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第123回
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平成12年/2000年上半期
(平成12年/2000年7月14日決定発表/『オール讀物』平成12年/2000年9月号選評掲載)
選考委員  北方謙三
男52歳
田辺聖子
女72歳
宮城谷昌光
男55歳
平岩弓枝
女68歳
渡辺淳一
男66歳
五木寛之
男67歳
林真理子
女46歳
阿刀田高
男65歳
黒岩重吾
男76歳
津本陽
男71歳
井上ひさし
男65歳
選評総行数  112 120 111 88 121 107 99 109 77 81 151
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
船戸与一 『虹の谷の五月』
1458
男56歳
26 45 20 13 22 14 29 42 30 26 26
金城一紀 『GO』
393
男31歳
17 30 24 13 37 31 32 16 16 9 20
宇江佐真理 『雷桜』
620
女50歳
9 8 33 26 26 5 13 4 11 15 30
乙川優三郎 『蔓の端々』
718
男47歳
11 9 15 17 26 5 4 12 0 12 36
重松清 『カカシの夏休み』
604
男37歳
18 29 23 16 18 23 17 14 12 10 22
真保裕一 『ストロボ』
458
男39歳
17 4 28 0 11 5 4 11 8 9 20
                     
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
北方謙三男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説でしかなし得ないこと 総行数112 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
26 「重層的で圧倒的な物語性を持っていた。」「人間の弱さがいやというほど描きこまれている。それだけならただの汚濁だが、その汚濁の中から、主人公の少年のピュアな成長という、真珠のひと粒とも言うべきものを掬いあげることに成功している。」「いまこそこういう作品を評価して、小説は本来あるべきその姿を思い出すべきであろう。」
金城一紀
男31歳
17 「誰もが認めたように、新鮮で生きがいい。」「主人公の出来がよすぎるのがいささか気になるが、読後にしっかりとなにかが残っている作品だった。最初の本で受賞というのは、苦しみもともに背負わせたようなものだろうと思うが、それを撥ね返すバイタリティはあると信じたい。」
宇江佐真理
女50歳
9 「飛躍の多い小説だった。新鮮なところもあるが、考証の甘さが目立ち、感興を削ぐ。奇抜なようでいて、ありふれた発想だという気もする。」
乙川優三郎
男47歳
11 「八重と礼助の描き方が思わせぶりで、拍子抜けという感じがした。小藩の抗争をこれほど複雑に描く必要があるのだろうか、と首を傾げたところで、物語の停滞も感じた。全体にはうまい小説で、ひとりひとりの登場人物が立ちあがってくる筆力は、圧倒的であった。」
重松清
男37歳
18 「三本のどれをとっても佳品であった。ただ、わずかずつそれぞれに齟齬を感じ、そのあたりで物語に入っていけなくなる。」「「未来」の出来が最もいいと感じたが、クラス全員の名を記した何十通もの遺書が出てくるところで、微妙な違和感に襲われる。」
真保裕一
男39歳
17 「意欲的な作品であった。」「一章ごとに過去に戻り、それに従って主人公の試みに必然性を与えていくという手法には斬新なものがあり、唸らされた。作為は見えるが、それを凌ぐリアリティもあった。ただ、私はなぜか、五十歳の痛みを感じなかった。」
  「候補作は六本あり、読後、選考する前にどの作品からも示唆を受ける、というようなものばかりだった。」「選考会は自由な雰囲気に満ちていて、いいものを見つけ出そうという姿勢が貫かれ、私は臆することなく発言できた。」
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他の選考委員
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
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選考委員
田辺聖子女72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作品と賞との幸福な出会い 総行数120 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
45 「(引用者注:「カカシの夏休み」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「船戸氏はすでにもう大家でいられ、直木賞の土俵では狭い感もあるが、一度は〈貰って頂かないと〉というのが正直な私の気持であった。」「何より南海の島の濃密な温気と暑熱が読者の皮膚感覚に伝わってくる。」
金城一紀
男31歳
30 「すでにユニークな文体を手に入れていられるのにも瞠目。」「キモチイイ辛口で味わってきた酒が、ラストに至ってにわかに甘口になってしまった感があるのは、私個人の好みとしては惜しいが、しかしまあ、なんと、のど越しのいい酒であろう。」「作者の若さとキャリアからいって、もう一、二篇様子をみたら……と思わないでもなかったが、しかしものごとには時の勢い、というものがある。」「ご受賞に賛同。」
宇江佐真理
女50歳
8 「メルヘンタッチの時代小説。私の好みであるが、メルヘンはそれなりに具体的事実の裏付がないと。ご三卿なるもの、大変な勢威だろうと思われるのに、その雰囲気がないのは辛い。」
乙川優三郎
男47歳
9 「主人公・禎蔵に好感をもったが、ヒロイン八重の心理がいまひとつ腑におちない。これが説得力がないとなると構成は崩れてしまうのではないか。小藩にしては騒動のスケールが大きすぎるのも気になる。」
重松清
男37歳
