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田辺聖子
Tanabe Seiko
このページの情報は「芥川賞のすべて・のようなもの」内の「受賞作家の群像 田辺聖子」と同じものです。
生没年月日【注】 昭和3年/1928年3月27日~
在任期間 第97回~第132回(通算18年・36回)
在任年齢 59歳3ヶ月~76歳9ヶ月
経歴 大阪府大阪市生まれ。樟蔭女子専門学校国文科卒。
大阪の問屋に勤務。昭和26年/1951年より同人誌『文藝首都』に参加、
昭和30年/1955年から2年間、大阪文学学校に通う。ラジオドラマの脚本を手がけるかたわら、昭和35年/1960年に同人誌『航路』創刊に参加し、昭和39年/1964年「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」で芥川賞受賞。
「女の日時計」「夕ごはんたべた?」「私的生活」「ひねくれ一茶」など著作は数多く、
伝記小説として「千すじの黒髪――わが愛の与謝野晶子」「花衣ぬぐやまつわる――わが愛の杉田久女」「道頓堀の雨に別れて以来なり」(岸本水府伝)などを書き、また古典の造詣も深い。
ちなみに、エッセイにたびたび登場する、カモカのおっちゃんこと、パートナーの川野純夫とは、純夫の妻で直木賞候補作家でもあった川野彰子が急逝した折り、思い出の文を書いたことが縁で知り合った。
受賞歴・候補歴
  • 大阪市民文芸賞(昭和31年/1956年)「虹」
  • 第50回芥川賞(昭和38年/1963年下期)「感傷旅行」
  • |候補| 第12回女流文学賞(昭和48年/1973年)『すべってころんで』
  • |候補| 第8回吉川英治文学賞(昭和49年/1974年)『すべってころんで』
  • |候補| 第10回吉川英治文学賞(昭和51年/1976年)『夕ごはんたべた?』
  • 大阪芸術賞[小説](昭和51年/1976年)
  • |候補| 第16回女流文学賞(昭和52年/1977年)『隼別王子の叛乱』
  • |候補| 第5回泉鏡花文学賞(昭和52年/1977年)『隼別王子の叛乱』
  • 兵庫県文化賞(昭和57年/1982年)
  • 第26回女流文学賞(昭和62年/1987年)『花衣ぬぐやまつわる……――わが愛の杉田久女』
  • 第10回日本文芸大賞(平成2年/1990年)
  • 第27回吉川英治文学賞(平成5年/1993年)『ひねくれ一茶』
  • 第42回菊池寛賞(平成6年/1994年)
  • 紫綬褒章(平成7年/1995年)
  • 大阪女性基金プリムラ賞大賞(平成9年/1997年)
  • 第3回井原西鶴賞[特別賞](平成10年/1998年)
  • エイボン女性年度賞女性大賞(平成10年/1998年)
  • 第26回泉鏡花文学賞(平成10年/1998年)『道頓堀の雨に別れて以来なり』
  • |候補| 第52回毎日出版文化賞[第1部門(文学・芸術)](平成10年/1998年)『道頓堀の雨に別れて以来なり』
  • 第50回読売文学賞[評論・伝記賞](平成10年/1998年)『道頓堀の雨に別れて以来なり』
  • 文化功労者(平成12年/2000年)
  • 第5回キワニス大阪賞(平成14年/2002年)
  • 第8回蓮如賞(平成15年/2003年)『姥ざかり花の旅笠』
  • 朝日賞(平成18年/2006年度)"『田辺聖子全集』(全24巻・別巻1)完結にいたる文学活動の業績"
  • 文化勲章(平成20年/2008年)
  • 第60回NHK放送文化賞(平成20年/2008年度)
個人全集 『田辺聖子長篇全集』全18巻(文藝春秋)
『田辺聖子全集』全24巻・別巻(平成16年/2004年5月~平成18年/2006年8月・集英社刊)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

直木賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 収穫の二作 総行数129 (1行=14字)
選考委員 田辺聖子 女59歳
候補 評価 行数 評言
男55歳
23 「意も情もよくそなわった快作である。」「戦国時代の瀬戸内海水軍については私は昏いのだが、読み終えて私はたしかに潮の匂いをかぎ、海鳴りの音を聞き、浪のしぶきが顔にあたるのを感じた。」
女28歳
49 「山田氏の文学の最もすぐれた部分を示しているように思われる。物語の語り手の資質を顕示したのだ。」「やっとサガンを抜く女流作家が日本にも出たといったら過褒だろうか。とにかく私は山田氏をまず推した。」
高橋義夫
男41歳
12 「私には感銘があった。」「骨格ただしく推理的興味も添うて、私はオトナの鑑賞に堪える好読物として推してもいい気になっていた。」「(引用者注:「海狼伝」に比べると)まことに通人向きの渋好み、といわねばならぬ。私は涙を呑んで次点に置いたのであった。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年10月号
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直木賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 選後評 総行数150 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女59歳
候補 評価 行数 評言
三浦浩
男57歳
31 「私としては「長蛇を逸した」という気になった作品」「私はとてもよくできた娯楽小説だと思う。」「ただこれはごくデリケートな味わいの小説なので、いわば酒盗とかこのわた(原文傍点)とか、ホヤ(原文傍点)とかいったような、好きな人にはたまらなく好ましいが、受けつけない人にははな(原文傍点)からダメ、という所があるかもしれない。」「受賞作に比べて絶対に遜色なかったと思う。」
男54歳
23 「すでに一家を成していられる方ではあり、今さらという気はあるが、これは氏の実力を改めて認識させるに充分であった。その上、作者の抑制した熱気が伝わってくる。」「男の人生も大変なんですね、なんていう、当然のことを、当然のように思わせる作品、――というのは、これはとても難しいんだけど、成功していたなあ。」
赤瀬川隼
男56歳
24 「ことに私は「梶原一行の犯罪」に魅力を感じた。野球に賭ける男の夢、などというのは、女の認識の埒外であるのに、私にはとても面白くよくわかった。それでいて、ほかの作品に目移りする、というのは、これはどういうことであろうか、破綻のなさが却って力を弱めるのであろうか、いや、小説というのは、(引用者中略)ほかの小説と並べて比較したとき、時々刻々に味が変り、色を変ずるところがある。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号
