第48回

第47回第49回

昭和37年/1962年下半期 昭和38年/1963年1月22日決定発表／『オール讀物』昭和38年/1963年4月号選評掲載

選考委員　 源氏鶏太 50歳 川口松太郎 63歳 村上元三 52歳 木々高太郎 65歳 今日出海 59歳 小島政二郎 68歳 海音寺潮五郎 61歳 大佛次郎 65歳 松本清張 53歳 中山義秀 62歳 選評総行数　 53 33 60 48 59 54 58 42 60   評 評 評 評 評 評 評 評 評 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 山口瞳　「江分利満氏の優雅な生活」 346枚 36歳 評 ○ 10 ■ 11 ○ 10 ■ 8 ◎ 32 ● 6 ○ 21 △ 9 ◎ 13     杉本苑子　『孤愁の岸』 835枚 37歳 評 ◎ 13 ◎ 11 ◎ 11 ◎ 15 ○ 18 ○ 18 ◎ 19 ○ 17 △ 15     稲垣一城　「花の御所」 78枚 50歳 評 ● 4 ● 5 ■ 6 ― 0 ― 0 ● 3 ● 9 ■ 10 ■ 7     笹沢左保　「六本木心中」 91枚 32歳 評 ○ 9 ● 4 ● 8 ― 0 ― 0 ● 6 ― 0 ― 0 ◎ 17     邦光史郎　『社外極秘』 670枚 40歳 評 ● 5 ― 0 ■ 7 △ 3 ― 0 ● 3 △ 9 ― 0 ― 0     高原弘吉　「あるスカウトの死」 153枚 47歳 評 ● 3 ― 0 △ 5 ■ 15 ― 0 ● 3 ― 0 ― 0 ● 4     小橋博　「火と土と水の暦」 478枚 40歳 評 □ 8 ― 0 ● 6 △ 4 ― 0 ■ 13 ― 0 ― 0 ― 0     前田とみ子　「連」 100枚 36歳 評 ● 3 ― 0 ● 7 ― 0 ― 0 ■ 5 ― 0 ◎ 6 ● 4                     欠席 書面提出 欠席 不参加 年齢/枚数の説明   見方・注意点

源氏鶏太50歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題堂々たる「孤愁の岸」　総行数53　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ○ 10 「新鮮さを感じた。」「私は、小説というよりも、気の利いた随筆として読んだ。こういう才能が、今後どのように展開していくか興味がある。」 杉本苑子 37歳 全 ◎ 13 「こんどはこれだな、と思った。堂々たる労作であり、個々の人物の描き方も優れている。」「今後、省略ということを頭に入れて書いたら、印象が更に鮮やかになりそうに思った。」 稲垣一城 50歳 全 ● 4 「一通りの面白さはあるが、それを突き抜けるモノの不足を感じ、」 笹沢左保 32歳 全 ○ 9 「私は、高点をつけた。格調の高い好短篇になっていると思ったからである。が、笹沢氏は、あまりにも有名になり過ぎていて、それで損をしたようなところもないでなかったようだ。」 邦光史郎 40歳 全 ● 5 「はじめからフィクションと断わってはあるが、それにこだわらずにはいられぬ行き過ぎが感じられた。」 高原弘吉 47歳 全 ● 3 「推理に飛躍があると思った。」 小橋博 40歳 全 □ 8 「ある感動を以て読了した。」「が、しかし、といいたいものが残った。この、しかし、とは、類型がありそうな気がしたからではなかろうか。」 前田とみ子 36歳 全 ● 3 「観念的であり過ぎる気がした」

他の選考委員 川口松太郎 村上元三 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 松本清張

川口松太郎63歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題本格的歴史小説　総行数33　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ■ 11 「支持者は多かったが私は棄権した。小説の本道から外れた作品だが、外れていても委員諸氏を引きずる新鮮さはあった。」 杉本苑子 37歳 全 ◎ 11 「委員全部が賛成し私も感動した。」「しいていえばやや重い。大衆小説としての楽しさがあってもいい。」 稲垣一城 50歳 全 ● 5 「史実に詳しい欠点が前へ出て調べの面白さが先に立ち作者の目が不足して痩せた作品になった。」 笹沢左保 32歳 全 ● 4 「既に流行人気作家なのだから、最も悪い作品が候補に上ったのではないかと思う。」 邦光史郎 40歳 全 ― 0   高原弘吉 47歳 全 ― 0   小橋博 40歳 全 ― 0   前田とみ子 36歳 全 ― 0	他の選考委員 源氏鶏太 村上元三 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 松本清張

