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平成2年/1990年上半期
(平成2年/1990年7月16日決定発表/『オール讀物』平成2年/1990年9月号選評掲載)
選考委員  陳舜臣
男66歳
平岩弓枝
女58歳
藤沢周平
男62歳
黒岩重吾
男66歳
山口瞳
男63歳
渡辺淳一
男56歳
五木寛之
男57歳
田辺聖子
女62歳
井上ひさし
男55歳
選評総行数  96 67 128 86 114 50 85 119 112
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
泡坂妻夫 『蔭桔梗』
413
男57歳
37 11 37 52 18 39 31 26 10
高橋義夫 『北緯50度に消ゆ』
544
男44歳
5 28 11 0 0 0 15 34 40
志水辰夫 『帰りなん、いざ』
526
男53歳
8 9 18 0 0 0 4 15 10
樋口有介 『風少女』
484
男40歳
13 12 20 21 0 0 20 28 22
清水義範 『虚構市立不条理中学校』
437
男42歳
10 7 42 9 82 0 21 20 24
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
陳舜臣男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
すばらしい記録 総行数96 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
37 「昭和時代の東京のすばらしい記録になっている」「いずれも短篇だが、さまざまな工夫をこらして、それぞれの味を出している。時間のいれかえが、読んでいて、いささかわずらわしい場面もあるが、短篇のことだから、これも工夫の一種であろう。その人にしか書けないという分野をもつのは、作家として大きなメリットである。」
高橋義夫
男44歳
5 「後半の仕掛けがこみいりすぎて、感銘度を薄めたのは残念である。」
志水辰夫
男53歳
8 「状況の説明を登場人物の会話に頼りすぎているのが気になった。戯曲ならともかく、小説は地の文を駆使できる。長広舌は不自然であるし、ときに読者をいらだたせる。」
樋口有介
男40歳
13 「ミステリーとしては破綻がありすぎる。」「登場人物のやりとりは軽快で、とくに主人公と妹とのそれはおもしろい。」「作者はおそらくこのようなリズムを、からだに内蔵しているのであろう。それは貴重な資質であり、多作によって伸びるような気がする。」
清水義範
男42歳
10 「諷刺と恐怖のあいだの綱渡りだが、意外にスリルをかんじなかった。パロディー、記号化、置きかえがパターン化して、先が読めてしまう。追求する目標が深すぎて、作品がそこまで届かなかったが、その意図を壮としたい。」
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他の選考委員
平岩弓枝
藤沢周平
黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
五木寛之
田辺聖子
井上ひさし
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選考委員
平岩弓枝女58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「蔭桔梗」に喝采 総行数67 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
11 「職人芸とか下町情緒とかを小道具、或いは背景にして、泡坂さんの描き出した人間達が現代に呼吸しているのが快かった。」「当然の受賞である。」
高橋義夫
男44歳
28 「流石の物語上手、構成上手がちょっと息切れしてしまったのではないかという印象をもった。」「全体を通じて不要な人物は刈り込んで、個性のある人物を活躍させるほうが人間も生きて来るし、読者にも親切であろう。」
志水辰夫
男53歳
9 「過疎の進んでいる小村を舞台にサスペンスタッチでさまざまの人間模様を描いて面白いが、話を盛り上げようとして、後半、無理が目立った。こういう作品は読者を上手に欺してくれないと成功とはいえない。」
樋口有介
男40歳
12 「好感度からいえば、ナンバーワンの作品。」「登場人物がきびきびと描けていて、ほどほどにクールで、適当に甘いのもいい。」「弱味といえば、事件のしめくくり方と、風少女のイメージにパターンを感じさせることだろうか。」
清水義範
男42歳
7 「いつものことながら着想は面白いのに、その面白さが持続しない。小説はアイディアだけでは勝負出来ないし、秀れたコントをどうつないでも小説とは違うものになる。」
