第68回

第67回第69回

昭和47年/1972年下半期 昭和48年/1973年1月18日決定発表／『オール讀物』昭和48年/1973年4月号選評掲載

選考委員　 大佛次郎 75歳 源氏鶏太 60歳 石坂洋次郎 72歳 司馬遼太郎 49歳 川口松太郎 73歳 水上勉 53歳 村上元三 62歳 今日出海 69歳 柴田錬三郎 55歳 松本清張 63歳 選評総行数　 74 54 51 60 40 49 51 42 52 52 評 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 滝口康彦　『仲秋十五日』 341枚 48歳 評 ◎ 24 ◎ 35 ● 7 ■ 16 ○ 23 ◎ 36 ■ 26 △ 6 □ 35 ● 15 藤沢周平　「黒い繩」 107枚 45歳 評 ― 0 △ 7 ● 4 ■ 16 ― 0 ― 0 ● 7 ― 0 ― 0 ● 10 堀勇蔵　「去年、国道3号線で」 96枚 33歳 評 ― 0 ― 0 ● 5 ● 7 ― 0 ― 0 ● 3 ― 0 ― 0 ― 0 難波利三　「雑魚の棲む路地」 70枚 36歳 評 △ 26 ― 0 ● 6 ■ 16 ― 0 ■ 10 ■ 5 ― 0 ― 0 ― 0 武田八洲満　『信虎』 482枚 45歳 評 ― 0 ■ 4 ● 3 ● 8 ― 0 ― 0 ● 6 ― 0 ― 0 ● 19 小久保均　「折れた八月」 204枚 42歳 評 ― 0 ― 0 ● 3 ● 6 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 太田俊夫　「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」 508枚 59歳 評 ― 0 ○ 4 ● 8 ■ 10 ― 0 ― 0 ● 5 ― 0 ― 0 ― 0         欠席 書面回答           年齢/枚数の説明   見方・注意点

大佛次郎75歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題思うままに　総行数74　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ◎ 24 「文章がよく洗い出されて、整った結晶を見るように感ぜられるものでも――私は最後まで熱心にこの作者の一群の作品に授賞を主張したのだが――形が整い過ぎて、ある弱さがあるのを否定出来なかった。しかし、このひとは自分が固めて来た道を進むより他はないようである。」 藤沢周平 45歳 全 ― 0   堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 △ 26 「同じ作者が前に露店商人の生活を書いたのが、不思議と頭に残っていた。どちらも埃っぽく、野生の人間の体臭がムンムンしていた。」「しかし直木賞の作品の場合には、あるまとまりや、筋の輪郭の線が明瞭でないと、読者の注意が散漫となる。」 武田八洲満 45歳 全 ― 0   小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ― 0     「これはと、目を輝かすような新しいものがなかった。」「七十六歳で老弱で、今回限りで直木賞の委員を辞退する決心を固めた。」

他の選考委員 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

源氏鶏太60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題「仲秋十五日」のこと　総行数54　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ◎ 35 「この作家は、二十年間同じ傾向の作品しか書いていないという説があった。それは非難に類する言葉かとも思えたが、私は、だからこそ立派だといいたかった。」「どの作品にも情感が満ちていて、よくひねりが利いていた。立派なプロで通る。」 藤沢周平 45歳 全 △ 7 「私の好きな作品であったが、また、この作者は、確実に腕を上げて来ているが、欲をいえばもっと新鮮味があって貰いたかった。」 堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 ― 0   武田八洲満 45歳 全 ■ 4 「案外不評であったのは、どうも力作に過ぎて読み辛いところに原因があったようだ。」 小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ○ 4 「八方破れに書いてあったのは、「暗雲」であった。その力量は買っていい。こういう分野での作品をもっと書いて貰いたい。」

他の選考委員 大佛次郎 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

石坂洋次郎72歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題今回はさみしかった　総行数51　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ● 7 「支持者も多かったが、私には環境のせいで歪められた武士気質にどうしても溶けこめないものがあった。」 藤沢周平 45歳 全 ● 4 「狙い所がはっきりせず、」 堀勇蔵 33歳 全 ● 5 「作者が題材にもっと責任を負うべき」 難波利三 36歳 全 ● 6 「いまひと息レアリティーが不足だと思った。」 武田八洲満 45歳 全 ● 3 「長すぎると思った。」 小久保均 42歳 全 ● 3 「軍隊生活を知らない私には興味うすく、」 太田俊夫 59歳 全 ● 8 「こういうものなりに、敲いて手ごたえのある筋金が欲しかった。」   「今回は入賞作品なしというのが、私の第一印象であった。」	他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

