第37回

第36回第38回

昭和32年/1957年上半期 昭和32年/1957年7月22日決定発表／『オール讀物』昭和32年/1957年10月号選評掲載

選考委員　 吉川英治 64歳 永井龍男 53歳 井伏鱒二 59歳 木々高太郎 60歳 村上元三 47歳 川口松太郎 57歳 大佛次郎 59歳 小島政二郎 63歳 選評総行数　 54 39 24 76 81 11 46 37 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 江崎誠致　『ルソンの谷間』 337枚 35歳 評 ○ 25 ◎ 14 ○ 7 □ 29 △ 23 △ 8 ◎ 38 □ 23 藤井千鶴子　「義歯」 93枚 47歳 評 △ 5 ● 4 ― 0 ◎ 13 ● 2 ― 0 ― 0 ― 0 池波正太郎　「眼（め）」 130枚 34歳 評 ○ 10 ― 0 ― 0 ■ 7 ○ 7 ― 0 ― 0 ― 0 相見とし子　「魔法瓶」 102枚 (32歳) 評 △ 5 △ 2 ― 0 ● 7 ● 2 ― 0 ― 0 ― 0 佐藤明子　「寵臣」 81枚 25歳 評 △ 5 ― 0 ◎ 11 ● 7 □ 6 ― 0 ○ 10 ― 0 有吉佐和子　「白い扇」 101枚 26歳 評 ○ 8 □ 10 ― 0 ◎ 13 □ 17 ― 0 ― 0 ― 0 村松喬　『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』 412枚 40歳 評 ○ 7 ■ 9 ― 0 ● 12 ○ 9 ― 0 ― 0 △ 8                 年齢/枚数の説明   見方・注意点

吉川英治64歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題寸感　総行数54　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 ○ 25 「敗戦行という人間を失った人間群を描きながら、どの人間にも、あいまいさがない。」「何しろ、筆者は非凡である。作中随所の、ほんとなら、かすんでしまっている箇所なども、あざやかな描破を逸していない。」 藤井千鶴子 47歳 全 △ 5 「ものたらなさはあるが、それにしても、いつもの候補作品よりは、たちまさっていると私は思った。」 池波正太郎 34歳 全 ○ 10 「こんどの「眼」なども私は大いにその苦心のあとをかったが、しかし前の恩田木工の方がよいとする委員の方が多かった。私とは逆なのである。」 相見とし子 (32歳) 全 △ 5 「ものたらなさはあるが、それにしても、いつもの候補作品よりは、たちまさっていると私は思った。」 佐藤明子 25歳 全 △ 5 「ものたらなさはあるが、それにしても、いつもの候補作品よりは、たちまさっていると私は思った。」 有吉佐和子 26歳 全 ○ 8 「その小説的巧者なのにおどろいた。直木賞の委員なら、反対する理由が何もないほどである。」 村松喬 40歳 全 ○ 7 「以上三篇（引用者注：「白い扇」「眼」「ＯＮＬＹ・ＹＯＵ」）は、こんどの候補中ですぐれた作品だったことを今も思っている。」

他の選考委員 永井龍男 井伏鱒二 木々高太郎 村上元三 川口松太郎 大佛次郎 小島政二郎

永井龍男53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数39　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 ◎ 14 「結末に厚みの足りないのが難だと思ったが、一章一章に光りがあった。」「戦争という異常な題材とか経験よりも、その表現力の方に感心した。」「他の世界も必ず書ける人だと私は確信した。」 藤井千鶴子 47歳 全 ● 4 「前半と後半が分裂している。」 池波正太郎 34歳 全 ― 0   相見とし子 (32歳) 全 △ 2 「習作として好感を持った。」 佐藤明子 25歳 全 ― 0   有吉佐和子 26歳 全 □ 10 「実に巧い。」「ただ、既成の小説に血脈を通じてはいまいかと云う危惧が、私を僅かにちゅうちょさせた。」 村松喬 40歳 全 ■ 9 「異人種の皮膚なり体臭が感じられず、すべて日本的な音色で終っているのが、私には一番物足りない点だった。」	他の選考委員 吉川英治 井伏鱒二 木々高太郎 村上元三 川口松太郎 大佛次郎 小島政二郎

井伏鱒二59歳×各候補作

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題感想　総行数24　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 ○ 7 「才人の才筆だが、自己批判が、（敗残兵として戦争それ自体に対する疑いもこめて）強くにじみ出ていないと思ったので半票を入れた。」 藤井千鶴子 47歳 全 ― 0   池波正太郎 34歳 全 ― 0   相見とし子 (32歳) 全 ― 0   佐藤明子 25歳 全 ◎ 11 「キリシタン会士の報告書のスタイルを取入れた武将伝だが、大がかりな抑揚が少くて適宜な節度も情緒も感じられ好感が持てた。」 有吉佐和子 26歳 全 ― 0   村松喬 40歳 全 ― 0	他の選考委員 吉川英治 永井龍男 木々高太郎 村上元三 川口松太郎 大佛次郎 小島政二郎

