第56回

第55回第57回

昭和41年/1966年下半期 昭和42年/1967年1月23日決定発表／『オール讀物』昭和42年/1967年4月号選評掲載

選考委員　 柴田錬三郎 49歳 松本清張 57歳 源氏鶏太 54歳 海音寺潮五郎 65歳 村上元三 56歳 今日出海 63歳 川口松太郎 67歳 水上勉 47歳 中山義秀 66歳 大佛次郎 69歳 選評総行数　 47 55 48 61 55 50 27 41 33   評 評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 五木寛之　「蒼ざめた馬を見よ」等 125枚 34歳 評 ◎ 30 ◎ 13 ◎ 14 ○ 34 ◎ 13 ◎ 24 ◎ 27 ◎ 26 ○ 8     田中阿里子　『闇の中の対話』 522枚 45歳 評 ― 0 ■ 5 ● 6 △ 4 ● 6 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5     津本陽　「丘の家」 97枚 37歳 評 ― 0 ■ 8 ■ 4 △ 7 ■ 4 ― 0 ― 0 ■ 5 ○ 11     河村健太郎　「大きな手」 52枚 38歳 評 ― 0 ― 0 ● 3 △ 4 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0     三好徹　『風塵地帯』 492枚 36歳 評 ○ 11 ■ 6 △ 10 △ 5 ■ 7 □ 11 ― 0 ■ 3 ● 3     早乙女貢　「鬼の骨」 117枚 41歳 評 ○ 11 ● 4 ■ 8 △ 13 ● 4 ― 0 ― 0 △ 3 ■ 6     陳舜臣　『炎に絵を』 484枚 42歳 評 ― 0 ■ 7 ■ 5 △ 13 ● 5 ■ 15 ― 0 ● 6 ● 1                 欠席 書面回答     欠席 棄権 年齢/枚数の説明   見方・注意点

柴田錬三郎49歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題新しい風　総行数47　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 30 「直木賞というものは、やはり、文壇に新しい風を送り込んで来る新人を登場させるのが目的である、と思う。その意味では、五木寛之は、最も、直木賞にふさわしい新人である。このような新人は、幾年に一人も現われるものではない。」 田中阿里子 45歳 全 ― 0   津本陽 37歳 全 ― 0   河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 ○ 11 「ストーリイのはこびかたは、堂に入ったものであり、読みはじめたら止められない面白さがある。」「ただ、フレッシュという点で、五木寛之に、一歩をゆずらなければならなかった。」 早乙女貢 41歳 全 ○ 11 「よく調べた材料をみごとにこなしているし、結末も鮮やかである。」「ただ、フレッシュという点で、五木寛之に、一歩をゆずらなければならなかった。」 陳舜臣 42歳 全 ― 0

他の選考委員 松本清張 源氏鶏太 海音寺潮五郎 村上元三 今日出海 川口松太郎 水上勉 中山義秀

松本清張57歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題喜びを共に　総行数55　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 13 「すでに、この作者の前期の候補作品や、その後に発表された作品などからみて実力十分で、何も云うことはない。」「この作者の新鮮さが今後の文壇に確実な地歩を築くことを疑わない。」 田中阿里子 45歳 全 ■ 5 「ほのぼのとした味はあっても何としても弱い。」 津本陽 37歳 全 ■ 8 「ママさんがかなり描けているのに、ほかの娼婦たちがかすんでいるのは、観察者になっている主人公の甘さのせいである。」 河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 ■ 6 「この作者のこれまでの一番の作品である。面白い。だが、もう少し構成と筆致に厚みを望みたい。」 早乙女貢 41歳 全 ● 4 「いい材料だが、料理の仕方を間違えていると思う。後半、話が割れているのは戒心すべし。」 陳舜臣 42歳 全 ■ 7 「日ごろの作者の実力を十分に出し切っていない。この人はもっとうまい作家で、ほかにいい作品が多い。」

