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平成12年/2000年下半期
(平成13年/2001年1月16日決定発表/『オール讀物』平成13年/2001年3月号選評掲載)
選考委員  田辺聖子
女72歳
津本陽
男71歳
平岩弓枝
女68歳
宮城谷昌光
男55歳
黒岩重吾
男76歳
林真理子
女46歳
阿刀田高
男66歳
渡辺淳一
男67歳
北方謙三
男53歳
五木寛之
男68歳
井上ひさし
男66歳
選評総行数  117 73 89 103 110 101 111 71 107 71 138
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
山本文緒 『プラナリア』
410
女38歳
49 22 28 15 35 35 17 18 19 10 22
重松清 『ビタミンF』
480
男37歳
34 17 26 15 31 20 15 10 13 10 26
岩井志麻子 『岡山女』
324
女36歳
5 8 0 6 11 13 14 8 10 15 23
田口ランディ 『コンセント』
515
女41歳
17 8 29 35 11 12 15 18 16 17 26
天童荒太 『あふれた愛』
563
男40歳
4 8 0 24 14 12 22 12 14 14 23
横山秀夫 『動機』
489
男43歳
3 10 0 8 8 9 13 5 14 15 18
                     
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成13年/2001年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
田辺聖子女72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力作ぞろい 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
49 「投じた票が開かれるや否や、たちまちほとんど満票を集めてしまった」「文章にリズムがあって現代の匂いがぷんぷんしていて面白いから、スカスカと読めるが、底の岩盤はがっちりしている。人生と人間の洞察力のことである。それが文学的肺活量を大きくしている。」
重松清
男37歳
34 「家庭・家族にレンズを据えっぱなしで、そこから現代を発見するという氏の発想と手法に、私は共感する。」「『セッちゃん』の哀憐、『はずれくじ』の微妙な違和感のとらえかた、小説づくりのうまさに快く酔っているうち、それらの世界がひきしぼられ、あとになごやかな温みが残る。」「これまた、満票に近い受賞作。」
岩井志麻子
女36歳
5 「岡山弁と時代的小道具が独得の瘴気(いい意味の)をもたらして、趣味性強い作品集になっている。」
田口ランディ
女41歳
17 「なるほど面白い。息もつかせぬ、というところ。」「キレのいい文章、コンセントに繋がれるという発想の斬新さ。でもどこで着地に失敗したのだろう、読後、気が晴れなくてこまった。」「『コンセント』は私には救いにならず、混迷を与えられる。(それが目的かも)これは百分の九十まで推理小説の面白さで楽しめた。」
天童荒太
男40歳
4 「人間のやさしみがテーマながら邪気が香辛料になっている点がよく、」
横山秀夫
男43歳
3 「全く新しいタイプの推理小説、と興味をもった。」
  「今回は力作ぞろいであった。」
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他の選考委員
津本陽
平岩弓枝
宮城谷昌光
黒岩重吾
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阿刀田高
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北方謙三
五木寛之
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選考委員
津本陽男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
天然の資質 総行数73 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
22 「書きかたも随分手慣れていて、チャランポランのようでありながら、すぐに読み手を引きこみ、触手のようなものがまとわりついてきて、はなしてくれない。」「とにかくおもしろかった。こういうのを、「天然の資質」というのだろうかと、ひそかに思った。」
重松清
男37歳
17 「七つの短篇がそれぞれおだやかな進めかたで、ほどよい余韻をのこして話を終えている。」「そのなかでは、もちろん「セッちゃん」が図抜けていい。ベテランの余裕のある、受賞に値する作品集である。」
岩井志麻子
女36歳
8 「どれも岡山弁の味わいがほのかにただよい、ふしぎな世界をえがいておもしろいが、ちいさくまとまったものばかりで、芯につよさがあまり感じられなかった。」
田口ランディ
女41歳
8 「はじめはたいへんな牽引力にひきこまれた。おどろきつつ読んでいたが、結末の部分に至って急にしぼんでしまい、凡々たる感じになった。」
天童荒太
男40歳
8 「「うつろな恋人」という一篇が、印象に残った。どの作品も、よく似た方向から、よく似た姿勢で語っているように思える。」「なんというか、わりあい間口がせまい感じである。」
横山秀夫
男43歳
10 「堅実な手際で、現実味のある話を語ってくれるが、どれも説得力のあるわりには、読者をひきこむ腕力を出してくれず、地味な色彩に終始しているので、出来ばえのわりに損をした感じである。」
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他の選考委員
田辺聖子
平岩弓枝
宮城谷昌光
