第28回

第27回第29回

昭和27年/1952年下半期 昭和28年/1953年1月22日決定発表／『文藝春秋』昭和28年/1953年3月号選評掲載

選考委員　 丹羽文雄 48歳 舟橋聖一 48歳 石川達三 47歳 瀧井孝作 58歳 佐藤春夫 60歳 川端康成 53歳 宇野浩二 61歳 坂口安吾 46歳 岸田國士 62歳 選評総行数　 21 33 31 31 31 51 52 26   評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 五味康祐　「喪神」 30枚 31歳 評 △ 6 ● 2 ○ 7 △ 3 ◎ 20 ■ 10 ■ 16 ◎ 12     松本清張　「或る「小倉日記」伝」 69枚 43歳 評 ○ 9 ■ 4 ● 5 □ 7 ◎ 13 ◎ 2 △ 10 ○ 7     近藤啓太郎　「黒南風」 96枚 32歳 評 ○ 7 △ 7 ― 0 ■ 4 ― 0 ■ 2 ■ 3 △ 3     長谷川四郎　「ガラ・ブルセンツォワ」等 106枚 43歳 評 ― 0 □ 3 △ 3 ■ 4 ― 0 ■ 4 ■ 3 ― 0     澤野久雄　「夜の河」等 72枚 40歳 評 ― 0 ■ 4 ○ 3 △ 5 ― 0 △ 11 ● 3 ― 0     小島信夫　「小銃」 26枚 37歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ・ 2 ― 0     安岡章太郎　「愛玩」 25枚 32歳 評 ― 0 ■ 2 ● 2 ○ 4 ■ 5 □ 7 ● 5 △ 3     吉行淳之介　「ある脱出」 49枚 28歳 評 ― 0 ■ 4 ― 0 ― 0 ■ 5 ■ 6 ● 3 △ 4     武田繁太郎　「生野銀山」 61枚 33歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 3 ― 0     塙英夫　「背教徒」 655枚 40歳 評 ― 0 ― 0 ● 2 ― 0 ― 0 △ 17 ― 0 ― 0                     欠席 年齢/枚数の説明   見方・注意点

丹羽文雄48歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題一筆　総行数21　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 △ 6 「決して悪い作品ではない。しかし受賞作品としては難がある。時代小説の童話と思えば納得できないこともないが、そこに現れる哲学にしろ決闘の場面にしろ、童話的な興味をおぼえるだけで、私にはそんなに深いものとは思えなかった。」 松本清張 43歳 全 ○ 9 「私は最後に、（引用者中略）推した。」「文章もしっかりしていてこの人はもう出来上っている。」「ちょっと井上靖君に似た実力をたくわえている人だと思った。この小説は鴎外におんぶしていると私が評した。一方に鴎外のイメージを描いてこの小説をよむ場合と、無名の人間の過去をさがして読まれる小説の場合と、いずれがとくかという意味であった。」 近藤啓太郎 32歳 全 ○ 7 「私は最後に、（引用者中略）推した。」「「飛魚」の方がよかったという人があったが、今度も漁師の生態が出てくる。（引用者中略）作品としては「黒南風」の方がはるかに秀れている。作者も成長している。」「むろん欠点もあるが、自然主義的だというので片付けられる作品ではないのだ。」 長谷川四郎 43歳 全 ― 0   澤野久雄 40歳 全 ― 0   小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 ― 0   吉行淳之介 28歳 全 ― 0   武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 ― 0     「今度の受賞は意外な結果になったと私は驚いている。多数決という方法がそうさせた。」