29 「(引用者注:「虹の谷の五月」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「私には当選圏内の作品と思える。」「三作の中で『カカシ……』の滑脱な口吻を採りたい。作品世界の安定調和ぶりがやや過剰気味で、少しもたれる気もするが、読後感のすがすがしさがいい。」
真保裕一
男39歳
4 「どの篇もこしらえ物の気がして隔靴掻痒の憾みあり。」
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他の選考委員
北方謙三
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
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津本陽
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選考委員
宮城谷昌光男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
意欲とこころみ 総行数111 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
20 「作品にある内的方向性の用いかたを私は学ばせてもらったような気がしている。」「氏が置いてゆくことばが象を描くのが早すぎはしないか。両者の距離が短すぎると色あいを内含するゆとりをもたず、さらに語がおなじ方向をむいてしまっているので、単調さを産んでしまう。」
金城一紀
男31歳
24 「小説を書くという作業にあらたな課題をあたえ、何かを越えようとするこころみが感じられた」「すぐれた作家のみがかならずもっている憎悪が底辺にめだたないようにあり、この憎悪の管理が疎漏なくなされているがゆえに、人間の愛ややさしさが小説世界のすみずみにしみわたってゆくのである。」
宇江佐真理
女50歳
33 「小説を書くという作業にあらたな課題をあたえ、何かを越えようとするこころみが感じられた」「おもしろい小説を書きたい、という初志を喪っていないように感じられた。その時代における認識の甘さや語法の不備など、問題点はすくなくないが、私には初志を遵守してゆく姿が美しければ、それだけで打たれる。」
乙川優三郎
男47歳
15 「虚無は感じられず、割り切りかたの早さが軽便へつながってしまうことが惜しまれる。割り切れないのが、人生であり男女の仲、ということでよいのではないか。それにしても氏はたくましい。うらやむべきことである。」
重松清
男37歳
23 「氏が作品の中心にすえたカカシが象徴であることはあきらかであり、それならば、この作品の細部にまで象徴がきらめいてもらいたかった。」「(引用者注:氏の)感覚の過去に作者の幽い哀しみが横たわっているように感じられたので、私は最後まで氏の作品に同情的であった。」
真保裕一
男39歳
28 「小説を書くという作業にあらたな課題をあたえ、何かを越えようとするこころみが感じられた」「作為の跡が消されておらず、人間関係もぎごちないが、この作家の精神の中枢にはたぶん変化と成長があり、自身を甘やかさない厳しさがあるとみて、好感を懐いた。」
  「この賞が功労賞ではなく新人賞であり、この賞の受賞がその作家にとって飛躍のための翼やスプリングボードになってくれればよく、そのための選考である、と自分にいいきかせて候補作品を読んだ。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
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選考委員
平岩弓枝女68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「GO」を推す 総行数88 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
13 「長さを感じさせないほど面白かった。エンターテイメントの要素を完全に備えていて読者を飽きさせないというのも技術の一つだし、それに元気のよさが加われば鬼に金棒であろう。」
金城一紀
男31歳
13 「一番心に残った」「本来なら重く暗い主題を書きながら、さわやかで明るい。巧まざるユーモアも感じさせる。作者の筆力と若さの故かと思う。しかも、一つ一つのエピソードは切なく、哀しい。」
宇江佐真理
女50歳
26 「構成にミスがある。」「茶店の老婆の語りで、あれほど複雑な物語が進められるというのからして無理だが、果して途中から老婆の話はどこかへ消えてしまってしめくくりがない。」「宇江佐さんにとって、この作品が候補作となったのは、お気の毒としかいいようがない。」
乙川優三郎
男47歳
17 「前作の「喜知次」と設定がそっくり」「長いこと書いていて一つのスタイルが生じて来る場合も少くはない。けれども、人間描写ということに細心の注意と情熱を持っていれば避けて通れる道でもある筈なので、それがこうした結果になったというのは書き手の視野が狭くなっていることへの警鐘と考えて頂きたい。」
重松清
男37歳
16 「二つの受賞作の狭間に入ってしまって損をしたようなところがあった。」「現代の日常性の中にあるものを書こうとする際、その書き手の心に時代に対する先読みの姿勢がないと、良質のレポートになる危険がある」
真保裕一
男39歳
0  
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
渡辺淳一
五木寛之
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
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選考委員
渡辺淳一男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
爽やかな快作 総行数121 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
22 「大変な力作であった。」「努力はわかるが、全体の印象はやや退屈で、華やかな色がつかわれているわりには単彩の感じが残った。」「しかしこれだけの労作を仕上げた気力は見事で、若い金城氏と老練の著者の、二作受賞は悪くないと思って、賛成した。」