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直木賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 選後評 総行数150 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女60歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
24 「一級の娯楽作品であると共に、文学的にすぐれたもの、という感じを、私は受けた。現代のメルヘンではあるが、構成も調査もよくゆきとどき、読者を眩惑させるたくましさをもつ。」「揉めに揉めたが、この作品、賞の権威をそこなわないと私は信ずる。」
阿久悠
男51歳
21 「私は面白く読み、入選圏内だと思ったが、意外に票が集まらず残念。」「道化という、最も現代的な存在の本質を衝いていて、饒舌体の小説なのに、無明のニヒルがただよう。現代の断面が鋭く切取られていて、私は共感した」
男48歳
13 「うまい小説だというばかりでなく、「端島の女」にはほとんど感動さえした。〈女の一生〉物語の向うに現代日本の宿命的な転変が透けて見える。」「私は二作受賞、ということに不満ではない。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年10月号
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直木賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 それぞれ力作 総行数125 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女60歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
10 「均斉のとれた、気韻のある佳篇、時代と人間の転変があざやかに描かれ、その合間に、主人公・清親の描く絵の冴えた彩色が明滅する。文章もまことによく消化れ、神経がゆきとどき、それでいてのびやかである。」
古川薫
男63歳
31 「杉本氏の次に推した。南の島のやるせない気分が全篇に充溢し、私は女だけれども、女でしくじった男の、呆然自失のあいまいな幸福感がわかる気がした。」「一票差で受賞を逸したのは惜しかったが、これはいい小説でしたよ、古川さん。」
笹倉明
男40歳
10 「女がよく書けており、推理小説の域をこえて人間の追求という文学性を獲得している。私はこの小説を日本では未開拓(すでに二三の秀作も見られるが)の法廷小説・裁判小説の佳品として推したのだが、やや晦渋とうけとられて票を集めなかったのは惜しい。」
女39歳
27 「むつかしいところである。小説としてはむつかしくないが、恐らく女性読者の反撥を買うんじゃないか、という所がある。しかし作者はあるいはそういう点をふまえた上で書かれたのかもしれない。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号
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直木賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 佳篇多し 総行数115 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女61歳
候補 評価 行数 評言
男40歳
17 「氏は遂に現代小説の新しい一つの活路、新鮮な切り口を追求し、それに成功された、という気がする。裁判小説というか、法廷に於ける虚々実々の応酬を重要なモチーフとして事件や人生を切り取る、その手口がいかにもあざやかで興趣横溢、しかも読後、さわやかだが、ずしんとくる何かがある。」「佳品であった。」
男41歳
14 「何とも楽しめた小説。やわらかな文章であるが、書くべきは書き、抑えるべきは抑えている達意の文章である。主人公の少年がとにかく可愛いい。ふんわりした情趣があとへ残って、読んだ人を幸わせにしてくれる、いうことなしの小説。」
古川薫
男64歳
18 「前回の「正午位置」よりまとまっていてよいと思った。ことに冒頭、ハンブルクでの主人公の追いつめられた気持、犯罪のにおいのする不安感がよく描かれており、興をそそる導入部である。」「現代小説の書き手としても第一級ではないか、作品の底に流れる閑雅にして古典的な、悠々たるロマンチシズムを私は楽しんだ。」
高橋義夫
男43歳
18 「都会人の目線からムラの文化構造を見据え、日本民族の伝統の核のようなものをさぐりあてる、その例がバリエーションに富み、群像の面白さも堪能させられた。」「これは物語性を問う小説ではないように思われる。」「小説はどのように書いてもいいのだと問題提起している作品である。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号
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直木賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 開明的になった直木賞 総行数155 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女61歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
43 「私はこの人の処女作「そして夜は甦る」からファンになった。」「依然好調で、皮肉などんでん返しが用意されており、ミステリーの種は尽きぬというたのしい感慨を抱かせられた。」「原氏にはチャンドラーの影響は見られるけれども、それはそれとして、人物造型と文章のたしかなこと、まことに才ゆたかで信頼できる。」
男68歳
16 「絢爛たる文章と素材のわりに、ヒロインの印象がうすく、どこかもどかしいが、これは読み手が女だからだろうか。小伝の「いい女」ぶりが、もひとつよく分らない。」「ただ、凝りぬいた文体と口吻に、昨今の安易なつくりの小説にない、作者の情熱・執念が感じられ、私はそれを珍重して、この作にも一票を献ずることにした。」
清水義範
男42歳
31 「半ば以後でちょっとだれるが、総体にとんとんと快調のスピード、眠狂四郎のパロディなどふき出してしまう。」「私は方言が好きである上、縦横無尽のギャグにしたたか笑わされたので、ナンセンス文学に敬意を表して一票を献じたが、(引用者中略)期待したほど票が集まらず残念であった。」
  「かねて直木賞はSFやミステリーを射程に入れないという噂があり、私なども残念に思っていたが、社会と文学の変貌に応じて、柔軟に対応すべきである。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年3月号
