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平成19年/2007年上半期
(平成19年/2007年7月17日決定発表/『オール讀物』平成19年/2007年9月号選評掲載)
選考委員  五木寛之
男74歳
浅田次郎
男55歳
渡辺淳一
男73歳
平岩弓枝
女75歳
阿刀田高
男72歳
北方謙三
男59歳
宮城谷昌光
男62歳
林真理子
女53歳
井上ひさし
男72歳
選評総行数  112 127 75 98 103 104 90 87 154
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
松井今朝子 『吉原手引草』
415
女53歳
41 22 20 62 28 11 53 18 38
北村薫 『玻璃の天』
389
男57歳
5 15 15 0 14 13 2 17 13
桜庭一樹 『赤朽葉家の伝説』
737
女35歳
12 8 9 10 11 17 14 10 18
畠中恵 『まんまこと』
529
女47歳
5 11 7 0 11 21 2 4 22
万城目学 『鹿男あをによし』
674
男31歳
5 19 4 15 11 14 9 21 22
三田完 『俳風三麗花』
543
男51歳
29 17 19 10 14 9 14 9 19
森見登美彦 『夜は短し歩けよ乙女』
513
男28歳
22 8 7 0 14 9 2 27 23
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成19年/2007年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
五木寛之男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
『吉原手引草』を推す 総行数112 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
41 「私はことのほか面白く読んだ。」「生の人間ドラマを敬遠して、人形芝居の物語りをつむごうとする作者の姿勢には、大人びた無常感さえ漂う。構成としては、ヒロイン葛城の最後の行動にいささかの無理があるものの、随所にちりばめられた遊里文化の情報の多彩さは、それをおぎなうに十分である。」
北村薫
男57歳
5 「すでに一家を成した作家(引用者中略)というのが正直な感想だった。」
桜庭一樹
女35歳
12 「物語作家としてのたくましい膂力に圧倒されると同時に、年代記風の語り口を採りながら不思議なファンタジーの味を織りこむ手腕に、未知の世界をのぞく戦慄をおぼえた。ただ、長篇ほど緊密な構成力が必要であることに留意すべき点だろう。」
畠中恵
女47歳
5 「これからの作家であるというのが正直な感想だった。」
万城目学
男31歳
5 「(引用者注:森見登美彦とともに)平成の新興芸術派とでもいうべき新風の到来を感じたのは事実である。」
三田完
男51歳
29 「今回、たのしんで読んだ作品の一つ」「遊ぶ、という営みには、ある断念が必要だ。読物としての境界を超えないことも、また一つの立場である。」「昭和初期という時代の描きかたに、わずかに物足りなさも感じる場面もないではないが、まずはよくできた読物として好感をもった。」
森見登美彦
男28歳
22 「近作『新釈 走れメロス』の怪走ぶりに驚き、ついに文壇をひっくり返す大天狗作家の出現かと期待したものの、今回の候補作いささか肩すかしをくらった感をぬぐえなかったのは私ひとりだろうか。」「(引用者注:「吉原手引草」との)二作受賞もまた良しと考えて選考の席にのぞんだのだが、支持する声が少なかったのは、意外だった。」
  「候補作品のほとんどが、どこかに夢の気配を感じさせるのは、なぜだろう。リアリズムの時代は、すでに過ぎたのだろうか、と、ふと思う。」
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浅田次郎
渡辺淳一
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選考委員
浅田次郎男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
苦悩の不在 総行数127 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
22 「これまでの作品には、類い稀なる古典的教養が小説としてうまく機能しない憾みがあったのだが、受賞作となった「吉原手引草」はそのあたりをついに克服した傑作である。謙虚かつ冷静な自己分析の成果であろうと思う。」「作品もさることながら、私は作者の、まるで背に旗竿を立てたような姿勢の正しさに敬意を抱いて強く推した次第である。」
北村薫
男57歳
15 「長い討議の時間が費された。」「個人的な趣味というより全体の調和という点で、どうしても推すことができなかった。」
桜庭一樹
女35歳
8 「別の選考会における選評に述べた通りである。」「すぐれた作品ではあるが、直木賞には力及ばずとする階級主義的評価を寛恕していただきたい。」
畠中恵
女47歳
11 「面白く読んだが、構成上必要なものと不必要なものとの選別が曖昧な点、文章表現の正確さ、適切さを欠いている点、登場人物があらゆる場面で映像的に定員過剰である点、視点者の心理が不在である点、等々が気にかかり次作に期待することとした。」
万城目学
男31歳