金城一紀
男31歳
37 「最も心を惹かれた。それは候補作のなかで、これだけが著者に切実なテーマを等身大の視点から、変に深刻ぶらずに、しかし強い迫力をもって描かれていたからである。」「一点だけ、この作家の作品を読むのは初めてであり、作品歴も少ないところが気がかりでもあった。」「この鋭さと感性があれば、他のものもそれなりに書いていけるだろう。そう思って、この作品を真先に推した。」
宇江佐真理
女50歳
26 「これまでとは異る大きな仕掛けをつくり、特異な登場人物と波瀾の人間関係を描いて楽しく読ませる。後半ドタバタめくが、久しぶりにわくわくしながら読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
乙川優三郎
男47歳
26 「以前からのテーマをさらに掘りこみ、ある小藩の内紛がよく書きこまれている。とくに執政側と下級武士との相克が、現代のサラリーマン社会を彷彿とさせ、面白く読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
重松清
男37歳
18 「「未来」が優れている。しかしこの作品にかぎらず、表題作など、全体にどこか甘くてかったるく、小説の書き方が、周りを気にしすぎてヒリヒリしすぎているようなところがある。」「全篇悪くはないが、際立つものに欠けていて、いささか損をしているようである。」
真保裕一
男39歳
11 「前作のバイオレンス的熱気が抜けると、ただのさばさばした味気のないものになってしまった。その最大の原因は、小説を頭で書きすぎるところで、この程度の観念的なものでは、一般の読者も満足しないだろう。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
五木寛之
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
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選考委員
五木寛之男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
重松、金城の二氏を推す 総行数107 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
14 「これまでいくつか読む機会のあった船戸ワールドの諸作品とくらべて、ぬきんでた秀作とはいえないというのが私の感想である。」
金城一紀
男31歳
31 「二番目に興味ぶかく読んだのは、金城一紀さんの『GO』だった。背後をふり返ることなく前へ前へとつき進む物語りの疾走感は、まさしくエンターテインメントの新世界を切りひらいた感がある。」「主人公が調子よくいきすぎるんじゃないか、と苦笑しつつも、それを許さざるをえない爽快さがあった。」
宇江佐真理
女50歳
5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
乙川優三郎
男47歳
5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
重松清
男37歳
23 「私がまず推したのは、重松清さんの『カカシの夏休み』である。」「『未来』につよく惹かれるところがあった。」「彼のめざす道のかなたには、ドストエフスキーやトルストイではなく、ゴーゴリやチェホフの背中がみえているように思う。」
真保裕一
男39歳
5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
  「これまでながく選者をつとめてきて、あのときの受賞は決定的にまちがっていたと感じる例は一度もなかったように思う。」「作品としては優れていても、「受賞力」が弱いという場合もありそうだ。しかしその「受賞力」は、かならずしも作品の質とはイコールではない。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
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選考委員
林真理子女46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
金城さんの全力疾走 総行数99 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
29 「いつものことながらぐいぐいとひき込まれていくが、この作品には多少疑問が残った。」「小説の伏線を張るということと、あら筋がわかるということとは違うのではないか。」「最後に、少年の心のよりどころだったほとんどすべての人たちが死ぬのはいかにもつらい。」「船戸さんの実力は疑うべくもないものであるし、こうしたスケールの大きな小説は抗えない魅力に溢れている。」
金城一紀
男31歳
32 「面白くうまい。」「新人の作家が、作品に自分の持っているすべてを注ぎ込み、全力疾走するのは当然のことだ。が、この「GO」はその注ぎ方が尋常ではない。あまりの濃さに読んでいるこちらがむせそうになったことが何度もある。」「作者がこの一作だけで終ったとしても、「GO」はそれでも仕方ないと思わせるだけの素晴らしさがある。」
宇江佐真理
女50歳
13 「旬の作家が持っている力強さがある。」「これは民話の世界だなと感じた。だから多少時代の辻褄の合わないところや、荒唐無稽さも気にならなかったのであるが、時代小説だとなると問題が多いのではなかろうか。」
乙川優三郎
男47歳
4 「いつもながら端正な文章であるが、人物が入り組んで非常に読みづらい。」
重松清
男37歳
17 「非常に面白く読んだ。」「新鮮な切り口と筆力とで読みごたえのある一篇に仕上げた。今とてものっている作家らしく、文章の運びもなめらかであったが、受賞にいたらなかったのはまことに残念だ。」
真保裕一
男39歳
4 「カメラマンといわれる業界の描き方がややありきたりではないか。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
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選考委員
