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第98回
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昭和62年/1987年下半期
(昭和63年/1988年1月13日決定発表/『オール讀物』昭和63年/1988年4月号選評掲載)
選考委員  山口瞳
男61歳
黒岩重吾
男63歳
村上元三
男77歳
陳舜臣
男63歳
藤沢周平
男60歳
平岩弓枝
女55歳
井上ひさし
男53歳
田辺聖子
女59歳
渡辺淳一
男54歳
五木寛之
男55歳
選評総行数  174 134 135 133 172 89 169 150 99 93
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
阿部牧郎 『それぞれの終楽章』
334
男54歳
56 55 37 26 41 14 29 23 19 9
長尾宇迦 「幽霊記―小説・佐々木喜善」
126
男61歳
6 14 8 9 20 5 10 28 13 19
西木正明 「ユーコン・ジャック」
228
男47歳
13 4 16 12 11 13 22 12 5 8
小杉健治 『絆』
549
男40歳
30 0 5 16 10 7 31 6 11 3
泡坂妻夫 「折鶴」
174
男54歳
22 10 8 10 19 11 14 12 12 3
堀和久 『大久保長安』
1059
男56歳
9 0 23 7 10 20 8 16 6 10
三浦浩 『海外特派員―消されたスクープ』
656
男57歳
10 23 22 41 40 13 17 31 10 6
赤瀬川隼 「オールド・ルーキー」等
269
男56歳
11 31 7 12 21 11 12 24 23 11
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
山口瞳男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二度読むと……。 総行数174 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
56 「市民と芸術家(虚業家)の対比という視点で読んだ。その視点からすると、不満が残った。(引用者中略)私の評価は低かった。」「ところが、二度目に読みすすむうちに、これは一つの昭和史もしくは友情小説として読むべきだと思い、そう思って読むうちに私の評価はガラリと変った。」「阿部さんは実力がありながら、マスコミの渦に巻き込まれていると思い、『蛸と精鋭』以来のファンである私は悲しんでいたが、この一作で見事に踏み止まった。志を失っていなかったことを証明した。」
長尾宇迦
男61歳
6 「短篇小説としての完成度で一番だったが、ハッとさせられるような場面がなく、文章もやや古臭い。」
西木正明
男47歳
13 「面白さ(読んでいてワクワクする感じ)では一番だった。」「しかし、全滅を伝えられたアッツ島で、どのようにして捕虜になったのか、どうやって原住民に化けられたのか、どうして麻薬中毒になったのかなど、疑問点が多過ぎた。」
小杉健治
男40歳
30 「非常に叮嚀に書いてあるのがいい。」「好感度NO・1であった。」「しかし、文章が幼い。」「「もし最愛の妻が殺されたとしたら……」という箇所もあるが、最愛の妻(原文傍点)なんていう表現を拒否するところから小説家の文章は始るのではないか。」
泡坂妻夫
男54歳
22 「前半は面白いが後半が腰くだけになっている。」「いつもの情緒纏綿たる味わいに乏しい。」「私は泡坂さんに直木賞を貰っていただきたい(過去の実績からして)と思っているが、この作品でということになると首を傾げざるをえないのである。」
堀和久
男56歳
9 「この作者の粘着力に敬意を表するが、いかにも小説としてのハナとかサワリに乏しい。大久保長安の何を書きたかったのか判然としない。」
三浦浩
男57歳
10 「スピードのある文章で、構成にも才気が感じられた。」「しかし、事実関係で不明かつ唐突な所があって、読んでいてイライラさせられる。」
赤瀬川隼
男56歳
11 「赤瀬川さんならこれくらい書けて当然で、今回は題材に恵まれなかった。運不運もあるのだが、どうしても書きたいというテーマに取り組んでもらいたい。」
  「私は、なるべくなら若い新人に賞を差しあげたいと思っている。しかし、既成作家が良い作品を書いたら大いに歓迎したいと思う。」
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渡辺淳一
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選考委員
黒岩重吾男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞作の感動 総行数134 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
55 「「それぞれの終楽章」が抜群で、受賞作は阿部氏以外にないだろう、と感じた。」「贅肉が取れた文章で描かれた人間模様には今の氏の年齢でなければ凝視出来ない人生への慈愛が滲み出ている。」「旧友の死を作為的なストーリーで追わず、彼の性格を抉って小説に構築したこともこの作品の格調を高めた。」
長尾宇迦
男61歳
14 「二、三カ所ビビッドな描写はあるが、主人公の肉づけが足りない。こういう小説には主人公の鬼が描かれていなければ感動を受けない。」「また柳田国男も名前を出しているだけで肝腎の人間像が描かれていない。」
西木正明
男47歳
4 「主人公が敗戦を知った時からこの小説は始まるべきであろう。」
小杉健治
男40歳
0  
泡坂妻夫
男54歳
10 「今回の題からもおおいに期待していただけにがっかりしてしまった。彼女のを何故俗物的な男性と一緒にさせなければならなかったのか。それに妖しさに作為が目立ったことも読後感をつまらなくした。」
堀和久
男56歳
0  
三浦浩
男57歳
23 「翻訳調の読み易い文章で読者を一気に小説の世界に引き込んで行く。」「前半はこの種の小説としてはリアリティがあった。」「核が登場するにおよび「007」を連想してしまった。」「折角の力作も核を出すことによって絵空事になってしまった。残念である。」
赤瀬川隼
男56歳
31 「私は前二作(引用者注:「オールド・ルーキー」「梶川一行の犯罪」)に感銘を受けた。」「(引用者注:「オールド・ルーキー」の)テーマで受けた読後の爽快感は氏の才能の所産であろう。」「「梶川一行の犯罪」は、野球という夢を通して生きて行く男の影とロマンの一体化に魅力がある。」「受賞作の価値はあると今でも考えているが阿部氏との得点差が離れ過ぎていた。」
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陳舜臣
藤沢周平
平岩弓枝