19 「破綻のない小説である。」「もし接吻によって浄身が成るという大団円から、帰納的にストーリーを構築したのだとすれば、いよいよ安易な作法であると私は思う。前途有望な才能であると思えばこそ、小説の冒険を試みてほしいと願わずにはおられない。」
三田完
男51歳
17 「感心した作品である。ダイナミックな展開こそないものの、ディテールを繋ぎ合わせて全体をきれいにまとめ上げるセンスは、自己の資質をよく心得ているからであろう。ただし、見知らぬ時代を書くにあたって、精密なのだが巨視的に捉えていないという、いわば近視眼的な弱点を感じた。」
森見登美彦
男28歳
8 「別の選考会における選評に述べた通りである。」「すぐれた作品ではあるが、直木賞には力及ばずとする階級主義的評価を寛恕していただきたい。」
  「候補作の全体を俯瞰するに、概して年長の作家には小説的に一日の長があり、若い作家はやはり読み応えに欠けるという、今さらながらの発見をした。巷間しばしば囁かれるところの、後進の才能に対する嫉妬などというものは、本賞の選考会にはありえぬと確信した。」
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五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
渡辺淳一男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大人の作品 総行数75 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
20 「初回の選考から高得点で、本作の受賞はほぼ確実と思われた。」「作者の、かつて直木賞候補になった二作は、専門的知識が小説に融和せず浮いていたが、この作品によって、初めて小説と合体してたしかなリアリティーを支えている。吉原の内実や江戸弁の語りなども適確で、ようやく安心して推せる大人の作品を得て安堵した。」
北村薫
男57歳
15 「それなりの趣向をこらしているが、全体の仕上がりはいささか回り道が多くて甘い。これがこの作者のベストの作品なのか、いつも歯痒い思いが残る。」
桜庭一樹
女35歳
9 「壮大なでたらめを書くスタミナは認めるが、そのでたらめが妖しい凄みにまで昇華されていない。ところどころ戦後の日本の歩んできた過程が挿入されているが、その視点も平凡である。」
畠中恵
女47歳
7 「主人公に魅力がなく、江戸ものの粋と活気に欠ける。作品の読後感は悪くはないが、人間視点の甘さと作者の素直さが小説を単調にしているようである。」
万城目学
男31歳
4 「部分的に良質な感性が垣間見えるが、鹿との会話は安易すぎる。」
三田完
男51歳
19 「もし趣味小説というジャンルがあれば、それなりの秀作かもしれないが、小説という形式でなにを書きたかったのか。その点になるといささか曖昧で、迫力に欠ける。」
森見登美彦
男28歳
7 「いかにも今風の男女の姿を描いているが、ファンタジーかお笑いか。重い、真摯なものを避け、斜めに書く姿勢をよしとしている作風が鼻につく。」
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五木寛之
浅田次郎
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
林真理子
井上ひさし
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選考委員
平岩弓枝女75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
成功した「吉原手引草」 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
62 「作者の得意業が存分に発揮された異色作で歌舞伎に精通している松井さんの遊び心が横溢している。」「成功の鍵は、江戸で幕府公認の唯一の遊里である吉原を全く知らないと称する人物がそこで暮す人々の間を訊ね歩いてさまざまのことを探るという形を取っている点で、吉原についてのノウハウがごく自然に描き出されたことかと思う。」
北村薫
男57歳
0  
桜庭一樹
女35歳
10 「今回の候補作の中で心に残った」「殊に第二部の毛毬が中心に躍り出たあたりからの迫力には瞠目した。」
畠中恵
女47歳
0  
万城目学
男31歳
15 「風変りな面白さで印象に残った」「発想は上出来で、ゆったりした書き方も好もしい。作者は意識的に軽快な作風をねらったと思うが、万人向きではなかったのかも知れない。」
三田完
男51歳
10 「大変に手馴れた作品で、これだけ俳句を多用して、それが作品に見事なほど同化しているのは作者に力があればこそと思う。」
森見登美彦
男28歳
0  
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五木寛之
浅田次郎
渡辺淳一
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
林真理子
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選考委員
阿刀田高男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の豊饒さ 総行数103 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