村上元三52歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題久しぶりに時代小説　総行数60　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ○ 10 「家庭向きの品のいい連載漫画のような感じだ、とわたしは選考会の席上で言ったが、悪口ではない。こういう風変りな作品が出たことは喜ぶべきだろう」 杉本苑子 37歳 全 ◎ 11 「何とも書きにくい宝暦治水記という材料を、よくここまで書き込んだ点に、まず感心をした。」「久しぶりに時代小説で受賞者が出たのは、嬉しい。」 稲垣一城 50歳 全 ■ 6 「いささか考証に淫した傾きがある。部分々々は面白いが、もっと新鮮なねらいがほしかった。」 笹沢左保 32歳 全 ● 8 「肝腎の六本木界隈の雰囲気（それも、これの発表当時と現在とではだいぶ違う）がよく出ていないし、（引用者中略）それほど感心はしなかった。」 邦光史郎 40歳 全 ■ 7 「いかにも構成が脆い。この人も、自分の知っている材料を隅から隅まで書きたがる悪い癖を持っている。」 高原弘吉 47歳 全 △ 5 「推理小説としては小味な面白さがあるが、これはこれだけのもので、次作を読まなければ何ともいえない。」 小橋博 40歳 全 ● 6 「むきになりすぎて焦点がぼやけている。」 前田とみ子 36歳 全 ● 7 「一人称ではなく、普通の文章で書いてあったほうが、もっと自力がうかがわれたであろう。」

他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 松本清張

木々高太郎65歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題私は一本だった　総行数48　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ■ 8 「私としてはとらなかったが、然し、変った書き方であり、内容もユーモアにとんだよいものであることは認める。」 杉本苑子 37歳 全 ◎ 15 「このむずかしいテーマをよくあれだけはりつめて完了したものだと感心した」「あとから吉川英治の記念にもなると思い、何か油然たる暖いものが心のうちに感じられた。」 稲垣一城 50歳 全 ― 0   笹沢左保 32歳 全 ― 0   邦光史郎 40歳 全 △ 3 「よく調べてあるのに好感を持った。」 高原弘吉 47歳 全 ■ 15 「内容が新時代のスカウトの問題だけで、人間の悩みに対する深味がない。」 小橋博 40歳 全 △ 4 「よく調べてあるのに好感を持った。」 前田とみ子 36歳 全 ― 0	他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 村上元三 今日出海 小島政二郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 松本清張

今日出海59歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題二つの相反する作品　総行数59　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ◎ 32 「既成のオルソドックスという概念を叩き壊してやろうといった野心作である。」「私が面白く思って読んだのは、少し大袈裟に言うとこの作品は小説家の想像力に貫かれているとさえ思ったところにある。」 杉本苑子 37歳 全 ○ 18 「構成もしっかりしているし、筆力もある。」「だが何といっても地味な作品であり、材料そのものが地味で、暗いのだ。」「作家としての力倆は充分で、この暗鬱な材料に取り組んで、どんなに調べ、またどんなに書くのに苦労したか、よくわかる作品である。」 稲垣一城 50歳 全 ― 0   笹沢左保 32歳 全 ― 0   邦光史郎 40歳 全 ― 0   高原弘吉 47歳 全 ― 0   小橋博 40歳 全 ― 0   前田とみ子 36歳 全 ― 0	他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 村上元三 木々高太郎 小島政二郎 海音寺潮五郎 大佛次郎 松本清張