阿刀田高男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
迷いのあと 総行数109 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
42 「取材と構成の充実した骨太の作品で、楽しく読むことができたけれど、この手の作品としては、なにもかも予想通りで、闘争のシーンの凄じい描写力を除けばストーリィそのものに胸を躍らせることができなかった。」「しかし、船戸さんが充分なキャリアを持つ優れたストーリィ・テラーである。(引用者中略)ものさしを当てること自体が失礼のような気もする。あれこれ勘案して、おおかたの推輓があれば尻馬に乗るつもりだった。」
金城一紀
男31歳
16 「ユーモア感覚のすばらしさに拍手を送ったが、これは“私”中心の作品で、周辺がうまく描かれていない。小説として広がりが乏しい。それよりもなによりも、まだ作品数の少ない作家なので、――もう一作、見たい――そこに躊躇の理由があった。」
宇江佐真理
女50歳
4 「前半の設定がおもしろかっただけに後半が腰くだけみたいに感じられ、もうひとつ楽しめなかった。」
乙川優三郎
男47歳
12 「重厚に創られた作品である。」「結末がはっきりせず、カタルシスが足りない。さまざまな設定にも、歴史小説にうとい私にさえ不可解に見えるところがあり、そのあたりに詳しい委員から指摘を受けると、強くは推せなかった。」
重松清
男37歳
14 「私としては「カカシの夏休み」を推そうと考えた。子どもたちを取りまく現在の情況を捕らえて淀みがない。会話が巧みである。人物の設定も造形もそつがない。」
真保裕一
男39歳
11 「あえて趣向のある連作短篇集を編もうとして、カラまわりしてしまったのではあるまいか。」「個々の短篇も、人間への目配りに不足があったのではないか。力のある作家であることは疑いない。」
  「候補作のレベルが横一線らしい。選考会へ赴く道筋でも、――どれを推そうか――ずっと悩み続けていた。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
林真理子
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
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選考委員
黒岩重吾男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読後感 総行数77 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
30 「なかでも闘鶏場の描写は圧巻で、私自身がその場で賭けているような昂奮を覚えた。それに少年の正義感が実に爽やかで心地が良い。確かにところどころ映画調の場面がないではないが、怒濤にも似た迫力に押され余り気にならなかった。」「何よりもの魅力は、読後にロマンを感じたことである。」
金城一紀
男31歳
16 「作者の才能の奥深さが柔軟性をおび、様々な人間像を掌中で愉しみながらねっているような気がする。」「書き下ろしの長篇第一作らしいが、自叙伝的な小説で大事な存在である父親を書いてしまって良いのだろうか、という不安感は残る。受賞に賛同したが、私の懸念を吹っ飛ばすような作品を書いて貰いたい。」
宇江佐真理
女50歳
11 「そこはかとない情感が漂っていた。ただ誘拐された遊は、狼女と噂されるようになり家に戻ってくるが、その間の描写が全く欠落している。読者としては山の中で一体どういう風な生活をしていたのだろうと物足りない。」
乙川優三郎
男47歳
0  
重松清
男37歳
12 「〈未来〉が最も優れていた。」「なるほどなと感じさせる現代の歪みが、毒気となって読者に伝わってくる。」「最終的に押し切れなかったのは、他の二作にいささかだが弱さを感じたせいである。」
真保裕一
男39歳
8 「月刊雑誌の短篇としては、ラストを除き充分通用する。間違いなく才筆である。ただ直木賞の俎板に乗ると、上手さだけでは力不足ということになる。」
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宮城谷昌光
平岩弓枝
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五木寛之
林真理子
阿刀田高
津本陽
井上ひさし
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選考委員
津本陽男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
天性の旨み 総行数81 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
26 「ジャピーノ13歳の章が、もっともすぐれていて、第二章、第三章は、しだいに感動の量がすくなくなってくる。」「しかし、作品全体にわだかまっている野性に好意を持った。」
金城一紀
男31歳
9 「一気に読んだ。あふれるような筆力で、柔軟な文章である。不自然に思えるほどの疵もなく、重い底音を感じさせながら抑えている手際は、天性の旨みであろう。」
宇江佐真理
女50歳
15 「これまでの作品のきめこまかい会話のあじわいが好きで、たのしみにしていたのだが、こんどは勝手がちがった。全体に荒削りな印象が眼につく。とくに会話の部分の冴えが影をひそめてしまった。」
乙川優三郎
男47歳
12 「情景描写が巧緻になり、長篇を結末まで読ませる筆力が養われてきた。」「難をいえば、登場人物と事件が、三万一千余石の小藩にしては多くあらわれ、話の展開が中途でもたつくことである。」「いきおいが乗りすぎたのは、惜しい。」
重松清
男37歳
10 「現在の社会問題をとりあげ、水準の高い作品にしあげている。」「ただ、全体に甘さがただよっていて、対象をグサッと突き刺すようなリアリティの迫力がすくないように思えた。」
真保裕一
男39歳
9 「どれもするどい切り口を狙っていて、相応に成功しているのだが、おや、と意表をつかれ、想像力を刺戟されるような、つよい訴え、あるいは独白が見あたらなかった。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
