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第97回
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昭和62年/1987年上半期
(昭和62年/1987年7月16日決定発表/『オール讀物』昭和62年/1987年10月号選評掲載)
選考委員  陳舜臣
男63歳
藤沢周平
男59歳
黒岩重吾
男63歳
田辺聖子
女59歳
井上ひさし
男52歳
渡辺淳一
男53歳
山口瞳
男60歳
村上元三
男77歳
平岩弓枝
女55歳
五木寛之
男54歳
選評総行数  70 135 106 129 79 69 83 97 56 150
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
白石一郎 『海狼伝』
861
男55歳
11 14 17 23 36 8 12 13 8 13
山田詠美 『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
253
女28歳
25 25 15 49 58 19 17 14 6 43
もりたなるお 『無名の盾』
472
男61歳
6 19 8 12 0 6 19 10 11 20
篠田達明 「浮世又兵衛行状記」
161
男49歳
0 11 5 4 0 0 8 7 6 15
景山民夫 『虎口からの脱出』
639
男40歳
12 18 3 20 0 9 8 19 4 34
三浦浩 『津和野物語』
230
男56歳
9 15 3 10 0 7 5 5 4 12
高橋義夫 『闇の葬列』
452
男41歳
7 16 9 12 0 11 11 15 17 22
伊藤榮 「こんぴらふねふね」
96
男49歳
0 11 5 7 0 5 3 3 6 15
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年10月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
陳舜臣男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
たのしみ 総行数70 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
11 「登場人物に魅力があり、一気に読ませた。場面はよく変わるが、つねに船と海に収斂され、適当にひきしまった構成になっている。」「たのしい冒険物語である。」
山田詠美
女28歳
25 「なによりも感心し、羨しくもかんじたのは、ことばが作者のからだに密着していることである。」「この言語の感性は天賦のものというほかなく、よけいなアドバイスは無用ではあるまいか。」「このひとは、十年二十年、そしてもっと先まで、どのように変わって行くにせよ、読者をたのしませつづける、たぐいまれな作家であることはまちがいない。」
もりたなるお
男61歳
6 「第一章の品川巡査の印象ばかりが強く、そのあとに登場する警官たちの影が薄い。章ごとにムラが目につくのが残念であった。」
篠田達明
男49歳
0  
景山民夫
男40歳
12 「おもしろい冒険小説であるだけに、調査不足が惜しまれる。」「上海に藍衣社があらわれるが、この結社の成立はじつはこの四年後なのだ。安政六年に新撰組が登場するにひとしい。フィクションの許容限度を大きくこえている。」
三浦浩
男56歳
9 「現代ではめずらしくリリシズムにつらぬかれた好篇である。会話のとり方の妙は、ときに久保田万太郎をおもわせるものがあった。思ったほど支持が得られなかったのは、連作のためか、各章の格調に差があったためかもしれない。」
高橋義夫
男41歳
7 「征韓挙兵を呼号する諸藩の武士や浪人たちの不満が、それほど強く伝わってこないことを除けば、全篇よくまとまっている。政治の非情もよくえがけ、結末も余韻があってよかった。」
伊藤榮
男49歳
0  
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他の選考委員
藤沢周平
黒岩重吾
田辺聖子
井上ひさし
渡辺淳一
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
藤沢周平男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三篇を推す 総行数135 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
14 「人物の造形がやや浅いところがあって、この作家の最良の作品とは言えないかも知れないが、船の活躍とその描写がその不足を補ってあまりあり、スケールが大きくいきいきした海洋小説になっていた。安心して読める筆遣いとここ一番のところの重量感のある描写はさすがに老練の筆で、この人の受賞で時代小説に厚味が加わることは疑いない。」
山田詠美
女28歳
25 「才能は疑いがないものである。私たち読者が、耳にピアスをして強い香水の匂いを発散させるジゴロを「粋」だと感じることが出来るのは、この作家の天性の才能と肯定的で力のある文章による説得力のせいである。」「ただ話のつくりはやや古風で、また八篇の短篇がすべて傑作というわけでもない。」「しかしその(引用者注:私が感服した)三篇が、山田さんのほかには誰も書かない小説であるのもたしかなことに思われた。」
もりたなるお
男61歳
19 「作者の力量が十分に発揮された佳作だった。」「簡潔な文章が最後までゆるまずに持続し、題材はやや地味ながら受賞の水準に達した作品に思われた。」
篠田達明
男49歳
11 「家老の本多富正のことなどでやや考証不足な点がみられ、(引用者中略)しかしそういうことよりも、この作者には現在の文体について一考を要するような気がする。」
景山民夫
男40歳
18 「後半の脱出行になると、(引用者中略)やや新鮮味(個性と言ってもよい)が薄れる。主人公もいまひとつ魅力が不足している。しかしだから面白くないというのではなく、よく出来た冒険小説と言えよう。」「この分野に有望な新人が現れたことは間違いがない。」