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他の選考委員
陳舜臣
藤沢周平
黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
五木寛之
田辺聖子
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選考委員
藤沢周平男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大人の小説 総行数128 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
37 「完成度の高い短篇集で、ほかの候補作を読んだあとでこの作品を読むと、よくもわるくも大人の小説を読んでいる安心感があった。」「べつにおもしろおかしく書いているわけではないのに、一人一人の人間がおもしろく、技術のあれこれがみなおもしろかった。描写ということを知っている文章と、そこに登場する一人一人の人生が的確に描き出されているからだろうと思う。」
高橋義夫
男44歳
11 「学生たちが大旅行に出発するあたりの出だしが新鮮で、その後の展開に期待を持たせるが、満洲にわたってからの活劇が平凡。」「高橋さんの本領が発揮された作品とは言えないが、この分野の小説に挑んだ意欲を高く買いたい。」
志水辰夫
男53歳
18 「この種の小説に読者が無意識に期待するカタルシスがなかった。」「結果があまりスカッとしないのである。そうかといって、恋愛小説としても成功していないと思った。」「今回の候補作は柄が小さく理に落ちたように思う。」
樋口有介
男40歳
20 「軽妙な(絶妙と言ってもよい)会話が魅力といった作品で、殺人事件を扱った小説なのにさわやかな青春小説の趣きがあり、後味はわるくない。」「しかしこの作品の問題となる点もまたこの軽妙さにある、という感じがするのも事実で、殺人事件があまりさわやかでも困るわけである。」
清水義範
男42歳
42 「全体の構成からいうと、小説としては成功していない感じを受けた。」「教科問答にのめりこんだために、学校の本質に迫るといった感じまでどこかに逃げてしまう。」「清水さんは大変に将来性を感じさせる作家だが、この小説は破綻が多くて、将来性を云云する材料としては適当ではなかったと思う。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
五木寛之
田辺聖子
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選考委員
黒岩重吾男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
泡坂氏の魅力 総行数86 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
52 「今回の候補作品の中に、もし泡坂氏の作品が入っていなかったなら、私はやり切れないほど重い気持で選考会に出席したに違いない。」「氏の作品の魅力は精緻を凝らした艶やかな絹の幕を透し、現実を忘れ大人の夢を観させてくれるところにある。」
高橋義夫
男44歳
0  
志水辰夫
男53歳
0  
樋口有介
男40歳
21 「青春小説を爽やかに描く文章力を持っている。ただこの作品を推理小説として読むと、独善的で社会に通用しない現代青年の行動を見せつけられたような気がする。」「主人公が懸命に解いている謎は、警察がとっくに調べている筈である。」「警察は、この程度の犯人なら簡単に逮捕してしまう。となると、この推理小説の謎解きは根底から成立しないことになる。」
清水義範
男42歳
9 「今の教育の不条理を深く抉っている。私は随筆として面白く読んだ。ただこれを、小説だといわれると困惑する。清水氏自身、この作品が直木賞候補になるとは思っていなかったのではないか。」
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選考委員
山口瞳男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
鬼才清水義範氏を推す 総行数114 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
18 「私は泡坂さんのファンであり彼を尊敬する者であって、(引用者中略)泡坂さんでなければ書けない台詞に接するとゾクゾクするという質の男だ。特に以前に『忍火山恋唄』という名作を落してしまったのが心の傷のように残っていたので、今回の受賞はとても嬉しい。」
高橋義夫
男44歳
0  
志水辰夫
男53歳
0  
樋口有介
男40歳
0  
清水義範
男42歳