小島政二郎68歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題心がはずむ　総行数54　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ● 6 「不幸にして私はこの長い長い読物から小説的興味を読み取ることが出来なかった。」 杉本苑子 37歳 全 ○ 18 「私はこれに一番感心した。まずい題だが――」「文章もいいし、描写力もあるし、ほかの七篇に退屈していた心がはずんで来た。」 稲垣一城 50歳 全 ● 3 「どこにも作者の燃焼が感じられず、ひどく退屈だった。」 笹沢左保 32歳 全 ● 6 「主人公と少女千景との出合いまで（引用者注：が面白く、後半には文学を感じなかった）」 邦光史郎 40歳 全 ● 3 「私には興味索然たるものだった。」 高原弘吉 47歳 全 ● 3 「前半は面白かったが、後半には文学を感じなかった。」 小橋博 40歳 全 ■ 13 「最後になるに従って、加速度的に人物描写が粗雑になったのは残念だ。」「こう話を広げずに、定次の精神発展史に絞ったらどうだったろう。」 前田とみ子 36歳 全 ■ 5 「上方弁で語られている形式が面白かった。が、内容は平凡な女の心理の叙述に終っている。」

他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 村上元三 木々高太郎 今日出海 海音寺潮五郎 大佛次郎 松本清張

海音寺潮五郎61歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題蝉脱を　総行数58　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ○ 21 「この作者は新鮮でよいものを持っているから、これからの日本の小説に新しいものを付加するだろうと思った」「単行本にするにあたって、整理して、順序をかえたり、削ったり、新しく書き足したりして、曲折と山をもったものにしたらなおよかったろうと思う。」 杉本苑子 37歳 全 ◎ 19 「暗いおもしろくない材料であり、資料としてもまとまっているのは上巻しかないはずだが、それをここまで書き上げた手腕は立派に賞に値する。欠点があるとすれば、あまりにも吉川英治すぎるところであろう。」 稲垣一城 50歳 全 ● 9 「説明に費された部分が多く、かんじんの話が少なすぎるのが欠点である。」 笹沢左保 32歳 全 ― 0   邦光史郎 40歳 全 △ 9 「大へんおもしろく読んだ。しかし、人物の書きわけがあざやかに行っていないので、時々前をめくってどの人物であるかをたしかめなければならなかった。」 高原弘吉 47歳 全 ― 0   小橋博 40歳 全 ― 0   前田とみ子 36歳 全 ― 0

他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 村上元三 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 大佛次郎 松本清張

大佛次郎65歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題おかめ八目　総行数42　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 △ 9 「もっと、すっきりとした形に、贅肉を落すことが出来る。」「哀しみが出る為には、すこし痩せた方が効果がある。」 杉本苑子 37歳 全 ○ 17 「その努力に深く敬意を表する。」「やはり、この話は材料からして暗い。（引用者中略）この暗さが黒い光となって人を動かすまで昂められるのには、もう一歩と言うところではないか？」 稲垣一城 50歳 全 ■ 10 「このひとの作品は、こくがあり、光沢がある。」「辞典や調査の煩わしい仕事をすこしお休みなさい。」 笹沢左保 32歳 全 ― 0   邦光史郎 40歳 全 ― 0   高原弘吉 47歳 全 ― 0   小橋博 40歳 全 ― 0   前田とみ子 36歳 全 ◎ 6 「私は好きで良い作品と見たが賛成がすくなかった。」「続く作品に期待する。」	他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 村上元三 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 海音寺潮五郎 松本清張

松本清張53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題文体の清新さ　総行数60　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 山口瞳 36歳 全 ◎ 13 「氏の文体の清新さと着想の独得さを評価したい。」「ただこの作品は、小説とは呼べないところに難点があるが、この資性は相当な構成力を持っていると思う。」 杉本苑子 37歳 全 △ 15 「よく調べてある歴史小説だが、新人としてもう少し文体の清新さを期待したかった。」「重量的な長篇作家として特色を出すのも結構だが、短篇にもまた巧みなところを見せて欲しい。」 稲垣一城 50歳 全 ■ 7 「侍女たちが敵兵の首を化粧するくだりは、谷崎潤一郎氏の「武州公秘話」にもっと官能的な描写があるので損をしている。」 笹沢左保 32歳 全 ◎ 17 「氏の作品の中で最優秀とは云えないが、最近の氏の活動は職業作家として将来性ある才能を感じさせるに十分である。」「いうまでもなく笹沢氏はすでに流行作家だが、だからといって、受賞対象から外す理由はないように思う。」 邦光史郎 40歳 全 ― 0   高原弘吉 47歳 全 ● 4 「以前にこの作品の選をしたことがあるが、結末に重大な欠陥がある。」 小橋博 40歳 全 ― 0   前田とみ子 36歳 全 ● 4 「今まで出来上った型があるので、思いきり観点の転換が必要であろう。」   「所用で旅行したため、書面回答になった」