司馬遼太郎49歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題何物かという点　総行数60　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ■ 16 「他の候補作にくらべて文章に気品があり、技倆も堅牢である。しかしこの作品が背負っている何物かが、目をおどろかすような新鮮さがないという致命的なことで難があった。」 藤沢周平 45歳 全 ■ 16 「じつに達者な職業作家の作品で、その点では過不足はない。ただ厄介なことは、賞に値するためには作品に何物かがなければならないということである。」 堀勇蔵 33歳 全 ● 7 「ことさら深読みすれば、どちらもなにか豊潤なものをその才質に秘めておられる気配が感じられるが、しかし作品にそれが出るにいたっていない。」 難波利三 36歳 全 ■ 16 「じつに達者な職業作家の作品で、その点では過不足はない。ただ厄介なことは、賞に値するためには作品に何物かがなければならないということである。」 武田八洲満 45歳 全 ● 8 「おそらくご自分の「何物」かを問うてみたくて書かれた作品であろう。しかし問うがための姿勢が前面に出て、技倆がうしろへひっこみ、ひどく貧困なものになった。」 小久保均 42歳 全 ● 6 「ことさら深読みすれば、どちらもなにか豊潤なものをその才質に秘めておられる気配が感じられるが、しかし作品にそれが出るにいたっていない。」 太田俊夫 59歳 全 ■ 10 「一巻の絵物語をみるようにめまぐるしく場面が、それも絵画的に変ってゆく。泥くさい魅力があるが、残念なことにそれだけという感じもある。」   「席上、多少の議論もあった。もっとも甲論乙駁というような議論でなく、なんとか受賞者が出せないものかという焦りによるところの、いわば血圧の低いぼやきで、そのあげくのはて異例の無記名投票までおこなわれ、今回はなしということになった。」

他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

川口松太郎73歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題出直せ　総行数40　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ○ 23 「これだけがやや纏った短篇で、武士の生活をよく描いている。」「ただ残念な事にこの短篇集に納めた他の作品が悉くつまらない。」「この人は今後よい作品を書く下地だけ持っているが、まだ小説を組み立てる構成を知らず、良い材料を掴みながら材料流れに終っている。」 藤沢周平 45歳 全 ― 0   堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 ― 0   武田八洲満 45歳 全 ― 0   小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ― 0     「今回にしても目ぼしい作品はついになく」「大部分がもう中年の人ばかりだけに、この年でいてこの程度のものより書けぬとすると心細い。」	他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 水上勉 村上元三 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

水上勉53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題感想　総行数49　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ◎ 36 「氏の簡素な文体は叙事の妙を得ており、こころにくいところがあった。すでに自分の世界、せまくてもこれを持つことは大したことではないか、と思ったりして、迷った末に授賞組にまわったのである。」 藤沢周平 45歳 全 ― 0   堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 ■ 10 「この作家独自の世界で、好感がもてた。だが仕上りは前回「地虫」より落ちた、と思う。」「庶民の物哀しさはよく出ている。だが、もう一つ人物たちに類型の域を出ないところが気になる。」 武田八洲満 45歳 全 ― 0   小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ― 0     「今回の候補作は低調に思えた。」	他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 村上元三 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

村上元三62歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題二転、三転したが　総行数51　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ■ 26 「「仲秋十五日」に一票を入れるべきかどうか、銓衡会場でわたしの気持は二転三転した。」「これまで同じようなテーマの作品をいくつも読んで、正直なところ、いささか倦きた。」「直木賞というのには、最後にためらいが起り、反対票を入れた。」 藤沢周平 45歳 全 ● 7 「背広に丁髷を乗せたような作品で、会話にも現代語がやたらに出てくる。現代語がいけないというのではないが、不自然さを感じさせるところ、やはり作者の不用意であろう。」 堀勇蔵 33歳 全 ● 3 「テレビ映画的な面白さが、途中まではあった。」 難波利三 36歳 全 ■ 5 「前回の「地虫」よりも劣るが、達者だし、この人はこのまま職業作家としてやって行けるだろう。」 武田八洲満 45歳 全 ● 6 「構成に難がある。それぞれ人間はよく描かれているが、途中、何べんも前へ戻って読み返さないと、人間関係が雑然としてわからず、読みにくかった。」 小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ● 5 「材料が面白いのに、書いてある事柄が、一向に立体化されていない。文章のまずさも、致命的であった。」   「直木賞は銓衡委員すべてか、あるいはそれに近い同意を得た作品を選んだほうが、わたしたちも気持がいい。」

