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第135回
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平成18年/2006年上半期
(平成18年/2006年7月13日決定発表/『オール讀物』平成18年/2006年9月号選評掲載)
選考委員  井上ひさし
男71歳
平岩弓枝
女74歳
宮城谷昌光
男61歳
阿刀田高
男71歳
北方謙三
男58歳
林真理子
女52歳
五木寛之
男73歳
渡辺淳一
男72歳
津本陽
男77歳
選評総行数  192 94 112 102 102 99 95 83  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
三浦しをん 『まほろ駅前多田便利軒』
577
女29歳
40 23 6 27 32 12 12 18    
森絵都 『風に舞いあがるビニールシート』
515
女38歳
38 16 6 37 23 33 16 21    
伊坂幸太郎 『砂漠』
793
男35歳
29 6 35 8 23 21 15 14    
宇月原晴明 『安徳天皇漂海記』
613
男42歳
33 22 0 9 12 12 17 12    
古処誠二 『遮断』
386
男36歳
33 19 23 13 15 12 22 10    
貫井徳郎 『愚行録』
504
男38歳
22 8 43 8 12 9 16 7    
                欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成18年/2006年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
井上ひさし男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
この二作 総行数192 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
40 「感服した。」「街のたたずまいや人びとの息吹きがよく書けている。」「友情小説としても上出来である。」「本作は、ため息が出るほどみごとで爽やかな成長小説でもあった。」
森絵都
女38歳
38 「感服した。」「どの登場人物たちも、このところ流行の「自分探し」という辛気くさい、不毛の蛸壺から這い出そうとしている。そこがとても清新だ。」「小説技法はとても巧み、それは、「ジェネレーションX」を読めば明らかだろう。」
伊坂幸太郎
男35歳
29 「思索的で、おもしろい警句や秀句が各所にちりばめられていて十分に堪能したが、評者に解らなかったのは、この作品の時間設計である。」「とはいっても、登場人物の一人がコトバを取り戻す場面などはとてもすばらしく、作者の才能が随所で輝いている。ご面倒でも、新たな作品でこの文学的関所を軽がると越えていただきたい。」
宇月原晴明
男42歳
33 「よく出来た知的ファンタジーで、考証も文体も凝りに凝っている。」「いい作品ではあるが、この有名人のつるべ打ちは、物語の破天荒な進行をかえって小さくしたように思われる。」
古処誠二
男36歳
33 「日本の軍隊の醜い身勝手さを、途中で出会った、二人の行動を制御する片腕の少尉に象徴させる工夫は、すぐれた作家的手腕だが、この凄まじい地獄行が、現在からの回想で書かれていることに違和感があった。」「あるいは、沖縄戦とその直後の事情だけで筆を止めていれば、これまた光る佳作になったにちがいない。」
貫井徳郎
男38歳
22 「この多声性の趣向はうまい。」「このすばらしい仕掛けを表層の単調さが台無しにしている。」「それに真犯人の動機と犯罪の重さとがどう考えても釣り合わず、結局のところ趣向倒れで終わってしまったのは残念である。」
  「今回は粒選りの作品が揃った」
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他の選考委員
平岩弓枝
宮城谷昌光
阿刀田高
北方謙三
林真理子
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
平岩弓枝女74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三浦しをんさんを推す 総行数94 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
