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平成11年/1999年下半期
(平成12年/2000年1月14日決定発表/『オール讀物』平成12年/2000年3月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男65歳
田辺聖子
女71歳
黒岩重吾
男75歳
平岩弓枝
女67歳
井上ひさし
男65歳
五木寛之
男67歳
渡辺淳一
男66歳
津本陽
男70歳
選評総行数  97 99 97 101 181 93 92 74
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
なかにし礼 『長崎ぶらぶら節』
471
男61歳
30 31 51 44 46 20 13 41
東野圭吾 『白夜行』
1449
男41歳
20 33 13 18 40 11 51 21
馳星周 『M』
483
男34歳
12 0 0 7 36 14 12 3
福井晴敏 『亡国のイージス』
1788
男31歳
12 37 14 5 35 14 54 5
真保裕一 『ボーダーライン』
932
男38歳
23 0 0 27 26 34 53 4
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
阿刀田高男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
躍動する筆力 総行数97 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
30 「――そう、そう、小説には、こういう喜びがあったんだ――おおらかな楽しさを得て快かった。」「高揚するシーンを描くのが巧みである。」「祭と歌、本来的に躍動するテーマを中心に据え、高らかに、しめやかに謳歌して澱みがない。」「男女の仲をもう少し深いところで抉ってほしいと思ったが、伝記としての配慮と礼節があったのかもしれない。」
東野圭吾
男41歳
20 「読みやすいミステリーで、充分に楽しめたが、納得しにくい部分がないでもない。“わざと書かない”という美意識がミステリー作法に実在していることは確かだが、これはとても危険な技である。」「発端の質屋殺しは、どんな犯罪があって、そこで、なぜ、どのようにして幼い二人の友愛的結合が生じたのか、強い説得力と必然性がないと、読み進むのがつらくなってしまう。」
馳星周
男34歳
12 「今回の作品は、どこか手軽い感じが否めない。四つの短篇の中では「眩暈」がおもしろかったが、おしなべて風俗はあるが人生はない。そんな印象を覚えてならなかった。適当な候補作とは考えにくかった。」
福井晴敏
男31歳
12 「乱闘、戦闘の場面が際立っている。知識も深い。が、人間の造形はどうなのだろうか。削ぐものを削いで、なにを訴えるか、いくつかの配慮の中から、一つが選ばれるような作法が考慮されてよいのではないか、と考えた。」
真保裕一
男38歳
23 「力作だ。」「探偵という職業を、なんの違和感もなく提示した技も巧みである。」「だが、他の委員から「探偵を登場させたら、たまたま先天的犯罪者と遭遇した、というのは小説の本道ではない。先天的な犯罪者とはなんなのか、それがメイン・テーマとなり、そこにたまたま探偵が関わるという形、これは、そのくらい重いテーマでしょう」と指摘されると首肯しないわけにいかない。」
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他の選考委員
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
津本陽
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選考委員
田辺聖子女71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
火花散る接戦 総行数99 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
31 「二度目に読むと、(引用者中略)一馬身ぬきんでているように思えた。」「よくある人情咄の型にはまっていないのは、長崎の空気が色濃く出ていることと、その土地のエッセンスのような老妓の印象が好もしいためであろう。」「序章と終章が美しい額縁を成して、みちたりた読後感を与えられた。」
東野圭吾
男41歳
33 「これまた快作、そして怪作であった。」「周到な伏線が張りめぐらされ、読んでいるあいだは、これまた息もつかせず面白かった。しかし読後感のあと味わるさも相当なもの。これは人間の邪気が全篇を掩っているので、それに負けてしまう、ということであろう。」「もしそれ、一抹、この二人の犯罪者にしおらしさが書きこんでいられれば、と願うのは、古いであろうか。」
