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平成18年/2006年下半期
(平成19年/2007年1月16日決定発表/『オール讀物』平成19年/2007年3月号選評掲載)
選考委員  井上ひさし
男72歳
林真理子
女52歳
渡辺淳一
男73歳
平岩弓枝
女74歳
阿刀田高
男72歳
北方謙三
男59歳
宮城谷昌光
男61歳
五木寛之
男74歳
選評総行数  127 96 44 96 109 132 121 82
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
池井戸潤 『空飛ぶタイヤ』
1268
男43歳
22 6 8 17 17 22 6 0
荻原浩 『四度目の氷河期』
849
男50歳
13 6 5 22 19 21 12 0
北村薫 『ひとがた流し』
556
男57歳
11 6 8 12 17 22 5 0
佐藤多佳子 『一瞬の風になれ』
1395
女44歳
17 6 9 13 10 22 5 0
白石一文 『どれくらいの愛情』
779
男48歳
15 9 12 12 9 15 29 0
三崎亜記 『失われた町』
855
男36歳
21 16 7 14 20 24 69 0
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成19年/2007年3月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
井上ひさし男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三つの経験則 総行数127 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
22 「いちばんいい点をつけて選考会に臨んだ。」「まことに古典的な物語設計だが、しかし細部が新鮮である。」「「文学的香気に乏しい」という批判の火が燃え上がり、評者はこれに十分に反駁できなかった。今は評者の力不足を嘆くばかりである。」
荻原浩
男50歳
13 「「ぼくはクロマニヨン人の子どもだ」という発想がおもしろい。けれどもこの発想を展開するための援軍がこなかった。」「自分の発想に自信を持って堂々と書くこと、それが援軍の意味である。」
北村薫
男57歳
11 「巧みな小説だが、あんまり綺麗すぎて、グサリと読者の胸を刺すものに欠けていた。癌を病んで命の瀬戸際に立つ女性が聖女すぎて、そのくだりが絵空事のように思われる。」
佐藤多佳子
女44歳
17 「美点の多い作品である。また、走ることを書き切るために疾走感のある軽やかな文体を採用したところにも感心したが、物語の展開があまりにも定石通りだった。」「やや鈍重な、お約束の結末になってしまったのは残念である。」
白石一文
男48歳
15 「律儀な文章を好ましく読んだが、しかし、そのあまりの律儀さ(たとえば年月日はおろか曜日まで書いてしまう癖)が、読者を遠ざけてしまった。読者と作品世界とを結びつけている文章が冷えているのだ。」
三崎亜記
男36歳
21 「プロローグがすなわちエピローグであるという、すばらしい文学的冒険から始まる。」「しかし、作者が次つぎに新しいルールを押しつけてくるので、読者は次第に作品を作者と共有できなくなってくる。」「一度、提示したなら、そのルールを誠実に守ることが大事だ。」
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他の選考委員
林真理子
渡辺淳一
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阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
五木寛之
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選考委員
林真理子女52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
サークル化 総行数96 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
6 「難のない達者な作品であるが、こう新しいタイプの小説が並んだ今回の選考会ではいかにも不利であった。」
荻原浩
男50歳
6 「(引用者注:「失われた町」に比べ)まだサークル(引用者注:自分のセンスに合った読者だけ得ればいいという志)のしっぽをくっつけているような気がして仕方がない。」
北村薫
男57歳
6 「文章の巧みさがかえって女性たちをやや古くさく感じさせる。主人公の死がご都合主義のようにさえ思えてしまうのだ。」
佐藤多佳子
女44歳
6 「(引用者注:「失われた町」に比べ)まだサークル(引用者注:自分のセンスに合った読者だけ得ればいいという志)のしっぽをくっつけているような気がして仕方がない。」
白石一文
男48歳
9 「少々荒っぽい表現が目立つ。男性の魅力を表現するのに、現在活躍中の芸能人の名を羅列するというのは、プロの作家としてどうだろう。」
三崎亜記
男36歳
16 「喪失すること、想念という二つのテーマを書き切った。「町が消えた理由がない」という意見もあったが、私はこの理不尽さを表現するために理由は無用だと考えている。」「強く推したのであるが、私の力が足りず、この方の文学をうまく代弁出来なかった。」