23 「候補作の中で、ずば抜けた秀作と思った」「登場人物を描く作者の目線がまことに快い。」「暗いものを背負って生きている行天さんから愛敬をひき出してみせた手腕なぞ羨しいほど見事だ。この作者の年齢の時、私はとてもこれだけの作品は書けなかったと思い知って、また一段と羨しくなった。」
森絵都
女38歳
16 「作品を書く上で基礎となる取材や資料による下調べをきちんとしている点に好感がもてる。」「願わくば調べて知ったものを半分以上、捨ててから作品に取り組むこと。八十パーセント捨てて書けたら大成功と私は教えられました。」
伊坂幸太郎
男35歳
6 「これまで伊坂幸太郎さんの作品を愛読し、応援して来た私としては少々、あてがはずれた感じ。これが候補作になったのが残念である。」
宇月原晴明
男42歳
22 「この物語の語り部である人物がどんな出自で、どのような過去を持ち、自分がおかれている時代をどういう信念で生きようとしているかなぞということを、しっかり描いておかないと、その人物を通して語られるすべての人間が虚像になってしまう。」
古処誠二
男36歳
19 「戦争を知らない人が戦争を書いてはならないとは決して思わない。」「けれども、もっとも大切なのは、戦争の中で生き、死んで行った一人一人について、その人間性をどう掘り下げ、作者がどういう思いを持ちながら書き切るかで、作品の成功不成功の鍵はその点にあるのではないのだろうか。」
貫井徳郎
男38歳
8 「作家が自分の書こうとしている人々の行動を愚行ときめているような題名はよろしくない。書かねばならないのは世間の常識が愚行と決めているものの中にある人間の真実や情感ではないかと思う。」
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他の選考委員
井上ひさし
宮城谷昌光
阿刀田高
北方謙三
林真理子
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
宮城谷昌光男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
さまざまな課題 総行数112 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
6 「他の選考委員の評にゆずる。私は(引用者中略)好意をもって読んだ。」
森絵都
女38歳
6 「他の選考委員の評にゆずる。私は(引用者中略)好意をもって読んだ。」
伊坂幸太郎
男35歳
35 「この小説は明確な意匠があり、全体が四プラス一で構成されている。」「内容にはその意匠が充分に反映されていない。」「この作品にかぎらず、伊坂氏は言語の軽重を問う作業をなおざりにしている。」「私は失敗作をなじるつもりはない。意欲のすぼんだ無難な小説のほうが嫌いである。氏が小説において知的な作業を好むのであれば、まずい意匠でも、言語がそれ自身の力でそれを超えてゆくほどの作家になってもらいたい。」
宇月原晴明
男42歳
0  
古処誠二
男36歳
23 「描写にふくまれる見通しがやや悪い。」「素材を大切にする気持ちはよくわかるが、それは作者の側に保存されるものではなく、読者に思い切り与えるべきである。」「古処氏の人間観察の視点は悪くない。それどころか、きわめて良い。その長所を活かすには文章をみがくしかない。」
貫井徳郎
男38歳
43 「なんら新味のない構成であるが、内容に、あるいは文体に斬新さがあれば、よしとしたいとおもっていたものの、そこにも作者の意識は不在で、けっきょく新しい人間像を造形することに成功したわけではなく、社会現象を汎論するにとどまった、と感じられた。」
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他の選考委員
井上ひさし
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
林真理子
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
阿刀田高男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大きな期待 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
27 「私自身まったく迂闊なことだが(これが二度目の候補であるにもかかわらず)作者が男性だと思い込んで読んでいた。」「若い才能の赴くまま無理なく書いているように見えて、その実、これが女性の作家の手によるとなると、背後に相当な企みや修練が伏在していると考えるべきだろう。」「才能の淵源がどのあたりにあるのかつかみきれず、これもまた大きな期待となった。」