井上ひさし
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選考委員
井上ひさし男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
強く二作を推す 総行数151 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男56歳
26 「壮大な主題を、無数の、豊かでおもしろい細部が支えて、じつに読み応えがある。」「闘士の感化を受けながら、自分の内にゆるやかに「志」を育てて行く少年の成長ぶりもさわやかで潔く、評者はこの作品を『GO』(金城一紀)と並べて強く推した。」
金城一紀
男31歳
20 「美点が数多くあるが、なによりも作者は、小説という表現形式を発見して嬉しがっている。小説と恋をしている。その喜びが、いたるところで踊っている。」「どこを取っても新鮮で生き生きしていて、とくに少年の〈オヤジ〉の造形の鮮やかさは特筆に値する。」
宇江佐真理
女50歳
30 「不思議なのは、作者がいつの間にか、自分が仕組んだ「枠」をすっかり忘れてしまっていることで、ついにはだれが語っているのか、読者にはさっぱり分からなくなる。」「話は(引用者中略)発展して規模雄大、このあたりは作者の器量の大きさをうかがわせもするが、最後まで語り手がだれかが気になって、素直に作品に溶け込むことができなかった。」
乙川優三郎
男47歳
36 「読者としては、禎蔵がいつ礼助と闘うのか、その結果はどうかを原動力に、長い物語を読み進むことになる。」「もちろん作者は、二人に剣を交えさせるかどうか、何度も繰り返し思案したことだろう。そして作家的決断で、二人を闘わせないことにしたにちがいない。」「読者としては、闘ってもらわなければ浮かぶ瀬がない。」
重松清
男37歳
22 「評者も、「人生ってたいへん、だれもがキツい時代にキツい歳を生きている」という感傷にあふれた、この小説集に好意を抱いた一人であることはたしかだ。」「けれども、作者の持味だった、あの鋭く、深く、皮肉な観察眼が、今回は意外に思うほど姿を消している。三編とも仕上がりが甘くなったのは、そのせいかもしれない。」
真保裕一
男39歳
20 「主題と題名と形式になにか大事な意味があるにちがいない。そう考えて、前から読んだり、うしろから眺めたりしたが、作者の真意がどのへんにあるのか、ついに分からなかった。形式の追求に力が入りすぎて、中身についての追求が充分ではなかったという憾みがある。」
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他の選考委員
北方謙三
田辺聖子
宮城谷昌光
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
林真理子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
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受賞者・作品
船戸与一男56歳×各選考委員 
『虹の谷の五月』
長篇 1458
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
26 「重層的で圧倒的な物語性を持っていた。」「人間の弱さがいやというほど描きこまれている。それだけならただの汚濁だが、その汚濁の中から、主人公の少年のピュアな成長という、真珠のひと粒とも言うべきものを掬いあげることに成功している。」「いまこそこういう作品を評価して、小説は本来あるべきその姿を思い出すべきであろう。」
田辺聖子
女72歳
45 「(引用者注:「カカシの夏休み」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「船戸氏はすでにもう大家でいられ、直木賞の土俵では狭い感もあるが、一度は〈貰って頂かないと〉というのが正直な私の気持であった。」「何より南海の島の濃密な温気と暑熱が読者の皮膚感覚に伝わってくる。」
宮城谷昌光
男55歳
20 「作品にある内的方向性の用いかたを私は学ばせてもらったような気がしている。」「氏が置いてゆくことばが象を描くのが早すぎはしないか。両者の距離が短すぎると色あいを内含するゆとりをもたず、さらに語がおなじ方向をむいてしまっているので、単調さを産んでしまう。」
平岩弓枝
女68歳
13 「長さを感じさせないほど面白かった。エンターテイメントの要素を完全に備えていて読者を飽きさせないというのも技術の一つだし、それに元気のよさが加われば鬼に金棒であろう。」
渡辺淳一
男66歳
22 「大変な力作であった。」「努力はわかるが、全体の印象はやや退屈で、華やかな色がつかわれているわりには単彩の感じが残った。」「しかしこれだけの労作を仕上げた気力は見事で、若い金城氏と老練の著者の、二作受賞は悪くないと思って、賛成した。」
五木寛之
男67歳
14 「これまでいくつか読む機会のあった船戸ワールドの諸作品とくらべて、ぬきんでた秀作とはいえないというのが私の感想である。」
林真理子
女46歳
29 「いつものことながらぐいぐいとひき込まれていくが、この作品には多少疑問が残った。」「小説の伏線を張るということと、あら筋がわかるということとは違うのではないか。」「最後に、少年の心のよりどころだったほとんどすべての人たちが死ぬのはいかにもつらい。」「船戸さんの実力は疑うべくもないものであるし、こうしたスケールの大きな小説は抗えない魅力に溢れている。」
阿刀田高
男65歳
42 「取材と構成の充実した骨太の作品で、楽しく読むことができたけれど、この手の作品としては、なにもかも予想通りで、闘争のシーンの凄じい描写力を除けばストーリィそのものに胸を躍らせることができなかった。」「しかし、船戸さんが充分なキャリアを持つ優れたストーリィ・テラーである。(引用者中略)ものさしを当てること自体が失礼のような気もする。あれこれ勘案して、おおかたの推輓があれば尻馬に乗るつもりだった。」
黒岩重吾
男76歳