  「若い作家たちが、単に小粒になった、というのではなく、志が別のところにあるような気がして仕方ない」「小説家のサークル化に、若い書店員が後押しをし、それは組織化され、巨大化されていくようである。」
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他の選考委員
井上ひさし
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞作なし 総行数44 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
8 「どこといって悪いところはないが、はっきりいってつまらない。ちょうど、音符どおり正確に唄う歌がつまらないように、小説的なふくらみに欠ける。」
荻原浩
男50歳
5 「部分的に才能が垣間見えるが、全体として迫ってこない。とくに後半はご都合主義で安易である。」
北村薫
男57歳
8 「途中の寄り道が多すぎてテーマへ凝縮していかない不満が残った。」「(引用者注:描かれている)女性と深くぶつかりあった形跡がなく、淡すぎる。」
佐藤多佳子
女44歳
9 「優しく爽やかで軽すぎる。」「作家が異性を書くときは、その異性の感性から生理まで書ける自信がなくして、簡単に挑むべきではない。」
白石一文
男48歳
12 「小説というより論文かエッセイを読まされているような感じを受けた。」「とくに「あとがき」で自作の解説を書くのは論外。頭がいいだけでは小説は書けない、その典型のように思えたが。」
三崎亜記
男36歳
7 「候補作中、もっとも文学的なテーマを持ち、興味を惹かれた。しかしこの手法というか書きかたで読者を納得させうるか、おおいに疑問が残る。」
  「今回は初めから受賞作なしを主張したが、その理由は、わたしが考えている直木賞のレベルに達する作品がなかった、の一言に尽きる。」「(引用者注:そのレベルとは)わたしの長い作家としての体験から得た実感から、ということになろうか。」
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他の選考委員
井上ひさし
林真理子
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
五木寛之
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選考委員
平岩弓枝女74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力のあった「空飛ぶタイヤ」 総行数96 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
17 「もっとも力があると思った」「登場人物がよく描けている。」「力なき蛙でもここまでやってのけられるという作者の思いが読者をゆり動かす。企業小説を超えた優秀な作品といえる。」
荻原浩
男50歳
22 「主人公の少年が見たことのない父親への思いから、クロマニヨンの子ではないかという発想につながって行く過程が無理なく書けているし、少年と母親の生活にも心打たれるものが多くあった。」「博物館からアイスマンの骨を持ち出すところ以下は調子にのりすぎていて白けてしまった。」
北村薫
男57歳
12 「三人の女性の友情とかかわり合いが、この作者らしい優しさにふち取りされていて気持のよい作品に仕上っている。」「人間の自我や孤独を突きつめて三人三様に描き分けられたらと欲ばりな読後感を持った。」
佐藤多佳子
女44歳
13 「のびのびと書いていて明るく読みやすい。スポーツを背景におくと人間が描きやすいという利点を上手く使っている」「友情の裏にある闘争心をもっとむき出しに書いてもらいたかった。」
白石一文
男48歳
12 「作家の文章のような気がしなかった。登場人物を最初にまとめて説明してしまうやり方は便利なようで曲がない。」
三崎亜記
男36歳
14 「前に候補になった「となり町戦争」の持つ独特の面白さを感じそこなった。」「空想の世界に読者をひき込み、作者の意図するものを伝えるには、全体の構成が粗にして軽い。この作者には、もっと読者をぞっとさせる作品が書ける筈である。」
  「粒揃いとまではいえないかも知れないが、今回は才気や力を感じさせる作品が並んで、読むことが楽しかった。」
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他の選考委員
井上ひさし
林真理子
渡辺淳一
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
五木寛之
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選考委員
阿刀田高男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
こころ残り 総行数109 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
17 「読みやすく、充分におもしろい。」「サラリーマン諸氏がみずからの仕事のあいまに、――こんなもんだよな、企業社会は――と同感を覚えながら、ひとときの読書を楽しむには恰好の内容となっている。私はそれを“よし”としたが、直木賞の文学性という、きびしいテーゼを問われると、不足がないでもない。」