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阿刀田高
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選考委員
平岩弓枝女68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
上り坂の作家 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
28 「私の好みでいわせてもらえば、(引用者注:収録作品群の)後半になるほど作者の視野が広がり、人間に対する見方に自信が強くなっている。この調子でどこまで伸びて行くのかと期待をこめて推した。」
重松清
男37歳
26 「一つの山脈を越えて行かれたという印象を強く持った。」「重松さんの書かれる世界は、これからもじわじわと奥深い人間性にふみ込んで行かれるだろうし、それをこの作者らしいソフトな語り口で読者に語りかけてもらいたいと願っている。」
岩井志麻子
女36歳
0  
田口ランディ
女41歳
29 「最後まで印象に残っていた」「書き出しからテンポのよい才筆で、(引用者中略)ひたすら感心して読み進んだが、(引用者中略)主人公がカウンセリングを受けるあたりから、どうにも異和感が生じて、ぎくしゃくしながら読み終える結果になった。」
天童荒太
男40歳
0  
横山秀夫
男43歳
0  
  「受賞作がいずれも短篇集だったことは、大変、珍らしく、とりわけ、短篇のきりりと締った読後感が好きな私には、今回の選考はとても楽しかった。」
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選考委員
宮城谷昌光男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
可視と不可視 総行数103 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
15 「氏の文章はまことに読みやすいが、やはり映像先行型であり、ことばを隷属化している。自己への徹底的な問いかけが不足しているせいではあるまいか。氏が沈黙することばに気づいたら、どれほどすばらしい作品を産むであろうか。」
重松清
男37歳
15 「ふと気づいたことは、時間的に遠い出来事を語ると清涼感がおのずと生じている、ということである。氏の小説空間におかれている人と物との距離が短すぎて息苦しい。その点「母帰る」は従来のものとはちがった気のながれがあって、ほっとさせられた。」
岩井志麻子
女36歳
6 「気迫がある。その気迫を活かす道(方法)を再考してもらいたい。せっかくのユーモアも上質なものにみえないのは残念である。」
田口ランディ
女41歳
35 「氏のことばは翼をもち、ある重さをもって飛ぶが、終わりに近づくころ、その重さをはずしてしまい、視界から消える。」「作者自身に文章を近づけすぎたがゆえに、読者の理解を拒絶したようであり、当然のことながら、そこは全体をそこない構成から逸脱している。」「だが、氏が小説という奇妙な空間にとまどわなくなったら、おどろくべき力を発揮する可能性を充分にみせた。」
天童荒太
男40歳
24 「「うつろな恋人」は、サキの名作「開いている窓」を想起させた。」「天童氏はここで、実在と不在の交換装置を通過したがゆえに不在となった男の話を書こうとしたのではなかったのか。しかしながら氏は、みることに真実をすえて、人の不在化を完成しなかったために、作品は常識のなかに後退し、いわば感情の沈殿物になってしまった。」
横山秀夫
男43歳
8 「人生における貯蓄があるとおもわれる。ただしその貯蓄は感情に厚くくるまれているので、ひきだすときに性急になってしまうのではないか。保存のしかたも、小説作法のひとつである。」
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田辺聖子
津本陽
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黒岩重吾
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阿刀田高
渡辺淳一
北方謙三
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数110 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
35 「新鮮さに眼が洗われる思いがした。」「人間を鋭利な刃物で抉りながらも小気味が良いし、時には詩的でさえもある。」「また氏の居酒屋の主人を視る眼は、お見事、の一語につきる。古い匂いを背中に漂わせている中年男性をこれだけ描き切るには、頭だけでは無理であろう。」
重松清
男37歳
31 「軽く描いているが、現代に生きる人間の重さに迫まっている。」「「セッちゃん」が最も優れていた。(引用者中略)加奈子なる少女が憐れで、とどまることのないこの病弊に憤り、無力な対策にうちのめされた。」「次に惹かれたのは「母帰る」である。主人公の姉と離婚した浜野が口にした「家族っていうのは、みんながそこから出ていきたい場所なんだよ」との言葉は鋭い。」
岩井志麻子
女36歳
11 「小道具も含め舞台に凝り過ぎている。」「どんなドラマがはじまるのかと固唾を呑むが、ドラマは説明が主で、何となく肩透しをくったような空しさを覚える。」
田口ランディ
女41歳
11 「挑戦的な小説である。」「何といっても本小説の魅力はその発想と小説が持つ毒であろう。私はその毒に痺れた。だが後半部分の国貞との遣り取りは観念的で作者が一人で汗をかいている感じがする。」
天童荒太
男40歳
14 「作りのうまい短篇集である。ただ作りに懸命のせいか、作中人物がストーリーに添い過ぎている。」「今少し人間を幅広く視て欲しい。」
横山秀夫
男43歳
8 「表題作が一番良い。それにしても読後感が薄い。」「今少し登場人物の日常生活を描き込む必要があるのではないか。」
