第50回

第49回第51回

昭和38年/1963年下半期 昭和39年/1964年1月21日決定発表／『オール讀物』昭和39年/1964年4月号選評掲載

選考委員　 川口松太郎 64歳 海音寺潮五郎 62歳 大佛次郎 66歳 木々高太郎 66歳 今日出海 60歳 小島政二郎 69歳 源氏鶏太 51歳 村上元三 53歳 松本清張 54歳 中山義秀 63歳 選評総行数　 43 60 51 72 54 51 55 58 64 42 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 安藤鶴夫　『巷談本牧亭』 545枚 55歳 評 △ 21 △ 31 ○ 19 ○ 11 ○ 19 ○ 6 □ 33 ○ 9 △ 9 ○ 9 和田芳恵　『塵の中』 450枚 57歳 評 △ 20 ◎ 8 ○ 15 ○ 15 ◎ 15 ◎ 9 ◎ 12 ○ 10 ◎ 17 ○ 13 川野彰子　「廓育ち」 72枚 36歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ― 0 ● 4 ◎ 6 ■ 4 ― 0 □ 4 江夏美子　『脱走記』 556枚 41歳 評 ◎ 12 ― 0 ― 0 △ 10 ― 0 ● 2 ― 0 ■ 10 ― 0 ■ 5 小松左京　「地には平和を」等 241枚 32歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 4 ― 0 ● 3 ● 2 ― 0 樹下太郎　「サラリーマンの勲章」 234枚 42歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 7 ― 0 ● 3 ● 4 ― 0 戸川昌子　『猟人日記』 443枚 32歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 18 ― 0 ● 5 ― 0 ● 5 ■ 17 ■ 5 野村尚吾　『戦雲の座』 537枚 52歳 評 ― 0 ◎ 18 ○ 11 △ 10 ― 0 ● 7 △ 14 □ 13 ○ 23 ■ 5 津村節子　「弦月」 60枚 35歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ― 0 ● 2 ― 0 ■ 8 ― 0 □ 4 山川方夫　「クリスマスの贈物」 101枚 33歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ― 0 ● 3 ― 0 ― 0     欠席 書面回答               年齢/枚数の説明   見方・注意点

川口松太郎64歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題強情の棚上げ　総行数43　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 △ 21 「安藤君の諸作は読者を楽しませすぎ、勤め気やサービス精神がありすぎて（私もそのひとりだが）薄手になりやすい欠点を持つ。」 和田芳恵 57歳 全 △ 20 「自分では勤めたつもりでいて、その実はちっとも勤めていない生硬さを持つ。」 川野彰子 36歳 全 ― 0   江夏美子 41歳 全 ◎ 12 「東海文学（同人雑誌）で、偶然に読んだ作品に、新人らしからぬ技倆を感じたのだが、まだまだアマチュアの域を脱しきれていない。」「自分ひとり楽しんで書いている。」 小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ― 0   野村尚吾 52歳 全 ― 0   津村節子 35歳 全 ― 0   山川方夫 33歳 全 ― 0     「安藤君も和田君も新人ではないから議論が沸騰した、」「新味のうすい恨みがあって、新人をもう一人出したいと源氏鶏太はいった。が、三人受賞の前例がなく、作品的にも異議が多く、結局は二人におさまった。」

他の選考委員 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 松本清張 中山義秀

海音寺潮五郎62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題痛恨深し　総行数60　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 △ 31 「安藤鶴夫氏のような著名で、しかも現在週刊朝日のような大雑誌に小説を連載している人を、選考の対象とすることには、大いに疑義がある、（引用者中略）という意味のことを、ぼくは開会冒頭に一席ぶったが、容れられなかった。」「作品としては、ほとんど間然とするところがない。名作である。」 和田芳恵 57歳 全 ◎ 8 「作品集中の「道祖神幕」だけを、ぼくは推薦した。」「計算の行きとどいた、巧緻をきわめた作品である。」 川野彰子 36歳 全 ― 0   江夏美子 41歳 全 ― 0   小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ― 0   野村尚吾 52歳 全 ◎ 18 「誰も書かない時代、誰も書かない素材（引用者中略）に、正面からとりくんで、これまでに仕上げた作者の働きを、ぼくは最も高いものに買った。」「ぼくはこの人にもらってほしかった。」 津村節子 35歳 全 ― 0   山川方夫 33歳 全 ― 0