荻原浩
男50歳
19 「前半をおもしろく読んだ。」「だが主人公が成長し、現実生活の介入が強くなると、味わいが薄くなってしまう。」
北村薫
男57歳
17 「男性作家が女性を書くむずかしさ、を痛感した。」「各所にさまざまなエピソードが散っているのは(それ自体は充分に気がきいているのだが)私にはストーリーに入り込めない要素として作用し、快く楽しむ要素とはなりにくかった。」
佐藤多佳子
女44歳
10 「爽快なスポーツ小説にはなっているが、――もう少しドロドロしているんじゃないのかなあ――人間のリアリティーを感じにくかった。」
白石一文
男48歳
9 「小説とは少し異なるもののように感じられた。つまり、理屈っぽい、と言えば、一端を伝えることになるだろう。才気は充分に感じられたのだが……。」
三崎亜記
男36歳
20 「企みの深い作品である。しかし読みにくい。作品の中に入り込めないもどかしさがある。」「デビュー作『となり町戦争』が、寓意性において、乾いた技法において、みごとなものであっただけに『失われた町』では、むしろ湿ったセンチメンタリズムが目立って、私には消化不良気味に感じられてしまった。」
  「(引用者注:直木賞の選考は)選考のプロセスにおいて、――これでいいのだろうか――自問自答をくり返し、それでもなお屈託の残るケースが多い。今回はその顕著な例であった。」
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他の選考委員
井上ひさし
林真理子
渡辺淳一
平岩弓枝
北方謙三
宮城谷昌光
五木寛之
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選考委員
北方謙三男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考会の風 総行数132 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
22 「構成力がいいし、ストーリー展開に緊迫感がある。」「ただ、登場人物がみんな、ほんとうにこうだろうな、と思わせる描かれ方で、意外な存在感で読者を圧倒してくる脇役がいなかった。リアリティがあるところに留保をつけられるのは、作者にはいい迷惑だろうが、」
荻原浩
男50歳
21 「主人公が年齢とともに成長していく、もしくは一般性を帯びていくというところに、小説としての弱さが出てしまったのではないか、という気がする。」「中盤から、物語が一般化、つまり矮小化されていくのが、残念で仕方がなかった。」
北村薫
男57歳
22 「読んでいてしみじみいい小説だと感じられる作品だった。淡々として平明でありながら、人生の真実に手が届き、私をして生きることの意味を問い直させる、深い読後感があった。」「登場人物の心理にこそ無限の拡がりがある。そういうものを、大きな小説というのではないだろうか。私は、評価した。」
佐藤多佳子
女44歳
22 「丁寧に、よく書かれていると思う。しかし、汗の臭いがたちのぼってこない。」「挫折や苦悩や嫉妬や屈辱という、マイナスの情念が、実は小説ではプラスになり得るものかもしれない、という発想が排除されているという気がする。爽やかさに、手放しで拍手を送れない、と私は感じ続けていた。」
白石一文
男48歳
15 「文章、特に読点の使い方にひっかかりを覚え、最後までその印象を引き摺ってしまった。」「四作のできにばらつきがある。表題作がいいと思ったが、なぜ占師の先生にさまざまな解説をさせるのか、私にはよくわからなかった。」
三崎亜記
男36歳
24 「私は自分の喪失感と重ね合わせて読み、充分な読後感を得た。」「想像力のスケールは大きく、それに力負けしない筆力も持っている。抽象性が寓意性を帯びるところまで昇華されているこの世界は、評価に値すると私は思った。」
  「今回の候補作が、特に水準が低いとは、私には感じられなかった。むしろ、読みごたえのある作品が多かった、という気がする。」
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他の選考委員
井上ひさし
林真理子
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
宮城谷昌光
五木寛之
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選考委員
宮城谷昌光男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説世界の重力 総行数121 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
6 「けれんなくひた押しに押す筆致に好感をもった。」
荻原浩
男50歳
12 「「ぼく」を語り手にしたばかりに大損している。室田紗知が登場するまで、小説技法上、修辞とみなすべきで、そのため主題が埋没してしまった。氏の技倆はこんなものではあるまい。」
北村薫
男57歳
5  
佐藤多佳子
女44歳
5  
白石一文
男48歳
29 「その頽勢をみせぬ文章を凝視してみると、作者の理知と小説空間にただよう抒情とが、撞着をおこしている。また、どの人称にも属さない無機質な文章が放置されていることも気になる。」「この小説世界で生きている人々は、ほかでは生きられず、ここでしか生きられないがゆえに、作り手がもっと愛してあげるべきだ、ということなのである。」