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田辺聖子
渡辺淳一
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選考委員
村上元三男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
このごろの短篇は 総行数135 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
37 「満票といってもいいが、一票を入れずに半票にしたのは、わたし一人であった。作者のこれまでの作家経歴、そして過去に七回も直木賞の候補になった実績から見ても、当然のことであろう。」「この作品の第三章までは、ついて行けた。だが第四章を読んでいるうちに、この作者は純文学志向なのではないか、と気がついた。おそらく作者は、芥川賞を受けたほうが満足だったのではないか、と迷いが出た。」
長尾宇迦
男61歳
8 「いかにも世界がせまい。作者がその中で、じっと身を縮めている。これはもう読むほうの好き嫌いが、作品の評価以前で左右されてしまう。」
西木正明
男47歳
16 「面白く読んだ。」「二度目に読んだときは、どうも嘘が表面へ出てきて、白々とした気持になった。自分の素性が明らかになる軍隊手牒を、ジャックがこれほど大切にしていたのは何故なのか、大事な点だし、そこを作者は隠している。」
小杉健治
男40歳
5 「裁判小説なのか、推理小説なのか、はっきりしない。知恵おくれをテーマにするにしても、生煮えの感じがする。」
泡坂妻夫
男54歳
8 「この作品独自の世界だけで短くまとめてほしかったが、作者の推理好みまで云々するのは失礼かも知れない。縫箔を固守する職人は、それだけで立派な存在価値がある、と思うのだが。」
堀和久
男56歳
23 「期待をしながら読み続けて、五日間かかった。そして最後に、がっかりした。」「肝腎のところが書かれていない。」「末尾に参考文献をずらりとならべるよりも、資料をどう消化したか、というほうが大切なのだと思う。」
三浦浩
男57歳
22 「これを推したら、ほかの選考委員から反対される、と思いながら『海外特派員』に票を入れたが、果して落ちた。それでも七票を得た」「こういう種類の外国の作家のものは、面白がって読むのに、結局は日本の作家が扱うのは無理なのではないか、と思った。」
赤瀬川隼
男56歳
7 「野球がわからないわたしなので(引用者中略)興味が半減していた。作者の責任ではないが、野球に熱中できない選考委員もいる、と考えてほしい。」
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選考委員
陳舜臣男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
共鳴し合う音 総行数133 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
26 「彼が直木賞候補にあげられたのは、これが八度目であるという。最初は第五十九回で、つぎが第六十一回であったそうだ。私が三度目の候補で受賞したのが第六十回のときであった。いわば肩をならべてきた戦友であり、その彼の作品を俎上にのせるのは奇妙なかんじである。」「群を抜いていて、正直いって私はほっとした。」「死の周辺に包みこまれた小宇宙のなかで、さまざまに共鳴し合う音を、読者はきくことができる。」
長尾宇迦
男61歳
9 「紙数不足のようだ。佐々木喜善の著作の巻末解説のようなところと、佐々木喜善を主人公にした小説の部分とが融合していないかんじがする。」
西木正明
男47歳
12 「二十数年、あるいは十数年という歳月が、そこにぽっかりと空いたままである。なにかが遥曳して、それを埋めるような工夫がほしかった。」
小杉健治
男40歳
16 「原島弁護士が、つぎつぎと証人をさがし出した経緯が欠落しているのが不満であった。推理小説ではそこがメインになるところである。」「ともあれ、法治国家であるから、法廷小説は日本ではもっと充実したジャンルになるべきである。小杉氏の健闘を祈りたい。」
泡坂妻夫
男54歳
10 「歳月の経過をじゅうぶんに埋め尽したかんじがあり、ミステリーの要素もわずらわしくないていどに組み入れられ、私には好ましい作品におもえた。たそがれへの愛惜の情とでもいうべきものを、読者の胸に宿らせる力をもっている。」
堀和久
男56歳
7 「興味あるテーマをつかまえながら、資料を丹念に撒いたので冗漫になってしまった。小説として熟すには、思い切った刈りこみが必要であろう。」
三浦浩
男57歳
41 「私たちが生きている時代を、奇抜に角度をかえることによって、まばゆいほどの光量で照らし出してくれた。」「細部の欠点は、設定作業の困難をおもえば、許容限度をこえていないようにおもう。筋が錯綜してわかりにくいところもあるが、そもそも事件にまきこまれた主人公自身、状況がよくわからずにもがいているのだ。」「このような良質の小説が登場してきたことをよろこびたい。」
赤瀬川隼
男56歳
12 「有能で安定した作家であり、人生の断片をさりげなく切り取ってみせる技は、心憎いばかりである。ただつっこむ直前に踏みとどまるかんじがする。それはそれであざやかなフォームだが、強さがあらわれにくいのではあるまいか。」
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選考委員
藤沢周平男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
胸打つ重い感慨 総行数172 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
41 「見事なのはこの小説の細部である。」「そして細部というものは、しばしばその作家の才能と感性がもっともよく現われる場所でもあるので、ここにも阿部さんの才能とみずみずしい感性がのぞいているのを見ることが出来るのである。」「形、内容ともにととのった、受賞にふさわしい作品だった。」
長尾宇迦
男61歳
20 「文学的な好テーマをつかんだ作品だったと思う。」「しかしいまひとつ強力に推せなかったのは、小説的なふくらみということに不満があったからである。わるくない小説だが、そのよさは要するに良質の骨組みのよさではないかという感を拭えないのである。」
西木正明
男47歳
11 「抽象的な言い方で申しわけないが、終始ノン・フィクションの文章を読んでいるような気がした。書くべきことは書けているが、小説的な感興がいま一歩というほどの意味である。」
小杉健治
男40歳
10 「底のところに社会的な弱者に対する思い入れがあり、それはそれで筋が通っているけれども、ややそのことに寄りかかり過ぎた感じが気になった。しかし構成のしっかりした推理小説である。ただこの作者にしては文章が粗く、読みづらい。」
泡坂妻夫
男54歳