木々高太郎60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題戦記もののむずかしさ　総行数76　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 □ 29 「戦争もので、その意味では僕は賛成ではなかったが、よく書けているし、この人はフィクションをつくる力も十分にある、」 藤井千鶴子 47歳 全 ◎ 13 「異常さ、それにもかゝわらず詩にあふれているのは、新らしい外の作家にないと思ったが、委員会ではそれが却ってとりあげられないもとになったのではないかと思われる。」 池波正太郎 34歳 全 ■ 7 「何としても正面すぎる感じで僕はとらなかった。然し僕はこの作家に注目している。」 相見とし子 (32歳) 全 ● 7 「読者のことは考えず、或いは考えられず一心になってかいたという感じが、僕にはゆとりをもって読めなかった。」 佐藤明子 25歳 全 ● 7 「読者のことは考えず、或いは考えられず一心になってかいたという感じが、僕にはゆとりをもって読めなかった。」 有吉佐和子 26歳 全 ◎ 13 「思うつぼに書けすぎていて、興味をそいだという批評には賛成だが、結局もう力倆も十分認められているから受賞の対象とはならぬという意見には、私は個人としては異議があった。」 村松喬 40歳 全 ● 12 「白けたような、現実性のないものとなったのは、自分をも女をも抽象的にしかつかめなかったからであろう。」

他の選考委員 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 村上元三 川口松太郎 大佛次郎 小島政二郎

村上元三47歳×各候補作

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題将来という点で　総行数81　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 △ 23 「職業作家になり得る新人を世の中へ送り出す、というのが直木賞の目的とすると、さて、という気持にわたしはなった。」 藤井千鶴子 47歳 全 ● 2 「はじめから落した。」 池波正太郎 34歳 全 ○ 7 「面白い題材を丹念に調べて書いているが、その題材がまだ作者の中で燃焼していないうらみがある。」 相見とし子 (32歳) 全 ● 2 「はじめから落した。」 佐藤明子 25歳 全 □ 6 「女流とは思えないようながっしりした構成で歴史小説を書いている態度に感心はしたが、第二作を読ませてもらってからでもいい、と思う。」 有吉佐和子 26歳 全 □ 17 「うまいという点では今回の候補作の中での随一であろう。だが、年齢は若いのに、こう達者では、と危険な気がしないでもない。」 村松喬 40歳 全 ○ 9 「前回の「異境の女」よりも劣るという説があったが、わたしはそうは思わない。しかし、こんどは日本の女を書いてほしかった。」   「これこそ直木賞に推せる、と満々たる自信を持って委員会へ出かけられるだけの作品が、わたしには見つからなかった。」

他の選考委員 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 木々高太郎 川口松太郎 大佛次郎 小島政二郎

川口松太郎57歳×各候補作

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題好かったと思う　総行数11　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 △ 8 「委員諸氏の多数決に従うつもりであった。そして従った。決定してから「ルソンの谷間」をよみ返して見て、やっぱり好かったと思った。」 藤井千鶴子 47歳 全 ― 0   池波正太郎 34歳 全 ― 0   相見とし子 (32歳) 全 ― 0   佐藤明子 25歳 全 ― 0   有吉佐和子 26歳 全 ― 0   村松喬 40歳 全 ― 0	他の選考委員 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 木々高太郎 村上元三 大佛次郎 小島政二郎

大佛次郎59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題「ルソンの谷間」　総行数46　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 ◎ 38 「せいさんなことを扱っていて素直で平静である。ごまかしや、弁解がない。」「センチメントなんて失われてしまったところに、非情の心理が生れ出て、そのまゝ読者を感動させる。」 藤井千鶴子 47歳 全 ― 0   池波正太郎 34歳 全 ― 0   相見とし子 (32歳) 全 ― 0   佐藤明子 25歳 全 ○ 10 「骨格もしっかりしているし石田三成をこれまでになかった新らしい見方をしていて面白かった。」「しかし、まことに直木賞的に過ぎるのである。」 有吉佐和子 26歳 全 ― 0   村松喬 40歳 全 ― 0	他の選考委員 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 木々高太郎 村上元三 川口松太郎 小島政二郎

