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第99回
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昭和63年/1988年上半期
(昭和63年/1988年7月13日決定発表/『オール讀物』昭和63年/1988年10月号選評掲載)
選考委員  黒岩重吾
男64歳
陳舜臣
男64歳
村上元三
男78歳
田辺聖子
女60歳
藤沢周平
男60歳
山口瞳
男61歳
五木寛之
男55歳
平岩弓枝
女56歳
井上ひさし
男53歳
渡辺淳一
男54歳
選評総行数  113 70 116 150 126 78 143 100 137 89
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
西木正明 「凍れる瞳」等
287
男48歳
39 12 29 13 47 10 10 19 27 22
景山民夫 『遠い海から来たCOO』
524
男41歳
38 27 37 24 61 17 12 29 47 45
阿久悠 「喝采」等
170
男51歳
13 0 12 21 9 7 27 8 0 0
藤堂志津子 『マドンナのごとく』
286
女39歳
24 14 8 41 12 15 17 16 32 34
堀和久 『春日局』
588
男56歳
0 0 20 22 4 12 45 14 0 0
小松重男 「シベリヤ」
121
男57歳
0 0 8 8 14 7 10 10 20 0
西村望 『刃差しの街』
743
男62歳
0 10 5 21 5 10 13 6 0 0
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年10月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
黒岩重吾男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞作について 総行数113 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
39 「群を抜いており、」「(引用者注:「凍れる瞳」は)読後に北海道の雲が囁き合うような余韻が感じられたのは作者の人間への愛情のせいである。」「これだけストーリーがたくみだと、普通なら作為を感じるものだが、本作品にはそれがない。」「「端島の女」もなかなかの力作である。この小説の魅力はそこに育った土地と人間の関係が鎖を引きずるように重く描かれているところにある。」
景山民夫
男41歳
38 「私がこの小説に否定的だったのは小説が二つに割れ、後半が前半とは異質で崩れているからである。」「(引用者注:前半は)優れた描写が多く、恐竜の子、クーが最初に見た主人公の少年を母と思うあたりは感動的だ。」「フランスの特殊部隊の出現あたりからアクション小説になり、場所がら核実験が絡むだろうと予想していると案の定そうでがっかりした。後半は描写も前半の緻密さを失い、その落差は酷い。」
阿久悠
男51歳
13 「「隣のギャグはよく客食うギャグだ」を一読しその才筆に感嘆した。テレビ界の人物を抉る作者のメスは容赦がない。ただ達者過ぎてところどころ筆が走り過ぎている。」
藤堂志津子
女39歳
24 「受賞圏にあると考えて選考委員会に出席した。」「大人の童話として読むと不自然さが消えた。主人公の優しさの中に潜む女性のエゴや性愛描写、三角関係も納得出来る。」「ただ幾ら童話でも、二人の男性、唐沢と郁馬が同一人物に思えるのは本小説の欠点である。」
堀和久
男56歳
0  
小松重男
男57歳
0  
西村望
男62歳
0  
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陳舜臣
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平岩弓枝
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選考委員
陳舜臣男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
快作と安定作 総行数70 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
12 「ひとくちでいえば、しっかりした作品である。」「前回の候補作とのはばを考えると、西木氏の実力は着実に拡大安定にむかっているといえる。すでに実績を積みあげたのだから、これからは思い切った冒険も試みてほしいとおもう。」
景山民夫
男41歳
27 「現実を遠く超えた荒唐無稽が、シュルレアリズムとして、最も鋭く現実を再構築する例もあろう。(引用者中略)そんな創作のいろは(原文傍点)を思い起こさせた。」「なによりもおもしろく読めるのがこの作品の強みである。」「後半、冒険談になってから、密度がややゆるんだかんじがする。エネルギーの持続がこれからの景山氏の課題になるだろう。」
阿久悠
男51歳
0  
藤堂志津子
女39歳
14 「主人公以外の人間が生きていないのが惜しい。二人の恋人も、自衛隊の制服を着せられたゼンマイ人形のようである。おもうに主人公の唯我的発光源があまりにも強烈にすぎて、周辺がくらんでしまうのであろう。」
堀和久
男56歳
0  
小松重男
男57歳
0  
西村望
男62歳
10 「物語に迫力があり、ブルドーザーのように砂礫をはねとばして進む文章にも、独特の味がある。ただし、読む人によっては、それが文章の粗さと映るかもしれない。男性的なテーマを描き切ることのできる、貴重な才能であるとおもう。」
