選評の概要
21. 22. 23. 24. 25.26. 27. 28. 29. 30.
31. 32. 33. 34. 35.
36. 37. 38. 39. 40.
41. 42. 43. 44. 45.
46. 47. 48. 49. 50.
51. 52. 53. 54. 55.
56. 57. 58. 59. 60.
61. 62. 63. 64. 65.
66. 67. 68. 69. 70.
71. 72. 73. 74. 75.
76. 77. 78. 79. 80.
生没年月日【注】 | 明治32年/1899年10月1日~昭和60年/1985年6月9日 | |
在任期間 | 第21回~第80回(通算30年・60回) | |
在任年齢 | 49歳9ヶ月~79歳3ヶ月 | |
経歴 | 東京府東京市浅草区(現・東京都台東区)生まれ。今戸小学校卒。 | |
受賞歴・候補歴 | ||
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処女作 | 「流罪人藤助」(『講談雑誌』大正5年/1916年) 「大安寺大饗応」(『週刊朝日』大正15年/1926年10月号) |
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個人全集 | 『川口松太郎全集』全16巻(昭和42年/1967年11月~昭和44年/1969年3月・講談社刊) | |
直木賞候補歴 | 第1回受賞 「鶴八鶴次郎」(『オール讀物』昭和9年/1934年10月号)その他 第1回受賞 「風流深川唄」(『オール讀物』昭和10年/1935年1月号~4月号)その他 |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 川口松太郎 50歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
今日出海 | 46歳 |
◎ | 5 | 「今日出海君の「山中放浪」を推薦した。つまり今君の場合は、直木賞を重からしめるという趣旨には適当だと考えたからである。」 |
39歳 |
□ | 10 | 「直木賞の趣旨が、どこまでも新人発見というところに重点をおくとすれば、(引用者中略)山田克郎君が最も有力者であり、」「前期で候補として挙げられた「海は紅」と思い合わせて先ず妥当な受賞だと思った。」 | |
「今後の直木賞の在り方として僕の希望を述べれば、既成作家でも新鮮で、この賞に値する人があれば直木賞をやりたいと考える。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年1月号再録(初出:『文藝讀物』昭和25年/1950年6月号) |
選考委員 川口松太郎 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
夏目千代 | (46歳) |
◎ | 12 | 「候補作に推薦したのだが、これは過去の作家のエピゴオネンだと簡単に片づけられてしまった。一言もない。」 |
39歳 |
□ | 14 | 「此の作者は真剣に小説と取り組む態度に欠けているという意見が多く、」「私自身は(引用者中略)不満なのだが、(引用者中略)大成する素質を持っていると信じて一票ずつを投じた。」 | |
36歳 |
□ | 12 | 「なまじ推理小説にしようとしたところに底の浅さがあるという非難があった。」「私自身は(引用者中略)不満なのだが、(引用者中略)大成する素質を持っていると信じて一票ずつを投じた。」 | |
「二人の受賞者を出す場合の委員会は好ましからぬ空気に支配される前例を再三見ているのだが、今回も例外ではなかった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和36年/1961年4月号 |
選考委員 川口松太郎 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
大屋典一 | 45歳 |
◎ | 5 | 「私は(引用者中略)推せんしたのだが、(引用者中略)長編なるがゆえのハンディキャップを免かれ得ぬ典型的作品であろう。」 |
42歳 |
○ | 29 | 「これに出られては、他の作品がさぞ見劣りするだろうと思った予想は案に違わず、「雁の寺」と太刀打ち出来る作品はなかった。」「小島政二郎氏一人を除いては誰にも異存がなかった。」「既に人気作家であり、彼の受賞にはジャーナリスティックな興味も薄れ、「やっぱりそうか」というような落胆感もあったようだが、水上君自身にしてもこれだけの作品はそうザラに書けるものではない。」 | |
「今日出海氏が興味ある発言をした。「百枚未満の中編短編と数百枚にわたる長編の力量感は比較にならない。同一標準で論ずるのは無理だ」という意味であったが全く同感だった。」「今後の問題として文学振興会の一考を待ちたい。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和36年/1961年10月号 |
選考委員 川口松太郎 64歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
江夏美子 | 41歳 |
◎ | 12 | 「東海文学(同人雑誌)で、偶然に読んだ作品に、新人らしからぬ技倆を感じたのだが、まだまだアマチュアの域を脱しきれていない。」「自分ひとり楽しんで書いている。」 |
55歳 |
△ | 21 | 「安藤君の諸作は読者を楽しませすぎ、勤め気やサービス精神がありすぎて(私もそのひとりだが)薄手になりやすい欠点を持つ。」 | |
57歳 |
△ | 20 | 「自分では勤めたつもりでいて、その実はちっとも勤めていない生硬さを持つ。」 | |
「安藤君も和田君も新人ではないから議論が沸騰した、」「新味のうすい恨みがあって、新人をもう一人出したいと源氏鶏太はいった。が、三人受賞の前例がなく、作品的にも異議が多く、結局は二人におさまった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和39年/1964年4月号 |
選考委員 川口松太郎 72歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
47歳 |
◎ | 13 | 「いい作品だと思った。」「今まで誰も扱った事のない罪人の首を斬る瞬間のなまなましさがよく描けている。(引用者中略)その意味でもエポックな作品であった。」 | |