小島政二郎63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題寸感　総行数37　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 江崎誠致 35歳 全 □ 23 「一番芸術的にすぐれていると思ったのは「ルソン」の谷間だった。」「しかし、これは大衆小説ではない。」「外の作品を引き放してこの作品は芸術的に立ちまさっていた。」 藤井千鶴子 47歳 全 ― 0   池波正太郎 34歳 全 ― 0   相見とし子 (32歳) 全 ― 0   佐藤明子 25歳 全 ― 0   有吉佐和子 26歳 全 ― 0   村松喬 40歳 全 △ 8 「一番すぐれているところは、ガラス越しに女の部屋に四本の足を発見するところだろう。」   「今度は直木賞的に感動するような小説は一つもなかった。」	他の選考委員 吉川英治 永井龍男 井伏鱒二 木々高太郎 村上元三 川口松太郎 大佛次郎

江崎誠致35歳×各選考委員　 『ルソンの谷間』 長篇 337枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 ○ 25 「敗戦行という人間を失った人間群を描きながら、どの人間にも、あいまいさがない。」「何しろ、筆者は非凡である。作中随所の、ほんとなら、かすんでしまっている箇所なども、あざやかな描破を逸していない。」 永井龍男 53歳 全 ◎ 14 「結末に厚みの足りないのが難だと思ったが、一章一章に光りがあった。」「戦争という異常な題材とか経験よりも、その表現力の方に感心した。」「他の世界も必ず書ける人だと私は確信した。」 井伏鱒二 59歳 全 ○ 7 「才人の才筆だが、自己批判が、（敗残兵として戦争それ自体に対する疑いもこめて）強くにじみ出ていないと思ったので半票を入れた。」 木々高太郎 60歳 全 □ 29 「戦争もので、その意味では僕は賛成ではなかったが、よく書けているし、この人はフィクションをつくる力も十分にある、」 村上元三 47歳 全 △ 23 「職業作家になり得る新人を世の中へ送り出す、というのが直木賞の目的とすると、さて、という気持にわたしはなった。」 川口松太郎 57歳 全 △ 8 「委員諸氏の多数決に従うつもりであった。そして従った。決定してから「ルソンの谷間」をよみ返して見て、やっぱり好かったと思った。」 大佛次郎 59歳 全 ◎ 38 「せいさんなことを扱っていて素直で平静である。ごまかしや、弁解がない。」「センチメントなんて失われてしまったところに、非情の心理が生れ出て、そのまゝ読者を感動させる。」 小島政二郎 63歳 全 □ 23 「一番芸術的にすぐれていると思ったのは「ルソン」の谷間だった。」「しかし、これは大衆小説ではない。」「外の作品を引き放してこの作品は芸術的に立ちまさっていた。」

他の候補作 藤井千鶴子 「義歯」 池波正太郎 「眼（め）」 相見とし子 「魔法瓶」 佐藤明子 「寵臣」 有吉佐和子 「白い扇」 村松喬 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』

藤井千鶴子47歳×各選考委員　 「義歯」 短篇 93枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 △ 5 「ものたらなさはあるが、それにしても、いつもの候補作品よりは、たちまさっていると私は思った。」 永井龍男 53歳 全 ● 4 「前半と後半が分裂している。」 井伏鱒二 59歳 全 ― 0   木々高太郎 60歳 全 ◎ 13 「異常さ、それにもかゝわらず詩にあふれているのは、新らしい外の作家にないと思ったが、委員会ではそれが却ってとりあげられないもとになったのではないかと思われる。」 村上元三 47歳 全 ● 2 「はじめから落した。」 川口松太郎 57歳 全 ― 0   大佛次郎 59歳 全 ― 0   小島政二郎 63歳 全 ― 0	他の候補作 江崎誠致 『ルソンの谷間』 池波正太郎 「眼（め）」 相見とし子 「魔法瓶」 佐藤明子 「寵臣」 有吉佐和子 「白い扇」 村松喬 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』

池波正太郎34歳×各選考委員　 「眼（め）」 短篇 130枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 ○ 10 「こんどの「眼」なども私は大いにその苦心のあとをかったが、しかし前の恩田木工の方がよいとする委員の方が多かった。私とは逆なのである。」 永井龍男 53歳 全 ― 0   井伏鱒二 59歳 全 ― 0   木々高太郎 60歳 全 ■ 7 「何としても正面すぎる感じで僕はとらなかった。然し僕はこの作家に注目している。」 村上元三 47歳 全 ○ 7 「面白い題材を丹念に調べて書いているが、その題材がまだ作者の中で燃焼していないうらみがある。」 川口松太郎 57歳 全 ― 0   大佛次郎 59歳 全 ― 0   小島政二郎 63歳 全 ― 0	他の候補作 江崎誠致 『ルソンの谷間』 藤井千鶴子 「義歯」 相見とし子 「魔法瓶」 佐藤明子 「寵臣」 有吉佐和子 「白い扇」 村松喬 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』