30 「なかでも闘鶏場の描写は圧巻で、私自身がその場で賭けているような昂奮を覚えた。それに少年の正義感が実に爽やかで心地が良い。確かにところどころ映画調の場面がないではないが、怒濤にも似た迫力に押され余り気にならなかった。」「何よりもの魅力は、読後にロマンを感じたことである。」
津本陽
男71歳
26 「ジャピーノ13歳の章が、もっともすぐれていて、第二章、第三章は、しだいに感動の量がすくなくなってくる。」「しかし、作品全体にわだかまっている野性に好意を持った。」
井上ひさし
男65歳
26 「壮大な主題を、無数の、豊かでおもしろい細部が支えて、じつに読み応えがある。」「闘士の感化を受けながら、自分の内にゆるやかに「志」を育てて行く少年の成長ぶりもさわやかで潔く、評者はこの作品を『GO』(金城一紀)と並べて強く推した。」
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他の候補作
金城一紀
『GO』
宇江佐真理
『雷桜』
乙川優三郎
『蔓の端々』
重松清
『カカシの夏休み』
真保裕一
『ストロボ』
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受賞者・作品
金城一紀男31歳×各選考委員 
『GO』
長篇 393
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
17 「誰もが認めたように、新鮮で生きがいい。」「主人公の出来がよすぎるのがいささか気になるが、読後にしっかりとなにかが残っている作品だった。最初の本で受賞というのは、苦しみもともに背負わせたようなものだろうと思うが、それを撥ね返すバイタリティはあると信じたい。」
田辺聖子
女72歳
30 「すでにユニークな文体を手に入れていられるのにも瞠目。」「キモチイイ辛口で味わってきた酒が、ラストに至ってにわかに甘口になってしまった感があるのは、私個人の好みとしては惜しいが、しかしまあ、なんと、のど越しのいい酒であろう。」「作者の若さとキャリアからいって、もう一、二篇様子をみたら……と思わないでもなかったが、しかしものごとには時の勢い、というものがある。」「ご受賞に賛同。」
宮城谷昌光
男55歳
24 「小説を書くという作業にあらたな課題をあたえ、何かを越えようとするこころみが感じられた」「すぐれた作家のみがかならずもっている憎悪が底辺にめだたないようにあり、この憎悪の管理が疎漏なくなされているがゆえに、人間の愛ややさしさが小説世界のすみずみにしみわたってゆくのである。」
平岩弓枝
女68歳
13 「一番心に残った」「本来なら重く暗い主題を書きながら、さわやかで明るい。巧まざるユーモアも感じさせる。作者の筆力と若さの故かと思う。しかも、一つ一つのエピソードは切なく、哀しい。」
渡辺淳一
男66歳
37 「最も心を惹かれた。それは候補作のなかで、これだけが著者に切実なテーマを等身大の視点から、変に深刻ぶらずに、しかし強い迫力をもって描かれていたからである。」「一点だけ、この作家の作品を読むのは初めてであり、作品歴も少ないところが気がかりでもあった。」「この鋭さと感性があれば、他のものもそれなりに書いていけるだろう。そう思って、この作品を真先に推した。」
五木寛之
男67歳
31 「二番目に興味ぶかく読んだのは、金城一紀さんの『GO』だった。背後をふり返ることなく前へ前へとつき進む物語りの疾走感は、まさしくエンターテインメントの新世界を切りひらいた感がある。」「主人公が調子よくいきすぎるんじゃないか、と苦笑しつつも、それを許さざるをえない爽快さがあった。」
林真理子
女46歳
32 「面白くうまい。」「新人の作家が、作品に自分の持っているすべてを注ぎ込み、全力疾走するのは当然のことだ。が、この「GO」はその注ぎ方が尋常ではない。あまりの濃さに読んでいるこちらがむせそうになったことが何度もある。」「作者がこの一作だけで終ったとしても、「GO」はそれでも仕方ないと思わせるだけの素晴らしさがある。」
阿刀田高
男65歳
16 「ユーモア感覚のすばらしさに拍手を送ったが、これは“私”中心の作品で、周辺がうまく描かれていない。小説として広がりが乏しい。それよりもなによりも、まだ作品数の少ない作家なので、――もう一作、見たい――そこに躊躇の理由があった。」
黒岩重吾
男76歳
16 「作者の才能の奥深さが柔軟性をおび、様々な人間像を掌中で愉しみながらねっているような気がする。」「書き下ろしの長篇第一作らしいが、自叙伝的な小説で大事な存在である父親を書いてしまって良いのだろうか、という不安感は残る。受賞に賛同したが、私の懸念を吹っ飛ばすような作品を書いて貰いたい。」
津本陽
男71歳
9 「一気に読んだ。あふれるような筆力で、柔軟な文章である。不自然に思えるほどの疵もなく、重い底音を感じさせながら抑えている手際は、天性の旨みであろう。」
井上ひさし
男65歳
20 「美点が数多くあるが、なによりも作者は、小説という表現形式を発見して嬉しがっている。小説と恋をしている。その喜びが、いたるところで踊っている。」「どこを取っても新鮮で生き生きしていて、とくに少年の〈オヤジ〉の造形の鮮やかさは特筆に値する。」
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他の候補作
船戸与一
『虹の谷の五月』
宇江佐真理
『雷桜』
乙川優三郎
『蔓の端々』
重松清
『カカシの夏休み』
真保裕一
『ストロボ』
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候補者・作品
宇江佐真理女50歳×各選考委員 
『雷桜』
長篇 620
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
9 「飛躍の多い小説だった。新鮮なところもあるが、考証の甘さが目立ち、感興を削ぐ。奇抜なようでいて、ありふれた発想だという気もする。」
田辺聖子
女72歳
8 「メルヘンタッチの時代小説。私の好みであるが、メルヘンはそれなりに具体的事実の裏付がないと。ご三卿なるもの、大変な勢威だろうと思われるのに、その雰囲気がないのは辛い。」
宮城谷昌光
男55歳
33 「小説を書くという作業にあらたな課題をあたえ、何かを越えようとするこころみが感じられた」「おもしろい小説を書きたい、という初志を喪っていないように感じられた。その時代における認識の甘さや語法の不備など、問題点はすくなくないが、私には初志を遵守してゆく姿が美しければ、それだけで打たれる。」