82 「この一種ハチャメチャ小説に非常なるリアリティを感じた。」「誰でもが学校教育に多少なりとも恨みを抱いていると思われるが、そこを衝いた着想が素晴らしい。」「この作者は疑いもなく上質なセンスの持主であり、かつ、強引と思われるような腕力も持ちあわせていると感じた。」「近年の直木賞候補作のなかでは群を抜く傑作であり、社会性もある問題作だと思った。」
  「今回は全体に低調だという声もあったが、私は粒が揃っていたと思っている。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
藤沢周平
黒岩重吾
渡辺淳一
五木寛之
田辺聖子
井上ひさし
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選考委員
渡辺淳一男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
幸せな作品か 総行数50 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
39 「題材がいずれも似ていて、短篇集としてはいささか退屈な感じを否めない。」「いくつかの作品においてラストの書き込みが浅く、読者を素直にある充足感に導かないもどかしさが残る。」「しかしこれだけ独自の小説世界をもち、それを長年追い続けていることは貴重なことである。」「受賞に、反対する気はなかった。」
高橋義夫
男44歳
0  
志水辰夫
男53歳
0  
樋口有介
男40歳
0  
清水義範
男42歳
0  
  「今回はさまざまな傾向の作品が集っているが、いずれもいま一つ決め手に欠け、受賞作なしが妥当かと思って選考会に出かけた。」
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陳舜臣
平岩弓枝
藤沢周平
黒岩重吾
山口瞳
五木寛之
田辺聖子
井上ひさし
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選考委員
五木寛之男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新作家への声援 総行数85 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
31 「直木賞を新人賞と考えている私の目には、泡坂さんはすでに直木賞を超えた堂々たる既成作家として映っていたので、選考会にのぞんで少々とまどうところがあったのも事実である。」「驚くほど簡単に泡坂さんの受賞がきまったのは、当然の結果だろうと思う。他の候補作との差は、歴然たるものがあった。」
高橋義夫
男44歳
15 「(引用者注:『風少女』と)『北緯50度に消ゆ』の二作が受賞作に選ばれてもいいと思っていた。」「作家としての卓抜な構築力が感じられる。その筆力はただごとではない。いずれ私たちを瞠目させる作品を書く人だろう。」
志水辰夫
男53歳
4 「今回の候補作が、この作家のベストのものでないことが残念だった。」
樋口有介
男40歳
20 「『風少女』のような作風は、とかくこの国の文壇では軽視されがちな傾向がある。(引用者中略)しかし、私は『風少女』の文体が好きだった。これと『北緯50度に消ゆ』の二作が受賞作に選ばれてもいいと思っていた。」「樋口さんはミステリーにこだわるのをやめたらどうだろう。そうすればもっと自由な、あたらしい小説が書けるのではあるまいか。」
清水義範
男42歳
21 「前回の候補作『金鯱の夢』の怪腕ぶりにおよばなかったのが残念である。」「私の勝手な考えでは、清水さんのような小説を書くときには、『虚構』とか『不条理』とかを作者がすすんで言うことはないのではあるまいか。」「清水さん、および腰になることはないですよ。あなたが一番、肚をきめて怪筆をふるえば、直木賞なんて軽いもんでしょう。それだけの才能のある作家なのです。」
  「今回の選考会ほどすんなりというか、あっさり受賞作がきまった例を私は知らない。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
藤沢周平
黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
田辺聖子
井上ひさし
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選考委員
田辺聖子女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大人のよみもの 総行数119 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