馳星周
男34歳
0  
福井晴敏
男31歳
37 「この作品には票は集まらないだろうな、と思いつつ私は一票を入れた。」「〈国とは何なんだ?〉〈国を守るとはどういうことなんだ?〉という素朴で原初的だが大きい命題を扱っている。その意気込みと志、ここまでの構成の骨格を組みたてる腕力を買いたい。」「ひととき時間を忘れさせてくれる快作である。」
真保裕一
男38歳
0  
  「今回は力作が、ツライチ(原文傍点)に並んだという最初の印象であった」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
津本陽
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選考委員
黒岩重吾男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
存在感の深まり 総行数97 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
51 「人間に真っ向から取り組んだのが、なかにし礼氏の「長崎ぶらぶら節」である。」「愛八の情熱の背後に影を落している孤独感に私は惹かれた。」「確かに今少し濃密さが欲しかった気もするが、日がたつにつれ、愛八の存在が深まってくる。」
東野圭吾
男41歳
13 「二人の主人公に人間の匂いがしない。」「周囲の人間も作者の掌中で都合良く行動している。ストーリー作りの才は優れているが、読後感は空しい。」
馳星周
男34歳
0  
福井晴敏
男31歳
14 「若い作者が全エネルギーを叩きつけた感じがする。ただ小説というものは持てる総てを書けば良いというわけではない。」「と同時に登場人物が描けていない。」「余りにも登場人物が多く、作者は誰に重点を置くかを見失ったのではないか。」
真保裕一
男38歳
0  
  「(引用者注:ここ数年のミステリー系作品の受賞作が)発酵した文学的毒気や甘美な酩酊は何と刺戟的であったことか。」「残念ながら今回のミステリー系諸作品にはそれが全くなかった。」
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他の選考委員
阿刀田高
田辺聖子
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
津本陽
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選考委員
平岩弓枝女67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「長崎ぶらぶら節」を推す 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
44 「古賀と愛八がキリシタンの歌を探しに長崎の島々を廻り、いくつもの貴重なかくれキリシタンの祈りの歌を記録するあたりは、この作者の独壇場で、読者に深い感動を与える。」「ただ、作品全体の印象は極めて単彩に見える。」「むしろ「兄弟」一作しか書けないのではないかといった危惧を、この作品で払拭した、間口の広さを立証したと私は評価している。」
東野圭吾
男41歳
18 「書き出しの質屋殺しから大変に面白く読み進んだ。」「大量殺人がおかしいとはいわないまでも、その必然性とか手口、死体遺棄などにもう少し丁寧な説明なり描写なりがないと絵空事になってしまう。」「笹垣という刑事など手堅い書き方をしているだけに、惜しい作品だと思う。」
馳星周
男34歳
7 「これまでの作品と違った領域へ顔を向けたことは評価出来るが未完成の印象を受けた。短篇のせいなのか、本当に書きたいことが書き切れていないような気がした。」
福井晴敏
男31歳
5 「前半はともかく、後半の戦争ごっこは頂けない。ゲームの面白さはあるけれども、作品の評価は低かった。」
真保裕一
男38歳
27 「主人公の設定といい、その上司に当る人物の描き方なぞ実にうまい。」「世の中に悪魔のような人間というのは居るけれども、何故、そうなって行ったかの過程はあるもので、生れながら悪魔と片づけるのはものを書く人間としては無責任ではないだろうか。私がこだわったのは、その一点だけであとは文句なしによく書けた作品だった。」
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阿刀田高
田辺聖子
黒岩重吾
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
津本陽