19 「変貌する和服業界を背景に、推理色をからめて男女の葛藤を描く、なかなか雰囲気のある作品だった。」「なぜ情事の場所で、ただの偽名でなく田毎の名前を使うのか、核心にあたるその一点に説得力のある説明がなされていないので不成功に終っている。」
堀和久
男56歳
10 「大作を破綻なくまとめた筆力は認められるものの、肝心の主人公の怪物ぶりが書けていなかった。列挙されている長安のもろもろの権力というものは、徳川あっての虚像に過ぎず、天下を狙う野望にむすびつくほどのものとは見做しがたいのである。」
三浦浩
男57歳
40 「私には政治に対する根強い不信感があって、政治、ことに国際政治においては、裏にどんな取引や密約があるか知れたものではないという気持もある。したがって「海外特派員」もあり得べき悪夢として読んだ。」「第一級の国際謀略小説だと思う。」「受賞圏内の作品だった。」
赤瀬川隼
男56歳
21 「「オールド・ルーキー」に感服した。全体に会話のテンポがよく、プロ野球の表裏に通じた作者の眼によって、大人の小説の雰囲気をそなえた佳篇になっている。」「野球選手本庄雄太を通して、人生とはあるいは人間とは何かを問いつめる結果になっていて、野球小説もここまで来るときわめて質の高いものになった。」「しかしほかの二篇は、(引用者中略)かなり見劣りするように思われた。」
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平岩弓枝
井上ひさし
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選考委員
平岩弓枝女55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
さわやかな受賞 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
14 「いうことがありません。自分の文章で、これだけの人間を見事に描き切った力量はすばらしいと思います。」「選考委員が、ほぼ、もろ手を上げての阿部さんの受賞は、まことにさわやかな決定といえましょう。」
長尾宇迦
男61歳
5 「主人公がこうしたタイプの人間のパターンから脱け出していないことが気になりました。」
西木正明
男47歳
13 「荒唐無稽を百も承知の上で読者を虚構の世界へ誘い込もうとするものでしょう。この場合、(引用者中略)一ヶ所でも、こんなことは可笑しいと指摘されたら、作者のねらいは挫折してしまいます。」
小杉健治
男40歳
7 「面白く読みましたが、弁護士の、事件に対する捜査ルートがはっきり書かれていないために、次々と登場する証人が、少々、御都合主義に感じられるのが難といえないこともないようです。」
泡坂妻夫
男54歳
11 「好きな作品でした。」「職人の一つの世界がよく描けていますし、人間像もはっきりしています。強いていえば、心中する相手の男性の描写が足りなかったために、心中そのものがはぐらかされたような気持になる点かも知れません。」
堀和久
男56歳
20 「大作であり労作だと思うのですが、はっきりいって資料の中から人間が起き上って来ないという印象を受けました。資料は多いほどよいが、いざ書く時には、その中のどれだけを捨てられるかが勝負だと、かつて、大先輩から教えられたことがあります。」
三浦浩
男57歳
13 「荒唐無稽を百も承知の上で読者を虚構の世界へ誘い込もうとするものでしょう。この場合、(引用者中略)一ヶ所でも、こんなことは可笑しいと指摘されたら、作者のねらいは挫折してしまいます。」
赤瀬川隼
男56歳
11 「いい作品だと思いました。特に私は「オールド・ルーキー」が好きで、もしかすると阿部牧郎さんの「それぞれの終楽章」と共に受賞するのではないかと思っていましたが、点が集まりませんでした。」
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選考委員
井上ひさし男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
謎の解明が生む感動について 総行数169 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
29 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「思いもかけない強い感動があった。高校時代の親友の謎めいた急死が、《人々によって自分は影響をあたえられ、つくりあげられた。(引用者中略)自分はこれらの人々の人生を文字にする仕事をはじめなければならない。彼らを生かすことで自分も生きる。》という発見によって解明されるとは、なんと意外で、快いことだろう。」
長尾宇迦
男61歳
10 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「熱気ある筆はときどき筆者をして、「これこそ小説だ」と叫ばしめた。」
西木正明
男47歳
22 「〈日本人であることを余儀なくやめなければならなくなった日本人を通して、日本人を考える〉というのが作者の主題であったと思われるが、とするならば、第二の謎(引用者注:インディアンの薬草行商人がなぜコカイン常用者として事故死したのか)の解明こそ大切であったはずである。」
小杉健治
男40歳
31 「やや生硬にすぎる文章でずいぶん損をした。」「作者はさまざまな時間の流れを組み合せてたくさんの謎を発生させ、それをみごとに解き明かしてくれたのだ。解明のあとの感動も上質だ。このようにとても立派な作品なのに、その美果を文章が覆い隠してしまった。口惜しい。」
泡坂妻夫
男54歳
14 「主人公の撒いた四枚の名刺の行方は如何という謎が縫い込まれていた。別にいえば、この謎を原動力に物語が発進する仕立になっていたのであるが、謎は結末を拘束するまでには至らなかった。途中で腰がくだけてしまったとの印象を受けたのである。」
堀和久
男56歳
8 「作者がみずから設定した「長安はなぜ家康にそむこうとしたか」という謎には、満足の行く答が与えられていない。」
三浦浩
男57歳
17 「大人の観賞に充分耐えうるスパイ小説をつくりだそうとした(引用者中略)意気は壮とすべきであるが、しかし事件は結末に近づくにつれてわかりにくくなり、小説の謎が読者の実生活を侵犯してしまう。」「この作品にあまりなじめなかった。」
赤瀬川隼
男56歳
12 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「低くて謙虚な姿勢から諧謔をまじえて実人生をとらえる作風はかねてから傾倒するところ」
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選考委員
田辺聖子女59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選後評 総行数150 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