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直木賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 大人のよみもの 総行数119 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女62歳
候補 評価 行数 評言
男57歳
26 「悠々たる職人芸。」「心と手に、いい意味の遊びがある。短篇集のよさ、たのしさを満喫できた。」「読後、鼻腔の奥に妖異といっていいほどの絢爛たる薫りをかいだ。この手の「大人のよみもの」を待望する。」
高橋義夫
男44歳
34 「導入部から面白く、私には一気に読める小説であった。文章が過不足なく適切で、ほどよき湿度を保って気持よかった。」「ただもう少しマリアの像がはっきりしていたら、と惜しい。」「しかしふしぎな、心にのこる小説だった。ミステリー、冒険小説、そのどれにもあてはまらない広がりをもっている。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年9月号
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直木賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 昂揚の佳作群 総行数117 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女62歳
候補 評価 行数 評言
男65歳
14 「抑制の利いたそっけないほどの文体が、かえって波乱に満ちた型やぶりの芸術家の生涯を描き出すのに功あった。」「作者の目は冷静だが、暖い。志高き小説と思った。ほとんど満票に近かった。」
宮城谷昌光
男45歳
18 「私はこの作品も推したのだが、(引用者注:「漂泊者のアリア」との)二作受賞とならなかった。」「不思議な小説だが、イメージが鮮烈で、人間がいきいきしていて、上下二冊だが、巻を措く能わずという面白い作品である。」「意欲的な新人が彗星の如く現れたと大いに楽しく思ったのだが……。期待したい大型新人である。」
出久根達郎
男46歳
16 「面白い素材を、上手な話術で、しかも人生の蓄積深い(ということは、人生に一家言ある、ということだ)オトナが書いているのだから、大人が読んで面白からぬはずはない、……というような小説。しかしこの作品のよさも危うさも、一にかかって、そこのところに在る。」「しかしまあ、私は大いに楽しまされた。」
  「今回は粒選りの作品が揃ったという印象。」「今回の候補作品のどれをとっても受賞圏内にある佳作のように思われ、また「日本文学振興協会」の目くばりもよくゆきとどいているように感じた。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
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直木賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 芦原氏と宮城谷氏を推す 総行数109 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女63歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
23 「この作ではまた夏姫という不思議な美女を拉してきて、その興味で読者をうまく乗せ、(あるいはいっぱいはめ)玄妙な小説宇宙を紡ぎ出された。」「作者の奥の手は、まだいくつもあるんじゃないかというような、悠々たる余裕である。」「芦原氏と甲乙つけがたい愛着を感じさせ、私は二本受賞を主張しないではいられなかった。」
男41歳
33 「この作者の端倪すべからざるところはコトバに対する物凄い嗜好、舌なめずりするような偏執狂ぶりである。」「テーマや人物造型との呼吸の合い具合、輝くばかりの面白いエピソードの羅列、それらがコトバへの強い思いこみとめでたく合成して、美酒が醸しだされた。」「これ一作だけで、あとはお書きにならなくても、別にかまわないんじゃないか――と思わせるような小説もあるのだ、ということを発見した。」
高橋義夫
男45歳
11 「最後まで受賞作と争い、かなり烈しい接戦になった。私は書き出しの老練な巧さに感じ入った。あと味いい佳品であるが、文句のつけようのないところがすこし、困った。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年9月号
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直木賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 読みごたえあった今回候補作 総行数117 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女63歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
15 「今回の受賞はほとんど満場一致といっていい。私は雪国の日常感覚の描写が作品の構成上、まことにめでたき効果をもたらしているのに感銘をうけた。」「人物描写も簡潔ながら彫りが深く魅力的だ。時代小説の醍醐味を堪能した。」
中島らも
男39歳
26 「私はこの毒性の強い才気に生理的快感をおぼえ、ぜひこういう作品にも受賞してもらいたいと思ったが、票を集めるに至らなかった。」「作品の方が賞をえらぶ躰のものであろう。されば賞を貰えないのがこの手の作品の栄光という場合もある。」
男44歳
12 「一話一話が精緻に作られている。(「冥い記憶」はちょっと作りすぎ、という感がなくもないが)しかし、「ねじれた記憶」のショック性というものは物凄い。これだけ怖い小説を作る作者の蓄積に感じ入った。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年3月号
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直木賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 「美味礼讃」の不思議な味 総行数108 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女64歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
25 「氏のご受賞に異存はない。」「「切子皿」の、父と子は簡潔で情があってよかった。「夕空晴れて」で、「冷泉牛乳」と子供野球の母親が泣きあうくだり、これは男性読者には受けるだろうが、女性読者は目のやり場に困ってしまう(感傷性過多のため)てい(原文傍点)のものである。」
海老沢泰久
男42歳
