第33回

第32回第34回

昭和30年/1955年上半期 昭和30年/1955年7月20日決定発表／『オール讀物』昭和30年/1955年10月号選評掲載

選考委員　 川口松太郎 55歳 吉川英治 62歳 永井龍男 51歳 井伏鱒二 57歳 小島政二郎 61歳 村上元三 45歳 大佛次郎 57歳 木々高太郎 58歳 選評総行数　 18 46 13 27 17 54 27 56 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 劉寒吉　「風雪」 117枚 48歳 評 ― 0 □ 2 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ■ 8 ○ 20 谷崎照久　「箱」 91枚 38歳 評 ― 0 ・ 3 ― 0 ― 0 ― 0 ○ 4 ― 0 ― 0 鬼頭恭而　「累代」 86枚 44歳 評 □ 4 ○ 28 ― 0 ― 0 ― 0 ● 2 ― 0 ● 4 鬼生田貞雄　「衆目」 76枚 46歳 評 ― 0 ・ 3 ― 0 ― 0 ― 0 ○ 4 ― 0 ― 0 武田芳一　「鉄の肺」 69枚 44歳 評 ― 0 ・ 3 ― 0 ― 0 ― 0 ● 2 ― 0 ― 0 瓜生卓造　「北極海流」 121枚 35歳 評 ― 0 ● 2 ― 0 ― 0 ― 0 ● 3 ― 0 ○ 21 三ノ瀬溪男　「最後の戦闘機」 57枚 37歳 評 ― 0 ・ 3 ― 0 ― 0 ■ 5 ● 3 ○ 5 ― 0 欠席 書面回答 欠席 書面回答             年齢/枚数の説明   見方・注意点

川口松太郎55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題叱り置く　総行数18　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ― 0   谷崎照久 38歳 全 ― 0   鬼頭恭而 44歳 全 □ 4 「点を甘くして鬼頭君の累代を推そうかと思ったが、やっぱり反対が多かった。」 鬼生田貞雄 46歳 全 ― 0   武田芳一 44歳 全 ― 0   瓜生卓造 35歳 全 ― 0   三ノ瀬溪男 37歳 全 ― 0     「全委員が同音に推挙し得る一作品が見つからぬとは、結局後進の不勉強だろう。」	他の選考委員 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 小島政二郎 村上元三 大佛次郎 木々高太郎

吉川英治62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題寸感　総行数46　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 □ 2 「（引用者注：鬼頭恭而に感じたものと）同様な思いを劉寒吉氏の「風雪」にも寄せる。」 谷崎照久 38歳 全 ・ 3   鬼頭恭而 44歳 全 ○ 28 「全体の構造に、なかなか筆者の雄図が窺われ、その労を多としたい。けれど何分、文章も構成の運び方も晦渋であり、その特長である方言や郷土色の物が、いちいち読者に読みづらい思いをさせよう。」 鬼生田貞雄 46歳 全 ・ 3   武田芳一 44歳 全 ・ 3   瓜生卓造 35歳 全 ● 2 「直木賞にはむりであろう。」 三ノ瀬溪男 37歳 全 ・ 3     「こんどは受賞なしに終るのではないかと予想されていた。」	他の選考委員 川口松太郎 永井龍男 井伏鱒二 小島政二郎 村上元三 大佛次郎 木々高太郎

永井龍男51歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数13　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ― 0   谷崎照久 38歳 全 ― 0   鬼頭恭而 44歳 全 ― 0   鬼生田貞雄 46歳 全 ― 0   武田芳一 44歳 全 ― 0   瓜生卓造 35歳 全 ― 0   三ノ瀬溪男 37歳 全 ― 0     「どの作品も相当な枚数で、読むのに疲れたが、その疲れのはけ場のないような気持で銓衡を終始した。」	他の選考委員 川口松太郎 吉川英治 井伏鱒二 小島政二郎 村上元三 大佛次郎 木々高太郎

井伏鱒二57歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数27　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ― 0   谷崎照久 38歳 全 ― 0   鬼頭恭而 44歳 全 ― 0   鬼生田貞雄 46歳 全 ― 0   武田芳一 44歳 全 ― 0   瓜生卓造 35歳 全 ― 0   三ノ瀬溪男 37歳 全 ― 0     「特にどの作品を推したいという気は起らなかった。」「大衆小説として選ぶ上は、鑑賞眼に信の置ける文筆家以外の人たちの回答も参考にしたらどうか。」	他の選考委員 川口松太郎 吉川英治 永井龍男 小島政二郎 村上元三 大佛次郎 木々高太郎