28 「歌舞伎と江戸風俗に関して松井今朝子さんの造詣の深さは私が云々するレベルをはるかに超えているが、その学識のあまり、これまでは小説が説明過多になってしまうところがないでもなかった。今回はそれが薄れたこと、(引用者中略)その結果、しなやかな小説の世界を呈示することとなった。」「これまでの弱点が消えれば、あとはもともと評価されるにふさわしい実力者である。たっぷりと楽しめた。」
北村薫
男57歳
14 「――どうしてこれなのかなあ――私は戸惑いを覚えた。なぜいま昭和の初めの上流社会を描いて、古典的なトリックをあしらうのか、それでなにを訴えるのだろうか、小説観のちがいを感じ、良質の作品とは思いながらもポジティブに評価できなかった。」
桜庭一樹
女35歳
11 「小説として瑕瑾を感ずるところもあったが、土俗的な家系を三代にわたってたどった筆力はなかなかのものだ。第三部の弱さが気になったが、まっすぐに小説に取り組んでいる姿勢には目を見張るものがある。熱気がある。」
畠中恵
女47歳
11 「従来の捕物帳のたぐいがほとんど刑事事件を扱っているのに対し、この趣向(引用者注:民事事件を名主の息子が解くこと)は作者の新発見であり、評価すべき特徴だろう。だが、江戸の気配が匂って来ない。身を預けて小説の世界に浸ることができなかった。」
万城目学
男31歳
11 「才筆である。」「結構なファンタジーだが、私はこういう作品は現代の社会や人間に対する寓意性がなければたわいないものになってしまう、と考える立場なので積極的には推せなかった。」
三田完
男51歳
14 「この作風をよしとする限り第一級の作品だろう。」「だが俳句を除いて小説的な部分を取り出すと、弱い。あえて略言すれば俳句まじりの小説で、俳句の部分だけが優れているケース、これをどう考えるか、私はためらいを覚えた。」
森見登美彦
男28歳
14 「評価の分かれる作品だ。」「私は筋のよさを感じたが、だからどうした、と小説の本筋としての価値を問われると、やはり躊躇を覚えてしまう。――もう一作、待ちたい――と考えた。」
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五木寛之
浅田次郎
渡辺淳一
平岩弓枝
北方謙三
宮城谷昌光
林真理子
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選考委員
北方謙三男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作はならず 総行数104 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
11 「重量感のある作品であった。物語を牽引する葛城の謎が、わかってしまえば仇討だったというところに、若干の構造的な問題を感じたが、力量に疑いを抱かせるものではなく、順当な受賞であったと思う。」
北村薫
男57歳
13 「私にとっては心地よいバラードだった。文章を平明に書くということは、派手な技巧を駆使するより、ずっと難しいことだ、と私は思う。」「丸をつけて選考に望み、決選投票では圧倒的な支持の受賞作に次いだので、なんとか二作受賞をと模索したが、わずかに届かなかった。」
桜庭一樹
女35歳
17 「小説の筋肉の力とでも言うべきものを感じた。特に、毛毬の章は秀逸であった。この力量を、私は率直に評価する。ただ全体としては、千里眼に導かれながら、つまりなにが起きるのかわかる状態で読書せざるを得ない、という弱点があったと思う。」
畠中恵
女47歳
21 「この作品の鍵のひとつは、十六歳の時の主人公の変化ではないか、という気がした。」「(引用者注:主人公の変化のもとになった)傷が、深く暗いものである必要はないが、そこを安直に扱ったと私に感じさせたところで、この作品は拡がりを失い、小さくまとまったと感じた。」
万城目学
男31歳
14 「描写力があり、面白く読めた。ただ、私が面白いと感じて引きこまれた主人公の現実が、すべてファンタジー的な要素から起因してくるとなると、物語の都合だけではない必然性が要る、と思わざるを得ない。私にとっては、剣道の試合の迫真力の方が、はるかにリアリティのあるものであった。」
三田完
男51歳
9 「句会、俳句を精読してしまったので、読むのに苦労した。」「古風なものの中に新しいものを捜したが、私には見つけられなかった。」
森見登美彦
男28歳
9 「最後まで、私の心に食いこんでくるものがなかった。この男女に、どう感情移入せよというのだ、という思いがつきまとまった。才気は感じるが、ペダンチックな部分にも、私は馴染めなかった。」
  「今回の選考は、ベテランと新鋭の作品をどう読み較べるか、ということと同時に、ファンタジー的要素をどう解釈し、受け入れればいいのか、というのが私にとってのテーマであった。」
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五木寛之
浅田次郎
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
宮城谷昌光
林真理子
井上ひさし
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選考委員
宮城谷昌光男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
知識と構成力 総行数90 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
53 「その構成力に作者の肚のすえかたがまざまざとみてとれる。とはいえ、読者に有無をいわせぬ語りの連続に、私は辟易した。」「作品と読者の距離がありすぎる。ただしその距離に、作者の自尊の高さがある、と感じられるが、それが志の大きさであろうとはいいにくい。」