森絵都
女38歳
37 「出来ばえにもばらつきがある。私としては後半の三作品を特におもしろく読んだ。」「調べたことを全部書くのを避け、作品に必要なものを選んでしなやかに小説に溶け込ませているところが、すばらしい。」「社会と個人との微妙な入り混りをこの作家は過不足なくみごとに捕らえて一つのストーリーとしている。小説の本道と言ってよい。」
伊坂幸太郎
男35歳
8 「モチーフがつかみきれず、小説を評価するいろいろなものさしを当ててみたが、作者の意図が私には計りきれなかった。」
宇月原晴明
男42歳
9 「いくつもの資料を精査し、とてもないイマジネーションをくり広げ、――やるもんだなあ――と感嘆したけれど、小説としての感動が乏しかった。」
古処誠二
男36歳
13 「誠実な筆致にも文句のつけようがない。しかし、今、あらたに戦争を伝える小説としてなにが適切なのか、ノンフィクションならともかく、モチーフに新鮮さを感じることができなかった。」
貫井徳郎
男38歳
8 「ミステリーとして読むには謎解きを楽しむことができず、現代社会をえぐる狙いならば方法をたがえたのではあるまいか。」
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他の選考委員
井上ひさし
平岩弓枝
宮城谷昌光
北方謙三
林真理子
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
北方謙三男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力量充分の二作 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
32 「読んでいてひたすら面白いという、小説の本質のひとつを充分に持っている作品だった。」「主人公のトラウマの過剰さに、いくらかひっかかりを覚えた。」「読後感はいい。」「今回は、三浦氏が一番手で、次に伊坂氏と森氏が並ぶという評価で、選考会に臨んだ。」
森絵都
女38歳
23 「一冊の中で作者の進歩を読みとれるという、文学賞の選考では稀有の、読書の醍醐味を味わわせてくれた。長篇の題材ではないか、と私はいくつかの作品について感じたが、切り方の手法で瑕疵にまではいたっていなかった。」「今回は、三浦氏が一番手で、次に伊坂氏と森氏が並ぶという評価で、選考会に臨んだ。」
伊坂幸太郎
男35歳
23 「いい青春小説としてできあがっている、と感じた。」「四年という歳月が流れているにしては、という指摘があったが、人生の季節のひとつを描いたのだということで、私はいいと思った。作者の資質の、幅を感じさせてくれた作品であったと思う。」「今回は、三浦氏が一番手で、次に伊坂氏と森氏が並ぶという評価で、選考会に臨んだ。」
宇月原晴明
男42歳
12 「なにゆえ人の繋がりをここまで拡げてしまうのだろうと、読んでいる間、私は首を傾げ続けていた。」「拡げすぎたために、秀逸な部分もある細部の描写が生きず、全体として散漫な印象を拭いきれなかったのは、残念である。」
古処誠二
男36歳
15 「臨場感も描写の迫力もあり、心を動かされた。ただ、清武が生きていたという意外性が、戦後の主人公の孤独にうまく繋がってこないという感じを持った。」
貫井徳郎
男38歳
12 「饒舌にすぎる感もあるが、描写の積み重ねが、読者を押す力になっている。これは惜しいと思ったのは、プロローグである。なぜその新聞記事を持ってきたのかと、考え続けながら読まなければならず、途中から小説の結構が見えてしまうという、弱さになっていた。」
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他の選考委員
井上ひさし
平岩弓枝
宮城谷昌光
阿刀田高
林真理子
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
林真理子女52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ただごとでない成長の早さ 総行数99 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
12 「若さが前面に出ている。若者ふたりの生活が、ややありきたりのイマドキ小説っぽく、私には物足りなかった。しかし受賞作にふさわしい才能であることには間違いない。」
