直木賞のすべて
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渡辺淳一
Watanabe Jun'ichi
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生没年月日【注】 昭和8年/1933年10月24日~平成26年/2014年4月30日
在任期間 第91回~第150回(通算30年・60回)
在任年齢 50歳8ヶ月~80歳2ヶ月
経歴 北海道生まれ。札幌医科大学医学部卒。
受賞歴・候補歴
  • 第12回同人雑誌賞(昭和40年/1965年)「死化粧」
  • |候補| 第54回芥川賞(昭和40年/1965年下期)「死化粧」
  • |候補| 第57回直木賞(昭和42年/1967年上期)「霙」
  • |候補| 第58回直木賞(昭和42年/1967年下期)「訪れ」
  • |候補| 第61回直木賞(昭和44年/1969年上期)『小説 心臓移植』
  • 第63回直木賞(昭和45年/1970年上期)「光と影」
  • |候補| 第10回吉川英治文学賞(昭和51年/1976年)『冬の花火』
  • |候補| 第13回吉川英治文学賞(昭和54年/1979年)『神々の夕映え』
  • 第14回吉川英治文学賞(昭和55年/1980年)『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』
  • 第48回文藝春秋読者賞(昭和61年/1986年)「静寂の声」
  • 第32回新風賞(平成9年/1997年)『失楽園』
  • 第72回文藝春秋読者賞(平成22年/2010年)「天上紅蓮」
処女作 「死化粧」(『新潮』昭和40年/1965年12月号)
個人全集 『渡辺淳一全集』全24巻(平成7年/1995年10月~平成9年/1997年7月・角川書店刊)
直木賞候補歴 第57回候補 「霙」(『文學界』昭和42年/1967年6月号)
第58回候補 「訪れ」(『文芸』昭和42年/1967年12月号)
第61回候補 『小説 心臓移植』(昭和44年/1969年3月・文藝春秋/ポケット文春)
第63回受賞 「光と影」(『別冊文藝春秋』111号[昭和45年/1970年3月])
サイト内リンク 直木賞受賞作全作読破への道Part3
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

直木賞 91 昭和59年/1984年上半期   一覧へ
選評の概要 二作を推す 総行数52 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男50歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
16 「一段抜きんでていた」「安定した文章とともに、小道具の出し入れも巧みで、なかなかの小説巧者である。」「強いて難点をあげれば、巧みさのあまり小説をつくりすぎる点で、子供に手紙を投書させるあたりは勇み足であろう。しかし読後、上質の蒸溜酒を飲んだようなまろみがある。」
山口洋子
女47歳
12 「よくできていた。」「山口氏は男を書いてほとんど異和感を与えない。今回の作品は二人の女のあいだで揺れる男をよく追いこんでいるが、最後で書き流してしまったのが惜しまれる。」
男47歳
10 「書き下し長篇にしてはいささか平板で、世に出ぬ芸能人を描きながら、それらしい屈折や臭みが感じられない。」「よく調べられた力作で、作者がてんのじ村にかけた意欲を、感じることができる。」
選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年10月号
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直木賞 92 昭和59年/1984年下半期   一覧へ
選評の概要 実感と頭と 総行数60 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男51歳
候補 評価 行数 評言
津木林洋
男33歳
10 「一読作者は女性かと思うほど、一風変った女二人の生活がよく書けていた。とくにドラマらしいドラマがなくて地味だが、ディテールがたしかで、実感と頭でつくられた部分が違和感を与えない。」「わたしは感心した。」
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年4月号
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直木賞 93 昭和60年/1985年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数52 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男51歳
候補 評価 行数 評言
女48歳
14 「ところどころ力でねじ伏せる荒さが気になるが、いずれも手慣れた材料を手堅くまとめている。もともと実力はあり、埋蔵量も豊かな人だけに、受賞を機に、さらに飛躍されるに違いない。」
  「今回は残念ながら、強く惹かれる作品はなかった。」「受賞作なしか、この二人(引用者注:山口洋子と林真理子)のいずれが受賞でもかまわない、という気持で出かけた。」
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年10月号
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直木賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 新鮮な感性と柔軟な文章 総行数57 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男52歳
候補 評価 行数 評言
男60歳
12 「的確な文章で魚河岸の人々を描き、安定している。」「だが舞台廻し役の吾妻健作の実態がわかるあたりから、リアリティに欠け、感傷に流れすぎている。これを「爽やか」とみる人が多かったが、わたしにはいささか「甘い」と映った。」
女31歳
17 「「最終便に間に合えば」は、ラストがやや曖昧に流れ、「京都まで」は逆に最後で焦点を絞りすぎた。」「いずれにせよ、この作者は新鮮な感性と柔軟な文章をもち、人物を見る目も行届いている。四回連続候補になり、いずれも八十点以上の作品を書けるのは、相当力のある証拠である。」
  「強い作品が二本と、弱い作品が二本拮抗するとき、往々にして二作受賞ということが生じるようだが、今回はその後者の例というべきかもしれない。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年4月号
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直木賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 心に沁みるものを 総行数59 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男52歳
候補 評価 行数 評言
女56歳
22 「丁寧な仕事で、色街や芝居の資料もよく咀嚼され、味わいのある作品であった。」「女流作家には珍しく、周辺の男達がよく描けているところにも感心した。この小説は、女性の一種のビルドゥングスロマンとしても読むことができるが、してみると、少女期から二十代半ばまで、というのでは少しもの足りない。このあたりが、いま一つの盛り上がりに欠け、華やかさを添えられなかった原因であろう。」
  「面白ければいい、という意見もわからぬわけではないが、少なくとも直木賞受賞作は、面白さとともに心に沁みるものが欲しい。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年10月号
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直木賞 96 昭和61年/1986年下半期   一覧へ
選評の概要 新鮮なフィクションを 総行数52 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男53歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
19 「わたしは、いわゆる冒険小説なるものをあまり好きではないが、(引用者中略)構成力と文章力には感心した。」「欠点も含んでいる。しかしこれだけの長丁場をさほど飽きさせず書ききった、意欲とエネルギーは評価しなければならない。」
男55歳
27 「たしかに初々しさが魅力だが、それをこえる小説としての手ごたえということになると、いささかもの足りない。」「正直いって、この作品が受賞なら、早坂氏の作品が受賞してもおかしくなかった。」「いま一つ積極的に推す気になれなかったのは、いずれも自伝的・エッセイ的要素が強く、しかるべき人が五十年以上も生きてくれば、この種のものを一本ぐらいは書けそうに思ったからである。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年4月号
