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平成11年/1999年上半期
(平成11年/1999年7月15日決定発表/『オール讀物』平成11年/1999年9月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男64歳
平岩弓枝
女67歳
黒岩重吾
男75歳
津本陽
男70歳
田辺聖子
女71歳
井上ひさし
男64歳
五木寛之
男66歳
渡辺淳一
男65歳
選評総行数  100 90 109 83 110 159 83 107
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
佐藤賢一 『王妃の離婚』
709
男31歳
28 43 30 17 20 49 17 35
桐野夏生 『柔らかな頬』
945
女47歳
26 36 35 18 42 32 27 33
宇江佐真理 『紫紺のつばめ』
429
女49歳
6 10 19 10 10 26 0 3
黒川博行 『文福茶釜』
420
男50歳
13 9 13 17 24 27 0 3
天童荒太 『永遠の仔』
2364
男39歳
27 15 12 21 14 25 44 36
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
阿刀田高男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
なぜ中世フランスか 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
28 「なぜ日本人を描かないか、という疑問は、この種の作品につねに投げかけられるものである。」「この作品について言えば、違和感はない。とてもおもしろい。」「モチーフは今日的であり、作品を貫くユーモアが上質である。小説の進展にともない王妃の魅力が現われ、女性の美しさとはなんなのか、さりげなく答えてくれるところも快い。」
桐野夏生
女47歳
26 「きっかりとした構造を作り上げ、その舞台の上で、それぞれの登場人物が持つ心の闇をあぶり出している。」「どの登場人物も必死になって生きる手応えを求めているのだ。それがこの作品のモチーフなのだ。」「最後の数十行を人間たちの心の闇を伝える深遠な寓話として読んだ。」
宇江佐真理
女49歳
6 「手堅いけれど、新しい書き手の登場を訴える華やかさが見えにくい。ルーティンを越えて、もっと高いところへ飛翔してほしいと願った。」
黒川博行
男50歳
13 「美術品を売買するカラクリが情報として滅法おもしろい。読んで十分に楽しめる短篇小説であったが、さらに吟味して読むと、少し軽い感じがいなめない。短篇小説に必要な作りの精緻さに不十分なものを感じてしまう。」
天童荒太
男39歳
27 「テーマの現代性は申し分ない。」「見事と思った。だが、テーマの重さが先行するあまり、登場人物への目配りがもの足りなく感じられてしまった。」「作品の構造についても、十七年の空白を埋めるのは、この方法でよかったのか、疑問が残った。」「しかし、力わざであることはまちがいない。」
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他の選考委員
平岩弓枝
黒岩重吾
津本陽
田辺聖子
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
平岩弓枝女67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
秀頴の二作品 総行数90 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
43 「主人公のフランソワをはじめとして一人一人がいい目くばりでしっかり描けているのでラストの父と子のかかわり合いが陳腐にならず、むしろ、快い読後感となって生かされた。」「良い材料を丁寧に仕上げた作者の筆力は高く評価されてよいと思う。」
桐野夏生
女47歳
36 「読み終えてこの作者が何年かにわたって書きたいと思い、書き続けて来たに違いない現代人の荒涼とした心象風景が漸くわかったような気持になった。老人から幼児まで、登場人物のすべての人の体の奥を吹きすぎて行く風の冷たさに慄然としながら、それを書き切った作者の勇気に感動をおぼえた。」
宇江佐真理
女49歳