三浦浩
男56歳
15 「この作家のうまい文章が逆に小説の深まりを妨げている印象を受けた。読みながら終始、文章が十分に人間にとどかないままに筆が流れていくような、あるもどかしさを拭えなかったということである。」「物足りなさは最後まで残った。」
高橋義夫
男41歳
16 「新人ばなれした作品で、私は斬られたあとの予後のぐらいとか、斬り合いなどが、こういう場合の類型的な表現にまったく毒されていないのに感服した。力がないと出来ないことである。」「全体を見渡すと題材、文章ともにいま一歩の感があり、花も実もある作品というわけにはいかない。」
伊藤榮
男49歳
11 「途中から型通りの芸術小説になってつまらなくなった。この短篇が成功するためには、一にも二にも冒頭の意外性を生かすことだったと思われる。」
  「今回の候補作は八点で、やや多いかと思われたが、(引用者中略)選考のための下読みは興味が苦痛に勝って、さほど疲れなかった。」
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陳舜臣
黒岩重吾
田辺聖子
井上ひさし
渡辺淳一
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作家魂 総行数106 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
17 「「海狼伝」を推す積りで出席した。最初の投票で最高点を得たので推し易かった。」「初めから終りまで熱気が溢れている。」「村上水軍をここまで描き切ったのは見事である。書き下ろし小説だと思っていたのが新聞小説だと知り更に驚かされた。」
山田詠美
女28歳
15 「氏の処女作「ベッドタイムアイズ」で受けた感動はなかった。感性の表現力が稀薄になっているせいか、人物が具象化されて迫って来ない。」「私は白石一郎と山田詠美の両氏が候補になったところに直木賞の意義がある、という井上委員の発言に触発され、氏の受賞に賛成した。」
もりたなるお
男61歳
8 「新視点で二・二六事件を描こうとしている。それなら徹底的に巡査達を描き切る必要がある。ノンフィクション的なのも気になるが、小説とは何かを今一度考え直していただきたい。」
篠田達明
男49歳
5 「殆ど点が入らなかったし、私も評価のしようがない、といった作品である。」
景山民夫
男40歳
3 「余りにも荒唐無稽過ぎる。」
三浦浩
男56歳
3 「素直な文章とムードは買うが登場人物の実在感が稀薄である。」
高橋義夫
男41歳
9 「全くそつがなく殆ど欠点のない構成で人物を動かしている」「それにも拘らず読み難い。これは作者が構成通りに人物を動かすことにエネルギーを費やし過ぎたせいであろう。優等生の答案を見せつけられた味気なさを感じた。」
伊藤榮
男49歳
5 「殆ど点が入らなかったし、私も評価のしようがない、といった作品である。」
  「私は直木賞はプロ作家として長期間書き続けることが出来る作家に与えるべきだ、と考えている選考委員の一人である。」「私が受賞作として推す作品は、私が何等かの意味で感動を得た作品のみである。」
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陳舜臣
藤沢周平
田辺聖子
井上ひさし
渡辺淳一
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
田辺聖子女59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
収穫の二作 総行数129 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
23 「意も情もよくそなわった快作である。」「戦国時代の瀬戸内海水軍については私は昏いのだが、読み終えて私はたしかに潮の匂いをかぎ、海鳴りの音を聞き、浪のしぶきが顔にあたるのを感じた。」
山田詠美
女28歳
49 「山田氏の文学の最もすぐれた部分を示しているように思われる。物語の語り手の資質を顕示したのだ。」「やっとサガンを抜く女流作家が日本にも出たといったら過褒だろうか。とにかく私は山田氏をまず推した。」
もりたなるお
男61歳
12 「珍しい素材であるが、冒頭のみごとな出だしがそのまま終りまで続けばよかったのに、と惜しまれる。」「竜頭蛇尾に終った、というのが私の感想であった。」
篠田達明
男49歳
4 「設定は面白いのだが、人間に存在感がないのが致命的だ。」
景山民夫
男40歳
20 「出だしからすこぶる快調である。点景人物も印象的でお遊びも随所に凝らしてある。」「ただ、中途から車が主人公になってしまった観があって文字通り、冒険小説にとどまった。小説というのは面白けりゃいい、と私は思うものだが、人間たちが車の陰にかくれてしまうと、どうにもじれったい気もする。」
三浦浩
男56歳
10 「氏の才能の幅を感じさせたが、一方、抑制が利きすぎてどこか洗い曝されすぎたという感がなきにしもあらず、そのときに同時に小説の旨味も洗い落されてしまった気もする。」
高橋義夫
男41歳
12 「私には感銘があった。」「骨格ただしく推理的興味も添うて、私はオトナの鑑賞に堪える好読物として推してもいい気になっていた。」「(引用者注:「海狼伝」に比べると)まことに通人向きの渋好み、といわねばならぬ。私は涙を呑んで次点に置いたのであった。」
伊藤榮
男49歳
7 「犬に代参させるというアイデアが秀逸で、牧歌的である。大いに期待して読んだが、力の入れどころがなく、長篇の一部を一撫でしたような物足りなさが残った。」
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他の選考委員
陳舜臣
藤沢周平
黒岩重吾
井上ひさし
渡辺淳一
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
井上ひさし男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の伝統を生かした二作 総行数79 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