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直木賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 あえて苦言を 総行数69 (1行=14字)
選考委員 渡辺淳一 男53歳
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男41歳
11 「資料とフィクションの部分がよく馴染み、維新という革命の非情さを背景に、追い詰めていく男と追われる者の息づかいが伝わってくる佳作であった。」「一作ならこの作品かと思って推したが、多数にはいたらなかった。しかし受賞しておかしくない出来栄えであった。」
男55歳
8 「きわ立った鋭さはないが、安心して読める手堅さがある。強いて不満をいえば、読物すぎて、しみじみしたものに欠けるところだが、直木賞候補八回という努力には敬意を表せざるをえない。」
女28歳
19 「この作家の才能を認めるのにやぶさかではないが、この作品集はいかにも軽くて、小説づくりの裏が透けて見えすぎる。」「男女の小説はもう少し五官の感触みたいなものでつむぎだしていかないと、上すべりになってしまう。」「前途のある作家だけに、あえて苦言を呈して、受賞に同調した。」
  「今回の候補作は多彩で、それなりに読み甲斐があったが、さてここから一作をとなると、戸惑わざるをえなかった。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年10月号
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直木賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 プロの芸 総行数99 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男54歳
候補 評価 行数 評言
男54歳
19 「一人の作家がしかるべき年齢に達すれば、それなりに書けるものかもしれない。その意味では危げなく無難で、それがまたもの足りないともいえる。しかしさすがに人間を見る目はたしかで、それを柔軟な文章がしっかりと支えている。」「この力を持っている作家に、直木賞を与えないという理由はないだろう。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号
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直木賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 藤堂氏を推す 総行数89 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男54歳
候補 評価 行数 評言
藤堂志津子
女39歳
34 「(引用者注:最終的に残った西木、景山、藤堂のうち)最も票の少なかった藤堂志津子氏の「マドンナのごとく」を推した。この作品は一見、軽い風俗を描いているようで、読みすすむうちに、男女というよりは、オスとメスの孤独と虚ろさが浮きぼりにされてくる。」「新しい才能の出現であった。」「この種の小説を平板なリアリズムだけから批評するのは、酷というものであろう。」
男48歳
22 「最初から反対意見がなかったように、無難に書かれた小説らしい小説であった。」「わたしの好みからいえば、「端島の女」のほうが、ひたひたと地べたを歩くような女の生きざまが滲んできて心を惹かれたが、いささか盛り上りに欠ける。二作とも、いま一つの感はあるが、手堅い人であり、受賞に異論はない。」
男41歳
45 「景山民夫氏の才能を、わたしは否定する気はない。それどころか、大変な才気だと思うが、レポーターかプロデューサーの才で、小説家の才能とは少し違うようである。」「これを小説として読むときわめて退屈で、肝腎の人間が少しも生きていない。」「最終的に訴えようとする核実験反対や環境保護の重要さもありきたりである。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年10月号
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直木賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 直木賞のバランス 総行数109 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男55歳
候補 評価 行数 評言
女39歳
30 「一見、浮わついた風俗を描いているようで、その底に醒めた虚無や孤独が潜んでいるところが、この作品を一段、奥の深いものにしている。」「いくつかの欠点もあるが、それを越えてこれだけのロマネスクを構成した力は評価すべきであろう。」「むしろ芥川賞向きという意見もあったが、ややエンターテインメントに傾きすぎた直木賞のバランスのためにも、こうした作品の受賞は歓迎すべきである。」
女35歳
20 「なによりもこの作品の好ましいところは、登場人物がいずれも心優しく、それを見詰める作者の目がやわらかく全体を包みこんでいるところである。」「冗長すぎる点や、人間への視点が通俗で、清親の人間像がいま一つ浮かびあがってこないといったもの足りなさもある。しかし清親を書いたというより、江戸から東京へ移る庶民の生きざまを書いたとすると、その疵もさほど気にならなくなってくる。」
笹倉明
男40歳
13 「裁判の一審における粗雑さがいささか気になるが、心理劇としても読みごたえがある。ありきたりの殺人事件が登場しないところも新鮮で新しい推理小説の萌芽を感じさせられたが、意外に支持する人は少なかった。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号
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直木賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 好感のもてる作品 総行数123 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男55歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
15 「子供からの視点で書かれ、そこに爽やかさがあるが、同時に一つの限界もある。」「強いて難点をあげると、ディテールにこだわりすぎて小さくまとまりすぎ、いささか筆ののびを欠くところだが、全体として、好感のもてる作品に仕上がっている。」
男40歳
31 「前回、わたしはこの人の作品をかって推したが受賞できず、今回、この作品で受賞となったが、わたしは前回のほうをかう。」「主人公のストリッパーは遠い国からきた可哀相な女という域を出ず、前回のレイプされた女の妖しさと不思議さには及ばない。」「ピンスポ一本のつながりという着想も面白いが、いま一つ説得力に欠ける。」
  「今回はそれなりにまとまっていたが、そこから受賞作をとなると、決定的なものがなかった。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号
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直木賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 作者の熱気 総行数89 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男56歳
候補 評価 行数 評言
男68歳
16 「前半の「あたくし」がいささか嫌味で、三つに分けた構成に難点があるが、小伝と権八の回想部分は生き生きとして迫力がある。」「文章はたしかに古風だが、これほど古風だといっそ新しくも見えてくるし、なによりも、作者の書きたい熱気があふれているところが好ましかった。」
男43歳
12 「文章が安定しているところが強味である。だが内容的には、(引用者中略)無理なこじつけやアンフェアな部分が多く、素直についていけなかった。推理のために話をつくりすぎた感があるが、力のある人ではある。」
  「今回は最終的に票が二つに割れ、結果として二作受賞となったが、本来は受賞作なしが妥当かとも思う。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年3月号
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直木賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 幸せな作品か 総行数50 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男56歳
候補 評価 行数 評言
男57歳
39 「題材がいずれも似ていて、短篇集としてはいささか退屈な感じを否めない。」「いくつかの作品においてラストの書き込みが浅く、読者を素直にある充足感に導かないもどかしさが残る。」「しかしこれだけ独自の小説世界をもち、それを長年追い続けていることは貴重なことである。」「受賞に、反対する気はなかった。」