平岩弓枝
女68歳
26 「構成にミスがある。」「茶店の老婆の語りで、あれほど複雑な物語が進められるというのからして無理だが、果して途中から老婆の話はどこかへ消えてしまってしめくくりがない。」「宇江佐さんにとって、この作品が候補作となったのは、お気の毒としかいいようがない。」
渡辺淳一
男66歳
26 「これまでとは異る大きな仕掛けをつくり、特異な登場人物と波瀾の人間関係を描いて楽しく読ませる。後半ドタバタめくが、久しぶりにわくわくしながら読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
五木寛之
男67歳
5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
林真理子
女46歳
13 「旬の作家が持っている力強さがある。」「これは民話の世界だなと感じた。だから多少時代の辻褄の合わないところや、荒唐無稽さも気にならなかったのであるが、時代小説だとなると問題が多いのではなかろうか。」
阿刀田高
男65歳
4 「前半の設定がおもしろかっただけに後半が腰くだけみたいに感じられ、もうひとつ楽しめなかった。」
黒岩重吾
男76歳
11 「そこはかとない情感が漂っていた。ただ誘拐された遊は、狼女と噂されるようになり家に戻ってくるが、その間の描写が全く欠落している。読者としては山の中で一体どういう風な生活をしていたのだろうと物足りない。」
津本陽
男71歳
15 「これまでの作品のきめこまかい会話のあじわいが好きで、たのしみにしていたのだが、こんどは勝手がちがった。全体に荒削りな印象が眼につく。とくに会話の部分の冴えが影をひそめてしまった。」
井上ひさし
男65歳
30 「不思議なのは、作者がいつの間にか、自分が仕組んだ「枠」をすっかり忘れてしまっていることで、ついにはだれが語っているのか、読者にはさっぱり分からなくなる。」「話は(引用者中略)発展して規模雄大、このあたりは作者の器量の大きさをうかがわせもするが、最後まで語り手がだれかが気になって、素直に作品に溶け込むことができなかった。」
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他の候補作
船戸与一
『虹の谷の五月』
金城一紀
『GO』
乙川優三郎
『蔓の端々』
重松清
『カカシの夏休み』
真保裕一
『ストロボ』
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候補者・作品
乙川優三郎男47歳×各選考委員 
『蔓の端々』
長篇 718
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
11 「八重と礼助の描き方が思わせぶりで、拍子抜けという感じがした。小藩の抗争をこれほど複雑に描く必要があるのだろうか、と首を傾げたところで、物語の停滞も感じた。全体にはうまい小説で、ひとりひとりの登場人物が立ちあがってくる筆力は、圧倒的であった。」
田辺聖子
女72歳
9 「主人公・禎蔵に好感をもったが、ヒロイン八重の心理がいまひとつ腑におちない。これが説得力がないとなると構成は崩れてしまうのではないか。小藩にしては騒動のスケールが大きすぎるのも気になる。」
宮城谷昌光
男55歳
15 「虚無は感じられず、割り切りかたの早さが軽便へつながってしまうことが惜しまれる。割り切れないのが、人生であり男女の仲、ということでよいのではないか。それにしても氏はたくましい。うらやむべきことである。」
平岩弓枝
女68歳
17 「前作の「喜知次」と設定がそっくり」「長いこと書いていて一つのスタイルが生じて来る場合も少くはない。けれども、人間描写ということに細心の注意と情熱を持っていれば避けて通れる道でもある筈なので、それがこうした結果になったというのは書き手の視野が狭くなっていることへの警鐘と考えて頂きたい。」
渡辺淳一
男66歳
26 「以前からのテーマをさらに掘りこみ、ある小藩の内紛がよく書きこまれている。とくに執政側と下級武士との相克が、現代のサラリーマン社会を彷彿とさせ、面白く読んだ。」「史実的な不備をつかれて大きく後退した。(引用者中略)いかに巧みに史実をまるめこむかということが、(引用者中略)求められる課題かもしれない。」
五木寛之
男67歳
5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
林真理子
女46歳
4 「いつもながら端正な文章であるが、人物が入り組んで非常に読みづらい。」
阿刀田高
男65歳
12 「重厚に創られた作品である。」「結末がはっきりせず、カタルシスが足りない。さまざまな設定にも、歴史小説にうとい私にさえ不可解に見えるところがあり、そのあたりに詳しい委員から指摘を受けると、強くは推せなかった。」
黒岩重吾
男76歳
0  
津本陽
男71歳
12 「情景描写が巧緻になり、長篇を結末まで読ませる筆力が養われてきた。」「難をいえば、登場人物と事件が、三万一千余石の小藩にしては多くあらわれ、話の展開が中途でもたつくことである。」「いきおいが乗りすぎたのは、惜しい。」
井上ひさし
男65歳
36 「読者としては、禎蔵がいつ礼助と闘うのか、その結果はどうかを原動力に、長い物語を読み進むことになる。」「もちろん作者は、二人に剣を交えさせるかどうか、何度も繰り返し思案したことだろう。そして作家的決断で、二人を闘わせないことにしたにちがいない。」「読者としては、闘ってもらわなければ浮かぶ瀬がない。」
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他の候補作
船戸与一
『虹の谷の五月』
金城一紀
『GO』
宇江佐真理
『雷桜』
重松清
『カカシの夏休み』
真保裕一
『ストロボ』
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候補者・作品
重松清男37歳×各選考委員 
『カカシの夏休み』
中篇集3篇 604
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