他の選考委員 舟橋聖一 石川達三 瀧井孝作 佐藤春夫 川端康成 宇野浩二 坂口安吾

舟橋聖一48歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題五二年後半期　総行数33　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 ● 2 「私一個としては、何ンらの感銘もない。」 松本清張 43歳 全 ■ 4 「私一個としては、何ンらの感銘もない。ただ二作（引用者注：「喪神」と「或る『小倉日記』伝」）のうちではどっちがいいかと、司会者に訊かれたので、その中で云うなら、「或る『小倉日記』伝」のほうだと答えておいた。」 近藤啓太郎 32歳 全 △ 7 「力作であったことは、私も認める。殺すところ、殺されるところも、水際立って、よく描けている。点を入れそうな瀧井さんや宇野さんが、これに反対したので、失格したが、そうでなかったら、この作はもっとうかび上がっただろう。」 長谷川四郎 43歳 全 □ 3 「「鶴」というのに鳥渡感心した」「「鶴」はこういうものとして、印象が清冽なので、心に残った。」 澤野久雄 40歳 全 ■ 4 「上手だが、上手なら上手で、もっともっと、上手でなければならない。これでは、上手の下手である。澤野は、少しばかり、舵をまちがえているようだ。」 小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 ■ 2 「やや有力視された」「「ガラスの靴」にくらべると数等下級品である。」 吉行淳之介 28歳 全 ■ 4 「この前の「谷間」よりはいいが、「原色の街」のほうが、ずっといい。やはり、あのとき、吉行に授賞すべきだったのではないかと、このごろ、考えている。」 武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 ― 0     「審査の経過を速記して、「文學界」に発表するか否かが、最初、諮られた時は、私は、発表されることを意識することで、委員の発言が窮屈になり、又、他所行きになるのは困ると、心配したが、やって見ると、誰もがそんなことを顧慮する気などは少しも起こらず、率直に云いたいことは全部云うことが出来たらしいので、安心した。」

他の選考委員 丹羽文雄 石川達三 瀧井孝作 佐藤春夫 川端康成 宇野浩二 坂口安吾

石川達三47歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選後感　総行数31　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 ○ 7 「佐藤、坂口、石川は認めると云い、丹羽は全く問題にしない態度だった。」「「喪神」には光るものがあるのだ。ある選者はこの中の剣法などを、出鱈目だと云った。彼は光ったものを感じなかったのであろう。」 松本清張 43歳 全 ● 5 「佐藤、川端は高く評価したが、私には面白いと思えない。丹羽氏も認めない態度であった。」「これは私小説の系統に属するもので、その系列を辿って来た選者には高く認められるのであろうかとも思った。」 近藤啓太郎 32歳 全 ― 0   長谷川四郎 43歳 全 △ 3 「（引用者注：「或る『小倉日記』伝」と）同じような淡々たる文章で書かれていても、「ブルセンツオワ」という作品の方が私にはずっと面白い。」 澤野久雄 40歳 全 ○ 3 「全く認めなかったのは、佐藤、舟橋で、認めようとするのは丹羽、石川などであった。この差は選者自身の作風や好みから来るものだろうか。」 小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 ● 2 「瀧井氏は「愛玩」をしきりに推奨したが、これは殆んど瀧井氏だけであった。」 吉行淳之介 28歳 全 ― 0   武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 ● 2 「佐藤氏は、光ったものが無いと云い、私も同感だった。」   「八人の選者の意見ははじめから全くばらばらで、当選作無しとするのが順当のようであった。二つの当選作をきめたけれども、選者は必らずしも満足していない。」「芸術作品というものは美術、音楽などにしても、本質的に一定の物さしで量ることのできないものであり、各人の個性にしたがって鑑賞すべきものだ、とも言い得るであろう。」