23 「すでに一家を成していられる方ではあり、今さらという気はあるが、これは氏の実力を改めて認識させるに充分であった。その上、作者の抑制した熱気が伝わってくる。」「男の人生も大変なんですね、なんていう、当然のことを、当然のように思わせる作品、――というのは、これはとても難しいんだけど、成功していたなあ。」
長尾宇迦
男61歳
28 「うーん、と唸りたくなるような小説である。書き出しから読者は心をつかまれてしまう。」「作者はあふれる思いを伝えようとして言葉が思いに追いつかず、そのもどかしさが、いわば文学的吃音というべき一種の晦渋さをもたらす。」「どこか読者としてはもどかしい思いも残る。」「とまれ珍重すべきユニークな異才。」
西木正明
男47歳
12 「題材としては面白いのだが、小説の醗酵度が不足しているように思えた。終り近く、元日本兵の手帖のくだりで、今までの文章と、ふと風合が違い、私としては興を殺がれてしまった。」
小杉健治
男40歳
6 「法廷小説で心理描写をするのはむづかしいとつくづく思った。高度の技術をもつ作品だが、小説としての脂気がもう少し欲しいところ。」
泡坂妻夫
男54歳
12 「まことに快調の出だしであったが、後半、ア、ア、という間にトーンが転調した。主人公の田毎は一貫していい男だが、はじめ厭な男として出現した横倉が、終りではイイ役を振られているのはフェアではない気がする。」
堀和久
男56歳
16 「大久保長安についてほとんど知ることがないので、まことに裨益された。」「しかし小説としてみたとき、第一に長安の人物像に魅力が感じられないのが、私には致命的に思われた。」「作者が食指を動かしたくなる興味と情熱の、よってくるところが解明されればよいのだが、それが事蹟の謎への解明にとどまったような所が残念であった。」
三浦浩
男57歳
31 「私としては「長蛇を逸した」という気になった作品」「私はとてもよくできた娯楽小説だと思う。」「ただこれはごくデリケートな味わいの小説なので、いわば酒盗とかこのわた(原文傍点)とか、ホヤ(原文傍点)とかいったような、好きな人にはたまらなく好ましいが、受けつけない人にははな(原文傍点)からダメ、という所があるかもしれない。」「受賞作に比べて絶対に遜色なかったと思う。」
赤瀬川隼
男56歳
24 「ことに私は「梶原一行の犯罪」に魅力を感じた。野球に賭ける男の夢、などというのは、女の認識の埒外であるのに、私にはとても面白くよくわかった。それでいて、ほかの作品に目移りする、というのは、これはどういうことであろうか、破綻のなさが却って力を弱めるのであろうか、いや、小説というのは、(引用者中略)ほかの小説と並べて比較したとき、時々刻々に味が変り、色を変ずるところがある。」
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黒岩重吾
村上元三
陳舜臣
藤沢周平
平岩弓枝
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
プロの芸 総行数99 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
19 「一人の作家がしかるべき年齢に達すれば、それなりに書けるものかもしれない。その意味では危げなく無難で、それがまたもの足りないともいえる。しかしさすがに人間を見る目はたしかで、それを柔軟な文章がしっかりと支えている。」「この力を持っている作家に、直木賞を与えないという理由はないだろう。」
長尾宇迦
男61歳
13 「たしかな小説空間をもっているが、惜しむらくは主人公の佐々木喜善なる人物の描き方が手抜で、図式的でありすぎた。」「フィクションを書き込めなかった喜善の弱点らしいが、それに似た歯痒さを感じた。」
西木正明
男47歳
5 「前半は快調だが、後半になるとご都合主義が目立ち、人物も浮いてしまう。」
小杉健治
男40歳
11 「よく考えられた小説で、読んでいて作者のひたむきさが伝わり、読後感も爽やかである。ただせっかく人間の奥深いところを描こうとしながら、後半、たんなる人情劇に終ったところが残念である。文章がまだ生硬だが、新しい推理の旗手として期待できそうである。」
泡坂妻夫
男54歳
12 「期待して読んだが、前作に較べると粘りが抜けたようである。」「鶴子と潤子の二人の女性が見えてこないし、推理の謎解きの部分になると、前回同様、軽くなる。なによりも、この作者独特の翳りある嫋々たる小説空間が薄れたところが残念であった。」
堀和久
男56歳
6 「これを書き下した努力は評価しなければならない。しかし資料がこなれず、長安そのものも魅力に欠けて、いささか退屈する。」
三浦浩
男57歳
10 「新聞記者が特ダネを追い詰めていく部分は迫力がある。しかし現実の日本の首相が、ある謀略に巻きこまれて遭難するという、ショッキングな事件を描きながら、いまのわれわれに、なんの不安も戦慄も感じさせないのでは、やはりもの足りない。」
赤瀬川隼
男56歳
23 「三作ともほどよい仕上りである。しかしほどよい(原文傍点)という意味のなかには、甘さと調子のよさもある。なによりも気になるのは、人物を安易に動かしすぎることである。」「とくに不満なのは、男女が深い関係にいたる最も難しい部分を、すべて省略して話をすすめることである。安易な虚構の乱発が、かえって小説のリアリティを薄めてしまう。」
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他の選考委員
山口瞳
黒岩重吾
村上元三
陳舜臣
藤沢周平
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
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選考委員
五木寛之男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
何か、を考える 総行数93 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎
男54歳
9 「どの候補作が受賞してもおかしくないではないか、という意見が出てくるにちがいない。私はその通りだと思う。だが、阿部牧郎氏の「それぞれの終楽章」の受賞は、すべての選者の賛意を集めるなにか(原文傍点)を持っていた。それが何かを、私はいま考えているところだ。」
長尾宇迦
男61歳
19 「ときとして作者自身が主人公の佐々木喜善に乗りうつったかの感さえあって、再読、三読するにしたがって切実な印象の深まる作品であった。」「行間のどこかに縄文文学の歯ぎしりがきこえる、というのはのめり込みすぎる読みかただろうか。」
西木正明
男47歳
8 「これが受賞作となっても異論はないと思っていた、とだけ言っておこう。小説をつくろう(原文傍点)とするこの作家の意欲を、高く評価して今後を見守りたい。」
小杉健治
男40歳
3 「その質実さを高く評価する声が高かった。」
泡坂妻夫
男54歳
3 「安定した技巧で、すでに独自の作風を確立した作家である」
堀和久
男56歳