36 「こういう仕立ての大小説の場合、主人公の魅力もさることながら脇役たちがおもしろくなければどうにもならない。しかしこの作品には小金吾という千両役者がいた。評者は、じつをいえばこの小金吾に一票を投じたのである。」
山田詠美
女28歳
58 「悪文も徹底すればいつしか詩を孕み、機智の稔りをもたらし、そして揺ぎない個性と化す。その典型的な例(引用者中略)である。」「物語の部分のコード進行はびっくりするほど古風で正統的であり、むかし読んだ「セブンティーン」誌掲載の好短編を思い出したりした。」
もりたなるお
男61歳
0  
篠田達明
男49歳
0  
景山民夫
男40歳
0  
三浦浩
男56歳
0  
高橋義夫
男41歳
0  
伊藤榮
男49歳
0  
  「(引用者注:受賞の二作は)両極端とも思えるほど様子のちがう作品である。」「だがその二作品が同時に受賞するところに直木賞のすばらしい間口の広さがある。」
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他の選考委員
陳舜臣
藤沢周平
黒岩重吾
田辺聖子
渡辺淳一
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
あえて苦言を 総行数69 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
8 「きわ立った鋭さはないが、安心して読める手堅さがある。強いて不満をいえば、読物すぎて、しみじみしたものに欠けるところだが、直木賞候補八回という努力には敬意を表せざるをえない。」
山田詠美
女28歳
19 「この作家の才能を認めるのにやぶさかではないが、この作品集はいかにも軽くて、小説づくりの裏が透けて見えすぎる。」「男女の小説はもう少し五官の感触みたいなものでつむぎだしていかないと、上すべりになってしまう。」「前途のある作家だけに、あえて苦言を呈して、受賞に同調した。」
もりたなるお
男61歳
6 「警察側から見た軍隊への視点がユニークで興味をそそられたが、作品の収斂度が不充分で、主題がやや散漫になってしまった。」
篠田達明
男49歳
0  
景山民夫
男40歳
9 「前半の緊迫感に対して、盧溝橋事件後の後半がいささかドタバタ調で興醒めした。全体にノンフィクション部分に対するフィクションの部分の弱さが目立ち、両者が水と油のように分かれすぎている。」
三浦浩
男56歳
7 「好感のもてる連作だが、趣向に走りすぎて人間の印象が淡すぎる。」「この作家はまだまだいいものを書けるはずである。」
高橋義夫
男41歳
11 「資料とフィクションの部分がよく馴染み、維新という革命の非情さを背景に、追い詰めていく男と追われる者の息づかいが伝わってくる佳作であった。」「一作ならこの作品かと思って推したが、多数にはいたらなかった。しかし受賞しておかしくない出来栄えであった。」
伊藤榮
男49歳
5 「受賞には距離があったが、この作品に潜むおおらかさに心を惹かれた。この魅力を失わずに次作に挑戦して欲しい。」
  「今回の候補作は多彩で、それなりに読み甲斐があったが、さてここから一作をとなると、戸惑わざるをえなかった。」
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藤沢周平
黒岩重吾
田辺聖子
井上ひさし
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
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選考委員
山口瞳男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
山田詠美さんの潔さ 総行数83 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
12 「この作品に限って言えば、一番お書きになりたかったのは何だったのかという焦点が定まっていないように思った。重要人物である麗花や小金吾の死の場面でジンとくるものがなかった。」
山田詠美
女28歳
17 「私も不潔感なしに不仕鱈な女を書く方法がないものかと考えた時期があり、これは完全にヤラレタと思った。」「どの場合でも山田さんの文章に一種の潔さ、小気味のよさを感ずる。これはもう才能だとしか言いようがなく、この二、三年のうちに凄い小説を書きそうな予感がする。」
もりたなるお
男61歳
19 「警察官や兵隊の抱く劣等意識、劣等意識を抱かざるをえないような情況設定が見事だった。改行の多い簡潔な文章も効果的だ。もりたさんには『真贋の構図』という推理小説の傑作があり、それを勘案したうえで推したのだが私の力が足りなかった。」
篠田達明
男49歳
8 「菊池寛の『忠直卿行状記』と比較するのは酷かもしれないが、菊池寛の場合には、越前少将忠直卿の悲劇を人間的に解明しようとする必死の喰いさがりといったものに感銘を受けた。」
景山民夫
男40歳
8 「私はお手上げで、こういう小説が候補作の主力になるようなら委員を辞任する他はないと思った。但し、景山さんは大変な才人で、小粋な短篇小説も書ける作家だと思っている。」
三浦浩
男56歳
5 「書ける人だと思う。この小説は、媒体に合わせて故意に調子を落として書いたものではないか。」
高橋義夫
男41歳
11 「強力新人があらわれたことを喜びたい。」「広沢真臣の妾が知恵おくれで淫乱だったとか、拷問を続けている岡ッ引きが性格的にサディスティックになってしまうといったあたりが面白いのだが、逆に、そこをもっと突っ込んでもらいたかったという憾みが残った。」
伊藤榮
男49歳
3 「何か茫洋とした欲の無い書き方に好感を抱いた。」
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渡辺淳一
村上元三
平岩弓枝
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選考委員
村上元三男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