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選考委員
村上元三男78歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作を推す 総行数116 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
29 「(引用者注:「凍れる瞳」は)敗戦国の悲しさが、田原の婚約者の良子を通じて語られている。」「「端島の女」は、一人称で書いてあるので、終末で池原の死を知るところが、やや弱くなっているような気がする。しかし、両作とも取材が行きとどいているし、「ユーコン・ジャック」のときに感じた筆力が、すっかり安定している。」
景山民夫
男41歳
37 「一ばん面白かった。」「こういう奇想天外ともいうべき作品が、直木賞候補に選ばれたのを、大いに歓迎したい。」「ここには楽しい夢があるし、読みながら空想の世界に遊ばせてくれる。」「最後の核実験反対のグリーンピースの運動家やフランス艦船よりも、海中から長い首を出した数百頭のプレシオザウルスのほうが、はるかに威力があった、というところ、わたしには痛快だった。真実性がないという批評は、必要がない。」
阿久悠
男51歳
12 「才筆というのも、こういう場合は軽く見られる。」「もっとていねいに、文章を練ってもらいたかったが、それではこの作者の持味のテンポの早さが失われるかも知れない。この人が直木賞を獲得するのは遠いことではないだろう。」
藤堂志津子
女39歳
8 「読後感もよくないし、作者は純文学志向だろうと思う。恋愛をおもちゃにしている感じをうける。私という一人称の主人公も「青空」の女性たちも、表面を撫でているだけで真実性がない。」
堀和久
男56歳
20 「前作の「大久保長安」と同様、落胆した。」「実在した人物だけに、存在感がほしかった。」「将軍の継嗣問題、忠長を囲む幕閣の重臣の対立など、もっと突っこんで書くべきことがあるのに、ほかに筆力を費して、春日局がぼやけてしまっている。惜しい。」
小松重男
男57歳
8 「わたしの好きな作品だし、礼三もアキもよく描かれているが、作中の一筆を引用して、読後感に替える。――それにしても、アキがおとなしく汽車に乗せられて行ったわけが分からない――と。」
西村望
男62歳
5 「せっかく「刃差しの街」という題名ながら、この長篇の中に太地の町が少ししか出てこない。文章も、もっとていねいに書いてほしかった。」
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陳舜臣
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平岩弓枝
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選考委員
田辺聖子女60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選後評 総行数150 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
13 「うまい小説だというばかりでなく、「端島の女」にはほとんど感動さえした。〈女の一生〉物語の向うに現代日本の宿命的な転変が透けて見える。」「私は二作受賞、ということに不満ではない。」
景山民夫
男41歳
24 「一級の娯楽作品であると共に、文学的にすぐれたもの、という感じを、私は受けた。現代のメルヘンではあるが、構成も調査もよくゆきとどき、読者を眩惑させるたくましさをもつ。」「揉めに揉めたが、この作品、賞の権威をそこなわないと私は信ずる。」
阿久悠
男51歳
21 「私は面白く読み、入選圏内だと思ったが、意外に票が集まらず残念。」「道化という、最も現代的な存在の本質を衝いていて、饒舌体の小説なのに、無明のニヒルがただよう。現代の断面が鋭く切取られていて、私は共感した」
藤堂志津子
女39歳
41 「恋愛小説がもっと現われてほしいと思う私にとって、この作品を支持し、理解を示す選者が多くいられたことはまことに慶賀に堪えないのだが、私自身はやや不満であった。ヒロインはともかく、男たちが書きこまれていないので、魅力に乏しい。作品にみなぎるナルシシズムも気になる。」
堀和久
男56歳
22 「前作の「大久保長安」よりずっと人物造型にふくらみが出てきたが、どこか学者の書いた小説という当惑感をぬぐいきれない。それは作者の「あとがき」にこの小説の読みかた、ヒロインの位置づけが指定されているからではないか。」
小松重男
男57歳
8 「「古きよき時代の好読物……」といった感じ。このよさを否定しようとは思わないが、選をする立場に立たされると、どうしても新味のある作品の方に食指が動くのはとどめがたい。」
西村望
男62歳
21 「ユニークな視点で、面白い小説に、になるはずであったが、残念ながら小説に醗酵させる麹菌が不足というのか、読んでいて力の入れようのない気がして、とまどった。和歌山の話、それも漁民の会話に方言が全く用いられないのも淋しい。」「しかし鯨の出てこない鯨小説も珍しく、その点に好感を持った。」
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選考委員
藤沢周平男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
不安のない才能 総行数126 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
47 「一応受賞圏内の作品を考えて選考会にのぞんだ」「快いおどろきを感じた。」「欠点はあるものの、「凍れる瞳」、「端島の女」はともに人間の体温が感じられる情感ただよう作品になっていた。」「万全の本命作品とは言えなかったが、才能という点では際立っていた。」