他の選考委員 丹羽文雄 舟橋聖一 瀧井孝作 佐藤春夫 川端康成 宇野浩二 坂口安吾

瀧井孝作58歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題目をつぶって　総行数31　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 △ 3 「大衆小説風の面白味で、軽い才筆というのか、これは、「喪神」は、ショッキリ角力を見たような妙な感じのものでした。」 松本清張 43歳 全 □ 7 「青空に雪の降るけしき、と形容したいような、美しい文章に感心しました。内容は、無名の文学青年の伝記で、大したものではないのによくまとめてあるので面白い、と見ました。」「この人は、探求追求というような一つの小説の方法を身につけているようだと分りました。」 近藤啓太郎 32歳 全 ■ 4 「前作「飛魚」の方が、飛びぬけて佳作で、その後「盛粧」というのも、こんどの「黒南風」も達者すぎて、採りにくい感じでした。」 長谷川四郎 43歳 全 ■ 4 「「ガラ・ブルセンツオワ」というロシヤ婦人は、淡彩の肖像画のようで、平明な描写がよく、「鶴」の方は、平明ではなく、ヘタな平凡なものだと見ました。」 澤野久雄 40歳 全 △ 5 「大衆文学、中間小説のうまい方ではないでしょうか。私は、「夜の河」よりも、「北里夫人の椅子」の方がよいと見ましたが。この人は、芥川賞などに入らなくても、やがて、新聞小説でも書ける人だろうと思われましたが。」 小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 ○ 4 「（引用者注：当選作を）強いて出すとすれば、安岡章太郎氏の「愛玩」は、うまい短篇だし、前回の「宿題」も、佳作で、これらを見て、短篇作家として、推薦してもよいのではないか、と考えていました。」 吉行淳之介 28歳 全 ― 0   武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 ― 0     「私は、こんどは、格別よいのがないと見ていました。前回も当選なしで、こんども亦当選なしでは、面白くないから、誰か出したいが……。」

他の選考委員 丹羽文雄 舟橋聖一 石川達三 佐藤春夫 川端康成 宇野浩二 坂口安吾

佐藤春夫60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題文壇的小説への輸血　総行数31　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 ◎ 20 「授賞作は五味康祐の「喪神」か松本清張の「或る『小倉日記』伝」以外にはないと確信した。」「その練達な筆致が群を抜いて恰も幻雲斎の剣を思わせるものがある。」「これは要するに歴史小説ではなく単に史的幻想を傀儡劇のような手法で表現した特色の豊かな作品で、描写は主としてはいないが比村を斃した後の幻雲斎の風貌など甚だ鮮かに珍重である。」 松本清張 43歳 全 ◎ 13 「授賞作は五味康祐の「喪神」か松本清張の「或る『小倉日記』伝」以外にはないと確信した。」「特異な取材をあざやかな組み立て方でじっくりと処理して落ち着いたソツのない文章もよい。」「描写式でなくこの叙述の間に情景のあざやかなこの作の真価を知ることも少しは手間がとれるものがあろう母子の愛情もあまり縷説しないところがいい。こ奴なかなか心得ているわいという感じがした。」 近藤啓太郎 32歳 全 ― 0   長谷川四郎 43歳 全 ― 0   澤野久雄 40歳 全 ― 0   小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 ■ 5 「この二三回前から毎回候補に挙げられその才能は十分に認めながらも（引用者中略）今度の作品にもまだどこか未熟な今一歩というもの――それが何かは両君（引用者注：安岡章太郎と吉行淳之介）自身考えてこの境地を脱出する努力を現在のこの人たちの課題として今度も授賞は割愛」 吉行淳之介 28歳 全 ■ 5 「この二三回前から毎回候補に挙げられその才能は十分に認めながらも（引用者中略）今度の作品にもまだどこか未熟な今一歩というもの――それが何かは両君（引用者注：安岡章太郎と吉行淳之介）自身考えてこの境地を脱出する努力を現在のこの人たちの課題として今度も授賞は割愛」 武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 ― 0