北村薫
男57歳
2  
桜庭一樹
女35歳
14 「特異な才能をもっているのはあきらかであり、この作家と併走できる編集者がいれば、そうとうにすぐれた人である。桜庭氏は右顧左眄することなく、信念をつらぬいてゆけばよい。多作である必要もない。いつか巨大な現代批判が作品として結実するようにおもわれる。」
畠中恵
女47歳
2  
万城目学
男31歳
9 「大いに関心をもった。かくれた工夫がなされているのに、顕現されたものが品格の高さを保持できていないのは、残念である。」
三田完
男51歳
14 「いわゆる巧い小説で、知識、構成力、言語感覚などが上級である。小説がもっている情報量も豊富で、しかも正確であるように感じられたので、衒学的であるとはおもわなかった。しかしながら上手の手から水が漏るところがあり、推しきれなかった。」
森見登美彦
男28歳
2  
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五木寛之
浅田次郎
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
林真理子
井上ひさし
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選考委員
林真理子女53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
まさにプロの技 総行数87 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
18 「むせるような極彩色の世界をかもし出している。」「まさにプロの技である。直木賞はこうでなくてはならない。今回も若い小説を決して否定するつもりはないが、こうしてプロの香気あふれる作品と並べられるとどうしても見劣りしてしまう。小説を書くという技と志において歴然と差がある。」
北村薫
男57歳
17 「直木賞には「時の運」というものが確かにある。その点北村薫さんはお気の毒であった。キャリア・人気とも充分のものがおありになりながら、今回も候補作に恵まれなかった。戦前の上流社会を描くというのは、当事者以外には非常にむずかしい。(引用者中略)それに果敢に挑戦なさっていたが、やはりリアリティを得ることが出来なかったように思う。」
桜庭一樹
女35歳
10 「桜庭一樹さんの愚直さは捨てがたい。この人の「小説はこうあらねばならぬ」という考えは、今はもう少々古くさいものかもしれないが、それでも真摯に大作に挑む姿勢と、それを書き終えた能力は高く評価出来る。」
畠中恵
女47歳
4 「これといった魅力は感じなかった。」
万城目学
男31歳
21 「面白いことは面白いのであるが、途中からいっきにだれてくる。」「読み手よりもまず書き手が楽しんでいるのは、最近の若い作家によく見られる傾向である。自分が真先に面白がり楽しんで、この輪の中に入ってくる読者だけを迎え入れる。」「ありきたりな言い方であるが、(引用者中略)あまりご自分の才に溺れないでほしい。」
三田完
男51歳
9 「出てくる俳句がどれも秀逸なのと、推敲を重ねるプロセスがもはや物語になっている。が、水墨画のような味わいが、私にはやや物足りなかった。」
森見登美彦
男28歳
27 「面白いことは面白いのであるが、途中からいっきにだれてくる。」「ギリシャ神話を彷彿とさせるような清新さに最初はハッとするものの、最後まで一本調子が抜けない。作者が“これでよし”と思う気持ちが強過ぎるからだ。ありきたりな言い方であるが、(引用者中略)あまりご自分の才に溺れないでほしい。」
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阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
井上ひさし
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選考委員
井上ひさし男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
抜群の一作 総行数154 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
松井今朝子
女53歳
38 「『吉原手引草』のおもしろさと、そのみごとな仕上がりに勇んで票を投じた。」「読者はやがて、「遊里は一から十までウソの拵えものだが、その拵えものが、自分を拵え上げた現実に一矢むくいる」という、その現場に立ち合うことになる。ウソで世界の筋目を正すというのだから、痛快である。」「読み手を興奮させる小説の構造と小説の言葉があった、それも飛び切り上等の。」
北村薫
男57歳
13 「手練れの作者の研ぎ澄まされた筆捌きに感心した。けれどもヒロインの周囲に起こる事件はどうも奇想の色が濃くて、せっかくのおっとりした雰囲気とは合わないような気もするのだが。」
桜庭一樹
女35歳
18 「力感あふれる意欲作である。とりわけ、少女漫画家赤朽葉毛毬の閃光のような生き方を剛直な文章で彫り上げた第二部は掛け値なしにすばらしい。ただ、戦後史を語るときに突然、年表のような記述が現われるのが惜しかった。」
畠中恵
女47歳
22 「拵えは巧みである。」「でも、どうしてこうも読みにくいのか。(引用者中略)読者に負担を強いる文章が読みにくいのだ。それ以前に、登場人物たちが揃って無表情で無感情なのも、この作品を読みにくくて、冷ややかなものにしている。」