62 「大変面白く読んだ」「ただどうして、実名で出す必要があるのだろうと、(最後まで解けない技術的問題として)しこりが残った。」「読みすすむうち、主人公は順風満帆の成功者なのに読者はだんだん、物悲しくなってゆく。」「明るい貌をよそおいつつ、人間の不毛の空しさ、淋しさの砂利が歯にきしみ、ふしぎな味が舌にのこる、珍重すべき一書。」
中村彰彦
男43歳
18 「力作だと思った。措辞に古風なところがあるが、それはそれでかえって一種の風格をもたらす。」「敵を討った男たちも、私闘と知って討ったのだ。それゆえ、異常な緊迫感があって、ごつごつした筆致もそれにふさわしかった。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年9月号
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直木賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 文字のちから 総行数111 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女64歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
75 「小説に翻弄されるという醍醐味を久しぶりに味わった。」「文章で昂奮させられる作品、というのは、うれしいものだ。」「過去と現在のもつれかたに、えもいえぬ詩情がたちのぼる。」「最後のページを閉じたとき、実にあとあじよく、感慨が心を濡らすのに気付く。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号
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直木賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 感動と情緒の女流の二作 総行数90 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女65歳
候補 評価 行数 評言
女40歳
60 「私はこの作品を二度読み、二度とも感動したばかりでなく、再度、尽きせぬ興趣と魅力をおぼえ、それは二度めのほうが強かった。」「何よりこの作品の強い魅力は、刑事群像の躍動感、存在感であろう。」「構成が巧みなので、真相が追い追い露わになってゆく緊迫感がひときわ強い。」「文章も硬質、簡潔でいいが、一つ気になったのは、「見れる」「省みれなかった」「降りれる」などの「ら」抜きの用法。」
女55歳
27 「哀も歓も双方、描きおおせて、しかも文学的品位を保ち、しっとりした情緒をたたえているところがいい。」「現代に通ずる〈江戸の女たち〉をいきいきと情をこめて送り出して下さった。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年9月号
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直木賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 力作揃い 総行数91 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女65歳
候補 評価 行数 評言
男52歳
19 「特異な題材が魅力である。主人公はじめ登場人物が過不足なく描かれ、江戸のまちの匂いを著くもたらす。そっけないほど抑制の利いた筆致は、ことに女たちを描くとき効果をあげている。」
男37歳
35 「スピードと緊迫感にみち、それでいて、ちょっと甘いところのある味つけが口あたりいい。(引用者中略)大沢氏のお作にある品の良さが、かいなでの作品と一線を劃する。」「構成上やや破綻と思われる個所もあるが、ともかく脂の乗った作家の、みなぎる熱情と荒肝をひしぐ腕力に魅せられ、女の子の描きかたの趣味のよさにも共感。」
内海隆一郎
男56歳
16 「氏のお作品を拝見すると、まことにほっとする。そういう意味で現代にあらまほしい作品だ。ときどき文学的エスプリが日常の常識次元の波をかぶってしまいそうな危うさをちょっと感ずるが、「窓辺のトロフィー」はことにも佳篇であった。」
  「今回は作品数も多く、しかも力作揃いであった。これは票が割れて揉めるかな、と思いながら臨んだが、ごく早い時点で『新宿鮫 無間人形』と『恵比寿屋喜兵衛手控え』がせりあって浮上した。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年3月号
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直木賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数145 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女66歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
15 「良質な材料の助走を得て一気にゴールへ入ったという感じの作品、読者の共感をよぶ。ただ私としては小説的技巧の点で、ある部分、無作為すぎるのが残念だった。」「しかしこんな形での会津発掘があるのかと快い衝撃と示唆を与えられた秀作。」
男44歳
27 「「帰郷」「夏の終りの風」はことにいい。しかしこの二作と、他の作品は微妙にかさなり、おのずと一つのハーモニイを作っているので、差別することはできない。簡潔で硬質な文体は、新しく冷たい清冽な文学的潮流を使嗾しているようである。」「現代の切り口はあざやかで犀利である。」
東郷隆
男42歳
11 「東郷氏の今までのお作の中では最も好調のお仕事という印象を受けた。文章・会話、細部に至るまで凝りに凝って時代小説を読む楽しみを満喫できた。ことに「熊谷往生」がいい。」「この作品は受賞作と同じレベルと感じた。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年9月号
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直木賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 人生の慰藉 総行数114 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女66歳
候補 評価 行数 評言
小嵐九八郎
男50歳
32 「私はこの作品を推したが、票が少なかったのは残念。――劇画化の強い、浮足立った文章に、はじめはとまどいを感じるが、その口吻になれてくると、内容の重さと、終末の救いの明るさが、読後、感動を呼ぶ。」「小説は一瞬の偸安のためのものでなく、人生にこよない慰藉を与えてくれるためのものだ、――という感慨が、この短篇のうしろ姿にはあり、私はページをとじて満足したのであった。」
