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平成6年/1994年下半期
(平成7年/1995年1月12日決定発表/『オール讀物』平成7年/1995年3月号選評掲載)
選考委員  藤沢周平
男67歳
渡辺淳一
男61歳
田辺聖子
女66歳
黒岩重吾
男70歳
山口瞳
男68歳
平岩弓枝
女62歳
井上ひさし
男60歳
五木寛之
男62歳
選評総行数  164 115 114 84 146 85 100 72
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
中島らも 『永遠も半ばを過ぎて』
457
男42歳
18 8 21 5 9 12 12 0
坂東眞砂子 『桃色浄土』
1005
女36歳
27 14 17 36 22 24 21 8
小嵐九八郎 「風が呼んでる」
160
男50歳
32 14 32 12 14 12 16 11
志水辰夫 『いまひとたびの』
411
男58歳
54 15 10 32 86 9 29 0
池宮彰一郎 『高杉晋作』
909
男71歳
7 10 11 5 15 10 22 0
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
藤沢周平男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感動が残る志水作品 総行数164 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
18 「小説のおもしろさということでは、(引用者中略)ずば抜けていた。」「やや才気が鼻につく個所があり、また勉強のあとが正直に出ているところもあるが、この作者の才能は疑いの余地がないものだ。図抜けたおもしろさも直木賞の守備範囲にきちんとおさまり、十分に受賞水準に達した作品と思われた。」
坂東眞砂子
女36歳
27 「圧巻は嵐の合間に現われた桃色満月の夜景の描写。こういう夢幻的な光景があって、むかしも補陀落渡海へと僧侶たちを誘惑したかと思わせる個所だ。受賞の水準に達した力のある作品だった。」「注文をひとつ言うと、読んだあとにざらつくような感触が残る個所がある。」
小嵐九八郎
男50歳
32 「眼目は、ガンにおかされて余命がいくらもない小橋川が、「いずれみんな死ぬさ、問題は、死に方と、死んだあとの魂にあるさ、おれ幸運さー、あと二、三ヵ月の生命でも幸運ねー」と言うところにあるだろう。」「ここにいたる経過には、遠まわしというか思わせぶりというか(たとえば犬のこと)、読者にはもどかしい韜晦風の文章がつづき、その思わせぶりは知世子の鈍感さで成り立っているという構図で、賛成出来なかった。」
志水辰夫
男58歳
54 「文学の原点に出会ったようでほっとする」「「赤いバス」と「トンネルの向こうで」は、秀作と呼びたい出来ばえである。」「小説は、ああおもしろかったと読み捨てるのではなく、読後なにかしらこころに残るようなものでありたいものだが、「赤いバス」にはそれがある。」「十分に受賞に値いする短篇集だった。」
池宮彰一郎
男71歳
7 「幕末期という歴史のおもしろさ、講談の話法を活かして誇張した文章のおもしろさで読ませるけれども、受賞には距離がある作品に思われた。」
  「票が散って受賞作を出せなかったのが真相である。しかし懸念がないわけではない。」「小説ひと筋というのはいかにも古いようだが、しかしその思いがなくなれば文学はいずれほろびるだろうというのが私の考えである。」
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他の選考委員
渡辺淳一
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
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選考委員
渡辺淳一男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
技より人間を 総行数115 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
8 「相変らずの博識で前半は読ませるが、後半の人間模様にいたると途端にくずれる。ここまで書いてきて作者はなにを訴えたかったのか、その主題が浮き出てこない。」
坂東眞砂子
女36歳