他の選考委員 柴田錬三郎 源氏鶏太 海音寺潮五郎 村上元三 今日出海 川口松太郎 水上勉 中山義秀

源氏鶏太54歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題新鮮な五木氏　総行数48　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 14 「筋の面白さもさることながら、新鮮でかつ、パンチが利いている。」「直木賞は、久し振りで、会心の新人を得たという気がする。」 田中阿里子 45歳 全 ● 6 「どうして直木賞候補になったのかわからなかった。寧ろ、芥川賞候補にすべきでなかったろうか。この小説が人の心を打つとすれば、マイナスの面においてである。」 津本陽 37歳 全 ■ 4 「お菊さんという女主人公の異常さがよく描けているが、どこかパンチに欠けている。」 河村健太郎 38歳 全 ● 3 「小説というよりも、ちょっと気の利いた小品というにとどまっている。」 三好徹 36歳 全 △ 10 「面白さは無類なのだが、しかし、直木賞となれば多少の文学性がほしい。それに欠けていた。」 早乙女貢 41歳 全 ■ 8 「惜しいという声が多かった。私もこの作者の手腕十分と見た。しかし、文章が硬すぎる。下手というのではないが、もっと柔かくした方がいいのではないだろうか。」 陳舜臣 42歳 全 ■ 5 「この作者には他にもっといい作品がたくさんある筈との声があった。この作品についてだけいえば、構成に非常な無理が感じられた。」   「予選のとき満票を得たのは、「蒼ざめた馬を見よ」と「風塵地帯」であった。満票が二編もあるというのは珍しい。」

他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 海音寺潮五郎 村上元三 今日出海 川口松太郎 水上勉 中山義秀

海音寺潮五郎65歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題奇道により給うなかれ　総行数61　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ○ 34 「小説作法も手に入ったものであり、筆力も十分にあると思ったから、一票を投じた。」「不満がないわけではない。小説を作りもの視すぎているように感ぜられることだ。（引用者中略）この作品にドンデン返しがつづいているのは、小説つくりを造花つくりのように考えているようで、ぼくは気に入らないのである。」 田中阿里子 45歳 全 △ 4 「いずれも面白く読んだ。」 津本陽 37歳 全 △ 7 「いずれも面白く読んだ。」「お菊さんの描出（引用者中略）に感心した。」 河村健太郎 38歳 全 △ 4 「いずれも面白く読んだ。」 三好徹 36歳 全 △ 5 「いずれも面白く読んだ。」 早乙女貢 41歳 全 △ 13 「この事実を知らない人は信じかねよう。そこのダメおしが不足しているのである。史実を知っている者には食い足りない。」「これはもっと大きなロマンとなり得る話である。」 陳舜臣 42歳 全 △ 13 「いずれも面白く読んだ。」「陳舜臣君の文章の巧みさには、脱帽せざるを得ない。」

他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 源氏鶏太 村上元三 今日出海 川口松太郎 水上勉 中山義秀

村上元三56歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題実力ある新人を　総行数55　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 13 「面白かったし、久しぶりに満場一致で授賞と決った。」「適当にあまさもあるが、贋者のミハイロフスキイが隣の部屋にいるというあたりから、背負投を食わされたような読後感が残る。しかし、この作者のこれからに楽しみが持てる。」 田中阿里子 45歳 全 ● 6 「登場するのがどれも不愉快な男女ばかりで、人間関係も狭すぎる。」 津本陽 37歳 全 ■ 4 「お菊という女がもっと描けていれば面白いのに、わたしという人間が無性格なので損をしている。」 河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 ■ 7 「日本のスパイ小説の中でも、これはいい作品なのであろうが、やはり全体にわたっての伏線の張り方が脆いし、読み終ってからずいぶん無理を感ずる。」 早乙女貢 41歳 全 ● 4 「せっかく辻村庫太の事件を材料にしながら、モヨという女の話に幅をとりすぎて、分裂している。」 陳舜臣 42歳 全 ● 5 「この人にはもっといい短篇があるのに、この作品は骨組が弱くて、最後の謎解きになってから失望する。」   「直木賞の場合、続けて二回、三回と候補になってから決定作品が登場する、という出かたをしてくれたほうが、銓衡をするほうも安心出来る。」

他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 源氏鶏太 海音寺潮五郎 今日出海 川口松太郎 水上勉 中山義秀

今日出海63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選考所感　総行数50　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 24 「氏の作品が俎上にのぼると誰の反対論もなく、満場一致で、「蒼ざめた馬を見よ」を授賞作品と決定した。」「確かに戦後派のドライな想像力とテンポは氏の特色だろうが、才筆に任せて乱作をしなければ、もっと伸びて、愈々特異の境地を開拓する人だろう。」 田中阿里子 45歳 全 ― 0   津本陽 37歳 全 ― 0   河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 □ 11 「その質量ともに力作の名に恥じない。」「しかし、フレミングにしても解決のたわいなさ、つくりごとが目立つように、三好氏の解決も呆気ない。」 早乙女貢 41歳 全 ― 0   陳舜臣 42歳 全 ■ 15 「力作の割に感銘が薄かった。氏の筆力からいえば、もっと立派な作品が既にあったし、これからも出来る人だ。」	他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 源氏鶏太 海音寺潮五郎 村上元三 川口松太郎 水上勉 中山義秀