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五木寛之
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選考委員
林真理子女46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
山本さんの進歩 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
35 「山本さんは「プラナリア」でさらに飛躍された。」「今までの恋愛小説に出てくる、恋や仕事に前向きの女という理想像に、山本さんは大きく×印をつけたような気がする。また後半の、居酒屋の主人を主人公にした短篇などは、作者の著しい成長を見せるものだ。」「山本さんはまさしく「大化け」した。」
重松清
男37歳
20 「「家族」というテーマをずっと書いてこられた重松さんは、この短篇で成熟の時を迎えられた。」「重松さんは、丁寧な職人技で地味な素材を滋味溢れるものに変えた。子どもたちのいきいきしていること、中年を迎える男や女たちの描き方のうまさというのは、まさに佳作という名に価いする。」
岩井志麻子
女36歳
13 「上等な紙芝居を見ているような気がした。文章のセンスのよさは天性のものだと思うが、それに酔って小さくまとまってしまった。岩井さんはあまりにも早く自分の世界をつくり過ぎたのではなかろうか。」
田口ランディ
女41歳
12 「その才能に感服した。圧倒的な筆力である。ただ惜しむらくは、初めての長篇であったためにペース配分を間違えた。後半が乱れ過ぎて、うまく着地出来なかった。しかしこういうことは、小説を書くうちにすぐに習得出来るはずだ。今はこの勢いを大切にして欲しい。」
天童荒太
男40歳
12 「この方の誠実さが裏目に出た。どれも息苦しい作品ばかりになってしまったのである。特に精神を病んだ少女と、無理やり関係を持つ作品は好きになれない。」
横山秀夫
男43歳
9 「ミステリーとしては面白いかもしれないが、小説としては欠点を幾つも持つ。」「仕掛けのうまさだけで小説は成り立たない。それを支えるのは文章の力なのである。」
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他の選考委員
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津本陽
平岩弓枝
宮城谷昌光
黒岩重吾
阿刀田高
渡辺淳一
北方謙三
五木寛之
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選考委員
阿刀田高男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
現代を捕らえる 総行数111 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
17 「一皮深いところで人間を捕らえている。それを示す確かな表現を持っている。」「芸域を広げてみたい……。小説家の本道を踏んでいることは疑いない。納得のいく受賞であった。」
重松清
男37歳
15 「取材力、会話の巧みさ、上質なユーモア、小説家に必要な条件を備えている。」「「母帰る」と「セッちゃん」が特によい出来だと思った。ページを繰るたびに人生の手触りが伝わってくる。」
岩井志麻子
女36歳
14 「随所によい描写があった。筆力のある作家だと思う。しかし連作短編集としては、どれも似たようなお話で、あやかしの世界としての説得力が足りないように感じられた。」
田口ランディ
女41歳
15 「前半分が滅法おもしろい。後半でガタガタと崩れる、作品の背後に、哲学と言っては大げさだが非凡なシンキング(thinking)があって、それがいつの日か今までにない大傑作を生んでくれそうな予感がする。」「もう少し待って大成を期す、というのが私のみならずおおかたの意見であった。」
天童荒太
男40歳
22 「悪くはなかった。天童さんの、弱者に対する真摯な姿勢にはいつも頭がさがるけれど、――待てよ。それは作品の評価とは少しべつなことだな――とりわけ、この作者にはそれを感じてしまう。」「小説としてつぶさにながめてみると、着地点を決めて、その方向へ人物設定も行動も情況も(あえて言えば)都合よく創っているように私には感じられてならない。」
横山秀夫
男43歳
13 「表題作が一番楽しく読めた。が、全体としてミステリーの短編として弱点が目立った。」「無理にストーリィを創っているように感じられたり、よくあるパターンであったり、リアリティを欠いていたり、あと一息の感がいなめなかった。」
  「今回の二作の受賞が短編の楽しさを示す一石となってくれればとてもうれしい。」
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田辺聖子
津本陽
平岩弓枝
宮城谷昌光
黒岩重吾
林真理子
渡辺淳一
北方謙三
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人間を見る視力 総行数71 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
18 「最も惹かれた」「軽妙な文章もさることながら、人を見る目、いいかえると、人間への視力がたしかである。」「「あいあるあした」は快作で、この作家の強みは、女性の主人公はもちろん、異性である男の主人公もそれなりに書けることで、先の人を見る視力があるかぎり、長く着実に、小説を書き続けていくことができるだろう。」
重松清
男37歳
10 「日常に潜む、些細な感性の痛みを巧みに描いて、それなりにリアリティがある。登場するのはいずれも小市民で、それだけに華やかさには欠けるが、荒々しい小説が多い現代には、こういうひっそりと咲く花の良さも、評価してもいいだろう。」
岩井志麻子