正反対の作品 総行数97 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
13 「調べたという点でも、敬服をする。」「この長篇の主人公、笛太郎、小金吾、雷三郎の三人の性格を、もっときちんと書き分けてほしかったが、これは新聞の連載小説の弱さかも知れない。」
山田詠美
女28歳
14 「どこの国の話かわからないし、描写がないので、作者のおしゃべりが上っすべりして眼の前に浮んでこない。」「将来、どういう作品を書くのか楽しみでないこともないが、わたしのような読者もびっくりさせてほしい。」
もりたなるお
男61歳
10 「二・二六事件を警察官の側から見た点に新しさがあり、きちんと書いてあるが、この作者は画壇を扱うより、警察官という経歴を生かして行ったほうがいい。」
篠田達明
男49歳
7 「前作の候補になった『元禄魔胎伝』よりはいいが、いつも選評で触れるように、この人は文章と会話をもっとていねいに書いてくれないと、成長は期待できない。」
景山民夫
男40歳
19 「ずいぶんていねいに調べて書いている、と期待したが、かんじんの西とオライリー、麗華の三人が題名の虎口からの脱走になってから、だんだん現実ばなれがしてきた。」「自動車で万里の長城の上を突っ走る場面など(引用者中略)荒唐無稽だし、結末がハッピイエンドになるのも都合がよすぎる。」
三浦浩
男56歳
5 「小味で線が細いが、後味のよさを買いたい。この作者は、この線を守って行けば、大成するのではなかろうか。」
高橋義夫
男41歳
15 「構成もしっかりしているし、明治初年の政治と世相、外国の関係した経済など、きちんと見ている。華がないという批評も出たが、この作品に華は要らない。」「ほかにこの作者の作品がなかったこともあるのだろうが、惜しいところで落ちた。」
伊藤榮
男49歳
3 「面白いし達者だけれど、この古さから脱け出してほしい。」
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黒岩重吾
田辺聖子
井上ひさし
渡辺淳一
山口瞳
平岩弓枝
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選考委員
平岩弓枝女55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しい海洋小説 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
8 「大作であり、力量からいっても、受賞は当然であろう。時代小説で海洋を舞台とする作品はそう多くはない。白石さんによって、新しい海洋小説がこれからも誕生するのではないかと、たのしみにしている。」
山田詠美
女28歳
6 「才筆かも知れないが、軽いという印象が強かった。」「この作家の本質はこれではなかったような気がする。」
もりたなるお
男61歳
11 「横に広がりすぎてフィクションとしても、ノンフィクションとしても中途半端になってしまった。」「むしろ、重臣の盾となって殉職した警官とその家族にしぼって、追跡調査をしてみたら、もっと人間が描けたのではないかと思った。」
篠田達明
男49歳
6 「これだけ厚みのある長篇の中におかれると、よくよく個性的でないと短篇は残りにくいという気がする。」
景山民夫
男40歳
4 「文章に問題があって落ちてしまったが、映画にしてみたくなる作品であった。」
三浦浩
男56歳
4 「静かな作風には惹かれるものがあったが、人間の描き方が淡すぎて損をしているようであった。」
高橋義夫
男41歳
17 「材料をよく消化しているし、追う者と追われる者の人間像がしっかりしていて、文章も歯切れが良い。今回の候補作品の中では一番、印象に残ったし、読後感も好かった。」「地味なようにみえて、本質的には、大変、派手な作品である。」
伊藤榮
男49歳
6 「これだけ厚みのある長篇の中におかれると、よくよく個性的でないと短篇は残りにくいという気がする。」
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黒岩重吾
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渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作品と作家の両面から 総行数150 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎
男55歳
13 「大きな存在感をもって迫ってきた作家」「お二人(引用者注:山田詠美と白石一郎)が図抜けていると感じた」「直木賞候補八回という実績は、今後ともそのような作家は二度と現れることがないと思われる。」
山田詠美
女28歳
43 「ひときわ強い印象を受けた作品」「お二人(引用者注:山田詠美と白石一郎)が図抜けていると感じた」「〈ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー〉と〈ベッドタイムアイズ〉を、ほとんど同時といっていい数年の間に書き分けられる山田氏の才能も空前のものだ。」「林芙美子と同様、向日性のいささか古風なヒューマニストである。あえていうならば〈黒いひまわり〉とでも呼ぶべきその資質に、私は文句なしに共感した。」
もりたなるお
男61歳
20 「私がもっとも興味をそそられた主題は、もりたなるお氏の〈無名の盾〉のそれである。」「残念なことに、〈無名の盾〉の作者は、みずからが掘り当てた希有な鉱脈を、知ってか知らずか巧みに回避して心情的な小説づくりの方向へ筆をすすめているようだ。」
篠田達明
男49歳
15 「手なれた筆致で、面白く読ませる腕は達者すぎる感じさえするほどだ。」「重厚な単行本の候補作が勢揃いした中におくと、当然のことながら今ひとつの迫力に欠けるのは、いたしかたあるまい。」
景山民夫
男40歳
34 「特に注目して読んだ作品である。」「残念ながら読後もう一つ釈然としなかった、というのが率直な感想である。」「若い作家の腕力に軽やかにのる(原文傍点)ことができなかったことを悔やむべきかもしれない。」