万城目学
男31歳
22 「作者のしたたかな知的膂力を感じた。またこのごろ大流行の「高校運動部の感動小説」への風刺もあるし、なによりも、『坊つちやん』譲りのテンポのいい文章にずいぶん笑わせられた。」「こういう愉快な作品は顕彰する値打ちがある……と思ったが、(引用者中略)最終的には票を投じなかった。」
三田完
男51歳
19 「これほどうまくできた俳句小説はめずらしい。昭和初年の雰囲気を描き出す手つきも文章もみごとなもので、これが一個の佳作であることは疑いを入れないが、句会から外界へ一歩踏み出すと、生起する事件がやや粗っぽく、せっかくの佳作の艶を消してしまったようだ。」「いまでも心残りな作品だ。」
森見登美彦
男28歳
23 「独特な物語性を備えた快作であって、美点は多い。たとえば、青春小説の独り善がりの青臭さを、わざと悪趣味に誇張して見せる批評的な態度、巡り逢い青春小説の御都合主義を徹底的にからかうおもしろさ、(引用者中略)読者との距離をできるだけ縮めようと努力する文体、一つの事件を男と女の側から見ようとする複眼の手法……いいところを挙げると際限がない」
  「今回の候補作はみんな上出来の作だった」
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他の選考委員
五木寛之
浅田次郎
渡辺淳一
平岩弓枝
阿刀田高
北方謙三
宮城谷昌光
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受賞者・作品
松井今朝子女53歳×各選考委員 
『吉原手引草』
長篇 415
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
41 「私はことのほか面白く読んだ。」「生の人間ドラマを敬遠して、人形芝居の物語りをつむごうとする作者の姿勢には、大人びた無常感さえ漂う。構成としては、ヒロイン葛城の最後の行動にいささかの無理があるものの、随所にちりばめられた遊里文化の情報の多彩さは、それをおぎなうに十分である。」
浅田次郎
男55歳
22 「これまでの作品には、類い稀なる古典的教養が小説としてうまく機能しない憾みがあったのだが、受賞作となった「吉原手引草」はそのあたりをついに克服した傑作である。謙虚かつ冷静な自己分析の成果であろうと思う。」「作品もさることながら、私は作者の、まるで背に旗竿を立てたような姿勢の正しさに敬意を抱いて強く推した次第である。」
渡辺淳一
男73歳
20 「初回の選考から高得点で、本作の受賞はほぼ確実と思われた。」「作者の、かつて直木賞候補になった二作は、専門的知識が小説に融和せず浮いていたが、この作品によって、初めて小説と合体してたしかなリアリティーを支えている。吉原の内実や江戸弁の語りなども適確で、ようやく安心して推せる大人の作品を得て安堵した。」
平岩弓枝
女75歳
62 「作者の得意業が存分に発揮された異色作で歌舞伎に精通している松井さんの遊び心が横溢している。」「成功の鍵は、江戸で幕府公認の唯一の遊里である吉原を全く知らないと称する人物がそこで暮す人々の間を訊ね歩いてさまざまのことを探るという形を取っている点で、吉原についてのノウハウがごく自然に描き出されたことかと思う。」
阿刀田高
男72歳
28 「歌舞伎と江戸風俗に関して松井今朝子さんの造詣の深さは私が云々するレベルをはるかに超えているが、その学識のあまり、これまでは小説が説明過多になってしまうところがないでもなかった。今回はそれが薄れたこと、(引用者中略)その結果、しなやかな小説の世界を呈示することとなった。」「これまでの弱点が消えれば、あとはもともと評価されるにふさわしい実力者である。たっぷりと楽しめた。」
北方謙三
男59歳
11 「重量感のある作品であった。物語を牽引する葛城の謎が、わかってしまえば仇討だったというところに、若干の構造的な問題を感じたが、力量に疑いを抱かせるものではなく、順当な受賞であったと思う。」
宮城谷昌光
男62歳
53 「その構成力に作者の肚のすえかたがまざまざとみてとれる。とはいえ、読者に有無をいわせぬ語りの連続に、私は辟易した。」「作品と読者の距離がありすぎる。ただしその距離に、作者の自尊の高さがある、と感じられるが、それが志の大きさであろうとはいいにくい。」
林真理子
女53歳
18 「むせるような極彩色の世界をかもし出している。」「まさにプロの技である。直木賞はこうでなくてはならない。今回も若い小説を決して否定するつもりはないが、こうしてプロの香気あふれる作品と並べられるとどうしても見劣りしてしまう。小説を書くという技と志において歴然と差がある。」
井上ひさし
男72歳
38 「『吉原手引草』のおもしろさと、そのみごとな仕上がりに勇んで票を投じた。」「読者はやがて、「遊里は一から十までウソの拵えものだが、その拵えものが、自分を拵え上げた現実に一矢むくいる」という、その現場に立ち合うことになる。ウソで世界の筋目を正すというのだから、痛快である。」「読み手を興奮させる小説の構造と小説の言葉があった、それも飛び切り上等の。」
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他の候補作
北村薫
『玻璃の天』
桜庭一樹
『赤朽葉家の伝説』
畠中恵
『まんまこと』
万城目学
『鹿男あをによし』
三田完
『俳風三麗花』
森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』