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選考委員
井上ひさし男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の古さと新しさ 総行数181 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
46 「仕立ては古風である。」「それは四千曲に及ぶ歌詞の実作で得た作者独自の「歌論」をふんだんに盛り込むための作家的な戦略だったと思われる。」「歌を発掘するしか生きようがなかった二人の幸福な、しかしある意味では不幸な人生が、読む者の胸を打たずにはおかない。」
東野圭吾
男41歳
40 「登場人物たちの内面に、作者が全能の神ぶって、できるだけ立ち入らないようにしようという執筆態度は、たしかに物語の展開をてきぱきとしたものにしたが、反面では、当然のことながら諸人物たちの彫りを浅くもした。」「とくに最終場面が惜しまれる。」
馳星周
男34歳
36 「冒頭を飾る「眩暈」は〈セックス仕立てのチェホフ〉とでも評すべき佳品だった。」「これは凄いと期待を持った。だが、この期待は、あとの三編で裏切られてしまう。」
福井晴敏
男31歳
35 「滅法おもしろい冒険小説であり、同時に景気のいい国家論でもある。」「登場人物の大量生産と大量消費、そこにおもしろさの源泉があり、同時に底の浅さの原因もあった。」「国家論も扁平で、「攻撃的に平和を?むこともできるのではないか」という観点が欠けているが、とにかく評者は、作者の圧倒的な筆力を買って、「長崎ぶらぶら節」(なかにし礼)と並べて受賞作に推した。」
真保裕一
男38歳
26 「前半は間然する所のない傑作だ。」「「純粋の悪」ともいうべきその男(引用者注:調査官が対決すべき相手)の所業が常に伝聞でのみ描かれる」「作者が誠実に伝聞を書けば書くほど、肝心の純粋の悪はどんどん言葉の鎧を着て行き、最後には言葉だけの存在になってしまった。」
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他の選考委員
阿刀田高
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
五木寛之
渡辺淳一
津本陽
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選考委員
五木寛之男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
もう一枚の切り札 総行数93 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
20 「この古風な小説のなかでも、十分に人を酔わせるアルコール度を発散している。なかにし礼という作家には、一世一代という切り札を何度でも切ってみせる不思議な才能が、天与のものとしてそなわっているのかもしれない。」
東野圭吾
男41歳
11 「プロットの構成力も鮮かなもので、一見、非のうちどころのない物語りだ。しかし、読み終えたあと、どことなく釈然としない気分が残るのは、なぜだろう。登場人物の内面が、理づめで作られたような気がするのは私だけだろうか。」
馳星周
男34歳
14 「随所にヒリヒリするような現代の感触が露出するところは、馳星周ならではの筆力だと思う。しかし、それぞれの物語りを、くり返し同じ構造で作りあげてゆく手法には、いささかの疑問がある。以前、候補になった「不夜城」の迫力を懐しむ気持ちがあった。」
福井晴敏
男31歳
14 「最初は夢中になって読みすすんだが、途中から精密な描写にも幾分、飽きてきて、結末までたどりつくためにかなりの努力を要した。」「才能を高く評価しながらも、どことなく物足りなさをおぼえたのは、憂国の情念が力をこめて描かれていないように感じられたせいかもしれない。」
真保裕一
男38歳
34 「卓抜な取材力といい、登場人物のくっきりした性格づけといい、見事なものだと思う。」「それにもかかわらず、この作品を受賞作として強く推すことが私にはできなかった。」「情感をたたえた文体が、後半まで持続できなかった」「物語りの糸の結び目ともいうべき重要な場面が、きちんと描写されずに手軽に通過されてしまっている」「人間の悪に対する考えかたに、どこか歯がきしむような違和感をおぼえた」
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他の選考委員
阿刀田高
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
渡辺淳一
津本陽
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選考委員