他の選考委員 丹羽文雄 舟橋聖一 石川達三 瀧井孝作 川端康成 宇野浩二 坂口安吾

川端康成53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題平凡な読者として　総行数51　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 ■ 10 「選の後で読んだ。」「幻雲斎の夢想剣の精神が非常におもしろい。しかし、読後にもっと精神的な印象が残ってほしいようにも思った。行文は簡潔で鮮烈なところも見えるが、不安なところもある。」 松本清張 43歳 全 ◎ 2 「私は終始これを推した」 近藤啓太郎 32歳 全 ■ 2 「力強いが、少し古くはないか。」 長谷川四郎 43歳 全 ■ 4 「「ガラ・ブルセンツオワ」は仮りに人物を日本人として作品を考え直してみると、異色が大分薄れはしないか。」 澤野久雄 40歳 全 △ 11 「私は同感、あるいは同情を寄せた。」「「或る『小倉日記』伝」と共に、私の目あての作品であったが、佐藤春夫氏から私の作品に似ていると言われて、私は発言の不自由を感じた。似ていると私は思わなかった。」「「方舟追放」（引用者中略）の方が力作であっただろう。」 小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 □ 7 「私は同感、あるいは同情を寄せた。」「実は候補作中最も名作かもしれないと、私には思われた。なんとも憂鬱な作品である。しかし、賞の出しにくい（妙な言い方だが）作品である。またしかし、最も動かせない作品としては、私は「愛玩」を取る。凡庸を超えた作品であろう。」 吉行淳之介 28歳 全 ■ 6 「私は同感、あるいは同情を寄せた。」「「原色の街」の方が力作であっただろう。」 武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 △ 17 「選の後で読んだ。」「塙英夫氏とこの作品を固守した委員の丹羽氏とにたいしては、私の怠慢を陳謝しなければなるまい。」「非常に興味があった。健康な感動がいい。」「前に私はざっと見て、整理の足りなさ、常識的な書き方に、少し難癖をつけたが、平凡な読者としてゆっくり再読すると、記録小説としても興味があった。」「芥川賞は別としても、とにかく推薦すべき力作である。」

他の選考委員 丹羽文雄 舟橋聖一 石川達三 瀧井孝作 佐藤春夫 宇野浩二 坂口安吾

宇野浩二61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題意外の感　総行数52　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 ■ 16 「（引用者注：銓衡するうち）ふと、『喪神』（五味康祐）と『或る「小倉日記」伝』（松本清張）が、浮かび上がった。「浮かび上がる」には「運」のようなものもある。」「私は、誰かが、『喪神』の中の斬り合いがうまい、と云ったのにも、不賛成であり、山中でふいに女を出したところがスバラシイ、と云ったのにも、大反対である。所詮『喪神』は、芥川賞にも程とおく、直木賞にも程とおいものである。」 松本清張 43歳 全 △ 10 「（引用者注：銓衡するうち）ふと、『喪神』（五味康祐）と『或る「小倉日記」伝』（松本清張）が、浮かび上がった。「浮かび上がる」には「運」のようなものもある。」「どうしても選べ、となれば、力の弱い物であり、芥川賞に価する程のものでもないが、まず、『或る「小倉日記」伝』か、と、私は、思った。」 近藤啓太郎 32歳 全 ■ 3 「「近藤啓太郎の『黒南風』は、達者であるが、書き方が初期自然主義である、」と私が云うと、「これは映画にしたら面白いよ、」と佐藤春夫が云った。」 長谷川四郎 43歳 全 ■ 3 「『ガラ・ブルセンツオワ』と『鶴』も問題になったが、一と口に云うと、面白いところもあるけれど、雑駁である。」 澤野久雄 40歳 全 ● 3 「『夜の河』がちょっと問題になったが、私には、余計な事を書きすぎる弊がある、と思われた。」 小島信夫 37歳 全 ・ 2   安岡章太郎 32歳 全 ● 5 「なかなか面白いが、一ばん初めの『ガラスの靴』から見ると、ずっと落ちる、（引用者中略）というように、ようやく、銓衡が、進んできた。」 吉行淳之介 28歳 全 ● 3 「こんどはよくない、（引用者中略）というように、ようやく、銓衡が、進んできた。」 武田繁太郎 33歳 全 ● 3 「しまいには、武田繁太郎の『生野銀山』まで保留となりかかったので、私は「それはひどすぎる、」と発言した。」 塙英夫 40歳 全 ― 0     「一と通り読んでみて、今度も、（今度も、である、）該当作品ナシ、と思った、ナサケない、と思った。」