景山民夫
男41歳
61 「一応受賞圏内の作品を考えて選考会にのぞんだ」「第三章まではすばらしい出来。ことに幻想的なプロローグはまれにみるうつくしさで、今度の直木賞はこの人で決まりと思わせるものだった。」「ところがこのあとにはじまる活劇調の展開は、よく考えられているものの所詮底の浅い立ち回りの印象をぬぐえないものだった。」「万全の本命作品とは言えなかったが、才能という点では際立っていた。」
阿久悠
男51歳
9 「「喝采」は、わがままで落ち目のスターと献身的なマネージャーという図式が古く、私は「隣の客は……」の八方破れのコメディアンの方が書けていると思った。しかしこちらも最後の詰めに不満があった。」
藤堂志津子
女39歳
12 「新快楽主義といったような主張もあって新鮮だった。ただ二人の自衛官の描き方には、いくら観念的な小説だとしても、受け入れがたいいかがわしさがあった。」
堀和久
男56歳
4 「会話の部分が粗雑で、また朝廷と幕府の虹のかけ橋という設定も生きていなかった。」
小松重男
男57歳
14 「一応受賞圏内の作品を考えて選考会にのぞんだ」「とぼけたような文章で書かれた人物がみなおもしろく、また運転手と女郎の純愛をあかるく描き切って、読後に余韻が残った。これはこれで一篇の佳作と思ったけれども、支持が少なかった。」
西村望
男62歳
5 「第八章になって手に汗にぎるドラマが展開するけれども、そこまでの経過が平板過ぎた。」
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選考委員
山口瞳男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
景山民夫の才能 総行数78 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
10 「事実の面白さはあっても小説的な感動を受けなかった。私の好みで言えば、破綻はあっても前回候補の「ユーコン・ジャック」のほうが好きだ。いずれにしても受賞作は西木さんの作品としてベストのものだとは思われない。」
景山民夫
男41歳
17 「文章がよかった。特に恐龍がCOOを産むプロローグが圧巻で、これから何が起るのかという期待を抱かせる上々の書きだしになっている。」「近来になくワクワクして読んだが、これは大変な才能だと思う。強硬な反対意見があったが、私は景山民夫さんの才能に賭けてみる側に立った。」
阿久悠
男51歳
7 「実力は誰でも知っていて、今回の候補作にも巧い描写がふんだんにあるのだが、全体として魅力に乏しい。これで受賞したら阿久悠さんにとって不名誉なことになると思った。」
藤堂志津子
女39歳
15 「ハッキリ言って私にはわからない。こういう題名をつける神経も理解できない。いい気なもんだと思ってしまう。しかし、この作者には何かヒッカカルものを感ずる。もしかしたら大化けに化けるのではないかという予感がある。」
堀和久
男56歳
12 「何か新しい歴史の解釈とか発見とかがあるとは思われなかった。全く魅力のない家光を三代目にするために苦労する話であるが、こうなると春日局は権力欲だけの女性になってしまう。」「但し前回の「大久保長安」に較べると読み易くはなっている。」
小松重男
男57歳
7 「まことに哀れな話だが、文章が流れてしまって、感動から遠くなる憾みがあった。」
西村望
男62歳
10 「何を書いても卑しくならないところが好きだ。しかし、この作品ではアテコミの少いのが欠点になってしまって、何を書きたかったのかが判然とせず、せっかくの力作の味が薄くなってしまっている。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
村上元三
田辺聖子
藤沢周平
五木寛之
平岩弓枝
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「遠い海から──」を推す 総行数143 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
10 「私はいまひとつ物足りなさを感じて、強く推さなかった。これも前回の「ユーコン・ジャック」のほうに魅力をおぼえるせいである。」
景山民夫
男41歳
12 「強く推した。この作品に対して、賛否がまっぷたつに分かれたところに、新作家登場のエネルギーを感じたからだ。」
阿久悠
男51歳
27 「現代の作詞家としてすでに位人臣をきわめたといっていい阿久氏だけに、つい読む側も完成度の高い大傑作を期待してしまうというのが、この作家の不幸かもしれない。」「前に読んだ「瀬戸内少年野球団」と比較して、今回の二作は阿久氏の手すさび(原文傍点)といった印象が強かった。」
藤堂志津子
女39歳
17 「印象的な作品だった。」「一般の見る目と逆かもしれないが、私はここに出てくる人物や、描写にローカルな味を強く感じた。」「この女性作家のどこか「鈍感」な才能に、私はひそかに期待している。」
堀和久
男56歳
45 「この小説の美点は、終始一貫して呼吸の乱れぬ点ではないかと思う。」「大河小説や長篇を書く作家の大事な資質の一つは、この常にリズムの崩れない文体ではあるまいか。」「しかし、これほど力のある作家なのに、いつも物足りなく感ずるのはなぜだろうと考えてみると、時代や人間を見る目に、どことなく当世風の安易さがあるような気がしないでもない。」
小松重男
男57歳
10 「なつかしい庶民の世界を描いた佳作である。」「しかし、いかにもつつまし過ぎる。選考の場にさらすことさえためらわれるような、そんな作品だった。」
西村望
男62歳