女36歳
8 「部分的に面白い表現もあるが、全体にホラー小説にこだわりすぎて、小説としての妙味には欠ける。」
田口ランディ
女41歳
18 「やや異能な才筆に惹かれた。とくに冒頭の部分は熱気があり、ところどころに出てくるセックス描写というより、性への実感的な独白が面白かった。しかし後半になるとコンセントという題にこだわりすぎて、生半可な精神病理学を披露しすぎて、小説の緊張感をこわしてしまった。」
天童荒太
男40歳
12 「現代的なテーマに挑もうとする努力はわかるが、全体に甘く、ムードに流れすぎる嫌いがある。前回のような長篇の場合は力でおしきることもできるが、短篇ではいささか切れ味が悪く、熟年、とくに大人の女性が書けないところが、小説のリアリティを失わせて、不満が残った。」
横山秀夫
男43歳
5 「お話しづくりに懸命なわりに、小説のふくらみというか、柔らかさに欠けるところが、もの足りなかった。」
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北方謙三
五木寛之
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選考委員
北方謙三男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
短篇の魅力 総行数107 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
19 「どこかに淡々としたさりげなさがあり、ほのかな死の匂いも漂い、日常のあやふやさが逆に緊張感を呼んで、質のいい短篇集に仕あがっていたと思う。そして、『あいあるあした』の酒場の親父の話で、ほっと息を抜くこともできた。」「この作品も、やはり授賞には賛成した。」
重松清
男37歳
13 「日常生活、父と子、夫婦、というものが鮮やかに描きあげられていて、短篇のよさをしみじみ感じさせる一冊になっていたと思う。」「強いて不満を述べれば、飛躍を拒んだような手堅さが小説作法にあり、それが小さくまとまった世界という印象を与えることぐらいか。授賞には賛成した。」
岩井志麻子
女36歳
10 「筆力は充分である。ただ、見えない方の眼に見えてくる霊感のあやふやさと、タミエという女性の人生のあやふやさがどこかかけ離れていて、感情移入がしにくかった。」
田口ランディ
女41歳
16 「読んでいてしばしば切迫した精神状態に襲われるような作品だった。」「異才であると思う。最後の、性的な救済者になっていく主人公の姿には、私は微妙な違和感を覚えた。」
天童荒太
男40歳
14 「あふれたという言葉に、過剰なものを表わすニュアンスがこめられていることが、読後よく理解できた。ただ私にはあふれたものが、少々きつかった。」
横山秀夫
男43歳
14 「よくできた愉しめる短篇集だった。いまひとつ食い足りない感じがするのは、事件の解明、解決を主眼にした、ミステリー度がいくらか高かったからか。」「『密室の人』など、面白い題材を閉鎖的な関係性が殺してしまっている。もう少し、のびのびしたところが、私は欲しかった。」
  「短篇で見えてくる資質というものは確かにあり、長篇が隠してしまう欠点もまたある。小説誌に至るまで長篇が花盛りで、長さだけで読者を圧倒しようとする作品も少なくない状況の中で、今回の候補作は逆に壮観ですらあった。」
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黒岩重吾
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阿刀田高
渡辺淳一
五木寛之
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選考委員
五木寛之男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作への期待 総行数71 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
10 「あえて言うことはない堂々たる佳作である。」「手だれの書き手であり、キャリアも十分、新しい野心作も期待できるはずだ。」
重松清
男37歳
10 「あえて言うことはない堂々たる佳作である。」「手だれの書き手であり、キャリアも十分、新しい野心作も期待できるはずだ。」
岩井志麻子
女36歳
15 「これ一冊として読めば独特の魅力を感じさせる相当に重量感のある作品だと思う。」「しかし、いかんせん先行する作品『ぼっけえ、きょうてえ』の衝撃度が圧倒的で、こちらの中に長い残響が尾を引いているためか、受賞作として積極的に推すにはいたらなかった。」
田口ランディ
女41歳
17 「全員がその才能を認めた秀作である。」「どんなメディアから登場しようと、表現者の才能には壁などないのだと痛感させられた。賞をのがしたのは「未知数」という点が作用していると思うが、作家は処女作がすべてである。この人の将来に不安を抱くことはあるまい。」
天童荒太
男40歳
14 「繊細な感覚と技巧を随所に示してみせてくれたものの、前作の重量感を超える強い印象で私たちを圧倒するまでにはいたらなかった。しかし、私としては天童荒太という作家の新しい顔を発見したような気がしてうれしかった。」
横山秀夫
男43歳
15 「職業作家として十分の力量をそなえた書き手の、安定した作品である。」「その安心して読めるという点が、この賞では不利にはたらいたといえば酷だろうか。しかし、壁を破ることを期待されるということは、すでに一家を成しているということでもある。」
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津本陽
平岩弓枝
宮城谷昌光
黒岩重吾
林真理子
阿刀田高
渡辺淳一
北方謙三
井上ひさし
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選考委員