  「今回はさまざまな傾向の作品が集っているが、いずれもいま一つ決め手に欠け、受賞作なしが妥当かと思って選考会に出かけた。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年9月号
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直木賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 鮮やかな義江像 総行数101 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男57歳
候補 評価 行数 評言
男65歳
24 「今回のはまさしく手応えがあった。」「読みすすむうちに主人公に惹かれ、頁を追うのが急がされたのは久し振りである。」「瑕瑾をこえて、さまざまな屈折を経て成長した義江という人物が鮮やかに浮かび上り、しかもその主人公を見る作者の目のあたたかさがよく伝わってくる。」
  「今回の候補作は変化に富み、それぞれに個性的で読み甲斐があった。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
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直木賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 長篇の問題点 総行数86 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男57歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
16 「候補作中、もっとも文章のセンスがよく、人物のデッサンもたしかで、この文章だけでプロの作家として充分の資格がある。しかし強いて難点をいうと、全体に洒落てはいるが風俗描写に終始し、そこからつき抜けた、心にこたえるものがない。」「わたしは受賞作なしを主張し、最後は「青春デンデケデケデケ」一本の支持に廻った。」
男46歳
18 「もっとも長篇らしい長篇で、戦争あり色模様ありで読者を飽きさせない。」「スケールの大きさを評価する声もあったが、春秋の史伝を追えばむしろ当然のことで、それを埋める人物や風景なぞ、ディテールの描写が浅く、作品のふくらみを欠く。」
  「このところ直木賞の候補作が長篇に集中し、魅力的な短篇が見られないのはいささか淋しいことである。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年9月号
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直木賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 慎重論として 総行数89 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男58歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
19 「頭一つ抜けて、安定した筆力が感じられた。」「全体としてまとまり、前回より一段と巧みになったが、その分だけ、作者の一途さは薄れたようである。個人的な好みからいえば、以前の「闇の葬列」のほうが好きだが、その他のさまざまな候補作に見せた安定した力も含めて、積極的に評価した。」
男44歳
13 「記憶という不確かなものに挑んだ意欲はかうが、全体に抽象化が不完全で、生でぶつけすぎるところがある。このため、やや同工異曲の嫌いあり、ここから一歩すすめて妖しい深層心理に行きつくためには、いまの明晰な文体では無理かもしれない。」
  「たしかに直木賞もかつては新人賞的な意味合いがあったが、いまや世間的な知名度も高く、受賞したことが立派な肩書きになる時代である。」「当然、それに見合った秀作に賞を出すべきで、その都度、少しうまいとか、小器用といったことで授賞にするのは考えものだろう。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年3月号
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直木賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 手足の文 総行数84 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男58歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
22 「なかなか巧みな小説で、いわゆる「手足(原文ルビ:てだれ)」という感じを受ける。とくに文章の間合いというか、切り上げの感覚がよく、この技だけでも、直木賞作家として充分の力をもっている。」「強いて難点をあげると、いずれも仕上げがやや浅く、感傷に流れすぎるようである。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年9月号
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直木賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 目のたしかさ 総行数100 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男59歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
21 「頭一つ抜けていた。なによりもこの作者の優れているところは、人間を見る目がたしかなことで、その目が老獪ともいえる文章できっかりと裏打ちされている。」「気になったのは、全体としてじじくさく華がないところだが、もしかするとこの作家は、表面じじくささを装いながら、意外に化ける余力を秘めているのではないか。そのあたりへの期待もこめて、授賞に賛成した。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号
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直木賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 二人の作家 総行数96 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男59歳
候補 評価 行数 評言
女40歳
43 「いくつかの疑問と無理があり、この点だけを問題にすれば、かなりの減点はまぬがれない。だがそれにもかかわらず受賞作となりえた理由のひとつは、圧倒的な文章の強さにあった。」「いまひとつ惹かれたのは、表面は推理小説の形をとりながら、その底に、人間を描こうとする真摯な目が光っていることである。」
女55歳
30 「いかにもこの作者らしい丁寧な仕上りで、読むうちに、その時代と人物がふっくらと浮き出てくる。」「この作品によって、男の従属物のように書かれていた江戸の女が、ようやく正当に評価されたというべきだろう。」「巧みさはいうまでもないが、さらにまろやかさと初々しさが加味されて、爽やかで引締った好短篇集となっている。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年9月号
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直木賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 安定感と勢いのある作家 総行数108 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男60歳
候補 評価 行数 評言
男52歳
20 「いままでほとんど書かれていない世界に踏みこんだところが、第一の手柄であった。さらに登場人物が善玉、悪玉といった通俗的な枠を越えて、冷静に等身大に書いているところにリアリティがあり、作者の目のたしかさを感じさせる。もっとも全体のつくりはやや平板で、文章もいまひとつ危うげなところがある」
男37歳
25 「いま登り坂の作家の勢いが感じられる。」「裕福な彼等(引用者注:登場人物の香川兄弟)が、麻薬の売買に手を出した理由も弱く、最後が腰砕けになっている。」「あまりにエンターテインメントに過ぎて、手応えが軽すぎるが、シリーズ作品で、他にそうでもないものもあるところから納得した。この作品で最も惹かれたのは晶という女性で、この女性の魅力と、全体を貫く乾いた感性をかって、受賞に賛成した。」
  「今回、最終候補に残った七篇は、それなりに書けてはいるが、さて当選作はとなると、やや決定打に欠ける憾みがあった。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年3月号
