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第102回
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平成1年/1989年下半期
(平成2年/1990年1月16日決定発表/『オール讀物』平成2年/1990年3月号選評掲載)
選考委員  黒岩重吾
男65歳
陳舜臣
男65歳
山口瞳
男63歳
田辺聖子
女61歳
平岩弓枝
女57歳
藤沢周平
男62歳
五木寛之
男57歳
井上ひさし
男55歳
渡辺淳一
男56歳
村上元三
男79歳
選評総行数  101 114 164 155 108 144 148 117 89  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
星川清司 「小伝抄」
156
男68歳
44 11 36 16 27 18 12 26 16    
原尞 『私が殺した少女』
710
男43歳
42 15 51 43 41 37 30 17 12    
椎名誠 「ハマボウフウの花や風」
102
男45歳
7 20 12 8 13 33 21 23 22    
清水義範 『金鯱の夢』
519
男42歳
10 37 12 31 15 12 47 25 16    
酒見賢一 「後宮小説」
416
男26歳
0 26 36 53 12 19 41 15 14    
                  欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
黒岩重吾男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
余韻と面白さ 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
44 「読み終って私は、こういう小説を待っていたような気がした。」「本小説に魅力を与えているのは権八の存在である。」「権八の想いがあればこそ、私は色塗れの小伝に、仄かな香りと哀しみを感じることが出来た。」
原尞
男43歳
42 「結末部分にやや難があり、授賞が危ぶまれたが、選考委員の意見が割れた結果、(引用者注:「小伝抄」との)二作授賞ということになった。」「久し振りで、優れた推理サスペンス小説を読んだ思いである。」「一部の選考委員から、あの事故の場合、母親が実の娘を殺すことは絶対あり得ない、という反論が出た。尤もな反論である。」「原氏の授賞に賛成したが、小説ではなく現実の出来事なら、矢張り母親は救急車を呼ぶに違いない。」
椎名誠
男45歳
7 「抒情性豊かな作品だが、今迄、数え切れないほどの既成作家が、このような作品を書いて来た。それに群を抜くほどの作品でもない。」
清水義範
男42歳
10 「すべてを尾張に結びつけているせいか、これまでの面白味が稀薄になった。尾張弁を褒める選考委員は多かったが、方言は作品の彩りに過ぎない。」
酒見賢一
男26歳
0  
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他の選考委員
陳舜臣
山口瞳
田辺聖子
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
陳舜臣男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
困ったこと 総行数114 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
11 「うまい作品である。文章と話し口のうまさのわりには、感銘度が浅かった。小伝という女性の燃えるすがたを期待しすぎたかもしれない。この作品はむしろ「権八抄」として読むべきであろう。」
原尞
男43歳
15 「日本のハードボイルドも、やっとこのような作品をうむようになったかという感慨が先に立った。うれしい作品である。」「登場人物を含めて、もうすこし刈り込めたいのではないか、という不満もないではないが、近年、出色のミステリーであることにまちがいはない。」「瑕瑾の謗りを気にしないで、我が道を行ってほしい。」
椎名誠
男45歳
20 「多くの作家がなんども書いたテーマである。」「おなじテーマをえらぶ以上、これまでの類似のパターンの諸作を、全体的でなくとも、どこかでこえていなければならない。この作品を、積極的に否定する意見はきわめてすくなかったが、積極的に肯定する意見もきわめてすくなかった。」
清水義範
男42歳
37 「これまでこの種のif小説をいくつか読んだことがある。それにくらべると、この作品は水準に達しているようにおもう。」「架空の物語とはいえ、二百数十年の「史実」があり、それに沿って、裏返し作業がおこなわれている。とうぜん「史実」についての読者の知識に大幅に頼っているが、それだけに趣向が多すぎたきらいがある。」「この人には、才能にまかせて、大いに書いてほしいというほかない。」