14 「緊張感のある文章で、虚構の小説空間を築きあげた力技に感服した。もっとも虚構の土台となる物語りには、ときにご都合主義や手軽さも見える」「あえて授賞ということになればこれ一作かとも思ったが、大勢を制するにはいたらなかった。」
小嵐九八郎
男50歳
14 「女性が沖縄の男に惚れた理由がいま一つわからず、子供の視線もときに大人になりすぎて興を殺ぐ。この人の作品には、器用さからくる、どこかまやかし風のところがあり、それが魅力であるとともに、すっきり授賞といきかねるところでもあるが、前回よりは好感をもって読めた。」
志水辰夫
男58歳
15 「表現力はあるし、小説つくりも巧みだが、惜しむらくは感動のポイントが低く、俗な感傷に流れすぎる。とくに老いや死を描くときには余程、慎重にあつかうべきで、作者は一度でも死を正面から見据えたことがあるのだろうか。」「集中では「嘘」が読みごたえがあった。」
池宮彰一郎
男71歳
10 「資料や史実の正邪をこえて、ストーリーを追うに急で、いわゆる骨格だけで肉付けの薄い、痩せた小説になってしまった。なによりも不満なのは、これだけの長篇でありながら、主人公の姿が一向に見えてこないもどかしさである。」
  「今回の候補にのぼった作品を含めて、このところ出てくる候補作のなかには、技術や方法論だけ先走って、最も大切な人間を描くという点において、首を傾げたくなる作品が多かった」
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他の選考委員
藤沢周平
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
田辺聖子女66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人生の慰藉 総行数114 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
21 「作者独走の気味がやや強いと思った。」「視点を「おれ」と「相川」にひんぱんに変え、読者を翻弄し韜晦する。読者はたえず梯子をはずされて混乱する。――昔のフランス映画みたい。」
坂東眞砂子
女36歳
17 「力作である。」「ただ、この力作は読むのにずいぶんエネルギーが要る。」「構成に枝葉が多すぎ、テーマが分散したのだろうか。そのせいか読後、欝屈が残るが、海の描写、土佐弁のなつかしさが佳かった。しかし長すぎる。」
小嵐九八郎
男50歳
32 「私はこの作品を推したが、票が少なかったのは残念。――劇画化の強い、浮足立った文章に、はじめはとまどいを感じるが、その口吻になれてくると、内容の重さと、終末の救いの明るさが、読後、感動を呼ぶ。」「小説は一瞬の偸安のためのものでなく、人生にこよない慰藉を与えてくれるためのものだ、――という感慨が、この短篇のうしろ姿にはあり、私はページをとじて満足したのであった。」
志水辰夫
男58歳
10 「私はタイトルにこだわってしまった。和泉式部の歌から採られたものだろうか。しかしこのタイトルの短篇にその影は射していない気がするが。「赤いバス」に感動した。文章もこなれて、大人が読める短篇集だが、味付けがもっと濃くてもいい。」
池宮彰一郎
男71歳
11 「きびきびと書けているのと、長州から見る薩摩の奸佞が面白かった。が、いま少し主人公の晋作の顔がハッキリすれば……と願うのは、女からみても興あったかもしれない晋作の、男としての魅力を知りたいため。」
  「今回ほど票が割れたことはなかった。選考会は揉めに揉めたが、総意をまとめて惹きつける強力な魅力の作品が浮上してこず、同一ラインで鍔迫り合いという印象だった。」
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他の選考委員
藤沢周平
渡辺淳一
黒岩重吾
山口瞳
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作の魅力 総行数84 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
5 「前の候補作と同じく才気にまかせ描いているといった感じで、造型力が足りない。」
坂東眞砂子
女36歳
36 「受賞に価する作品だと今でも私は信じている。」「珊瑚に憑かれた若い漁師達をあこぎな商売人以上に醜く描いており、海の小説に新境地を開いた。大勢の登場人物も類型的ではなく一人一人の躍動感が伝わって来る。」「ただ作者は、登場人物の総てに平等に力を注いだ結果、読者は読み進めるうちに、息切れして来る。」「筆力が空転したのが惜しい。」