他の選考委員 源氏鶏太 川口松太郎 村上元三 木々高太郎 今日出海 小島政二郎 海音寺潮五郎 大佛次郎

山口瞳36歳×各選考委員　 「江分利満氏の優雅な生活」 連作11篇 346枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ○ 10 「新鮮さを感じた。」「私は、小説というよりも、気の利いた随筆として読んだ。こういう才能が、今後どのように展開していくか興味がある。」 川口松太郎 63歳 全 ■ 11 「支持者は多かったが私は棄権した。小説の本道から外れた作品だが、外れていても委員諸氏を引きずる新鮮さはあった。」 村上元三 52歳 全 ○ 10 「家庭向きの品のいい連載漫画のような感じだ、とわたしは選考会の席上で言ったが、悪口ではない。こういう風変りな作品が出たことは喜ぶべきだろう」 木々高太郎 65歳 全 ■ 8 「私としてはとらなかったが、然し、変った書き方であり、内容もユーモアにとんだよいものであることは認める。」 今日出海 59歳 全 ◎ 32 「既成のオルソドックスという概念を叩き壊してやろうといった野心作である。」「私が面白く思って読んだのは、少し大袈裟に言うとこの作品は小説家の想像力に貫かれているとさえ思ったところにある。」 小島政二郎 68歳 全 ● 6 「不幸にして私はこの長い長い読物から小説的興味を読み取ることが出来なかった。」 海音寺潮五郎 61歳 全 ○ 21 「この作者は新鮮でよいものを持っているから、これからの日本の小説に新しいものを付加するだろうと思った」「単行本にするにあたって、整理して、順序をかえたり、削ったり、新しく書き足したりして、曲折と山をもったものにしたらなおよかったろうと思う。」 大佛次郎 65歳 全 △ 9 「もっと、すっきりとした形に、贅肉を落すことが出来る。」「哀しみが出る為には、すこし痩せた方が効果がある。」 松本清張 53歳 全 ◎ 13 「氏の文体の清新さと着想の独得さを評価したい。」「ただこの作品は、小説とは呼べないところに難点があるが、この資性は相当な構成力を持っていると思う。」

他の候補作 杉本苑子 『孤愁の岸』 稲垣一城 「花の御所」 笹沢左保 「六本木心中」 邦光史郎 『社外極秘』 高原弘吉 「あるスカウトの死」 小橋博 「火と土と水の暦」 前田とみ子 「連」

杉本苑子37歳×各選考委員　 『孤愁の岸』 長篇 835枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ◎ 13 「こんどはこれだな、と思った。堂々たる労作であり、個々の人物の描き方も優れている。」「今後、省略ということを頭に入れて書いたら、印象が更に鮮やかになりそうに思った。」 川口松太郎 63歳 全 ◎ 11 「委員全部が賛成し私も感動した。」「しいていえばやや重い。大衆小説としての楽しさがあってもいい。」 村上元三 52歳 全 ◎ 11 「何とも書きにくい宝暦治水記という材料を、よくここまで書き込んだ点に、まず感心をした。」「久しぶりに時代小説で受賞者が出たのは、嬉しい。」 木々高太郎 65歳 全 ◎ 15 「このむずかしいテーマをよくあれだけはりつめて完了したものだと感心した」「あとから吉川英治の記念にもなると思い、何か油然たる暖いものが心のうちに感じられた。」 今日出海 59歳 全 ○ 18 「構成もしっかりしているし、筆力もある。」「だが何といっても地味な作品であり、材料そのものが地味で、暗いのだ。」「作家としての力倆は充分で、この暗鬱な材料に取り組んで、どんなに調べ、またどんなに書くのに苦労したか、よくわかる作品である。」 小島政二郎 68歳 全 ○ 18 「私はこれに一番感心した。まずい題だが――」「文章もいいし、描写力もあるし、ほかの七篇に退屈していた心がはずんで来た。」 海音寺潮五郎 61歳 全 ◎ 19 「暗いおもしろくない材料であり、資料としてもまとまっているのは上巻しかないはずだが、それをここまで書き上げた手腕は立派に賞に値する。欠点があるとすれば、あまりにも吉川英治すぎるところであろう。」 大佛次郎 65歳 全 ○ 17 「その努力に深く敬意を表する。」「やはり、この話は材料からして暗い。（引用者中略）この暗さが黒い光となって人を動かすまで昂められるのには、もう一歩と言うところではないか？」 松本清張 53歳 全 △ 15 「よく調べてある歴史小説だが、新人としてもう少し文体の清新さを期待したかった。」「重量的な長篇作家として特色を出すのも結構だが、短篇にもまた巧みなところを見せて欲しい。」