10 「連作読切の作品の連載中の何回か分を一冊にまとめたものの弱さが目立った。レギュラーの人物のキャラクターも不充分だし、強烈な個性を持つゲストも登場していないのでは、どう書いても読みごたえのある作品には仕上らない。」
黒川博行
男50歳
9 「私自身はこの手の話が好きなので楽しく読んだが、やはり、美術骨董の世界の裏ばなしに終始して、そこに生きる人間像への掘り下げや追求が不足していると指摘されれば、その通りだと思う。話の面白さは所詮、人間の面白さにかなわない。」
天童荒太
男39歳
15 「意図はわかるが、欲ばりすぎである。幼児虐待、老人看護、人間の孤独、それに弁護士、警官、看護婦などの職業に関する諸問題など材料を並べすぎて逆につくりものめいてしまった。殊にラストではその感が深い。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
田辺聖子
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
黒岩重吾男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
桐野氏の光と雫 総行数109 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
30 「次点といったところか。」「ところどころ骨張った文章にとまどったが、フランス史にうとい私も面白く読み終えた。」「記録によれば、ルイ十二世は「人民の父」と称された人物である。離婚の経過は兎も角、その点に触れなければ読者はルイ十二世に偏見を抱きかねない。」「氏の受賞に異論はない。」
桐野夏生
女47歳
35 「「柔らかな頬」一作を推した。この作品にはどうにもならない人間の呻きが満ちている。作品の基調は鉛色だが、奥底深くにマグマに似た生へのエネルギーが潜んでいるのを感じる。」「主人公のカスミは、その汗のしたたりや匂いを感じるほどの迫力で迫まってくるが、カスミの愛人だったデザイナーの石山も活きている。」
宇江佐真理
女49歳
19 「作者が伊三次に溺れ過ぎているのを感じた。そのため小説にとって大事な描写に眼が届いていない。」「今回の作品には(引用者中略)手抜きが多い。」
黒川博行
男50歳
13 「一気に読ませる。だがその面白さは巧妙な手品の謎を解き明かされる昂奮と同質のものである。この世界の人間にも様々な体臭や悩みがある筈だが、本小説の人物は皆単調で深みがない。」「「山居静観」が佳作だったが、これ以上のものを並べて欲しかった。」
天童荒太
男39歳
12 「登場人物たちが入れられた双海学園での描写など、余りにも冗長すぎ、不要な部分が多く折角のテーマが色褪せてしまう。また優希を初め少年たちの会話は大人のもので、リアリティが稀薄となった。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
津本陽男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
膂力のつよさ 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
17 「読んだ印象は、楽しませてもらったという一語につきる。」「作者は天性の語り上手であろう。膂力が際立っている。」「陰陽あい引きあうほどのよさといい、洒脱な風格といい、堂に入ったものである。」
桐野夏生
女47歳
18 「才能すぐれた作者の、努力の成果であろう。」「この作者は、きわめて話し上手であるが、作品を展開させる事件について、どうしてそうならざるをえなかったかという、必然性を読者に納得させる説明について、簡略にすませる癖がある。」「その間の事情が納得できるように語られたならば、なお色濃い人間像がえがかれよう。」
宇江佐真理
女49歳
10 「楽しみつつ読むことができた。」「市井譚としての個性を確立できたかといえば、スケールがいま一段といわざるを得ない。」
黒川博行
男50歳
17 「作者は関西を題材にして、いつも堅固な作品を組みたてている。」「こんどの骨董品を扱う業者たちの内幕をあばく短篇集は、手馴れた堅固な展開を示すのだが、迫力があまり感じられない。」「泡沫のような人物のうえにさしている、陽ざしのような雰囲気がほしい。」
天童荒太
男39歳
21 「内容は社会問題をするどくついている。」「ただし、情景の色調に変化がすくなく、登場人物の表情や声も、どれも似ているような気がする。もうちょっと複雑な景色を眺め、騒々しく入りみだれる喚き声も聞きたい。そういう点で、物たりなさが残った。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