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候補者・作品
北村薫男57歳×各選考委員 
『玻璃の天』
連作3篇 389
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
5 「すでに一家を成した作家(引用者中略)というのが正直な感想だった。」
浅田次郎
男55歳
15 「長い討議の時間が費された。」「個人的な趣味というより全体の調和という点で、どうしても推すことができなかった。」
渡辺淳一
男73歳
15 「それなりの趣向をこらしているが、全体の仕上がりはいささか回り道が多くて甘い。これがこの作者のベストの作品なのか、いつも歯痒い思いが残る。」
平岩弓枝
女75歳
0  
阿刀田高
男72歳
14 「――どうしてこれなのかなあ――私は戸惑いを覚えた。なぜいま昭和の初めの上流社会を描いて、古典的なトリックをあしらうのか、それでなにを訴えるのだろうか、小説観のちがいを感じ、良質の作品とは思いながらもポジティブに評価できなかった。」
北方謙三
男59歳
13 「私にとっては心地よいバラードだった。文章を平明に書くということは、派手な技巧を駆使するより、ずっと難しいことだ、と私は思う。」「丸をつけて選考に望み、決選投票では圧倒的な支持の受賞作に次いだので、なんとか二作受賞をと模索したが、わずかに届かなかった。」
宮城谷昌光
男62歳
2  
林真理子
女53歳
17 「直木賞には「時の運」というものが確かにある。その点北村薫さんはお気の毒であった。キャリア・人気とも充分のものがおありになりながら、今回も候補作に恵まれなかった。戦前の上流社会を描くというのは、当事者以外には非常にむずかしい。(引用者中略)それに果敢に挑戦なさっていたが、やはりリアリティを得ることが出来なかったように思う。」
井上ひさし
男72歳
13 「手練れの作者の研ぎ澄まされた筆捌きに感心した。けれどもヒロインの周囲に起こる事件はどうも奇想の色が濃くて、せっかくのおっとりした雰囲気とは合わないような気もするのだが。」
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他の候補作
松井今朝子
『吉原手引草』
桜庭一樹
『赤朽葉家の伝説』
畠中恵
『まんまこと』
万城目学
『鹿男あをによし』
三田完
『俳風三麗花』
森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』
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候補者・作品
桜庭一樹女35歳×各選考委員 
『赤朽葉家の伝説』
長篇 737
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
12 「物語作家としてのたくましい膂力に圧倒されると同時に、年代記風の語り口を採りながら不思議なファンタジーの味を織りこむ手腕に、未知の世界をのぞく戦慄をおぼえた。ただ、長篇ほど緊密な構成力が必要であることに留意すべき点だろう。」
浅田次郎
男55歳
8 「別の選考会における選評に述べた通りである。」「すぐれた作品ではあるが、直木賞には力及ばずとする階級主義的評価を寛恕していただきたい。」
渡辺淳一
男73歳
9 「壮大なでたらめを書くスタミナは認めるが、そのでたらめが妖しい凄みにまで昇華されていない。ところどころ戦後の日本の歩んできた過程が挿入されているが、その視点も平凡である。」
平岩弓枝
女75歳
10 「今回の候補作の中で心に残った」「殊に第二部の毛毬が中心に躍り出たあたりからの迫力には瞠目した。」
阿刀田高
男72歳
11 「小説として瑕瑾を感ずるところもあったが、土俗的な家系を三代にわたってたどった筆力はなかなかのものだ。第三部の弱さが気になったが、まっすぐに小説に取り組んでいる姿勢には目を見張るものがある。熱気がある。」
北方謙三
男59歳
17 「小説の筋肉の力とでも言うべきものを感じた。特に、毛毬の章は秀逸であった。この力量を、私は率直に評価する。ただ全体としては、千里眼に導かれながら、つまりなにが起きるのかわかる状態で読書せざるを得ない、という弱点があったと思う。」
宮城谷昌光
男62歳
14 「特異な才能をもっているのはあきらかであり、この作家と併走できる編集者がいれば、そうとうにすぐれた人である。桜庭氏は右顧左眄することなく、信念をつらぬいてゆけばよい。多作である必要もない。いつか巨大な現代批判が作品として結実するようにおもわれる。」
林真理子
女53歳
10 「桜庭一樹さんの愚直さは捨てがたい。この人の「小説はこうあらねばならぬ」という考えは、今はもう少々古くさいものかもしれないが、それでも真摯に大作に挑む姿勢と、それを書き終えた能力は高く評価出来る。」
井上ひさし
男72歳
18 「力感あふれる意欲作である。とりわけ、少女漫画家赤朽葉毛毬の閃光のような生き方を剛直な文章で彫り上げた第二部は掛け値なしにすばらしい。ただ、戦後史を語るときに突然、年表のような記述が現われるのが惜しかった。」
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他の候補作
松井今朝子
『吉原手引草』
北村薫
『玻璃の天』
畠中恵
『まんまこと』
万城目学
『鹿男あをによし』
三田完
『俳風三麗花』
森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』
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候補者・作品