三浦浩
男56歳
12 「現役作家として活躍している安定した力量は、この連作長篇からも充分にうかがえる」「作者の遊び心を楽しんで読ませてもらった、というのが感想である。」
高橋義夫
男41歳
22 「骨太な歴史小説として堂々たる作品であることに驚いた。」「横浜の元同心が主人公で、ふと〈ジャッカルの日〉などを連想しながら一気に読んだ。この長篇が受賞をいっしたのは、ただ他に山田、白石両氏の存在があったからに過ぎないだろう。高橋氏の受賞を強く推す声もあったのは当然である。」
伊藤榮
男49歳
15 「手なれた筆致で、面白く読ませる腕は達者すぎる感じさえするほどだ。」「重厚な単行本の候補作が勢揃いした中におくと、当然のことながら今ひとつの迫力に欠けるのは、いたしかたあるまい。」
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他の選考委員
陳舜臣
藤沢周平
黒岩重吾
田辺聖子
井上ひさし
渡辺淳一
山口瞳
村上元三
平岩弓枝
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受賞者・作品
白石一郎男55歳×各選考委員 
『海狼伝』
長篇 861
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
11 「登場人物に魅力があり、一気に読ませた。場面はよく変わるが、つねに船と海に収斂され、適当にひきしまった構成になっている。」「たのしい冒険物語である。」
藤沢周平
男59歳
14 「人物の造形がやや浅いところがあって、この作家の最良の作品とは言えないかも知れないが、船の活躍とその描写がその不足を補ってあまりあり、スケールが大きくいきいきした海洋小説になっていた。安心して読める筆遣いとここ一番のところの重量感のある描写はさすがに老練の筆で、この人の受賞で時代小説に厚味が加わることは疑いない。」
黒岩重吾
男63歳
17 「「海狼伝」を推す積りで出席した。最初の投票で最高点を得たので推し易かった。」「初めから終りまで熱気が溢れている。」「村上水軍をここまで描き切ったのは見事である。書き下ろし小説だと思っていたのが新聞小説だと知り更に驚かされた。」
田辺聖子
女59歳
23 「意も情もよくそなわった快作である。」「戦国時代の瀬戸内海水軍については私は昏いのだが、読み終えて私はたしかに潮の匂いをかぎ、海鳴りの音を聞き、浪のしぶきが顔にあたるのを感じた。」
井上ひさし
男52歳
36 「こういう仕立ての大小説の場合、主人公の魅力もさることながら脇役たちがおもしろくなければどうにもならない。しかしこの作品には小金吾という千両役者がいた。評者は、じつをいえばこの小金吾に一票を投じたのである。」
渡辺淳一
男53歳
8 「きわ立った鋭さはないが、安心して読める手堅さがある。強いて不満をいえば、読物すぎて、しみじみしたものに欠けるところだが、直木賞候補八回という努力には敬意を表せざるをえない。」
山口瞳
男60歳
12 「この作品に限って言えば、一番お書きになりたかったのは何だったのかという焦点が定まっていないように思った。重要人物である麗花や小金吾の死の場面でジンとくるものがなかった。」
村上元三
男77歳
13 「調べたという点でも、敬服をする。」「この長篇の主人公、笛太郎、小金吾、雷三郎の三人の性格を、もっときちんと書き分けてほしかったが、これは新聞の連載小説の弱さかも知れない。」
平岩弓枝
女55歳
8 「大作であり、力量からいっても、受賞は当然であろう。時代小説で海洋を舞台とする作品はそう多くはない。白石さんによって、新しい海洋小説がこれからも誕生するのではないかと、たのしみにしている。」
五木寛之
男54歳
13 「大きな存在感をもって迫ってきた作家」「お二人(引用者注:山田詠美と白石一郎)が図抜けていると感じた」「直木賞候補八回という実績は、今後ともそのような作家は二度と現れることがないと思われる。」
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他の候補作
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
もりたなるお
『無名の盾』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
景山民夫
『虎口からの脱出』
三浦浩
『津和野物語』
高橋義夫
『闇の葬列』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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受賞者・作品
山田詠美女28歳×各選考委員 
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
連作8篇 253
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
25 「なによりも感心し、羨しくもかんじたのは、ことばが作者のからだに密着していることである。」「この言語の感性は天賦のものというほかなく、よけいなアドバイスは無用ではあるまいか。」「このひとは、十年二十年、そしてもっと先まで、どのように変わって行くにせよ、読者をたのしませつづける、たぐいまれな作家であることはまちがいない。」
藤沢周平
男59歳
25 「才能は疑いがないものである。私たち読者が、耳にピアスをして強い香水の匂いを発散させるジゴロを「粋」だと感じることが出来るのは、この作家の天性の才能と肯定的で力のある文章による説得力のせいである。」「ただ話のつくりはやや古風で、また八篇の短篇がすべて傑作というわけでもない。」「しかしその(引用者注:私が感服した)三篇が、山田さんのほかには誰も書かない小説であるのもたしかなことに思われた。」
黒岩重吾
男63歳
15 「氏の処女作「ベッドタイムアイズ」で受けた感動はなかった。感性の表現力が稀薄になっているせいか、人物が具象化されて迫って来ない。」「私は白石一郎と山田詠美の両氏が候補になったところに直木賞の意義がある、という井上委員の発言に触発され、氏の受賞に賛成した。」