井上ひさし男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞作二作の魅力 総行数138 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本文緒
女38歳
22 「なによりもまず文章のよさで傑出している。」「加えて主題がいい。〈なぜ人は働かなければならないのか〉は、漱石の『それから』の代助以来の大主題。この根源的な主題を扱いながら、歯切れのよい文章で、小さいけれど魅力的な短篇群を紡ぎ出してみせた山本さんの作家的膂力に、感嘆符のたくさん咲いた花冠を差し出さずにはいられない。」
重松清
男37歳
26 「人間には今のままの人生しかない、大切なことは、これまでの営為に、今日もなにがしかの努力をささやかに重ねて行くことだと、自分を、そして読者を説得する。その小説的手続きのみごとさを買って、最終投票で一票投じた、もちろん重松さんのこれまでの質の高い仕事に敬意を表しながら。」
岩井志麻子
女36歳
23 「個性的な文章と特異な道具立て……と、作者の才能の豊かさはだれの目にも明らかだが、やがて作者だけが一人勝手に、大車輪で不吉がり怖がっているという気味合いが強くなってゆき、ついには作者と読み手の距離が回復不能なまでに開いて行く。」
田口ランディ
女41歳
26 「シャーマンを訪れる者は、自分のプラグをコンセントに差し込むことで、全人類の記憶に接触できるわけだ。なんという壮大な主題だろう。これを聖とすれば、ヒロインの日常は俗。この聖と俗を結びつける啓示の瞬間が一編の山場であるが、惜しいことにその瞬間が濁っている。ここに作者持ち前の機知と分析力が十分に投下されていたら、途方もない傑作が実現したのに。」
天童荒太
男40歳
23 「「やすらぎの香り」は掛け値なしの名作だ。」「だが、たとえば、別の一編、「うつろな恋人」には抵抗がある。病院の関係者が、ある患者についての情報を、別の患者に簡単に喋ってしまうばかりか、そのことが物語を動かす原動力になるという設定は、この作者には珍しい荒さである。「やすらぎの香り」に匹敵する作品がもう一編あれば、評者はこの一冊を最後まで支持しつづけたのだが。」
横山秀夫
男43歳
18 「根気と努力に感心しながらも、このへんで読者にハッタリをかますような手(むろんいい意味での)を導入すべきときがきたとも思うが、いかがだろうか。」「「逆転の夏」に、かすかにその芽が感じられるが、まだまだ不十分だ。」
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他の選考委員
田辺聖子
津本陽
平岩弓枝
宮城谷昌光
黒岩重吾
林真理子
阿刀田高
渡辺淳一
北方謙三
五木寛之
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受賞者・作品
山本文緒女38歳×各選考委員 
『プラナリア』
短篇集5篇 410
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女72歳
49 「投じた票が開かれるや否や、たちまちほとんど満票を集めてしまった」「文章にリズムがあって現代の匂いがぷんぷんしていて面白いから、スカスカと読めるが、底の岩盤はがっちりしている。人生と人間の洞察力のことである。それが文学的肺活量を大きくしている。」
津本陽
男71歳
22 「書きかたも随分手慣れていて、チャランポランのようでありながら、すぐに読み手を引きこみ、触手のようなものがまとわりついてきて、はなしてくれない。」「とにかくおもしろかった。こういうのを、「天然の資質」というのだろうかと、ひそかに思った。」
平岩弓枝
女68歳
28 「私の好みでいわせてもらえば、(引用者注:収録作品群の)後半になるほど作者の視野が広がり、人間に対する見方に自信が強くなっている。この調子でどこまで伸びて行くのかと期待をこめて推した。」
宮城谷昌光
男55歳
15 「氏の文章はまことに読みやすいが、やはり映像先行型であり、ことばを隷属化している。自己への徹底的な問いかけが不足しているせいではあるまいか。氏が沈黙することばに気づいたら、どれほどすばらしい作品を産むであろうか。」
黒岩重吾
男76歳
35 「新鮮さに眼が洗われる思いがした。」「人間を鋭利な刃物で抉りながらも小気味が良いし、時には詩的でさえもある。」「また氏の居酒屋の主人を視る眼は、お見事、の一語につきる。古い匂いを背中に漂わせている中年男性をこれだけ描き切るには、頭だけでは無理であろう。」
林真理子
女46歳
35 「山本さんは「プラナリア」でさらに飛躍された。」「今までの恋愛小説に出てくる、恋や仕事に前向きの女という理想像に、山本さんは大きく×印をつけたような気がする。また後半の、居酒屋の主人を主人公にした短篇などは、作者の著しい成長を見せるものだ。」「山本さんはまさしく「大化け」した。」
阿刀田高
男66歳
17 「一皮深いところで人間を捕らえている。それを示す確かな表現を持っている。」「芸域を広げてみたい……。小説家の本道を踏んでいることは疑いない。納得のいく受賞であった。」
渡辺淳一
男67歳
18 「最も惹かれた」「軽妙な文章もさることながら、人を見る目、いいかえると、人間への視力がたしかである。」「「あいあるあした」は快作で、この作家の強みは、女性の主人公はもちろん、異性である男の主人公もそれなりに書けることで、先の人を見る視力があるかぎり、長く着実に、小説を書き続けていくことができるだろう。」
北方謙三
男53歳
19 「どこかに淡々としたさりげなさがあり、ほのかな死の匂いも漂い、日常のあやふやさが逆に緊張感を呼んで、質のいい短篇集に仕あがっていたと思う。そして、『あいあるあした』の酒場の親父の話で、ほっと息を抜くこともできた。」「この作品も、やはり授賞には賛成した。」
五木寛之
男68歳
10 「あえて言うことはない堂々たる佳作である。」「手だれの書き手であり、キャリアも十分、新しい野心作も期待できるはずだ。」