  「今回ほど票が割れたことはなかった。選考会は揉めに揉めたが、総意をまとめて惹きつける強力な魅力の作品が浮上してこず、同一ラインで鍔迫り合いという印象だった。」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年3月号
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直木賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 佳篇多し 総行数137 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女67歳
候補 評価 行数 評言
東郷隆
男43歳
36 「兎まんじゅうやトロイメライの小道具もよく効き、私には酩酊度のつよい、たのしい、馥郁たる小説であった。ただこの手の作品は読み手を択ぶ。」「こういう小説に、〈なんのためにこれを書いたのか〉と詰問してもはじまらない。」「文学の層の厚み、というのはこういう酩酊小説をも包含することにあるので、賞は逸しられたけれども、秀作とよんでいいと思う。」
内海隆一郎
男58歳
16 「善人ばかり出すぎる、という批評もあるが、善人の毒、というものもある。百面相の老芸人が人が好すぎるため周囲ははらはらする、これも人生の毒である。文学性ある良質のエンターテインメントを提供する、というのが本賞の目的であれば、この作品など妥当な線ではないかと思われたが、いま一息票が伸びず残念だった。」
男63歳
41 「「ほとほと……」「夜行列車」は好短篇と思い、更に「陽炎球場」は野球オンチの心なき身にも共感できる味わいがある。」「「消えたエース」は作為が目立ち、味噌の味噌くさきに似て、小説的工夫のひねりがちょっと過ぎたかんじ、やや、あざとい。」「私は文学賞の選考委員資格に性差はないと思っているが、ただ、こと野球に関してはどうかな、と思ってしまった。」
  「今回は私にとって好もしい作品が多いという気がした。」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年9月号
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直木賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 力作ぞろいの幸せ 総行数153 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女67歳
候補 評価 行数 評言
女43歳
36 「推理小説的な構成をとっていることも成功の一つだろうし、軽井沢の描写も、ラストのマルメロの扱いも効果的だ。――軽井沢の風のようにすぎてゆく人生の一瞬を見る思いのする佳篇であった。作者の体温と脈搏が感じられた。」
男47歳
64 「全共闘の〈疾風怒涛時代〉(引用者中略)が人の運命にどんな力を及ぼしたかを、推理小説に仕立ててあるのが秀抜の魅力である。」「何より魅力的なのは文章の快いリズムで、会話におけるいささかのケレン味もいやみではなくよく消化れ、淡々たる味だが水とはちがう。」「逝った青春への鎮魂歌といえようか。すぐれた一級のエンターテインメントだと思う。」
選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年3月号
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直木賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 乗せられる心地よさ 総行数143 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女68歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
56 「女刑事が男刑事とペアで任務を遂行するという小説のシチュエーションは、ほかにもあるかもしれないが、それが小説の骨格としてこんなに成功している作品は珍しい。」「何より中年の男刑事の描写がいい。」「ラストの犯人の謎ときはややあわただしく、それを失点にかぞえられる委員もあったが、私自身はこの小説のキズにはならないと考えている。」
浅田次郎
男44歳
21 「エンターテインメントとしては抜群の面白さを持った作品、」「近来の快作だった。小説の醍醐味は〈面白くて巻を措く能わず〉というところにもあるから、受賞圏内、と私は思ったが、いまひといき、票を集めることができなかったのは残念。」「欲をいえば中国風土の匂いが(芳香・悪臭をとわず)も少しほしいところ。」
選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年9月号
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直木賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 力作ぞろいの五篇みな好き 総行数116 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女68歳
候補 評価 行数 評言
篠田節子
女41歳
58 「最も感銘を受けた」「一種のホラー小説とも読めるが、ラストはもろもろの思念が吹き払われて限りなくやさしくすがすがしい。」「リアリティある構成と、緊迫感にみちたたるみのない簡潔な文章がまことにみごとだ。」「篠田氏のお作品の中では一ばんのものと思った。」
女38歳
25 「力ずくの作品でその腕力に圧倒される感じ、日常と非日常が目もあやに交錯して一・二章は息もつがせないが、三章で破綻する。」「ラストで古典的均斉美を欠くのが惜しいが、しかし一・二章の妖美に作者の力量は充分溢れており、この作品もまた坂東氏のお作、今までのうちでの最高であろう。」
宮部みゆき
女36歳
21 「時間旅行者を二・二六事件に結んだ奇想にまず脱帽。着地はむつかしかったろうと思われるが、みごとにきまった。」「私はこんな冒険をみとめてあげるべきだと思う。」「ことにキメ手というべきは〈黒井〉の出しかただった。」「読後感がさわやかでいい。」
  「今回の五篇を、私はどれも面白く読み、力作ぞろいと感じた。」
選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年3月号
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直木賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 受賞作品と光背 総行数121 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女69歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