他の選考委員 川口松太郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 松本清張 中山義秀

大佛次郎66歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題私見　総行数51　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 ○ 19 「フランスだけで愛読されて外国の読者では消化困難の町の匂いがついた作家がパリにあるように、「本牧亭」はひとりで自ら、匂う。」「私は前から安藤氏を新人だと思って見ていた。これからも新人であろう。」 和田芳恵 57歳 全 ○ 15 「心のこもった質実な作風で、直木賞のものに予想される表面華やかな過剰な垢がない。」「しっかりした建前で出て来る人間がそれぞれ、見えるようである。」 川野彰子 36歳 全 ― 0   江夏美子 41歳 全 ― 0   小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ― 0   野村尚吾 52歳 全 ○ 11 「少数の差で破れたのを残念に思った。」「今日もてはやされている意欲などない大衆小説とは比較にならず正しく誠実な心を打込んだ力作だからである。」 津村節子 35歳 全 ― 0   山川方夫 33歳 全 ― 0     「都合悪しく出席できなかったので、これならば異存なしとする作品を列挙して送っておいた。」

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 松本清張 中山義秀

木々高太郎66歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題一つの根本問題　総行数72　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 ○ 11 「一気呵成によませるものではなく、しみじみと読ませる。新聞小説としても出来のよい小説であり、この人の将来の小説は楽しめると思う。」 和田芳恵 57歳 全 ○ 15 「今度「道祖神幕」をよんで、この一篇、直木賞の価があると僕は信じた。一種の考証小説である。」 川野彰子 36歳 全 ● 5 「もう一つ新しい観点に立てばと思う。」 江夏美子 41歳 全 △ 10 「力作であるし、一種の新しい見方ももっているが、然し、少々よみづらいという感じがした。」 小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ■ 18 「よみよいし、よく人を引きつける。然し推理小説というものの、最も悪しきワナに陥っている。それは、トリックが閨房のことになっている点」 野村尚吾 52歳 全 △ 10 「力作であるし、一種の新しい見方ももっているが、然し、少々よみづらいという感じがした。」 津村節子 35歳 全 ● 5 「もう一つ新しい観点に立てばと思う。」 山川方夫 33歳 全 ― 0     「直木賞の根本問題の一つが決定したわけで、どんなに有名であっても、小説家として有名でないならば直木賞にはまるということになる。」

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 松本清張 中山義秀

今日出海60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題直木賞の特質　総行数54　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 ○ 19 「年齢に拘らず、直木賞は新人の発掘を意図するので、安藤氏が今更新人とは言えないが、候補作品に出た以上、これはあらためて審査し、立派な受賞作品となったのである。」 和田芳恵 57歳 全 ◎ 15 「殊に「道祖神幕」などは調べた面白さが出ていて、凡手では書けぬ見事な出来ばえである。この作品を推すのに躊躇するものがなかったのはむしろ当然というべきだろう。」 川野彰子 36歳 全 ― 0   江夏美子 41歳 全 ― 0   小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ― 0   野村尚吾 52歳 全 ― 0   津村節子 35歳 全 ― 0   山川方夫 33歳 全 ― 0     「直木賞は狭き門かも知れぬと同時に、この門を潜る資格や規定は広く考えていることを申し添えて置こう。」

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 松本清張 中山義秀

小島政二郎69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題人生の影　総行数51　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 ○ 6 「面白いし、うまいし、が、安藤君だけの年期がはいっていれば、これだけ書けて当り前だろうとも思う。」 和田芳恵 57歳 全 ◎ 9 「これだけの小説を書くために作者は幾度才能の不如意に泣いたことだろう。そういう人生の影が一行一行の間に落ちていて美しい。」 川野彰子 36歳 全 ● 4 「こういう小説には飽き飽きした。読んでいるうちに憂鬱になって来た。」 江夏美子 41歳 全 ● 2 「長過ぎる。」 小松左京 32歳 全 ● 4 「私には小説としての興味が沸いて来ず、読むのに苦しい。」 樹下太郎 42歳 全 ● 7 「私の考えている小説と違っていても一向差支ないが、そんならこっちを捕えて放さないだけの力を持っていなくては話にならない。」 戸川昌子 32歳 全 ● 5 「私に言わせれば小説ではない。設問に必然性がないからである。」 野村尚吾 52歳 全 ● 7 「ネライは大変いいと思うのだが、肝腎の足軽の取り扱い方が、これではイージーゴーイングである。」 津村節子 35歳 全 ● 2 「何等の新鮮味もない。」 山川方夫 33歳 全 ● 5 「この人にはもっといい作品がある。こんないい加減な作品が候補になったのは、山川君の不幸という外ない。」