三崎亜記
男36歳
69 「氏の実力をみきわめる機会を与えられたという意いで読んだ。」「氏の知性と感性の特異性に注目すべきであろうが、じつは文章だけをみつめてみると、特異というわけではない。作者特有の合理のなかで平凡である。」「旧態の文学への批判はあるが、残念ながら批判だけで終わっている。氏がこういう書きかたをつづけるのであれば、昇華ということを考えてもらわねばなるまい。」
  「今回、ひさしぶりに受賞作がでなかったが、その理由は容易に推察されるであろう。」
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他の選考委員
井上ひさし
林真理子
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
五木寛之
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選考委員
五木寛之男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文壇人を戦慄せしめよ 総行数82 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男43歳
0  
荻原浩
男50歳
0  
北村薫
男57歳
0  
佐藤多佳子
女44歳
0  
白石一文
男48歳
0  
三崎亜記
男36歳
0  
  「今回、受賞者なしの結果に終ったことは、残念ではあるが、いたしかたないことだ。選考にあたった既成作家たちを瞠目させるような候補作品がなかっただけの話である。」「あえて言うなら、最近の候補作品はどこか行儀がよすぎるような気がしてならない。」
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他の選考委員
井上ひさし
林真理子
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
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候補者・作品
池井戸潤男43歳×各選考委員 
『空飛ぶタイヤ』
長篇 1268
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男72歳
22 「いちばんいい点をつけて選考会に臨んだ。」「まことに古典的な物語設計だが、しかし細部が新鮮である。」「「文学的香気に乏しい」という批判の火が燃え上がり、評者はこれに十分に反駁できなかった。今は評者の力不足を嘆くばかりである。」
林真理子
女52歳
6 「難のない達者な作品であるが、こう新しいタイプの小説が並んだ今回の選考会ではいかにも不利であった。」
渡辺淳一
男73歳
8 「どこといって悪いところはないが、はっきりいってつまらない。ちょうど、音符どおり正確に唄う歌がつまらないように、小説的なふくらみに欠ける。」
平岩弓枝
女74歳
17 「もっとも力があると思った」「登場人物がよく描けている。」「力なき蛙でもここまでやってのけられるという作者の思いが読者をゆり動かす。企業小説を超えた優秀な作品といえる。」
阿刀田高
男72歳
17 「読みやすく、充分におもしろい。」「サラリーマン諸氏がみずからの仕事のあいまに、――こんなもんだよな、企業社会は――と同感を覚えながら、ひとときの読書を楽しむには恰好の内容となっている。私はそれを“よし”としたが、直木賞の文学性という、きびしいテーゼを問われると、不足がないでもない。」
北方謙三
男59歳
22 「構成力がいいし、ストーリー展開に緊迫感がある。」「ただ、登場人物がみんな、ほんとうにこうだろうな、と思わせる描かれ方で、意外な存在感で読者を圧倒してくる脇役がいなかった。リアリティがあるところに留保をつけられるのは、作者にはいい迷惑だろうが、」
宮城谷昌光
男61歳
6 「けれんなくひた押しに押す筆致に好感をもった。」
五木寛之
男74歳
0  
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他の候補作
荻原浩
『四度目の氷河期』
北村薫
『ひとがた流し』
佐藤多佳子
『一瞬の風になれ』
白石一文
『どれくらいの愛情』
三崎亜記
『失われた町』
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候補者・作品
荻原浩男50歳×各選考委員 
『四度目の氷河期』
長篇 849
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男72歳
13 「「ぼくはクロマニヨン人の子どもだ」という発想がおもしろい。けれどもこの発想を展開するための援軍がこなかった。」「自分の発想に自信を持って堂々と書くこと、それが援軍の意味である。」
林真理子
女52歳
6 「(引用者注:「失われた町」に比べ)まだサークル(引用者注:自分のセンスに合った読者だけ得ればいいという志)のしっぽをくっつけているような気がして仕方がない。」
渡辺淳一
男73歳
5 「部分的に才能が垣間見えるが、全体として迫ってこない。とくに後半はご都合主義で安易である。」
平岩弓枝
女74歳