井上ひさし
男66歳
22 「なによりもまず文章のよさで傑出している。」「加えて主題がいい。〈なぜ人は働かなければならないのか〉は、漱石の『それから』の代助以来の大主題。この根源的な主題を扱いながら、歯切れのよい文章で、小さいけれど魅力的な短篇群を紡ぎ出してみせた山本さんの作家的膂力に、感嘆符のたくさん咲いた花冠を差し出さずにはいられない。」
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他の候補作
重松清
『ビタミンF』
岩井志麻子
『岡山女』
田口ランディ
『コンセント』
天童荒太
『あふれた愛』
横山秀夫
『動機』
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受賞者・作品
重松清男37歳×各選考委員 
『ビタミンF』
短篇集7篇 480
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女72歳
34 「家庭・家族にレンズを据えっぱなしで、そこから現代を発見するという氏の発想と手法に、私は共感する。」「『セッちゃん』の哀憐、『はずれくじ』の微妙な違和感のとらえかた、小説づくりのうまさに快く酔っているうち、それらの世界がひきしぼられ、あとになごやかな温みが残る。」「これまた、満票に近い受賞作。」
津本陽
男71歳
17 「七つの短篇がそれぞれおだやかな進めかたで、ほどよい余韻をのこして話を終えている。」「そのなかでは、もちろん「セッちゃん」が図抜けていい。ベテランの余裕のある、受賞に値する作品集である。」
平岩弓枝
女68歳
26 「一つの山脈を越えて行かれたという印象を強く持った。」「重松さんの書かれる世界は、これからもじわじわと奥深い人間性にふみ込んで行かれるだろうし、それをこの作者らしいソフトな語り口で読者に語りかけてもらいたいと願っている。」
宮城谷昌光
男55歳
15 「ふと気づいたことは、時間的に遠い出来事を語ると清涼感がおのずと生じている、ということである。氏の小説空間におかれている人と物との距離が短すぎて息苦しい。その点「母帰る」は従来のものとはちがった気のながれがあって、ほっとさせられた。」
黒岩重吾
男76歳
31 「軽く描いているが、現代に生きる人間の重さに迫まっている。」「「セッちゃん」が最も優れていた。(引用者中略)加奈子なる少女が憐れで、とどまることのないこの病弊に憤り、無力な対策にうちのめされた。」「次に惹かれたのは「母帰る」である。主人公の姉と離婚した浜野が口にした「家族っていうのは、みんながそこから出ていきたい場所なんだよ」との言葉は鋭い。」
林真理子
女46歳
20 「「家族」というテーマをずっと書いてこられた重松さんは、この短篇で成熟の時を迎えられた。」「重松さんは、丁寧な職人技で地味な素材を滋味溢れるものに変えた。子どもたちのいきいきしていること、中年を迎える男や女たちの描き方のうまさというのは、まさに佳作という名に価いする。」
阿刀田高
男66歳
15 「取材力、会話の巧みさ、上質なユーモア、小説家に必要な条件を備えている。」「「母帰る」と「セッちゃん」が特によい出来だと思った。ページを繰るたびに人生の手触りが伝わってくる。」
渡辺淳一
男67歳
10 「日常に潜む、些細な感性の痛みを巧みに描いて、それなりにリアリティがある。登場するのはいずれも小市民で、それだけに華やかさには欠けるが、荒々しい小説が多い現代には、こういうひっそりと咲く花の良さも、評価してもいいだろう。」
北方謙三
男53歳
13 「日常生活、父と子、夫婦、というものが鮮やかに描きあげられていて、短篇のよさをしみじみ感じさせる一冊になっていたと思う。」「強いて不満を述べれば、飛躍を拒んだような手堅さが小説作法にあり、それが小さくまとまった世界という印象を与えることぐらいか。授賞には賛成した。」
五木寛之
男68歳
10 「あえて言うことはない堂々たる佳作である。」「手だれの書き手であり、キャリアも十分、新しい野心作も期待できるはずだ。」
井上ひさし
男66歳
26 「人間には今のままの人生しかない、大切なことは、これまでの営為に、今日もなにがしかの努力をささやかに重ねて行くことだと、自分を、そして読者を説得する。その小説的手続きのみごとさを買って、最終投票で一票投じた、もちろん重松さんのこれまでの質の高い仕事に敬意を表しながら。」
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他の候補作
山本文緒
『プラナリア』
岩井志麻子
『岡山女』
田口ランディ
『コンセント』
天童荒太
『あふれた愛』
横山秀夫
『動機』
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候補者・作品
岩井志麻子女36歳×各選考委員 
『岡山女』
連作6篇 324
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女72歳
5 「岡山弁と時代的小道具が独得の瘴気(いい意味の)をもたらして、趣味性強い作品集になっている。」
津本陽
男71歳
8 「どれも岡山弁の味わいがほのかにただよい、ふしぎな世界をえがいておもしろいが、ちいさくまとまったものばかりで、芯につよさがあまり感じられなかった。」
平岩弓枝
女68歳
0  
宮城谷昌光
男55歳
6 「気迫がある。その気迫を活かす道(方法)を再考してもらいたい。せっかくのユーモアも上質なものにみえないのは残念である。」
黒岩重吾
男76歳
11 「小道具も含め舞台に凝り過ぎている。」「どんなドラマがはじまるのかと固唾を呑むが、ドラマは説明が主で、何となく肩透しをくったような空しさを覚える。」
林真理子
女46歳
13 「上等な紙芝居を見ているような気がした。文章のセンスのよさは天性のものだと思うが、それに酔って小さくまとまってしまった。岩井さんはあまりにも早く自分の世界をつくり過ぎたのではなかろうか。」
阿刀田高