渡辺淳一男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ゲーム的小説 総行数92 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
13 「正直いって、強い作品ではない。」「他の四作の、あまりにゲーム感覚的な小説に比べて、この小説はたしかに人間を見詰め、人間とは何かと考える姿勢があり、それが結果として他を大きく引き離す原因となった。」
東野圭吾
男41歳
51 「(引用者注:「白夜行」「ボーダーライン」「亡国のイージス」は)子供の父親殺しという点で、共通のテーマを扱っている。」「最も重要、かつ切実な問題は、子がなぜ親を殺すのか。この一点に尽きる。」「殺人がゲーム的に書かれていて、小説になりきっていない。」「作家と自負するなら、より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか。」
馳星周
男34歳
12 「飾りが薄くなったぶんだけ、人間観察の甘さがストレートに出て、一人よがりのものになってしまった。四編中では「眩暈」が最も自然だが、他は人間をゲームのように操る安易さだけが目立ち、興を殺がれる。」
福井晴敏
男31歳
54 「(引用者注:「白夜行」「ボーダーライン」「亡国のイージス」は)子供の父親殺しという点で、共通のテーマを扱っている。」「最も重要、かつ切実な問題は、子がなぜ親を殺すのか。この一点に尽きる。」「殺人がゲーム的に書かれていて、小説になりきっていない。」「作家と自負するなら、より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか。」
真保裕一
男38歳
53 「(引用者注:「白夜行」「ボーダーライン」「亡国のイージス」は)子供の父親殺しという点で、共通のテーマを扱っている。」「最も重要、かつ切実な問題は、子がなぜ親を殺すのか。この一点に尽きる。」「殺人がゲーム的に書かれていて、小説になりきっていない。」「作家と自負するなら、より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか。」
  「時代はどのように変ろうとも、小説は事件や情報を書くことではなく、まず人間を書くことだという、古くて新しい原点を忘れないようにしたいものである。」
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他の選考委員
阿刀田高
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
津本陽
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選考委員
津本陽男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人生のあじわい 総行数74 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
なかにし礼
男61歳
41 「彼女(引用者注:主人公愛八)の人生は、さほど不運でもないが、常に孤独のかげがある。」「静かな歌声を背景に、長崎の花街に生きた女性を通して、人間の普遍の姿をえがいたこの作品に一票をいれたかった。」
東野圭吾
男41歳
21 「読者を物語の世界へ誘いこんでゆく、筆力をそなえている。」「しかし、この小説にえがかれる人物は、話の緻密な計画に従い、歩かされているように思える。」「現実にはめったにないような、鬼面人をおどろかすような筋書きをこしらえ、その通りに、あまり血の通っているとも思えない人物たちが動きまわっても、テレビゲームを見ているような気分にならざるをえない。」
馳星周
男34歳
3 「この作者のまえの作品群にくらべ、力が弱かった。」
福井晴敏
男31歳
5 「筆力はあるが、やはり人間の生々しさに、心を高揚させる場面がほしかった。全体に冗舌にすぎるようにも思う。」
真保裕一
男38歳
4 「殺人鬼を描ききれていないので、せっかくの風土の描写の輝きが徒労に終ってしまった。」
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他の選考委員
阿刀田高
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
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受賞者・作品
なかにし礼男61歳×各選考委員 
『長崎ぶらぶら節』
長篇 471
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男65歳