他の選考委員 丹羽文雄 舟橋聖一 石川達三 瀧井孝作 佐藤春夫 川端康成 坂口安吾

坂口安吾46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数26　（1行=26字） 候補 評価 行数 評言 五味康祐 31歳 全 ◎ 12 「剣士や豪傑については日本古来の伝承的話術があり、この作品はそれに即している如くであるが、実はそれに似ているだけで、極めて独創的な造型力によって構成された作品である。かかる発明はとうてい凡手のなしうべからざるところで、非凡の才能というべきである。」 松本清張 43歳 全 ○ 7 「文章甚だ老練、また正確で、静かでもある。」「小倉日記の追跡だからこのように静寂で感傷的だけれども、この文章は実は殺人犯人をも追跡しうる自在な力があり、その時はまたこれと趣きが変りながらも同じように達意巧者に行き届いた仕上げのできる作者であると思った。」 近藤啓太郎 32歳 全 △ 3 「構成力描写力ともに抜群の佳品、」「芥川賞をもらってよい実力をそなえた作品であると思った。」 長谷川四郎 43歳 全 ― 0   澤野久雄 40歳 全 ― 0   小島信夫 37歳 全 ― 0   安岡章太郎 32歳 全 △ 3 「独特の佳品、」「芥川賞をもらってよい実力をそなえた作品であると思った。」 吉行淳之介 28歳 全 △ 4 「大人のマネもしてみたいと思って書いてみても、それでちゃんと成功している立派な作品。」「芥川賞をもらってよい実力をそなえた作品であると思った。」 武田繁太郎 33歳 全 ― 0   塙英夫 40歳 全 ― 0     「前回と同じく多士セイセイの感であった。」

他の選考委員 丹羽文雄 舟橋聖一 石川達三 瀧井孝作 佐藤春夫 川端康成 宇野浩二

五味康祐31歳×各選考委員　 「喪神」 短篇 30枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 △ 6 「決して悪い作品ではない。しかし受賞作品としては難がある。時代小説の童話と思えば納得できないこともないが、そこに現れる哲学にしろ決闘の場面にしろ、童話的な興味をおぼえるだけで、私にはそんなに深いものとは思えなかった。」 舟橋聖一 48歳 全 ● 2 「私一個としては、何ンらの感銘もない。」 石川達三 47歳 全 ○ 7 「佐藤、坂口、石川は認めると云い、丹羽は全く問題にしない態度だった。」「「喪神」には光るものがあるのだ。ある選者はこの中の剣法などを、出鱈目だと云った。彼は光ったものを感じなかったのであろう。」 瀧井孝作 58歳 全 △ 3 「大衆小説風の面白味で、軽い才筆というのか、これは、「喪神」は、ショッキリ角力を見たような妙な感じのものでした。」 佐藤春夫 60歳 全 ◎ 20 「授賞作は五味康祐の「喪神」か松本清張の「或る『小倉日記』伝」以外にはないと確信した。」「その練達な筆致が群を抜いて恰も幻雲斎の剣を思わせるものがある。」「これは要するに歴史小説ではなく単に史的幻想を傀儡劇のような手法で表現した特色の豊かな作品で、描写は主としてはいないが比村を斃した後の幻雲斎の風貌など甚だ鮮かに珍重である。」 川端康成 53歳 全 ■ 10 「選の後で読んだ。」「幻雲斎の夢想剣の精神が非常におもしろい。しかし、読後にもっと精神的な印象が残ってほしいようにも思った。行文は簡潔で鮮烈なところも見えるが、不安なところもある。」 宇野浩二 61歳 全 ■ 16 「（引用者注：銓衡するうち）ふと、『喪神』（五味康祐）と『或る「小倉日記」伝』（松本清張）が、浮かび上がった。「浮かび上がる」には「運」のようなものもある。」「私は、誰かが、『喪神』の中の斬り合いがうまい、と云ったのにも、不賛成であり、山中でふいに女を出したところがスバラシイ、と云ったのにも、大反対である。所詮『喪神』は、芥川賞にも程とおく、直木賞にも程とおいものである。」 坂口安吾 46歳 全 ◎ 12 「剣士や豪傑については日本古来の伝承的話術があり、この作品はそれに即している如くであるが、実はそれに似ているだけで、極めて独創的な造型力によって構成された作品である。かかる発明はとうてい凡手のなしうべからざるところで、非凡の才能というべきである。」