小嵐九八郎
男50歳
12 「手慣れた筆で過不足なく描いている。難点はないのだが、感動を呼ばない。」「私には主人公の女性が、何故この男性に惹かれるのかよく分らなかった。子供も大人の眼で描いており、新鮮さが感じられない。」
志水辰夫
男58歳
32 「受賞に価する作品だと今でも私は信じている。」「大人の童話として読むと、黄ばんだ葉からしたたり落ちる雫を味わったようなまろやかな滋味を感じる。私の好みとしては「嘘」を最も推したい。(引用者中略)嘘が救いになっているところに本作品の味がある。」
池宮彰一郎
男71歳
5 「講談調的な面白さはあるが、小説としてはどうだろうか、と首を捻らざるを得ない場面が何か所かあった。」
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他の選考委員
藤沢周平
渡辺淳一
田辺聖子
山口瞳
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
山口瞳男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
志水辰夫さんの腕ッ節 総行数146 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
9 「らもさんに言いたいのは、小説はこんなに凝りに凝って捻りに捻って書くものではないということだ。『人体模型の夜』はとてもよかったのに――。」
坂東眞砂子
女36歳
22 「必ずバケルだろうと思っていた。」「最初明るい土佐の海が出てくるが、後半になってどんどん暗くなり、何か歌舞伎のダンマリを見せられている感じになった。ダンマリが延々と続くと読者は靠れる。」「坂東さんは「小説のわかる少々煩い編集者」について確りと、特に文章を勉強されたらいいと思っている。」
小嵐九八郎
男50歳
14 「頭で書いた勉強小説だ。作者が勉強すれば勉強するほど読者は疲れる。私はこの作者の、音とか、匂いとか、色彩とかについて鋭い描写のあるところが好きだ。」「小嵐さんもいつかはバケルと思っている。」
志水辰夫
男58歳
86 「私は志水辰夫さんを推したが意外にも票が集まらなかった。最終的には三票であって過半数に達しなかった。」「テーマを決めた連作短篇集では、まず先頭打者がヒットでも四球でも、とにかく出塁すればいい。志水さんは第一作目で右前に渋く軽打を放って出塁した。(引用者中略)これをクリーンナップすべき後続の強打に欠けたというのが私の率直な感想である。」
池宮彰一郎
男71歳
15 「正直に言って、これは小説家の文章ではない。作家ならもっと艶があるはずだ。」
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他の選考委員
藤沢周平
渡辺淳一
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
平岩弓枝女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞作なし 総行数85 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
12 「「永遠も半ばを過ぎて」を推すつもりで選考会に出た。」「この作者独特の巧緻のちりばめ方も見事で嫌味がなく、大変に楽しく読んだ。案に相違したのは、それほど票がまとまらなかったことで、これは今でも意外に思っている。」
坂東眞砂子
女36歳
24 「労作であるとは思った。難をいえば、(引用者中略)リアルに考えるとこの部分はおかしいのではないかと醒めた疑問が浮んで来てしまう。一例をあげれば作者は補陀落渡海をどう考えているのかが、はっきりしない。作品の焦点が定まりにくいのは、そのせいではないか。」
小嵐九八郎
男50歳
12 「人間、或いは夫婦というものに視点を当てた好短篇である。」「ただ、こうした独白とせりふによる書き方は、ややもすると強引な、とか、押しつけがましさとかを感じさせ、読者が作品の余白を楽しむゆとりをなくしてしまうところが難しいように思う。」
志水辰夫
男58歳
9 「佳篇揃いであり、さわやかで落ちついた読後感は悪くなかった。だが、この作者の捕えている死が、恰好よすぎるのが気になった。人間が死に直面した時のすさまじさも、書いて頂きたい。」
池宮彰一郎
男71歳
10 「最後まで読んでも、肝腎の高杉晋作が、なんとしても目に浮んで来なかった。同時に高杉晋作を取り巻く人物像も中途半端で終っている。おそらくは資料にふり廻された結果ではないかと思うが、作者の熱意が作品に伝っていない。」