酒見賢一
男26歳
26 「ほとんど作者の頭脳からうみ出された物語で、それに敬意を表したいとおもう。」「純架空物語はすくなくないが、「後宮小説」はそれに比肩しうる佳作であろう。登場人物の性格が、あざやかに書き分けられ、最後まで破綻がないのはみごとである。」
  「このたびの候補作で、これは困る、という作品は一作もなく、そのために選考にあたって、こちらが困ってしまったのが正直なところである。」
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他の選考委員
黒岩重吾
山口瞳
田辺聖子
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
山口瞳男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
自分の文体 総行数164 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
36 「私は買わない。小伝は魅力のある女性だということだが、私には恣意的で異常な淫乱女であるとしか思えない。これに従う醜悪な下僕の権八という設定も陳腐だ。」「私は星川さんは力のある作家だと思っているが、同じシナリオライターで隆慶一郎さんが二度落選して星川さんが一度で受賞したことに運命的なものを感ずる。」
原尞
男43歳
51 「作者は、文章はレイモンド・チャンドラーの真似だと言っているようだが真似でもなんでもいい。それを自分の文体にしてしまっているのが素敵だ。」「この小説のストーリーには決定的な欠陥がある。(引用者中略)これが推理小説の限界とか、推理だから仕方がないという意見もあったが、それなら、途中からでも推理小説を抛棄すべきだと私なんかは考える。」
椎名誠
男45歳
12 「この作に限って言えば、開高健流に言ってキラリと光る一行がない。」「風景描写を丹念に書き込んでいる割には浜風が吹いてこない、湿った砂が匂ってこない。残念だ。」
清水義範
男42歳
12 「名古屋を礼讃するのはいいが、あの押しの強さ、田舎臭さが全面に広がってこないと味の薄い作品になってしまう。」
酒見賢一
男26歳
36 「私が上位だと思ったのは、まず第一に酒見賢一さんの『後宮小説』である。」「すらすらと面白く読めるという点でも一番だった。」「この作者は二十五、六歳でこれを書いたわけで最近の候補作家のなかでは極端に若い。この若さに賭けてみたいという気持も強かった。」
  「ざっと一渡り予選通過作品を読んだとき、該当作ナシだと思った。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
田辺聖子
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
田辺聖子女61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
開明的になった直木賞 総行数155 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
16 「絢爛たる文章と素材のわりに、ヒロインの印象がうすく、どこかもどかしいが、これは読み手が女だからだろうか。小伝の「いい女」ぶりが、もひとつよく分らない。」「ただ、凝りぬいた文体と口吻に、昨今の安易なつくりの小説にない、作者の情熱・執念が感じられ、私はそれを珍重して、この作にも一票を献ずることにした。」
原尞
男43歳
43 「私はこの人の処女作「そして夜は甦る」からファンになった。」「依然好調で、皮肉などんでん返しが用意されており、ミステリーの種は尽きぬというたのしい感慨を抱かせられた。」「原氏にはチャンドラーの影響は見られるけれども、それはそれとして、人物造型と文章のたしかなこと、まことに才ゆたかで信頼できる。」
椎名誠
男45歳
8 「好感のもてる作品であるが、主人公の男女に動きがないので印象を薄められる気がした。といって赤石が主人公になれば、この作品の滋味は失なわれるであろうし、むつかしい……。」
清水義範
男42歳
31 「半ば以後でちょっとだれるが、総体にとんとんと快調のスピード、眠狂四郎のパロディなどふき出してしまう。」「私は方言が好きである上、縦横無尽のギャグにしたたか笑わされたので、ナンセンス文学に敬意を表して一票を献じたが、(引用者中略)期待したほど票が集まらず残念であった。」
酒見賢一
男26歳
53 「物語作家はこの日本ではお手軽に扱われるが、もっと大事にしないといけない。」「どんどん美しい夢やロマンを大空へ吐いて下さい。」「私はこの作品が小説であるとはどうしても思えなかった。」「人間がいず、筋書きだけが動いていた。荒唐無稽の絵そらごとは、感情移入できなければ、ただのオハナシになってしまう。」
  「かねて直木賞はSFやミステリーを射程に入れないという噂があり、私なども残念に思っていたが、社会と文学の変貌に応じて、柔軟に対応すべきである。」