13 「西村氏の小説の魅力は、荒々しく激しいなかに、いつも桔梗の花が一輪咲いているような抒情があり、私はそこが好きだった。以前の「薄化粧」とくらべるのはフェアでないかもしれないが、今回はあの作品ほど惹かれるものがなかったような気がする。」
  「候補作品として二作を列挙する主催者側の意図が、いつも作家にとってマイナスの作用をおよぼしているような気がする。」「「無名作家」もしくは「無名に近い新人作家」という、菊池寛の直木賞創設の文章に私は今もこだわっている。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
村上元三
田辺聖子
藤沢周平
山口瞳
平岩弓枝
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
平岩弓枝女56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人間を描く技 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
19 「西木さんの作品は以前から好きだったが、着想の面白さに対して平仄の合わない部分があってまことに惜しいと思っていた。今回の二作品にはそれがなかった。」「委員の中に、西木さんの前回の候補作品のほうがよいというような声もあったが、私はむしろ、けれんのない今回の作品が西木さんの本領であって欲しいと思っている。」
景山民夫
男41歳
29 「核というシリアスな問題を背景においているだけに、国によっては小説だからと笑ってすませてくれないかも知れない。そのことはさておいても、後半、殊に登場人物が都合よく出来すぎているし、構成も荒っぽい。」「メルヘンであれ、冒険であれ、小説は人間を描くことだと私は思っているので、この作品を推す気持にはなれなかった。」
阿久悠
男51歳
8 「読者が、作中の人物を実在人物の誰彼に重ね合せて楽しく読むのだろうと思う。洒落た短篇だが、候補作品としては少し軽かったようだ。」
藤堂志津子
女39歳
16 「女一人に男二人の関係が乾いた筆致で書けていて面白いと感じた。」「現代の或る女の感覚が作品の中で生きている。」「それにしても「青空」という過去の作品を候補作に並べられたのは、藤堂さんにとって、お気の毒なことだった。」
堀和久
男56歳
14 「この書きにくい主人公をここまでにまとめた筆力は評価されてもよいと思った。が、もっと作者の好きなように春日局像を創り上げてもらいたかった。」
小松重男
男57歳
10 「この時代に生きている人々が各々、よく描けていて面白く読んだ。古いといわれるとすれば、作者の目に、今が欲しいということなのだろうか。」
西村望
男62歳
6 「作者の書きたいこと、書かねばならないことへ作品がしぼり切れていないために、全体が散漫な印象になってしまった。」
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村上元三
田辺聖子
藤沢周平
山口瞳
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
井上ひさし男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読み手のよろこび 総行数137 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
27 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「小説といえど社会の函数であるとする作者の覚悟に心を打たれた。」「とくに『端島の女』の仕掛けはみごと! のひとことに尽きる。」「詩情もあり、この作家はやがて現代日本の叙事詩を書くかもしれない。」
景山民夫
男41歳
47 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「もっとも感心した」「文体の変化と呼応して、物語の質がまた変る。」「チャランポランに書かれているように見えて、じつは細心の計算がなされているようである。」「くり返しになるが、私は景山氏の、のびのびとした素質のよさに、ほんとうに感心してしまった。」
阿久悠
男51歳
0  
藤堂志津子
女39歳
32 「文章が端正で彫が深く格調高いように見えて、そのじつ甘いと思う。また男性像の造型がのっぺりしていて、時として彼等は人形のようにみえる。」「この作品を書かずにいられなかった動機のひとつは、疑いもなく自己愛だと思うが、それをも作者と共有することはとてもできなかった。」「見るべきは女性像の造型で、傍役たちがみごとである。」
堀和久
男56歳
0  
小松重男
男57歳
20 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「コツコツ働くものは装置をもった人間どもに結局は敗れるが、しかしそれでもコツコツ働くしかないという庶民の歌には泣かされた。」「私はとても好きだ。」「「話が古い」という評言もあり、その意味もわかるが、なんだか惜しい。」
西村望
男62歳
0  
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陳舜臣
村上元三
田辺聖子
藤沢周平
山口瞳
五木寛之
平岩弓枝
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選考委員
渡辺淳一男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
藤堂氏を推す 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明
男48歳