  「ここ数年、なんとなく感じていたことだが、小説としては実に旨い作品が次々と登場するのに、読み終って魂に触れて来るようなものが、次第に薄くなっているような気がしてならない。」
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他の選考委員
藤沢周平
渡辺淳一
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
井上ひさし男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
名作あり 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
12 「前半は「大」の字の付く傑作である。ところが、そこから先に、この才能豊かな書き手の、おそらく唯一の弱点と思われる「資料に頼りすぎる癖」が出てしまったようだ。資料をもう一ト噛みしないと、中島らもの魅力がその分だけ薄れてしまう。」
坂東眞砂子
女36歳
21 「たしかに膂力がある。ほとんど脱帽する。けれどもどうしてこう、なにもかも厚塗りにしなくてはいけないのだろうか。登場人物の心理をくどく説明するのは今の流行かもしれないが、氏はもっと読者の読解力と想像力とを信じていい。」「せっかく積み上げた人間の葛藤を大嵐で一気に解決してしまうのは惜しい。」
小嵐九八郎
男50歳
16 「苦心の軽妙自在な文章で、南の島での「死」を、現代社会の「見えない死」と重ね合わせて書いている。その苦心の軽妙自在体が、この作品では少し行きすぎの気配があって、奇妙なもどかしさを感じた。」「いい主題であり、いい話でもあるのに、そこへ入る入口がちょっと狭かったように思われる。」
志水辰夫
男58歳
29 「「赤いバス」は掛け値なしの名作、新作にしてすでに古典であると云ってもいい。」「この短編集の主調音を、たとえば「さまざまな死」と捉えることができようが、残念なことにその後は同工異曲がつづく。しかし一編でもこのような名作があるなら受賞してもおかしくないと考えたが、強い支持が得られなかった。」
池宮彰一郎
男71歳
22 「晋作が奇兵隊仮本部へ乗り込むあたりの迫力は相当なもの、しかしどこかから絶えず講釈師の張り扇の音が聞こえていたことも否定できない。晋作の目鼻立ちがはっきりせず、つまり彼の人間像が判然とせず、そこで演出の派手さだけが目立ってしまった。」
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他の選考委員
藤沢周平
渡辺淳一
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
五木寛之男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ひとつの節目として 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中島らも
男42歳
0  
坂東眞砂子
女36歳
8 「その書き手にしかない独特の個性を私に感じさせた」「このまま今の道を迷うことなく直進して欲しい」
小嵐九八郎
男50歳
11 「その書き手にしかない独特の個性を私に感じさせた」「この道しかほかに道はないのか、この書きかたのほかに表現のすべはないのかと、大いに迷っていただきたいとひそかに願っている。」
志水辰夫
男58歳
0  
池宮彰一郎
男71歳
0  
  「私にはなんとなく小説の世界そのものにパワーが失われている、という気がしてならないのだ。」「これまでの仕事の実績と将来への可能性を加味しての授賞、という考えかたもないではない。しかし、合わせて二作授賞という案と同じように、それにもどこか不確かなところが感じられて、結局、見送られることとなった。」
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他の選考委員
藤沢周平
渡辺淳一
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
平岩弓枝
井上ひさし
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候補者・作品
中島らも男42歳×各選考委員 
『永遠も半ばを過ぎて』
長篇 457
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