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黒岩重吾
陳舜臣
山口瞳
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
平岩弓枝女57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読者の得心を 総行数108 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
27 「第三者である狂言作者の口を通して語られている分だけ、登場人物の心理が読者から遠くなって歯がゆい思いをさせられる難点がある。」「権八が小伝を殺すという、いわばこの芝居の大詰を、作者は何故か書かなかった。これは、どう弁解しても、逃げたことになる」「やはり、大詰はきちんと書いてもらいたい。」
原尞
男43歳
41 「この作品は最後に読者を裏切っている。」「母親が我が娘を殺害するというのは、滅多にあることではない。異常である。異常が起るのはよくよくの事情が介在したからで、それが納得出来るように書けていないと読者は騙し討ちに遭ったと感じてしまう。」「いやしくも授賞の対象となる作品がそうであってはならないと思ったので、私はこの作品を推さなかった。」
椎名誠
男45歳
13 「読み終えた時の印象がさわやかで、好感が持てた」「現在、椎名さんが連載中の作品や、すでに発表されているものを含めての実績が評価されても良いと考えていたが、残念なことに票が集まらなかった。」
清水義範
男42歳
15 「第三章の江戸夏の陣までは圧倒されて読んでしまったが、それから先は強引なこじつけが目立って、折角の才気の御馳走が飽和状態になって御辞退したくなった。」「才気あふれる作品というのは、読者を面白がらせるが、感動へ持ち込むのはむずかしいし、行き止まりも早く来る。」
酒見賢一
男26歳
12 「後宮というより、女子学生の寄宿舎みたいな感じで、案外、それが作者の現代諷刺だったのかも知れないが、どっちにしても、これでは中途半端だ。この作者も才気で勝負を急ぎそうな気がするし、それはそれで悪いとも思わないけれども、そっちの方向にはけっこう恐しい落し穴が多いことを老婆心ながら申し上げておきたい。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
山口瞳
田辺聖子
藤沢周平
五木寛之
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
藤沢周平男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
将来性に富む二作品 総行数144 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
18 「男たち(ことに南北の描き方が秀逸)はうまく書けているのに肝心の男狂いの小伝のあわれ、またはかわいらしさが伝わって来ない不満があり、読後感もまた快いとも言えない小説だが、作品が暗くて楽しくないという点は、この作者がまだ言いたいこと書きたいことを沢山持っているせいではないかと思われて、むしろ今後に期待を抱かせるものだった。」
原尞
男43歳
37 「明白な欠点を抱えるにもかかわらず、この小説にはなお受賞作に推したくなるものがそなわっていた。」「作者はこの作品でハードボイルド調を完全に自分の物にしているだけでなく、魅力ある文章と魅力ある一人の私立探偵を造型していた。」「私は、前記の欠点のために、この作品を受賞圏に入れることを断念して出席したのだが、第一回の投票で意外に票があつまったのをみて矢もタテもたまらず変節し、受賞支持に回った次第だった。」
椎名誠
男45歳
33 「正統派の印象がある作家で、その印象は最近の若い作家があまり書かなくなったといわれる風景を書く、意志のようなものを感じさせるところから来るようである。」「肝心の物語は青春の暴力といったものはうまく書けているけれども、主役の三人、赤石とその恋人とおれの存在感がうすく、物語の力強さを欠いているように思われた。」
清水義範
男42歳
12 「第一章の名古屋弁のやりとりがじつに秀逸。」「ところが惜しいことに、中盤は単なる名古屋弁への転訳に終った印象が強く、豊臣の天下がつづいていたらという肝心のこしらえが十分に働いていない。」
酒見賢一
男26歳
19 「使うべきところにそれにもっともふさわしい言葉が使われていて、その選択はほとんど狂いがなく見事というほかはない。」「おもしろく読み終ってさて振りかえってみると、何を読んだか大変心もとない気がする弱点はあるが、この稀有な才能に敬意を表して、私は一票を投じた。」
  「今回の選考について言えば、圧倒的な一作というものはなかったが、瑕瑾を理由に見送るには惜しい気がするきわめて将来性に富む二作品はあったというのが私の考えである。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