22 「最初から反対意見がなかったように、無難に書かれた小説らしい小説であった。」「わたしの好みからいえば、「端島の女」のほうが、ひたひたと地べたを歩くような女の生きざまが滲んできて心を惹かれたが、いささか盛り上りに欠ける。二作とも、いま一つの感はあるが、手堅い人であり、受賞に異論はない。」
景山民夫
男41歳
45 「景山民夫氏の才能を、わたしは否定する気はない。それどころか、大変な才気だと思うが、レポーターかプロデューサーの才で、小説家の才能とは少し違うようである。」「これを小説として読むときわめて退屈で、肝腎の人間が少しも生きていない。」「最終的に訴えようとする核実験反対や環境保護の重要さもありきたりである。」
阿久悠
男51歳
0  
藤堂志津子
女39歳
34 「(引用者注:最終的に残った西木、景山、藤堂のうち)最も票の少なかった藤堂志津子氏の「マドンナのごとく」を推した。この作品は一見、軽い風俗を描いているようで、読みすすむうちに、男女というよりは、オスとメスの孤独と虚ろさが浮きぼりにされてくる。」「新しい才能の出現であった。」「この種の小説を平板なリアリズムだけから批評するのは、酷というものであろう。」
堀和久
男56歳
0  
小松重男
男57歳
0  
西村望
男62歳
0  
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
村上元三
田辺聖子
藤沢周平
山口瞳
五木寛之
平岩弓枝
井上ひさし
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受賞者・作品
西木正明男48歳×各選考委員 
「凍れる瞳」等
短篇集(一部)2篇 287
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
39 「群を抜いており、」「(引用者注:「凍れる瞳」は)読後に北海道の雲が囁き合うような余韻が感じられたのは作者の人間への愛情のせいである。」「これだけストーリーがたくみだと、普通なら作為を感じるものだが、本作品にはそれがない。」「「端島の女」もなかなかの力作である。この小説の魅力はそこに育った土地と人間の関係が鎖を引きずるように重く描かれているところにある。」
陳舜臣
男64歳
12 「ひとくちでいえば、しっかりした作品である。」「前回の候補作とのはばを考えると、西木氏の実力は着実に拡大安定にむかっているといえる。すでに実績を積みあげたのだから、これからは思い切った冒険も試みてほしいとおもう。」
村上元三
男78歳
29 「(引用者注:「凍れる瞳」は)敗戦国の悲しさが、田原の婚約者の良子を通じて語られている。」「「端島の女」は、一人称で書いてあるので、終末で池原の死を知るところが、やや弱くなっているような気がする。しかし、両作とも取材が行きとどいているし、「ユーコン・ジャック」のときに感じた筆力が、すっかり安定している。」
田辺聖子
女60歳
13 「うまい小説だというばかりでなく、「端島の女」にはほとんど感動さえした。〈女の一生〉物語の向うに現代日本の宿命的な転変が透けて見える。」「私は二作受賞、ということに不満ではない。」
藤沢周平
男60歳
47 「一応受賞圏内の作品を考えて選考会にのぞんだ」「快いおどろきを感じた。」「欠点はあるものの、「凍れる瞳」、「端島の女」はともに人間の体温が感じられる情感ただよう作品になっていた。」「万全の本命作品とは言えなかったが、才能という点では際立っていた。」
山口瞳
男61歳
10 「事実の面白さはあっても小説的な感動を受けなかった。私の好みで言えば、破綻はあっても前回候補の「ユーコン・ジャック」のほうが好きだ。いずれにしても受賞作は西木さんの作品としてベストのものだとは思われない。」
五木寛之
男55歳
10 「私はいまひとつ物足りなさを感じて、強く推さなかった。これも前回の「ユーコン・ジャック」のほうに魅力をおぼえるせいである。」
平岩弓枝
女56歳
19 「西木さんの作品は以前から好きだったが、着想の面白さに対して平仄の合わない部分があってまことに惜しいと思っていた。今回の二作品にはそれがなかった。」「委員の中に、西木さんの前回の候補作品のほうがよいというような声もあったが、私はむしろ、けれんのない今回の作品が西木さんの本領であって欲しいと思っている。」
井上ひさし
男53歳
27 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「小説といえど社会の函数であるとする作者の覚悟に心を打たれた。」「とくに『端島の女』の仕掛けはみごと! のひとことに尽きる。」「詩情もあり、この作家はやがて現代日本の叙事詩を書くかもしれない。」
渡辺淳一
男54歳
22 「最初から反対意見がなかったように、無難に書かれた小説らしい小説であった。」「わたしの好みからいえば、「端島の女」のほうが、ひたひたと地べたを歩くような女の生きざまが滲んできて心を惹かれたが、いささか盛り上りに欠ける。二作とも、いま一つの感はあるが、手堅い人であり、受賞に異論はない。」
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他の候補作
景山民夫
『遠い海から来たCOO』
阿久悠
「喝采」等
藤堂志津子
『マドンナのごとく』
堀和久
『春日局』
小松重男
「シベリヤ」
西村望
『刃差しの街』
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受賞者・作品
景山民夫男41歳×各選考委員 
『遠い海から来たCOO』
長篇 524
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