26 「悠々たる職人芸。」「心と手に、いい意味の遊びがある。短篇集のよさ、たのしさを満喫できた。」「読後、鼻腔の奥に妖異といっていいほどの絢爛たる薫りをかいだ。この手の「大人のよみもの」を待望する。」
高橋義夫
男44歳
34 「導入部から面白く、私には一気に読める小説であった。文章が過不足なく適切で、ほどよき湿度を保って気持よかった。」「ただもう少しマリアの像がはっきりしていたら、と惜しい。」「しかしふしぎな、心にのこる小説だった。ミステリー、冒険小説、そのどれにもあてはまらない広がりをもっている。」
志水辰夫
男53歳
15 「快調のすべりだし。閉鎖的な村の、悪意にかこまれる日常の違和感は、まことによく描けている。しかし読了して何となく理屈っぽく感じられてしまったのはなぜだろう。」「ドライな文章は好もしかった。」
樋口有介
男40歳
28 「氏のお得意とされる青春ものの軽いノリが、ここでは一篇を支え切れないように思われた。ミステリー仕立てでありながら、ミステリーとしての緊迫感に欠けるからだろうか。」「けだるい青春彷徨ロマンとして読めば、それなりに匂いも情緒もあったが、やっぱり、人が殺されているんだし……。ちょっとどっちつかずになった感じ。」
清水義範
男42歳
20 「氏のお作品はいつもそうだが、思わず声たてて笑ってしまう。」「できるったけ形式にならないように、笑いを誘いながら柔軟闊達な筆で話をすすめてゆくあたり、上質の落語を聞いているようだ。」「しかし、結果としては形式を排除するという形式になってしまった嫌いがある。」
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他の選考委員
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平岩弓枝
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黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
五木寛之
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選考委員
井上ひさし男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読者の存在 総行数112 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫
男57歳
10 「名人芸の所産である。名人芸だけに、たまに凡百の読者を置き去りにして独走するところがある。そこに微かな不安もなくはなく、また、作者の恋愛観にも多少の不満はある。がしかし圧倒的な名人芸がそういった不安や不満を押し流してしまった。」
高橋義夫
男44歳
40 「作者の、歴史の隙間から物語の種子を拾い上げようとする努力と情熱に拍手を惜しむものではないが、しかしせっかくの物語要素の前で作者はなぜこのようにためらうのだろうか。」「読者の知りたがっていることがもっとはっきり書き込まれていたら、すばらしい物語になっただろうにと惜しまれる。」
志水辰夫
男53歳
10 「質のよい文章、その文章に規則正しく織り込まれる秀抜な比喩、それによって脈打つ快いリズムなど、作者のその手腕たるや見事の一語に尽きるが、読者には物語の織り目が少し朦朧として見える。」
樋口有介
男40歳
22 「今回、もっとも堪能した」「風俗の活写、青春群像の彫琢、みんなうまく行っている。」「だが、この作品はじつは推理小説のスタイルで書かれており、そうなると、たとえば睡眠薬の錠数といったことが問題にならざるを得ない。どう勘定しても数が合わぬのである。そこで推薦の辞も自然弱くなる。この作品と心中してもいいと思っていただけにとても残念である。」
清水義範
男42歳
24 「レトリックの駆使はあいかわらず「さすが!」であるが、それにしても〈英語教師の氏名=加古文司〉〈理科教師=筋野徹〉といった置き換えで読者をたのしませることは、もはや無理なのではあるまいか。」「「体育科」と「放課後(あとがき)」との間に、もう一つ驚天動地の章があるべきであった。読者は、氏がどのように奇抜な方法で物語を閉じるのか、そこに興味を集中させているのであるから。」
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藤沢周平
黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
五木寛之
田辺聖子
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受賞者・作品
泡坂妻夫男57歳×各選考委員 
『蔭桔梗』
短篇集11篇 413
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男66歳