山口瞳
田辺聖子
平岩弓枝
五木寛之
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
円熟と未完の魅力 総行数148 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
12 「安定した筆力と円熟した作風をもつ堂々たる大人の作家である。権八という醜男が幼い小伝に、うなぎの串焼きを口うつしのように噛んで食べさせる描写など、僧衣の袖口にちらと鎧の小手を見せられたような気にさせられたものだった。」
原尞
男43歳
30 「未完の大器である。なによりもこの国におけるハードボイルド的作風の確立という、至難の世界にターゲットをしぼった姿勢に若々しさがある。」「ハードボイルドとは、非情ではなく抑制された多情であり、粗暴の辛さではなく感傷の苦さであることを思えば、〈私が殺した少女〉の主人公の行動規範は、モラルではなく情感であるべきではないだろうか。」
椎名誠
男45歳
21 「すでに一家を成した作家である。」「これまで世評の高い佳作が沢山あるのに、今回の候補作のような軽い小粒の短篇で受賞しては、ご本人も不満だろう。」「賞のことを抜きにして読めば、(引用者中略)気持のいい作品で、いわゆる椎名ワールドの一環をなす水準作だと思った。」
清水義範
男42歳
47 「もっともキラキラする才気を感じさせられた」「ではどうして〈金鯱の夢〉が受賞しなかったかといえば、それはひとえに作者の持久力のなさのせいだろう。この長篇は、はじめが最高で中ほどが凡庸、終りに近づくほど退屈になるという致命的な構造をもっている。」「インパクトが、今回の候補作中の随一だったことは疑う余地のないところだ。」
酒見賢一
男26歳
41 「完成度は驚くべきもので、若い作家の筆とは思えない成熟した作風だ。」「欠点はただひとつ、作者が楽しみすぎていて、いつか読者が蚊帳の外におかれた気分になってしまうことである。さらに欲を言えば、妖気に欠ける。もうひとつ小声でつけ加えると、作中人物全員がセクシーでない。(引用者中略)全員がそうだとなんとなく、おたく(原文傍点)族の空想世界に近いような感じさえ抱かせられる。」
  「(引用者注:受賞作が)二作でもいっこうにかまわないが、私個人の考えでは徹夜ででも討論を重ねて一作にしぼったほうがいいような気がする。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
山口瞳
田辺聖子
平岩弓枝
藤沢周平
井上ひさし
渡辺淳一
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選考委員
井上ひさし男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
一燃料補給員の弁 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
26 「短い枚数で三つの人生を描きつくすという困難な事業が、静かに(原文傍点)成就しているところ、上々吉である。」「三つの文体が、書き手によって選ばれたのではなく、題材そのものがそれらの文体で書くように要求しているかの如くに見えるところ、結局は作者がそれを書くのにちがいないが、しかし題材から自然にその文体が選ばれたように見せる工夫――そこに唸ったのである。」
原尞
男43歳
17 「いくら瀕死の状態にあるとはいえ、母がわが子の《細い首に両手をかけて……》(二七一ページ)楽にしてやるかどうか、これは大いに議論の分れるところだろう。しかしわたしは、そこまでのすばらしい出来栄えを買った。文章がいい。ユーモアの感覚がいい。」「たくさんの長所と大きな欠陥とを秤にかけて、長所の方を慶賀すべきだろうと考えたのである。」
椎名誠
男45歳
23 「主人公が、回想装置としてのみ使われているところに、この一篇の弱さや窮屈さが露呈していた。十九年前と現在とが、もっとはげしく絡み合っていたら、素敵な材料であるのだし、とてもいい作品になったろうにと、口惜しく思う。」
清水義範
男42歳
25 「前半部は、ムチャクチャにおもしろい。だが、中盤から突然、その膂力を失う。ひっくり返しの手法がいつも同じなので、読者はもう驚かないのである。奇想溢れるこの作家にしては珍しい手落ちである。」
酒見賢一
男26歳
15 「まことしやかな細部を丁寧に積み上げておいて、いつの間にか壮大な大嘘を構築してしまうという方法に、才能を感じさせられた。しかし結尾部分に破綻が見える。蛇足が蛇足で終ってしまっているのだ。蛇足をも、読者への景物にしてしまうという知的腕力を持ち合せている作家なのに、このだらだらした筆の納め方は解せない。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
山口瞳
田辺聖子
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