他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 今日出海 柴田錬三郎 松本清張

今日出海69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題直木賞の性格　総行数42　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 △ 6 「委員全体が最後まで討論した力作であるが、それだけの資格のある真面目な作品であることを附記して、今後の努力を期待する。」 藤沢周平 45歳 全 ― 0   堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 ― 0   武田八洲満 45歳 全 ― 0   小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ― 0     「何がなんでも去年下半期の作品から比較的いいものを選んで、必ず授賞しなければならぬということはない。」「やはり傑出していることが最大の条件である。」	他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 柴田錬三郎 松本清張

柴田錬三郎55歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題運不運　総行数52　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 □ 35 「一頭地を抜いた秀作ならば、文句はないところであった。（引用者中略）多少過酷な云いかたをすれば、この作家は、将来、われわれを納得させるだけの仕事をするかどうか、疑問であった。将来に可能性の薄い作家を、つよく推薦する気にはなれなかった。」 藤沢周平 45歳 全 ― 0   堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 ― 0   武田八洲満 45歳 全 ― 0   小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ― 0     「今回は不作、とはいわぬまでも、辛うじて水準に達している感をまぬがれがたかった。」「印象としては、ますます、直木賞にあたいする秀作が現れ難くなった感がある。」	他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 今日出海 松本清張

松本清張63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題近来の低調　総行数52　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 滝口康彦 48歳 全 ● 15 「内容は氏のこれまでの域を出ていない。」「「忠義道徳」と人間性との間に潰れてゆく「個」が描けていない。描いたつもりで抽象的である。」「氏に「発見」を望みたい。」 藤沢周平 45歳 全 ● 10 「いわゆる好箇の短篇というべきだろうが、あまりに文章に凝りすぎてしんを弱くさせている。」「内容はこれまで他の作家によって書かれたものとあまり変ってなく、実体も弱い。山本周五郎氏の雰囲気に抵抗しなければ独自性は出ない。」 堀勇蔵 33歳 全 ― 0   難波利三 36歳 全 ― 0   武田八洲満 45歳 全 ● 19 「信虎が人間的にまったく描けていない。」「子の信玄との間も、両方を体裁よくしようとしてか性格があいまいになっている。信虎・信玄とも個性が強いのだからこれでは困る。百姓の困苦も観念的な書き方だ。」 小久保均 42歳 全 ― 0   太田俊夫 59歳 全 ― 0     「委員会に出る前に、候補作を努力なしに片端から消してゆくと「そして誰もいなくなった」結果になった。こういうのを抱えて出席するのは寂しい。」

他の選考委員 大佛次郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 司馬遼太郎 川口松太郎 水上勉 村上元三 今日出海 柴田錬三郎

滝口康彦48歳×各選考委員　 『仲秋十五日』 短篇集5篇 341枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 ◎ 24 「文章がよく洗い出されて、整った結晶を見るように感ぜられるものでも――私は最後まで熱心にこの作者の一群の作品に授賞を主張したのだが――形が整い過ぎて、ある弱さがあるのを否定出来なかった。しかし、このひとは自分が固めて来た道を進むより他はないようである。」 源氏鶏太 60歳 全 ◎ 35 「この作家は、二十年間同じ傾向の作品しか書いていないという説があった。それは非難に類する言葉かとも思えたが、私は、だからこそ立派だといいたかった。」「どの作品にも情感が満ちていて、よくひねりが利いていた。立派なプロで通る。」 石坂洋次郎 72歳 全 ● 7 「支持者も多かったが、私には環境のせいで歪められた武士気質にどうしても溶けこめないものがあった。」 司馬遼太郎 49歳 全 ■ 16 「他の候補作にくらべて文章に気品があり、技倆も堅牢である。しかしこの作品が背負っている何物かが、目をおどろかすような新鮮さがないという致命的なことで難があった。」 川口松太郎 73歳 全 ○ 23 「これだけがやや纏った短篇で、武士の生活をよく描いている。」「ただ残念な事にこの短篇集に納めた他の作品が悉くつまらない。」「この人は今後よい作品を書く下地だけ持っているが、まだ小説を組み立てる構成を知らず、良い材料を掴みながら材料流れに終っている。」 水上勉 53歳 全 ◎ 36 「氏の簡素な文体は叙事の妙を得ており、こころにくいところがあった。すでに自分の世界、せまくてもこれを持つことは大したことではないか、と思ったりして、迷った末に授賞組にまわったのである。」 村上元三 62歳 全 ■ 26 「「仲秋十五日」に一票を入れるべきかどうか、銓衡会場でわたしの気持は二転三転した。」「これまで同じようなテーマの作品をいくつも読んで、正直なところ、いささか倦きた。」「直木賞というのには、最後にためらいが起り、反対票を入れた。」 今日出海 69歳 全 △ 6 「委員全体が最後まで討論した力作であるが、それだけの資格のある真面目な作品であることを附記して、今後の努力を期待する。」 柴田錬三郎 55歳 全 □ 35 「一頭地を抜いた秀作ならば、文句はないところであった。（引用者中略）多少過酷な云いかたをすれば、この作家は、将来、われわれを納得させるだけの仕事をするかどうか、疑問であった。将来に可能性の薄い作家を、つよく推薦する気にはなれなかった。」 松本清張 63歳 全 ● 15 「内容は氏のこれまでの域を出ていない。」「「忠義道徳」と人間性との間に潰れてゆく「個」が描けていない。描いたつもりで抽象的である。」「氏に「発見」を望みたい。」