37 「昭和時代の東京のすばらしい記録になっている」「いずれも短篇だが、さまざまな工夫をこらして、それぞれの味を出している。時間のいれかえが、読んでいて、いささかわずらわしい場面もあるが、短篇のことだから、これも工夫の一種であろう。その人にしか書けないという分野をもつのは、作家として大きなメリットである。」
平岩弓枝
女58歳
11 「職人芸とか下町情緒とかを小道具、或いは背景にして、泡坂さんの描き出した人間達が現代に呼吸しているのが快かった。」「当然の受賞である。」
藤沢周平
男62歳
37 「完成度の高い短篇集で、ほかの候補作を読んだあとでこの作品を読むと、よくもわるくも大人の小説を読んでいる安心感があった。」「べつにおもしろおかしく書いているわけではないのに、一人一人の人間がおもしろく、技術のあれこれがみなおもしろかった。描写ということを知っている文章と、そこに登場する一人一人の人生が的確に描き出されているからだろうと思う。」
黒岩重吾
男66歳
52 「今回の候補作品の中に、もし泡坂氏の作品が入っていなかったなら、私はやり切れないほど重い気持で選考会に出席したに違いない。」「氏の作品の魅力は精緻を凝らした艶やかな絹の幕を透し、現実を忘れ大人の夢を観させてくれるところにある。」
山口瞳
男63歳
18 「私は泡坂さんのファンであり彼を尊敬する者であって、(引用者中略)泡坂さんでなければ書けない台詞に接するとゾクゾクするという質の男だ。特に以前に『忍火山恋唄』という名作を落してしまったのが心の傷のように残っていたので、今回の受賞はとても嬉しい。」
渡辺淳一
男56歳
39 「題材がいずれも似ていて、短篇集としてはいささか退屈な感じを否めない。」「いくつかの作品においてラストの書き込みが浅く、読者を素直にある充足感に導かないもどかしさが残る。」「しかしこれだけ独自の小説世界をもち、それを長年追い続けていることは貴重なことである。」「受賞に、反対する気はなかった。」
五木寛之
男57歳
31 「直木賞を新人賞と考えている私の目には、泡坂さんはすでに直木賞を超えた堂々たる既成作家として映っていたので、選考会にのぞんで少々とまどうところがあったのも事実である。」「驚くほど簡単に泡坂さんの受賞がきまったのは、当然の結果だろうと思う。他の候補作との差は、歴然たるものがあった。」
田辺聖子
女62歳
26 「悠々たる職人芸。」「心と手に、いい意味の遊びがある。短篇集のよさ、たのしさを満喫できた。」「読後、鼻腔の奥に妖異といっていいほどの絢爛たる薫りをかいだ。この手の「大人のよみもの」を待望する。」
井上ひさし
男55歳
10 「名人芸の所産である。名人芸だけに、たまに凡百の読者を置き去りにして独走するところがある。そこに微かな不安もなくはなく、また、作者の恋愛観にも多少の不満はある。がしかし圧倒的な名人芸がそういった不安や不満を押し流してしまった。」
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他の候補作
高橋義夫
『北緯50度に消ゆ』
志水辰夫
『帰りなん、いざ』
樋口有介
『風少女』
清水義範
『虚構市立不条理中学校』
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候補者・作品
高橋義夫男44歳×各選考委員 
『北緯50度に消ゆ』
長篇 544
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男66歳
5 「後半の仕掛けがこみいりすぎて、感銘度を薄めたのは残念である。」
平岩弓枝
女58歳
28 「流石の物語上手、構成上手がちょっと息切れしてしまったのではないかという印象をもった。」「全体を通じて不要な人物は刈り込んで、個性のある人物を活躍させるほうが人間も生きて来るし、読者にも親切であろう。」
藤沢周平
男62歳
11 「学生たちが大旅行に出発するあたりの出だしが新鮮で、その後の展開に期待を持たせるが、満洲にわたってからの活劇が平凡。」「高橋さんの本領が発揮された作品とは言えないが、この分野の小説に挑んだ意欲を高く買いたい。」
黒岩重吾
男66歳
0  
山口瞳
男63歳
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渡辺淳一
男56歳
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五木寛之
男57歳
15 「(引用者注:『風少女』と)『北緯50度に消ゆ』の二作が受賞作に選ばれてもいいと思っていた。」「作家としての卓抜な構築力が感じられる。その筆力はただごとではない。いずれ私たちを瞠目させる作品を書く人だろう。」
田辺聖子
女62歳