藤沢周平
男67歳
18 「小説のおもしろさということでは、(引用者中略)ずば抜けていた。」「やや才気が鼻につく個所があり、また勉強のあとが正直に出ているところもあるが、この作者の才能は疑いの余地がないものだ。図抜けたおもしろさも直木賞の守備範囲にきちんとおさまり、十分に受賞水準に達した作品と思われた。」
渡辺淳一
男61歳
8 「相変らずの博識で前半は読ませるが、後半の人間模様にいたると途端にくずれる。ここまで書いてきて作者はなにを訴えたかったのか、その主題が浮き出てこない。」
田辺聖子
女66歳
21 「作者独走の気味がやや強いと思った。」「視点を「おれ」と「相川」にひんぱんに変え、読者を翻弄し韜晦する。読者はたえず梯子をはずされて混乱する。――昔のフランス映画みたい。」
黒岩重吾
男70歳
5 「前の候補作と同じく才気にまかせ描いているといった感じで、造型力が足りない。」
山口瞳
男68歳
9 「らもさんに言いたいのは、小説はこんなに凝りに凝って捻りに捻って書くものではないということだ。『人体模型の夜』はとてもよかったのに――。」
平岩弓枝
女62歳
12 「「永遠も半ばを過ぎて」を推すつもりで選考会に出た。」「この作者独特の巧緻のちりばめ方も見事で嫌味がなく、大変に楽しく読んだ。案に相違したのは、それほど票がまとまらなかったことで、これは今でも意外に思っている。」
井上ひさし
男60歳
12 「前半は「大」の字の付く傑作である。ところが、そこから先に、この才能豊かな書き手の、おそらく唯一の弱点と思われる「資料に頼りすぎる癖」が出てしまったようだ。資料をもう一ト噛みしないと、中島らもの魅力がその分だけ薄れてしまう。」
五木寛之
男62歳
0  
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他の候補作
坂東眞砂子
『桃色浄土』
小嵐九八郎
「風が呼んでる」
志水辰夫
『いまひとたびの』
池宮彰一郎
『高杉晋作』
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候補者・作品
坂東眞砂子女36歳×各選考委員 
『桃色浄土』
長篇 1005
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
藤沢周平
男67歳
27 「圧巻は嵐の合間に現われた桃色満月の夜景の描写。こういう夢幻的な光景があって、むかしも補陀落渡海へと僧侶たちを誘惑したかと思わせる個所だ。受賞の水準に達した力のある作品だった。」「注文をひとつ言うと、読んだあとにざらつくような感触が残る個所がある。」
渡辺淳一
男61歳
14 「緊張感のある文章で、虚構の小説空間を築きあげた力技に感服した。もっとも虚構の土台となる物語りには、ときにご都合主義や手軽さも見える」「あえて授賞ということになればこれ一作かとも思ったが、大勢を制するにはいたらなかった。」
田辺聖子
女66歳
17 「力作である。」「ただ、この力作は読むのにずいぶんエネルギーが要る。」「構成に枝葉が多すぎ、テーマが分散したのだろうか。そのせいか読後、欝屈が残るが、海の描写、土佐弁のなつかしさが佳かった。しかし長すぎる。」
黒岩重吾
男70歳
36 「受賞に価する作品だと今でも私は信じている。」「珊瑚に憑かれた若い漁師達をあこぎな商売人以上に醜く描いており、海の小説に新境地を開いた。大勢の登場人物も類型的ではなく一人一人の躍動感が伝わって来る。」「ただ作者は、登場人物の総てに平等に力を注いだ結果、読者は読み進めるうちに、息切れして来る。」「筆力が空転したのが惜しい。」
山口瞳
男68歳
22 「必ずバケルだろうと思っていた。」「最初明るい土佐の海が出てくるが、後半になってどんどん暗くなり、何か歌舞伎のダンマリを見せられている感じになった。ダンマリが延々と続くと読者は靠れる。」「坂東さんは「小説のわかる少々煩い編集者」について確りと、特に文章を勉強されたらいいと思っている。」
平岩弓枝
女62歳
24 「労作であるとは思った。難をいえば、(引用者中略)リアルに考えるとこの部分はおかしいのではないかと醒めた疑問が浮んで来てしまう。一例をあげれば作者は補陀落渡海をどう考えているのかが、はっきりしない。作品の焦点が定まりにくいのは、そのせいではないか。」
井上ひさし
男60歳
21 「たしかに膂力がある。ほとんど脱帽する。けれどもどうしてこう、なにもかも厚塗りにしなくてはいけないのだろうか。登場人物の心理をくどく説明するのは今の流行かもしれないが、氏はもっと読者の読解力と想像力とを信じていい。」「せっかく積み上げた人間の葛藤を大嵐で一気に解決してしまうのは惜しい。」