小島政二郎61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題張り合いのない回　総行数17　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ― 0   谷崎照久 38歳 全 ― 0   鬼頭恭而 44歳 全 ― 0   鬼生田貞雄 46歳 全 ― 0   武田芳一 44歳 全 ― 0   瓜生卓造 35歳 全 ― 0   三ノ瀬溪男 37歳 全 ■ 5 「これは話が型にはまっていて、その点でつまらなかった。面白かったのは、最後の一場面だけだった。」   「みんな文章のまずいのに驚いた。自分のリズムの打っている文章なんか一つもない。」	他の選考委員 川口松太郎 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 村上元三 大佛次郎 木々高太郎

村上元三45歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数54　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ● 5 「誰が書いても同じところへ入るキリシタン物の、底無し沼のようなものへ落ち込んでしまっている。」 谷崎照久 38歳 全 ○ 4 「わたしが点を入れたのは、谷崎照久氏の「箱」と鬼生田貞雄氏の「衆目」の二作であった。」 鬼頭恭而 44歳 全 ● 2 「文章の遊びが気になった。」 鬼生田貞雄 46歳 全 ○ 4 「わたしが点を入れたのは、谷崎照久氏の「箱」と鬼生田貞雄氏の「衆目」の二作であった。」 武田芳一 44歳 全 ● 2 「調べ足りない」 瓜生卓造 35歳 全 ● 3 「調べすぎて書く焦点がぼやけている。」 三ノ瀬溪男 37歳 全 ● 3 「映画のストーリーのような気がした。」   「文学をやろうとして書いた作品なのか、読者を対象において書いたのか、又は自分のために書いたのか、はっきりしない作品が多かった。」

他の選考委員 川口松太郎 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 小島政二郎 大佛次郎 木々高太郎

大佛次郎57歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題型破りを　総行数27　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ■ 8 「切支丹小説として、あまり常道だった。才能もあり技法も身につけた人だけに、もっと思い切って型を破ってこの材料を振廻してくれたら、と感じた。」 谷崎照久 38歳 全 ― 0   鬼頭恭而 44歳 全 ― 0   鬼生田貞雄 46歳 全 ― 0   武田芳一 44歳 全 ― 0   瓜生卓造 35歳 全 ― 0   三ノ瀬溪男 37歳 全 ○ 5 「僕には面白かった。近頃あまり他に見ない熱情が感じられたからである。しかし、平凡な取扱い方とも言えるだろう。」   「直木賞に当る作品は、読者を考えるべきものと思う。演劇学で言うエコノミイ・オブ・アテンションがどうしても必要である。」	他の選考委員 川口松太郎 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 小島政二郎 村上元三 木々高太郎

木々高太郎58歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題新しい感激を欲しい　総行数56　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 劉寒吉 48歳 全 ○ 20 「とも角もよく調べてかいたもの」「どうして信仰に対する疑問、信仰と政治、信仰と欲望というような大問題を捉えて近代的に小説にすることが出来ないのだろう。」 谷崎照久 38歳 全 ― 0   鬼頭恭而 44歳 全 ● 4 「私小説の昔話で、決して大衆文学であると私は思わぬ」 鬼生田貞雄 46歳 全 ― 0   武田芳一 44歳 全 ― 0   瓜生卓造 35歳 全 ○ 21 「とも角もよく調べてかいたもの」「ナンセンの苦労はよく書けているが、ナンセンの魂の苦悩は一つもかけていない。」 三ノ瀬溪男 37歳 全 ― 0     「雑誌も文学雑誌や同人雑誌で一つも大衆雑誌に堂々と書かれたものがなかった。」	他の選考委員 川口松太郎 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 小島政二郎 村上元三 大佛次郎

劉寒吉48歳×各選考委員　 「風雪」 短篇 117枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 ― 0   吉川英治 62歳 全 □ 2 「（引用者注：鬼頭恭而に感じたものと）同様な思いを劉寒吉氏の「風雪」にも寄せる。」 永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ― 0   村上元三 45歳 全 ● 5 「誰が書いても同じところへ入るキリシタン物の、底無し沼のようなものへ落ち込んでしまっている。」 大佛次郎 57歳 全 ■ 8 「切支丹小説として、あまり常道だった。才能もあり技法も身につけた人だけに、もっと思い切って型を破ってこの材料を振廻してくれたら、と感じた。」 木々高太郎 58歳 全 ○ 20 「とも角もよく調べてかいたもの」「どうして信仰に対する疑問、信仰と政治、信仰と欲望というような大問題を捉えて近代的に小説にすることが出来ないのだろう。」	他の候補作 谷崎照久 「箱」 鬼頭恭而 「累代」 鬼生田貞雄 「衆目」 武田芳一 「鉄の肺」 瓜生卓造 「北極海流」 三ノ瀬溪男 「最後の戦闘機」

