」へ入れるために存在せよ。」
伊藤佐喜雄	25歳	全	△	4	「気配りの細かい作家。しかし「花宴」が十二月から始ったばかり。十一年の上半期の終るまで待って、すなわち第三次芥川賞の期間内に入れてよからん。」
檀一雄	24歳	全	○	1	「面白し。推すに吝かならず。」
丸岡明	28歳	全	●	4	「今さらの感なしとせず。芥川賞はこんなに有名でない人へ。芥川賞は新鮮な空気を「垣の内」へ入れるために存在せよ。」
宮内寒彌	24歳	全	■	2	「これは力作。だがもう少し待とう。もう一二作。」
丸井栄雄	(33歳)	全	―	0
岩越昌三	26歳	全	―	0
石川淳	37歳	全	―	0
巻のぶ子	（不明）	全	―	0
川口一郎	35歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

菊池寛

47歳×各候補作　

題（話の屑籠より）　

候補			評価	行数	評言
小山祐士	29歳	全	△		「むりをすれば授賞できないことはなかったが、戯曲を選ぶことは、本意でないというのでよした。」
川崎長太郎	34歳	全	―
伊藤佐喜雄	25歳	全	―
檀一雄	24歳	全	―
丸岡明	28歳	全	―
宮内寒彌	24歳	全	―
丸井栄雄	(33歳)	全	―
岩越昌三	26歳	全	―
石川淳	37歳	全	―
巻のぶ子	（不明）	全	―
川口一郎	35歳	全	―
					「芥川賞は授賞を中止するのやむなきに至った。審査員の意見がまちまちであり、一頭地を抜いた作家が見当らないのである。せめて、過半数の賛成があればいいのであるが、各人各説で、どうにもできないのである。」「候補者たちに、百円ずつ分けようなどという説もあったが、それはかえって前途ある人々を侮辱することだというので、沙汰止みにした。」

他の選考委員

候補者・作品

小山祐士

29歳×各選考委員　

『瀬戸内海の子供ら』

中篇・戯曲 242枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	△	7	「確実に力量ある新作家たるは疑ふ余地有之まじく候。」「前年度の製作にかかる戯曲たるは、必ずしも深く拘泥せざるも一考の余地を感ぜしめ候、」「小山氏の近作を拝見致し度きものに御座候。」
久米正雄	44歳	全	■	11	「私は自分の新進作家時代を思い、前回から、新らしい劇作家にも、芥川賞を与えるべきを主張して、真船君を前回には極力推挙した。」「今度、いわゆる「新喜劇」一派の作家（引用者中略・注：川口一郎か小山祐士）にやる事は賛成ではあるが、しかし何だか第一回の芥川賞の建て前から推して、この作品が去年の上演に属するのと、又根本的に、「芥川賞は短篇小説に！」と言うような心持を感ずる。」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	○	11	「（引用者注：第一に推す丸岡明の次に、川口一郎か小山祐士を）私は推薦したい。このいずれが受賞するも、客観的に見て甚だ妥当だと信じ、私一個の作品批評の見地にても、真に快心事である。」
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	◎	3	「今度候補に登った作品の中では、何と云っても、水準を抜いていると思う。」
佐佐木茂索	41歳	全	○	3	「昨年秋の出版。その前に一度発表されたものであろうが。これを推すに吝かならず。」
菊池寛	47歳	全	△		「むりをすれば授賞できないことはなかったが、戯曲を選ぶことは、本意でないというのでよした。」

候補者・作品

川崎長太郎

34歳×各選考委員　

「余熱」他

短篇 33枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	■	8	「既に一家を成せる文壇の古狸に御座候」「年功進級には最適にして殊勲には非ざるべし、亦あまりに小味な作柄は授賞といふにふさはしからぬ特殊研究の趣有之候はずやと申されし某氏の意見の心にこびりつき居り候を拭ひ去り難くも覚え候。」
久米正雄	44歳	全	■	5	「私は川崎長太郎君を、充分認めるものではあるが、同君は私に取っては、嘉村磯多君よりも以前の、新進作家であり、再び認めるには認める方法が、あるように思う。」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	△	4	「むしろ私達の先輩といいたい程だ。幾多の立派な作を過去にも示しながら酬いられること少きゆえ、芥川賞もよいが、新進奨励という賞の意味からすれば、川崎氏など別の優遇の道を講じるという意見に賛成である。」
瀧井孝作	41歳	全	◎	3	「川崎長太郎君を推す。川崎君を推す迄には種々経緯もあるが、今は父の死に会って飛騨へ急いでいるので、何も書いていられない。」
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	●	4	「今さらの感なしとせず。芥川賞はこんなに有名でない人へ。芥川賞は新鮮な空気を「垣の内」へ入れるために存在せよ。」
菊池寛	47歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