五木寛之
男62歳
8 「その書き手にしかない独特の個性を私に感じさせた」「このまま今の道を迷うことなく直進して欲しい」
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他の候補作
中島らも
『永遠も半ばを過ぎて』
小嵐九八郎
「風が呼んでる」
志水辰夫
『いまひとたびの』
池宮彰一郎
『高杉晋作』
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候補者・作品
小嵐九八郎男50歳×各選考委員 
「風が呼んでる」
中篇 160
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
藤沢周平
男67歳
32 「眼目は、ガンにおかされて余命がいくらもない小橋川が、「いずれみんな死ぬさ、問題は、死に方と、死んだあとの魂にあるさ、おれ幸運さー、あと二、三ヵ月の生命でも幸運ねー」と言うところにあるだろう。」「ここにいたる経過には、遠まわしというか思わせぶりというか(たとえば犬のこと)、読者にはもどかしい韜晦風の文章がつづき、その思わせぶりは知世子の鈍感さで成り立っているという構図で、賛成出来なかった。」
渡辺淳一
男61歳
14 「女性が沖縄の男に惚れた理由がいま一つわからず、子供の視線もときに大人になりすぎて興を殺ぐ。この人の作品には、器用さからくる、どこかまやかし風のところがあり、それが魅力であるとともに、すっきり授賞といきかねるところでもあるが、前回よりは好感をもって読めた。」
田辺聖子
女66歳
32 「私はこの作品を推したが、票が少なかったのは残念。――劇画化の強い、浮足立った文章に、はじめはとまどいを感じるが、その口吻になれてくると、内容の重さと、終末の救いの明るさが、読後、感動を呼ぶ。」「小説は一瞬の偸安のためのものでなく、人生にこよない慰藉を与えてくれるためのものだ、――という感慨が、この短篇のうしろ姿にはあり、私はページをとじて満足したのであった。」
黒岩重吾
男70歳
12 「手慣れた筆で過不足なく描いている。難点はないのだが、感動を呼ばない。」「私には主人公の女性が、何故この男性に惹かれるのかよく分らなかった。子供も大人の眼で描いており、新鮮さが感じられない。」
山口瞳
男68歳
14 「頭で書いた勉強小説だ。作者が勉強すれば勉強するほど読者は疲れる。私はこの作者の、音とか、匂いとか、色彩とかについて鋭い描写のあるところが好きだ。」「小嵐さんもいつかはバケルと思っている。」
平岩弓枝
女62歳
12 「人間、或いは夫婦というものに視点を当てた好短篇である。」「ただ、こうした独白とせりふによる書き方は、ややもすると強引な、とか、押しつけがましさとかを感じさせ、読者が作品の余白を楽しむゆとりをなくしてしまうところが難しいように思う。」
井上ひさし
男60歳
16 「苦心の軽妙自在な文章で、南の島での「死」を、現代社会の「見えない死」と重ね合わせて書いている。その苦心の軽妙自在体が、この作品では少し行きすぎの気配があって、奇妙なもどかしさを感じた。」「いい主題であり、いい話でもあるのに、そこへ入る入口がちょっと狭かったように思われる。」
五木寛之
男62歳
11 「その書き手にしかない独特の個性を私に感じさせた」「この道しかほかに道はないのか、この書きかたのほかに表現のすべはないのかと、大いに迷っていただきたいとひそかに願っている。」
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他の候補作
中島らも
『永遠も半ばを過ぎて』
坂東眞砂子
『桃色浄土』
志水辰夫
『いまひとたびの』
池宮彰一郎
『高杉晋作』
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候補者・作品
志水辰夫男58歳×各選考委員 
『いまひとたびの』
短篇集9篇 411
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
藤沢周平
男67歳
54 「文学の原点に出会ったようでほっとする」「「赤いバス」と「トンネルの向こうで」は、秀作と呼びたい出来ばえである。」「小説は、ああおもしろかったと読み捨てるのではなく、読後なにかしらこころに残るようなものでありたいものだが、「赤いバス」にはそれがある。」「十分に受賞に値いする短篇集だった。」
渡辺淳一
