選評の概要
32. 33. 34. 35.36. 37. 38. 39. 40.
41. 42. 43. 44. 45.
46. 47. 48. 49. 50.
51. 52. 53. 54. 55.
56. 57. 58. 59. 60.
61. 62. 63. 64. 65.
66. 67. 68. 69. 70.
71. 72. 73. 74. 75.
76. 77. 78. 79. 80.
81. 82. 83. 84. 85.
86. 87. 88. 89. 90.
91. 92. 93. 94. 95.
96. 97. 98. 99. 100.
101. 102.
生没年月日【注】 | 明治43年/1910年3月14日~平成18年/2006年4月3日 | |
在任期間 | 第32回~第102回(通算35.5年・71回) | |
在任年齢 | 44歳9ヶ月~79歳9ヶ月 | |
経歴 | 旧朝鮮元山生まれ。青山学院中等部卒。 | |
受賞歴・候補歴 |
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処女作 | 「利根の川霧」(昭和9年/1934年) | |
直木賞候補歴 | 第9回候補 「蝦夷日誌」(『大衆文藝』昭和14年/1939年5月号) 第11回候補 「算盤」(『大衆文藝』昭和15年/1940年5月号) 第12回受賞 「上総風土記」(『大衆文藝』昭和15年/1940年10月号)その他 |
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サイト内リンク | ▼小研究-記録(年少受賞) | |
備考 | ホームページをご覧の方より情報をご提供いただき、 「上総風土記」収録の河出書房市民文庫の刊行年月を追加しました。 貴重な情報ありがとうございます。 (2007.6.16記) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 村上元三 45歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
43歳 |
◎ | 20 | 「前回は受賞者が無かったのだから二人に上げては、とわたしは我儘をいった。どちらも直木賞作家として耻しい人ではない。」 | |
31歳 |
◎ | 16 | 「前回は受賞者が無かったのだから二人に上げては、とわたしは我儘をいった。どちらも直木賞作家として耻しい人ではない。」 | |
今官一 | 46歳 |
○ | 8 | 「いゝ材料を掴んでいるのに、構成と文章が乱れている。しかし、地力のある人だけに、次作を期待したい。」 |
棟田博 | 46歳 |
○ | 15 | 「実績も一緒に認めて貰えるなら(引用者中略)推したい、」「材料は面白いが、筆の荒さが目立ち、落された。」 |
「こんどは時代小説が一篇も候補作品に入っていないのは、わたしには淋しいことであった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年3月号再録(初出:『オール讀物』昭和31年/1956年4月号) |
選考委員 村上元三 47歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
池波正太郎 | 34歳 |
○ | 7 | 「面白い題材を丹念に調べて書いているが、その題材がまだ作者の中で燃焼していないうらみがある。」 |
村松喬 | 40歳 |
○ | 9 | 「前回の「異境の女」よりも劣るという説があったが、わたしはそうは思わない。しかし、こんどは日本の女を書いてほしかった。」 |
35歳 |
△ | 23 | 「職業作家になり得る新人を世の中へ送り出す、というのが直木賞の目的とすると、さて、という気持にわたしはなった。」 | |
「これこそ直木賞に推せる、と満々たる自信を持って委員会へ出かけられるだけの作品が、わたしには見つからなかった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和32年/1957年10月号 |
選考委員 村上元三 49歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
36歳 |
◎ | 14 | 「第一に推したのだが、それも「大坂侍」という短篇集が裏付けになったからであり、「梟の城」一冊だけだったら、わたしもためらったかも知れない。」「将来も作家として立って行ける充分な実力があるんだから、危な気はない。」 | |
杉森久英 | 47歳 |
○ | 8 | 「わたしも二番目に推したほどだが、この人の将来には期待が持てる。こんどは読みやすくて、おとなの小説を見せてほしい。」 |
44歳 |