伊藤佐喜雄

25歳×各選考委員　

「花宴」等

長篇（一部）等2篇 112枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	◎	21	「花の宴は作者が広汎なる世界を描破せんとする野心的作品としてその意図の壮を喜び候へ共作者年少の故にや、或は作品未完了の為にや少々未完成の感あるを惜しむ。」「面影は完成せる好短篇なるべく、聊少女小説めくとか繊弱にして稍浮華などの非難も聞かれ候もかの病床の主人公にはふさはしき手法と小生は弁護致し度存じ候、」「この一作者に授賞候はん事必ずしも不適当ならざるべく思ひ切つてこの作者に決定せまほしく小生は感じ申し候。」
久米正雄	44歳	全	△	9	「技倆から云って、充分信用していい新作家」「芸術的に渾然としては居るが、力弱い感じがする」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	■	6	「作品の出来上りという点では、「瀬戸内海の子供ら」に大分距離があると思う。それぞれ特色があり、才能も認められるが、いろんな意味で若い。」
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	△	8	「「面影」を第一等に推す。形式と云い、心理のニュアンスを縫って行く筆致と云い、品の佳さと云い、なかなか心にくい作品である。」「が、「花の宴」になると、同一の作者と思えないくらい見劣りがする。描写小説になるとこうも個性の美しさを醸し出すことがむずかしくなるものか。」
佐佐木茂索	41歳	全	△	4	「気配りの細かい作家。しかし「花宴」が十二月から始ったばかり。十一年の上半期の終るまで待って、すなわち第三次芥川賞の期間内に入れてよからん。」
菊池寛	47歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

檀一雄

24歳×各選考委員　

「夕張胡亭塾景観」

短篇 83枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	■	6	「年少作者の意気旺んに逞ましき個性を発散せしめ候を珍重致し候も、この作者もう一二篇の作品を見ねば安心出来ない感じを抱かせ候も事実に御座候。」
久米正雄	44歳	全	◎	8	「結局、僕にとっては、悪趣味と云われればそれ迄だが、檀一雄君の「個性」に、一番魅力を感じた。これは新らしいデカダンだ。新らしい野獣派（ルビ：フォーブ）だ、少くとも力強い。」「私としては、やはり、この人を第一候補者に推そう。」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	■	6	「作品の出来上りという点では、「瀬戸内海の子供ら」に大分距離があると思う。それぞれ特色があり、才能も認められるが、いろんな意味で若い。」
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	○	1	「面白し。推すに吝かならず。」
菊池寛	47歳	全	―

候補者・作品

丸岡明

28歳×各選考委員　

「生きものの記録」

長篇 352枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	■	5	「新鮮なる情感と対異性観とを買ひ難きには無之候へどもその必然性を即座には認容致し難き手法は我等が旧弊のためにや敬遠すべきを覚え候、」
久米正雄	44歳	全	△	7	「丸岡君などの逞ましい清新さも、授賞に価するものではある」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	◎	4	「私は終始支持し、多分この作が受賞するであろうとひそかに期待していた。ところが委員会の席上で、ややこの作に荷担されたのは、久米正雄氏ただ一人であった。」
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	●	4	「今さらの感なしとせず。芥川賞はこんなに有名でない人へ。芥川賞は新鮮な空気を「垣の内」へ入れるために存在せよ。」
菊池寛	47歳	全	―

候補者・作品

宮内寒彌

24歳×各選考委員　

「中央高地」

短篇 44枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	△	9	「確実に力量ある新作家たるは疑ふ余地有之まじく候。」「前年度の授賞に鑑み芥川賞が常に素材の興味多き殖民地文学に傾くは一考致され候。この作佳処なきにあらず、作者の才能信頼し得ざるに非ず、さりながら読者に与へ候感銘の聊実話的或は実感的興味に過ぎたるを慊焉たるものに覚え申し候。」
久米正雄	44歳	全	△	10	「技倆から云って、充分信用していい新作家」「この人の殖民地文学は決して前回の石川達三氏と比べて、遜色の無いものだが、どうもちょっと題材の殖民地性が、この際気に成る。」
室生犀星	46歳	全	◎	18	「甚だ佳い作品」「やはり処女作めいたごついところと、内容が眼に珍しかったからであった。書き出しの自然描写にも、ちょっと奥の手を見せたすっきりしたところもあったし、作品のがらが小説的でもあったからである。後端は拙く前半が良い。あとの拙いことも、甚だたどたどしくてよかった。」「「中央高地」は傑作でも何でもないが、人々はこういう作品を見過すことのできない、微妙な、小説的宿縁を感じるのである。」「芥川賞に値するせんよりもこの機縁こそ、若い作家に猛然たる蛮力を与えることと信じるからである。」
川端康成	36歳	全	■	5	「作品の出来上りという点では、「瀬戸内海の子供ら」に大分距離があると思う。それぞれ特色があり、才能も認められるが、いろんな意味で若い。」
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	■	2	「これは力作。だがもう少し待とう。もう一二作。」
菊池寛	47歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

丸井栄雄

(33歳)×各選考委員　

「踊る舞台と虫けら」

短篇 83枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	―	0
久米正雄	44歳	全	・	2
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	―	0
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	―	0
菊池寛	47歳	全	―

候補者・作品

岩越昌三

26歳×各選考委員　

「石生藻」

短篇 28枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	―	0
久米正雄	44歳	全	・	1
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	―	0
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	―	0
菊池寛	47歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

石川淳

37歳×各選考委員　

「葦手」

短篇 106枚

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	―	0
久米正雄	44歳	全	■	3	「なかなか達者で面白いが、少しく陳い都会風であり、」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	―	0
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	―	0
菊池寛	47歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

巻のぶ子

（不明）×各選考委員　

「島本貞代」

不明 ―

選考委員			評価	行数	評言
佐藤春夫	43歳	全	―	0
久米正雄	44歳	全	●	2	「未完成のような気がした。」
室生犀星	46歳	全	―	0
川端康成	36歳	全	―	0
瀧井孝作	41歳	全	―	0
小島政二郎	42歳	全	―	0
佐佐木茂索	41歳	全	―	0
菊池寛	47歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

川口一郎

35歳×各選考委員　

「二十六番館」

短篇・戯曲 149枚