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 源氏鶏太 村上元三 松本清張 中山義秀

源氏鶏太51歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題惜しかった「廓育ち」　総行数55　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 □ 33 「安藤鶴夫さんは、有名過ぎる程の人であり、（引用者中略）そういう人を候補者にすることは、却って失礼に当りはせぬか、ということでもあった。私もその説に賛成であった。」 和田芳恵 57歳 全 ◎ 12 「和田さんの小説は、私ははじめて読んだのだがそのうまいのにおどろいた。文句のつけようがない。」 川野彰子 36歳 全 ◎ 6 「高く評価した。ちゃんと芯が通っていて立派だと思った。古いという評もあったが、私は、そう思っていない、」 江夏美子 41歳 全 ― 0   小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ― 0   野村尚吾 52歳 全 △ 14 「惜しかった。が、前回の候補作品よりも遥かに多くの議論の対象になった。それだけに進歩を物語るものであろう。」 津村節子 35歳 全 ― 0   山川方夫 33歳 全 ― 0

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 村上元三 松本清張 中山義秀

村上元三53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題作品が第一　総行数58　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 ○ 9 「有名すぎるという説もあったが、これが作者の最初の小説、という点を認めたい。」 和田芳恵 57歳 全 ○ 10 「長いあいだ文学と取組んできた人の年齢が、はっきりとうかがえる。新人とは言えないが、うまい、面白い小説を直木賞作品として選ぶのは、当然であろう。」 川野彰子 36歳 全 ■ 4 「既成作家のようなうまさがあるが、新鮮なものが感じられない。」 江夏美子 41歳 全 ■ 10 「めずらしい材料と真向から取組んでいる若々しさは感じられる」「書き込みすぎて、かえって焦点のぼけてしまったところが多い。」 小松左京 32歳 全 ● 3 「候補になるには弱い。」 樹下太郎 42歳 全 ● 3 「候補になるには弱い。」 戸川昌子 32歳 全 ● 5 「いつもの通りどんでん返しがうまいが、この作者は、どうしてこうセックスにこだわるのだろうか。」 野村尚吾 52歳 全 □ 13 「面白い材料を扱い、的確に書き込まれているのに、主人公の伊兵衛が足軽のボスになってからが、がたりと落ちる。」 津村節子 35歳 全 ■ 8 「うまいし、ととのった小説を書ける人なのに、いまの境地から脱けないと、いつまでも小粒のままで終るだろう。」 山川方夫 33歳 全 ● 3 「ほかにもっといい短篇があったような気がする。」

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 松本清張 中山義秀

松本清張54歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題遅すぎた春　総行数64　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 △ 9 「あとの一篇を安藤鶴夫氏の「巷談本牧亭」と野村尚吾氏の「戦雲の座」が競り合った」 和田芳恵 57歳 全 ◎ 17 「読みごたえのある好短篇ばかりで、殊に「道祖神幕」と「暗い血」とが傑出している。」「この人の作品を今度選んだことは委員会としても遅すぎたのである。」 川野彰子 36歳 全 ― 0   江夏美子 41歳 全 ― 0   小松左京 32歳 全 ● 2 「ＳＦが醗酵不十分で文章も生硬、」 樹下太郎 42歳 全 ● 4 「前作「銀と青銅の差」に遥かに及ばない。」 戸川昌子 32歳 全 ■ 17 「文章的には最初の部分がいい。但し、犯人を隠しすぎたために、人物の性格が全然出てこない。」「意外性もなければいけないし、性格もはっきりと持たせなければならないところに普通の小説と違う推理小説の困難さがある。しかし、これを両立させるのが推理作家の宿命である。」 野村尚吾 52歳 全 ○ 23 「「戦雲の座」のほうに新しさを見た」「足軽の発生を小説にこのように書いたものは初めてだ。人物が書き分けられているし、絡み合いにも工夫が凝らされている。」 津村節子 35歳 全 ― 0   山川方夫 33歳 全 ― 0