森絵都
女38歳
33 「驚かされた。」「表題作の短篇の主人公たちのリアリティに舌を巻いた。」「露骨な表現がないものの、この二人の性描写もエロティックで大胆である。この作家の成長の早さというのはただごとでない。あまりのうまさは老練という言葉さえ思い浮かべるほどだ。」
伊坂幸太郎
男35歳
21 「今回少々がっかりした。彼の魅力である、シュールな空間が色褪せているのである。」「若く才能のある人が、「才にまかせた」ままに書く小説というものは、とても面白く魅力に充ちたものであるが、この小説はその域にも達していないような気がする。」
宇月原晴明
男42歳
12 「作者がひとりで膨大な知識をまき散らしているような感を持つ。スケールの大きな荒唐無稽な物語のはずが、いつしか冗長な解説に変わってしまった。」
古処誠二
男36歳
12 「誠実なよい小説であるが面白くない。これは戦争小説の宿命かと考えたのであるが、やはり食指が動かないのである。」
貫井徳郎
男38歳
9 「名門校の実態がいやらしく、これでもかこれでもかと書かれているのだが、著者ひとりが面白がっているような印象を受けた。」
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他の選考委員
井上ひさし
平岩弓枝
宮城谷昌光
阿刀田高
北方謙三
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
予感を信じて 総行数95 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
12 「上手な小説である。しかし、この作家の本領は、もっとちがうタイプの小説にあるのかもしれない。思いがけない化けかたをする予感を信じて、(引用者中略)一票を投じた。」
森絵都
女38歳
16 「小説を創ろうというはっきりした意志が、脱力系の流行る昨今、とても新鮮な印象をあたえるところがあった。ういういしい文章と、妙に手だれな部分とが混在するのもまた魅力の一つか。」「一票を投じた。」
伊坂幸太郎
男35歳
15 「こういう小説もちゃんと書くことができる作家としての幅を感じると同時に、あれ、伊坂さんってこんな作家だったっけ、と、肩すかしをくらったような気がした。」「これで受賞したら伊坂幸太郎のファンが泣くだろう。」
宇月原晴明
男42歳
17 「全体に文体の統一感があれば、もっと凄い小説になったような気もする。前半の筆致のほうが冴えているように思うが、直木賞の枠からは自ずとはみだす異才というべきか。」
古処誠二
男36歳
22 「戦争体験をもたぬ書き手が戦場の物語を構築しようとしている。その志は壮とすべきだろう。」「読みつつ、どうしても作品世界に没入できないものがあったのは、なんだったのだろう。ことに会話にたえず引っかかるものをおぼえたのは残念だ。」
貫井徳郎
男38歳
16 「どことなく奇妙な小説である。」「人間というどうしようもない存在を犯罪の側から逆照射するという手法は、うまくいけば大傑作を生みだす可能性もあるのだが、そのためには愚行が一種の聖性を感じさせる必要がある。愚行が愚行の域に止まったことで、一発逆転のホームランになりそこねたのが惜しい。」
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他の選考委員
井上ひさし
平岩弓枝
宮城谷昌光
阿刀田高
北方謙三
林真理子
渡辺淳一
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選考委員
渡辺淳一男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
いくつかの不満 総行数83 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
三浦しをん
女29歳
18 「妖しげな小説である。」「現代的な雰囲気を描こうとした著者の狙いはそれなりにわかるが、やや受けを狙いすぎて筆がすべりすぎたようである。とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか、大人の男の切実さとリアリティーに欠ける。」
森絵都
女38歳
21 「良くも悪くも、よく調べて書かれた短篇集である。」「自ずと滲むユーモラスな感覚が面白い。なかで表題作がもっとも社会的な広がりもあり、主人公の二人がよく描かれている。」「難点はあるが、強いて推すとすれば、この一作かと思った」
伊坂幸太郎
男35歳