10 「さて、はたして自分がこれだけの大長篇をまとめあげる作家的粘着力があるか、と自問してみれば、あれこれあげつらう気力などおのずと消滅してしまう。」
三浦浩
男57歳
6 「冒頭の一節の読みづらさを通りすぎれば、これまでの氏のどの作品よりも力感のある長篇だ。」
赤瀬川隼
男56歳
11 「爽やかさの背後には、現実の苦さを知りつくした上で、なお小説を人生を慰藉するものにとどめようという、大人の抑制を感じる。」
  「直木賞という賞の肌合いというか、性格というか、そういったものが少し変ってきたようだな、と、いう感じがした。」「無名の新人がいきなり登場して、劇的な長打をかっとばすといった舞台では、なくなってきたような雰囲気なのである。」
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他の選考委員
山口瞳
黒岩重吾
村上元三
陳舜臣
藤沢周平
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
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受賞者・作品
阿部牧郎男54歳×各選考委員 
『それぞれの終楽章』
長篇 334
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
56 「市民と芸術家(虚業家)の対比という視点で読んだ。その視点からすると、不満が残った。(引用者中略)私の評価は低かった。」「ところが、二度目に読みすすむうちに、これは一つの昭和史もしくは友情小説として読むべきだと思い、そう思って読むうちに私の評価はガラリと変った。」「阿部さんは実力がありながら、マスコミの渦に巻き込まれていると思い、『蛸と精鋭』以来のファンである私は悲しんでいたが、この一作で見事に踏み止まった。志を失っていなかったことを証明した。」
黒岩重吾
男63歳
55 「「それぞれの終楽章」が抜群で、受賞作は阿部氏以外にないだろう、と感じた。」「贅肉が取れた文章で描かれた人間模様には今の氏の年齢でなければ凝視出来ない人生への慈愛が滲み出ている。」「旧友の死を作為的なストーリーで追わず、彼の性格を抉って小説に構築したこともこの作品の格調を高めた。」
村上元三
男77歳
37 「満票といってもいいが、一票を入れずに半票にしたのは、わたし一人であった。作者のこれまでの作家経歴、そして過去に七回も直木賞の候補になった実績から見ても、当然のことであろう。」「この作品の第三章までは、ついて行けた。だが第四章を読んでいるうちに、この作者は純文学志向なのではないか、と気がついた。おそらく作者は、芥川賞を受けたほうが満足だったのではないか、と迷いが出た。」
陳舜臣
男63歳
26 「彼が直木賞候補にあげられたのは、これが八度目であるという。最初は第五十九回で、つぎが第六十一回であったそうだ。私が三度目の候補で受賞したのが第六十回のときであった。いわば肩をならべてきた戦友であり、その彼の作品を俎上にのせるのは奇妙なかんじである。」「群を抜いていて、正直いって私はほっとした。」「死の周辺に包みこまれた小宇宙のなかで、さまざまに共鳴し合う音を、読者はきくことができる。」
藤沢周平
男60歳
41 「見事なのはこの小説の細部である。」「そして細部というものは、しばしばその作家の才能と感性がもっともよく現われる場所でもあるので、ここにも阿部さんの才能とみずみずしい感性がのぞいているのを見ることが出来るのである。」「形、内容ともにととのった、受賞にふさわしい作品だった。」
平岩弓枝
女55歳
14 「いうことがありません。自分の文章で、これだけの人間を見事に描き切った力量はすばらしいと思います。」「選考委員が、ほぼ、もろ手を上げての阿部さんの受賞は、まことにさわやかな決定といえましょう。」
井上ひさし
男53歳
29 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「思いもかけない強い感動があった。高校時代の親友の謎めいた急死が、《人々によって自分は影響をあたえられ、つくりあげられた。(引用者中略)自分はこれらの人々の人生を文字にする仕事をはじめなければならない。彼らを生かすことで自分も生きる。》という発見によって解明されるとは、なんと意外で、快いことだろう。」
田辺聖子
女59歳
23 「すでに一家を成していられる方ではあり、今さらという気はあるが、これは氏の実力を改めて認識させるに充分であった。その上、作者の抑制した熱気が伝わってくる。」「男の人生も大変なんですね、なんていう、当然のことを、当然のように思わせる作品、――というのは、これはとても難しいんだけど、成功していたなあ。」
渡辺淳一
男54歳
19 「一人の作家がしかるべき年齢に達すれば、それなりに書けるものかもしれない。その意味では危げなく無難で、それがまたもの足りないともいえる。しかしさすがに人間を見る目はたしかで、それを柔軟な文章がしっかりと支えている。」「この力を持っている作家に、直木賞を与えないという理由はないだろう。」
五木寛之
男55歳
9 「どの候補作が受賞してもおかしくないではないか、という意見が出てくるにちがいない。私はその通りだと思う。だが、阿部牧郎氏の「それぞれの終楽章」の受賞は、すべての選者の賛意を集めるなにか(原文傍点)を持っていた。それが何かを、私はいま考えているところだ。」
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他の候補作
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
西木正明
「ユーコン・ジャック」
小杉健治
『絆』
泡坂妻夫
「折鶴」
堀和久
『大久保長安』
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
長尾宇迦男61歳×各選考委員 
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
短篇 126
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
6 「短篇小説としての完成度で一番だったが、ハッとさせられるような場面がなく、文章もやや古臭い。」
黒岩重吾
男63歳
14 「二、三カ所ビビッドな描写はあるが、主人公の肉づけが足りない。こういう小説には主人公の鬼が描かれていなければ感動を受けない。」「また柳田国男も名前を出しているだけで肝腎の人間像が描かれていない。」
村上元三
男77歳
8 「いかにも世界がせまい。作者がその中で、じっと身を縮めている。これはもう読むほうの好き嫌いが、作品の評価以前で左右されてしまう。」
陳舜臣
男63歳
9 「紙数不足のようだ。佐々木喜善の著作の巻末解説のようなところと、佐々木喜善を主人公にした小説の部分とが融合していないかんじがする。」
藤沢周平
男60歳