川口松太郎67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題線の太さ　総行数27　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 27 「その筆力はなみなみならぬ才能であり、実人生の苦労を積んだ人に思え、直木賞作家らしい線の太さが感じられてたのもしい。」 田中阿里子 45歳 全 ― 0   津本陽 37歳 全 ― 0   河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 ― 0   早乙女貢 41歳 全 ― 0   陳舜臣 42歳 全 ― 0     「風邪で委員会へ出席する事が出来ず、（引用者中略）欠席して書類推薦をすると、落ちる例が多いので気にしていたが、今回は希望通りで嬉しかった。」	他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 源氏鶏太 海音寺潮五郎 村上元三 今日出海 水上勉 中山義秀

水上勉47歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題沈潜した秀作を　総行数41　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ◎ 26 「私も氏の受賞は当然と思う。しかし、もう一つの候補作「ＧＩブルース」は感心しなかった。」「たしかに、心を打つかということになると、いささかの不満は私にもあった。」「しかし、この作家はもはや脂ののり切った感じである。」 田中阿里子 45歳 全 ― 0   津本陽 37歳 全 ■ 5 「なるほど心をうつところがあるにしても、いささかつっこみが足りないし、主人公もいい子になっている。」 河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 ■ 3 「的確な描写でおもしろくよんだが、後半で失望した。」 早乙女貢 41歳 全 △ 3 「構成に難があったが、事件としてはおもしろく、」 陳舜臣 42歳 全 ● 6 「私にはところどころ説明不足のようなのが気になった。話が都合よく出来すぎているせいだろうか。」

他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 源氏鶏太 海音寺潮五郎 村上元三 今日出海 川口松太郎 中山義秀

中山義秀66歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題妄評　総行数33　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 五木寛之 34歳 全 ○ 8 「面白かった。五彩の花火を観るようで、消えた後残るものはない。きらびやかな才能は、人を眩惑させるが、底浅いはかなさに魅力のあるうちが花である。」 田中阿里子 45歳 全 ● 5 「達者な筆致だが、題名どおりいかにも暗く、読むに骨がおれ楽しくなかった。こういう作者の態度に、私は疑問をもつ。」 津本陽 37歳 全 ○ 11 「これだけに私は、文学性のある一種の流露感をくみとった。不自然な作為を、ことさらに強調していないのがよい。」「その将来の探求と発展に私は期待をよせている。」 河村健太郎 38歳 全 ― 0   三好徹 36歳 全 ● 3 「虚構の手ぎわが、かえって弱点となっている感じだ。」 早乙女貢 41歳 全 ■ 6 「私は何かいたらぬ、惜しいものを感じた。」「作品のモチーフが分裂、低迷していて、効果を減殺している。」 陳舜臣 42歳 全 ● 1 「趣向にすぎ、」

他の選考委員 柴田錬三郎 松本清張 源氏鶏太 海音寺潮五郎 村上元三 今日出海 川口松太郎 水上勉

五木寛之34歳×各選考委員　 「蒼ざめた馬を見よ」等 中篇 125枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ◎ 30 「直木賞というものは、やはり、文壇に新しい風を送り込んで来る新人を登場させるのが目的である、と思う。その意味では、五木寛之は、最も、直木賞にふさわしい新人である。このような新人は、幾年に一人も現われるものではない。」 松本清張 57歳 全 ◎ 13 「すでに、この作者の前期の候補作品や、その後に発表された作品などからみて実力十分で、何も云うことはない。」「この作者の新鮮さが今後の文壇に確実な地歩を築くことを疑わない。」 源氏鶏太 54歳 全 ◎ 14 「筋の面白さもさることながら、新鮮でかつ、パンチが利いている。」「直木賞は、久し振りで、会心の新人を得たという気がする。」 海音寺潮五郎 65歳 全 ○ 34 「小説作法も手に入ったものであり、筆力も十分にあると思ったから、一票を投じた。」「不満がないわけではない。小説を作りもの視すぎているように感ぜられることだ。（引用者中略）この作品にドンデン返しがつづいているのは、小説つくりを造花つくりのように考えているようで、ぼくは気に入らないのである。」 村上元三 56歳 全 ◎ 13 「面白かったし、久しぶりに満場一致で授賞と決った。」「適当にあまさもあるが、贋者のミハイロフスキイが隣の部屋にいるというあたりから、背負投を食わされたような読後感が残る。しかし、この作者のこれからに楽しみが持てる。」 今日出海 63歳 全 ◎ 24 「氏の作品が俎上にのぼると誰の反対論もなく、満場一致で、「蒼ざめた馬を見よ」を授賞作品と決定した。」「確かに戦後派のドライな想像力とテンポは氏の特色だろうが、才筆に任せて乱作をしなければ、もっと伸びて、愈々特異の境地を開拓する人だろう。」 川口松太郎 67歳 全 ◎ 27 「その筆力はなみなみならぬ才能であり、実人生の苦労を積んだ人に思え、直木賞作家らしい線の太さが感じられてたのもしい。」 水上勉 47歳 全 ◎ 26 「私も氏の受賞は当然と思う。しかし、もう一つの候補作「ＧＩブルース」は感心しなかった。」「たしかに、心を打つかということになると、いささかの不満は私にもあった。」「しかし、この作家はもはや脂ののり切った感じである。」 中山義秀 66歳 全 ○ 8 「面白かった。五彩の花火を観るようで、消えた後残るものはない。きらびやかな才能は、人を眩惑させるが、底浅いはかなさに魅力のあるうちが花である。」