田辺聖子
女59歳
49 「山田氏の文学の最もすぐれた部分を示しているように思われる。物語の語り手の資質を顕示したのだ。」「やっとサガンを抜く女流作家が日本にも出たといったら過褒だろうか。とにかく私は山田氏をまず推した。」
井上ひさし
男52歳
58 「悪文も徹底すればいつしか詩を孕み、機智の稔りをもたらし、そして揺ぎない個性と化す。その典型的な例(引用者中略)である。」「物語の部分のコード進行はびっくりするほど古風で正統的であり、むかし読んだ「セブンティーン」誌掲載の好短編を思い出したりした。」
渡辺淳一
男53歳
19 「この作家の才能を認めるのにやぶさかではないが、この作品集はいかにも軽くて、小説づくりの裏が透けて見えすぎる。」「男女の小説はもう少し五官の感触みたいなものでつむぎだしていかないと、上すべりになってしまう。」「前途のある作家だけに、あえて苦言を呈して、受賞に同調した。」
山口瞳
男60歳
17 「私も不潔感なしに不仕鱈な女を書く方法がないものかと考えた時期があり、これは完全にヤラレタと思った。」「どの場合でも山田さんの文章に一種の潔さ、小気味のよさを感ずる。これはもう才能だとしか言いようがなく、この二、三年のうちに凄い小説を書きそうな予感がする。」
村上元三
男77歳
14 「どこの国の話かわからないし、描写がないので、作者のおしゃべりが上っすべりして眼の前に浮んでこない。」「将来、どういう作品を書くのか楽しみでないこともないが、わたしのような読者もびっくりさせてほしい。」
平岩弓枝
女55歳
6 「才筆かも知れないが、軽いという印象が強かった。」「この作家の本質はこれではなかったような気がする。」
五木寛之
男54歳
43 「ひときわ強い印象を受けた作品」「お二人(引用者注:山田詠美と白石一郎)が図抜けていると感じた」「〈ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー〉と〈ベッドタイムアイズ〉を、ほとんど同時といっていい数年の間に書き分けられる山田氏の才能も空前のものだ。」「林芙美子と同様、向日性のいささか古風なヒューマニストである。あえていうならば〈黒いひまわり〉とでも呼ぶべきその資質に、私は文句なしに共感した。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
もりたなるお
『無名の盾』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
景山民夫
『虎口からの脱出』
三浦浩
『津和野物語』
高橋義夫
『闇の葬列』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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候補者・作品
もりたなるお男61歳×各選考委員 
『無名の盾』
長篇 472
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
6 「第一章の品川巡査の印象ばかりが強く、そのあとに登場する警官たちの影が薄い。章ごとにムラが目につくのが残念であった。」
藤沢周平
男59歳
19 「作者の力量が十分に発揮された佳作だった。」「簡潔な文章が最後までゆるまずに持続し、題材はやや地味ながら受賞の水準に達した作品に思われた。」
黒岩重吾
男63歳
8 「新視点で二・二六事件を描こうとしている。それなら徹底的に巡査達を描き切る必要がある。ノンフィクション的なのも気になるが、小説とは何かを今一度考え直していただきたい。」
田辺聖子
女59歳
12 「珍しい素材であるが、冒頭のみごとな出だしがそのまま終りまで続けばよかったのに、と惜しまれる。」「竜頭蛇尾に終った、というのが私の感想であった。」
井上ひさし
男52歳
0  
渡辺淳一
男53歳
6 「警察側から見た軍隊への視点がユニークで興味をそそられたが、作品の収斂度が不充分で、主題がやや散漫になってしまった。」
山口瞳
男60歳
19 「警察官や兵隊の抱く劣等意識、劣等意識を抱かざるをえないような情況設定が見事だった。改行の多い簡潔な文章も効果的だ。もりたさんには『真贋の構図』という推理小説の傑作があり、それを勘案したうえで推したのだが私の力が足りなかった。」
村上元三
男77歳
10 「二・二六事件を警察官の側から見た点に新しさがあり、きちんと書いてあるが、この作者は画壇を扱うより、警察官という経歴を生かして行ったほうがいい。」
平岩弓枝
女55歳
11 「横に広がりすぎてフィクションとしても、ノンフィクションとしても中途半端になってしまった。」「むしろ、重臣の盾となって殉職した警官とその家族にしぼって、追跡調査をしてみたら、もっと人間が描けたのではないかと思った。」
五木寛之
男54歳
20 「私がもっとも興味をそそられた主題は、もりたなるお氏の〈無名の盾〉のそれである。」「残念なことに、〈無名の盾〉の作者は、みずからが掘り当てた希有な鉱脈を、知ってか知らずか巧みに回避して心情的な小説づくりの方向へ筆をすすめているようだ。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
景山民夫
『虎口からの脱出』
三浦浩
『津和野物語』
高橋義夫
『闇の葬列』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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候補者・作品
篠田達明男49歳×各選考委員 
「浮世又兵衛行状記」
中篇 161
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
0  
藤沢周平
男59歳
11 「家老の本多富正のことなどでやや考証不足な点がみられ、(引用者中略)しかしそういうことよりも、この作者には現在の文体について一考を要するような気がする。」
黒岩重吾
男63歳
5 「殆ど点が入らなかったし、私も評価のしようがない、といった作品である。」