□ | 5 | 「やはり「車引殺人事件」というよき短篇集があったので、直木賞にすることにわたしも反対はしなかった。」 | |
「最近の直木賞候補作品が、こう長篇ばかり多いというのは、どうかと思う。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和35年/1960年4月号 |
選考委員 村上元三 55歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
青山光二 | 52歳 |
◎ | 7 | 「最後まで押したが、主人公と扱った世界が直木賞に向かない、という理由で反対され、わずかの差で破れた。しかし、この作家には大きな期待を寄せているし、次作を待ちたい。」 |
生島治郎 | 32歳 |
○ | 6 | 「どうせ反対されると思ったが、わたしには面白かった。こういう野放図な作品が、直木賞の対象になって悪いとは思えない。」 |
44歳 |
△ | 7 | 「宗家の人々が、なぜ「私」をはじめ日本の兵隊をこれほど信頼するのか、そこのところを、もっと突っ込んで書いて欲しかった。」 | |
32歳 |
● | 10 | 「わたしはそれほど買っていない。」「材料だけの面白さに過ぎない。」 | |
「こんどの候補作は、すば抜けたものがなかった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和41年/1966年4月号 |
選考委員 村上元三 59歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
藤本義一 | 36歳 |
◎ | 13 | 「わたしには一ばん面白かった。八篇の中で、これだけが大衆文学であり、刑事と掏摸との関係も、戦前によく読んだマッカレーの「地下鉄サム」よりも人間くさい。しかし、これを推したのは源氏鶏太氏とわたしだけなので、多勢に無勢という形になった。」 |
45歳 |
△ | 9 | 「「戦いすんで日が暮れて」よりも、同じ候補作の「佐倉夫人の憂愁」のほうが、わたしには面白かった。」「いまさら直木賞でも、という気もするが、作品が安定している点では無難であろう。」 | |
「総じて、こんどは、それほどずば抜けた作品がなかった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和44年/1969年10月号 |
選考委員 村上元三 65歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
武田八洲満 | 48歳 |
◎ | 15 | 「史料の寄せ集めという酷評も出たが、史料を自分で消化して作品化している努力は認めたい。」「努力を認めて直木賞にしてもよい、と思った。だが、作者をよく知りすぎているだけに、強く推せば、やはり私情が出てくる。源氏委員とわたしだけの票では、なんとも弱かった。」 |
難波利三 | 38歳 |
○ | 7 | 「最後まで残ると思っていたが、支持者は少かった。候補になるごとに、この作者は地力を増しているし、確実に自分の作風を身につけた、と言えるだろう。」 |
「今回は受賞作あり、と意気込んで会場へ行ったが、案外な結果になった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和50年/1975年10月号 |
選考委員 村上元三 68歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
深田祐介 | 46歳 |
◎ | 9 | 「最後まで残りながら、賛成者が二人きりで落ちたのは惜しい。この作者は、おそらく座談の名手だと思うが、それが作品にまでのさばり出すぎる。しかしこの小説は面白かったし、これからも押えるところは押えれば、いい作品が出て来るだろう。」 |
49歳 |
○ | 4 | 「いささか長すぎるとも思うが、重量感はあった。器用な作品ではないものの、この生まじめさは買いたい。」 | |
小林信彦 | 45歳 |
○ | 6 | 「わたしには面白かった。ただ、この作者の才能が、あまり表面に出ないで、筆を押えれば、ギャグやパロディが、もっと生きてくるだろう。」 |
49歳 |
□ | 5 | 「器用すぎる作品だが、そこに浅さを感じる。むしろ参考作品の「三文おけら」の方が、悲しくて、よく人間を描いていた。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和53年/1978年10月号 |
選考委員 村上元三 69歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
帚木蓬生 | 32歳 |