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直木賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 「化ける」ということ 総行数83 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男60歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
20 「氏が追い求めてきた会津藩のなかから、松江豊寿という魅力的な人物を探し出してきたことが、第一の手柄であった。その主人公を、よく整理された資料をもとに、安定した文章で適確に描き出し、姿のいい小説に仕上っている。」「その姿のよさが、ときに優等生を見るようなもの足りなさに変ることもあるが、この主人公の魅力と読後感の爽やかさは、それを補って余りある。」
男44歳
24 「この作者の以前の候補作やスポーツ小説は、意気込みのわりに内容が浮いて不満だったが、今回の「帰郷」はそこから抜けでて鮮やかな変身を遂げている。」「一見、拙そうな文章を意図的に積み重ねながら、男女のいわくいいがたい、非論理の論理とでもいうべきところを巧みに描き出している。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年9月号
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直木賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 技より人間を 総行数115 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男61歳
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女36歳
14 「緊張感のある文章で、虚構の小説空間を築きあげた力技に感服した。もっとも虚構の土台となる物語りには、ときにご都合主義や手軽さも見える」「あえて授賞ということになればこれ一作かとも思ったが、大勢を制するにはいたらなかった。」
  「今回の候補にのぼった作品を含めて、このところ出てくる候補作のなかには、技術や方法論だけ先走って、最も大切な人間を描くという点において、首を傾げたくなる作品が多かった」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年3月号
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直木賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 三作が残ったが 総行数118 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男61歳
候補 評価 行数 評言
内海隆一郎
男58歳
26 「文章が安定し、登場人物のデッサンも適格で、もっとも安心して読めた。」「今回は実在のやや癖のある人物を主人公にしたせいか、かなり引き締まったようである。それでもなお不満の声があったが、そこから先は作家の資質的なもので、そこまで責めるのは少し酷かもしれない。」
男63歳
24 「「夜行列車」と「陽炎球場」がそれなりの出来で、文章も繊細だが、全体に負の人物に甘えすぎて、感傷に流れすぎる傾向がある。むろんそれをよしとする人はいるだろうが、そうしたつくりの裏側が見えてくると、興醒めすることもある。作中、最も新しい作品といわれる「消えたエース」が最も見劣りしたのも、気にかかるところであった。」
  「この上位三作(引用者注:「百面相」「夜を賭けて」「白球残映」)から受賞作を選ぶとなると、それぞれに問題があり、受賞作なし、が妥当なところかと思ったが、それでは二期続けてないことになり、このあたりが気になったことはたしかである。」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年9月号
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直木賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 小池氏をかう 総行数83 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男62歳
候補 評価 行数 評言
女43歳
53 「久しぶりに大人の男女の小説をわくわくしながら読む楽しみを味わった。」「軽井沢のシーンまでの瑞々しさはなかなかのもので、この作家の並々ならぬ力量を示している。最後に謎解きを見せてからは、やたらに理に落ちてつまらなくなったが、それは作者が推理小説を書いてきたせいかと、一種の情状酌量のような気持から、受賞に賛成した。」
男47歳
15 「文章の質がよく、テンポも快適で、要所要所も巧みに描かれているが、秀才が書いた小説といった印象を拭えない。とくに最後の爆発事件の背景や殺意の謎解きになると、動機が浅く、一人よがりで説得力に欠ける。」
  「推理は小説を読ませる手法ではあっても、それだけが主目的では困る。むろんその種の小説が存在することはたしかだし、そういう小説を好む読者がいることもたしかだが、それは自ずから、直木賞の対象とは別のものだと、わたしは考えている。」
選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年3月号
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直木賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 推理ばやり 総行数88 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男62歳
候補 評価 行数 評言
篠田節子
女40歳
18 「この人は前に、科学恐怖小説とでもいうべきものを書いていたが、それよりはるかに、今回の作品のほうが内的必然性があり、ようやく本来の鉱脈を見つけたような気がする。部分的欠点はいくつかあるが、今度の候補作のなかでは、最も人間を直視し、文学的感興を感じることができた。」
女35歳
20 「たしかに女刑事とオジさん刑事のユニークな関係は、それなりによく書けてはいるが、これが推理小説だといわれると、おおいに疑問が生じてくる。結局、人間関係さえ書けていれば、いいではないかという意見が大勢を占めて受賞となったが、「新潮ミステリー倶楽部特別書き下ろし」と、堂々と書いてあるのだから、表示に難あり、ということになりかねない。」
  「(引用者注:最近の候補作は)いずれも立派な単行本で、しかも一流出版社から出されたものばかりである。」「それだけ野に遺賢がなくなったのか、それとも出版社が容易に本を出すようになったのか。」「それにしても、いまは推理小説全盛。(引用者中略)このあたりは、書くほうの問題というより、書かせるほうの問題で、推理小説にさえすれば、単行本にしてもらい易い、という思惑があるのかもしれない。」
選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年9月号
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直木賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 重い球筋 総行数81 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男63歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
32 「今回は一読して、坂東さんの「山妣」を推そうと思った。」「この作品には大きな難点がある。(引用者中略)三部にいたって、その緊張感が急速に崩れ、予定調和的な収束になっている。」「それを承知でなお推したのは、前作の「桃色浄土」を読んだときから、この作者の資質に惹かれていたからである。野球でいえば、球質が重いとでもいうのだろうか。」
選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年3月号
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直木賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 二人の作家 総行数111 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男63歳
候補 評価 行数 評言
女41歳
28 「全体として連作風であるが、個々には独立した短篇になっていて、そこにはおのずから出来、不出来がある。」「後半の短篇は小説的ふくらみが失せて平板になり、ジハード(聖戦)というには、いささか常套的である。」「この作家は前回の「ゴサインタン」前々回の「カノン」と、常に水準以上の作品を発表して惜しくも賞を逸してきた。この意欲的なエネルギーと安定感を合わせたら、すでに受賞に価する充分な力をもっている作家と見て間違いないであろう。」
男45歳
28 「半ばまで読みすすんだところで、これなら間違いない、という確信を得た。冒頭の短篇から話が躍動して、人間がよく見えて説得力がある。」「小説づくりの巧さと裏腹にある、小説づくりのあざとさや、泣かせるツボを心得すぎていることからくる、仕上りの浅さなどが、長年小説を書いてきた者には気がかりである。」「それを越えて、この作家には、旬の作家だけがもつヴィヴィッドで艶な文章の魅力がある。」