18 「三本のどれをとっても佳品であった。ただ、わずかずつそれぞれに齟齬を感じ、そのあたりで物語に入っていけなくなる。」「「未来」の出来が最もいいと感じたが、クラス全員の名を記した何十通もの遺書が出てくるところで、微妙な違和感に襲われる。」
田辺聖子
女72歳
29 「(引用者注:「虹の谷の五月」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「私には当選圏内の作品と思える。」「三作の中で『カカシ……』の滑脱な口吻を採りたい。作品世界の安定調和ぶりがやや過剰気味で、少しもたれる気もするが、読後感のすがすがしさがいい。」
宮城谷昌光
男55歳
23 「氏が作品の中心にすえたカカシが象徴であることはあきらかであり、それならば、この作品の細部にまで象徴がきらめいてもらいたかった。」「(引用者注:氏の)感覚の過去に作者の幽い哀しみが横たわっているように感じられたので、私は最後まで氏の作品に同情的であった。」
平岩弓枝
女68歳
16 「二つの受賞作の狭間に入ってしまって損をしたようなところがあった。」「現代の日常性の中にあるものを書こうとする際、その書き手の心に時代に対する先読みの姿勢がないと、良質のレポートになる危険がある」
渡辺淳一
男66歳
18 「「未来」が優れている。しかしこの作品にかぎらず、表題作など、全体にどこか甘くてかったるく、小説の書き方が、周りを気にしすぎてヒリヒリしすぎているようなところがある。」「全篇悪くはないが、際立つものに欠けていて、いささか損をしているようである。」
五木寛之
男67歳
23 「私がまず推したのは、重松清さんの『カカシの夏休み』である。」「『未来』につよく惹かれるところがあった。」「彼のめざす道のかなたには、ドストエフスキーやトルストイではなく、ゴーゴリやチェホフの背中がみえているように思う。」
林真理子
女46歳
17 「非常に面白く読んだ。」「新鮮な切り口と筆力とで読みごたえのある一篇に仕上げた。今とてものっている作家らしく、文章の運びもなめらかであったが、受賞にいたらなかったのはまことに残念だ。」
阿刀田高
男65歳
14 「私としては「カカシの夏休み」を推そうと考えた。子どもたちを取りまく現在の情況を捕らえて淀みがない。会話が巧みである。人物の設定も造形もそつがない。」
黒岩重吾
男76歳
12 「〈未来〉が最も優れていた。」「なるほどなと感じさせる現代の歪みが、毒気となって読者に伝わってくる。」「最終的に押し切れなかったのは、他の二作にいささかだが弱さを感じたせいである。」
津本陽
男71歳
10 「現在の社会問題をとりあげ、水準の高い作品にしあげている。」「ただ、全体に甘さがただよっていて、対象をグサッと突き刺すようなリアリティの迫力がすくないように思えた。」
井上ひさし
男65歳
22 「評者も、「人生ってたいへん、だれもがキツい時代にキツい歳を生きている」という感傷にあふれた、この小説集に好意を抱いた一人であることはたしかだ。」「けれども、作者の持味だった、あの鋭く、深く、皮肉な観察眼が、今回は意外に思うほど姿を消している。三編とも仕上がりが甘くなったのは、そのせいかもしれない。」
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他の候補作
船戸与一
『虹の谷の五月』
金城一紀
『GO』
宇江佐真理
『雷桜』
乙川優三郎
『蔓の端々』
真保裕一
『ストロボ』
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候補者・作品
真保裕一男39歳×各選考委員 
『ストロボ』
連作5篇 458
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
17 「意欲的な作品であった。」「一章ごとに過去に戻り、それに従って主人公の試みに必然性を与えていくという手法には斬新なものがあり、唸らされた。作為は見えるが、それを凌ぐリアリティもあった。ただ、私はなぜか、五十歳の痛みを感じなかった。」
田辺聖子
女72歳
4 「どの篇もこしらえ物の気がして隔靴掻痒の憾みあり。」
宮城谷昌光
男55歳
28 「小説を書くという作業にあらたな課題をあたえ、何かを越えようとするこころみが感じられた」「作為の跡が消されておらず、人間関係もぎごちないが、この作家の精神の中枢にはたぶん変化と成長があり、自身を甘やかさない厳しさがあるとみて、好感を懐いた。」
平岩弓枝
女68歳
0  
渡辺淳一
男66歳
11 「前作のバイオレンス的熱気が抜けると、ただのさばさばした味気のないものになってしまった。その最大の原因は、小説を頭で書きすぎるところで、この程度の観念的なものでは、一般の読者も満足しないだろう。」
五木寛之
男67歳
5 「評価する声はあったものの、大多数の支持を集めるにいたらず見送られ、」
林真理子
女46歳
4 「カメラマンといわれる業界の描き方がややありきたりではないか。」
阿刀田高
男65歳
11 「あえて趣向のある連作短篇集を編もうとして、カラまわりしてしまったのではあるまいか。」「個々の短篇も、人間への目配りに不足があったのではないか。力のある作家であることは疑いない。」
黒岩重吾
男76歳
8 「月刊雑誌の短篇としては、ラストを除き充分通用する。間違いなく才筆である。ただ直木賞の俎板に乗ると、上手さだけでは力不足ということになる。」
津本陽
男71歳
9 「どれもするどい切り口を狙っていて、相応に成功しているのだが、おや、と意表をつかれ、想像力を刺戟されるような、つよい訴え、あるいは独白が見あたらなかった。」
井上ひさし
男65歳
20 「主題と題名と形式になにか大事な意味があるにちがいない。そう考えて、前から読んだり、うしろから眺めたりしたが、作者の真意がどのへんにあるのか、ついに分からなかった。形式の追求に力が入りすぎて、中身についての追求が充分ではなかったという憾みがある。」
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他の候補作
船戸与一
『虹の谷の五月』
金城一紀
『GO』
宇江佐真理
『雷桜』
乙川優三郎
『蔓の端々』
重松清
『カカシの夏休み』
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