◎ | 9 | 「わたしには面白かったし、もっと票が集るかと思っていたが、いまだに残念だと思う。亡き柴田錬三郎君のよく言っていた「こしらえ物の面白さ」が、ここにはあった。しかし、この作者のペンネームは、一考も再考もしてほしい。」 |
54歳 |
■ | 13 | 「素直だが、それだけに弱い。」「わたしの評価は、二人の作家の授賞に不足はないものの、作品は全面的に買ったわけではない。」 | |
44歳 |
■ | 16 | 「好意は持てるが、ガラス細工のような脆さもおぼえる。小味で小器用な作風に終らないでほしい。」「わたしの評価は、二人の作家の授賞に不足はないものの、作品は全面的に買ったわけではない。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和54年/1979年10月号 |
選考委員 村上元三 70歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
40歳 |
◎ | 11 | 「山へ入って体験したのかと思ったが、取材だけでこれだけの作品を仕あげた努力には敬服する。熊と闘う場面など、迫真力がある。」 | |
白石一郎 | 48歳 |
◎ | 18 | 「前回に予選作品になっていたら、すんなり該当作になったに違いない。フィクションの人物を中心に、実在した人物をうまく扱い、歴史を背景に幕末の捕鯨業を明確に書いている。一票の差で見送られたのは惜しい。」 |
50歳 |
■ | 6 | 「才筆だとは思うが、読後感が脆い。」「二十枚は二十枚なりに凝縮した面白さがあってほしいと思ったが、慾張った望みだろうか。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和55年/1980年10月号 |
選考委員 村上元三 70歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
52歳 |
◎ | 13 | 「よく計算されていて、部分部分にも鋭いきらめきがあり、群を抜いていた。」「この作者は中篇短篇を器用に書き分けるような作家には、すぐになれないかも知れない。だが、一年に一作だけ長篇を発表する直木賞作家があってもいいと思う。」 | |
深田祐介 | 49歳 |
◎ | 7 | 「前作の長篇よりもよくまとまっていたし、わたしは推したが賛成票が少なくて残念であった。社長の自殺と「葉隠」が、作者のねらいだったろうに、どうも結びつかない。」 |
「こんどは予選を通った作品の粒がそろっていたので、選考していても張合いがあった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和56年/1981年4月号 |
選考委員 村上元三 73歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
58歳 |
◎ | 10 | 「相変らず文章が荒っぽいし、欠点がいくつも目立った。だがこの作品は、作者の胸の中にあるものを残らず吐き出したのだと思うし、こんどを逃しては受賞の機会はないだろう。これからの作品の新しい展開を期待し、従来の実績を加えて、受賞作に推した。」 | |
北方謙三 | 35歳 |
◎ | 12 | 「文章はうまいし、面白いという点では候補作品のうちで最も高い点をつけた。」「胡桃沢氏のと併せて受賞にしてもいいと思ったが、わずかな点差で落ちた。しかし、やがては受賞する人だろう。」 |
「今回は選考が揉めて、張合いがあった。すらりと決まるより、毎回こうであってほしい。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年10月号 |
選考委員 村上元三 75歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
48歳 |
◎ | 10 | 「もう安心の出来るところまで来た。「老梅」は、これまでのこの人の作品になかったきらりと光るものが出ている。「演歌の虫」は、手慣れた筆致で、らくに読める。」 | |
宮脇俊三 | 58歳 |
◎ | 12 | 「これまでの直木賞候補作品に類を見ない、気の利いた構成のうまい短篇がそろっていた。殺人シーンなど描かないで、ぞくっとおそろしさを感じさせる作品もあった。これを山口氏にあわせて直木賞に推したが、僅かな差で破れて残念だった。」 |
泡坂妻夫 | 52歳 |
○ | 5 | 「八篇は、どれも手がこんでいてうまい。しかし、蓋をあけてみると、わたし一人が買っていた形になった。」 |
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年10月号 |
選考委員 村上元三 77歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