渡辺淳一男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作者の熱気 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司
男68歳
16 「前半の「あたくし」がいささか嫌味で、三つに分けた構成に難点があるが、小伝と権八の回想部分は生き生きとして迫力がある。」「文章はたしかに古風だが、これほど古風だといっそ新しくも見えてくるし、なによりも、作者の書きたい熱気があふれているところが好ましかった。」
原尞
男43歳
12 「文章が安定しているところが強味である。だが内容的には、(引用者中略)無理なこじつけやアンフェアな部分が多く、素直についていけなかった。推理のために話をつくりすぎた感があるが、力のある人ではある。」
椎名誠
男45歳
22 「今回の候補作のなかではもっとも小説らしい小説で、安心して読めた。」「全体に作者の優しさが滲んでいて読後感も爽やかだが、いかんせん、感動のポイントがいささか安易で、感傷に流れすぎている。」
清水義範
男42歳
16 「織田の武将が軍議まで尾張弁で論じ、それに馴染めなかった光秀の違和感が、のちの叛乱の遠因になったという発想は秀逸である。だがその他のパロディはいささか凡庸」「頭のいい人らしく、文章は簡潔で適確だが、いわゆる小説の文章としてのふくらみに欠けるところももの足りなかった。」
酒見賢一
男26歳
14 「後宮や史実を説明するのに急で、肝腎の人物が生きてこない。」「若さとこれだけの虚構を書いた才能を評価するにやぶさかではないが、大いなる虚構がただの大きな嘘になっているのでは、成功作とはいいがたい。」
  「今回は最終的に票が二つに割れ、結果として二作受賞となったが、本来は受賞作なしが妥当かとも思う。」
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他の選考委員
黒岩重吾
陳舜臣
山口瞳
田辺聖子
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
井上ひさし
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受賞者・作品
星川清司男68歳×各選考委員 
「小伝抄」
中篇 156
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男65歳
44 「読み終って私は、こういう小説を待っていたような気がした。」「本小説に魅力を与えているのは権八の存在である。」「権八の想いがあればこそ、私は色塗れの小伝に、仄かな香りと哀しみを感じることが出来た。」
陳舜臣
男65歳
11 「うまい作品である。文章と話し口のうまさのわりには、感銘度が浅かった。小伝という女性の燃えるすがたを期待しすぎたかもしれない。この作品はむしろ「権八抄」として読むべきであろう。」
山口瞳
男63歳
36 「私は買わない。小伝は魅力のある女性だということだが、私には恣意的で異常な淫乱女であるとしか思えない。これに従う醜悪な下僕の権八という設定も陳腐だ。」「私は星川さんは力のある作家だと思っているが、同じシナリオライターで隆慶一郎さんが二度落選して星川さんが一度で受賞したことに運命的なものを感ずる。」
田辺聖子
女61歳
16 「絢爛たる文章と素材のわりに、ヒロインの印象がうすく、どこかもどかしいが、これは読み手が女だからだろうか。小伝の「いい女」ぶりが、もひとつよく分らない。」「ただ、凝りぬいた文体と口吻に、昨今の安易なつくりの小説にない、作者の情熱・執念が感じられ、私はそれを珍重して、この作にも一票を献ずることにした。」
平岩弓枝
女57歳
27 「第三者である狂言作者の口を通して語られている分だけ、登場人物の心理が読者から遠くなって歯がゆい思いをさせられる難点がある。」「権八が小伝を殺すという、いわばこの芝居の大詰を、作者は何故か書かなかった。これは、どう弁解しても、逃げたことになる」「やはり、大詰はきちんと書いてもらいたい。」
藤沢周平
男62歳
18 「男たち(ことに南北の描き方が秀逸)はうまく書けているのに肝心の男狂いの小伝のあわれ、またはかわいらしさが伝わって来ない不満があり、読後感もまた快いとも言えない小説だが、作品が暗くて楽しくないという点は、この作者がまだ言いたいこと書きたいことを沢山持っているせいではないかと思われて、むしろ今後に期待を抱かせるものだった。」
五木寛之
男57歳
12 「安定した筆力と円熟した作風をもつ堂々たる大人の作家である。権八という醜男が幼い小伝に、うなぎの串焼きを口うつしのように噛んで食べさせる描写など、僧衣の袖口にちらと鎧の小手を見せられたような気にさせられたものだった。」
井上ひさし
男55歳