38 「私がこの小説に否定的だったのは小説が二つに割れ、後半が前半とは異質で崩れているからである。」「(引用者注:前半は)優れた描写が多く、恐竜の子、クーが最初に見た主人公の少年を母と思うあたりは感動的だ。」「フランスの特殊部隊の出現あたりからアクション小説になり、場所がら核実験が絡むだろうと予想していると案の定そうでがっかりした。後半は描写も前半の緻密さを失い、その落差は酷い。」
陳舜臣
男64歳
27 「現実を遠く超えた荒唐無稽が、シュルレアリズムとして、最も鋭く現実を再構築する例もあろう。(引用者中略)そんな創作のいろは(原文傍点)を思い起こさせた。」「なによりもおもしろく読めるのがこの作品の強みである。」「後半、冒険談になってから、密度がややゆるんだかんじがする。エネルギーの持続がこれからの景山氏の課題になるだろう。」
村上元三
男78歳
37 「一ばん面白かった。」「こういう奇想天外ともいうべき作品が、直木賞候補に選ばれたのを、大いに歓迎したい。」「ここには楽しい夢があるし、読みながら空想の世界に遊ばせてくれる。」「最後の核実験反対のグリーンピースの運動家やフランス艦船よりも、海中から長い首を出した数百頭のプレシオザウルスのほうが、はるかに威力があった、というところ、わたしには痛快だった。真実性がないという批評は、必要がない。」
田辺聖子
女60歳
24 「一級の娯楽作品であると共に、文学的にすぐれたもの、という感じを、私は受けた。現代のメルヘンではあるが、構成も調査もよくゆきとどき、読者を眩惑させるたくましさをもつ。」「揉めに揉めたが、この作品、賞の権威をそこなわないと私は信ずる。」
藤沢周平
男60歳
61 「一応受賞圏内の作品を考えて選考会にのぞんだ」「第三章まではすばらしい出来。ことに幻想的なプロローグはまれにみるうつくしさで、今度の直木賞はこの人で決まりと思わせるものだった。」「ところがこのあとにはじまる活劇調の展開は、よく考えられているものの所詮底の浅い立ち回りの印象をぬぐえないものだった。」「万全の本命作品とは言えなかったが、才能という点では際立っていた。」
山口瞳
男61歳
17 「文章がよかった。特に恐龍がCOOを産むプロローグが圧巻で、これから何が起るのかという期待を抱かせる上々の書きだしになっている。」「近来になくワクワクして読んだが、これは大変な才能だと思う。強硬な反対意見があったが、私は景山民夫さんの才能に賭けてみる側に立った。」
五木寛之
男55歳
12 「強く推した。この作品に対して、賛否がまっぷたつに分かれたところに、新作家登場のエネルギーを感じたからだ。」
平岩弓枝
女56歳
29 「核というシリアスな問題を背景においているだけに、国によっては小説だからと笑ってすませてくれないかも知れない。そのことはさておいても、後半、殊に登場人物が都合よく出来すぎているし、構成も荒っぽい。」「メルヘンであれ、冒険であれ、小説は人間を描くことだと私は思っているので、この作品を推す気持にはなれなかった。」
井上ひさし
男53歳
47 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「もっとも感心した」「文体の変化と呼応して、物語の質がまた変る。」「チャランポランに書かれているように見えて、じつは細心の計算がなされているようである。」「くり返しになるが、私は景山氏の、のびのびとした素質のよさに、ほんとうに感心してしまった。」
渡辺淳一
男54歳
45 「景山民夫氏の才能を、わたしは否定する気はない。それどころか、大変な才気だと思うが、レポーターかプロデューサーの才で、小説家の才能とは少し違うようである。」「これを小説として読むときわめて退屈で、肝腎の人間が少しも生きていない。」「最終的に訴えようとする核実験反対や環境保護の重要さもありきたりである。」
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他の候補作
西木正明
「凍れる瞳」等
阿久悠
「喝采」等
藤堂志津子
『マドンナのごとく』
堀和久
『春日局』
小松重男
「シベリヤ」
西村望
『刃差しの街』
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候補者・作品
阿久悠男51歳×各選考委員 
「喝采」等
短篇集(一部)2篇 170
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
13 「「隣のギャグはよく客食うギャグだ」を一読しその才筆に感嘆した。テレビ界の人物を抉る作者のメスは容赦がない。ただ達者過ぎてところどころ筆が走り過ぎている。」
陳舜臣
男64歳
0  
村上元三
男78歳
12 「才筆というのも、こういう場合は軽く見られる。」「もっとていねいに、文章を練ってもらいたかったが、それではこの作者の持味のテンポの早さが失われるかも知れない。この人が直木賞を獲得するのは遠いことではないだろう。」
田辺聖子
女60歳
21 「私は面白く読み、入選圏内だと思ったが、意外に票が集まらず残念。」「道化という、最も現代的な存在の本質を衝いていて、饒舌体の小説なのに、無明のニヒルがただよう。現代の断面が鋭く切取られていて、私は共感した」
藤沢周平
男60歳
9 「「喝采」は、わがままで落ち目のスターと献身的なマネージャーという図式が古く、私は「隣の客は……」の八方破れのコメディアンの方が書けていると思った。しかしこちらも最後の詰めに不満があった。」
山口瞳
男61歳
7 「実力は誰でも知っていて、今回の候補作にも巧い描写がふんだんにあるのだが、全体として魅力に乏しい。これで受賞したら阿久悠さんにとって不名誉なことになると思った。」
五木寛之
男55歳
27 「現代の作詞家としてすでに位人臣をきわめたといっていい阿久氏だけに、つい読む側も完成度の高い大傑作を期待してしまうというのが、この作家の不幸かもしれない。」「前に読んだ「瀬戸内少年野球団」と比較して、今回の二作は阿久氏の手すさび(原文傍点)といった印象が強かった。」