選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年9月号
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直木賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 現代のビート 総行数88 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男64歳
候補 評価 行数 評言
桐野夏生
女46歳
51 「最も惹かれた。」「前半、とくに冒頭部が秀逸」「欠陥がないわけではなく、その一つは、雅子らが死体処理という異常な行動をするにいたる心理的背景が書き込まれていないことである。」「それでもなお、わたしがこの作品を推したのは、雅子という新しい女主人公を創り出した手柄と、この作品に一貫して溢れる作者の気迫と、現代の激しい鼓動、ビートのようなものを感じたからである。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年3月号
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直木賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 感想さまざま 総行数89 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男64歳
候補 評価 行数 評言
男53歳
23 「なによりもまず文章が力強く、人物の出し入れも奇智に富んで、ときに凄味さえ覚える。」「しかし一篇の小説として読むとそれなりに不満がないわけではなく、(引用者中略)主人公の「世を避けて……」という生きざまがいささか甘く、いわゆる私小説としての切実感は薄い。」「ラストの心中行が大袈裟なわりに通俗で、いささか拍子抜けの感がある。」
なかにし礼
男59歳
16 「なかなかに読みごたえがあった。この作品の魅力はまず文章のセンスがいいことで、会話の巧さとともに、車谷氏とは別の意味で、文章力ある作家である。」「部分的には、兄弟という関係に頼りすぎ、自らを凝視する部分が弱いが、そのあたりは、いい意味での開き直りができれば、かなり解決できる問題かもしれない。」
  「今回は、推理仕立ての小説が減って、それだけ普通の小説を読む楽しさを味わった。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年9月号
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直木賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 「理由」と「この闇と光」 総行数107 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男65歳
候補 評価 行数 評言
服部まゆみ
女50歳
21 「受賞作とは別に、最も注目した」「後半にいたって、突如、謎解きに堕して魅力を失ってしまう。」「だがそうした欠陥を除いて、前半、いや三分の二くらいまでの、いわゆる闇の部分は巧みな構成と幻想的な緊張感に溢れて、秀逸である。」「今回の候補作のなかではこの作品だけが、文学的な感興に満ちていて、小説を読む楽しみを味わった。」
女38歳
29 「単なる推理をこえて、現代の家族というか、人間模様を書きこんでいく幅の広さが魅力的である。」「いい面を認めたうえで、あえて不満をいえば、現代のいろいろな問題をそれなりに過不足なく描きはするが、そこから一歩すすめて、作家的な執念というか、こだわりのようなものが立上ってこない。」
選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年3月号
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直木賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 新種の誕生 総行数107 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男65歳
候補 評価 行数 評言
男31歳
35 「新たな小説の誕生を思わせる。」「一読しておおいに興味をそそられ、受賞作に推すと決めても、惜しいところで落選ということになるかと思っていたが、結果として、最も多くの支持を得た。」「全体のつくりは知的で諧謔的で、やや非現実的だが、意外に男女の本質をついて機智に富み、面白く読ませる。」
女47歳
33 「全体には推理的手法で、女の故郷喪失と、娘の突然の失踪などをからませて、読者を引きずっていくが、それにしてはラストの閉じかたが不親切である。」「作品の強さという点では前作の「OUT」が上で、登場人物もリアリティをもって生き生きとしていたが、前作に続いてこの作品を書きあげた、努力と気迫を評価するに、やぶさかではない。」
選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年9月号
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直木賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 ゲーム的小説 総行数92 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男66歳
候補 評価 行数 評言
男61歳
13 「正直いって、強い作品ではない。」「他の四作の、あまりにゲーム感覚的な小説に比べて、この小説はたしかに人間を見詰め、人間とは何かと考える姿勢があり、それが結果として他を大きく引き離す原因となった。」
  「時代はどのように変ろうとも、小説は事件や情報を書くことではなく、まず人間を書くことだという、古くて新しい原点を忘れないようにしたいものである。」
選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年3月号
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直木賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 爽やかな快作 総行数121 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男66歳
候補 評価 行数 評言
男31歳
37 「最も心を惹かれた。それは候補作のなかで、これだけが著者に切実なテーマを等身大の視点から、変に深刻ぶらずに、しかし強い迫力をもって描かれていたからである。」「一点だけ、この作家の作品を読むのは初めてであり、作品歴も少ないところが気がかりでもあった。」「この鋭さと感性があれば、他のものもそれなりに書いていけるだろう。そう思って、この作品を真先に推した。」
宇江佐真理
女50歳
26 「これまでとは異る大きな仕掛けをつくり、特異な登場人物と波瀾の人間関係を描いて楽しく読ませる。後半ドタバタめくが、久しぶりにわくわくしながら読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
乙川優三郎
男47歳
26 「以前からのテーマをさらに掘りこみ、ある小藩の内紛がよく書きこまれている。とくに執政側と下級武士との相克が、現代のサラリーマン社会を彷彿とさせ、面白く読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
男56歳
22 「大変な力作であった。」「努力はわかるが、全体の印象はやや退屈で、華やかな色がつかわれているわりには単彩の感じが残った。」「しかしこれだけの労作を仕上げた気力は見事で、若い金城氏と老練の著者の、二作受賞は悪くないと思って、賛成した。」
選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年9月号
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直木賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 人間を見る視力 総行数71 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男67歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
18 「最も惹かれた」「軽妙な文章もさることながら、人を見る目、いいかえると、人間への視力がたしかである。」「「あいあるあした」は快作で、この作家の強みは、女性の主人公はもちろん、異性である男の主人公もそれなりに書けることで、先の人を見る視力があるかぎり、長く着実に、小説を書き続けていくことができるだろう。」
男37歳