26 「短い枚数で三つの人生を描きつくすという困難な事業が、静かに(原文傍点)成就しているところ、上々吉である。」「三つの文体が、書き手によって選ばれたのではなく、題材そのものがそれらの文体で書くように要求しているかの如くに見えるところ、結局は作者がそれを書くのにちがいないが、しかし題材から自然にその文体が選ばれたように見せる工夫――そこに唸ったのである。」
渡辺淳一
男56歳
16 「前半の「あたくし」がいささか嫌味で、三つに分けた構成に難点があるが、小伝と権八の回想部分は生き生きとして迫力がある。」「文章はたしかに古風だが、これほど古風だといっそ新しくも見えてくるし、なによりも、作者の書きたい熱気があふれているところが好ましかった。」
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他の候補作
原尞
『私が殺した少女』
椎名誠
「ハマボウフウの花や風」
清水義範
『金鯱の夢』
酒見賢一
「後宮小説」
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受賞者・作品
原尞男43歳×各選考委員 
『私が殺した少女』
長篇 710
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男65歳
42 「結末部分にやや難があり、授賞が危ぶまれたが、選考委員の意見が割れた結果、(引用者注:「小伝抄」との)二作授賞ということになった。」「久し振りで、優れた推理サスペンス小説を読んだ思いである。」「一部の選考委員から、あの事故の場合、母親が実の娘を殺すことは絶対あり得ない、という反論が出た。尤もな反論である。」「原氏の授賞に賛成したが、小説ではなく現実の出来事なら、矢張り母親は救急車を呼ぶに違いない。」
陳舜臣
男65歳
15 「日本のハードボイルドも、やっとこのような作品をうむようになったかという感慨が先に立った。うれしい作品である。」「登場人物を含めて、もうすこし刈り込めたいのではないか、という不満もないではないが、近年、出色のミステリーであることにまちがいはない。」「瑕瑾の謗りを気にしないで、我が道を行ってほしい。」
山口瞳
男63歳
51 「作者は、文章はレイモンド・チャンドラーの真似だと言っているようだが真似でもなんでもいい。それを自分の文体にしてしまっているのが素敵だ。」「この小説のストーリーには決定的な欠陥がある。(引用者中略)これが推理小説の限界とか、推理だから仕方がないという意見もあったが、それなら、途中からでも推理小説を抛棄すべきだと私なんかは考える。」
田辺聖子
女61歳
43 「私はこの人の処女作「そして夜は甦る」からファンになった。」「依然好調で、皮肉などんでん返しが用意されており、ミステリーの種は尽きぬというたのしい感慨を抱かせられた。」「原氏にはチャンドラーの影響は見られるけれども、それはそれとして、人物造型と文章のたしかなこと、まことに才ゆたかで信頼できる。」
平岩弓枝
女57歳
41 「この作品は最後に読者を裏切っている。」「母親が我が娘を殺害するというのは、滅多にあることではない。異常である。異常が起るのはよくよくの事情が介在したからで、それが納得出来るように書けていないと読者は騙し討ちに遭ったと感じてしまう。」「いやしくも授賞の対象となる作品がそうであってはならないと思ったので、私はこの作品を推さなかった。」
藤沢周平
男62歳
37 「明白な欠点を抱えるにもかかわらず、この小説にはなお受賞作に推したくなるものがそなわっていた。」「作者はこの作品でハードボイルド調を完全に自分の物にしているだけでなく、魅力ある文章と魅力ある一人の私立探偵を造型していた。」「私は、前記の欠点のために、この作品を受賞圏に入れることを断念して出席したのだが、第一回の投票で意外に票があつまったのをみて矢もタテもたまらず変節し、受賞支持に回った次第だった。」
五木寛之
男57歳
30 「未完の大器である。なによりもこの国におけるハードボイルド的作風の確立という、至難の世界にターゲットをしぼった姿勢に若々しさがある。」「ハードボイルドとは、非情ではなく抑制された多情であり、粗暴の辛さではなく感傷の苦さであることを思えば、〈私が殺した少女〉の主人公の行動規範は、モラルではなく情感であるべきではないだろうか。」
井上ひさし
男55歳
17 「いくら瀕死の状態にあるとはいえ、母がわが子の《細い首に両手をかけて……》(二七一ページ)楽にしてやるかどうか、これは大いに議論の分れるところだろう。しかしわたしは、そこまでのすばらしい出来栄えを買った。文章がいい。ユーモアの感覚がいい。」「たくさんの長所と大きな欠陥とを秤にかけて、長所の方を慶賀すべきだろうと考えたのである。」
渡辺淳一
男56歳
12 「文章が安定しているところが強味である。だが内容的には、(引用者中略)無理なこじつけやアンフェアな部分が多く、素直についていけなかった。推理のために話をつくりすぎた感があるが、力のある人ではある。」
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他の候補作
星川清司