22 「主人公の少年が見たことのない父親への思いから、クロマニヨンの子ではないかという発想につながって行く過程が無理なく書けているし、少年と母親の生活にも心打たれるものが多くあった。」「博物館からアイスマンの骨を持ち出すところ以下は調子にのりすぎていて白けてしまった。」
阿刀田高
男72歳
19 「前半をおもしろく読んだ。」「だが主人公が成長し、現実生活の介入が強くなると、味わいが薄くなってしまう。」
北方謙三
男59歳
21 「主人公が年齢とともに成長していく、もしくは一般性を帯びていくというところに、小説としての弱さが出てしまったのではないか、という気がする。」「中盤から、物語が一般化、つまり矮小化されていくのが、残念で仕方がなかった。」
宮城谷昌光
男61歳
12 「「ぼく」を語り手にしたばかりに大損している。室田紗知が登場するまで、小説技法上、修辞とみなすべきで、そのため主題が埋没してしまった。氏の技倆はこんなものではあるまい。」
五木寛之
男74歳
0  
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他の候補作
池井戸潤
『空飛ぶタイヤ』
北村薫
『ひとがた流し』
佐藤多佳子
『一瞬の風になれ』
白石一文
『どれくらいの愛情』
三崎亜記
『失われた町』
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候補者・作品
北村薫男57歳×各選考委員 
『ひとがた流し』
長篇 556
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男72歳
11 「巧みな小説だが、あんまり綺麗すぎて、グサリと読者の胸を刺すものに欠けていた。癌を病んで命の瀬戸際に立つ女性が聖女すぎて、そのくだりが絵空事のように思われる。」
林真理子
女52歳
6 「文章の巧みさがかえって女性たちをやや古くさく感じさせる。主人公の死がご都合主義のようにさえ思えてしまうのだ。」
渡辺淳一
男73歳
8 「途中の寄り道が多すぎてテーマへ凝縮していかない不満が残った。」「(引用者注:描かれている)女性と深くぶつかりあった形跡がなく、淡すぎる。」
平岩弓枝
女74歳
12 「三人の女性の友情とかかわり合いが、この作者らしい優しさにふち取りされていて気持のよい作品に仕上っている。」「人間の自我や孤独を突きつめて三人三様に描き分けられたらと欲ばりな読後感を持った。」
阿刀田高
男72歳
17 「男性作家が女性を書くむずかしさ、を痛感した。」「各所にさまざまなエピソードが散っているのは(それ自体は充分に気がきいているのだが)私にはストーリーに入り込めない要素として作用し、快く楽しむ要素とはなりにくかった。」
北方謙三
男59歳
22 「読んでいてしみじみいい小説だと感じられる作品だった。淡々として平明でありながら、人生の真実に手が届き、私をして生きることの意味を問い直させる、深い読後感があった。」「登場人物の心理にこそ無限の拡がりがある。そういうものを、大きな小説というのではないだろうか。私は、評価した。」
宮城谷昌光
男61歳
5  
五木寛之
男74歳
0  
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他の候補作
池井戸潤
『空飛ぶタイヤ』
荻原浩
『四度目の氷河期』
佐藤多佳子
『一瞬の風になれ』
白石一文
『どれくらいの愛情』
三崎亜記
『失われた町』
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候補者・作品
佐藤多佳子女44歳×各選考委員 
『一瞬の風になれ』
長篇 1395
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男72歳
17 「美点の多い作品である。また、走ることを書き切るために疾走感のある軽やかな文体を採用したところにも感心したが、物語の展開があまりにも定石通りだった。」「やや鈍重な、お約束の結末になってしまったのは残念である。」
林真理子
女52歳
6 「(引用者注:「失われた町」に比べ)まだサークル(引用者注:自分のセンスに合った読者だけ得ればいいという志)のしっぽをくっつけているような気がして仕方がない。」
渡辺淳一
男73歳
9 「優しく爽やかで軽すぎる。」「作家が異性を書くときは、その異性の感性から生理まで書ける自信がなくして、簡単に挑むべきではない。」
平岩弓枝
女74歳
13 「のびのびと書いていて明るく読みやすい。スポーツを背景におくと人間が描きやすいという利点を上手く使っている」「友情の裏にある闘争心をもっとむき出しに書いてもらいたかった。」
阿刀田高
男72歳
10 「爽快なスポーツ小説にはなっているが、――もう少しドロドロしているんじゃないのかなあ――人間のリアリティーを感じにくかった。」
北方謙三
男59歳
22 「丁寧に、よく書かれていると思う。しかし、汗の臭いがたちのぼってこない。」「挫折や苦悩や嫉妬や屈辱という、マイナスの情念が、実は小説ではプラスになり得るものかもしれない、という発想が排除されているという気がする。爽やかさに、手放しで拍手を送れない、と私は感じ続けていた。」
宮城谷昌光
男61歳
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五木寛之
男74歳
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他の候補作
池井戸潤