他の候補作 田中阿里子 『闇の中の対話』 津本陽 「丘の家」 河村健太郎 「大きな手」 三好徹 『風塵地帯』 早乙女貢 「鬼の骨」 陳舜臣 『炎に絵を』

田中阿里子45歳×各選考委員　 『闇の中の対話』 長篇 522枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ― 0   松本清張 57歳 全 ■ 5 「ほのぼのとした味はあっても何としても弱い。」 源氏鶏太 54歳 全 ● 6 「どうして直木賞候補になったのかわからなかった。寧ろ、芥川賞候補にすべきでなかったろうか。この小説が人の心を打つとすれば、マイナスの面においてである。」 海音寺潮五郎 65歳 全 △ 4 「いずれも面白く読んだ。」 村上元三 56歳 全 ● 6 「登場するのがどれも不愉快な男女ばかりで、人間関係も狭すぎる。」 今日出海 63歳 全 ― 0   川口松太郎 67歳 全 ― 0   水上勉 47歳 全 ― 0   中山義秀 66歳 全 ● 5 「達者な筆致だが、題名どおりいかにも暗く、読むに骨がおれ楽しくなかった。こういう作者の態度に、私は疑問をもつ。」	他の候補作 五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」等 津本陽 「丘の家」 河村健太郎 「大きな手」 三好徹 『風塵地帯』 早乙女貢 「鬼の骨」 陳舜臣 『炎に絵を』

津本陽37歳×各選考委員　 「丘の家」 短篇 97枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ― 0   松本清張 57歳 全 ■ 8 「ママさんがかなり描けているのに、ほかの娼婦たちがかすんでいるのは、観察者になっている主人公の甘さのせいである。」 源氏鶏太 54歳 全 ■ 4 「お菊さんという女主人公の異常さがよく描けているが、どこかパンチに欠けている。」 海音寺潮五郎 65歳 全 △ 7 「いずれも面白く読んだ。」「お菊さんの描出（引用者中略）に感心した。」 村上元三 56歳 全 ■ 4 「お菊という女がもっと描けていれば面白いのに、わたしという人間が無性格なので損をしている。」 今日出海 63歳 全 ― 0   川口松太郎 67歳 全 ― 0   水上勉 47歳 全 ■ 5 「なるほど心をうつところがあるにしても、いささかつっこみが足りないし、主人公もいい子になっている。」 中山義秀 66歳 全 ○ 11 「これだけに私は、文学性のある一種の流露感をくみとった。不自然な作為を、ことさらに強調していないのがよい。」「その将来の探求と発展に私は期待をよせている。」

他の候補作 五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」等 田中阿里子 『闇の中の対話』 河村健太郎 「大きな手」 三好徹 『風塵地帯』 早乙女貢 「鬼の骨」 陳舜臣 『炎に絵を』

河村健太郎38歳×各選考委員　 「大きな手」 短篇 52枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ― 0   松本清張 57歳 全 ― 0   源氏鶏太 54歳 全 ● 3 「小説というよりも、ちょっと気の利いた小品というにとどまっている。」 海音寺潮五郎 65歳 全 △ 4 「いずれも面白く読んだ。」 村上元三 56歳 全 ― 0   今日出海 63歳 全 ― 0   川口松太郎 67歳 全 ― 0   水上勉 47歳 全 ― 0   中山義秀 66歳 全 ― 0	他の候補作 五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」等 田中阿里子 『闇の中の対話』 津本陽 「丘の家」 三好徹 『風塵地帯』 早乙女貢 「鬼の骨」 陳舜臣 『炎に絵を』