「小伝抄」
椎名誠
「ハマボウフウの花や風」
清水義範
『金鯱の夢』
酒見賢一
「後宮小説」
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候補者・作品
椎名誠男45歳×各選考委員 
「ハマボウフウの花や風」
短篇 102
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男65歳
7 「抒情性豊かな作品だが、今迄、数え切れないほどの既成作家が、このような作品を書いて来た。それに群を抜くほどの作品でもない。」
陳舜臣
男65歳
20 「多くの作家がなんども書いたテーマである。」「おなじテーマをえらぶ以上、これまでの類似のパターンの諸作を、全体的でなくとも、どこかでこえていなければならない。この作品を、積極的に否定する意見はきわめてすくなかったが、積極的に肯定する意見もきわめてすくなかった。」
山口瞳
男63歳
12 「この作に限って言えば、開高健流に言ってキラリと光る一行がない。」「風景描写を丹念に書き込んでいる割には浜風が吹いてこない、湿った砂が匂ってこない。残念だ。」
田辺聖子
女61歳
8 「好感のもてる作品であるが、主人公の男女に動きがないので印象を薄められる気がした。といって赤石が主人公になれば、この作品の滋味は失なわれるであろうし、むつかしい……。」
平岩弓枝
女57歳
13 「読み終えた時の印象がさわやかで、好感が持てた」「現在、椎名さんが連載中の作品や、すでに発表されているものを含めての実績が評価されても良いと考えていたが、残念なことに票が集まらなかった。」
藤沢周平
男62歳
33 「正統派の印象がある作家で、その印象は最近の若い作家があまり書かなくなったといわれる風景を書く、意志のようなものを感じさせるところから来るようである。」「肝心の物語は青春の暴力といったものはうまく書けているけれども、主役の三人、赤石とその恋人とおれの存在感がうすく、物語の力強さを欠いているように思われた。」
五木寛之
男57歳
21 「すでに一家を成した作家である。」「これまで世評の高い佳作が沢山あるのに、今回の候補作のような軽い小粒の短篇で受賞しては、ご本人も不満だろう。」「賞のことを抜きにして読めば、(引用者中略)気持のいい作品で、いわゆる椎名ワールドの一環をなす水準作だと思った。」
井上ひさし
男55歳
23 「主人公が、回想装置としてのみ使われているところに、この一篇の弱さや窮屈さが露呈していた。十九年前と現在とが、もっとはげしく絡み合っていたら、素敵な材料であるのだし、とてもいい作品になったろうにと、口惜しく思う。」
渡辺淳一
男56歳
22 「今回の候補作のなかではもっとも小説らしい小説で、安心して読めた。」「全体に作者の優しさが滲んでいて読後感も爽やかだが、いかんせん、感動のポイントがいささか安易で、感傷に流れすぎている。」
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他の候補作
星川清司
「小伝抄」
原尞
『私が殺した少女』
清水義範
『金鯱の夢』
酒見賢一
「後宮小説」
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候補者・作品
清水義範男42歳×各選考委員 
『金鯱の夢』
長篇 519
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男65歳
10 「すべてを尾張に結びつけているせいか、これまでの面白味が稀薄になった。尾張弁を褒める選考委員は多かったが、方言は作品の彩りに過ぎない。」
陳舜臣
男65歳
37 「これまでこの種のif小説をいくつか読んだことがある。それにくらべると、この作品は水準に達しているようにおもう。」「架空の物語とはいえ、二百数十年の「史実」があり、それに沿って、裏返し作業がおこなわれている。とうぜん「史実」についての読者の知識に大幅に頼っているが、それだけに趣向が多すぎたきらいがある。」「この人には、才能にまかせて、大いに書いてほしいというほかない。」
山口瞳
男63歳
12 「名古屋を礼讃するのはいいが、あの押しの強さ、田舎臭さが全面に広がってこないと味の薄い作品になってしまう。」
田辺聖子
女61歳
31 「半ば以後でちょっとだれるが、総体にとんとんと快調のスピード、眠狂四郎のパロディなどふき出してしまう。」「私は方言が好きである上、縦横無尽のギャグにしたたか笑わされたので、ナンセンス文学に敬意を表して一票を献じたが、(引用者中略)期待したほど票が集まらず残念であった。」
平岩弓枝
女57歳
15 「第三章の江戸夏の陣までは圧倒されて読んでしまったが、それから先は強引なこじつけが目立って、折角の才気の御馳走が飽和状態になって御辞退したくなった。」「才気あふれる作品というのは、読者を面白がらせるが、感動へ持ち込むのはむずかしいし、行き止まりも早く来る。」
藤沢周平
男62歳