他の候補作 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

松本清張43歳×各選考委員　 「或る「小倉日記」伝」 短篇 69枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ○ 9 「私は最後に、（引用者中略）推した。」「文章もしっかりしていてこの人はもう出来上っている。」「ちょっと井上靖君に似た実力をたくわえている人だと思った。この小説は鴎外におんぶしていると私が評した。一方に鴎外のイメージを描いてこの小説をよむ場合と、無名の人間の過去をさがして読まれる小説の場合と、いずれがとくかという意味であった。」 舟橋聖一 48歳 全 ■ 4 「私一個としては、何ンらの感銘もない。ただ二作（引用者注：「喪神」と「或る『小倉日記』伝」）のうちではどっちがいいかと、司会者に訊かれたので、その中で云うなら、「或る『小倉日記』伝」のほうだと答えておいた。」 石川達三 47歳 全 ● 5 「佐藤、川端は高く評価したが、私には面白いと思えない。丹羽氏も認めない態度であった。」「これは私小説の系統に属するもので、その系列を辿って来た選者には高く認められるのであろうかとも思った。」 瀧井孝作 58歳 全 □ 7 「青空に雪の降るけしき、と形容したいような、美しい文章に感心しました。内容は、無名の文学青年の伝記で、大したものではないのによくまとめてあるので面白い、と見ました。」「この人は、探求追求というような一つの小説の方法を身につけているようだと分りました。」 佐藤春夫 60歳 全 ◎ 13 「授賞作は五味康祐の「喪神」か松本清張の「或る『小倉日記』伝」以外にはないと確信した。」「特異な取材をあざやかな組み立て方でじっくりと処理して落ち着いたソツのない文章もよい。」「描写式でなくこの叙述の間に情景のあざやかなこの作の真価を知ることも少しは手間がとれるものがあろう母子の愛情もあまり縷説しないところがいい。こ奴なかなか心得ているわいという感じがした。」 川端康成 53歳 全 ◎ 2 「私は終始これを推した」 宇野浩二 61歳 全 △ 10 「（引用者注：銓衡するうち）ふと、『喪神』（五味康祐）と『或る「小倉日記」伝』（松本清張）が、浮かび上がった。「浮かび上がる」には「運」のようなものもある。」「どうしても選べ、となれば、力の弱い物であり、芥川賞に価する程のものでもないが、まず、『或る「小倉日記」伝』か、と、私は、思った。」 坂口安吾 46歳 全 ○ 7 「文章甚だ老練、また正確で、静かでもある。」「小倉日記の追跡だからこのように静寂で感傷的だけれども、この文章は実は殺人犯人をも追跡しうる自在な力があり、その時はまたこれと趣きが変りながらも同じように達意巧者に行き届いた仕上げのできる作者であると思った。」

他の候補作 五味康祐 「喪神」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

近藤啓太郎32歳×各選考委員　 「黒南風」 短篇 96枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ○ 7 「私は最後に、（引用者中略）推した。」「「飛魚」の方がよかったという人があったが、今度も漁師の生態が出てくる。（引用者中略）作品としては「黒南風」の方がはるかに秀れている。作者も成長している。」「むろん欠点もあるが、自然主義的だというので片付けられる作品ではないのだ。」 舟橋聖一 48歳 全 △ 7 「力作であったことは、私も認める。殺すところ、殺されるところも、水際立って、よく描けている。点を入れそうな瀧井さんや宇野さんが、これに反対したので、失格したが、そうでなかったら、この作はもっとうかび上がっただろう。」 石川達三 47歳 全 ― 0   瀧井孝作 58歳 全 ■ 4 「前作「飛魚」の方が、飛びぬけて佳作で、その後「盛粧」というのも、こんどの「黒南風」も達者すぎて、採りにくい感じでした。」 佐藤春夫 60歳 全 ― 0   川端康成 53歳 全 ■ 2 「力強いが、少し古くはないか。」 宇野浩二 61歳 全 ■ 3 「「近藤啓太郎の『黒南風』は、達者であるが、書き方が初期自然主義である、」と私が云うと、「これは映画にしたら面白いよ、」と佐藤春夫が云った。」 坂口安吾 46歳 全 △ 3 「構成力描写力ともに抜群の佳品、」「芥川賞をもらってよい実力をそなえた作品であると思った。」