黒岩重吾
田辺聖子
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
田辺聖子女71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
近来の佳作二作 総行数110 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
20 「快調の張扇、西洋講談の面白さを満喫できる。」「この痛快な、上機嫌なお魚が自在に泳ぎまわっているのを、すくいあげることのできるタモ(原文傍点)は、たぶん“直木賞”だけだろうと思う」「小説の底ふかさを示唆して、胸のすくような面白さである。」
桐野夏生
女47歳
42 「私はこの小説に感動した。そればかりでなく、この小説はどこを開けても、どのページも美味しかった。」「死と生が入りみだれ、作品を重層的にする。――と、こう書くと重苦しい作品のようだが、読後感は意外に爽快である。たぶん死病にとりつかれた元刑事の死で、読者はヒロインと共に背中を押され、〈生〉へ弾みをつけて転回するからであろう。近来の佳作と思われた。」
宇江佐真理
女49歳
10 「どれもすっきりと仕上った作品だが、中では「菜の花の戦ぐ岸辺」がいい。だんだん氏のファンもふえたように思われるので、自信をもたれて思うことを思うさまお書きになればいいと思う。」
黒川博行
男50歳
24 「私など骨董に迂遠な者には知らぬことばかりでその点では面白かった。」「ことに「文福茶釜」がおかしい。ところで、この面白さに滋味をもう少しつけ加えると、底が深くなるのに――というのは望蜀、というものだろうか。」
天童荒太
男39歳
14 「これだけの量を要するだろうか、という疑問が大方の選考委員から出たが、私も同感。人物造型にリアリティがなく、そのため筋のはこびに作為が目立った。」「むつかしい困難なテーマに挑戦された意欲を讃えたい。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
黒岩重吾
津本陽
井上ひさし
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
井上ひさし男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「王妃の離婚」を推す 総行数159 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
49 「わたしは、「王妃の離婚」(佐藤賢一)の作者の、すべてを知的な諧謔で処理しようという姿勢を支持するものの一人である。」「おもしろくて、痛快で、おまけに文学的な香気と情感も豊か。この作品を推すことに、わたしはいささかもためらわなかった。」
桐野夏生
女47歳
32 「作者はついに読者に幼女失踪の真相を明らかにしようとしない。その意図はどうであれ、作者は読者を欺いている。……たしかにそう思わないわけでもないが、わたしは、作者の人間の死を徹頭徹尾モノとして扱う態度に心を動かされた。」「これはやはり一個の確固たる作品である。」
宇江佐真理
女49歳
26 「今回は、捕物帳の枠をうんとひろげて、市井の人情ものに移行しつつあるように見える。もっともここが評価の分かれるところ。」「捕物帳としておもしろく、市井人情ものとしても読者を唸らせるような作品を徹底して心がけられたら、新しい分野が拓けるのではないか。」
黒川博行
男50歳
27 「手堅い文章と、いたるところにちりばめられた大阪弁の痛快なおもしろさは、この作者の薬籠中のもの、安心して読み進めることができる。ここでふしぎなのは、一編一編はそれなりに水準を超える出来なのに、五編まとまると、平凡な読後感しか残らなくなることだ。」「それに登場人物たちはだれひとりとして骨董品を愛していないようで、そのことが作品の印象をずいぶん冷たいものにしている。」
天童荒太
男39歳
25 「壮大に門戸を構えた力作である。」「作者が築き上げた堅牢な構造が、三人の主人公たちの行動を窮屈に縛りつけている気味がある。」「はっきり云えば、図式的なのだ。これほど壮大で彫りの深い物語がどうして図式としてしか語られなかったのか、返す返すも残念である。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
黒岩重吾
津本陽
田辺聖子