畠中恵女47歳×各選考委員 
『まんまこと』
連作6篇 529
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
5 「これからの作家であるというのが正直な感想だった。」
浅田次郎
男55歳
11 「面白く読んだが、構成上必要なものと不必要なものとの選別が曖昧な点、文章表現の正確さ、適切さを欠いている点、登場人物があらゆる場面で映像的に定員過剰である点、視点者の心理が不在である点、等々が気にかかり次作に期待することとした。」
渡辺淳一
男73歳
7 「主人公に魅力がなく、江戸ものの粋と活気に欠ける。作品の読後感は悪くはないが、人間視点の甘さと作者の素直さが小説を単調にしているようである。」
平岩弓枝
女75歳
0  
阿刀田高
男72歳
11 「従来の捕物帳のたぐいがほとんど刑事事件を扱っているのに対し、この趣向(引用者注:民事事件を名主の息子が解くこと)は作者の新発見であり、評価すべき特徴だろう。だが、江戸の気配が匂って来ない。身を預けて小説の世界に浸ることができなかった。」
北方謙三
男59歳
21 「この作品の鍵のひとつは、十六歳の時の主人公の変化ではないか、という気がした。」「(引用者注:主人公の変化のもとになった)傷が、深く暗いものである必要はないが、そこを安直に扱ったと私に感じさせたところで、この作品は拡がりを失い、小さくまとまったと感じた。」
宮城谷昌光
男62歳
2  
林真理子
女53歳
4 「これといった魅力は感じなかった。」
井上ひさし
男72歳
22 「拵えは巧みである。」「でも、どうしてこうも読みにくいのか。(引用者中略)読者に負担を強いる文章が読みにくいのだ。それ以前に、登場人物たちが揃って無表情で無感情なのも、この作品を読みにくくて、冷ややかなものにしている。」
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他の候補作
松井今朝子
『吉原手引草』
北村薫
『玻璃の天』
桜庭一樹
『赤朽葉家の伝説』
万城目学
『鹿男あをによし』
三田完
『俳風三麗花』
森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』
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候補者・作品
万城目学男31歳×各選考委員 
『鹿男あをによし』
長篇 674
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
5 「(引用者注:森見登美彦とともに)平成の新興芸術派とでもいうべき新風の到来を感じたのは事実である。」
浅田次郎
男55歳
19 「破綻のない小説である。」「もし接吻によって浄身が成るという大団円から、帰納的にストーリーを構築したのだとすれば、いよいよ安易な作法であると私は思う。前途有望な才能であると思えばこそ、小説の冒険を試みてほしいと願わずにはおられない。」
渡辺淳一
男73歳
4 「部分的に良質な感性が垣間見えるが、鹿との会話は安易すぎる。」
平岩弓枝
女75歳
15 「風変りな面白さで印象に残った」「発想は上出来で、ゆったりした書き方も好もしい。作者は意識的に軽快な作風をねらったと思うが、万人向きではなかったのかも知れない。」
阿刀田高
男72歳
11 「才筆である。」「結構なファンタジーだが、私はこういう作品は現代の社会や人間に対する寓意性がなければたわいないものになってしまう、と考える立場なので積極的には推せなかった。」
北方謙三
男59歳
14 「描写力があり、面白く読めた。ただ、私が面白いと感じて引きこまれた主人公の現実が、すべてファンタジー的な要素から起因してくるとなると、物語の都合だけではない必然性が要る、と思わざるを得ない。私にとっては、剣道の試合の迫真力の方が、はるかにリアリティのあるものであった。」
宮城谷昌光
男62歳
9 「大いに関心をもった。かくれた工夫がなされているのに、顕現されたものが品格の高さを保持できていないのは、残念である。」
林真理子
女53歳
21 「面白いことは面白いのであるが、途中からいっきにだれてくる。」「読み手よりもまず書き手が楽しんでいるのは、最近の若い作家によく見られる傾向である。自分が真先に面白がり楽しんで、この輪の中に入ってくる読者だけを迎え入れる。」「ありきたりな言い方であるが、(引用者中略)あまりご自分の才に溺れないでほしい。」
井上ひさし
男72歳
22 「作者のしたたかな知的膂力を感じた。またこのごろ大流行の「高校運動部の感動小説」への風刺もあるし、なによりも、『坊つちやん』譲りのテンポのいい文章にずいぶん笑わせられた。」「こういう愉快な作品は顕彰する値打ちがある……と思ったが、(引用者中略)最終的には票を投じなかった。」
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他の候補作
松井今朝子
『吉原手引草』
北村薫
『玻璃の天』
桜庭一樹
『赤朽葉家の伝説』
畠中恵
『まんまこと』
三田完
『俳風三麗花』
森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』
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候補者・作品
三田完男51歳×各選考委員 
『俳風三麗花』
連作5篇 543
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