他の候補作 藤沢周平 「黒い繩」 堀勇蔵 「去年、国道3号線で」 難波利三 「雑魚の棲む路地」 武田八洲満 『信虎』 小久保均 「折れた八月」 太田俊夫 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」

藤沢周平45歳×各選考委員　 「黒い繩」 短篇 107枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 ― 0   源氏鶏太 60歳 全 △ 7 「私の好きな作品であったが、また、この作者は、確実に腕を上げて来ているが、欲をいえばもっと新鮮味があって貰いたかった。」 石坂洋次郎 72歳 全 ● 4 「狙い所がはっきりせず、」 司馬遼太郎 49歳 全 ■ 16 「じつに達者な職業作家の作品で、その点では過不足はない。ただ厄介なことは、賞に値するためには作品に何物かがなければならないということである。」 川口松太郎 73歳 全 ― 0   水上勉 53歳 全 ― 0   村上元三 62歳 全 ● 7 「背広に丁髷を乗せたような作品で、会話にも現代語がやたらに出てくる。現代語がいけないというのではないが、不自然さを感じさせるところ、やはり作者の不用意であろう。」 今日出海 69歳 全 ― 0   柴田錬三郎 55歳 全 ― 0   松本清張 63歳 全 ● 10 「いわゆる好箇の短篇というべきだろうが、あまりに文章に凝りすぎてしんを弱くさせている。」「内容はこれまで他の作家によって書かれたものとあまり変ってなく、実体も弱い。山本周五郎氏の雰囲気に抵抗しなければ独自性は出ない。」

他の候補作 滝口康彦 『仲秋十五日』 堀勇蔵 「去年、国道3号線で」 難波利三 「雑魚の棲む路地」 武田八洲満 『信虎』 小久保均 「折れた八月」 太田俊夫 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」

堀勇蔵33歳×各選考委員　 「去年、国道3号線で」 短篇 96枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 ― 0   源氏鶏太 60歳 全 ― 0   石坂洋次郎 72歳 全 ● 5 「作者が題材にもっと責任を負うべき」 司馬遼太郎 49歳 全 ● 7 「ことさら深読みすれば、どちらもなにか豊潤なものをその才質に秘めておられる気配が感じられるが、しかし作品にそれが出るにいたっていない。」 川口松太郎 73歳 全 ― 0   水上勉 53歳 全 ― 0   村上元三 62歳 全 ● 3 「テレビ映画的な面白さが、途中まではあった。」 今日出海 69歳 全 ― 0   柴田錬三郎 55歳 全 ― 0   松本清張 63歳 全 ― 0	他の候補作 滝口康彦 『仲秋十五日』 藤沢周平 「黒い繩」 難波利三 「雑魚の棲む路地」 武田八洲満 『信虎』 小久保均 「折れた八月」 太田俊夫 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」

難波利三36歳×各選考委員　 「雑魚の棲む路地」 短篇 70枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 △ 26 「同じ作者が前に露店商人の生活を書いたのが、不思議と頭に残っていた。どちらも埃っぽく、野生の人間の体臭がムンムンしていた。」「しかし直木賞の作品の場合には、あるまとまりや、筋の輪郭の線が明瞭でないと、読者の注意が散漫となる。」 源氏鶏太 60歳 全 ― 0   石坂洋次郎 72歳 全 ● 6 「いまひと息レアリティーが不足だと思った。」 司馬遼太郎 49歳 全 ■ 16 「じつに達者な職業作家の作品で、その点では過不足はない。ただ厄介なことは、賞に値するためには作品に何物かがなければならないということである。」 川口松太郎 73歳 全 ― 0   水上勉 53歳 全 ■ 10 「この作家独自の世界で、好感がもてた。だが仕上りは前回「地虫」より落ちた、と思う。」「庶民の物哀しさはよく出ている。だが、もう一つ人物たちに類型の域を出ないところが気になる。」 村上元三 62歳 全 ■ 5 「前回の「地虫」よりも劣るが、達者だし、この人はこのまま職業作家としてやって行けるだろう。」 今日出海 69歳 全 ― 0   柴田錬三郎 55歳 全 ― 0   松本清張 63歳 全 ― 0