男66歳
14 「随所によい描写があった。筆力のある作家だと思う。しかし連作短編集としては、どれも似たようなお話で、あやかしの世界としての説得力が足りないように感じられた。」
渡辺淳一
男67歳
8 「部分的に面白い表現もあるが、全体にホラー小説にこだわりすぎて、小説としての妙味には欠ける。」
北方謙三
男53歳
10 「筆力は充分である。ただ、見えない方の眼に見えてくる霊感のあやふやさと、タミエという女性の人生のあやふやさがどこかかけ離れていて、感情移入がしにくかった。」
五木寛之
男68歳
15 「これ一冊として読めば独特の魅力を感じさせる相当に重量感のある作品だと思う。」「しかし、いかんせん先行する作品『ぼっけえ、きょうてえ』の衝撃度が圧倒的で、こちらの中に長い残響が尾を引いているためか、受賞作として積極的に推すにはいたらなかった。」
井上ひさし
男66歳
23 「個性的な文章と特異な道具立て……と、作者の才能の豊かさはだれの目にも明らかだが、やがて作者だけが一人勝手に、大車輪で不吉がり怖がっているという気味合いが強くなってゆき、ついには作者と読み手の距離が回復不能なまでに開いて行く。」
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他の候補作
山本文緒
『プラナリア』
重松清
『ビタミンF』
田口ランディ
『コンセント』
天童荒太
『あふれた愛』
横山秀夫
『動機』
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候補者・作品
田口ランディ女41歳×各選考委員 
『コンセント』
長篇 515
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女72歳
17 「なるほど面白い。息もつかせぬ、というところ。」「キレのいい文章、コンセントに繋がれるという発想の斬新さ。でもどこで着地に失敗したのだろう、読後、気が晴れなくてこまった。」「『コンセント』は私には救いにならず、混迷を与えられる。(それが目的かも)これは百分の九十まで推理小説の面白さで楽しめた。」
津本陽
男71歳
8 「はじめはたいへんな牽引力にひきこまれた。おどろきつつ読んでいたが、結末の部分に至って急にしぼんでしまい、凡々たる感じになった。」
平岩弓枝
女68歳
29 「最後まで印象に残っていた」「書き出しからテンポのよい才筆で、(引用者中略)ひたすら感心して読み進んだが、(引用者中略)主人公がカウンセリングを受けるあたりから、どうにも異和感が生じて、ぎくしゃくしながら読み終える結果になった。」
宮城谷昌光
男55歳
35 「氏のことばは翼をもち、ある重さをもって飛ぶが、終わりに近づくころ、その重さをはずしてしまい、視界から消える。」「作者自身に文章を近づけすぎたがゆえに、読者の理解を拒絶したようであり、当然のことながら、そこは全体をそこない構成から逸脱している。」「だが、氏が小説という奇妙な空間にとまどわなくなったら、おどろくべき力を発揮する可能性を充分にみせた。」
黒岩重吾
男76歳
11 「挑戦的な小説である。」「何といっても本小説の魅力はその発想と小説が持つ毒であろう。私はその毒に痺れた。だが後半部分の国貞との遣り取りは観念的で作者が一人で汗をかいている感じがする。」
林真理子
女46歳
12 「その才能に感服した。圧倒的な筆力である。ただ惜しむらくは、初めての長篇であったためにペース配分を間違えた。後半が乱れ過ぎて、うまく着地出来なかった。しかしこういうことは、小説を書くうちにすぐに習得出来るはずだ。今はこの勢いを大切にして欲しい。」
阿刀田高
男66歳
15 「前半分が滅法おもしろい。後半でガタガタと崩れる、作品の背後に、哲学と言っては大げさだが非凡なシンキング(thinking)があって、それがいつの日か今までにない大傑作を生んでくれそうな予感がする。」「もう少し待って大成を期す、というのが私のみならずおおかたの意見であった。」
渡辺淳一
男67歳
18 「やや異能な才筆に惹かれた。とくに冒頭の部分は熱気があり、ところどころに出てくるセックス描写というより、性への実感的な独白が面白かった。しかし後半になるとコンセントという題にこだわりすぎて、生半可な精神病理学を披露しすぎて、小説の緊張感をこわしてしまった。」
北方謙三
男53歳
16 「読んでいてしばしば切迫した精神状態に襲われるような作品だった。」「異才であると思う。最後の、性的な救済者になっていく主人公の姿には、私は微妙な違和感を覚えた。」
五木寛之
男68歳
17 「全員がその才能を認めた秀作である。」「どんなメディアから登場しようと、表現者の才能には壁などないのだと痛感させられた。賞をのがしたのは「未知数」という点が作用していると思うが、作家は処女作がすべてである。この人の将来に不安を抱くことはあるまい。」
井上ひさし
男66歳
26 「シャーマンを訪れる者は、自分のプラグをコンセントに差し込むことで、全人類の記憶に接触できるわけだ。なんという壮大な主題だろう。これを聖とすれば、ヒロインの日常は俗。この聖と俗を結びつける啓示の瞬間が一編の山場であるが、惜しいことにその瞬間が濁っている。ここに作者持ち前の機知と分析力が十分に投下されていたら、途方もない傑作が実現したのに。」
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他の候補作
山本文緒
『プラナリア』
重松清
『ビタミンF』
岩井志麻子
『岡山女』
天童荒太
『あふれた愛』
横山秀夫
『動機』
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候補者・作品
天童荒太男40歳×各選考委員 
『あふれた愛』
短篇集4篇 563
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女72歳
4 「人間のやさしみがテーマながら邪気が香辛料になっている点がよく、」