34 「導入部から面白く、私には一気に読める小説であった。文章が過不足なく適切で、ほどよき湿度を保って気持よかった。」「ただもう少しマリアの像がはっきりしていたら、と惜しい。」「しかしふしぎな、心にのこる小説だった。ミステリー、冒険小説、そのどれにもあてはまらない広がりをもっている。」
井上ひさし
男55歳
40 「作者の、歴史の隙間から物語の種子を拾い上げようとする努力と情熱に拍手を惜しむものではないが、しかしせっかくの物語要素の前で作者はなぜこのようにためらうのだろうか。」「読者の知りたがっていることがもっとはっきり書き込まれていたら、すばらしい物語になっただろうにと惜しまれる。」
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他の候補作
泡坂妻夫
『蔭桔梗』
志水辰夫
『帰りなん、いざ』
樋口有介
『風少女』
清水義範
『虚構市立不条理中学校』
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候補者・作品
志水辰夫男53歳×各選考委員 
『帰りなん、いざ』
長篇 526
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男66歳
8 「状況の説明を登場人物の会話に頼りすぎているのが気になった。戯曲ならともかく、小説は地の文を駆使できる。長広舌は不自然であるし、ときに読者をいらだたせる。」
平岩弓枝
女58歳
9 「過疎の進んでいる小村を舞台にサスペンスタッチでさまざまの人間模様を描いて面白いが、話を盛り上げようとして、後半、無理が目立った。こういう作品は読者を上手に欺してくれないと成功とはいえない。」
藤沢周平
男62歳
18 「この種の小説に読者が無意識に期待するカタルシスがなかった。」「結果があまりスカッとしないのである。そうかといって、恋愛小説としても成功していないと思った。」「今回の候補作は柄が小さく理に落ちたように思う。」
黒岩重吾
男66歳
0  
山口瞳
男63歳
0  
渡辺淳一
男56歳
0  
五木寛之
男57歳
4 「今回の候補作が、この作家のベストのものでないことが残念だった。」
田辺聖子
女62歳
15 「快調のすべりだし。閉鎖的な村の、悪意にかこまれる日常の違和感は、まことによく描けている。しかし読了して何となく理屈っぽく感じられてしまったのはなぜだろう。」「ドライな文章は好もしかった。」
井上ひさし
男55歳
10 「質のよい文章、その文章に規則正しく織り込まれる秀抜な比喩、それによって脈打つ快いリズムなど、作者のその手腕たるや見事の一語に尽きるが、読者には物語の織り目が少し朦朧として見える。」
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他の候補作
泡坂妻夫
『蔭桔梗』
高橋義夫
『北緯50度に消ゆ』
樋口有介
『風少女』
清水義範
『虚構市立不条理中学校』
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候補者・作品
樋口有介男40歳×各選考委員 
『風少女』
長篇 484
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男66歳
13 「ミステリーとしては破綻がありすぎる。」「登場人物のやりとりは軽快で、とくに主人公と妹とのそれはおもしろい。」「作者はおそらくこのようなリズムを、からだに内蔵しているのであろう。それは貴重な資質であり、多作によって伸びるような気がする。」
平岩弓枝
女58歳
12 「好感度からいえば、ナンバーワンの作品。」「登場人物がきびきびと描けていて、ほどほどにクールで、適当に甘いのもいい。」「弱味といえば、事件のしめくくり方と、風少女のイメージにパターンを感じさせることだろうか。」
藤沢周平
男62歳
20 「軽妙な(絶妙と言ってもよい)会話が魅力といった作品で、殺人事件を扱った小説なのにさわやかな青春小説の趣きがあり、後味はわるくない。」「しかしこの作品の問題となる点もまたこの軽妙さにある、という感じがするのも事実で、殺人事件があまりさわやかでも困るわけである。」
黒岩重吾
男66歳
21 「青春小説を爽やかに描く文章力を持っている。ただこの作品を推理小説として読むと、独善的で社会に通用しない現代青年の行動を見せつけられたような気がする。」「主人公が懸命に解いている謎は、警察がとっくに調べている筈である。」「警察は、この程度の犯人なら簡単に逮捕してしまう。となると、この推理小説の謎解きは根底から成立しないことになる。」
山口瞳
男63歳
0  
渡辺淳一
男56歳
0  
五木寛之
男57歳