12 「第一章の名古屋弁のやりとりがじつに秀逸。」「ところが惜しいことに、中盤は単なる名古屋弁への転訳に終った印象が強く、豊臣の天下がつづいていたらという肝心のこしらえが十分に働いていない。」
五木寛之
男57歳
47 「もっともキラキラする才気を感じさせられた」「ではどうして〈金鯱の夢〉が受賞しなかったかといえば、それはひとえに作者の持久力のなさのせいだろう。この長篇は、はじめが最高で中ほどが凡庸、終りに近づくほど退屈になるという致命的な構造をもっている。」「インパクトが、今回の候補作中の随一だったことは疑う余地のないところだ。」
井上ひさし
男55歳
25 「前半部は、ムチャクチャにおもしろい。だが、中盤から突然、その膂力を失う。ひっくり返しの手法がいつも同じなので、読者はもう驚かないのである。奇想溢れるこの作家にしては珍しい手落ちである。」
渡辺淳一
男56歳
16 「織田の武将が軍議まで尾張弁で論じ、それに馴染めなかった光秀の違和感が、のちの叛乱の遠因になったという発想は秀逸である。だがその他のパロディはいささか凡庸」「頭のいい人らしく、文章は簡潔で適確だが、いわゆる小説の文章としてのふくらみに欠けるところももの足りなかった。」
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他の候補作
星川清司
「小伝抄」
原尞
『私が殺した少女』
椎名誠
「ハマボウフウの花や風」
酒見賢一
「後宮小説」
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候補者・作品
酒見賢一男26歳×各選考委員 
「後宮小説」
長篇 416
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾
男65歳
0  
陳舜臣
男65歳
26 「ほとんど作者の頭脳からうみ出された物語で、それに敬意を表したいとおもう。」「純架空物語はすくなくないが、「後宮小説」はそれに比肩しうる佳作であろう。登場人物の性格が、あざやかに書き分けられ、最後まで破綻がないのはみごとである。」
山口瞳
男63歳
36 「私が上位だと思ったのは、まず第一に酒見賢一さんの『後宮小説』である。」「すらすらと面白く読めるという点でも一番だった。」「この作者は二十五、六歳でこれを書いたわけで最近の候補作家のなかでは極端に若い。この若さに賭けてみたいという気持も強かった。」
田辺聖子
女61歳
53 「物語作家はこの日本ではお手軽に扱われるが、もっと大事にしないといけない。」「どんどん美しい夢やロマンを大空へ吐いて下さい。」「私はこの作品が小説であるとはどうしても思えなかった。」「人間がいず、筋書きだけが動いていた。荒唐無稽の絵そらごとは、感情移入できなければ、ただのオハナシになってしまう。」
平岩弓枝
女57歳
12 「後宮というより、女子学生の寄宿舎みたいな感じで、案外、それが作者の現代諷刺だったのかも知れないが、どっちにしても、これでは中途半端だ。この作者も才気で勝負を急ぎそうな気がするし、それはそれで悪いとも思わないけれども、そっちの方向にはけっこう恐しい落し穴が多いことを老婆心ながら申し上げておきたい。」
藤沢周平
男62歳
19 「使うべきところにそれにもっともふさわしい言葉が使われていて、その選択はほとんど狂いがなく見事というほかはない。」「おもしろく読み終ってさて振りかえってみると、何を読んだか大変心もとない気がする弱点はあるが、この稀有な才能に敬意を表して、私は一票を投じた。」
五木寛之
男57歳
41 「完成度は驚くべきもので、若い作家の筆とは思えない成熟した作風だ。」「欠点はただひとつ、作者が楽しみすぎていて、いつか読者が蚊帳の外におかれた気分になってしまうことである。さらに欲を言えば、妖気に欠ける。もうひとつ小声でつけ加えると、作中人物全員がセクシーでない。(引用者中略)全員がそうだとなんとなく、おたく(原文傍点)族の空想世界に近いような感じさえ抱かせられる。」
井上ひさし
男55歳
15 「まことしやかな細部を丁寧に積み上げておいて、いつの間にか壮大な大嘘を構築してしまうという方法に、才能を感じさせられた。しかし結尾部分に破綻が見える。蛇足が蛇足で終ってしまっているのだ。蛇足をも、読者への景物にしてしまうという知的腕力を持ち合せている作家なのに、このだらだらした筆の納め方は解せない。」
渡辺淳一
男56歳
14 「後宮や史実を説明するのに急で、肝腎の人物が生きてこない。」「若さとこれだけの虚構を書いた才能を評価するにやぶさかではないが、大いなる虚構がただの大きな嘘になっているのでは、成功作とはいいがたい。」
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他の候補作
星川清司
「小伝抄」
原尞
『私が殺した少女』
椎名誠
「ハマボウフウの花や風」
清水義範
『金鯱の夢』
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