他の候補作 滝口康彦 『仲秋十五日』 藤沢周平 「黒い繩」 堀勇蔵 「去年、国道3号線で」 武田八洲満 『信虎』 小久保均 「折れた八月」 太田俊夫 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」

武田八洲満45歳×各選考委員　 『信虎』 長篇 482枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 ― 0   源氏鶏太 60歳 全 ■ 4 「案外不評であったのは、どうも力作に過ぎて読み辛いところに原因があったようだ。」 石坂洋次郎 72歳 全 ● 3 「長すぎると思った。」 司馬遼太郎 49歳 全 ● 8 「おそらくご自分の「何物」かを問うてみたくて書かれた作品であろう。しかし問うがための姿勢が前面に出て、技倆がうしろへひっこみ、ひどく貧困なものになった。」 川口松太郎 73歳 全 ― 0   水上勉 53歳 全 ― 0   村上元三 62歳 全 ● 6 「構成に難がある。それぞれ人間はよく描かれているが、途中、何べんも前へ戻って読み返さないと、人間関係が雑然としてわからず、読みにくかった。」 今日出海 69歳 全 ― 0   柴田錬三郎 55歳 全 ― 0   松本清張 63歳 全 ● 19 「信虎が人間的にまったく描けていない。」「子の信玄との間も、両方を体裁よくしようとしてか性格があいまいになっている。信虎・信玄とも個性が強いのだからこれでは困る。百姓の困苦も観念的な書き方だ。」

他の候補作 滝口康彦 『仲秋十五日』 藤沢周平 「黒い繩」 堀勇蔵 「去年、国道3号線で」 難波利三 「雑魚の棲む路地」 小久保均 「折れた八月」 太田俊夫 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」

小久保均42歳×各選考委員　 「折れた八月」 中篇 204枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 ― 0   源氏鶏太 60歳 全 ― 0   石坂洋次郎 72歳 全 ● 3 「軍隊生活を知らない私には興味うすく、」 司馬遼太郎 49歳 全 ● 6 「ことさら深読みすれば、どちらもなにか豊潤なものをその才質に秘めておられる気配が感じられるが、しかし作品にそれが出るにいたっていない。」 川口松太郎 73歳 全 ― 0   水上勉 53歳 全 ― 0   村上元三 62歳 全 ― 0   今日出海 69歳 全 ― 0   柴田錬三郎 55歳 全 ― 0   松本清張 63歳 全 ― 0	他の候補作 滝口康彦 『仲秋十五日』 藤沢周平 「黒い繩」 堀勇蔵 「去年、国道3号線で」 難波利三 「雑魚の棲む路地」 武田八洲満 『信虎』 太田俊夫 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」

太田俊夫59歳×各選考委員　 「暗雲」「大陸商人」「古塔」「閃光」 連作4篇 508枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 大佛次郎 75歳 全 ― 0   源氏鶏太 60歳 全 ○ 4 「八方破れに書いてあったのは、「暗雲」であった。その力量は買っていい。こういう分野での作品をもっと書いて貰いたい。」 石坂洋次郎 72歳 全 ● 8 「こういうものなりに、敲いて手ごたえのある筋金が欲しかった。」 司馬遼太郎 49歳 全 ■ 10 「一巻の絵物語をみるようにめまぐるしく場面が、それも絵画的に変ってゆく。泥くさい魅力があるが、残念なことにそれだけという感じもある。」 川口松太郎 73歳 全 ― 0   水上勉 53歳 全 ― 0   村上元三 62歳 全 ● 5 「材料が面白いのに、書いてある事柄が、一向に立体化されていない。文章のまずさも、致命的であった。」 今日出海 69歳 全 ― 0   柴田錬三郎 55歳 全 ― 0   松本清張 63歳 全 ― 0	他の候補作 滝口康彦 『仲秋十五日』 藤沢周平 「黒い繩」 堀勇蔵 「去年、国道3号線で」 難波利三 「雑魚の棲む路地」 武田八洲満 『信虎』 小久保均 「折れた八月」