14 「軽妙さと反社会性、無気力さとおごりなど、現代の若者の生態を描きたかったのかもしれないが、結果は散漫な印象だけに終ってしまった。」「鳥井が、仲間たちの思いやりで言葉を取り戻す、そのシーンだけが生々しく、小説として生きていた。」
宇月原晴明
男42歳
12 「構成が目を惹くが、それ自体、文学とはなんの関係もない、資料をもてあそんだ面白さにすぎない。これが山本周五郎賞を受けた理由もわからない」
古処誠二
男36歳
10 「真面目で誠実な作品だが、濃い絵の具を塗りつぶしたような書き方が、ワンパターンで興を殺ぐ。」「著者の熱意はかうが、作品の出来は前回より落ちるようである。」
貫井徳郎
男38歳
7 「語りかけの書き方自体に必然性がない。内容も安易で説得力がなく、この作品がなぜ候補になったのか、不思議である。」
  「今回は、とくに積極的に推したい作品はなかった。」「今回のように弱いまま、二作受賞の形には反対である。」
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他の選考委員
井上ひさし
平岩弓枝
宮城谷昌光
阿刀田高
北方謙三
林真理子
五木寛之
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受賞者・作品
三浦しをん女29歳×各選考委員 
『まほろ駅前多田便利軒』
長篇 577
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男71歳
40 「感服した。」「街のたたずまいや人びとの息吹きがよく書けている。」「友情小説としても上出来である。」「本作は、ため息が出るほどみごとで爽やかな成長小説でもあった。」
平岩弓枝
女74歳
23 「候補作の中で、ずば抜けた秀作と思った」「登場人物を描く作者の目線がまことに快い。」「暗いものを背負って生きている行天さんから愛敬をひき出してみせた手腕なぞ羨しいほど見事だ。この作者の年齢の時、私はとてもこれだけの作品は書けなかったと思い知って、また一段と羨しくなった。」
宮城谷昌光
男61歳
6 「他の選考委員の評にゆずる。私は(引用者中略)好意をもって読んだ。」
阿刀田高
男71歳
27 「私自身まったく迂闊なことだが(これが二度目の候補であるにもかかわらず)作者が男性だと思い込んで読んでいた。」「若い才能の赴くまま無理なく書いているように見えて、その実、これが女性の作家の手によるとなると、背後に相当な企みや修練が伏在していると考えるべきだろう。」「才能の淵源がどのあたりにあるのかつかみきれず、これもまた大きな期待となった。」
北方謙三
男58歳
32 「読んでいてひたすら面白いという、小説の本質のひとつを充分に持っている作品だった。」「主人公のトラウマの過剰さに、いくらかひっかかりを覚えた。」「読後感はいい。」「今回は、三浦氏が一番手で、次に伊坂氏と森氏が並ぶという評価で、選考会に臨んだ。」
林真理子
女52歳
12 「若さが前面に出ている。若者ふたりの生活が、ややありきたりのイマドキ小説っぽく、私には物足りなかった。しかし受賞作にふさわしい才能であることには間違いない。」
五木寛之
男73歳
12 「上手な小説である。しかし、この作家の本領は、もっとちがうタイプの小説にあるのかもしれない。思いがけない化けかたをする予感を信じて、(引用者中略)一票を投じた。」
渡辺淳一
男72歳
18 「妖しげな小説である。」「現代的な雰囲気を描こうとした著者の狙いはそれなりにわかるが、やや受けを狙いすぎて筆がすべりすぎたようである。とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか、大人の男の切実さとリアリティーに欠ける。」
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他の候補作
森絵都
『風に舞いあがるビニールシート』
伊坂幸太郎
『砂漠』
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
古処誠二
『遮断』
貫井徳郎
『愚行録』
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受賞者・作品
森絵都女38歳×各選考委員 
『風に舞いあがるビニールシート』
短篇集6篇 515
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男71歳