田辺聖子
女59歳
4 「設定は面白いのだが、人間に存在感がないのが致命的だ。」
井上ひさし
男52歳
0  
渡辺淳一
男53歳
0  
山口瞳
男60歳
8 「菊池寛の『忠直卿行状記』と比較するのは酷かもしれないが、菊池寛の場合には、越前少将忠直卿の悲劇を人間的に解明しようとする必死の喰いさがりといったものに感銘を受けた。」
村上元三
男77歳
7 「前作の候補になった『元禄魔胎伝』よりはいいが、いつも選評で触れるように、この人は文章と会話をもっとていねいに書いてくれないと、成長は期待できない。」
平岩弓枝
女55歳
6 「これだけ厚みのある長篇の中におかれると、よくよく個性的でないと短篇は残りにくいという気がする。」
五木寛之
男54歳
15 「手なれた筆致で、面白く読ませる腕は達者すぎる感じさえするほどだ。」「重厚な単行本の候補作が勢揃いした中におくと、当然のことながら今ひとつの迫力に欠けるのは、いたしかたあるまい。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
もりたなるお
『無名の盾』
景山民夫
『虎口からの脱出』
三浦浩
『津和野物語』
高橋義夫
『闇の葬列』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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候補者・作品
景山民夫男40歳×各選考委員 
『虎口からの脱出』
長篇 639
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
12 「おもしろい冒険小説であるだけに、調査不足が惜しまれる。」「上海に藍衣社があらわれるが、この結社の成立はじつはこの四年後なのだ。安政六年に新撰組が登場するにひとしい。フィクションの許容限度を大きくこえている。」
藤沢周平
男59歳
18 「後半の脱出行になると、(引用者中略)やや新鮮味(個性と言ってもよい)が薄れる。主人公もいまひとつ魅力が不足している。しかしだから面白くないというのではなく、よく出来た冒険小説と言えよう。」「この分野に有望な新人が現れたことは間違いがない。」
黒岩重吾
男63歳
3 「余りにも荒唐無稽過ぎる。」
田辺聖子
女59歳
20 「出だしからすこぶる快調である。点景人物も印象的でお遊びも随所に凝らしてある。」「ただ、中途から車が主人公になってしまった観があって文字通り、冒険小説にとどまった。小説というのは面白けりゃいい、と私は思うものだが、人間たちが車の陰にかくれてしまうと、どうにもじれったい気もする。」
井上ひさし
男52歳
0  
渡辺淳一
男53歳
9 「前半の緊迫感に対して、盧溝橋事件後の後半がいささかドタバタ調で興醒めした。全体にノンフィクション部分に対するフィクションの部分の弱さが目立ち、両者が水と油のように分かれすぎている。」
山口瞳
男60歳
8 「私はお手上げで、こういう小説が候補作の主力になるようなら委員を辞任する他はないと思った。但し、景山さんは大変な才人で、小粋な短篇小説も書ける作家だと思っている。」
村上元三
男77歳
19 「ずいぶんていねいに調べて書いている、と期待したが、かんじんの西とオライリー、麗華の三人が題名の虎口からの脱走になってから、だんだん現実ばなれがしてきた。」「自動車で万里の長城の上を突っ走る場面など(引用者中略)荒唐無稽だし、結末がハッピイエンドになるのも都合がよすぎる。」
平岩弓枝
女55歳
4 「文章に問題があって落ちてしまったが、映画にしてみたくなる作品であった。」
五木寛之
男54歳
34 「特に注目して読んだ作品である。」「残念ながら読後もう一つ釈然としなかった、というのが率直な感想である。」「若い作家の腕力に軽やかにのる(原文傍点)ことができなかったことを悔やむべきかもしれない。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
もりたなるお
『無名の盾』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
三浦浩
『津和野物語』
高橋義夫
『闇の葬列』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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候補者・作品
三浦浩男56歳×各選考委員 
『津和野物語』
連作長篇 230
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
9 「現代ではめずらしくリリシズムにつらぬかれた好篇である。会話のとり方の妙は、ときに久保田万太郎をおもわせるものがあった。思ったほど支持が得られなかったのは、連作のためか、各章の格調に差があったためかもしれない。」
藤沢周平
男59歳
15 「この作家のうまい文章が逆に小説の深まりを妨げている印象を受けた。読みながら終始、文章が十分に人間にとどかないままに筆が流れていくような、あるもどかしさを拭えなかったということである。」「物足りなさは最後まで残った。」
黒岩重吾
男63歳
3 「素直な文章とムードは買うが登場人物の実在感が稀薄である。」
田辺聖子
女59歳
10 「氏の才能の幅を感じさせたが、一方、抑制が利きすぎてどこか洗い曝されすぎたという感がなきにしもあらず、そのときに同時に小説の旨味も洗い落されてしまった気もする。」
井上ひさし
男52歳
0  
渡辺淳一
男53歳
7 「好感のもてる連作だが、趣向に走りすぎて人間の印象が淡すぎる。」「この作家はまだまだいいものを書けるはずである。」
山口瞳
男60歳
5 「書ける人だと思う。この小説は、媒体に合わせて故意に調子を落として書いたものではないか。」
村上元三
男77歳
5 「小味で線が細いが、後味のよさを買いたい。この作者は、この線を守って行けば、大成するのではなかろうか。」
平岩弓枝
女55歳
4 「静かな作風には惹かれるものがあったが、人間の描き方が淡すぎて損をしているようであった。」
五木寛之
男54歳