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「永遠の仔」の謎 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
17 「佐藤賢一さんの作品は、新人賞のころからずっと読んできた。」「それもあって、「王妃の離婚」に、新星いず! と驚倒できなかったことを、すこし恥じる気持ちがある。選考する側にも、「初心忘るべからず」の緊張感が常に必要であると、あらためて反省させられた。」
桐野夏生
女47歳
27 「「OUT」とくらべて、新人の小説としての野心に欠けると思った。」「制度としての直木賞のラインからはじき出されたところにこそ、「OUT」の真の栄光があったのではあるまいか。私は胸中にウメガイを抱いているかのように見えるこの作家が、ふたたび「OUT」の世界を描いて「平地人を戦慄せしめ」るであろうことを、ひそかに期待している。」
宇江佐真理
女49歳
0  
黒川博行
男50歳
0  
天童荒太
男39歳
44 「最後まで推したのだが、意外なほど不評で、」「たしかに「永遠の仔」には多くの欠点がある。」「しかし、それにもかかわらず、この力作には何かがあると今でも思う。しかし、その肝心な何かをはっきりとつかみ出し、誰もが納得するような説明をすることが私にはできなかった。」「作品自体が、そのような小器用な解説を拒む謎、不可侵の核を抱いて成り立つ小説であるとも考えられるだろう。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
黒岩重吾
津本陽
田辺聖子
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
渡辺淳一男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新種の誕生 総行数107 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一
男31歳
35 「新たな小説の誕生を思わせる。」「一読しておおいに興味をそそられ、受賞作に推すと決めても、惜しいところで落選ということになるかと思っていたが、結果として、最も多くの支持を得た。」「全体のつくりは知的で諧謔的で、やや非現実的だが、意外に男女の本質をついて機智に富み、面白く読ませる。」
桐野夏生
女47歳
33 「全体には推理的手法で、女の故郷喪失と、娘の突然の失踪などをからませて、読者を引きずっていくが、それにしてはラストの閉じかたが不親切である。」「作品の強さという点では前作の「OUT」が上で、登場人物もリアリティをもって生き生きとしていたが、前作に続いてこの作品を書きあげた、努力と気迫を評価するに、やぶさかではない。」
宇江佐真理
女49歳
3 「長篇ばやりの今日、期待して読んだが、結果は失望に終った。」
黒川博行
男50歳
3 「長篇ばやりの今日、期待して読んだが、結果は失望に終った。」
天童荒太
男39歳
36 「はたしてこれほど長く書く必要があったのか。」「登場人物のすべてを同じ厚さで塗り込むので、遠近法のできていない油絵を見るような単調さを覚えた。問題のテーマも一つ一つの掘り込みは意外に浅く、少年少女の存在もいささかリアリティを欠く。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
黒岩重吾
津本陽
田辺聖子
井上ひさし
五木寛之
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受賞者・作品
佐藤賢一男31歳×各選考委員 
『王妃の離婚』
長篇 709
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男64歳
28 「なぜ日本人を描かないか、という疑問は、この種の作品につねに投げかけられるものである。」「この作品について言えば、違和感はない。とてもおもしろい。」「モチーフは今日的であり、作品を貫くユーモアが上質である。小説の進展にともない王妃の魅力が現われ、女性の美しさとはなんなのか、さりげなく答えてくれるところも快い。」
平岩弓枝
女67歳
43 「主人公のフランソワをはじめとして一人一人がいい目くばりでしっかり描けているのでラストの父と子のかかわり合いが陳腐にならず、むしろ、快い読後感となって生かされた。」「良い材料を丁寧に仕上げた作者の筆力は高く評価されてよいと思う。」
黒岩重吾
男75歳