桂英澄 | 54歳 |
○ | 10 | 「無駄は多いが維新史の陰に生きた一老人の生涯を誇張なくほどよい感傷的筆法で主人公への愛情がよく出ていた。」「無駄が傷になって推薦作に至らなかったのは残念だ。」 |
37歳 |
● | 12 | 「同君の作品の一つの頂点ではあるが、肝心なものが足らなかった。」「江戸時代の滑稽本なら大傑作だろうが現代の諷刺小説としては物足らなさを感じる。然し井上君の才能は認める。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和47年/1972年10月号 |
選考委員 川口松太郎 73歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
滝口康彦 | 48歳 |
○ | 23 | 「これだけがやや纏った短篇で、武士の生活をよく描いている。」「ただ残念な事にこの短篇集に納めた他の作品が悉くつまらない。」「この人は今後よい作品を書く下地だけ持っているが、まだ小説を組み立てる構成を知らず、良い材料を掴みながら材料流れに終っている。」 |
「今回にしても目ぼしい作品はついになく」「大部分がもう中年の人ばかりだけに、この年でいてこの程度のものより書けぬとすると心細い。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和48年/1973年4月号 |
選考委員 川口松太郎 74歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
阿部牧郎 | 40歳 |
◎ | 14 | 「(引用者注:「失われた球譜」「鬼の詩」「不可触領域」は)どれも一流作品と称してさしつかえないほどの筆力を持ち、どれも面白く読める。」「十分筆力を持っているのだから力を落す事なく、次回の作品に努力して欲しい。」 |
半村良 | 40歳 |
◎ | 13 | 「(引用者注:「失われた球譜」「鬼の詩」「不可触領域」は)どれも一流作品と称してさしつかえないほどの筆力を持ち、どれも面白く読める。」「十分筆力を持っているのだから力を落す事なく、次回の作品に努力して欲しい。」 |
41歳 |
○ | 39 | 「藤本義一君は既に作家として名を成していて直木賞に入らなくともさほどの失望はあるまいと思い、阿部、半村の二作を推薦して決定は委員諸氏の判断に任せた。」「人気作家になってからも生活を変えず、社会との接触面を大事にして頂きたいと思う。」 | |
「私は入院加療中で委員会へ出席出来なかった」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和49年/1974年10月号 |
選考委員 川口松太郎 75歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
素九鬼子 | (38歳) |
◎ | 9 | 「終りがやや弱くなったが然しいい作品であった。」「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)純粋で重厚でもあり、主題がはっきりしていて読後の感銘も深い。」 |
栗山良八郎 | (46歳) |
◎ | 9 | 「終りがやや弱くなったが然しいい作品であった。」「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)純粋で重厚でもあり、主題がはっきりしていて読後の感銘も深い。」 |
古川薫 | 49歳 |
○ | 3 | 「短篇では古川薫の「塞翁の虹」を推薦した」 |
41歳 |
■ | 10 | 「前回にも候補作品になっていて筆力は相当なものだが作品的には弱く、次作を期待するという選評を書いておいた。」「あまりにも小品すぎて、腕は判っても推薦する気にならなかった。」 | |
43歳 |
■ | 10 | 「小説というよりも記録的な要素が多分で推薦には不満であったが、文章にいや味なところがなく川上冬崖の死を小説的に見ているという以外には感銘が薄い作品だ。」 | |
「私は病中で委員会に出席出来ず書面回答したにすぎず、書面で意見を述べただけで結果は委員諸氏の決定に従うといった。然しかほどまで喰い違うとは予想もしなかった」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和50年/1975年4月号 |
選考委員 川口松太郎 76歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
38歳 |
◎ | 11 | 「一ばん読みごたえがあった。内容も充実して筆力も確かだし信頼出来た。心せねばならぬ事はこの種のドキュメント作品は報道的記述の多くなる危険だ。」「今後の佐木君がどんな傾向の作品を書くか注目したいところだ。」 | |
田中光二 | 34歳 |
○ | 15 | 「面白かった。読み終ってやや莫迦莫迦しくもあったが、然し笑ってすごせない感情もあった。」「「大いなる逃亡」の科学兵器は現実化する可能性を持っているのか、単なる空想にすぎないのか。作品の外の興味もある。」 |
「直木賞候補作の水準が目に見えて上って来ている。これは文学のためにも慶賀すべき事で大いにたのもしい。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和51年/1976年4月号 |
選考委員 川口松太郎 79歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
古川薫 | 53歳 |
◎ | 17 | 「推したが賛成者少数なのは残念だった。哀愁の深いラストもしみじみとして隙がなく私は大変に惚れたのだが、作品の評価というものは飽くまでも主観的で、同感者が少なくとも、自説を撤回する気にはなれない。」 |
52歳 |
△ | 15 | 「初めから当選の判っているような作品だった。」「直木賞優等生の感がある。然し、第一部がずばぬけて面白く、二部三部となるとだんだん鈍くなり、類型的になり、つまらなくなる。(引用者中略)第一部だけ切りはなして独立させたいと今でも思う。」 | |
42歳 |
■ | 8 | 「手頃な読物という気がする。」「器用な人ではあるし実力も十分だし、入賞に文句はないが、文学であるためにはやや不満である。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和54年/1979年4月号 |