20 「『風少女』のような作風は、とかくこの国の文壇では軽視されがちな傾向がある。(引用者中略)しかし、私は『風少女』の文体が好きだった。これと『北緯50度に消ゆ』の二作が受賞作に選ばれてもいいと思っていた。」「樋口さんはミステリーにこだわるのをやめたらどうだろう。そうすればもっと自由な、あたらしい小説が書けるのではあるまいか。」
田辺聖子
女62歳
28 「氏のお得意とされる青春ものの軽いノリが、ここでは一篇を支え切れないように思われた。ミステリー仕立てでありながら、ミステリーとしての緊迫感に欠けるからだろうか。」「けだるい青春彷徨ロマンとして読めば、それなりに匂いも情緒もあったが、やっぱり、人が殺されているんだし……。ちょっとどっちつかずになった感じ。」
井上ひさし
男55歳
22 「今回、もっとも堪能した」「風俗の活写、青春群像の彫琢、みんなうまく行っている。」「だが、この作品はじつは推理小説のスタイルで書かれており、そうなると、たとえば睡眠薬の錠数といったことが問題にならざるを得ない。どう勘定しても数が合わぬのである。そこで推薦の辞も自然弱くなる。この作品と心中してもいいと思っていただけにとても残念である。」
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他の候補作
泡坂妻夫
『蔭桔梗』
高橋義夫
『北緯50度に消ゆ』
志水辰夫
『帰りなん、いざ』
清水義範
『虚構市立不条理中学校』
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候補者・作品
清水義範男42歳×各選考委員 
『虚構市立不条理中学校』
長篇 437
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男66歳
10 「諷刺と恐怖のあいだの綱渡りだが、意外にスリルをかんじなかった。パロディー、記号化、置きかえがパターン化して、先が読めてしまう。追求する目標が深すぎて、作品がそこまで届かなかったが、その意図を壮としたい。」
平岩弓枝
女58歳
7 「いつものことながら着想は面白いのに、その面白さが持続しない。小説はアイディアだけでは勝負出来ないし、秀れたコントをどうつないでも小説とは違うものになる。」
藤沢周平
男62歳
42 「全体の構成からいうと、小説としては成功していない感じを受けた。」「教科問答にのめりこんだために、学校の本質に迫るといった感じまでどこかに逃げてしまう。」「清水さんは大変に将来性を感じさせる作家だが、この小説は破綻が多くて、将来性を云云する材料としては適当ではなかったと思う。」
黒岩重吾
男66歳
9 「今の教育の不条理を深く抉っている。私は随筆として面白く読んだ。ただこれを、小説だといわれると困惑する。清水氏自身、この作品が直木賞候補になるとは思っていなかったのではないか。」
山口瞳
男63歳
82 「この一種ハチャメチャ小説に非常なるリアリティを感じた。」「誰でもが学校教育に多少なりとも恨みを抱いていると思われるが、そこを衝いた着想が素晴らしい。」「この作者は疑いもなく上質なセンスの持主であり、かつ、強引と思われるような腕力も持ちあわせていると感じた。」「近年の直木賞候補作のなかでは群を抜く傑作であり、社会性もある問題作だと思った。」
渡辺淳一
男56歳
0  
五木寛之
男57歳
21 「前回の候補作『金鯱の夢』の怪腕ぶりにおよばなかったのが残念である。」「私の勝手な考えでは、清水さんのような小説を書くときには、『虚構』とか『不条理』とかを作者がすすんで言うことはないのではあるまいか。」「清水さん、および腰になることはないですよ。あなたが一番、肚をきめて怪筆をふるえば、直木賞なんて軽いもんでしょう。それだけの才能のある作家なのです。」
田辺聖子
女62歳
20 「氏のお作品はいつもそうだが、思わず声たてて笑ってしまう。」「できるったけ形式にならないように、笑いを誘いながら柔軟闊達な筆で話をすすめてゆくあたり、上質の落語を聞いているようだ。」「しかし、結果としては形式を排除するという形式になってしまった嫌いがある。」
井上ひさし
男55歳
24 「レトリックの駆使はあいかわらず「さすが!」であるが、それにしても〈英語教師の氏名=加古文司〉〈理科教師=筋野徹〉といった置き換えで読者をたのしませることは、もはや無理なのではあるまいか。」「「体育科」と「放課後(あとがき)」との間に、もう一つ驚天動地の章があるべきであった。読者は、氏がどのように奇抜な方法で物語を閉じるのか、そこに興味を集中させているのであるから。」
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他の候補作
泡坂妻夫
『蔭桔梗』
高橋義夫
『北緯50度に消ゆ』
志水辰夫
『帰りなん、いざ』
樋口有介
『風少女』
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