高橋義夫 | 41歳 |
○ | 15 | 「構成もしっかりしているし、明治初年の政治と世相、外国の関係した経済など、きちんと見ている。華がないという批評も出たが、この作品に華は要らない。」「ほかにこの作者の作品がなかったこともあるのだろうが、惜しいところで落ちた。」 |
55歳 |
△ | 13 | 「調べたという点でも、敬服をする。」「この長篇の主人公、笛太郎、小金吾、雷三郎の三人の性格を、もっときちんと書き分けてほしかったが、これは新聞の連載小説の弱さかも知れない。」 | |
28歳 |
● | 14 | 「どこの国の話かわからないし、描写がないので、作者のおしゃべりが上っすべりして眼の前に浮んでこない。」「将来、どういう作品を書くのか楽しみでないこともないが、わたしのような読者もびっくりさせてほしい。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年10月号 |
選考委員 村上元三 77歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
三浦浩 | 57歳 |
◎ | 22 | 「これを推したら、ほかの選考委員から反対される、と思いながら『海外特派員』に票を入れたが、果して落ちた。それでも七票を得た」「こういう種類の外国の作家のものは、面白がって読むのに、結局は日本の作家が扱うのは無理なのではないか、と思った。」 |
54歳 |
□ | 37 | 「満票といってもいいが、一票を入れずに半票にしたのは、わたし一人であった。作者のこれまでの作家経歴、そして過去に七回も直木賞の候補になった実績から見ても、当然のことであろう。」「この作品の第三章までは、ついて行けた。だが第四章を読んでいるうちに、この作者は純文学志向なのではないか、と気がついた。おそらく作者は、芥川賞を受けたほうが満足だったのではないか、と迷いが出た。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号 |
選考委員 村上元三 78歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
堀和久 | 57歳 |
◎ | 17 | 「前回と同じ轍を踏んでいるのは惜しい。当時の幕閣の動きなど、よく書いてあるが、水野越前の改革令の脆さは、もっとていねいに描いてほしかった。」「わたしはこんどの候補作の中で、第一に推したが、わたし一人の票では、どうにもならなかった。」 |
35歳 |
□ | 11 | 「四枚の清親の作品を通して、小林清親の半生を描く、という手法にも無理がない。背景の時代色も、よく出ている。ただ版画にとって大事な彫師と刷師の苦労を、表に出してほしかった。」 | |
39歳 |
△ | 14 | 「一ばん文章もしっかりしていた。人間を見る眼も確かだが、ここに登場する男も女も好感は持てない。そういう人間たちを描くのが作者の目的だろうが、ここから新しい文学が芽生えるにしても、ほかのテーマを扱った作品を読みたい。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号 |
選考委員 村上元三 79歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
阿久悠 | 52歳 |
◎ | 8 | 「わたしは今期の第一に推したが、票が集まらなかった。小さな島の少年たちの成長、モモ子や勇などがよく描かれている。これがなぜ賞を逸したのか、再読、三読したあとも、残念で仕方がない。」 |
40歳 |
○ | 19 | 「題名は、ややこけおどしの気味もないではない。しかし内容は題名とは違って、地味なストーリイを、こつこつとまじめに書いている。」「ストリップガールたちの生態、照明係との関係など、へんに思わせぶりのところがなく、作者は筆を抑えて書いている。凡手ではない、どころではなく、この作者は大成するに違いない。」 | |
隆慶一郎 | 65歳 |
○ | 13 | 「この作者の『吉原御免状』などよりも、ずっと美事に剣客を描いている。作者があとがきに、「かかる異端の小説を」を書いているが、そんなことはない。すでに五味康祐や柴田錬三郎がいろいろ試みた作法であり、このほうがより新鮮であった。時代小説が直木賞にしばらく出てこないし、わたしはこれが直木賞を得てもよいと思った。」 |
41歳 |
■ | 9 | 「わたしはこの作品に最後まで票を入れなかった。主人公とその周囲はよく描けているが、どうしても作意が表面へ出てくる。それをもっとやわらかく内側に包んでほしかった、と思う。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号 |