他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 稲垣一城 「花の御所」 笹沢左保 「六本木心中」 邦光史郎 『社外極秘』 高原弘吉 「あるスカウトの死」 小橋博 「火と土と水の暦」 前田とみ子 「連」

稲垣一城50歳×各選考委員　 「花の御所」 短篇 78枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ● 4 「一通りの面白さはあるが、それを突き抜けるモノの不足を感じ、」 川口松太郎 63歳 全 ● 5 「史実に詳しい欠点が前へ出て調べの面白さが先に立ち作者の目が不足して痩せた作品になった。」 村上元三 52歳 全 ■ 6 「いささか考証に淫した傾きがある。部分々々は面白いが、もっと新鮮なねらいがほしかった。」 木々高太郎 65歳 全 ― 0   今日出海 59歳 全 ― 0   小島政二郎 68歳 全 ● 3 「どこにも作者の燃焼が感じられず、ひどく退屈だった。」 海音寺潮五郎 61歳 全 ● 9 「説明に費された部分が多く、かんじんの話が少なすぎるのが欠点である。」 大佛次郎 65歳 全 ■ 10 「このひとの作品は、こくがあり、光沢がある。」「辞典や調査の煩わしい仕事をすこしお休みなさい。」 松本清張 53歳 全 ■ 7 「侍女たちが敵兵の首を化粧するくだりは、谷崎潤一郎氏の「武州公秘話」にもっと官能的な描写があるので損をしている。」

他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 杉本苑子 『孤愁の岸』 笹沢左保 「六本木心中」 邦光史郎 『社外極秘』 高原弘吉 「あるスカウトの死」 小橋博 「火と土と水の暦」 前田とみ子 「連」

笹沢左保32歳×各選考委員　 「六本木心中」 短篇 91枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ○ 9 「私は、高点をつけた。格調の高い好短篇になっていると思ったからである。が、笹沢氏は、あまりにも有名になり過ぎていて、それで損をしたようなところもないでなかったようだ。」 川口松太郎 63歳 全 ● 4 「既に流行人気作家なのだから、最も悪い作品が候補に上ったのではないかと思う。」 村上元三 52歳 全 ● 8 「肝腎の六本木界隈の雰囲気（それも、これの発表当時と現在とではだいぶ違う）がよく出ていないし、（引用者中略）それほど感心はしなかった。」 木々高太郎 65歳 全 ― 0   今日出海 59歳 全 ― 0   小島政二郎 68歳 全 ● 6 「主人公と少女千景との出合いまで（引用者注：が面白く、後半には文学を感じなかった）」 海音寺潮五郎 61歳 全 ― 0   大佛次郎 65歳 全 ― 0   松本清張 53歳 全 ◎ 17 「氏の作品の中で最優秀とは云えないが、最近の氏の活動は職業作家として将来性ある才能を感じさせるに十分である。」「いうまでもなく笹沢氏はすでに流行作家だが、だからといって、受賞対象から外す理由はないように思う。」

他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 杉本苑子 『孤愁の岸』 稲垣一城 「花の御所」 邦光史郎 『社外極秘』 高原弘吉 「あるスカウトの死」 小橋博 「火と土と水の暦」 前田とみ子 「連」