10 「日常に潜む、些細な感性の痛みを巧みに描いて、それなりにリアリティがある。登場するのはいずれも小市民で、それだけに華やかさには欠けるが、荒々しい小説が多い現代には、こういうひっそりと咲く花の良さも、評価してもいいだろう。」
選評出典:『オール讀物』平成13年/2001年3月号
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直木賞 125 平成13年/2001年上半期   一覧へ
選評の概要 文章の艶 総行数64 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男67歳
候補 評価 行数 評言
男51歳
24 「なによりも好ましいのは、文章にいい意味での気取りがあり、恋愛小説らしい艶が滲んできたことである。全体にやや古いという評もあったが、それは形の問題で、登場する女性たちはいずれもヴィヴィッドで、情熱的でもある。」「このところ、バイオレンスや推理小説が多いなかで、氏はひたすら恋愛小説を書き続けてきたが、なかでも今回のがもっとも充実して、優れている。」
選評出典:『オール讀物』平成13年/2001年9月号
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直木賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 二作受賞だが 総行数72 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男68歳
候補 評価 行数 評言
女46歳
12 「性格も生き方も違う、二人の女性の対比がユニークで楽しめた。」「全体に、軽いという批判もあったが、その軽みが、むしろこの作者の才能で、わたしには新鮮であった。」
男53歳
8 「作者の生真面目さがよくでた、誠実な作品である。時代考証もしっかりしていて、一つの家の流れを克明に追って好感を持てるが、欲をいえば、もう少し華が欲しかった。」
  「今回はいままで馴染みのない人が候補になって、新鮮な印象を受けたが、正直いって、圧倒的に強いものもないように思った。」「そういうなかで、二作受賞ということははたして喜ばしいことなのか、もう少し慎重でもよかったのではないか、というのが、わたしの意見である。」
選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年3月号
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直木賞 127 平成14年/2002年上半期   一覧へ
選評の概要 たしかな力量 総行数79 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男68歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
29 「きわだつ視点や鋭利な切り込みはないが、かわりに安心して読める手堅さがある。とくにこれまで候補になった長篇では、小説がパターン化して単調になる嫌いがあったが、今回は短篇集になった分だけ、一篇一篇が引き締って、印象が鮮やかである。」「真っ当なものを真っ当に書く、その力量はたしかで、経歴からいっても当然の受賞である。」
選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年9月号
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直木賞 128 平成14年/2002年下半期   一覧へ
選評の概要 人間を描いているか否か 総行数93 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男69歳
候補 評価 行数 評言
奥田英朗
男43歳
18 「(引用者注:最後に残った「マドンナ」と「空中庭園」のうち)わたしは、「マドンナ」のほうを推した。」「ごく平凡な中年男の心情をユーモアをまじえて過不足なく描いて説得力がある。前回より迫力に欠けるという評もあったが、こういう作品を的確に書けることはプロの作家の必要条件で、今回は見送りとなったが、なかなかの小説巧者だけに、次回を期待する。」
選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年3月号
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直木賞 129 平成15年/2003年上半期   一覧へ
選評の概要 小説とは 総行数98 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男69歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
23 「順調に才能を伸ばして受賞したのは、ごく自然のなりゆきであった。」「この作品には気負いとか、ことさらな努力といった気配がほとんど見当らない。いや、実際はあるのかもしれないが、ほとんど目立たず、それでもある年代の人々や街の雰囲気を鮮やかに描きだし、好ましい小説空間をつくりだしている。」
女39歳
16 「部分的には、一部、文章の不自然さや、冗長になりがちなところなど、やや問題はあるが、ともかくこれだけのものを書ききった、努力と力強さに感服した。この作家がこの一作で、大きな壁を突き破ったことは、間違いないだろう。」
選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年9月号
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直木賞 130 平成15年/2003年下半期   一覧へ
選評の概要 江國作品の魅力 総行数97 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男70歳
候補 評価 行数 評言
女39歳
57 「かなりの議論がたたかわされた。」「小説の表現を、ある意味で合目的的で、それなりの論理性を必要と考える人には、この種の小説は曖昧でまとまりがない、ということになるのかもしれない。」「小説は条理や論理を描くものではない。むしろその裏に潜む、非論理のリアリティを描くもの」「今回の江國作品は、この微妙で難しいテーマに果敢に挑み、前回よりさらなる進歩を見せている。」
男40歳
25 「比較的すんなり決った」「「嗤う伊右衛門」と比べるとやや劣る。」「わかり易くなった分だけ妖しさが失われたようである。」「最初の「赤えいの魚」がもっとも不気味で現代文明批評としても鋭いが、他はいささかつくりすぎて迫力に欠ける。しかしこれだけのものを再び書き上げ、さらに秀れた前作と重ねてみると、受賞は当然といわざるをえない。」
選評出典:『オール讀物』平成16年/2004年3月号
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直木賞 131 平成16年/2004年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数82 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男70歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
25 「前作のドタバタ的なくさい部分が抜けて、内容も多彩になり、安心して読めた。」「欲をいえば、名探偵をもってしても解決しないような病気が登場すると、さらに小説の深味がでただろう。」
男46歳
16 「マタギの富治の生き方をまっとうに、一途に書いて、この作品にかけた作者の気迫が伝わってくる。」「ただ内容的には、従来のマタギ小説の域を出ず、ストーリーや人物もややパターン化していて、物足りなさが残る。」
選評出典:『オール讀物』平成16年/2004年9月号
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直木賞 132 平成16年/2004年下半期   一覧へ
選評の概要 新しい女性小説 総行数73 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男71歳
候補 評価 行数 評言
女37歳
53 「ある意味で斬新な小説である。」「この小説はすべて女性が主人公の、女性に関わる問題だけが描かれている」「男性だけの話に終始して、存在感のないステレオタイプの女しか登場しない小説もあるのだから、本作のような作品が評価されても当然ともいえる。」「小説は人間を、そして人と人との関わりを書くことであり、(引用者中略)もっとも安心して読める作品であった。」
古処誠二
男34歳
20 「(引用者注:「対岸の彼女」の)他には、古処誠二氏の「七月七日」に惹かれた。」「戦争の実感的な迫力という点になると、さすがに弱く、さらに小説を型にはめてつくりすぎるところがやや感銘を殺ぐが、真っ向から第二次大戦に挑んだ、その気迫と努力は評価したい。」
選評出典:『オール讀物』平成17年/2005年3月号
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直木賞 133 平成17年/2005年上半期   一覧へ