20 「文学的な好テーマをつかんだ作品だったと思う。」「しかしいまひとつ強力に推せなかったのは、小説的なふくらみということに不満があったからである。わるくない小説だが、そのよさは要するに良質の骨組みのよさではないかという感を拭えないのである。」
平岩弓枝
女55歳
5 「主人公がこうしたタイプの人間のパターンから脱け出していないことが気になりました。」
井上ひさし
男53歳
10 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「熱気ある筆はときどき筆者をして、「これこそ小説だ」と叫ばしめた。」
田辺聖子
女59歳
28 「うーん、と唸りたくなるような小説である。書き出しから読者は心をつかまれてしまう。」「作者はあふれる思いを伝えようとして言葉が思いに追いつかず、そのもどかしさが、いわば文学的吃音というべき一種の晦渋さをもたらす。」「どこか読者としてはもどかしい思いも残る。」「とまれ珍重すべきユニークな異才。」
渡辺淳一
男54歳
13 「たしかな小説空間をもっているが、惜しむらくは主人公の佐々木喜善なる人物の描き方が手抜で、図式的でありすぎた。」「フィクションを書き込めなかった喜善の弱点らしいが、それに似た歯痒さを感じた。」
五木寛之
男55歳
19 「ときとして作者自身が主人公の佐々木喜善に乗りうつったかの感さえあって、再読、三読するにしたがって切実な印象の深まる作品であった。」「行間のどこかに縄文文学の歯ぎしりがきこえる、というのはのめり込みすぎる読みかただろうか。」
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他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
西木正明
「ユーコン・ジャック」
小杉健治
『絆』
泡坂妻夫
「折鶴」
堀和久
『大久保長安』
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
西木正明男47歳×各選考委員 
「ユーコン・ジャック」
中篇 228
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
13 「面白さ(読んでいてワクワクする感じ)では一番だった。」「しかし、全滅を伝えられたアッツ島で、どのようにして捕虜になったのか、どうやって原住民に化けられたのか、どうして麻薬中毒になったのかなど、疑問点が多過ぎた。」
黒岩重吾
男63歳
4 「主人公が敗戦を知った時からこの小説は始まるべきであろう。」
村上元三
男77歳
16 「面白く読んだ。」「二度目に読んだときは、どうも嘘が表面へ出てきて、白々とした気持になった。自分の素性が明らかになる軍隊手牒を、ジャックがこれほど大切にしていたのは何故なのか、大事な点だし、そこを作者は隠している。」
陳舜臣
男63歳
12 「二十数年、あるいは十数年という歳月が、そこにぽっかりと空いたままである。なにかが遥曳して、それを埋めるような工夫がほしかった。」
藤沢周平
男60歳
11 「抽象的な言い方で申しわけないが、終始ノン・フィクションの文章を読んでいるような気がした。書くべきことは書けているが、小説的な感興がいま一歩というほどの意味である。」
平岩弓枝
女55歳
13 「荒唐無稽を百も承知の上で読者を虚構の世界へ誘い込もうとするものでしょう。この場合、(引用者中略)一ヶ所でも、こんなことは可笑しいと指摘されたら、作者のねらいは挫折してしまいます。」
井上ひさし
男53歳
22 「〈日本人であることを余儀なくやめなければならなくなった日本人を通して、日本人を考える〉というのが作者の主題であったと思われるが、とするならば、第二の謎(引用者注:インディアンの薬草行商人がなぜコカイン常用者として事故死したのか)の解明こそ大切であったはずである。」
田辺聖子
女59歳
12 「題材としては面白いのだが、小説の醗酵度が不足しているように思えた。終り近く、元日本兵の手帖のくだりで、今までの文章と、ふと風合が違い、私としては興を殺がれてしまった。」
渡辺淳一
男54歳
5 「前半は快調だが、後半になるとご都合主義が目立ち、人物も浮いてしまう。」
五木寛之
男55歳
8 「これが受賞作となっても異論はないと思っていた、とだけ言っておこう。小説をつくろう(原文傍点)とするこの作家の意欲を、高く評価して今後を見守りたい。」
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他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
小杉健治
『絆』
泡坂妻夫
「折鶴」
堀和久
『大久保長安』
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
小杉健治男40歳×各選考委員 
『絆』
長篇 549
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
30 「非常に叮嚀に書いてあるのがいい。」「好感度NO・1であった。」「しかし、文章が幼い。」「「もし最愛の妻が殺されたとしたら……」という箇所もあるが、最愛の妻(原文傍点)なんていう表現を拒否するところから小説家の文章は始るのではないか。」
黒岩重吾
男63歳
0  
村上元三
男77歳
5 「裁判小説なのか、推理小説なのか、はっきりしない。知恵おくれをテーマにするにしても、生煮えの感じがする。」
陳舜臣
男63歳
16 「原島弁護士が、つぎつぎと証人をさがし出した経緯が欠落しているのが不満であった。推理小説ではそこがメインになるところである。」「ともあれ、法治国家であるから、法廷小説は日本ではもっと充実したジャンルになるべきである。小杉氏の健闘を祈りたい。」
藤沢周平
男60歳
10 「底のところに社会的な弱者に対する思い入れがあり、それはそれで筋が通っているけれども、ややそのことに寄りかかり過ぎた感じが気になった。しかし構成のしっかりした推理小説である。ただこの作者にしては文章が粗く、読みづらい。」
平岩弓枝
女55歳
7 「面白く読みましたが、弁護士の、事件に対する捜査ルートがはっきり書かれていないために、次々と登場する証人が、少々、御都合主義に感じられるのが難といえないこともないようです。」
井上ひさし
男53歳
31 「やや生硬にすぎる文章でずいぶん損をした。」「作者はさまざまな時間の流れを組み合せてたくさんの謎を発生させ、それをみごとに解き明かしてくれたのだ。解明のあとの感動も上質だ。このようにとても立派な作品なのに、その美果を文章が覆い隠してしまった。口惜しい。」
田辺聖子
女59歳
6 「法廷小説で心理描写をするのはむづかしいとつくづく思った。高度の技術をもつ作品だが、小説としての脂気がもう少し欲しいところ。」
渡辺淳一
男54歳
11 「よく考えられた小説で、読んでいて作者のひたむきさが伝わり、読後感も爽やかである。ただせっかく人間の奥深いところを描こうとしながら、後半、たんなる人情劇に終ったところが残念である。文章がまだ生硬だが、新しい推理の旗手として期待できそうである。」