31 「何とも気持よく泣ける小説が開巻からつづく。」「〈しんみりして泣かせる〉“しみじみ小説”というものは、甘ちゃんの人が書くと歯が浮くものだけれど、浅田さんは辛口作家でいられ、随所に〈根性悪〉(引用者中略)(作家的視線がきびしいこと)が仄見え、信頼できる。」
宇江佐真理
女47歳
15 「何とも魅力的な主人公の男女。」「これだけ描ききれれば、背後の捕物帖めいたことはつけたしでいいかと思ったほど、私の評は甘くなった。しかし、やはり捕り物がしっかり書けていないと、小説宇宙が構築されないという他委員の意見に従う。」
女41歳
39 「このタイトルは一考を要す。」「いつも負の札を引き当てて苦戦するところに女の人生の詩情もロマンもあるのだが、巻末近いあたりの短篇群は、冒頭の作品群の文学性を失う。しかし〈女の子〉の立身マニュアル、と読めば、文学性の代りに面白さがサービスされたといっていい。氏の危うげのない才能が、立証されたといえよう。」
選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年9月号
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直木賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞作なしは残念だけれど…… 総行数125 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女69歳
候補 評価 行数 評言
  「受賞作なしは残念だけれど、有望作家は輩出しているの印象があって、私は悲観していない。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年3月号
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直木賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 白熱の選考 総行数101 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女70歳
候補 評価 行数 評言
男53歳
28 「導入部とラストが精緻にととのい、構成をゆるぎないものにしている。」「小説を読む楽しさを満喫させてくれる佳作である。」「暗いようでいて、仄明るく、読後、さわやかな余韻を与えられ、生への活力を感じとれる。文章に気骨と品位があった。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年9月号
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直木賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 佳作多く楽しかった 総行数119 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女70歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
44 「今回ようやく満場一致、各委員が積極的に支持されたのは喜ばしい。」「家族とはなにか。血縁とはなにか。そのテーマに説得力があるのは、作者の裡なる庶民感覚がすこやかでまっとうな点に、信頼感がもてるせいだろう。氏の小説的テクニックも完熟し、インタビューと証言でつないで事件の真実に迫っていくドキュメンタリータッチも、いやみなく興ふかい。」
選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年3月号
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直木賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 近来の佳作二作 総行数110 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女71歳
候補 評価 行数 評言
女47歳
42 「私はこの小説に感動した。そればかりでなく、この小説はどこを開けても、どのページも美味しかった。」「死と生が入りみだれ、作品を重層的にする。――と、こう書くと重苦しい作品のようだが、読後感は意外に爽快である。たぶん死病にとりつかれた元刑事の死で、読者はヒロインと共に背中を押され、〈生〉へ弾みをつけて転回するからであろう。近来の佳作と思われた。」
男31歳
20 「快調の張扇、西洋講談の面白さを満喫できる。」「この痛快な、上機嫌なお魚が自在に泳ぎまわっているのを、すくいあげることのできるタモ(原文傍点)は、たぶん“直木賞”だけだろうと思う」「小説の底ふかさを示唆して、胸のすくような面白さである。」
選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年9月号
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直木賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 火花散る接戦 総行数99 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女71歳
候補 評価 行数 評言
男61歳
31 「二度目に読むと、(引用者中略)一馬身ぬきんでているように思えた。」「よくある人情咄の型にはまっていないのは、長崎の空気が色濃く出ていることと、その土地のエッセンスのような老妓の印象が好もしいためであろう。」「序章と終章が美しい額縁を成して、みちたりた読後感を与えられた。」
東野圭吾
男41歳
33 「これまた快作、そして怪作であった。」「周到な伏線が張りめぐらされ、読んでいるあいだは、これまた息もつかせず面白かった。しかし読後感のあと味わるさも相当なもの。これは人間の邪気が全篇を掩っているので、それに負けてしまう、ということであろう。」「もしそれ、一抹、この二人の犯罪者にしおらしさが書きこんでいられれば、と願うのは、古いであろうか。」
福井晴敏
男31歳
37 「この作品には票は集まらないだろうな、と思いつつ私は一票を入れた。」「〈国とは何なんだ?〉〈国を守るとはどういうことなんだ?〉という素朴で原初的だが大きい命題を扱っている。その意気込みと志、ここまでの構成の骨格を組みたてる腕力を買いたい。」「ひととき時間を忘れさせてくれる快作である。」
  「今回は力作が、ツライチ(原文傍点)に並んだという最初の印象であった」
選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年3月号