『空飛ぶタイヤ』
荻原浩
『四度目の氷河期』
北村薫
『ひとがた流し』
白石一文
『どれくらいの愛情』
三崎亜記
『失われた町』
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候補者・作品
白石一文男48歳×各選考委員 
『どれくらいの愛情』
短篇集4篇 779
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男72歳
15 「律儀な文章を好ましく読んだが、しかし、そのあまりの律儀さ(たとえば年月日はおろか曜日まで書いてしまう癖)が、読者を遠ざけてしまった。読者と作品世界とを結びつけている文章が冷えているのだ。」
林真理子
女52歳
9 「少々荒っぽい表現が目立つ。男性の魅力を表現するのに、現在活躍中の芸能人の名を羅列するというのは、プロの作家としてどうだろう。」
渡辺淳一
男73歳
12 「小説というより論文かエッセイを読まされているような感じを受けた。」「とくに「あとがき」で自作の解説を書くのは論外。頭がいいだけでは小説は書けない、その典型のように思えたが。」
平岩弓枝
女74歳
12 「作家の文章のような気がしなかった。登場人物を最初にまとめて説明してしまうやり方は便利なようで曲がない。」
阿刀田高
男72歳
9 「小説とは少し異なるもののように感じられた。つまり、理屈っぽい、と言えば、一端を伝えることになるだろう。才気は充分に感じられたのだが……。」
北方謙三
男59歳
15 「文章、特に読点の使い方にひっかかりを覚え、最後までその印象を引き摺ってしまった。」「四作のできにばらつきがある。表題作がいいと思ったが、なぜ占師の先生にさまざまな解説をさせるのか、私にはよくわからなかった。」
宮城谷昌光
男61歳
29 「その頽勢をみせぬ文章を凝視してみると、作者の理知と小説空間にただよう抒情とが、撞着をおこしている。また、どの人称にも属さない無機質な文章が放置されていることも気になる。」「この小説世界で生きている人々は、ほかでは生きられず、ここでしか生きられないがゆえに、作り手がもっと愛してあげるべきだ、ということなのである。」
五木寛之
男74歳
0  
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他の候補作
池井戸潤
『空飛ぶタイヤ』
荻原浩
『四度目の氷河期』
北村薫
『ひとがた流し』
佐藤多佳子
『一瞬の風になれ』
三崎亜記
『失われた町』
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候補者・作品
三崎亜記男36歳×各選考委員 
『失われた町』
長篇 855
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男72歳
21 「プロローグがすなわちエピローグであるという、すばらしい文学的冒険から始まる。」「しかし、作者が次つぎに新しいルールを押しつけてくるので、読者は次第に作品を作者と共有できなくなってくる。」「一度、提示したなら、そのルールを誠実に守ることが大事だ。」
林真理子
女52歳
16 「喪失すること、想念という二つのテーマを書き切った。「町が消えた理由がない」という意見もあったが、私はこの理不尽さを表現するために理由は無用だと考えている。」「強く推したのであるが、私の力が足りず、この方の文学をうまく代弁出来なかった。」
渡辺淳一
男73歳
7 「候補作中、もっとも文学的なテーマを持ち、興味を惹かれた。しかしこの手法というか書きかたで読者を納得させうるか、おおいに疑問が残る。」
平岩弓枝
女74歳
14 「前に候補になった「となり町戦争」の持つ独特の面白さを感じそこなった。」「空想の世界に読者をひき込み、作者の意図するものを伝えるには、全体の構成が粗にして軽い。この作者には、もっと読者をぞっとさせる作品が書ける筈である。」
阿刀田高
男72歳
20 「企みの深い作品である。しかし読みにくい。作品の中に入り込めないもどかしさがある。」「デビュー作『となり町戦争』が、寓意性において、乾いた技法において、みごとなものであっただけに『失われた町』では、むしろ湿ったセンチメンタリズムが目立って、私には消化不良気味に感じられてしまった。」
北方謙三
男59歳
24 「私は自分の喪失感と重ね合わせて読み、充分な読後感を得た。」「想像力のスケールは大きく、それに力負けしない筆力も持っている。抽象性が寓意性を帯びるところまで昇華されているこの世界は、評価に値すると私は思った。」
宮城谷昌光
男61歳
69 「氏の実力をみきわめる機会を与えられたという意いで読んだ。」「氏の知性と感性の特異性に注目すべきであろうが、じつは文章だけをみつめてみると、特異というわけではない。作者特有の合理のなかで平凡である。」「旧態の文学への批判はあるが、残念ながら批判だけで終わっている。氏がこういう書きかたをつづけるのであれば、昇華ということを考えてもらわねばなるまい。」
五木寛之
男74歳
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他の候補作
池井戸潤
『空飛ぶタイヤ』
荻原浩
『四度目の氷河期』
北村薫
『ひとがた流し』
佐藤多佳子
『一瞬の風になれ』
白石一文
『どれくらいの愛情』
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