五木寛之
男55歳
3 「その質実さを高く評価する声が高かった。」
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他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
西木正明
「ユーコン・ジャック」
泡坂妻夫
「折鶴」
堀和久
『大久保長安』
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
泡坂妻夫男54歳×各選考委員 
「折鶴」
中篇 174
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
22 「前半は面白いが後半が腰くだけになっている。」「いつもの情緒纏綿たる味わいに乏しい。」「私は泡坂さんに直木賞を貰っていただきたい(過去の実績からして)と思っているが、この作品でということになると首を傾げざるをえないのである。」
黒岩重吾
男63歳
10 「今回の題からもおおいに期待していただけにがっかりしてしまった。彼女のを何故俗物的な男性と一緒にさせなければならなかったのか。それに妖しさに作為が目立ったことも読後感をつまらなくした。」
村上元三
男77歳
8 「この作品独自の世界だけで短くまとめてほしかったが、作者の推理好みまで云々するのは失礼かも知れない。縫箔を固守する職人は、それだけで立派な存在価値がある、と思うのだが。」
陳舜臣
男63歳
10 「歳月の経過をじゅうぶんに埋め尽したかんじがあり、ミステリーの要素もわずらわしくないていどに組み入れられ、私には好ましい作品におもえた。たそがれへの愛惜の情とでもいうべきものを、読者の胸に宿らせる力をもっている。」
藤沢周平
男60歳
19 「変貌する和服業界を背景に、推理色をからめて男女の葛藤を描く、なかなか雰囲気のある作品だった。」「なぜ情事の場所で、ただの偽名でなく田毎の名前を使うのか、核心にあたるその一点に説得力のある説明がなされていないので不成功に終っている。」
平岩弓枝
女55歳
11 「好きな作品でした。」「職人の一つの世界がよく描けていますし、人間像もはっきりしています。強いていえば、心中する相手の男性の描写が足りなかったために、心中そのものがはぐらかされたような気持になる点かも知れません。」
井上ひさし
男53歳
14 「主人公の撒いた四枚の名刺の行方は如何という謎が縫い込まれていた。別にいえば、この謎を原動力に物語が発進する仕立になっていたのであるが、謎は結末を拘束するまでには至らなかった。途中で腰がくだけてしまったとの印象を受けたのである。」
田辺聖子
女59歳
12 「まことに快調の出だしであったが、後半、ア、ア、という間にトーンが転調した。主人公の田毎は一貫していい男だが、はじめ厭な男として出現した横倉が、終りではイイ役を振られているのはフェアではない気がする。」
渡辺淳一
男54歳
12 「期待して読んだが、前作に較べると粘りが抜けたようである。」「鶴子と潤子の二人の女性が見えてこないし、推理の謎解きの部分になると、前回同様、軽くなる。なによりも、この作者独特の翳りある嫋々たる小説空間が薄れたところが残念であった。」
五木寛之
男55歳
3 「安定した技巧で、すでに独自の作風を確立した作家である」
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他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
西木正明
「ユーコン・ジャック」
小杉健治
『絆』
堀和久
『大久保長安』
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
堀和久男56歳×各選考委員 
『大久保長安』
長篇 1059
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
9 「この作者の粘着力に敬意を表するが、いかにも小説としてのハナとかサワリに乏しい。大久保長安の何を書きたかったのか判然としない。」
黒岩重吾
男63歳
0  
村上元三
男77歳
23 「期待をしながら読み続けて、五日間かかった。そして最後に、がっかりした。」「肝腎のところが書かれていない。」「末尾に参考文献をずらりとならべるよりも、資料をどう消化したか、というほうが大切なのだと思う。」
陳舜臣
男63歳
7 「興味あるテーマをつかまえながら、資料を丹念に撒いたので冗漫になってしまった。小説として熟すには、思い切った刈りこみが必要であろう。」
藤沢周平
男60歳
10 「大作を破綻なくまとめた筆力は認められるものの、肝心の主人公の怪物ぶりが書けていなかった。列挙されている長安のもろもろの権力というものは、徳川あっての虚像に過ぎず、天下を狙う野望にむすびつくほどのものとは見做しがたいのである。」
平岩弓枝
女55歳
20 「大作であり労作だと思うのですが、はっきりいって資料の中から人間が起き上って来ないという印象を受けました。資料は多いほどよいが、いざ書く時には、その中のどれだけを捨てられるかが勝負だと、かつて、大先輩から教えられたことがあります。」
井上ひさし
男53歳
8 「作者がみずから設定した「長安はなぜ家康にそむこうとしたか」という謎には、満足の行く答が与えられていない。」
田辺聖子
女59歳
16 「大久保長安についてほとんど知ることがないので、まことに裨益された。」「しかし小説としてみたとき、第一に長安の人物像に魅力が感じられないのが、私には致命的に思われた。」「作者が食指を動かしたくなる興味と情熱の、よってくるところが解明されればよいのだが、それが事蹟の謎への解明にとどまったような所が残念であった。」
渡辺淳一
男54歳
6 「これを書き下した努力は評価しなければならない。しかし資料がこなれず、長安そのものも魅力に欠けて、いささか退屈する。」
五木寛之
男55歳
10 「さて、はたして自分がこれだけの大長篇をまとめあげる作家的粘着力があるか、と自問してみれば、あれこれあげつらう気力などおのずと消滅してしまう。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
西木正明
「ユーコン・ジャック」
小杉健治
『絆』
泡坂妻夫
「折鶴」
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
三浦浩男57歳×各選考委員 
『海外特派員―消されたスクープ』
長篇 656
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
10 「スピードのある文章で、構成にも才気が感じられた。」「しかし、事実関係で不明かつ唐突な所があって、読んでいてイライラさせられる。」
黒岩重吾
男63歳