他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

長谷川四郎43歳×各選考委員　 「ガラ・ブルセンツォワ」等 短篇2篇 106枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 □ 3 「「鶴」というのに鳥渡感心した」「「鶴」はこういうものとして、印象が清冽なので、心に残った。」 石川達三 47歳 全 △ 3 「（引用者注：「或る『小倉日記』伝」と）同じような淡々たる文章で書かれていても、「ブルセンツオワ」という作品の方が私にはずっと面白い。」 瀧井孝作 58歳 全 ■ 4 「「ガラ・ブルセンツオワ」というロシヤ婦人は、淡彩の肖像画のようで、平明な描写がよく、「鶴」の方は、平明ではなく、ヘタな平凡なものだと見ました。」 佐藤春夫 60歳 全 ― 0   川端康成 53歳 全 ■ 4 「「ガラ・ブルセンツオワ」は仮りに人物を日本人として作品を考え直してみると、異色が大分薄れはしないか。」 宇野浩二 61歳 全 ■ 3 「『ガラ・ブルセンツオワ』と『鶴』も問題になったが、一と口に云うと、面白いところもあるけれど、雑駁である。」 坂口安吾 46歳 全 ― 0

他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

澤野久雄40歳×各選考委員　 「夜の河」等 短篇2篇 72枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 ■ 4 「上手だが、上手なら上手で、もっともっと、上手でなければならない。これでは、上手の下手である。澤野は、少しばかり、舵をまちがえているようだ。」 石川達三 47歳 全 ○ 3 「全く認めなかったのは、佐藤、舟橋で、認めようとするのは丹羽、石川などであった。この差は選者自身の作風や好みから来るものだろうか。」 瀧井孝作 58歳 全 △ 5 「大衆文学、中間小説のうまい方ではないでしょうか。私は、「夜の河」よりも、「北里夫人の椅子」の方がよいと見ましたが。この人は、芥川賞などに入らなくても、やがて、新聞小説でも書ける人だろうと思われましたが。」 佐藤春夫 60歳 全 ― 0   川端康成 53歳 全 △ 11 「私は同感、あるいは同情を寄せた。」「「或る『小倉日記』伝」と共に、私の目あての作品であったが、佐藤春夫氏から私の作品に似ていると言われて、私は発言の不自由を感じた。似ていると私は思わなかった。」「「方舟追放」（引用者中略）の方が力作であっただろう。」 宇野浩二 61歳 全 ● 3 「『夜の河』がちょっと問題になったが、私には、余計な事を書きすぎる弊がある、と思われた。」 坂口安吾 46歳 全 ― 0

他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

小島信夫37歳×各選考委員　 「小銃」 短篇 26枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 ― 0   石川達三 47歳 全 ― 0   瀧井孝作 58歳 全 ― 0   佐藤春夫 60歳 全 ― 0   川端康成 53歳 全 ― 0   宇野浩二 61歳 全 ・ 2   坂口安吾 46歳 全 ― 0	他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

安岡章太郎32歳×各選考委員　 「愛玩」 短篇 25枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 ■ 2 「やや有力視された」「「ガラスの靴」にくらべると数等下級品である。」 石川達三 47歳 全 ● 2 「瀧井氏は「愛玩」をしきりに推奨したが、これは殆んど瀧井氏だけであった。」 瀧井孝作 58歳 全 ○ 4 「（引用者注：当選作を）強いて出すとすれば、安岡章太郎氏の「愛玩」は、うまい短篇だし、前回の「宿題」も、佳作で、これらを見て、短篇作家として、推薦してもよいのではないか、と考えていました。」 佐藤春夫 60歳 全 ■ 5 「この二三回前から毎回候補に挙げられその才能は十分に認めながらも（引用者中略）今度の作品にもまだどこか未熟な今一歩というもの――それが何かは両君（引用者注：安岡章太郎と吉行淳之介）自身考えてこの境地を脱出する努力を現在のこの人たちの課題として今度も授賞は割愛」 川端康成 53歳 全 □ 7 「私は同感、あるいは同情を寄せた。」「実は候補作中最も名作かもしれないと、私には思われた。なんとも憂鬱な作品である。しかし、賞の出しにくい（妙な言い方だが）作品である。またしかし、最も動かせない作品としては、私は「愛玩」を取る。凡庸を超えた作品であろう。」 宇野浩二 61歳 全 ● 5 「なかなか面白いが、一ばん初めの『ガラスの靴』から見ると、ずっと落ちる、（引用者中略）というように、ようやく、銓衡が、進んできた。」 坂口安吾 46歳 全 △ 3 「独特の佳品、」「芥川賞をもらってよい実力をそなえた作品であると思った。」