男61歳
15 「表現力はあるし、小説つくりも巧みだが、惜しむらくは感動のポイントが低く、俗な感傷に流れすぎる。とくに老いや死を描くときには余程、慎重にあつかうべきで、作者は一度でも死を正面から見据えたことがあるのだろうか。」「集中では「嘘」が読みごたえがあった。」
田辺聖子
女66歳
10 「私はタイトルにこだわってしまった。和泉式部の歌から採られたものだろうか。しかしこのタイトルの短篇にその影は射していない気がするが。「赤いバス」に感動した。文章もこなれて、大人が読める短篇集だが、味付けがもっと濃くてもいい。」
黒岩重吾
男70歳
32 「受賞に価する作品だと今でも私は信じている。」「大人の童話として読むと、黄ばんだ葉からしたたり落ちる雫を味わったようなまろやかな滋味を感じる。私の好みとしては「嘘」を最も推したい。(引用者中略)嘘が救いになっているところに本作品の味がある。」
山口瞳
男68歳
86 「私は志水辰夫さんを推したが意外にも票が集まらなかった。最終的には三票であって過半数に達しなかった。」「テーマを決めた連作短篇集では、まず先頭打者がヒットでも四球でも、とにかく出塁すればいい。志水さんは第一作目で右前に渋く軽打を放って出塁した。(引用者中略)これをクリーンナップすべき後続の強打に欠けたというのが私の率直な感想である。」
平岩弓枝
女62歳
9 「佳篇揃いであり、さわやかで落ちついた読後感は悪くなかった。だが、この作者の捕えている死が、恰好よすぎるのが気になった。人間が死に直面した時のすさまじさも、書いて頂きたい。」
井上ひさし
男60歳
29 「「赤いバス」は掛け値なしの名作、新作にしてすでに古典であると云ってもいい。」「この短編集の主調音を、たとえば「さまざまな死」と捉えることができようが、残念なことにその後は同工異曲がつづく。しかし一編でもこのような名作があるなら受賞してもおかしくないと考えたが、強い支持が得られなかった。」
五木寛之
男62歳
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他の候補作
中島らも
『永遠も半ばを過ぎて』
坂東眞砂子
『桃色浄土』
小嵐九八郎
「風が呼んでる」
池宮彰一郎
『高杉晋作』
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候補者・作品
池宮彰一郎男71歳×各選考委員 
『高杉晋作』
長篇 909
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
藤沢周平
男67歳
7 「幕末期という歴史のおもしろさ、講談の話法を活かして誇張した文章のおもしろさで読ませるけれども、受賞には距離がある作品に思われた。」
渡辺淳一
男61歳
10 「資料や史実の正邪をこえて、ストーリーを追うに急で、いわゆる骨格だけで肉付けの薄い、痩せた小説になってしまった。なによりも不満なのは、これだけの長篇でありながら、主人公の姿が一向に見えてこないもどかしさである。」
田辺聖子
女66歳
11 「きびきびと書けているのと、長州から見る薩摩の奸佞が面白かった。が、いま少し主人公の晋作の顔がハッキリすれば……と願うのは、女からみても興あったかもしれない晋作の、男としての魅力を知りたいため。」
黒岩重吾
男70歳
5 「講談調的な面白さはあるが、小説としてはどうだろうか、と首を捻らざるを得ない場面が何か所かあった。」
山口瞳
男68歳
15 「正直に言って、これは小説家の文章ではない。作家ならもっと艶があるはずだ。」
平岩弓枝
女62歳
10 「最後まで読んでも、肝腎の高杉晋作が、なんとしても目に浮んで来なかった。同時に高杉晋作を取り巻く人物像も中途半端で終っている。おそらくは資料にふり廻された結果ではないかと思うが、作者の熱意が作品に伝っていない。」
井上ひさし
男60歳
22 「晋作が奇兵隊仮本部へ乗り込むあたりの迫力は相当なもの、しかしどこかから絶えず講釈師の張り扇の音が聞こえていたことも否定できない。晋作の目鼻立ちがはっきりせず、つまり彼の人間像が判然とせず、そこで演出の派手さだけが目立ってしまった。」
五木寛之
男62歳
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他の候補作
中島らも
『永遠も半ばを過ぎて』
坂東眞砂子
『桃色浄土』
小嵐九八郎
「風が呼んでる」
志水辰夫
『いまひとたびの』
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