相見とし子(32歳)×各選考委員　 「魔法瓶」 短篇 102枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 △ 5 「ものたらなさはあるが、それにしても、いつもの候補作品よりは、たちまさっていると私は思った。」 永井龍男 53歳 全 △ 2 「習作として好感を持った。」 井伏鱒二 59歳 全 ― 0   木々高太郎 60歳 全 ● 7 「読者のことは考えず、或いは考えられず一心になってかいたという感じが、僕にはゆとりをもって読めなかった。」 村上元三 47歳 全 ● 2 「はじめから落した。」 川口松太郎 57歳 全 ― 0   大佛次郎 59歳 全 ― 0   小島政二郎 63歳 全 ― 0	他の候補作 江崎誠致 『ルソンの谷間』 藤井千鶴子 「義歯」 池波正太郎 「眼（め）」 佐藤明子 「寵臣」 有吉佐和子 「白い扇」 村松喬 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』

佐藤明子25歳×各選考委員　 「寵臣」 短篇 81枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 △ 5 「ものたらなさはあるが、それにしても、いつもの候補作品よりは、たちまさっていると私は思った。」 永井龍男 53歳 全 ― 0   井伏鱒二 59歳 全 ◎ 11 「キリシタン会士の報告書のスタイルを取入れた武将伝だが、大がかりな抑揚が少くて適宜な節度も情緒も感じられ好感が持てた。」 木々高太郎 60歳 全 ● 7 「読者のことは考えず、或いは考えられず一心になってかいたという感じが、僕にはゆとりをもって読めなかった。」 村上元三 47歳 全 □ 6 「女流とは思えないようながっしりした構成で歴史小説を書いている態度に感心はしたが、第二作を読ませてもらってからでもいい、と思う。」 川口松太郎 57歳 全 ― 0   大佛次郎 59歳 全 ○ 10 「骨格もしっかりしているし石田三成をこれまでになかった新らしい見方をしていて面白かった。」「しかし、まことに直木賞的に過ぎるのである。」 小島政二郎 63歳 全 ― 0

他の候補作 江崎誠致 『ルソンの谷間』 藤井千鶴子 「義歯」 池波正太郎 「眼（め）」 相見とし子 「魔法瓶」 有吉佐和子 「白い扇」 村松喬 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』

有吉佐和子26歳×各選考委員　 「白い扇」 短篇 101枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 ○ 8 「その小説的巧者なのにおどろいた。直木賞の委員なら、反対する理由が何もないほどである。」 永井龍男 53歳 全 □ 10 「実に巧い。」「ただ、既成の小説に血脈を通じてはいまいかと云う危惧が、私を僅かにちゅうちょさせた。」 井伏鱒二 59歳 全 ― 0   木々高太郎 60歳 全 ◎ 13 「思うつぼに書けすぎていて、興味をそいだという批評には賛成だが、結局もう力倆も十分認められているから受賞の対象とはならぬという意見には、私は個人としては異議があった。」 村上元三 47歳 全 □ 17 「うまいという点では今回の候補作の中での随一であろう。だが、年齢は若いのに、こう達者では、と危険な気がしないでもない。」 川口松太郎 57歳 全 ― 0   大佛次郎 59歳 全 ― 0   小島政二郎 63歳 全 ― 0	他の候補作 江崎誠致 『ルソンの谷間』 藤井千鶴子 「義歯」 池波正太郎 「眼（め）」 相見とし子 「魔法瓶」 佐藤明子 「寵臣」 村松喬 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』

村松喬40歳×各選考委員　 『ＯＮＬＹ　ＹＯＵ』 長篇 412枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 64歳 全 ○ 7 「以上三篇（引用者注：「白い扇」「眼」「ＯＮＬＹ・ＹＯＵ」）は、こんどの候補中ですぐれた作品だったことを今も思っている。」 永井龍男 53歳 全 ■ 9 「異人種の皮膚なり体臭が感じられず、すべて日本的な音色で終っているのが、私には一番物足りない点だった。」 井伏鱒二 59歳 全 ― 0   木々高太郎 60歳 全 ● 12 「白けたような、現実性のないものとなったのは、自分をも女をも抽象的にしかつかめなかったからであろう。」 村上元三 47歳 全 ○ 9 「前回の「異境の女」よりも劣るという説があったが、わたしはそうは思わない。しかし、こんどは日本の女を書いてほしかった。」 川口松太郎 57歳 全 ― 0   大佛次郎 59歳 全 ― 0   小島政二郎 63歳 全 △ 8 「一番すぐれているところは、ガラス越しに女の部屋に四本の足を発見するところだろう。」

他の候補作 江崎誠致 『ルソンの谷間』 藤井千鶴子 「義歯」 池波正太郎 「眼（め）」 相見とし子 「魔法瓶」 佐藤明子 「寵臣」 有吉佐和子 「白い扇」