38 「感服した。」「どの登場人物たちも、このところ流行の「自分探し」という辛気くさい、不毛の蛸壺から這い出そうとしている。そこがとても清新だ。」「小説技法はとても巧み、それは、「ジェネレーションX」を読めば明らかだろう。」
平岩弓枝
女74歳
16 「作品を書く上で基礎となる取材や資料による下調べをきちんとしている点に好感がもてる。」「願わくば調べて知ったものを半分以上、捨ててから作品に取り組むこと。八十パーセント捨てて書けたら大成功と私は教えられました。」
宮城谷昌光
男61歳
6 「他の選考委員の評にゆずる。私は(引用者中略)好意をもって読んだ。」
阿刀田高
男71歳
37 「出来ばえにもばらつきがある。私としては後半の三作品を特におもしろく読んだ。」「調べたことを全部書くのを避け、作品に必要なものを選んでしなやかに小説に溶け込ませているところが、すばらしい。」「社会と個人との微妙な入り混りをこの作家は過不足なくみごとに捕らえて一つのストーリーとしている。小説の本道と言ってよい。」
北方謙三
男58歳
23 「一冊の中で作者の進歩を読みとれるという、文学賞の選考では稀有の、読書の醍醐味を味わわせてくれた。長篇の題材ではないか、と私はいくつかの作品について感じたが、切り方の手法で瑕疵にまではいたっていなかった。」「今回は、三浦氏が一番手で、次に伊坂氏と森氏が並ぶという評価で、選考会に臨んだ。」
林真理子
女52歳
33 「驚かされた。」「表題作の短篇の主人公たちのリアリティに舌を巻いた。」「露骨な表現がないものの、この二人の性描写もエロティックで大胆である。この作家の成長の早さというのはただごとでない。あまりのうまさは老練という言葉さえ思い浮かべるほどだ。」
五木寛之
男73歳
16 「小説を創ろうというはっきりした意志が、脱力系の流行る昨今、とても新鮮な印象をあたえるところがあった。ういういしい文章と、妙に手だれな部分とが混在するのもまた魅力の一つか。」「一票を投じた。」
渡辺淳一
男72歳
21 「良くも悪くも、よく調べて書かれた短篇集である。」「自ずと滲むユーモラスな感覚が面白い。なかで表題作がもっとも社会的な広がりもあり、主人公の二人がよく描かれている。」「難点はあるが、強いて推すとすれば、この一作かと思った」
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他の候補作
三浦しをん
『まほろ駅前多田便利軒』
伊坂幸太郎
『砂漠』
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
古処誠二
『遮断』
貫井徳郎
『愚行録』
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候補者・作品
伊坂幸太郎男35歳×各選考委員 
『砂漠』
長篇 793
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男71歳
29 「思索的で、おもしろい警句や秀句が各所にちりばめられていて十分に堪能したが、評者に解らなかったのは、この作品の時間設計である。」「とはいっても、登場人物の一人がコトバを取り戻す場面などはとてもすばらしく、作者の才能が随所で輝いている。ご面倒でも、新たな作品でこの文学的関所を軽がると越えていただきたい。」
平岩弓枝
女74歳
6 「これまで伊坂幸太郎さんの作品を愛読し、応援して来た私としては少々、あてがはずれた感じ。これが候補作になったのが残念である。」
宮城谷昌光
男61歳
35 「この小説は明確な意匠があり、全体が四プラス一で構成されている。」「内容にはその意匠が充分に反映されていない。」「この作品にかぎらず、伊坂氏は言語の軽重を問う作業をなおざりにしている。」「私は失敗作をなじるつもりはない。意欲のすぼんだ無難な小説のほうが嫌いである。氏が小説において知的な作業を好むのであれば、まずい意匠でも、言語がそれ自身の力でそれを超えてゆくほどの作家になってもらいたい。」
阿刀田高
男71歳
8 「モチーフがつかみきれず、小説を評価するいろいろなものさしを当ててみたが、作者の意図が私には計りきれなかった。」
北方謙三
男58歳
23 「いい青春小説としてできあがっている、と感じた。」「四年という歳月が流れているにしては、という指摘があったが、人生の季節のひとつを描いたのだということで、私はいいと思った。作者の資質の、幅を感じさせてくれた作品であったと思う。」「今回は、三浦氏が一番手で、次に伊坂氏と森氏が並ぶという評価で、選考会に臨んだ。」
林真理子
女52歳