12 「現役作家として活躍している安定した力量は、この連作長篇からも充分にうかがえる」「作者の遊び心を楽しんで読ませてもらった、というのが感想である。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
もりたなるお
『無名の盾』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
景山民夫
『虎口からの脱出』
高橋義夫
『闇の葬列』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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候補者・作品
高橋義夫男41歳×各選考委員 
『闇の葬列』
長篇 452
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
7 「征韓挙兵を呼号する諸藩の武士や浪人たちの不満が、それほど強く伝わってこないことを除けば、全篇よくまとまっている。政治の非情もよくえがけ、結末も余韻があってよかった。」
藤沢周平
男59歳
16 「新人ばなれした作品で、私は斬られたあとの予後のぐらいとか、斬り合いなどが、こういう場合の類型的な表現にまったく毒されていないのに感服した。力がないと出来ないことである。」「全体を見渡すと題材、文章ともにいま一歩の感があり、花も実もある作品というわけにはいかない。」
黒岩重吾
男63歳
9 「全くそつがなく殆ど欠点のない構成で人物を動かしている」「それにも拘らず読み難い。これは作者が構成通りに人物を動かすことにエネルギーを費やし過ぎたせいであろう。優等生の答案を見せつけられた味気なさを感じた。」
田辺聖子
女59歳
12 「私には感銘があった。」「骨格ただしく推理的興味も添うて、私はオトナの鑑賞に堪える好読物として推してもいい気になっていた。」「(引用者注:「海狼伝」に比べると)まことに通人向きの渋好み、といわねばならぬ。私は涙を呑んで次点に置いたのであった。」
井上ひさし
男52歳
0  
渡辺淳一
男53歳
11 「資料とフィクションの部分がよく馴染み、維新という革命の非情さを背景に、追い詰めていく男と追われる者の息づかいが伝わってくる佳作であった。」「一作ならこの作品かと思って推したが、多数にはいたらなかった。しかし受賞しておかしくない出来栄えであった。」
山口瞳
男60歳
11 「強力新人があらわれたことを喜びたい。」「広沢真臣の妾が知恵おくれで淫乱だったとか、拷問を続けている岡ッ引きが性格的にサディスティックになってしまうといったあたりが面白いのだが、逆に、そこをもっと突っ込んでもらいたかったという憾みが残った。」
村上元三
男77歳
15 「構成もしっかりしているし、明治初年の政治と世相、外国の関係した経済など、きちんと見ている。華がないという批評も出たが、この作品に華は要らない。」「ほかにこの作者の作品がなかったこともあるのだろうが、惜しいところで落ちた。」
平岩弓枝
女55歳
17 「材料をよく消化しているし、追う者と追われる者の人間像がしっかりしていて、文章も歯切れが良い。今回の候補作品の中では一番、印象に残ったし、読後感も好かった。」「地味なようにみえて、本質的には、大変、派手な作品である。」
五木寛之
男54歳
22 「骨太な歴史小説として堂々たる作品であることに驚いた。」「横浜の元同心が主人公で、ふと〈ジャッカルの日〉などを連想しながら一気に読んだ。この長篇が受賞をいっしたのは、ただ他に山田、白石両氏の存在があったからに過ぎないだろう。高橋氏の受賞を強く推す声もあったのは当然である。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
もりたなるお
『無名の盾』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
景山民夫
『虎口からの脱出』
三浦浩
『津和野物語』
伊藤榮
「こんぴらふねふね」
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候補者・作品
伊藤榮男49歳×各選考委員 
「こんぴらふねふね」
短篇 96
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男63歳
0  
藤沢周平
男59歳
11 「途中から型通りの芸術小説になってつまらなくなった。この短篇が成功するためには、一にも二にも冒頭の意外性を生かすことだったと思われる。」
黒岩重吾
男63歳
5 「殆ど点が入らなかったし、私も評価のしようがない、といった作品である。」
田辺聖子
女59歳
7 「犬に代参させるというアイデアが秀逸で、牧歌的である。大いに期待して読んだが、力の入れどころがなく、長篇の一部を一撫でしたような物足りなさが残った。」
井上ひさし
男52歳
0  
渡辺淳一
男53歳
5 「受賞には距離があったが、この作品に潜むおおらかさに心を惹かれた。この魅力を失わずに次作に挑戦して欲しい。」
山口瞳
男60歳
3 「何か茫洋とした欲の無い書き方に好感を抱いた。」
村上元三
男77歳
3 「面白いし達者だけれど、この古さから脱け出してほしい。」
平岩弓枝
女55歳
6 「これだけ厚みのある長篇の中におかれると、よくよく個性的でないと短篇は残りにくいという気がする。」
五木寛之
男54歳
15 「手なれた筆致で、面白く読ませる腕は達者すぎる感じさえするほどだ。」「重厚な単行本の候補作が勢揃いした中におくと、当然のことながら今ひとつの迫力に欠けるのは、いたしかたあるまい。」
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他の候補作
白石一郎
『海狼伝』
山田詠美
『ソウル・ミュージック
ラバーズ・オンリー』
もりたなるお
『無名の盾』
篠田達明
「浮世又兵衛行状記」
景山民夫
『虎口からの脱出』
三浦浩
『津和野物語』
高橋義夫
『闇の葬列』
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