23 「翻訳調の読み易い文章で読者を一気に小説の世界に引き込んで行く。」「前半はこの種の小説としてはリアリティがあった。」「核が登場するにおよび「007」を連想してしまった。」「折角の力作も核を出すことによって絵空事になってしまった。残念である。」
村上元三
男77歳
22 「これを推したら、ほかの選考委員から反対される、と思いながら『海外特派員』に票を入れたが、果して落ちた。それでも七票を得た」「こういう種類の外国の作家のものは、面白がって読むのに、結局は日本の作家が扱うのは無理なのではないか、と思った。」
陳舜臣
男63歳
41 「私たちが生きている時代を、奇抜に角度をかえることによって、まばゆいほどの光量で照らし出してくれた。」「細部の欠点は、設定作業の困難をおもえば、許容限度をこえていないようにおもう。筋が錯綜してわかりにくいところもあるが、そもそも事件にまきこまれた主人公自身、状況がよくわからずにもがいているのだ。」「このような良質の小説が登場してきたことをよろこびたい。」
藤沢周平
男60歳
40 「私には政治に対する根強い不信感があって、政治、ことに国際政治においては、裏にどんな取引や密約があるか知れたものではないという気持もある。したがって「海外特派員」もあり得べき悪夢として読んだ。」「第一級の国際謀略小説だと思う。」「受賞圏内の作品だった。」
平岩弓枝
女55歳
13 「荒唐無稽を百も承知の上で読者を虚構の世界へ誘い込もうとするものでしょう。この場合、(引用者中略)一ヶ所でも、こんなことは可笑しいと指摘されたら、作者のねらいは挫折してしまいます。」
井上ひさし
男53歳
17 「大人の観賞に充分耐えうるスパイ小説をつくりだそうとした(引用者中略)意気は壮とすべきであるが、しかし事件は結末に近づくにつれてわかりにくくなり、小説の謎が読者の実生活を侵犯してしまう。」「この作品にあまりなじめなかった。」
田辺聖子
女59歳
31 「私としては「長蛇を逸した」という気になった作品」「私はとてもよくできた娯楽小説だと思う。」「ただこれはごくデリケートな味わいの小説なので、いわば酒盗とかこのわた(原文傍点)とか、ホヤ(原文傍点)とかいったような、好きな人にはたまらなく好ましいが、受けつけない人にははな(原文傍点)からダメ、という所があるかもしれない。」「受賞作に比べて絶対に遜色なかったと思う。」
渡辺淳一
男54歳
10 「新聞記者が特ダネを追い詰めていく部分は迫力がある。しかし現実の日本の首相が、ある謀略に巻きこまれて遭難するという、ショッキングな事件を描きながら、いまのわれわれに、なんの不安も戦慄も感じさせないのでは、やはりもの足りない。」
五木寛之
男55歳
6 「冒頭の一節の読みづらさを通りすぎれば、これまでの氏のどの作品よりも力感のある長篇だ。」
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他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
西木正明
「ユーコン・ジャック」
小杉健治
『絆』
泡坂妻夫
「折鶴」
堀和久
『大久保長安』
赤瀬川隼
「オールド・ルーキー」等
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候補者・作品
赤瀬川隼男56歳×各選考委員 
「オールド・ルーキー」等
短篇集(一部)3篇 269
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男61歳
11 「赤瀬川さんならこれくらい書けて当然で、今回は題材に恵まれなかった。運不運もあるのだが、どうしても書きたいというテーマに取り組んでもらいたい。」
黒岩重吾
男63歳
31 「私は前二作(引用者注:「オールド・ルーキー」「梶川一行の犯罪」)に感銘を受けた。」「(引用者注:「オールド・ルーキー」の)テーマで受けた読後の爽快感は氏の才能の所産であろう。」「「梶川一行の犯罪」は、野球という夢を通して生きて行く男の影とロマンの一体化に魅力がある。」「受賞作の価値はあると今でも考えているが阿部氏との得点差が離れ過ぎていた。」
村上元三
男77歳
7 「野球がわからないわたしなので(引用者中略)興味が半減していた。作者の責任ではないが、野球に熱中できない選考委員もいる、と考えてほしい。」
陳舜臣
男63歳
12 「有能で安定した作家であり、人生の断片をさりげなく切り取ってみせる技は、心憎いばかりである。ただつっこむ直前に踏みとどまるかんじがする。それはそれであざやかなフォームだが、強さがあらわれにくいのではあるまいか。」
藤沢周平
男60歳
21 「「オールド・ルーキー」に感服した。全体に会話のテンポがよく、プロ野球の表裏に通じた作者の眼によって、大人の小説の雰囲気をそなえた佳篇になっている。」「野球選手本庄雄太を通して、人生とはあるいは人間とは何かを問いつめる結果になっていて、野球小説もここまで来るときわめて質の高いものになった。」「しかしほかの二篇は、(引用者中略)かなり見劣りするように思われた。」
平岩弓枝
女55歳
11 「いい作品だと思いました。特に私は「オールド・ルーキー」が好きで、もしかすると阿部牧郎さんの「それぞれの終楽章」と共に受賞するのではないかと思っていましたが、点が集まりませんでした。」
井上ひさし
男53歳
12 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「低くて謙虚な姿勢から諧謔をまじえて実人生をとらえる作風はかねてから傾倒するところ」
田辺聖子
女59歳
24 「ことに私は「梶原一行の犯罪」に魅力を感じた。野球に賭ける男の夢、などというのは、女の認識の埒外であるのに、私にはとても面白くよくわかった。それでいて、ほかの作品に目移りする、というのは、これはどういうことであろうか、破綻のなさが却って力を弱めるのであろうか、いや、小説というのは、(引用者中略)ほかの小説と並べて比較したとき、時々刻々に味が変り、色を変ずるところがある。」
渡辺淳一
男54歳
23 「三作ともほどよい仕上りである。しかしほどよい(原文傍点)という意味のなかには、甘さと調子のよさもある。なによりも気になるのは、人物を安易に動かしすぎることである。」「とくに不満なのは、男女が深い関係にいたる最も難しい部分を、すべて省略して話をすすめることである。安易な虚構の乱発が、かえって小説のリアリティを薄めてしまう。」
五木寛之
男55歳
11 「爽やかさの背後には、現実の苦さを知りつくした上で、なお小説を人生を慰藉するものにとどめようという、大人の抑制を感じる。」
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他の候補作
阿部牧郎
『それぞれの終楽章』
長尾宇迦
「幽霊記―小説・佐々木喜善」
西木正明
「ユーコン・ジャック」
小杉健治
『絆』
泡坂妻夫
「折鶴」
堀和久
『大久保長安』
三浦浩
『海外特派員―消されたスクープ』
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