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 中山義秀

中山義秀63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題美しきものを　総行数42　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 安藤鶴夫 55歳 全 ○ 9 「若い人の作品には感じられない、ほんものの小説の面白さと、人生の滋味をあじわった。」「人間の観かたや取扱いかたに癖はあるが、それだけ力強くしかも印象がうつくしい。」 和田芳恵 57歳 全 ○ 13 「若い人の作品には感じられない、ほんものの小説の面白さと、人生の滋味をあじわった。」「じつに巧みで、どうしてこれほどの作者を、今まで活躍させなかったのであろうと、疑ったほどだ。」 川野彰子 36歳 全 □ 4 「たっしゃな技巧と人物の処理にあたたかさが感じられた。」 江夏美子 41歳 全 ■ 5 「何か肝腎な中心物を、しかと捕えずに過してしまったような気がした。」 小松左京 32歳 全 ― 0   樹下太郎 42歳 全 ― 0   戸川昌子 32歳 全 ■ 5 「何か肝腎な中心物を、しかと捕えずに過してしまったような気がした。」 野村尚吾 52歳 全 ■ 5 「何か肝腎な中心物を、しかと捕えずに過してしまったような気がした。」 津村節子 35歳 全 □ 4 「たっしゃな技巧と人物の処理にあたたかさが感じられた。」 山川方夫 33歳 全 ― 0

他の選考委員 川口松太郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 源氏鶏太 村上元三 松本清張

安藤鶴夫55歳×各選考委員　 『巷談本牧亭』 長篇 545枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 △ 21 「安藤君の諸作は読者を楽しませすぎ、勤め気やサービス精神がありすぎて（私もそのひとりだが）薄手になりやすい欠点を持つ。」 海音寺潮五郎 62歳 全 △ 31 「安藤鶴夫氏のような著名で、しかも現在週刊朝日のような大雑誌に小説を連載している人を、選考の対象とすることには、大いに疑義がある、（引用者中略）という意味のことを、ぼくは開会冒頭に一席ぶったが、容れられなかった。」「作品としては、ほとんど間然とするところがない。名作である。」 大佛次郎 66歳 全 ○ 19 「フランスだけで愛読されて外国の読者では消化困難の町の匂いがついた作家がパリにあるように、「本牧亭」はひとりで自ら、匂う。」「私は前から安藤氏を新人だと思って見ていた。これからも新人であろう。」 木々高太郎 66歳 全 ○ 11 「一気呵成によませるものではなく、しみじみと読ませる。新聞小説としても出来のよい小説であり、この人の将来の小説は楽しめると思う。」 今日出海 60歳 全 ○ 19 「年齢に拘らず、直木賞は新人の発掘を意図するので、安藤氏が今更新人とは言えないが、候補作品に出た以上、これはあらためて審査し、立派な受賞作品となったのである。」 小島政二郎 69歳 全 ○ 6 「面白いし、うまいし、が、安藤君だけの年期がはいっていれば、これだけ書けて当り前だろうとも思う。」 源氏鶏太 51歳 全 □ 33 「安藤鶴夫さんは、有名過ぎる程の人であり、（引用者中略）そういう人を候補者にすることは、却って失礼に当りはせぬか、ということでもあった。私もその説に賛成であった。」 村上元三 53歳 全 ○ 9 「有名すぎるという説もあったが、これが作者の最初の小説、という点を認めたい。」 松本清張 54歳 全 △ 9 「あとの一篇を安藤鶴夫氏の「巷談本牧亭」と野村尚吾氏の「戦雲の座」が競り合った」 中山義秀 63歳 全 ○ 9 「若い人の作品には感じられない、ほんものの小説の面白さと、人生の滋味をあじわった。」「人間の観かたや取扱いかたに癖はあるが、それだけ力強くしかも印象がうつくしい。」