選評の概要 思いつきに終わる 総行数51 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男71歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
12 「(引用者注:候補作のなかで)人間にもっとも迫っていた。」「「トカビの夜」が実感的な背景もあってか、もっとも自然で読ませる。他の作品はそれぞれに現代の妖しさ、不思議さに迫ろうとする意欲はかうが、いささかつくりすぎて、作意が見えすぎるところが残念であった。」
  「候補作は総じて小粒で、ことさらにひねくり廻した、一人よがりの小説が多くて失望した。」
選評出典:『オール讀物』平成17年/2005年9月号
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直木賞 134 平成17年/2005年下半期   一覧へ
選評の概要 トリックか人間描写か 総行数91 (1行=13字)
選考委員 渡辺淳一 男72歳
候補 評価 行数 評言
恒川光太郎
男32歳
19 「今回、もっとも惹かれた」「なによりも想像力が豊かで、妖しい小説の現代版として説得力がある。」「ただ候補になったのが今回初めてで、未知数のところがマイナスとなり、残念な結果になった」
男47歳
35 「わたしは不満である。」「問題は人物造形で、最後の謎解きにいたるにつれて、主人公の石神がいかにもつくりものじみて、リアリティーに欠ける。」「人間を描くという姿勢はいささか安易で、もの足りない。にもかかわらず本作品が受賞したことは、かつての推理小説ブームなどを経て、近年、推理小説の直木賞へのバリアが低くなりつつあることの、一つの証左といえなくもない。」
選評出典:『オール讀物』平成18年/2006年3月号
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直木賞 135 平成18年/2006年上半期   一覧へ
選評の概要 いくつかの不満 総行数83 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男72歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
21 「良くも悪くも、よく調べて書かれた短篇集である。」「自ずと滲むユーモラスな感覚が面白い。なかで表題作がもっとも社会的な広がりもあり、主人公の二人がよく描かれている。」「難点はあるが、強いて推すとすれば、この一作かと思った」
女29歳
18 「妖しげな小説である。」「現代的な雰囲気を描こうとした著者の狙いはそれなりにわかるが、やや受けを狙いすぎて筆がすべりすぎたようである。とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか、大人の男の切実さとリアリティーに欠ける。」
  「今回は、とくに積極的に推したい作品はなかった。」「今回のように弱いまま、二作受賞の形には反対である。」
選評出典:『オール讀物』平成18年/2006年9月号
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直木賞 136 平成18年/2006年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞作なし 総行数44 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男73歳
候補 評価 行数 評言
  「今回は初めから受賞作なしを主張したが、その理由は、わたしが考えている直木賞のレベルに達する作品がなかった、の一言に尽きる。」「(引用者注:そのレベルとは)わたしの長い作家としての体験から得た実感から、ということになろうか。」
選評出典:『オール讀物』平成19年/2007年3月号
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直木賞 137 平成19年/2007年上半期   一覧へ
選評の概要 大人の作品 総行数75 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男73歳
候補 評価 行数 評言
女53歳
20 「初回の選考から高得点で、本作の受賞はほぼ確実と思われた。」「作者の、かつて直木賞候補になった二作は、専門的知識が小説に融和せず浮いていたが、この作品によって、初めて小説と合体してたしかなリアリティーを支えている。吉原の内実や江戸弁の語りなども適確で、ようやく安心して推せる大人の作品を得て安堵した。」
選評出典:『オール讀物』平成19年/2007年9月号
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直木賞 138 平成19年/2007年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数83 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男74歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
50 「ある選考委員が、「おかしいところをあげつらうと、いくらでもあるが」と述べたといわれているが、少なくともわたしは、あげつらったのではなく、はっきり批判したのである。」「もしこれを幻想かファンタジーとするなら、そのような書き方をするべきだが、この作者の安易な文章では到底、表現できるとは思えない。」「淳悟と花とのからみのシーンは熱く妖しいが、見方によっては、少女コミックに登場する近親相姦を思わせるところもある。」「この作品の未知の魅力を認めたうえでのことだが、受賞はもう一、二作みてから、というのが、わたしの意見である。」
  「初めに殺人ありき。これに暴力団と警察をからめたら、余程の下手な作家でも、ある程度、読者を引っ張っていける。そんな悪口をいいたくなるほど、今回もこの種の作品が多かった」
選評出典:『オール讀物』平成20年/2008年3月号
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直木賞 139 平成20年/2008年上半期   一覧へ
選評の概要 軽くて安易 総行数53 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男74歳
候補 評価 行数 評言
女47歳
26 「(引用者注:最後に残った「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」の)三作のなかでは、もっとも人間を見詰めて説得力があった。」「だが、後半、主人公の内面の書き込みが浅く、男が去り、夫の子供を妊娠したというだけでは、いささか安易な結末といわざるをえない。」「しかし、全作品のなかでは、もっとも小説らしい小説で、この作品を受賞作とするのに、異論はない。」
  「今回、最終候補に残ったのは、「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」の三作であった。」
選評出典:『オール讀物』平成20年/2008年9月号
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直木賞 140 平成20年/2008年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞の二作 総行数80 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男75歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
39 「主人公のような人物を想定し、書き上げようとした意企を評価するにやぶさかでない。しかし本作品が小説としてよく機能し、適切に表現されているかとなると疑問である。」「とくに後半。同行する女性と、その夫の亡霊との会話、さらにラスト、死と出産を対比するところなど、いかにも安易でご都合主義である。」「(引用者注:「利休をたずねよ」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
男52歳
34 「今回の候補作のなかでは文章がたしかで、もっとも安心して読めた。しかし細かく章を分けて利休をめぐるいろいろな人間、さまざまな年代から描いていくやり方が、必ずしも成功しているとはいい難い。さらに秀吉と利休の対立の原因が、表面的にはともかく、より内面的な意味で、高麗の女性を懐想させるだけでは、いささか軽いというか説得力に欠ける。」「(引用者注:「悼む人」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
  「今回、最終候補として残ったのは、「カラスの親指」「悼む人」「利休にたずねよ」の三作であった。」
選評出典:『オール讀物』平成21年/2009年3月号
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直木賞 141 平成21年/2009年上半期   一覧へ