平岩弓枝
女56歳
8 「読者が、作中の人物を実在人物の誰彼に重ね合せて楽しく読むのだろうと思う。洒落た短篇だが、候補作品としては少し軽かったようだ。」
井上ひさし
男53歳
0  
渡辺淳一
男54歳
0  
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他の候補作
西木正明
「凍れる瞳」等
景山民夫
『遠い海から来たCOO』
藤堂志津子
『マドンナのごとく』
堀和久
『春日局』
小松重男
「シベリヤ」
西村望
『刃差しの街』
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候補者・作品
藤堂志津子女39歳×各選考委員 
『マドンナのごとく』
中篇集2篇 286
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
24 「受賞圏にあると考えて選考委員会に出席した。」「大人の童話として読むと不自然さが消えた。主人公の優しさの中に潜む女性のエゴや性愛描写、三角関係も納得出来る。」「ただ幾ら童話でも、二人の男性、唐沢と郁馬が同一人物に思えるのは本小説の欠点である。」
陳舜臣
男64歳
14 「主人公以外の人間が生きていないのが惜しい。二人の恋人も、自衛隊の制服を着せられたゼンマイ人形のようである。おもうに主人公の唯我的発光源があまりにも強烈にすぎて、周辺がくらんでしまうのであろう。」
村上元三
男78歳
8 「読後感もよくないし、作者は純文学志向だろうと思う。恋愛をおもちゃにしている感じをうける。私という一人称の主人公も「青空」の女性たちも、表面を撫でているだけで真実性がない。」
田辺聖子
女60歳
41 「恋愛小説がもっと現われてほしいと思う私にとって、この作品を支持し、理解を示す選者が多くいられたことはまことに慶賀に堪えないのだが、私自身はやや不満であった。ヒロインはともかく、男たちが書きこまれていないので、魅力に乏しい。作品にみなぎるナルシシズムも気になる。」
藤沢周平
男60歳
12 「新快楽主義といったような主張もあって新鮮だった。ただ二人の自衛官の描き方には、いくら観念的な小説だとしても、受け入れがたいいかがわしさがあった。」
山口瞳
男61歳
15 「ハッキリ言って私にはわからない。こういう題名をつける神経も理解できない。いい気なもんだと思ってしまう。しかし、この作者には何かヒッカカルものを感ずる。もしかしたら大化けに化けるのではないかという予感がある。」
五木寛之
男55歳
17 「印象的な作品だった。」「一般の見る目と逆かもしれないが、私はここに出てくる人物や、描写にローカルな味を強く感じた。」「この女性作家のどこか「鈍感」な才能に、私はひそかに期待している。」
平岩弓枝
女56歳
16 「女一人に男二人の関係が乾いた筆致で書けていて面白いと感じた。」「現代の或る女の感覚が作品の中で生きている。」「それにしても「青空」という過去の作品を候補作に並べられたのは、藤堂さんにとって、お気の毒なことだった。」
井上ひさし
男53歳
32 「文章が端正で彫が深く格調高いように見えて、そのじつ甘いと思う。また男性像の造型がのっぺりしていて、時として彼等は人形のようにみえる。」「この作品を書かずにいられなかった動機のひとつは、疑いもなく自己愛だと思うが、それをも作者と共有することはとてもできなかった。」「見るべきは女性像の造型で、傍役たちがみごとである。」
渡辺淳一
男54歳
34 「(引用者注:最終的に残った西木、景山、藤堂のうち)最も票の少なかった藤堂志津子氏の「マドンナのごとく」を推した。この作品は一見、軽い風俗を描いているようで、読みすすむうちに、男女というよりは、オスとメスの孤独と虚ろさが浮きぼりにされてくる。」「新しい才能の出現であった。」「この種の小説を平板なリアリズムだけから批評するのは、酷というものであろう。」
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他の候補作
西木正明
「凍れる瞳」等
景山民夫
『遠い海から来たCOO』
阿久悠
「喝采」等
堀和久
『春日局』
小松重男
「シベリヤ」
西村望
『刃差しの街』
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候補者・作品
堀和久男56歳×各選考委員 
『春日局』
長篇 588
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
0  
陳舜臣
男64歳
0  
村上元三
男78歳
20 「前作の「大久保長安」と同様、落胆した。」「実在した人物だけに、存在感がほしかった。」「将軍の継嗣問題、忠長を囲む幕閣の重臣の対立など、もっと突っこんで書くべきことがあるのに、ほかに筆力を費して、春日局がぼやけてしまっている。惜しい。」
田辺聖子
女60歳
22 「前作の「大久保長安」よりずっと人物造型にふくらみが出てきたが、どこか学者の書いた小説という当惑感をぬぐいきれない。それは作者の「あとがき」にこの小説の読みかた、ヒロインの位置づけが指定されているからではないか。」
藤沢周平
男60歳
4 「会話の部分が粗雑で、また朝廷と幕府の虹のかけ橋という設定も生きていなかった。」
山口瞳
男61歳
12 「何か新しい歴史の解釈とか発見とかがあるとは思われなかった。全く魅力のない家光を三代目にするために苦労する話であるが、こうなると春日局は権力欲だけの女性になってしまう。」「但し前回の「大久保長安」に較べると読み易くはなっている。」
五木寛之
男55歳