谷崎照久38歳×各選考委員　 「箱」 短篇 91枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 ― 0   吉川英治 62歳 全 ・ 3   永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ― 0   村上元三 45歳 全 ○ 4 「わたしが点を入れたのは、谷崎照久氏の「箱」と鬼生田貞雄氏の「衆目」の二作であった。」 大佛次郎 57歳 全 ― 0   木々高太郎 58歳 全 ― 0	他の候補作 劉寒吉 「風雪」 鬼頭恭而 「累代」 鬼生田貞雄 「衆目」 武田芳一 「鉄の肺」 瓜生卓造 「北極海流」 三ノ瀬溪男 「最後の戦闘機」

鬼頭恭而44歳×各選考委員　 「累代」 短篇 86枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 □ 4 「点を甘くして鬼頭君の累代を推そうかと思ったが、やっぱり反対が多かった。」 吉川英治 62歳 全 ○ 28 「全体の構造に、なかなか筆者の雄図が窺われ、その労を多としたい。けれど何分、文章も構成の運び方も晦渋であり、その特長である方言や郷土色の物が、いちいち読者に読みづらい思いをさせよう。」 永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ― 0   村上元三 45歳 全 ● 2 「文章の遊びが気になった。」 大佛次郎 57歳 全 ― 0   木々高太郎 58歳 全 ● 4 「私小説の昔話で、決して大衆文学であると私は思わぬ」	他の候補作 劉寒吉 「風雪」 谷崎照久 「箱」 鬼生田貞雄 「衆目」 武田芳一 「鉄の肺」 瓜生卓造 「北極海流」 三ノ瀬溪男 「最後の戦闘機」

鬼生田貞雄46歳×各選考委員　 「衆目」 短篇 76枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 ― 0   吉川英治 62歳 全 ・ 3   永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ― 0   村上元三 45歳 全 ○ 4 「わたしが点を入れたのは、谷崎照久氏の「箱」と鬼生田貞雄氏の「衆目」の二作であった。」 大佛次郎 57歳 全 ― 0   木々高太郎 58歳 全 ― 0	他の候補作 劉寒吉 「風雪」 谷崎照久 「箱」 鬼頭恭而 「累代」 武田芳一 「鉄の肺」 瓜生卓造 「北極海流」 三ノ瀬溪男 「最後の戦闘機」

武田芳一44歳×各選考委員　 「鉄の肺」 短篇 69枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 ― 0   吉川英治 62歳 全 ・ 3   永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ― 0   村上元三 45歳 全 ● 2 「調べ足りない」 大佛次郎 57歳 全 ― 0   木々高太郎 58歳 全 ― 0	他の候補作 劉寒吉 「風雪」 谷崎照久 「箱」 鬼頭恭而 「累代」 鬼生田貞雄 「衆目」 瓜生卓造 「北極海流」 三ノ瀬溪男 「最後の戦闘機」

瓜生卓造35歳×各選考委員　 「北極海流」 短篇 121枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 ― 0   吉川英治 62歳 全 ● 2 「直木賞にはむりであろう。」 永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ― 0   村上元三 45歳 全 ● 3 「調べすぎて書く焦点がぼやけている。」 大佛次郎 57歳 全 ― 0   木々高太郎 58歳 全 ○ 21 「とも角もよく調べてかいたもの」「ナンセンの苦労はよく書けているが、ナンセンの魂の苦悩は一つもかけていない。」	他の候補作 劉寒吉 「風雪」 谷崎照久 「箱」 鬼頭恭而 「累代」 鬼生田貞雄 「衆目」 武田芳一 「鉄の肺」 三ノ瀬溪男 「最後の戦闘機」

三ノ瀬溪男37歳×各選考委員　 「最後の戦闘機」 短篇 57枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 55歳 全 ― 0   吉川英治 62歳 全 ・ 3   永井龍男 51歳 全 ― 0   井伏鱒二 57歳 全 ― 0   小島政二郎 61歳 全 ■ 5 「これは話が型にはまっていて、その点でつまらなかった。面白かったのは、最後の一場面だけだった。」 村上元三 45歳 全 ● 3 「映画のストーリーのような気がした。」 大佛次郎 57歳 全 ○ 5 「僕には面白かった。近頃あまり他に見ない熱情が感じられたからである。しかし、平凡な取扱い方とも言えるだろう。」 木々高太郎 58歳 全 ― 0	他の候補作 劉寒吉 「風雪」 谷崎照久 「箱」 鬼頭恭而 「累代」 鬼生田貞雄 「衆目」 武田芳一 「鉄の肺」 瓜生卓造 「北極海流」