他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

吉行淳之介28歳×各選考委員　 「ある脱出」 短篇 49枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 ■ 4 「この前の「谷間」よりはいいが、「原色の街」のほうが、ずっといい。やはり、あのとき、吉行に授賞すべきだったのではないかと、このごろ、考えている。」 石川達三 47歳 全 ― 0   瀧井孝作 58歳 全 ― 0   佐藤春夫 60歳 全 ■ 5 「この二三回前から毎回候補に挙げられその才能は十分に認めながらも（引用者中略）今度の作品にもまだどこか未熟な今一歩というもの――それが何かは両君（引用者注：安岡章太郎と吉行淳之介）自身考えてこの境地を脱出する努力を現在のこの人たちの課題として今度も授賞は割愛」 川端康成 53歳 全 ■ 6 「私は同感、あるいは同情を寄せた。」「「原色の街」の方が力作であっただろう。」 宇野浩二 61歳 全 ● 3 「こんどはよくない、（引用者中略）というように、ようやく、銓衡が、進んできた。」 坂口安吾 46歳 全 △ 4 「大人のマネもしてみたいと思って書いてみても、それでちゃんと成功している立派な作品。」「芥川賞をもらってよい実力をそなえた作品であると思った。」

他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 武田繁太郎 「生野銀山」 塙英夫 「背教徒」

武田繁太郎33歳×各選考委員　 「生野銀山」 短篇 61枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 ― 0   石川達三 47歳 全 ― 0   瀧井孝作 58歳 全 ― 0   佐藤春夫 60歳 全 ― 0   川端康成 53歳 全 ― 0   宇野浩二 61歳 全 ● 3 「しまいには、武田繁太郎の『生野銀山』まで保留となりかかったので、私は「それはひどすぎる、」と発言した。」 坂口安吾 46歳 全 ― 0	他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 塙英夫 「背教徒」

塙英夫40歳×各選考委員　 「背教徒」 長篇 655枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 丹羽文雄 48歳 全 ― 0   舟橋聖一 48歳 全 ― 0   石川達三 47歳 全 ● 2 「佐藤氏は、光ったものが無いと云い、私も同感だった。」 瀧井孝作 58歳 全 ― 0   佐藤春夫 60歳 全 ― 0   川端康成 53歳 全 △ 17 「選の後で読んだ。」「塙英夫氏とこの作品を固守した委員の丹羽氏とにたいしては、私の怠慢を陳謝しなければなるまい。」「非常に興味があった。健康な感動がいい。」「前に私はざっと見て、整理の足りなさ、常識的な書き方に、少し難癖をつけたが、平凡な読者としてゆっくり再読すると、記録小説としても興味があった。」「芥川賞は別としても、とにかく推薦すべき力作である。」 宇野浩二 61歳 全 ― 0   坂口安吾 46歳 全 ― 0	他の候補作 五味康祐 「喪神」 松本清張 「或る「小倉日記」伝」 近藤啓太郎 「黒南風」 長谷川四郎 「ガラ・ブルセンツォワ」等 澤野久雄 「夜の河」等 小島信夫 「小銃」 安岡章太郎 「愛玩」 吉行淳之介 「ある脱出」 武田繁太郎 「生野銀山」