30 「次点といったところか。」「ところどころ骨張った文章にとまどったが、フランス史にうとい私も面白く読み終えた。」「記録によれば、ルイ十二世は「人民の父」と称された人物である。離婚の経過は兎も角、その点に触れなければ読者はルイ十二世に偏見を抱きかねない。」「氏の受賞に異論はない。」
津本陽
男70歳
17 「読んだ印象は、楽しませてもらったという一語につきる。」「作者は天性の語り上手であろう。膂力が際立っている。」「陰陽あい引きあうほどのよさといい、洒脱な風格といい、堂に入ったものである。」
田辺聖子
女71歳
20 「快調の張扇、西洋講談の面白さを満喫できる。」「この痛快な、上機嫌なお魚が自在に泳ぎまわっているのを、すくいあげることのできるタモ(原文傍点)は、たぶん“直木賞”だけだろうと思う」「小説の底ふかさを示唆して、胸のすくような面白さである。」
井上ひさし
男64歳
49 「わたしは、「王妃の離婚」(佐藤賢一)の作者の、すべてを知的な諧謔で処理しようという姿勢を支持するものの一人である。」「おもしろくて、痛快で、おまけに文学的な香気と情感も豊か。この作品を推すことに、わたしはいささかもためらわなかった。」
五木寛之
男66歳
17 「佐藤賢一さんの作品は、新人賞のころからずっと読んできた。」「それもあって、「王妃の離婚」に、新星いず! と驚倒できなかったことを、すこし恥じる気持ちがある。選考する側にも、「初心忘るべからず」の緊張感が常に必要であると、あらためて反省させられた。」
渡辺淳一
男65歳
35 「新たな小説の誕生を思わせる。」「一読しておおいに興味をそそられ、受賞作に推すと決めても、惜しいところで落選ということになるかと思っていたが、結果として、最も多くの支持を得た。」「全体のつくりは知的で諧謔的で、やや非現実的だが、意外に男女の本質をついて機智に富み、面白く読ませる。」
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他の候補作
桐野夏生
『柔らかな頬』
宇江佐真理
『紫紺のつばめ』
黒川博行
『文福茶釜』
天童荒太
『永遠の仔』
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受賞者・作品
桐野夏生女47歳×各選考委員 
『柔らかな頬』
長篇 945
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男64歳
26 「きっかりとした構造を作り上げ、その舞台の上で、それぞれの登場人物が持つ心の闇をあぶり出している。」「どの登場人物も必死になって生きる手応えを求めているのだ。それがこの作品のモチーフなのだ。」「最後の数十行を人間たちの心の闇を伝える深遠な寓話として読んだ。」
平岩弓枝
女67歳
36 「読み終えてこの作者が何年かにわたって書きたいと思い、書き続けて来たに違いない現代人の荒涼とした心象風景が漸くわかったような気持になった。老人から幼児まで、登場人物のすべての人の体の奥を吹きすぎて行く風の冷たさに慄然としながら、それを書き切った作者の勇気に感動をおぼえた。」
黒岩重吾
男75歳
35 「「柔らかな頬」一作を推した。この作品にはどうにもならない人間の呻きが満ちている。作品の基調は鉛色だが、奥底深くにマグマに似た生へのエネルギーが潜んでいるのを感じる。」「主人公のカスミは、その汗のしたたりや匂いを感じるほどの迫力で迫まってくるが、カスミの愛人だったデザイナーの石山も活きている。」
津本陽
男70歳
18 「才能すぐれた作者の、努力の成果であろう。」「この作者は、きわめて話し上手であるが、作品を展開させる事件について、どうしてそうならざるをえなかったかという、必然性を読者に納得させる説明について、簡略にすませる癖がある。」「その間の事情が納得できるように語られたならば、なお色濃い人間像がえがかれよう。」
田辺聖子
女71歳
42 「私はこの小説に感動した。そればかりでなく、この小説はどこを開けても、どのページも美味しかった。」「死と生が入りみだれ、作品を重層的にする。――と、こう書くと重苦しい作品のようだが、読後感は意外に爽快である。たぶん死病にとりつかれた元刑事の死で、読者はヒロインと共に背中を押され、〈生〉へ弾みをつけて転回するからであろう。近来の佳作と思われた。」
井上ひさし
男64歳
32 「作者はついに読者に幼女失踪の真相を明らかにしようとしない。その意図はどうであれ、作者は読者を欺いている。……たしかにそう思わないわけでもないが、わたしは、作者の人間の死を徹頭徹尾モノとして扱う態度に心を動かされた。」「これはやはり一個の確固たる作品である。」