30 「――そう、そう、小説には、こういう喜びがあったんだ――おおらかな楽しさを得て快かった。」「高揚するシーンを描くのが巧みである。」「祭と歌、本来的に躍動するテーマを中心に据え、高らかに、しめやかに謳歌して澱みがない。」「男女の仲をもう少し深いところで抉ってほしいと思ったが、伝記としての配慮と礼節があったのかもしれない。」
田辺聖子
女71歳
31 「二度目に読むと、(引用者中略)一馬身ぬきんでているように思えた。」「よくある人情咄の型にはまっていないのは、長崎の空気が色濃く出ていることと、その土地のエッセンスのような老妓の印象が好もしいためであろう。」「序章と終章が美しい額縁を成して、みちたりた読後感を与えられた。」
黒岩重吾
男75歳
51 「人間に真っ向から取り組んだのが、なかにし礼氏の「長崎ぶらぶら節」である。」「愛八の情熱の背後に影を落している孤独感に私は惹かれた。」「確かに今少し濃密さが欲しかった気もするが、日がたつにつれ、愛八の存在が深まってくる。」
平岩弓枝
女67歳
44 「古賀と愛八がキリシタンの歌を探しに長崎の島々を廻り、いくつもの貴重なかくれキリシタンの祈りの歌を記録するあたりは、この作者の独壇場で、読者に深い感動を与える。」「ただ、作品全体の印象は極めて単彩に見える。」「むしろ「兄弟」一作しか書けないのではないかといった危惧を、この作品で払拭した、間口の広さを立証したと私は評価している。」
井上ひさし
男65歳
46 「仕立ては古風である。」「それは四千曲に及ぶ歌詞の実作で得た作者独自の「歌論」をふんだんに盛り込むための作家的な戦略だったと思われる。」「歌を発掘するしか生きようがなかった二人の幸福な、しかしある意味では不幸な人生が、読む者の胸を打たずにはおかない。」
五木寛之
男67歳
20 「この古風な小説のなかでも、十分に人を酔わせるアルコール度を発散している。なかにし礼という作家には、一世一代という切り札を何度でも切ってみせる不思議な才能が、天与のものとしてそなわっているのかもしれない。」
渡辺淳一
男66歳
13 「正直いって、強い作品ではない。」「他の四作の、あまりにゲーム感覚的な小説に比べて、この小説はたしかに人間を見詰め、人間とは何かと考える姿勢があり、それが結果として他を大きく引き離す原因となった。」
津本陽
男70歳
41 「彼女(引用者注:主人公愛八)の人生は、さほど不運でもないが、常に孤独のかげがある。」「静かな歌声を背景に、長崎の花街に生きた女性を通して、人間の普遍の姿をえがいたこの作品に一票をいれたかった。」
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他の候補作
東野圭吾
『白夜行』
馳星周
『M』
福井晴敏
『亡国のイージス』
真保裕一
『ボーダーライン』
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候補者・作品
東野圭吾男41歳×各選考委員 
『白夜行』
長篇 1449
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男65歳
20 「読みやすいミステリーで、充分に楽しめたが、納得しにくい部分がないでもない。“わざと書かない”という美意識がミステリー作法に実在していることは確かだが、これはとても危険な技である。」「発端の質屋殺しは、どんな犯罪があって、そこで、なぜ、どのようにして幼い二人の友愛的結合が生じたのか、強い説得力と必然性がないと、読み進むのがつらくなってしまう。」
田辺聖子
女71歳
33 「これまた快作、そして怪作であった。」「周到な伏線が張りめぐらされ、読んでいるあいだは、これまた息もつかせず面白かった。しかし読後感のあと味わるさも相当なもの。これは人間の邪気が全篇を掩っているので、それに負けてしまう、ということであろう。」「もしそれ、一抹、この二人の犯罪者にしおらしさが書きこんでいられれば、と願うのは、古いであろうか。」
黒岩重吾
男75歳
13 「二人の主人公に人間の匂いがしない。」「周囲の人間も作者の掌中で都合良く行動している。ストーリー作りの才は優れているが、読後感は空しい。」
平岩弓枝
女67歳
18 「書き出しの質屋殺しから大変に面白く読み進んだ。」「大量殺人がおかしいとはいわないまでも、その必然性とか手口、死体遺棄などにもう少し丁寧な説明なり描写なりがないと絵空事になってしまう。」「笹垣という刑事など手堅い書き方をしているだけに、惜しい作品だと思う。」
井上ひさし
男65歳
40 「登場人物たちの内面に、作者が全能の神ぶって、できるだけ立ち入らないようにしようという執筆態度は、たしかに物語の展開をてきぱきとしたものにしたが、反面では、当然のことながら諸人物たちの彫りを浅くもした。」「とくに最終場面が惜しまれる。」