邦光史郎40歳×各選考委員　 『社外極秘』 長篇 670枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ● 5 「はじめからフィクションと断わってはあるが、それにこだわらずにはいられぬ行き過ぎが感じられた。」 川口松太郎 63歳 全 ― 0   村上元三 52歳 全 ■ 7 「いかにも構成が脆い。この人も、自分の知っている材料を隅から隅まで書きたがる悪い癖を持っている。」 木々高太郎 65歳 全 △ 3 「よく調べてあるのに好感を持った。」 今日出海 59歳 全 ― 0   小島政二郎 68歳 全 ● 3 「私には興味索然たるものだった。」 海音寺潮五郎 61歳 全 △ 9 「大へんおもしろく読んだ。しかし、人物の書きわけがあざやかに行っていないので、時々前をめくってどの人物であるかをたしかめなければならなかった。」 大佛次郎 65歳 全 ― 0   松本清張 53歳 全 ― 0	他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 杉本苑子 『孤愁の岸』 稲垣一城 「花の御所」 笹沢左保 「六本木心中」 高原弘吉 「あるスカウトの死」 小橋博 「火と土と水の暦」 前田とみ子 「連」

高原弘吉47歳×各選考委員　 「あるスカウトの死」 中篇 153枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ● 3 「推理に飛躍があると思った。」 川口松太郎 63歳 全 ― 0   村上元三 52歳 全 △ 5 「推理小説としては小味な面白さがあるが、これはこれだけのもので、次作を読まなければ何ともいえない。」 木々高太郎 65歳 全 ■ 15 「内容が新時代のスカウトの問題だけで、人間の悩みに対する深味がない。」 今日出海 59歳 全 ― 0   小島政二郎 68歳 全 ● 3 「前半は面白かったが、後半には文学を感じなかった。」 海音寺潮五郎 61歳 全 ― 0   大佛次郎 65歳 全 ― 0   松本清張 53歳 全 ● 4 「以前にこの作品の選をしたことがあるが、結末に重大な欠陥がある。」	他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 杉本苑子 『孤愁の岸』 稲垣一城 「花の御所」 笹沢左保 「六本木心中」 邦光史郎 『社外極秘』 小橋博 「火と土と水の暦」 前田とみ子 「連」

小橋博40歳×各選考委員　 「火と土と水の暦」 長篇 478枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 □ 8 「ある感動を以て読了した。」「が、しかし、といいたいものが残った。この、しかし、とは、類型がありそうな気がしたからではなかろうか。」 川口松太郎 63歳 全 ― 0   村上元三 52歳 全 ● 6 「むきになりすぎて焦点がぼやけている。」 木々高太郎 65歳 全 △ 4 「よく調べてあるのに好感を持った。」 今日出海 59歳 全 ― 0   小島政二郎 68歳 全 ■ 13 「最後になるに従って、加速度的に人物描写が粗雑になったのは残念だ。」「こう話を広げずに、定次の精神発展史に絞ったらどうだったろう。」 海音寺潮五郎 61歳 全 ― 0   大佛次郎 65歳 全 ― 0   松本清張 53歳 全 ― 0	他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 杉本苑子 『孤愁の岸』 稲垣一城 「花の御所」 笹沢左保 「六本木心中」 邦光史郎 『社外極秘』 高原弘吉 「あるスカウトの死」 前田とみ子 「連」

前田とみ子36歳×各選考委員　 「連」 短篇 100枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 源氏鶏太 50歳 全 ● 3 「観念的であり過ぎる気がした」 川口松太郎 63歳 全 ― 0   村上元三 52歳 全 ● 7 「一人称ではなく、普通の文章で書いてあったほうが、もっと自力がうかがわれたであろう。」 木々高太郎 65歳 全 ― 0   今日出海 59歳 全 ― 0   小島政二郎 68歳 全 ■ 5 「上方弁で語られている形式が面白かった。が、内容は平凡な女の心理の叙述に終っている。」 海音寺潮五郎 61歳 全 ― 0   大佛次郎 65歳 全 ◎ 6 「私は好きで良い作品と見たが賛成がすくなかった。」「続く作品に期待する。」 松本清張 53歳 全 ● 4 「今まで出来上った型があるので、思いきり観点の転換が必要であろう。」	他の候補作 山口瞳 「江分利満氏の優雅な生活」 杉本苑子 『孤愁の岸』 稲垣一城 「花の御所」 笹沢左保 「六本木心中」 邦光史郎 『社外極秘』 高原弘吉 「あるスカウトの死」 小橋博 「火と土と水の暦」