五木寛之
男66歳
27 「「OUT」とくらべて、新人の小説としての野心に欠けると思った。」「制度としての直木賞のラインからはじき出されたところにこそ、「OUT」の真の栄光があったのではあるまいか。私は胸中にウメガイを抱いているかのように見えるこの作家が、ふたたび「OUT」の世界を描いて「平地人を戦慄せしめ」るであろうことを、ひそかに期待している。」
渡辺淳一
男65歳
33 「全体には推理的手法で、女の故郷喪失と、娘の突然の失踪などをからませて、読者を引きずっていくが、それにしてはラストの閉じかたが不親切である。」「作品の強さという点では前作の「OUT」が上で、登場人物もリアリティをもって生き生きとしていたが、前作に続いてこの作品を書きあげた、努力と気迫を評価するに、やぶさかではない。」
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他の候補作
佐藤賢一
『王妃の離婚』
宇江佐真理
『紫紺のつばめ』
黒川博行
『文福茶釜』
天童荒太
『永遠の仔』
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候補者・作品
宇江佐真理女49歳×各選考委員 
『紫紺のつばめ』
連作5篇 429
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男64歳
6 「手堅いけれど、新しい書き手の登場を訴える華やかさが見えにくい。ルーティンを越えて、もっと高いところへ飛翔してほしいと願った。」
平岩弓枝
女67歳
10 「連作読切の作品の連載中の何回か分を一冊にまとめたものの弱さが目立った。レギュラーの人物のキャラクターも不充分だし、強烈な個性を持つゲストも登場していないのでは、どう書いても読みごたえのある作品には仕上らない。」
黒岩重吾
男75歳
19 「作者が伊三次に溺れ過ぎているのを感じた。そのため小説にとって大事な描写に眼が届いていない。」「今回の作品には(引用者中略)手抜きが多い。」
津本陽
男70歳
10 「楽しみつつ読むことができた。」「市井譚としての個性を確立できたかといえば、スケールがいま一段といわざるを得ない。」
田辺聖子
女71歳
10 「どれもすっきりと仕上った作品だが、中では「菜の花の戦ぐ岸辺」がいい。だんだん氏のファンもふえたように思われるので、自信をもたれて思うことを思うさまお書きになればいいと思う。」
井上ひさし
男64歳
26 「今回は、捕物帳の枠をうんとひろげて、市井の人情ものに移行しつつあるように見える。もっともここが評価の分かれるところ。」「捕物帳としておもしろく、市井人情ものとしても読者を唸らせるような作品を徹底して心がけられたら、新しい分野が拓けるのではないか。」
五木寛之
男66歳
0  
渡辺淳一
男65歳
3 「長篇ばやりの今日、期待して読んだが、結果は失望に終った。」
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他の候補作
佐藤賢一
『王妃の離婚』
桐野夏生
『柔らかな頬』
黒川博行
『文福茶釜』
天童荒太
『永遠の仔』
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候補者・作品
黒川博行男50歳×各選考委員 
『文福茶釜』
連作5篇 420
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男64歳
13 「美術品を売買するカラクリが情報として滅法おもしろい。読んで十分に楽しめる短篇小説であったが、さらに吟味して読むと、少し軽い感じがいなめない。短篇小説に必要な作りの精緻さに不十分なものを感じてしまう。」
平岩弓枝
女67歳
9 「私自身はこの手の話が好きなので楽しく読んだが、やはり、美術骨董の世界の裏ばなしに終始して、そこに生きる人間像への掘り下げや追求が不足していると指摘されれば、その通りだと思う。話の面白さは所詮、人間の面白さにかなわない。」
黒岩重吾
男75歳
13 「一気に読ませる。だがその面白さは巧妙な手品の謎を解き明かされる昂奮と同質のものである。この世界の人間にも様々な体臭や悩みがある筈だが、本小説の人物は皆単調で深みがない。」「「山居静観」が佳作だったが、これ以上のものを並べて欲しかった。」
津本陽
男70歳