他の候補作 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

和田芳恵57歳×各選考委員　 『塵の中』 短篇集4篇 450枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 △ 20 「自分では勤めたつもりでいて、その実はちっとも勤めていない生硬さを持つ。」 海音寺潮五郎 62歳 全 ◎ 8 「作品集中の「道祖神幕」だけを、ぼくは推薦した。」「計算の行きとどいた、巧緻をきわめた作品である。」 大佛次郎 66歳 全 ○ 15 「心のこもった質実な作風で、直木賞のものに予想される表面華やかな過剰な垢がない。」「しっかりした建前で出て来る人間がそれぞれ、見えるようである。」 木々高太郎 66歳 全 ○ 15 「今度「道祖神幕」をよんで、この一篇、直木賞の価があると僕は信じた。一種の考証小説である。」 今日出海 60歳 全 ◎ 15 「殊に「道祖神幕」などは調べた面白さが出ていて、凡手では書けぬ見事な出来ばえである。この作品を推すのに躊躇するものがなかったのはむしろ当然というべきだろう。」 小島政二郎 69歳 全 ◎ 9 「これだけの小説を書くために作者は幾度才能の不如意に泣いたことだろう。そういう人生の影が一行一行の間に落ちていて美しい。」 源氏鶏太 51歳 全 ◎ 12 「和田さんの小説は、私ははじめて読んだのだがそのうまいのにおどろいた。文句のつけようがない。」 村上元三 53歳 全 ○ 10 「長いあいだ文学と取組んできた人の年齢が、はっきりとうかがえる。新人とは言えないが、うまい、面白い小説を直木賞作品として選ぶのは、当然であろう。」 松本清張 54歳 全 ◎ 17 「読みごたえのある好短篇ばかりで、殊に「道祖神幕」と「暗い血」とが傑出している。」「この人の作品を今度選んだことは委員会としても遅すぎたのである。」 中山義秀 63歳 全 ○ 13 「若い人の作品には感じられない、ほんものの小説の面白さと、人生の滋味をあじわった。」「じつに巧みで、どうしてこれほどの作者を、今まで活躍させなかったのであろうと、疑ったほどだ。」

他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

川野彰子36歳×各選考委員　 「廓育ち」 短篇 72枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 ● 5 「もう一つ新しい観点に立てばと思う。」 今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 4 「こういう小説には飽き飽きした。読んでいるうちに憂鬱になって来た。」 源氏鶏太 51歳 全 ◎ 6 「高く評価した。ちゃんと芯が通っていて立派だと思った。古いという評もあったが、私は、そう思っていない、」 村上元三 53歳 全 ■ 4 「既成作家のようなうまさがあるが、新鮮なものが感じられない。」 松本清張 54歳 全 ― 0   中山義秀 63歳 全 □ 4 「たっしゃな技巧と人物の処理にあたたかさが感じられた。」	他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

江夏美子41歳×各選考委員　 『脱走記』 長篇 556枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ◎ 12 「東海文学（同人雑誌）で、偶然に読んだ作品に、新人らしからぬ技倆を感じたのだが、まだまだアマチュアの域を脱しきれていない。」「自分ひとり楽しんで書いている。」 海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 △ 10 「力作であるし、一種の新しい見方ももっているが、然し、少々よみづらいという感じがした。」 今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 2 「長過ぎる。」 源氏鶏太 51歳 全 ― 0   村上元三 53歳 全 ■ 10 「めずらしい材料と真向から取組んでいる若々しさは感じられる」「書き込みすぎて、かえって焦点のぼけてしまったところが多い。」 松本清張 54歳 全 ― 0   中山義秀 63歳 全 ■ 5 「何か肝腎な中心物を、しかと捕えずに過してしまったような気がした。」

他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

小松左京32歳×各選考委員　 「地には平和を」等 短篇集（一部）2篇 241枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 ― 0   今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 4 「私には小説としての興味が沸いて来ず、読むのに苦しい。」 源氏鶏太 51歳 全 ― 0   村上元三 53歳 全 ● 3 「候補になるには弱い。」 松本清張 54歳 全 ● 2 「ＳＦが醗酵不十分で文章も生硬、」 中山義秀 63歳 全 ― 0	他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

樹下太郎42歳×各選考委員　 「サラリーマンの勲章」 連作（一部）6篇 234枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 ― 0   今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 7 「私の考えている小説と違っていても一向差支ないが、そんならこっちを捕えて放さないだけの力を持っていなくては話にならない。」 源氏鶏太 51歳 全 ― 0   村上元三 53歳 全 ● 3 「候補になるには弱い。」 松本清張 54歳 全 ● 4 「前作「銀と青銅の差」に遥かに及ばない。」 中山義秀 63歳 全 ― 0	他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