津本陽
男71歳
8 「「うつろな恋人」という一篇が、印象に残った。どの作品も、よく似た方向から、よく似た姿勢で語っているように思える。」「なんというか、わりあい間口がせまい感じである。」
平岩弓枝
女68歳
0  
宮城谷昌光
男55歳
24 「「うつろな恋人」は、サキの名作「開いている窓」を想起させた。」「天童氏はここで、実在と不在の交換装置を通過したがゆえに不在となった男の話を書こうとしたのではなかったのか。しかしながら氏は、みることに真実をすえて、人の不在化を完成しなかったために、作品は常識のなかに後退し、いわば感情の沈殿物になってしまった。」
黒岩重吾
男76歳
14 「作りのうまい短篇集である。ただ作りに懸命のせいか、作中人物がストーリーに添い過ぎている。」「今少し人間を幅広く視て欲しい。」
林真理子
女46歳
12 「この方の誠実さが裏目に出た。どれも息苦しい作品ばかりになってしまったのである。特に精神を病んだ少女と、無理やり関係を持つ作品は好きになれない。」
阿刀田高
男66歳
22 「悪くはなかった。天童さんの、弱者に対する真摯な姿勢にはいつも頭がさがるけれど、――待てよ。それは作品の評価とは少しべつなことだな――とりわけ、この作者にはそれを感じてしまう。」「小説としてつぶさにながめてみると、着地点を決めて、その方向へ人物設定も行動も情況も(あえて言えば)都合よく創っているように私には感じられてならない。」
渡辺淳一
男67歳
12 「現代的なテーマに挑もうとする努力はわかるが、全体に甘く、ムードに流れすぎる嫌いがある。前回のような長篇の場合は力でおしきることもできるが、短篇ではいささか切れ味が悪く、熟年、とくに大人の女性が書けないところが、小説のリアリティを失わせて、不満が残った。」
北方謙三
男53歳
14 「あふれたという言葉に、過剰なものを表わすニュアンスがこめられていることが、読後よく理解できた。ただ私にはあふれたものが、少々きつかった。」
五木寛之
男68歳
14 「繊細な感覚と技巧を随所に示してみせてくれたものの、前作の重量感を超える強い印象で私たちを圧倒するまでにはいたらなかった。しかし、私としては天童荒太という作家の新しい顔を発見したような気がしてうれしかった。」
井上ひさし
男66歳
23 「「やすらぎの香り」は掛け値なしの名作だ。」「だが、たとえば、別の一編、「うつろな恋人」には抵抗がある。病院の関係者が、ある患者についての情報を、別の患者に簡単に喋ってしまうばかりか、そのことが物語を動かす原動力になるという設定は、この作者には珍しい荒さである。「やすらぎの香り」に匹敵する作品がもう一編あれば、評者はこの一冊を最後まで支持しつづけたのだが。」
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他の候補作
山本文緒
『プラナリア』
重松清
『ビタミンF』
岩井志麻子
『岡山女』
田口ランディ
『コンセント』
横山秀夫
『動機』
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候補者・作品
横山秀夫男43歳×各選考委員 
『動機』
短篇集4篇 489
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女72歳
3 「全く新しいタイプの推理小説、と興味をもった。」
津本陽
男71歳
10 「堅実な手際で、現実味のある話を語ってくれるが、どれも説得力のあるわりには、読者をひきこむ腕力を出してくれず、地味な色彩に終始しているので、出来ばえのわりに損をした感じである。」
平岩弓枝
女68歳
0  
宮城谷昌光
男55歳
8 「人生における貯蓄があるとおもわれる。ただしその貯蓄は感情に厚くくるまれているので、ひきだすときに性急になってしまうのではないか。保存のしかたも、小説作法のひとつである。」
黒岩重吾
男76歳
8 「表題作が一番良い。それにしても読後感が薄い。」「今少し登場人物の日常生活を描き込む必要があるのではないか。」
林真理子
女46歳
9 「ミステリーとしては面白いかもしれないが、小説としては欠点を幾つも持つ。」「仕掛けのうまさだけで小説は成り立たない。それを支えるのは文章の力なのである。」
阿刀田高
男66歳
13 「表題作が一番楽しく読めた。が、全体としてミステリーの短編として弱点が目立った。」「無理にストーリィを創っているように感じられたり、よくあるパターンであったり、リアリティを欠いていたり、あと一息の感がいなめなかった。」
渡辺淳一
男67歳
5 「お話しづくりに懸命なわりに、小説のふくらみというか、柔らかさに欠けるところが、もの足りなかった。」
北方謙三
男53歳
14 「よくできた愉しめる短篇集だった。いまひとつ食い足りない感じがするのは、事件の解明、解決を主眼にした、ミステリー度がいくらか高かったからか。」「『密室の人』など、面白い題材を閉鎖的な関係性が殺してしまっている。もう少し、のびのびしたところが、私は欲しかった。」
五木寛之
男68歳
15 「職業作家として十分の力量をそなえた書き手の、安定した作品である。」「その安心して読めるという点が、この賞では不利にはたらいたといえば酷だろうか。しかし、壁を破ることを期待されるということは、すでに一家を成しているということでもある。」
井上ひさし
男66歳
18 「根気と努力に感心しながらも、このへんで読者にハッタリをかますような手(むろんいい意味での)を導入すべきときがきたとも思うが、いかがだろうか。」「「逆転の夏」に、かすかにその芽が感じられるが、まだまだ不十分だ。」
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他の候補作
山本文緒
『プラナリア』
重松清
『ビタミンF』
岩井志麻子
『岡山女』
田口ランディ
『コンセント』
天童荒太
『あふれた愛』
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