17 「作者は関西を題材にして、いつも堅固な作品を組みたてている。」「こんどの骨董品を扱う業者たちの内幕をあばく短篇集は、手馴れた堅固な展開を示すのだが、迫力があまり感じられない。」「泡沫のような人物のうえにさしている、陽ざしのような雰囲気がほしい。」
田辺聖子
女71歳
24 「私など骨董に迂遠な者には知らぬことばかりでその点では面白かった。」「ことに「文福茶釜」がおかしい。ところで、この面白さに滋味をもう少しつけ加えると、底が深くなるのに――というのは望蜀、というものだろうか。」
井上ひさし
男64歳
27 「手堅い文章と、いたるところにちりばめられた大阪弁の痛快なおもしろさは、この作者の薬籠中のもの、安心して読み進めることができる。ここでふしぎなのは、一編一編はそれなりに水準を超える出来なのに、五編まとまると、平凡な読後感しか残らなくなることだ。」「それに登場人物たちはだれひとりとして骨董品を愛していないようで、そのことが作品の印象をずいぶん冷たいものにしている。」
五木寛之
男66歳
0  
渡辺淳一
男65歳
3 「長篇ばやりの今日、期待して読んだが、結果は失望に終った。」
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他の候補作
佐藤賢一
『王妃の離婚』
桐野夏生
『柔らかな頬』
宇江佐真理
『紫紺のつばめ』
天童荒太
『永遠の仔』
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候補者・作品
天童荒太男39歳×各選考委員 
『永遠の仔』
長篇 2364
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男64歳
27 「テーマの現代性は申し分ない。」「見事と思った。だが、テーマの重さが先行するあまり、登場人物への目配りがもの足りなく感じられてしまった。」「作品の構造についても、十七年の空白を埋めるのは、この方法でよかったのか、疑問が残った。」「しかし、力わざであることはまちがいない。」
平岩弓枝
女67歳
15 「意図はわかるが、欲ばりすぎである。幼児虐待、老人看護、人間の孤独、それに弁護士、警官、看護婦などの職業に関する諸問題など材料を並べすぎて逆につくりものめいてしまった。殊にラストではその感が深い。」
黒岩重吾
男75歳
12 「登場人物たちが入れられた双海学園での描写など、余りにも冗長すぎ、不要な部分が多く折角のテーマが色褪せてしまう。また優希を初め少年たちの会話は大人のもので、リアリティが稀薄となった。」
津本陽
男70歳
21 「内容は社会問題をするどくついている。」「ただし、情景の色調に変化がすくなく、登場人物の表情や声も、どれも似ているような気がする。もうちょっと複雑な景色を眺め、騒々しく入りみだれる喚き声も聞きたい。そういう点で、物たりなさが残った。」
田辺聖子
女71歳
14 「これだけの量を要するだろうか、という疑問が大方の選考委員から出たが、私も同感。人物造型にリアリティがなく、そのため筋のはこびに作為が目立った。」「むつかしい困難なテーマに挑戦された意欲を讃えたい。」
井上ひさし
男64歳
25 「壮大に門戸を構えた力作である。」「作者が築き上げた堅牢な構造が、三人の主人公たちの行動を窮屈に縛りつけている気味がある。」「はっきり云えば、図式的なのだ。これほど壮大で彫りの深い物語がどうして図式としてしか語られなかったのか、返す返すも残念である。」
五木寛之
男66歳
44 「最後まで推したのだが、意外なほど不評で、」「たしかに「永遠の仔」には多くの欠点がある。」「しかし、それにもかかわらず、この力作には何かがあると今でも思う。しかし、その肝心な何かをはっきりとつかみ出し、誰もが納得するような説明をすることが私にはできなかった。」「作品自体が、そのような小器用な解説を拒む謎、不可侵の核を抱いて成り立つ小説であるとも考えられるだろう。」
渡辺淳一
男65歳
36 「はたしてこれほど長く書く必要があったのか。」「登場人物のすべてを同じ厚さで塗り込むので、遠近法のできていない油絵を見るような単調さを覚えた。問題のテーマも一つ一つの掘り込みは意外に浅く、少年少女の存在もいささかリアリティを欠く。」
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他の候補作
佐藤賢一
『王妃の離婚』
桐野夏生
『柔らかな頬』
宇江佐真理
『紫紺のつばめ』
黒川博行
『文福茶釜』
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