選評の概要 受賞作なしだが 総行数29 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男75歳
候補 評価 行数 評言
男59歳
5 「舞台となる昭和初期の雰囲気が描けていないし、お話そのものも、頭で作り出された域を出ていない。」
  「今回の候補作については、いずれも失望した。」「むろん、それなりにいろいろ工夫され、アイデアを絞り、巧みにつくろうと努力していることはわかるが、いずれも頭書きというか、頭で書きすぎである。」「現在の選考基準は甘すぎる、というのが、わたしの実感である。」
選評出典:『オール讀物』平成21年/2009年9月号
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直木賞 142 平成21年/2009年下半期   一覧へ
選評の概要 さらなる深みを 総行数83 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男76歳
候補 評価 行数 評言
男51歳
34 「この作品は久々に男女関係を正面から描いたもので、二部に分かれているが、仕上がりは前者の表題作のほうがはるかにいい。」「さまざまな男女の、そして夫婦の関わりがあるが、もしかしてその各々が少しずつ食い違っていて、その相互の関わりを一斉にずらしたら、両者の溝が埋まっていくのではないか。そんな予感がリアリティーをもって迫ってくるところが、この作品の妙味であり、作者の着眼点の非凡なところでもある。」
男59歳
36 「全体は各短編から成り立ち、主人公が休職中の刑事というところが、ユニークで新鮮である。」「当然、このような構成では、従来のような物語の分かり易さや痛快性には欠ける点がある。」「しかしかわりに、人間、そして人間性への視点がふくらみ、作品の陰影が濃くなっている。」「以上、これまでの努力と、作品の巾と深みが加わった点をかって、受賞に賛成した。」
  「今回、最終候補作として残ったのは、「ほかならぬ人へ」「廃墟に乞う」「鉄の骨」の三作であった。」
選評出典:『オール讀物』平成22年/2010年3月号
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直木賞 143 平成22年/2010年上半期   一覧へ
選評の概要 受賞作なしか 総行数49 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男76歳
候補 評価 行数 評言
女46歳
7 「昭和モダンの家庭的な雰囲気はある程度書けてはいるが、肝心のノートに秘められていた恋愛事件がこの程度では、うっちゃりをくらった感じで軽すぎる。」
  「今回の六本の候補作は、いずれも軽くて甘くて、とくに惹きつけられるものはなかった。」「作家たるもの、もう少し異様なまでの愛欲にまみれるとか、それなりの特殊な体験にどっぷりつかり、そこからたしかなリアリティーをえぐりだして書くものだが、その前段階の過程が軽すぎるというか、無さすぎるのではないか。」「わたしは受賞作なしを主張した。」「もしかすると、候補作を選び出してくる過程で、常に六、七作出さねばならないといった考えにしばられ、読み手の問題も含めて、甘くなりすぎているのではないか。」
選評出典:『オール讀物』平成22年/2010年9月号
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直木賞 144 平成22年/2010年下半期   一覧へ
選評の概要 バーチャルでゲーム的 総行数59 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男77歳
候補 評価 行数 評言
女43歳
12 「根津の廓の内情はよく調べて書かれていて、そのかぎりでは読ませるが、そこからラストに絞り込まれた瞬間、作意が目立ちすぎて自然の感興を殺ぐ。」
男35歳
16 「なんとも内攻的で独善的すぎる。」「もう少し視野を広げて、自分と同年齢に近い大人の内面へ肉薄するような小説を書けないものなのか。部分的に感性の鋭さがあったとしても、現実の人間への迫力は薄く、ご都合主義で軽すぎる。」
  「はっきりいって、今回の候補作で積極的に推したいものはなかった。」「今回は二作受賞とはいえ、いずれも僅差で選ばれたものであり、単純に喜べないことを付記しておく。」
選評出典:『オール讀物』平成23年/2011年3月号
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直木賞 145 平成23年/2011年上半期   一覧へ
選評の概要 少数意見として 総行数80 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男77歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
11 「わたしはここまで読みものに堕したものは採らない。直木賞は当然、文学賞であり、そこにそれなりの文学性とともに人間追求の姿勢も欠かすべきではない。」
選評出典:『オール讀物』平成23年/2011年9月号
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直木賞 146 平成23年/2011年下半期   一覧へ
選評の概要 描写のたしかさ 総行数67 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男78歳
候補 評価 行数 評言
男60歳
19 「なによりも優れているところは、デッサン力がたしかで、安心して読めるところである。」「著者はこれまで、何回か賞を逸してきたようだが、今回はたしかな筆致で作品の奥行きを増し、受賞に値する作品となっている。」
  「今回は「蜩ノ記」一作で、スムーズに決めることができた。」「小説はあくまで事件を書くものではなく、人間を描くものである。」
選評出典:『オール讀物』平成24年/2012年3月号
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直木賞 147 平成24年/2012年上半期   一覧へ
選評の概要 蕊のとおった作品を 総行数51 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男78歳
候補 評価 行数 評言
女32歳
0  
  「今回は一本、蕊(ルビ:しん)のとおった作品に欠け、受賞作なしが妥当と考えた。実際、そのとおり決まりかけたが、最終的に、一選考委員の態度変更により、表記のような結果となった。」「それにしても、現在の若い人は心底、心に沁み込み、どうしても小説として表現したいと思うほどの自己体験を保持していないのではないか。」「あるいは、本質的に作家として書くべきものをもたず、表面だけ作家的作業をしている、ということなのか。」
選評出典:『オール讀物』平成24年/2012年9月号
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直木賞 148 平成24年/2012年下半期   一覧へ
選評の概要 才気と安定感 総行数55 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男79歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
29 「今回、もっとも心をひかれた」「現代の大学生が就職期を前に、各社の試験官に気に入られるため、個々の人格や個性を失い、変貌していく実態が、さまざまな視点から鮮やかに描かれている。」「このような現実が、とくに悲劇的でも絶望的でもなく、現代風俗の一端として冷やかに、ときに遊びの感覚まで交えて表現されているところが、シニカルで魅力的である。」
男57歳
23 「ものごとの本質を見極めたいという絵師の性と、荒ぶる武家の血が、さまざまな事件に会う度に揺らぎ、かつ燃え盛る。」「まさしく、絵師には想像できぬ事態が次々とおきるが、それを乗り越えていく生きざまがよく描かれている。」「とくに新聞小説という舞台で、これだけの大作を安定して描ききった力量は、おおいに評価していいだろう。」
選評出典:『オール讀物』平成25年/2013年3月号
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直木賞 149 平成25年/2013年上半期   一覧へ
選評の概要 現代への切り込みを 総行数52 (1行=12字)
選考委員 渡辺淳一 男79歳
候補 評価 行数 評言
女48歳
14 「わたしは、この作品に投じた」「状況設定が巧みなうえに、そこでくり広げられる男女の姿が、それなりに存在感があり、読ませる。」「さらに文章が安定していて、大きく乱れず、安心して読むことができた。」
  「この頃は、作家自身の内面に秘めた、内なる問題に突っ込んだ作品が見られないのは、なぜなのだろうか。」「身近な親子関係から夫婦関係。そして男女の問題。さらに高齢者介護から孤独死の問題(引用者中略)これら、身近で、もっとも切実な問題に、真っ向から切り込んだ作品がなかったのは、いかにも残念で、もの足りなかった。」
選評出典:『オール讀物』平成25年/2013年9月号
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