五木寛之
男67歳
11 「プロットの構成力も鮮かなもので、一見、非のうちどころのない物語りだ。しかし、読み終えたあと、どことなく釈然としない気分が残るのは、なぜだろう。登場人物の内面が、理づめで作られたような気がするのは私だけだろうか。」
渡辺淳一
男66歳
51 「(引用者注:「白夜行」「ボーダーライン」「亡国のイージス」は)子供の父親殺しという点で、共通のテーマを扱っている。」「最も重要、かつ切実な問題は、子がなぜ親を殺すのか。この一点に尽きる。」「殺人がゲーム的に書かれていて、小説になりきっていない。」「作家と自負するなら、より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか。」
津本陽
男70歳
21 「読者を物語の世界へ誘いこんでゆく、筆力をそなえている。」「しかし、この小説にえがかれる人物は、話の緻密な計画に従い、歩かされているように思える。」「現実にはめったにないような、鬼面人をおどろかすような筋書きをこしらえ、その通りに、あまり血の通っているとも思えない人物たちが動きまわっても、テレビゲームを見ているような気分にならざるをえない。」
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他の候補作
なかにし礼
『長崎ぶらぶら節』
馳星周
『M』
福井晴敏
『亡国のイージス』
真保裕一
『ボーダーライン』
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候補者・作品
馳星周男34歳×各選考委員 
『M』
短篇集4篇 483
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男65歳
12 「今回の作品は、どこか手軽い感じが否めない。四つの短篇の中では「眩暈」がおもしろかったが、おしなべて風俗はあるが人生はない。そんな印象を覚えてならなかった。適当な候補作とは考えにくかった。」
田辺聖子
女71歳
0  
黒岩重吾
男75歳
0  
平岩弓枝
女67歳
7 「これまでの作品と違った領域へ顔を向けたことは評価出来るが未完成の印象を受けた。短篇のせいなのか、本当に書きたいことが書き切れていないような気がした。」
井上ひさし
男65歳
36 「冒頭を飾る「眩暈」は〈セックス仕立てのチェホフ〉とでも評すべき佳品だった。」「これは凄いと期待を持った。だが、この期待は、あとの三編で裏切られてしまう。」
五木寛之
男67歳
14 「随所にヒリヒリするような現代の感触が露出するところは、馳星周ならではの筆力だと思う。しかし、それぞれの物語りを、くり返し同じ構造で作りあげてゆく手法には、いささかの疑問がある。以前、候補になった「不夜城」の迫力を懐しむ気持ちがあった。」
渡辺淳一
男66歳
12 「飾りが薄くなったぶんだけ、人間観察の甘さがストレートに出て、一人よがりのものになってしまった。四編中では「眩暈」が最も自然だが、他は人間をゲームのように操る安易さだけが目立ち、興を殺がれる。」
津本陽
男70歳
3 「この作者のまえの作品群にくらべ、力が弱かった。」
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他の候補作
なかにし礼
『長崎ぶらぶら節』
東野圭吾
『白夜行』
福井晴敏
『亡国のイージス』
真保裕一
『ボーダーライン』
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候補者・作品
福井晴敏男31歳×各選考委員 
『亡国のイージス』
長篇 1788
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男65歳
12 「乱闘、戦闘の場面が際立っている。知識も深い。が、人間の造形はどうなのだろうか。削ぐものを削いで、なにを訴えるか、いくつかの配慮の中から、一つが選ばれるような作法が考慮されてよいのではないか、と考えた。」
田辺聖子
女71歳
37 「この作品には票は集まらないだろうな、と思いつつ私は一票を入れた。」「〈国とは何なんだ?〉〈国を守るとはどういうことなんだ?〉という素朴で原初的だが大きい命題を扱っている。その意気込みと志、ここまでの構成の骨格を組みたてる腕力を買いたい。」「ひととき時間を忘れさせてくれる快作である。」
黒岩重吾
男75歳
14 「若い作者が全エネルギーを叩きつけた感じがする。ただ小説というものは持てる総てを書けば良いというわけではない。」「と同時に登場人物が描けていない。」「余りにも登場人物が多く、作者は誰に重点を置くかを見失ったのではないか。」
平岩弓枝
女67歳