戸川昌子32歳×各選考委員　 『猟人日記』 長篇 443枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 ■ 18 「よみよいし、よく人を引きつける。然し推理小説というものの、最も悪しきワナに陥っている。それは、トリックが閨房のことになっている点」 今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 5 「私に言わせれば小説ではない。設問に必然性がないからである。」 源氏鶏太 51歳 全 ― 0   村上元三 53歳 全 ● 5 「いつもの通りどんでん返しがうまいが、この作者は、どうしてこうセックスにこだわるのだろうか。」 松本清張 54歳 全 ■ 17 「文章的には最初の部分がいい。但し、犯人を隠しすぎたために、人物の性格が全然出てこない。」「意外性もなければいけないし、性格もはっきりと持たせなければならないところに普通の小説と違う推理小説の困難さがある。しかし、これを両立させるのが推理作家の宿命である。」 中山義秀 63歳 全 ■ 5 「何か肝腎な中心物を、しかと捕えずに過してしまったような気がした。」

他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

野村尚吾52歳×各選考委員　 『戦雲の座』 長篇 537枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ◎ 18 「誰も書かない時代、誰も書かない素材（引用者中略）に、正面からとりくんで、これまでに仕上げた作者の働きを、ぼくは最も高いものに買った。」「ぼくはこの人にもらってほしかった。」 大佛次郎 66歳 全 ○ 11 「少数の差で破れたのを残念に思った。」「今日もてはやされている意欲などない大衆小説とは比較にならず正しく誠実な心を打込んだ力作だからである。」 木々高太郎 66歳 全 △ 10 「力作であるし、一種の新しい見方ももっているが、然し、少々よみづらいという感じがした。」 今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 7 「ネライは大変いいと思うのだが、肝腎の足軽の取り扱い方が、これではイージーゴーイングである。」 源氏鶏太 51歳 全 △ 14 「惜しかった。が、前回の候補作品よりも遥かに多くの議論の対象になった。それだけに進歩を物語るものであろう。」 村上元三 53歳 全 □ 13 「面白い材料を扱い、的確に書き込まれているのに、主人公の伊兵衛が足軽のボスになってからが、がたりと落ちる。」 松本清張 54歳 全 ○ 23 「「戦雲の座」のほうに新しさを見た」「足軽の発生を小説にこのように書いたものは初めてだ。人物が書き分けられているし、絡み合いにも工夫が凝らされている。」 中山義秀 63歳 全 ■ 5 「何か肝腎な中心物を、しかと捕えずに過してしまったような気がした。」

他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 津村節子 「弦月」 山川方夫 「クリスマスの贈物」

津村節子35歳×各選考委員　 「弦月」 短篇 60枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 ● 5 「もう一つ新しい観点に立てばと思う。」 今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 2 「何等の新鮮味もない。」 源氏鶏太 51歳 全 ― 0   村上元三 53歳 全 ■ 8 「うまいし、ととのった小説を書ける人なのに、いまの境地から脱けないと、いつまでも小粒のままで終るだろう。」 松本清張 54歳 全 ― 0   中山義秀 63歳 全 □ 4 「たっしゃな技巧と人物の処理にあたたかさが感じられた。」	他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 山川方夫 「クリスマスの贈物」

山川方夫33歳×各選考委員　 「クリスマスの贈物」 短篇3篇 101枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 川口松太郎 64歳 全 ― 0   海音寺潮五郎 62歳 全 ― 0   大佛次郎 66歳 全 ― 0   木々高太郎 66歳 全 ― 0   今日出海 60歳 全 ― 0   小島政二郎 69歳 全 ● 5 「この人にはもっといい作品がある。こんないい加減な作品が候補になったのは、山川君の不幸という外ない。」 源氏鶏太 51歳 全 ― 0   村上元三 53歳 全 ● 3 「ほかにもっといい短篇があったような気がする。」 松本清張 54歳 全 ― 0   中山義秀 63歳 全 ― 0	他の候補作 安藤鶴夫 『巷談本牧亭』 和田芳恵 『塵の中』 川野彰子 「廓育ち」 江夏美子 『脱走記』 小松左京 「地には平和を」等 樹下太郎 「サラリーマンの勲章」 戸川昌子 『猟人日記』 野村尚吾 『戦雲の座』 津村節子 「弦月」