三好徹36歳×各選考委員　 『風塵地帯』 長篇 492枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ○ 11 「ストーリイのはこびかたは、堂に入ったものであり、読みはじめたら止められない面白さがある。」「ただ、フレッシュという点で、五木寛之に、一歩をゆずらなければならなかった。」 松本清張 57歳 全 ■ 6 「この作者のこれまでの一番の作品である。面白い。だが、もう少し構成と筆致に厚みを望みたい。」 源氏鶏太 54歳 全 △ 10 「面白さは無類なのだが、しかし、直木賞となれば多少の文学性がほしい。それに欠けていた。」 海音寺潮五郎 65歳 全 △ 5 「いずれも面白く読んだ。」 村上元三 56歳 全 ■ 7 「日本のスパイ小説の中でも、これはいい作品なのであろうが、やはり全体にわたっての伏線の張り方が脆いし、読み終ってからずいぶん無理を感ずる。」 今日出海 63歳 全 □ 11 「その質量ともに力作の名に恥じない。」「しかし、フレミングにしても解決のたわいなさ、つくりごとが目立つように、三好氏の解決も呆気ない。」 川口松太郎 67歳 全 ― 0   水上勉 47歳 全 ■ 3 「的確な描写でおもしろくよんだが、後半で失望した。」 中山義秀 66歳 全 ● 3 「虚構の手ぎわが、かえって弱点となっている感じだ。」

他の候補作 五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」等 田中阿里子 『闇の中の対話』 津本陽 「丘の家」 河村健太郎 「大きな手」 早乙女貢 「鬼の骨」 陳舜臣 『炎に絵を』

早乙女貢41歳×各選考委員　 「鬼の骨」 短篇 117枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ○ 11 「よく調べた材料をみごとにこなしているし、結末も鮮やかである。」「ただ、フレッシュという点で、五木寛之に、一歩をゆずらなければならなかった。」 松本清張 57歳 全 ● 4 「いい材料だが、料理の仕方を間違えていると思う。後半、話が割れているのは戒心すべし。」 源氏鶏太 54歳 全 ■ 8 「惜しいという声が多かった。私もこの作者の手腕十分と見た。しかし、文章が硬すぎる。下手というのではないが、もっと柔かくした方がいいのではないだろうか。」 海音寺潮五郎 65歳 全 △ 13 「この事実を知らない人は信じかねよう。そこのダメおしが不足しているのである。史実を知っている者には食い足りない。」「これはもっと大きなロマンとなり得る話である。」 村上元三 56歳 全 ● 4 「せっかく辻村庫太の事件を材料にしながら、モヨという女の話に幅をとりすぎて、分裂している。」 今日出海 63歳 全 ― 0   川口松太郎 67歳 全 ― 0   水上勉 47歳 全 △ 3 「構成に難があったが、事件としてはおもしろく、」 中山義秀 66歳 全 ■ 6 「私は何かいたらぬ、惜しいものを感じた。」「作品のモチーフが分裂、低迷していて、効果を減殺している。」

他の候補作 五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」等 田中阿里子 『闇の中の対話』 津本陽 「丘の家」 河村健太郎 「大きな手」 三好徹 『風塵地帯』 陳舜臣 『炎に絵を』

陳舜臣42歳×各選考委員　 『炎に絵を』 長篇 484枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 柴田錬三郎 49歳 全 ― 0   松本清張 57歳 全 ■ 7 「日ごろの作者の実力を十分に出し切っていない。この人はもっとうまい作家で、ほかにいい作品が多い。」 源氏鶏太 54歳 全 ■ 5 「この作者には他にもっといい作品がたくさんある筈との声があった。この作品についてだけいえば、構成に非常な無理が感じられた。」 海音寺潮五郎 65歳 全 △ 13 「いずれも面白く読んだ。」「陳舜臣君の文章の巧みさには、脱帽せざるを得ない。」 村上元三 56歳 全 ● 5 「この人にはもっといい短篇があるのに、この作品は骨組が弱くて、最後の謎解きになってから失望する。」 今日出海 63歳 全 ■ 15 「力作の割に感銘が薄かった。氏の筆力からいえば、もっと立派な作品が既にあったし、これからも出来る人だ。」 川口松太郎 67歳 全 ― 0   水上勉 47歳 全 ● 6 「私にはところどころ説明不足のようなのが気になった。話が都合よく出来すぎているせいだろうか。」 中山義秀 66歳 全 ● 1 「趣向にすぎ、」

他の候補作 五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」等 田中阿里子 『闇の中の対話』 津本陽 「丘の家」 河村健太郎 「大きな手」 三好徹 『風塵地帯』 早乙女貢 「鬼の骨」