5 「前半はともかく、後半の戦争ごっこは頂けない。ゲームの面白さはあるけれども、作品の評価は低かった。」
井上ひさし
男65歳
35 「滅法おもしろい冒険小説であり、同時に景気のいい国家論でもある。」「登場人物の大量生産と大量消費、そこにおもしろさの源泉があり、同時に底の浅さの原因もあった。」「国家論も扁平で、「攻撃的に平和を?むこともできるのではないか」という観点が欠けているが、とにかく評者は、作者の圧倒的な筆力を買って、「長崎ぶらぶら節」(なかにし礼)と並べて受賞作に推した。」
五木寛之
男67歳
14 「最初は夢中になって読みすすんだが、途中から精密な描写にも幾分、飽きてきて、結末までたどりつくためにかなりの努力を要した。」「才能を高く評価しながらも、どことなく物足りなさをおぼえたのは、憂国の情念が力をこめて描かれていないように感じられたせいかもしれない。」
渡辺淳一
男66歳
54 「(引用者注:「白夜行」「ボーダーライン」「亡国のイージス」は)子供の父親殺しという点で、共通のテーマを扱っている。」「最も重要、かつ切実な問題は、子がなぜ親を殺すのか。この一点に尽きる。」「殺人がゲーム的に書かれていて、小説になりきっていない。」「作家と自負するなら、より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか。」
津本陽
男70歳
5 「筆力はあるが、やはり人間の生々しさに、心を高揚させる場面がほしかった。全体に冗舌にすぎるようにも思う。」
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他の候補作
なかにし礼
『長崎ぶらぶら節』
東野圭吾
『白夜行』
馳星周
『M』
真保裕一
『ボーダーライン』
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候補者・作品
真保裕一男38歳×各選考委員 
『ボーダーライン』
長篇 932
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男65歳
23 「力作だ。」「探偵という職業を、なんの違和感もなく提示した技も巧みである。」「だが、他の委員から「探偵を登場させたら、たまたま先天的犯罪者と遭遇した、というのは小説の本道ではない。先天的な犯罪者とはなんなのか、それがメイン・テーマとなり、そこにたまたま探偵が関わるという形、これは、そのくらい重いテーマでしょう」と指摘されると首肯しないわけにいかない。」
田辺聖子
女71歳
0  
黒岩重吾
男75歳
0  
平岩弓枝
女67歳
27 「主人公の設定といい、その上司に当る人物の描き方なぞ実にうまい。」「世の中に悪魔のような人間というのは居るけれども、何故、そうなって行ったかの過程はあるもので、生れながら悪魔と片づけるのはものを書く人間としては無責任ではないだろうか。私がこだわったのは、その一点だけであとは文句なしによく書けた作品だった。」
井上ひさし
男65歳
26 「前半は間然する所のない傑作だ。」「「純粋の悪」ともいうべきその男(引用者注:調査官が対決すべき相手)の所業が常に伝聞でのみ描かれる」「作者が誠実に伝聞を書けば書くほど、肝心の純粋の悪はどんどん言葉の鎧を着て行き、最後には言葉だけの存在になってしまった。」
五木寛之
男67歳
34 「卓抜な取材力といい、登場人物のくっきりした性格づけといい、見事なものだと思う。」「それにもかかわらず、この作品を受賞作として強く推すことが私にはできなかった。」「情感をたたえた文体が、後半まで持続できなかった」「物語りの糸の結び目ともいうべき重要な場面が、きちんと描写されずに手軽に通過されてしまっている」「人間の悪に対する考えかたに、どこか歯がきしむような違和感をおぼえた」
渡辺淳一
男66歳
53 「(引用者注:「白夜行」「ボーダーライン」「亡国のイージス」は)子供の父親殺しという点で、共通のテーマを扱っている。」「最も重要、かつ切実な問題は、子がなぜ親を殺すのか。この一点に尽きる。」「殺人がゲーム的に書かれていて、小説になりきっていない。」「作家と自負するなら、より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか。」
津本陽
男70歳
4 「殺人鬼を描ききれていないので、せっかくの風土の描写の輝きが徒労に終ってしまった。」
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他の候補作
なかにし礼
『長崎ぶらぶら節』
東野圭吾
『白夜行』
馳星周
『M』
福井晴敏
『亡国のイージス』
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