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直木賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 作品と賞との幸福な出会い 総行数120 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女72歳
候補 評価 行数 評言
男56歳
45 「(引用者注:「カカシの夏休み」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「船戸氏はすでにもう大家でいられ、直木賞の土俵では狭い感もあるが、一度は〈貰って頂かないと〉というのが正直な私の気持であった。」「何より南海の島の濃密な温気と暑熱が読者の皮膚感覚に伝わってくる。」
重松清
男37歳
29 「(引用者注:「虹の谷の五月」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「私には当選圏内の作品と思える。」「三作の中で『カカシ……』の滑脱な口吻を採りたい。作品世界の安定調和ぶりがやや過剰気味で、少しもたれる気もするが、読後感のすがすがしさがいい。」
男31歳
30 「すでにユニークな文体を手に入れていられるのにも瞠目。」「キモチイイ辛口で味わってきた酒が、ラストに至ってにわかに甘口になってしまった感があるのは、私個人の好みとしては惜しいが、しかしまあ、なんと、のど越しのいい酒であろう。」「作者の若さとキャリアからいって、もう一、二篇様子をみたら……と思わないでもなかったが、しかしものごとには時の勢い、というものがある。」「ご受賞に賛同。」
選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年9月号
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直木賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 力作ぞろい 総行数117 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女72歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
49 「投じた票が開かれるや否や、たちまちほとんど満票を集めてしまった」「文章にリズムがあって現代の匂いがぷんぷんしていて面白いから、スカスカと読めるが、底の岩盤はがっちりしている。人生と人間の洞察力のことである。それが文学的肺活量を大きくしている。」
男37歳
34 「家庭・家族にレンズを据えっぱなしで、そこから現代を発見するという氏の発想と手法に、私は共感する。」「『セッちゃん』の哀憐、『はずれくじ』の微妙な違和感のとらえかた、小説づくりのうまさに快く酔っているうち、それらの世界がひきしぼられ、あとになごやかな温みが残る。」「これまた、満票に近い受賞作。」
  「今回は力作ぞろいであった。」
選評出典:『オール讀物』平成13年/2001年3月号
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直木賞 125 平成13年/2001年上半期   一覧へ
選評の概要 大人の恋愛文学 総行数117 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女73歳
候補 評価 行数 評言
男51歳
23 「堂々たる恋愛小説であった。」「人生の機微がよく捉えられた〈大人の小説〉となっていた。」「人間がよく書きこまれ、それによって土地の風色も生気を帯びて顕ちあがった。〈オトナの現代〉とでもいうべき、現実の風が作品のページに吹き、読後風はまことに清爽だった。」
  「近頃、回を追うに従って、芥川賞・直木賞への期待が過熱化しているような気がするのは私だけだろうか。」「この賞は新人ばかりでなく、すでにプロとしての地歩を占めていられる作家も候補にあがるというユニークなところが話題を呼ぶのか。」
選評出典:『オール讀物』平成13年/2001年9月号
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直木賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 蛮勇引力 総行数94 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女73歳
候補 評価 行数 評言
黒川博行
男52歳
24 「どれに軍配をあげるかとなると、私はやっぱり『国境』の暴れん坊ぶりである。」「(引用者注:北朝鮮の)国境を突破して潜入するというだけでなく、(そのこと自体、冒険だが)国内で活劇や大立廻りを演じてしまう。主人公らのご愛嬌にみちた性格には、冒険小説を読みすれ(原文傍点)ている読者でも失笑させられてしまう。ラストのあと味もいい。」
男53歳
14 「若夫婦の新世帯をほほえましく描いて山本周五郎風世界――と思っていたら、現代風家庭悲劇が展開される。それを時代小説で読めるのはたのしかった。」「読後感が清新だった。」
諸田玲子
女47歳
13 「奇想天外なアイデアが面白かった。」「時代小説好きの私、時代小説の中で女性が(好ましいのも、好かんたらしい(原文傍点)のも)うんと活躍してほしいもの、と思う」「弥左衛門の姉・政江が面白かった。」
女46歳
19 「何だか「するする」と運んでゆかれて、ストン、と落されたような書物だ。この感じは若い人としゃべったときに持たされる感情である。自分の縄張りや結界の内だけの感性と反射神経で生き、波長の合う人にだけわかればいい、――という。」「しかし文学には異質の分子も続々生れるべきだろう。」
  「今回私には×がなく、いずれも水準を抜く面白い作品が揃ったように思う。」
選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年3月号
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直木賞 127 平成14年/2002年上半期   一覧へ
選評の概要 時代小説の夢 総行数114 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女74歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
41 「よくできた時代小説には、読者を没入させる熱気と、それを中和する滋味、そして綿密な構成による論理性の説得力がある。」「(引用者注:表題作「生きる」は)まさしくそれで、私はこの、地味で手堅い“時代小説”にすっかり魅了された。」「山本周五郎さんでもなく、藤沢周平さんでもない、新しい時代の、新しい〈時代小説〉の誕生に居合せた、という嬉しい衝撃を与えられた。」