45 「この小説の美点は、終始一貫して呼吸の乱れぬ点ではないかと思う。」「大河小説や長篇を書く作家の大事な資質の一つは、この常にリズムの崩れない文体ではあるまいか。」「しかし、これほど力のある作家なのに、いつも物足りなく感ずるのはなぜだろうと考えてみると、時代や人間を見る目に、どことなく当世風の安易さがあるような気がしないでもない。」
平岩弓枝
女56歳
14 「この書きにくい主人公をここまでにまとめた筆力は評価されてもよいと思った。が、もっと作者の好きなように春日局像を創り上げてもらいたかった。」
井上ひさし
男53歳
0  
渡辺淳一
男54歳
0  
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他の候補作
西木正明
「凍れる瞳」等
景山民夫
『遠い海から来たCOO』
阿久悠
「喝采」等
藤堂志津子
『マドンナのごとく』
小松重男
「シベリヤ」
西村望
『刃差しの街』
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候補者・作品
小松重男男57歳×各選考委員 
「シベリヤ」
短篇 121
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
0  
陳舜臣
男64歳
0  
村上元三
男78歳
8 「わたしの好きな作品だし、礼三もアキもよく描かれているが、作中の一筆を引用して、読後感に替える。――それにしても、アキがおとなしく汽車に乗せられて行ったわけが分からない――と。」
田辺聖子
女60歳
8 「「古きよき時代の好読物……」といった感じ。このよさを否定しようとは思わないが、選をする立場に立たされると、どうしても新味のある作品の方に食指が動くのはとどめがたい。」
藤沢周平
男60歳
14 「一応受賞圏内の作品を考えて選考会にのぞんだ」「とぼけたような文章で書かれた人物がみなおもしろく、また運転手と女郎の純愛をあかるく描き切って、読後に余韻が残った。これはこれで一篇の佳作と思ったけれども、支持が少なかった。」
山口瞳
男61歳
7 「まことに哀れな話だが、文章が流れてしまって、感動から遠くなる憾みがあった。」
五木寛之
男55歳
10 「なつかしい庶民の世界を描いた佳作である。」「しかし、いかにもつつまし過ぎる。選考の場にさらすことさえためらわれるような、そんな作品だった。」
平岩弓枝
女56歳
10 「この時代に生きている人々が各々、よく描けていて面白く読んだ。古いといわれるとすれば、作者の目に、今が欲しいということなのだろうか。」
井上ひさし
男53歳
20 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「コツコツ働くものは装置をもった人間どもに結局は敗れるが、しかしそれでもコツコツ働くしかないという庶民の歌には泣かされた。」「私はとても好きだ。」「「話が古い」という評言もあり、その意味もわかるが、なんだか惜しい。」
渡辺淳一
男54歳
0  
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他の候補作
西木正明
「凍れる瞳」等
景山民夫
『遠い海から来たCOO』
阿久悠
「喝采」等
藤堂志津子
『マドンナのごとく』
堀和久
『春日局』
西村望
『刃差しの街』
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候補者・作品
西村望男62歳×各選考委員 
『刃差しの街』
長篇 743
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男64歳
0  
陳舜臣
男64歳
10 「物語に迫力があり、ブルドーザーのように砂礫をはねとばして進む文章にも、独特の味がある。ただし、読む人によっては、それが文章の粗さと映るかもしれない。男性的なテーマを描き切ることのできる、貴重な才能であるとおもう。」
村上元三
男78歳
5 「せっかく「刃差しの街」という題名ながら、この長篇の中に太地の町が少ししか出てこない。文章も、もっとていねいに書いてほしかった。」
田辺聖子
女60歳
21 「ユニークな視点で、面白い小説に、になるはずであったが、残念ながら小説に醗酵させる麹菌が不足というのか、読んでいて力の入れようのない気がして、とまどった。和歌山の話、それも漁民の会話に方言が全く用いられないのも淋しい。」「しかし鯨の出てこない鯨小説も珍しく、その点に好感を持った。」
藤沢周平
男60歳
5 「第八章になって手に汗にぎるドラマが展開するけれども、そこまでの経過が平板過ぎた。」
山口瞳
男61歳
10 「何を書いても卑しくならないところが好きだ。しかし、この作品ではアテコミの少いのが欠点になってしまって、何を書きたかったのかが判然とせず、せっかくの力作の味が薄くなってしまっている。」
五木寛之
男55歳
13 「西村氏の小説の魅力は、荒々しく激しいなかに、いつも桔梗の花が一輪咲いているような抒情があり、私はそこが好きだった。以前の「薄化粧」とくらべるのはフェアでないかもしれないが、今回はあの作品ほど惹かれるものがなかったような気がする。」
平岩弓枝
女56歳
6 「作者の書きたいこと、書かねばならないことへ作品がしぼり切れていないために、全体が散漫な印象になってしまった。」
井上ひさし
男53歳
0  
渡辺淳一
男54歳
0  
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他の候補作
西木正明
「凍れる瞳」等
景山民夫
『遠い海から来たCOO』
阿久悠
「喝采」等
藤堂志津子
『マドンナのごとく』
堀和久
『春日局』
小松重男
「シベリヤ」
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