29 「今回、たのしんで読んだ作品の一つ」「遊ぶ、という営みには、ある断念が必要だ。読物としての境界を超えないことも、また一つの立場である。」「昭和初期という時代の描きかたに、わずかに物足りなさも感じる場面もないではないが、まずはよくできた読物として好感をもった。」
浅田次郎
男55歳
17 「感心した作品である。ダイナミックな展開こそないものの、ディテールを繋ぎ合わせて全体をきれいにまとめ上げるセンスは、自己の資質をよく心得ているからであろう。ただし、見知らぬ時代を書くにあたって、精密なのだが巨視的に捉えていないという、いわば近視眼的な弱点を感じた。」
渡辺淳一
男73歳
19 「もし趣味小説というジャンルがあれば、それなりの秀作かもしれないが、小説という形式でなにを書きたかったのか。その点になるといささか曖昧で、迫力に欠ける。」
平岩弓枝
女75歳
10 「大変に手馴れた作品で、これだけ俳句を多用して、それが作品に見事なほど同化しているのは作者に力があればこそと思う。」
阿刀田高
男72歳
14 「この作風をよしとする限り第一級の作品だろう。」「だが俳句を除いて小説的な部分を取り出すと、弱い。あえて略言すれば俳句まじりの小説で、俳句の部分だけが優れているケース、これをどう考えるか、私はためらいを覚えた。」
北方謙三
男59歳
9 「句会、俳句を精読してしまったので、読むのに苦労した。」「古風なものの中に新しいものを捜したが、私には見つけられなかった。」
宮城谷昌光
男62歳
14 「いわゆる巧い小説で、知識、構成力、言語感覚などが上級である。小説がもっている情報量も豊富で、しかも正確であるように感じられたので、衒学的であるとはおもわなかった。しかしながら上手の手から水が漏るところがあり、推しきれなかった。」
林真理子
女53歳
9 「出てくる俳句がどれも秀逸なのと、推敲を重ねるプロセスがもはや物語になっている。が、水墨画のような味わいが、私にはやや物足りなかった。」
井上ひさし
男72歳
19 「これほどうまくできた俳句小説はめずらしい。昭和初年の雰囲気を描き出す手つきも文章もみごとなもので、これが一個の佳作であることは疑いを入れないが、句会から外界へ一歩踏み出すと、生起する事件がやや粗っぽく、せっかくの佳作の艶を消してしまったようだ。」「いまでも心残りな作品だ。」
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他の候補作
松井今朝子
『吉原手引草』
北村薫
『玻璃の天』
桜庭一樹
『赤朽葉家の伝説』
畠中恵
『まんまこと』
万城目学
『鹿男あをによし』
森見登美彦
『夜は短し歩けよ乙女』
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候補者・作品
森見登美彦男28歳×各選考委員 
『夜は短し歩けよ乙女』
長篇 513
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
五木寛之
男74歳
22 「近作『新釈 走れメロス』の怪走ぶりに驚き、ついに文壇をひっくり返す大天狗作家の出現かと期待したものの、今回の候補作いささか肩すかしをくらった感をぬぐえなかったのは私ひとりだろうか。」「(引用者注:「吉原手引草」との)二作受賞もまた良しと考えて選考の席にのぞんだのだが、支持する声が少なかったのは、意外だった。」
浅田次郎
男55歳
8 「別の選考会における選評に述べた通りである。」「すぐれた作品ではあるが、直木賞には力及ばずとする階級主義的評価を寛恕していただきたい。」
渡辺淳一
男73歳
7 「いかにも今風の男女の姿を描いているが、ファンタジーかお笑いか。重い、真摯なものを避け、斜めに書く姿勢をよしとしている作風が鼻につく。」
平岩弓枝
女75歳
0  
阿刀田高
男72歳
14 「評価の分かれる作品だ。」「私は筋のよさを感じたが、だからどうした、と小説の本筋としての価値を問われると、やはり躊躇を覚えてしまう。――もう一作、待ちたい――と考えた。」
北方謙三
男59歳
9 「最後まで、私の心に食いこんでくるものがなかった。この男女に、どう感情移入せよというのだ、という思いがつきまとまった。才気は感じるが、ペダンチックな部分にも、私は馴染めなかった。」
宮城谷昌光
男62歳
2  
林真理子
女53歳
27 「面白いことは面白いのであるが、途中からいっきにだれてくる。」「ギリシャ神話を彷彿とさせるような清新さに最初はハッとするものの、最後まで一本調子が抜けない。作者が“これでよし”と思う気持ちが強過ぎるからだ。ありきたりな言い方であるが、(引用者中略)あまりご自分の才に溺れないでほしい。」
井上ひさし
男72歳
23 「独特な物語性を備えた快作であって、美点は多い。たとえば、青春小説の独り善がりの青臭さを、わざと悪趣味に誇張して見せる批評的な態度、巡り逢い青春小説の御都合主義を徹底的にからかうおもしろさ、(引用者中略)読者との距離をできるだけ縮めようと努力する文体、一つの事件を男と女の側から見ようとする複眼の手法……いいところを挙げると際限がない」
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他の候補作
松井今朝子
『吉原手引草』
北村薫
『玻璃の天』
桜庭一樹
『赤朽葉家の伝説』
畠中恵
『まんまこと』
万城目学
『鹿男あをによし』
三田完
『俳風三麗花』
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