奥田英朗
男42歳
15 「脂ののりきった作者が、手練の手並みもあざやかに、という清新溌剌たる印象。いやあ、笑ってしまった。」「カルチャーショックという上品なものでも諷刺小説というでもなく、とても巧い落語みたい、ただこの落語のオチはつけにくく、そこがまたいい、というところ。」
選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年9月号
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直木賞 128 平成14年/2002年下半期   一覧へ
選評の概要 異例の選考会 総行数78 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女74歳
候補 評価 行数 評言
横山秀夫
男45歳
15 「今回、私は『半落ち』(横山秀夫氏)ときめて臨んだ。」「今回の作品も期待を裏切られない緻密な構成だ。」「すべてが解明されたあとの納得のあと味も爽快感あり。ただ設定上の疑問点を指摘する声もあり、魅力ある作品だが、ついに見送られて私としてはいたく残念であった。」
角田光代
女35歳
35 「私が興趣をかきたてられた魅力作である。新しい才能に遭遇したときの戦慄的な快感をおぼえ、楽しませてもらった。」「新人らしい才能のきらめきがページにこぼれ、珍重に価すると感じた。」「かなり票の入った作品だが、『マドンナ』(奥田英朗氏)と票を食い合って、烈しい競りあいとなり、ついに共倒れとなってしまったのは残念。」
選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年3月号
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直木賞 129 平成15年/2003年上半期   一覧へ
選評の概要 小説の愉しさ 総行数80 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女75歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
26 「ページを繰るたび、新鮮な〈愉しさ(原文傍点〉がピチピチ跳ねているというのは、珍重に価する。」「少年たちの個性を書き分ける筆は、練達の冴えを見せているが常套的ではなく、透明感があって現代の匂いにみちている。」「脂ののった手だれの巧者、のゆとりあり。」
女39歳
22 「人物の一人一人の存在感が重層的に影を落し、得もいえぬハーモニイを生む。」「ラストの戦争時代の記憶は、あまりに重すぎて少し不協和音ではないかと案じたが、全篇、読み通してみると、色合いのちがいが、かえって一篇を引きしめる持味になっているようにも思えた。」
選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年9月号
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直木賞 130 平成15年/2003年下半期   一覧へ
選評の概要 世に物語のタネは尽きまじ 総行数54 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女75歳
候補 評価 行数 評言
男40歳
14 「文章からたち昇る怪異の瘴気は、当今、珍重すべき怪才である。今回は殊に、時代設定、登場人物のたたずまいに趣向が凝らされている。」「氏の作品に接すると、〈世に物語のタネは尽きまじ〉という気がするから愉快だ。」
姫野カオルコ
女45歳
11 「私はこの作も推したが、今回は惜しくも賞を逸した。野趣と生気ある方言が効果的、輝きにみちた青春小説であった。」「本年度の収穫の一つと私は確信する。」
女39歳
12 「文章は平易だが滋味あり、ただごとの世界のようにみえつつ、人生の怖い深淵を示唆する。小説的風景を構築する力量もたしか。」「私は、特に「溝」の怖さを推す。」
選評出典:『オール讀物』平成16年/2004年3月号
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直木賞 131 平成16年/2004年上半期   一覧へ
選評の概要 巨きな存在感のある作品 総行数88 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女76歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
34 「すでに他の文学賞を受けられた作品ではあるが、読後の感動は強く、本作品を推すについて、私にためらいはなかった。巨きな存在感のある作品で、しかも〈力〉とともに〈情感〉も濃く、つややかだ。」「近来の収穫、というべき佳作。私はマタギの人々を実見したことはないが、その風貌が目に浮かぶようだった。」
男44歳
34 「決選投票では『邂逅の森』にほんの少し差がついたが、しかしこの作品も早い段階で高点を得、甲乙つけがたしということで二作受賞となった。」「ユーモア小説は、文体が緊まっていないと効力を失うが、その点、的確で硬質の、そっけない文体がまことに適切、ユーモアが際立ってよかった。」
選評出典:『オール讀物』平成16年/2004年9月号
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直木賞 132 平成16年/2004年下半期   一覧へ
選評の概要 二作を推す 総行数99 (1行=13字)
選考委員 田辺聖子 女76歳
候補 評価 行数 評言
古処誠二
男34歳
55 「お若い作者がこういう題材を選ばれたことに、私は感慨を持った。」「“サイパンはこんな暢気な戦場ではなかった”という批判も聞かれたが、私は戦場に身を挺したことはないものの、ドンパチの最中にはあらゆるこも起り得ると思う。」「私はこの作をも推す。」
山本兼一
男48歳
10 「端正な出来栄え、それでいて、作品には主人公の、城の工匠そのままの、地熱の如き情熱が感じられた。織田信長は書き尽くされた観のある主人公だが、なるほどこの方面からの攻め口もあった、と思わせる意欲作である。」
女37歳
17 「角田氏の力量を充分、知悉していながら、幼児が登場してくると、日常次元の靄に包まれてしまいそうで、心もとなくなる。ところが作者は、日常に泥みつつ、非日常の異次元〈ナナコ〉の世界へかるがると飛翔する。」「読者も生きる力を与えられ、読後感は爽やかだった。授賞に異存はない。」
  「いずれも力作・異色作揃いで、堪能した。」「私はこの回で選考委員をしりぞくのであるが、長年、その年々の秀作に接することのできた喜びに加え、選考委員の先生方と同席してそれぞれの謦咳に接した思い出も嬉しい。」
選評出典:『オール讀物』平成17年/2005年3月号
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