21 「今回少々がっかりした。彼の魅力である、シュールな空間が色褪せているのである。」「若く才能のある人が、「才にまかせた」ままに書く小説というものは、とても面白く魅力に充ちたものであるが、この小説はその域にも達していないような気がする。」
五木寛之
男73歳
15 「こういう小説もちゃんと書くことができる作家としての幅を感じると同時に、あれ、伊坂さんってこんな作家だったっけ、と、肩すかしをくらったような気がした。」「これで受賞したら伊坂幸太郎のファンが泣くだろう。」
渡辺淳一
男72歳
14 「軽妙さと反社会性、無気力さとおごりなど、現代の若者の生態を描きたかったのかもしれないが、結果は散漫な印象だけに終ってしまった。」「鳥井が、仲間たちの思いやりで言葉を取り戻す、そのシーンだけが生々しく、小説として生きていた。」
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他の候補作
三浦しをん
『まほろ駅前多田便利軒』
森絵都
『風に舞いあがるビニールシート』
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
古処誠二
『遮断』
貫井徳郎
『愚行録』
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候補者・作品
宇月原晴明男42歳×各選考委員 
『安徳天皇漂海記』
長篇 613
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男71歳
33 「よく出来た知的ファンタジーで、考証も文体も凝りに凝っている。」「いい作品ではあるが、この有名人のつるべ打ちは、物語の破天荒な進行をかえって小さくしたように思われる。」
平岩弓枝
女74歳
22 「この物語の語り部である人物がどんな出自で、どのような過去を持ち、自分がおかれている時代をどういう信念で生きようとしているかなぞということを、しっかり描いておかないと、その人物を通して語られるすべての人間が虚像になってしまう。」
宮城谷昌光
男61歳
0  
阿刀田高
男71歳
9 「いくつもの資料を精査し、とてもないイマジネーションをくり広げ、――やるもんだなあ――と感嘆したけれど、小説としての感動が乏しかった。」
北方謙三
男58歳
12 「なにゆえ人の繋がりをここまで拡げてしまうのだろうと、読んでいる間、私は首を傾げ続けていた。」「拡げすぎたために、秀逸な部分もある細部の描写が生きず、全体として散漫な印象を拭いきれなかったのは、残念である。」
林真理子
女52歳
12 「作者がひとりで膨大な知識をまき散らしているような感を持つ。スケールの大きな荒唐無稽な物語のはずが、いつしか冗長な解説に変わってしまった。」
五木寛之
男73歳
17 「全体に文体の統一感があれば、もっと凄い小説になったような気もする。前半の筆致のほうが冴えているように思うが、直木賞の枠からは自ずとはみだす異才というべきか。」
渡辺淳一
男72歳
12 「構成が目を惹くが、それ自体、文学とはなんの関係もない、資料をもてあそんだ面白さにすぎない。これが山本周五郎賞を受けた理由もわからない」
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他の候補作
三浦しをん
『まほろ駅前多田便利軒』
森絵都
『風に舞いあがるビニールシート』
伊坂幸太郎
『砂漠』
古処誠二
『遮断』
貫井徳郎
『愚行録』
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候補者・作品
古処誠二男36歳×各選考委員 
『遮断』
長篇 386
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男71歳
33 「日本の軍隊の醜い身勝手さを、途中で出会った、二人の行動を制御する片腕の少尉に象徴させる工夫は、すぐれた作家的手腕だが、この凄まじい地獄行が、現在からの回想で書かれていることに違和感があった。」「あるいは、沖縄戦とその直後の事情だけで筆を止めていれば、これまた光る佳作になったにちがいない。」
平岩弓枝
女74歳
19 「戦争を知らない人が戦争を書いてはならないとは決して思わない。」「けれども、もっとも大切なのは、戦争の中で生き、死んで行った一人一人について、その人間性をどう掘り下げ、作者がどういう思いを持ちながら書き切るかで、作品の成功不成功の鍵はその点にあるのではないのだろうか。」
宮城谷昌光
男61歳
23 「描写にふくまれる見通しがやや悪い。」「素材を大切にする気持ちはよくわかるが、それは作者の側に保存されるものではなく、読者に思い切り与えるべきである。」「古処氏の人間観察の視点は悪くない。それどころか、きわめて良い。その長所を活かすには文章をみがくしかない。」
阿刀田高
男71歳
13 「誠実な筆致にも文句のつけようがない。しかし、今、あらたに戦争を伝える小説としてなにが適切なのか、ノンフィクションならともかく、モチーフに新鮮さを感じることができなかった。」
北方謙三
男58歳
15 「臨場感も描写の迫力もあり、心を動かされた。ただ、清武が生きていたという意外性が、戦後の主人公の孤独にうまく繋がってこないという感じを持った。」
林真理子
女52歳
12 「誠実なよい小説であるが面白くない。これは戦争小説の宿命かと考えたのであるが、やはり食指が動かないのである。」
五木寛之
男73歳
22 「戦争体験をもたぬ書き手が戦場の物語を構築しようとしている。その志は壮とすべきだろう。」「読みつつ、どうしても作品世界に没入できないものがあったのは、なんだったのだろう。ことに会話にたえず引っかかるものをおぼえたのは残念だ。」
渡辺淳一
男72歳
10 「真面目で誠実な作品だが、濃い絵の具を塗りつぶしたような書き方が、ワンパターンで興を殺ぐ。」「著者の熱意はかうが、作品の出来は前回より落ちるようである。」
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他の候補作
三浦しをん
『まほろ駅前多田便利軒』
森絵都
『風に舞いあがるビニールシート』
伊坂幸太郎
『砂漠』
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
貫井徳郎
『愚行録』
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候補者・作品
貫井徳郎男38歳×各選考委員 
『愚行録』
長篇 504
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男71歳
22 「この多声性の趣向はうまい。」「このすばらしい仕掛けを表層の単調さが台無しにしている。」「それに真犯人の動機と犯罪の重さとがどう考えても釣り合わず、結局のところ趣向倒れで終わってしまったのは残念である。」
平岩弓枝
女74歳
8 「作家が自分の書こうとしている人々の行動を愚行ときめているような題名はよろしくない。書かねばならないのは世間の常識が愚行と決めているものの中にある人間の真実や情感ではないかと思う。」
宮城谷昌光
男61歳
43 「なんら新味のない構成であるが、内容に、あるいは文体に斬新さがあれば、よしとしたいとおもっていたものの、そこにも作者の意識は不在で、けっきょく新しい人間像を造形することに成功したわけではなく、社会現象を汎論するにとどまった、と感じられた。」
阿刀田高
男71歳
8 「ミステリーとして読むには謎解きを楽しむことができず、現代社会をえぐる狙いならば方法をたがえたのではあるまいか。」
北方謙三
男58歳
12 「饒舌にすぎる感もあるが、描写の積み重ねが、読者を押す力になっている。これは惜しいと思ったのは、プロローグである。なぜその新聞記事を持ってきたのかと、考え続けながら読まなければならず、途中から小説の結構が見えてしまうという、弱さになっていた。」
林真理子
女52歳
9 「名門校の実態がいやらしく、これでもかこれでもかと書かれているのだが、著者ひとりが面白がっているような印象を受けた。」
五木寛之
男73歳
16 「どことなく奇妙な小説である。」「人間というどうしようもない存在を犯罪の側から逆照射するという手法は、うまくいけば大傑作を生みだす可能性もあるのだが、そのためには愚行が一種の聖性を感じさせる必要がある。愚行が愚行の域に止まったことで、一発逆転のホームランになりそこねたのが惜しい。」
渡辺淳一
男72歳
7 「語りかけの書き方自体に必然性がない。内容も安易で説得力がなく、この作品がなぜ候補になったのか、不思議である。」
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他の候補作
三浦しをん
『まほろ駅前多田便利軒』
森絵都
『風に舞いあがるビニールシート』
伊坂幸太郎
『砂漠』
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
古処誠二
『遮断』
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